説明

自動二輪車エンジンの潤滑装置

【課題】適正且つ効率的な潤滑を実現すると共に、エンジン性能の向上に有効に寄与する自動二輪車エンジンの潤滑装置を提供する。
【解決手段】クランク室11とマグネト室18の間にリードバルブ50を配置し、リードバルブ50を介してクランク室11からマグネト室18へ流入させたオイルを、オイルポンプ23により吸引してオイル貯留部へ供給する。オイルポンプ23のオイル吸入口48aが、連通路38の下端よりも低位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等のエンジン、特に4サイクルエンジンにおいてオイルポンプを含んでなる潤滑装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンは変速ギヤ装置、クラッチ装置の他に、多数の部品から構成される動弁装置等の可動部を含んでいるため、潤滑対象部位や範囲が広く、複雑な潤滑構造を有する。例えば特に、互いに離隔されているクランクケースとマグネト室との間で、リードバルブを介してクランクケースからマグネト室へのオイルの流入を許容すると共に、マグネト室内のオイルをスカベンジングポンプで吸い上げてオイル貯留部へ供給する潤滑系が知られている。
【0003】
この種の潤滑系において、リードバルブはクランクケース内圧を利用して動作するようになっている。そして、クランクケース及びマグネト室間のオイル流路の開閉はリードバルブによって行われる。従って、リードバルブの適正作動は潤滑系を適正且つ円滑化する上で極めて重要である。
【0004】
なお、特許文献1に記載のエンジンでは、クランクケース(左側)の底部にオイルパンが設けられ、オイル排出口はこのオイルパンの底部から一体に上方へ延びるリブによりオイルパン内で隔離された小区画内へ開口している。この小区画は上方が開放され、オイル排出口から小区画へ排出されたオイルがリブの上端を乗り越えると、オイルパン内へ流れ込むようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−65017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなリードバルブを有する潤滑系において、リードバルブを介してクランクケースからマグネト室へ吐出されたオイルのうち、特にスカベンジングポンプによって吸引しきれない分のオイルがあると、そのオイルがリードバルブの作動に影響することがある。あるいはまた、マグネト室側に滞留したオイルがマグネト室内のマグネトロータによって攪拌され、そのままではマグネトロータの機械的損失の原因となる。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、適正且つ効率的な潤滑を実現すると共に、エンジン性能の向上に有効に寄与する自動二輪車エンジンの潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動二輪車エンジンの潤滑装置は、クランク室とマグネト室の間にリードバルブを配置し、該リードバルブを介して前記クランク室から前記マグネト室へ流入させたオイルを、オイルポンプにより吸引してオイル貯留部へ供給するようにした自動二輪車エンジンの潤滑装置であって、
前記オイルポンプのオイル吸入口が、前記連通路の下端よりも低位置に配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明の自動二輪車エンジンの潤滑装置において、前記リードバルブは前記クランク室及び前記マグネト室間の連通路に配設され、前記オイルポンプのオイル吸入口は、前記リードバルブの弁体の下端よりも低位置に配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明の自動二輪車エンジンの潤滑装置において、前記マグネト室の底部付近を下方に膨出させてなる膨出部を有し、この膨出部に前記オイルポンプのオイル吸入口を配置したことを特徴とする。
【0011】
本発明の自動二輪車エンジンの潤滑装置において、前記連通路と前記膨出部との間に段差部を有し、この段差部は前記オイルポンプのオイル吸入口よりも高位置、且つ前記リードバルブの弁体の下端よりも低位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マグネト室の底部付近に膨出部を設け、この膨出部にオイルポンプのオイル吸入口を配置する。そして、膨出部に滞留するオイルの油面をリードバルブの弁体の下端と略同一高さに設定することができ、リードバルブの背面側には実質的にオイルが滞留しなくなる。これによりリードバルブの弁体が開く際のオイル抵抗がないことでその円滑且つ適正作動が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の潤滑装置に係る自動二輪車の全体構成を示す左側面図である。
【図2】本発明の潤滑装置に係るエンジンの後方斜視図である。
【図3】本発明の潤滑装置に係るエンジンの左側面図である。
【図4】本発明の潤滑装置に係るエンジンの右側面図である。
【図5】本発明の潤滑装置における左側クランクケースを内側から見た側面図である。
【図6】本発明の潤滑装置に係るマグネト室まわりの側面図である。
【図7】本発明の潤滑装置に係るマグネト室まわりの斜視図である。
【図8】本発明の潤滑装置に係るオイルポンプまわりの構造を示す図3のA−A線に沿う平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明による自動二輪車エンジンの潤滑装置の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る自動二輪車100の側面図である。先ず、図1を用いて、自動二輪車100の全体構成について説明する。なお、図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
【0015】
図1の自動二輪車100は、典型的には所謂オフロード用であってよく、その車体前方上部にはステアリングヘッドパイプ101が配置されており、該ステアリングヘッドパイプ101内には不図示のステアリング軸が回動可能に挿通している。そして、このステアリング軸の上端にはハンドル102が結着されており、同ステアリング軸の下端にはフロントフォーク103が取り付けられ、該フロントフォーク103の下端には操向輪である前輪104が回転可能に軸支されている。
【0016】
また、ステアリングヘッドパイプ101からは左右一対のメインフレーム105が、車体後方に向かって斜め下方に傾斜して延出すると共に、ダウンチューブ106が略垂直下方に延びている。そして、ダウンチューブ106は下部付近でロアフレーム106Aとして左右に分岐し、これら一対のロアフレーム106Aは下方に延びた後に、車体後方に向かって略直角に曲げられ、その後端部は左右一対のボディフレーム107を介してメインフレーム105の各後端部に連結されている。
【0017】
左右一対のメインフレーム105とダウンチューブ106及びロアフレーム106Aとボディフレーム107とによって囲まれる空間には、駆動源である水冷式のエンジン10が搭載され、エンジン10の上方には燃料タンク108が配され、その燃料供給口はキャップ109によって栓止されている。燃料タンク108の後方にはシート110が配されている。また、エンジン10の前方にはラジエータ111が配置されている。
【0018】
車体の前後方向略中央の下部に設けられた左右一対のボディフレーム107には、リヤスイングアーム112の前端部がピボット軸113によって上下に揺動可能に支持されている。リヤスイングアーム112の後端部には駆動輪である後輪114が回転可能に軸支されている。リヤアーム112は、リンク機構115とこれに連結されたショックアブソーバ116(後輪懸架装置)を介して車体に懸架されている。
【0019】
なお、燃料タンク108内には燃料ポンプユニットが配置され、この燃料ポンプユニットによってエンジン10に燃料を供給する。一方、ショックアブソーバ116の後側にはエアクリーナボックス117が配置され、エアクリーナボックス117とエンジン10の間が吸気通路を介して連結される。なお、図1においては図示を省略するが、吸気通路はエンジン10のシリンダヘッドに設けられたインテークポートに接続され、その途中で吸気通路の一部としてスロットルボディが配置される。このスロットルボディには燃料インジェクタが配設されており、この燃料インジェクタに対して燃料ポンプユニットから所定圧力の燃料が供給されるようになっている。
【0020】
次に、エンジン10の構成について説明する。この例ではエンジン10は4サイクル単筒エンジンとする。図2は、本実施形態におけるエンジン10の全体構成を示している。エンジン10において、クランクシャフト12を回転可能に収容支持するクランクケース11と、ピストンを上下動可能に収容するシリンダ13と、動弁装置を収容するシリンダヘッド14と、シリンダヘッド14に取り付けるシリンダヘッドカバー15とが略上下方向に連接され、即ちシリンダブロックのシリンダ軸線がクランクシャフト12の軸線に対して実質的に鉛直方向に設定される。
【0021】
更に、図2〜図5を参照して説明する。本実施形態においてクランクケース11は図2にも示すように、割り面Pに沿って左右2つ割りに構成され、そのケース隔壁を隔てて後側にはミッション室(もしくはケース)16が、その右側にクラッチ室17が、また左側にはマグネト室18がそれぞれ隣接配置される。ミッション室16にはクランクシャフト12の回転出力を減速して後輪114へと伝達するための複数のミッションギヤが列設されている。クラッチ室17には図4に示されるようにクラッチ装置19が配置され、ハンドル102(図1)のクラッチレバー操作によりクランクシャフト12及びミッションギヤ間の動力伝達を接続/遮断制御するようになっている。マグネト室18には図3に示されるように、ステータコイル20A及びマグネトロータ20Bを含むジェネレータ20が配置される。
【0022】
図2〜図5において、クラッチ室17及びマグネト室18はそれぞれ内部が露呈する状態が図示されているが、各々カバーが被着するようなっている。ミッション室16、クラッチ室17及びマグネト室18はエンジン10他部位との連通部等を除き、実質的に密閉空間として構成される。
【0023】
次に、エンジン10の吸排気系において、先ず吸気側では前述のようにエアクリーナボックス117(図1)とエンジン10のシリンダヘッド14の間に吸気通路が配置構成される。この吸気通路はエンジン10のシリンダヘッド13に設けられたインテークポート21(図2)に接続され、その途中に吸気通路の一部としてスロットルボディが配置される。このスロットルボディには燃料インジェクタが配設されており、この燃料インジェクタに対して燃料タンク108から所定圧力の燃料が供給されるようになっている。
【0024】
また、吸排気系の排気側において、シリンダヘッド14に配設されたエキゾーストポート22(図4)にはエキゾーストパイプが接続され、エンジン10で生成された燃焼後の排気ガスがエキゾーストパイプを通って排気される。エキゾーストパイプは更に排気管としてエンジン10の後方へ延出し、マフラ(排気消音器)118(図1)が結合し、排気は最終的にマフラ118から排出される。
【0025】
次に潤滑系において、図2に示されるようにマグネト室18の下部付近にオイルポンプ23(スカベンジポンプ)が配置され、該マグネト室18内に溜まったオイルを吸引する。オイルポンプ23のオイル吐出側は、連通路25b(図5参照)を経由してミッション室16内で開口しており、即ちオイルポンプ23はマグネト室18にて吸い上げたオイルをミッション室16に供給する。ミッション室16にはオイルポンプ23と同心で、且つ同期回転する回転軸を有するオイルポンプ24(フィードポンプ)が配置されている。オイルポンプ24は、図4に示されるようにその一部(右側部位)がクラッチ室17の下部付近に露呈するように配置されるが、後述するオイル通路25を介してエンジン10の各部にオイルを供給するようになっている。
【0026】
ここで図4に示されるように、オイルポンプ24のオイル吐出側はオイル通路25に接続されるが、先ずクラッチ室17内においてクラッチ室カバー(図示せず)の内側に形成されたオイル通路25Aからオイルフィルタ室26へ供給される。その後、連通孔25aを介してクランクケース11(右側)の内側に形成されたオイル通路へ至り、シリンダ13を通り(オイル通路25B)、更にシリンダヘッド14へと至る(オイル通路25C)。オイル通路25Cからはシリンダヘッド14内の動弁装置等にオイルを供給し、その供給されたオイルは主にマグネト室18等に落下して回収されるようになっている。
【0027】
なお、この実施形態において上述のようにエンジン10は水冷式とし、このためラジエータ111を含む冷却系を備えている。エンジン10の前方に搭載されたラジエータ111によって冷却された冷却水は、なお図示を省略するが、ホースを通ってウォータポンプへと導かれ、ウォータポンプはその冷却水をホースを介して、エンジン10のシリンダブロック等に形成されたウォータジャケットへと給送する。これによりエンジン10の冷却が行われる。
【0028】
また、本実施形態におけるエンジン10は所謂DOHC型であり、シリンダヘッド14において吸気側及び排気側それぞれにカムシャフト27,28を有する(図3参照)。エンジン10の左側部位にてカムチェーン29が実質的に鉛直方向に装架され(図2参照)、このカムチェーン29を介してクランクシャフト12とカムシャフト27,28が連結される。この場合、シリンダ13及びシリンダヘッド14を含むシリンダブロックの左側部位に図2の点線により示すように、カムチェーントンネル30が構成される(図7をも参照のこと)。このカムチェーントンネル30についても実質的に略鉛直方向に沿って配置構成される。
【0029】
図3に示すように吸気側カムシャフト27の左端部にスプロケット31が固着し、排気側カムシャフト28の左端部にもスプロケット32が固着する。クランクシャフト12の左端部付近には図7あるいは図8にも示すようにドライブスプロケット33が固着し、スプロケット31,32とドライブスプロケット33との間にカムチェーン29が巻回装架される。
【0030】
上記のように装架されるカムチェーン29の排気側領域には、その走行をガイドするカムチェーンガイド34が配置される。このカムチェーンガイド34はカムチェーン29の所謂、張り側に配置される。カムチェーンガイド34の下端部は図6に示されるように、クランクシャフト12の下方にてポケット状に突設された支持部35により支持される。カムチェーンガイド34は上部側はカムチェーントンネル30内に入り込んで、排気側のスプロケット32の近傍まで延設され、シリンダブロック(カムチェーントンネル30の内壁等)の適所に固定される。
【0031】
一方、カムチェーン29の吸気側領域にはそのカムチェーンテンショナ36が配置される。カムチェーンテンショナ36は、カムチェーン29に接触して張力を付与するようになっている。カムチェーンテンショナ36の下端部は図6に示されるように、クランクシャフト12の上方に配置された支軸37のまわりに回動可能に支持される。なお、カムチェーントンネル30内にはカムチェーンテンショナアジャスタが配設されており、このカムチェーンテンショナアジャスタはカムチェーンテンショナ36のカムチェーン29に対する押圧力を調整し、これによりカムチェーン29が常に適正走行するようにする。
【0032】
さて、本発明の自動二輪車エンジンの潤滑装置において、先ずクランクケース11(右側及び左側とも)の底部には図5(クランクケース11(左側)を内側から見たものである)に示すように連通路38が設けられる。この例では略矩形状の通路断面とし、右側のクランクケース11に形成された連通路38とクランクケース11内部が繋がっていて、クランクケース11内に流入又は溜まったオイルは先ず、連通路38の右側に流入する。この連通路38は更に図6に示すように、クランクケース11の左側のマグネト室18に開口し(開口部39)、この開口部39を介して連通路38とマグネト室18が連通する。
【0033】
マグネト室18において図6及び図7に示すように、その底部を下方に膨出させてなる膨出部40が形成される。図6に示されるように膨出部40(の底部)は開口部39よりも低く、また膨出部40(の前部)は開口部39よりも前方に拡張するかたちで形成される。前述のようにオイルポンプ23はマグネト室18の下部付近に配置されるが(図3)、オイルポンプ23の本体自体は、膨出部40よりも適度に上方に配置される。
【0034】
更に、オイルポンプ23の具体的構成について説明する。図8に示されるようにオイルポンプ23はロータ軸41に軸支されたインナロータ42とその外周に配置されたアウタロータ43とを含み、ロータ軸41の回転によりポンプ作動するようになっている。オイルポンプ23のケーシングは、クランクケース11(左側)の側壁の一部により形成され、カバー44が被着する。このカバー44は一対のボルト45,45によって固定される。ロータ軸41を挟んで略上下にオイル吸入路46及びオイル吐出路47が形成され、オイルポンプ23はオイル吸入路46を介してオイルを吸入して、オイル吐出路47から吐出する。
【0035】
オイル吸入路46の下部にはオイル吸入部48が付帯結合しており、このオイル吸入部48は下方に開口する吸入口48aを有する。図2にも示されるようにオイル吸入部48は言わば碗を被せたような形態を呈し、適度の隙間を有してその外形が概ね膨出部40内壁と合致して収容されるかたちで配置される。特にオイル吸入部48の前後長において、膨出部40のかなりの部分を占有する。なお、図8に示されるようにオイル吸入部48にはストレーナ49が装着されている。
【0036】
ここで、クランクケース11の下部で左右方向に延設された連通路38において、図8に示されるように左右2つ割りのクランクケース11の合せ部(割り面P)にリードバルブ50が配設される。リードバルブ50は略矩形の弁体50aを有し、この弁体50aは連通路38の断面積に略対応する大きさ寸法を有する。この例では弁体50aは片持ち式に支持され、即ちその前部側にて鉛直方向に配置された支軸50bによって片持ち式に支持され、後部側がマグネト室18へ開くことで連通路38を開通させるようになっている。なお、弁体50aはクランクケース11の内圧の変化、即ちその内圧が上昇することで開くようになっている。
【0037】
また、ミッション室16側に配置されたオイルポンプ24は、図8に示されるようにオイルポンプ23のロータ軸41と連結されたロータ軸51を有する。このロータ軸51はギヤ52,53を介して、クランクシャフト12側から動力伝達されるようになっている。なお、オイルポンプ23のロータ軸41は、オイルポンプ24はロータ軸51によって従動駆動される。オイルポンプ24はロータ軸51に軸支されたインナロータ54とその外周に配置されたアウタロータ55とを含み、ロータ軸51の回転によりポンプ作動するようになっている。オイルポンプ24のケーシングは、クランクケース11(右側)の側壁の一部により形成され、カバー56が被着する。
【0038】
本発明の自動二輪車エンジンの潤滑装置において特に、オイルポンプ23のオイル吸入口48aは図8に示されるように、連通路38(開口部39)の下端よりも低位置に配置される。この場合、連通路39の下端とオイル吸入口48a(オイル吸入部48の下端)との間に高低差hを有する。
また、リードバルブ50は上述のように連通路38内に配設されているため、オイル吸入口48a(オイル吸入部48の下端)は、リードバルブ50の弁体50aの下端よりも低位置に配置されることとなる。
【0039】
更に、オイルポンプ23のオイル吸入口48aは膨出部40に配置されるが、この膨出部40と連通路38との間に段差部57を有する。そして、この段差部57はオイルポンプ23のオイル吸入口48a(オイル吸入部48の下端)よりも高位置、且つリードバルブ50の弁体50aの下端よりも低位置に配置される。
【0040】
次に本発明の作用等について説明する。前述したようにオイル潤滑系においてマグネト室18内に溜まったオイルは、オイルポンプ23により吸い上げられ、オイルポンプ23から吐出されたオイルはその後、オイル通路25を介してミッション室16、オイルポンプ24を経由した後、その一部はシリンダヘッド14の動弁装置やカムチェーン29等に供給される。また、一部はクランクシャフト12のジャーナル部等々に供給され、供給されたオイルはその後、マグネト室18やクランクケース11等に落下して回収される。クランクケース11の内圧はピストンの上下動に対応して大小変化し、クランクケース11の内圧が上昇することで、リードバルブ50の弁体50aが開き、これにより連通路38を介してクランクケース11側からマグネト室18へオイルを流通させる。
【0041】
本発明において特に連通路38、膨出部40、オイルポンプ23の特にオイル吸入口48a、そしてリードバルブ50の特に弁体50aは上記のように設定配置される。即ち、オイルポンプ23のオイル吸入口48aが図8に示されるように、連通路38(開口部39)の下端よりも低位置に配置される。このようにオイル吸入口48aを低位置、実質的に最も低い位置に配置することで、マグネト室18に滞留するオイルを極めて円滑に吸い上げることができる。なお、マグネト室18の底部付近に膨出部40を設けることで、膨出部40にオイルポンプ23のオイル吸入口48aの配置を可能とする。
【0042】
この場合、リードバルブ50は連通路38内に配置され、連通路38は段差部57から膨出部40へと落ち込む。オイルポンプ23のオイル吸入口48aは膨出部40において大きく開口しており、膨出部40に流れ込むオイルを効率よく吸い上げ、エンジン回転数によって多少は変化するが、図8のように膨出部40に滞留するオイルの油面Lをリードバルブ50の弁体50aの下端と略同一高さに設定することができる。つまり連通路38内のオイルは実質的に全て膨出部40へと流れ込み、これによりリードバルブ50の背面側(連通路38におけるリードバルブ50よりも下流側)には実質的にオイルが滞留しなくなり、弁体50aが開く際のオイル抵抗がないことでその円滑且つ適正作動が保証される。
【0043】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態においてリードバルブ弁体50aの支軸50bがその前部側に配置された例を示したが、後部側に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 エンジン、11 クランクケース、12 クランクシャフト、13 シリンダ、14 シリンダヘッド、15 シリンダヘッドカバー、16 ミッション室、17 クラッチ室、18 マグネト室、19 クラッチ装置、20 ジェネレータ、20A ステータコイル、20B マグネトロータ、21 インテークポート、22 エキゾーストポート、23 オイルポンプ(スカベンジポンプ)、24 オイルポンプ(フィードポンプ)、25 オイル通路、26 オイルフィルタ室、27,28 カムシャフト、29 カムチェーン、30 カムチェーントンネル、31,32 スプロケット、33 ドライブスプロケット、34 カムチェーンガイド、35 支持部、36 カムチェーンテンショナ、38 連通路、39 開口部、40 膨出部、41 ロータ軸、42 インナロータ、43 アウタロータ、46 オイル吸入路、47 オイル吐出路、48 オイル吸入部、49 ストレーナ、50 リードバルブ、50a 弁体、51 ロータ軸、54 インナロータ、55 アウタロータ、57 段差部、100 自動二輪車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク室とマグネト室の間にリードバルブを配置し、該リードバルブを介して前記クランク室から前記マグネト室へ流入させたオイルを、オイルポンプにより吸引してオイル貯留部へ供給するようにした自動二輪車エンジンの潤滑装置であって、
前記オイルポンプのオイル吸入口が、前記連通路の下端よりも低位置に配置されることを特徴とする自動二輪車エンジンの潤滑装置。
【請求項2】
前記リードバルブは前記クランク室及び前記マグネト室間の連通路に配設され、前記オイルポンプのオイル吸入口は、前記リードバルブの弁体の下端よりも低位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車エンジンの潤滑装置。
【請求項3】
前記マグネト室の底部付近を下方に膨出させてなる膨出部を有し、この膨出部に前記オイルポンプのオイル吸入口を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車エンジンの潤滑装置。
【請求項4】
前記連通路と前記膨出部との間に段差部を有し、この段差部は前記オイルポンプのオイル吸入口よりも高位置、且つ前記リードバルブの弁体の下端よりも低位置に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動二輪車エンジンの潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−47366(P2011−47366A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198481(P2009−198481)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】