説明

自動変速機の油圧制御装置

【課題】セカンダリ圧の排圧が減少することにより潤滑油路に供給される油が不足する際にも、潤滑油路に循環圧を供給することが可能な自動変速機の油圧制御装置を提供する
【解決手段】自動変速機1の油圧制御装置20は、セカンダリレギュレータバルブ24から生成される排圧PDISを油路e1,j1,k1(第1の油路)を介して潤滑油路31に供給し、発進装置6内部を循環した循環圧PCIRを油路h1,h2(第2の油路)を介して排出しており、これら油路は、連結部35を介して接続されている。該バイパス部35は、排圧PDISが不足する場合に、循環圧PCIRを潤滑油路31に供給する。これにより、潤滑油路31への油の供給が不足してしまうことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車輌等に搭載される自動変速機の油圧制御装置に係り、詳しくは、発進装置に循環圧を供給し、その排圧を潤滑油路に供給する自動変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輌等に搭載される自動変速機には、エンジンの出力を変速機構の入力軸に伝達するため発進装置が備えられており、即ち該発進装置には、流体伝動を行うことによりエンジンの出力軸(クランク軸)と変速機構の入力軸との回転数差を許容することができるトルクコンバータが備えられている。また、このような自動変速機の発進装置においては、燃費向上等を図るため、エンジンの出力軸と変速機構の入力軸とを直結状態(ロックアップ)にすることが可能なロックアップクラッチを備えたものがある。
【0003】
ところで、自動変速機には、変速歯車機構の動力伝達経路を形成するためのクラッチやブレーキが備えられており、それらクラッチやブレーキの係脱を制御するための油圧制御装置が備えられている。この油圧制御装置においては、スロットル開度に応じて制御圧を出力するソレノイドバルブと、該制御圧に基づき制御されるプライマリレギュレータバルブとが備えられており、これらによりスロットル開度に応じたライン圧が調圧されて、そのライン圧が上記クラッチやブレーキの油圧サーボなどに供給されている。一方、上述のトルクコンバータとロックアップクラッチとには、特にトルクコンバータの耐久性の向上を図るため、同様に制御圧に基づき制御されるセカンダリレギュレータバルブによって、ライン圧を減圧したセカンダリ圧を生成し、該セカンダリ圧を供給するように構成されている。
【0004】
また従来、上記のようなロックアップクラッチ付きトルクコンバータを備えた自動変速機には、上述のようにセカンダリレギュレータバルブにて生成されたセカンダリ圧をトルクコンバータのロックアップクラッチの係合やトルクコンバータ内部を循環させるために用いると共に、該セカンダリレギュレータバルブにて生成されたセカンダリ圧の排圧を潤滑油路に供給するように構成された油圧制御装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような油圧制御装置では、例えば高油温時やスロットル開度が小さい状態で、セカンダリレギュレータバルブの排圧が略々排出されない非調圧状態の時など、排圧が低くなる場合には、ロックアップクラッチがオフにされる。この際、該油圧制御装置では、排圧が低くなることに起因して、オイルクーラーや潤滑油路等への油の供給が不足することを防止するために、ロックアップクラッチを制御するロックアップリレーバルブを切換えることにより、トルクコンバータ内部を循環して排出された油が、オイルクーラーや潤滑油路等に供給されるように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−349007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、自動変速機の発進装置としては、発進クラッチを用いることが考えられている。しかし、発進クラッチを用いた発進装置では、該発進クラッチをソレノイドバルブによって電気的に係合制御を行うように構成した場合、例えば電気的フェール等によって制御が不能になってしまうと、発進クラッチが係合不能となり、駆動力が伝達できなくなる虞がある。
【0008】
このため、発進クラッチを用いた発進装置には、エンジンの出力を変速機構の入力軸に流体伝動するためのフルードカップリングを予備的に設けておくことが考えられる。このような発進装置にあっても、セカンダリレギュレータバルブにて生成されたセカンダリ圧をフルードカップリング内部の循環圧に用い、セカンダリレギュレータバルブにて生成されたセカンダリ圧の排圧をオイルクーラーや潤滑油路等に供給させるように構成することが考えられる。
【0009】
しかし、このような発進クラッチにフルードカップリングが並設された発進装置では、上記特許文献1のようにロックアップクラッチが配置されていないため、油圧制御装置にロックアップリレーバルブも配置されていない。つまり、フルードカップリング内部を循環して排出された油を、オイルクーラーや潤滑油路等に切換えて供給する構造とはならない。そして、こうした油圧制御装置において、例えばスロットル開度が0または極めて小さい場合には、セカンダリレギュレータバルブの排圧も略々排出されない非調圧状態となり、オイルクーラーや潤滑油路等に供給される油が減少し、変速機構に供給される潤滑油が不足してしまう虞があった。
【0010】
そこで本発明は、セカンダリ圧の排圧が減少することにより潤滑油路に供給される油が不足する際にも、潤滑油路に循環圧を供給することが可能な自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図5参照)、駆動源の回転を伝達し、発進時に係合される発進クラッチ(10)と該発進クラッチに並設された流体伝動装置(7)とを有する発進装置(6)と、該発進装置によって伝達された回転を変速して出力する変速機構(2)と、該変速機構に潤滑油を供給する潤滑油路(31)と、を有する自動変速機(1)の油圧制御装置(20,20)において、
前記発進装置(6)の内部を循環する循環圧(PCIR)を調圧する調圧部(24)と、
前記調圧部(24)が前記循環圧(PCIR)を調圧する際に生成される排圧(PDIS)を前記潤滑油路(31)に供給する第1の油路((e1,j1,k1)、(e1,e2,k1))と、
前記発進装置(6)より前記循環圧(PCIR)を排出する第2の油路((図4におけるh1,h2)、(図5におけるh1,h2))と、
前記第1の油路((e1,j1,k1)、(e1,e2,k1))の前記排圧(PDIS)が不足する場合に、前記第2の油路((図4におけるh1,h2)、(図5におけるh1,h2))の前記循環圧(PCIR)を前記潤滑油路(31)に供給する連結部(35,35)と、を備えた、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置(20,20)にある。
【0012】
請求項2に係る本発明は(例えば図4及び図5参照)、前記排圧(PDIS)が不足する場合とは、
前記排圧(PDIS)が所定圧力よりも低圧となる場合である、
請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置(20,20)にある。
【0013】
請求項3に係る本発明は(例えば図5参照)、前記連結部(35)は、
前記第1の油路(e1,e2,k1)に前記第2の油路(h1,h2)を接続する逆止弁接続油路(h3,l1)と、前記逆止弁接続油路(h3,l1)上に介在し、前記第1の油路(e1,e2,k1)の圧力が前記第2の油路(h1,h2)に逆流することを防止する逆止弁(28)と、からなり、
前記第2の油路(h1,h2)の前記循環圧(PCIR)が前記第1の油路(e1,e2,k1)の前記排圧(PDIS)よりも高圧となった際に、前記第2の油路(h1,h2)の前記循環圧(PCIR)を前記逆止弁接続油路(h3,l1)の前記逆止弁(28)を介して前記潤滑油路(31)に供給してなる、
請求項1または2記載の自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0014】
請求項4に係る本発明は(例えば図4参照)、前記連結部(35)は、
前記第1の油路(e1,j1,k1)に介在すると共に、前記第2の油路(h1,h2)に接続され、信号圧が入力される切換えバルブ(26)と、
該切換えバルブと前記第2の油路(h1,h2)とを接続する切換えバルブ接続油路(h3)と、
前記調圧部(24)の調圧状態に基づいて前記信号圧の出力状態を切換えるソレノイドバルブ(SO1)と、
からなり、
前記切換えバルブ(26)は、前記排圧(PDIS)が所定圧力よりも低圧となる際に、前記信号圧の出力状態を切換えることで前記第1の油路(e1,j1,k1)を遮断して、前記第2の油路(h1,h2)の前記循環圧(PCIR)を前記潤滑油路(31)に供給してなる、
請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0015】
請求項5に係る本発明は(例えば図4参照)、前記切換えバルブ(26)は、前記排圧(PDIS)が所定圧力よりも高圧となる際に、前記信号圧の出力状態を切換えることで前記第2の油路(h1,h2)を遮断して、前記第1の油路(e1,j1,k1)の前記排圧(PDIS)を前記潤滑油路(31)に供給してなる、
請求項4記載の自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0016】
請求項6に係る本発明は(例えば図4及び図5参照)、スロットル開度に応じて制御圧(PSLT)を出力する制御バルブ(SLT)と、
前記制御圧に応じて油圧発生源(21)からの油圧をライン圧(P)に調圧するプライマリレギュレータバルブ(23)と、を備え、
前記調圧部(24)は、前記制御圧(PSLT)に応じて前記ライン圧(P)より低圧なセカンダリ圧(PSEC)を調圧するセカンダリレギュレータバルブ(24)であり、
前記循環圧は、前記セカンダリレギュレータバルブ(24)により調圧されたセカンダリ圧(PSEC)である、
請求項1ないし5のいずれか記載の自動変速機の油圧制御装置(20,20)にある。
【0017】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明によると、第1の油路の排圧が不足する場合に、第2の油路の循環圧を潤滑油路に供給する連結部を備えているので、潤滑油路への油の供給が不足してしまうことを防止することができ、変速機構での潤滑不足を防止することができる。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、調圧部の排圧が所定圧力よりも低圧となる場合に第1の油路の排圧が不足状態となるが、第2の油路の循環圧を潤滑油路に油を供給することができるので、潤滑油路への油の供給が不足することを防止することができる。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、第2の油路の循環圧が第1の油路の排圧よりも高圧となった際に、第2の油路の循環圧を逆止弁接続油路の逆止弁を介して潤滑油路に供給するので、自動的に第1の油路の排圧が不足する場合に、第2の油路の循環圧を潤滑油路に供給することができるものでありながら、例えばソレノイドバルブ及び切換えバルブを備えることを不要とし、油路を接続して逆止弁を備えるだけの簡単な構成とすることができ、制御の簡素化及び油圧制御装置のコンパクト化を図ることができる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、調圧部により生成される排圧が所定圧力よりも低圧となる際に、ソレノイドバルブからの信号圧の出力状態を切換えることで切換えバルブを切換え、第2の油路の循環圧を潤滑油路に供給するので、自動的に第1の油路の排圧が不足する場合に、第2の油路の循環圧を潤滑油路に供給することができ、潤滑油路への油の供給が不足してしまうことを防止することができる。また、ソレノイドバルブを用いて潤滑油路に供給する圧力を、排圧か循環圧かを自在に切換えることができるので、潤滑不足の防止だけでなく潤滑過多の防止を図ることができる。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、調圧部により生成される排圧が所定圧力よりも高圧となる際に、ソレノイドバルブからの信号圧の出力状態を切換えることで切換えバルブを切換え、第1の油路の排圧を潤滑油路に供給するので、潤滑油路への油が必要となる場合にも、自動的に第1の油路の排圧を潤滑油路に供給することができ、潤滑油路への充分な油の供給を行うことができる。また、ソレノイドバルブを用いて潤滑油路に供給する圧力を、排圧か循環圧かを自在に切換えることができるので、潤滑不足の防止だけでなく潤滑過多の防止を図ることができる。
【0023】
請求項6に係る本発明によると、セカンダリレギュレータバルブによって調圧されたセカンダリ圧を発進装置の循環圧に用いる自動変速機の油圧制御装置に用いて好適とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図1乃至図4に沿って説明する。
【0025】
まず、本発明を適用し得る自動変速機1の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFRタイプ(フロントエンジン、リヤドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機1は、エンジン(不図示)に接続し得る自動変速機の入力軸11を有しており、該入力軸11の軸方向を中心として発進装置6と、自動変速機構(変速機構)2とを備えている。また、自動変速機1は、自動変速機構2を内包したミッションケース3を備えており、該ミッションケース3の下部には油圧制御装置20を備えている。
【0026】
上記発進装置6は、自動変速機1の入力軸11に対して接続された外摩擦板及び自動変速機構2の入力軸12に対して接続された内摩擦板を有する油圧多板式からなる発進クラッチ10と、自動変速機1の入力軸11に対して接続されたポンプインペラ7aと、作動流体を介して該ポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bとを有するフルードカップリング装置7とを備えて構成されている。また、該フルードカップリング装置7は、例えばオフフェール等で発進クラッチ10が制御不能となった場合にも、流体伝動を行うことで車輌を移動可能にし、リンポンプホーム機能を達成するものである。
【0027】
上記自動変速機構2には、入力軸12(及び中間軸13)上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
【0028】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンP3と、サンギヤS3に噛合するショートピニオンP2とを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0029】
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、ミッションケース3に一体的に固定されているボス部3bに接続されて回転が固定されている。また、上記リングギヤR1は、上記入力軸12の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチC−1及びクラッチC−3に接続されている。
【0030】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、ブレーキB−1に接続されてミッションケース3に対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
【0031】
更に、上記キャリヤCR2は、中間軸13の回転が入力されるクラッチC−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキB−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース3に対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、出力軸15に接続されており、該出力軸15は、ディファレンシャル装置を介して駆動車輪に接続されている。
【0032】
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構2の作用について図1、図2及び図3に沿って説明する。なお、図3に示す速度線図において、縦軸方向はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示しており、横軸方向はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤSPの部分において、縦軸は、図3中左方側から順に、サンギヤS1、キャリヤCR1、リングギヤR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、縦軸は、図3中右方側から順に、サンギヤS3、リングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。
【0033】
例えばD(ドライブ)レンジ(前進レンジ)であって、最低変速段としての前進1速段(1ST)では、図2に示すように、クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進1速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
【0034】
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば前進レンジ以外のシフトレンジから前進レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
【0035】
前進2速段(2ND)では、図2に示すように、クラッチC−1が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
【0036】
前進3速段(3RD)では、図2に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−3の係合によりキャリヤCR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にキャリヤCR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR2に出力され、前進3速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
【0037】
前進4速段(4TH)では、図2に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−2が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進3速段より高い減速回転となってリングギヤR2に出力され、前進4速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
【0038】
前進5速段(5TH)では、図2に示すように、クラッチC−2及びクラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進5速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
【0039】
前進6速段(6TH)では、図2に示すように、クラッチC−2が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進5速段より高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進6速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
【0040】
後進1速段(REV)では、図2に示すように、クラッチC−3が係合され、ブレーキB−2が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、後進1速段としての逆転回転が出力軸15から出力される。
【0041】
なお、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、クラッチC−1、クラッチC−2、及びクラッチC−3、が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤSPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となり、かつ、入力軸12とキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸12とプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸12と出力軸15との動力伝達が切断状態となる。
【0042】
つづいて、本第1の実施の形態に係る自動変速機1の油圧制御装置20について説明する。自動変速機1の油圧制御装置20は、図4に示すように、ストレーナ22、オイルポンプ(油圧発生源)21、発進クラッチリニアソレノイドバルブSL1、リニアソレノイドバルブ(制御バルブ)SLT、プライマリレギュレータバルブ23、セカンダリレギュレータバルブ(調圧部)24、循環圧調圧バルブ25、ドレンチェックバルブ27、連結部35、オイルクーラー(COOLER)30、潤滑油路(LUBE)31等を備えて構成されている。
【0043】
なお、自動変速機1の油圧制御装置20には、図4に示した部分の他に、上記自動変速機構2のクラッチやブレーキの油圧サーボに油圧を供給するための各種バルブや油路などが備えられているが、説明の便宜上、本発明の要部を除き、省略して説明する。
【0044】
図4に示すように、自動変速機1の油圧制御装置20は、エンジンの回転に連動して駆動されるオイルポンプ21を備えており、該オイルポンプ21により不図示のオイルパンからストレーナ22を介してオイルを吸上げる形で油圧を発生させている。上記オイルポンプ21により発生された油圧は、出力ポート21aより油路a1,a2,a3,a4,a5に出力されると共に、詳しくは後述するプライマリレギュレータバルブ23によって調圧される。
【0045】
リニアソレノイドバルブSLTは、不図示の電子制御装置からの信号に基づき、スロットル開度に応じて位置が電子制御(リニア駆動)されるプランジャと、スプールと、該スプールを上記プランジャ側に付勢するスプリングとが備えられており、また、モジュレータ圧PMODが入力される入力ポートが備えられている。このように構成されたリニアソレノイドバルブSLTは、例えば不図示の運転席のアクセルペダルが踏まれ、スロットル開度が大きくなると、該スロットル開度に応じて電子制御によりプランジャが移動駆動される。そして、上記スプールが、上記プランジャの押圧駆動によりスプリングの付勢力に反して移動制御されると、入力ポートと出力ポートとの連通状態がスプールの移動量に伴って開いていき、それによって、スロットル開度の大きさに比例する形で出力ポートから制御圧PSLTが油路b1に出力される。
【0046】
プライマリレギュレータバルブ23は、スプール23pと、該スプール23pを上方に付勢するスプリング23sとを備えていると共に、該スプール23pの下方に油室23aと、該スプール23pの上方に油室23bと、調圧ポート23cと、排出ポート23dと、出力ポート23eとを備えている。上記油室23aには、上述のリニアソレノイドバルブSLTより油路b1を介して制御圧PSLTが入力され、また、油室23bには、詳しくは後述するライン圧Pが油路a2,a4を介してフィードバック圧として入力される。
【0047】
該プライマリレギュレータバルブ23のスプール23pには、上記フィードバック圧に対向してスプリング23sの付勢力と制御圧PSLTとが作用し、即ち、該スプール23pの位置は、主に制御圧PSLTの大きさによって制御される。該スプール23pが図中の右半分で示す位置(以下、「右半位置」という)の状態であると、調圧ポート23cと排出ポート23d及び出力ポート23eとが連通し、また、スプール23pが図中の左半分示す位置(以下、「左半位置」という)の状態に移動制御されると、調圧ポート23cと排出ポート23d及び出力ポート23eとの連通量(絞り量)が絞られて(遮断されて)いく。つまり上記油室23aに入力される制御圧PSLTの大きさによってスプール23pが左半位置となる上方側に向けて移動制御されると共に、排出ポート23d及び出力ポート23eより排出される油圧量が調整されることで調圧ポート23cの油圧が調圧され、これによって油路a1,a2,a3,a4,a5の油圧がスロットル開度に応じたライン圧Pとして調圧される。
【0048】
排出ポート23dより排出された油圧は、油路d1,d3を介してオイルポンプ21のポート21bに戻され、オイルポンプ21の元圧となるため、結果的にオイルポンプ21が必要な駆動力を下げることとなり、無駄なエネルギを消費することを防ぐことができ、自動変速機の油圧制御装置20を備える車輌の燃費向上に寄与することが可能となる。
【0049】
セカンダリレギュレータバルブ24は、スプール24pと、該スプール24pを上方に付勢するスプリング24sとを備えていると共に、該スプール24pの上方に油室24aと、該スプール24pの上方に油室24aと、調圧ポート24bと、排出ポート24cと、出力ポート24dとが形成されて構成されている。また、油室24aには、詳しくは後述するセカンダリ圧PSECがフィードバック圧として入力される。
【0050】
セカンダリレギュレータバルブ24のスプール24pの位置は、図中の左半位置の状態であると、調圧ポート24bと排出ポート24c及び出力ポート24dとが連通し、また、スプール24pが図中の右半位置の状態に移動制御されると、調圧ポート24bと排出ポート24c及び出力ポート24dとの連通量(絞り量)が絞られて(遮断されて)いく。つまりプライマリレギュレータバルブ23の出力ポート23eから出力され、上記油室24aに入力されるフィードバック圧の大きさによってスプール24pが移動制御されると共に、排出ポート24c及び出力ポート24dより排出される油圧量が調整されることで調圧ポート24bの油圧が調圧され、これによって油路c1,c2,c3,c4の油圧がスロットル開度に応じたセカンダリ圧PSECとして調圧される。
【0051】
排出ポート24cより排出された油圧は、上述のプライマリレギュレータバルブ23から排出された油圧と同様に、油路d2,d3を介してオイルポンプ21のポート21bに戻され、オイルポンプ21の元圧となるため、結果的にオイルポンプ21が必要な駆動力を下げることとなり、無駄なエネルギを消費することを防ぐことができ、自動変速機1の油圧制御装置20を備える車輌の燃費向上に寄与することが可能となる。
【0052】
また、出力ポート24dより油路e1に出力された油圧は、セカンダリレギュレータバルブ24から排出された排圧PDISとして、油路e1,j1,k1(第1の油路)と、これら油路e1,j1,k1に介在し、詳しくは後述する連結部35を介してオイルクーラー30及び潤滑油路31に供給される。
【0053】
発進クラッチリニアソレノイドバルブSL1は、不図示の電子制御装置からの信号に基づき、発進クラッチ10の係合制御に応じて位置が電子制御(リニア駆動)されるプランジャと、スプールと、該スプールを上記プランジャ側に付勢するスプリングとが備えられており、また、ライン圧Pが入力される入力ポートが備えられている。このように構成された発進クラッチリニアソレノイドバルブSL1は、例えば発進クラッチ10の係合制御が始まると、電子制御によりプランジャが移動駆動される。そして、上記スプールが、上記プランジャの押圧駆動によりスプリングの付勢力に反して移動制御されると、入力ポートと出力ポートとの連通状態がスプールの移動量に伴って開いていき、それによって、出力ポートから制御圧PSL1が油路g1に出力され、発進装置6の入力ポート7cに入力される。
【0054】
循環圧調圧バルブ25は、スプール25pと、該スプール25pを上方に付勢するスプリング25sとを備えていると共に、該スプール25pの上方に油室25aと、上記セカンダリ圧PSECが入力される入力ポート25bと、出力ポート25cとを備えている。また、油室25aには、詳しくは後述する循環圧PCIRがフィードバック圧として入力される。
【0055】
循環圧調圧バルブ25のスプール25pの位置は、図中の左半位置の状態であると、入力ポート25bと出力ポート25cとが連通し、また、スプール25pが図中の右半位置の状態に移動されると入力ポート25bと出力ポート25cとの連通量(絞り量)が絞られて(遮断されて)いく。つまり入力ポート25bに入力されるセカンダリ圧PSECが大きくなると油室25aに入力されるフィードバック圧も大きくなり、入力ポート25bと出力ポート25cとの連通量が絞られていく。これによって出力ポート25cより排出される油圧量が調整されることで、油路f1,f2,f3の油圧が循環圧PCIRとして調圧され、発進装置6の循環圧入力ポート7dに入力される。
【0056】
また、発進装置6に入力された循環圧PCIRは、発進クラッチ10の冷却及びフルードカップリング装置7の作動流体として循環した後、循環圧出力ポート7eから油路h1,h2(第2の油路)を介してドレンチェックバルブ27からドレーンされる。また、循環圧PCIRは、油路h1,h2に接続された油路h3によって後述する連結部35に出力される。
【0057】
次に、本発明の要部となる連結部35について説明する。本発明の第1の実施の形態に係る自動変速機1の油圧制御装置20における連結部35は、ソレノイドバルブSO1、シフトバルブ(切換えバルブ)26、及び上記循環圧PCIRが排出される油路h1,h2に接続される油路h3(切換えバルブ接続油路)を備えて構成されている。
【0058】
ソレノイドバルブSO1(例えばノーマルクローズ)は、モジュレータ圧PMODが入力される入力ポートと出力ポートとを有している。該ソレノイドバルブSO1は、OFF状態(非通電状態)には入力ポートと出力ポートとが遮断されており、不図示の電子制御装置からの信号に基づきON状態(通電状態)になると、入力ポートと出力ポートとが連通され、該出力ポートより入力ポートに入力されているモジュレータ圧PMODを信号圧PSO1として略そのまま出力する。該出力ポートより出力された信号圧PSO1は、油路i1を介して後述のシフトバルブ26の油室26aに入力される。
【0059】
なお、ソレノイドバルブSO1は、非通電時に入力ポートと出力ポートとが遮断される、いわゆるノーマルクローズタイプものを説明したが、反対に非通電時に入力ポートと出力ポートとが連通される、いわゆるノーマルオープンタイプものであってもよく、この際は、信号圧PSO1を出力しない状態で通電されることになる。
【0060】
シフトバルブ26は、スプール26pと、該スプール26pを上方に付勢するスプリング26sとを備えていると共に、該スプール26sの上方に油室26aと、入力ポート26bと、入力ポート26cと、出力ポート26dとを備えている。
【0061】
上記油室26aには、油路i1を介して上記ソレノイドバルブSO1の出力ポートが接続されており、該ソレノイドバルブSO1より信号圧PSO1が出力されると、該信号圧PSO1が入力される。即ち、シフトバルブ26は、ソレノイドバルブSO1より信号圧PSO1が出力されていない状態では、図中の左半位置となり、該ソレノイドバルブSO1より信号圧PSO1が出力された状態では、図中の右半位置となる。
【0062】
シフトバルブ26のスプール26pが左半位置であると、入力ポート26cと出力ポート26dとが遮断され、入力ポート26bと出力ポート26dとが連通状態となり、該スプール26pが右半位置であると、入力ポート26bと出力ポート26dとが遮断され、入力ポート26cと出力ポート26dとが連通状態となる。
【0063】
上記ソレノイドバルブSO1がOFF状態であると、油室26aに油圧が入力されずスプリング26sの付勢力に基づきスプール26pが左半位置となる。すると、油路e1を介して入力ポート26bに入力されているセカンダリ圧の排圧PDISが出力ポート26dより出力され、油路j1を介してオイルクーラー30に供給され、その後油路k1を介して潤滑油路31に供給される。
【0064】
また、上記ソレノイドバルブSO1がON状態であると、油室26aに上記信号圧PSO1が入力され、スプリング26sの付勢力に反してスプール26pが右半位置となる。すると、油路h1,h3を介して入力ポート26cに入力されている循環圧PCIRがポート26dより出力され、油路j1を介してオイルクーラー30に供給され、その後油路k1を介して潤滑油路31に供給される。
【0065】
以上のように構成された連結部35におけるソレノイドバルブSO1は、通常時にOFF状態となっており、セカンダリ圧の排圧PDISが、潤滑油路31に供給される。ここで、例えばスロットル開度が0または極めて小さい場合には、上述のようにセカンダリレギュレータバルブ24の排圧も略々排出されない非調圧状態となる。即ち、ソレノイドバルブSO1は、スロットル開度が0または極めて小さい場合に、ON状態となるように設定しており、上記循環圧PCIRが潤滑油路31に供給され、自動変速機構2の潤滑不足を防止することができる。
【0066】
なお、ソレノイドバルブSO1は、スロットル開度が0または極めて小さい場合にOFF状態からON状態に切換わるように説明したが、これに限らず、潤滑油路31に排圧PDISまたは循環圧PCIRが充分に供給される状態であればどのようなタイミングで切換わるように設定しても本発明を適用することができる。
【0067】
ところで、フルードカップリング装置7を循環した循環圧PCIRは圧力がほぼ0に近い状態でフルードカップリング装置7から排出される場合がある。このとき、油路e1と油路h1,h2を直接繋げてしまうと、フルードカップリング装置7から排出された油の圧力がセカンダリレギュレータバルブ24の排圧PDISより低い場合が存在する。すると、その様な場合に、排圧PDISがフルードカップリング装置7に逆流してしまう虞がある。従って、本第1の実施の形態の様に油路e1と油路h1,h2の間にシフトバルブ26と油路h3(切換えバルブ接続油路)とソレノイドバルブSO1からなる連結部35を設けることで、排圧PDISがフルードカップリング装置7に逆流することなく、かつセカンダリレギュレータバルブ24が非調圧状態で排圧が略0に近い状態になってもクーラー30や潤滑油路31へ十分な油の供給を行うことができる。
【0068】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る自動変速機の油圧制御装置20によると、油路e1,j1,k1に供給されるセカンダリ圧の排圧PDISが不足する場合に、油路h1,h2に供給される循環圧PCIRを潤滑油路31に供給する連結部35を備えているので、潤滑油路31への油の供給が不足してしまうことを防止することができ、自動変速機構2での潤滑不足を防止することができる。
【0069】
また、セカンダリレギュレータバルブ24の排圧PDISが所定圧力よりも低圧となる場合に油路e1,j1,k1の排圧PDISが不足状態となるが、油路h1,h2の循環圧PCIRを潤滑油路31に油を供給することができるので、潤滑油路31への油の供給が不足することを防止することができる。
【0070】
さらに、セカンダリレギュレータバルブ24により生成される排圧PDISが所定圧力よりも低圧となる際に、ソレノイドバルブSO1からの信号圧PSO1の出力状態を切換えることでシフトバルブ26を切換え、油路h1,h2の循環圧PCIRを潤滑油路31に供給するので、自動的に油路e1,j1,k1の排圧PDISが不足する場合に、油路h1,h2の循環圧PCIRを潤滑油路31に供給することができ、潤滑油路31への油の供給が不足してしまうことを防止することができる。また、ソレノイドバルブSO1を用いて潤滑油路31に供給する圧力を、排圧PDISか循環圧PCIRかを自在に切換えることができるので、潤滑不足の防止だけでなく潤滑過多の防止を図ることができる。
【0071】
また、セカンダリレギュレータバルブ24により生成される排圧PDISが所定圧力よりも高圧となる際に、ソレノイドバルブSO1からの信号圧PSO1の出力状態を切換えることでシフトバルブ26を切換え、油路e1,j1,k1の排圧PDISを潤滑油路31に供給するので、潤滑油路31への油が必要となる場合にも、自動的に油路e1,j1,k1の排圧PDISを潤滑油路31に供給することができ、潤滑油路31への充分な油の供給を行うことができる。また、ソレノイドバルブSO1を用いて潤滑油路31に供給する圧力を、排圧PDISか循環圧PCIRかを自在に切換えることができるので、潤滑不足の防止だけでなく潤滑過多の防止を図ることができる。
【0072】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について、図5に沿って説明する。図5は第2の実施の形態に係る自動変速機1の油圧制御装置20を示す図である。なお、本第2の実施の形態においては、一部の変更部分を除き、上記第1の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
本第2の実施の形態に係る自動変速機1の油圧制御装置20は、図5に示すように、上述の自動変速機1の油圧制御装置20に対して、連結部35を備えて構成したものである。
【0074】
連結部35は、油路e1,e2(第1の油路)と油路h1,h2(第2の油路)とを接続する接続油路(逆止弁接続油路)h3,l1及び該接続油路h3,l1上に配置された逆止弁28を備えて構成されている。該逆止弁28は、排圧PDISが供給される油路l1側から、循環圧PCIRが供給される油路h3側に油が逆流することを防止するものである。即ち、逆止弁28は、循環圧PCIRに比して排圧PDISが充分に高圧である通常時は、油路h3側に油が逆流することを防止し、排圧PDISに比して循環圧PCIRが高圧となる場合には、循環圧PCIRを油路l1側に供給するように構成されている。これによって、油路l1側の排圧PDISが不足する場合にも、自動的に該排圧PDISよりも高圧な循環圧PCIRが潤滑油路31に供給されるようにすることができる。
【0075】
ところで、フルードカップリング装置7を循環した循環圧PCIRは圧力がほぼ0に近い状態でフルードカップリング装置7から排出される場合がある。このとき、油路e1,e2と油路h1,h2を直接繋げてしまうと、フルードカップリング装置7から排出された油の圧力がセカンダリレギュレータバルブ24の排圧PDISより低い場合が存在する。すると、その様な場合に、排圧PDISがフルードカップリング装置7に逆流してしまう虞がある。従って、本第2の実施の形態の様に油路e1,e2と油路h1,h2の間に逆止弁28と油路h3,l1(逆止弁接続油路)からなる連結部35を設けることで、排圧PDISがフルードカップリング装置7に逆流することなく、かつセカンダリレギュレータバルブ24が非調圧状態で排圧が略0に近い状態になってもクーラー30や潤滑油路31へ十分な油の供給を行うことができる。
【0076】
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係る自動変速機の油圧制御装置20によると、油路h1,h2の循環圧PCIRが油路e1,e2の排圧PDISよりも高圧となった際に、油路h1,h2の循環圧PCIRを接続油路h3,l1の逆止弁28を介して潤滑油路31に供給するので、自動的に油路e1,e2の排圧PDISが不足する場合に、油路h1,h2の循環圧PCIRを潤滑油路31に供給することができるものでありながら、例えばソレノイドバルブ及び切換えバルブを備えることを不要とし、油路を接続して逆止弁を備えるだけの簡単な構成とすることができ、制御の簡素化及び油圧制御装置20のコンパクト化を図ることができる。
【0077】
なお、第1及び第2の実施の形態においては、リニアソレノイドバルブSLT及びソレノイドバルブSO1の元圧としてモジュレータ圧PMODを用いるものについて説明したが、制御圧PSLTや信号圧PSO1として機能し得る油圧が出力できるものであれば、どのような元圧を用いてもよい。
【0078】
また、第1及び第2の実施の形態においては、本自動変速機1の油圧制御装置20を前進6速段、及び後進1速段を可能とする自動変速機1に適用する場合を一例として説明したが、勿論これに限るものではなく、例えば前進8速段を達成する自動変速機に適用してもよく、つまり変速段の段数はどのようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る自動変速機を示すスケルトン図。
【図2】本自動変速機構の係合表。
【図3】本自動変速機構の速度線図。
【図4】第1の実施の形態に係る自動変速機の油圧制御装置を示す回路図。
【図5】第2の実施の形態に係る自動変速機の油圧制御装置を示す回路図。
【符号の説明】
【0080】
1 自動変速機
2 変速機構(自動変速機構)
6 発進装置
7 流体伝動装置(フルードカップリング装置)
10 発進クラッチ
20,20 油圧制御装置
21 油圧発生源(オイルポンプ)
23 プライマリレギュレータバルブ
24 調圧部(セカンダリレギュレータバルブ)
26 切換えバルブ(シフトバルブ)
28 逆止弁
31 潤滑油路
35,35 連結部
(図4におけるe1,j1,k1)、(図5におけるe1,e2,k1) 第1の油路
(図4におけるh1,h2)、(図5におけるh1,h2) 第2の油路
図5におけるh3,l1 逆止弁接続油路
図4におけるh3 切換えバルブ接続油路
CIR 循環圧
DIS 排圧
ライン圧
SEC セカンダリ圧
SLT 制御圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の回転を伝達し、発進時に係合される発進クラッチと該発進クラッチに並設された流体伝動装置とを有する発進装置と、該発進装置によって伝達された回転を変速して出力する変速機構と、該変速機構に潤滑油を供給する潤滑油路と、を有する自動変速機の油圧制御装置において、
前記発進装置の内部を循環する循環圧を調圧する調圧部と、
前記調圧部が前記循環圧を調圧する際に生成される排圧を前記潤滑油路に供給する第1の油路と、
前記発進装置より前記循環圧を排出する第2の油路と、
前記第1の油路の前記排圧が不足する場合に、前記第2の油路の前記循環圧を前記潤滑油路に供給する連結部と、を備えた、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記排圧が不足する場合とは、
前記排圧が所定圧力よりも低圧となる場合である、
請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記連結部は、
前記第1の油路に前記第2の油路を接続する逆止弁接続油路と、前記逆止弁接続油路上に介在し、前記第1の油路の圧力が前記第2の油路に逆流することを防止する逆止弁と、からなり、
前記第2の油路の前記循環圧が前記第1の油路の前記排圧よりも高圧となった際に、前記第2の油路の前記循環圧を前記逆止弁接続油路の前記逆止弁を介して前記潤滑油路に供給してなる、
請求項1または2記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記連結部は、
前記第1の油路に介在すると共に、前記第2の油路に接続され、信号圧が入力される切換えバルブと、
該切換えバルブと前記第2の油路とを接続する切換えバルブ接続油路と、
前記調圧部の調圧状態に基づいて前記信号圧の出力状態を切換えるソレノイドバルブと、からなり、
前記切換えバルブは、前記排圧が所定圧力よりも低圧となる際に、前記信号圧の出力状態を切換えることで前記第1の油路を遮断して、前記第2の油路の前記循環圧を前記潤滑油路に供給してなる、
請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記切換えバルブは、前記排圧が所定圧力よりも高圧となる際に、前記信号圧の出力状態を切換えることで前記第2の油路を遮断して、前記第1の油路の前記排圧を前記潤滑油路に供給してなる、
請求項4記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
スロットル開度に応じて制御圧を出力する制御バルブと、
前記制御圧に応じて油圧発生源からの油圧をライン圧に調圧するプライマリレギュレータバルブと、を備え、
前記調圧部は、前記制御圧に応じて前記ライン圧より低圧なセカンダリ圧を調圧するセカンダリレギュレータバルブであり、
前記循環圧は、前記セカンダリレギュレータバルブにより調圧されたセカンダリ圧である、
請求項1ないし5のいずれか記載の自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−133500(P2010−133500A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310550(P2008−310550)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】