説明

自動車およびその制御方法

【課題】運転者の意図を反映しながら車両の振動を抑制する。
【解決手段】ノーマルモードが設定されているときには、値kset1を設定した制御ゲインkvと値Tset1を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定し(S170,S180,S210,S220)、パワーモードが設定されているときには、値kset1より大きな値kset2を設定した制御ゲインkvと値Tset1より大きな値Tset2を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定し(S190〜S220)、設定した制振トルクTvを用いてモータMG2による制振制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車およびその制御方法に関し、詳しくは、走行用の動力を入出力可能な電動機と電動機と電力をやりとり可能な二次電池とを備える自動車およびこうした自動車の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車としては、駆動軸に接続されたモータの回転角加速度により車両の駆動力変動を検出し、検出した駆動力変動とは逆位相の変動トルクによりモータのトルク指令を補正して制振制御を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、制振のための制御ゲインをエンジン始動動作や停止動作の都度に学習することにより、車両ごとの振動特性のばらつきや経時変化に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−24022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした自動車では、制振トルクの大きさによって車両の振動(ピッチングやヨー)の抑制程度やエネルギ効率の低下程度などが異なる。したがって、パワー出力の応答性の優先を指示するパワーモードスイッチが設けられている自動車において、パワーモードスイッチのオンオフに拘わらず同様の制振トルクを用いて制振制御を行なうものとすると、車両の振動の抑制程度やエネルギ効率の低下程度などが運転者の意図を反映したものとはならない場合がある。
【0005】
本発明の自動車およびその制御方法は、運転者の意図を反映しながら車両の振動を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動車は、
走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、を備える自動車であって、
パワー出力の応答性の優先を指示するパワー優先指示スイッチと、
前記駆動軸に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記設定された要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制振トルクより大きな第2の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記設定された要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動車では、パワー出力の応答性の優先を指示するパワー優先指示スイッチがオフのときには、第1の制振トルクを用いた電動機による制振制御を伴って駆動軸に要求される要求トルクに基づくトルクにより走行するよう電動機を制御する。一方、パワー優先指示スイッチがオンのときには、第1の制振トルクより大きな第2の制振トルクを用いた電動機による制振制御を伴って要求トルクに基づくトルクにより走行するよう電動機を制御する。これにより、パワー優先指示スイッチがオフのときには、制振トルクを大きくすることによる不都合(例えば、ロスの増加などによるエネルギ効率の低下や、電動機からの出力トルクが値0近傍のときのギヤの歯打ちの発生頻度の増加やノイズレベルの上昇など)を抑制しつつ車両の振動(ピッチングやヨー)を抑制することができ、パワー優先指示スイッチがオンのときには、車両の振動をより抑制して加速要求時にその加速要求に対するパワー出力の応答性の向上を図ることができる。即ち、運転者の意図を反映しながら車両の振動を抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の自動車において、前記制御手段は、前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制御ゲインを用いて前記第1の制振トルクを設定し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制御ゲインより大きな第2の制御ゲインを用いて前記第2の制振トルクを設定する手段である、ものとすることもできるし、前記制御手段は、前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制限トルクで制限を課して前記第1の制振トルクを設定し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制限トルクより大きな第2の制限トルクで制限を課して前記第2の制振トルクを設定する手段である、ものとすることもできる。いずれの手法を用いても或いは双方の手法を用いても、パワー優先指示スイッチがオフのときに比して大きな制振トルクが設定されるようにすることができる。
【0010】
また、本発明の自動車において、内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、を備え、前記電動機は、前記駆動軸に接続されてなる、ものとすることもできる。
【0011】
本発明の自動車の制御方法は、
走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、パワー出力の応答性の優先を指示するパワー優先指示スイッチと、を備える自動車の制御方法であって、
前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記駆動軸に要求される要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制振トルクより大きな第2の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
この本発明の自動車の制御方法では、パワー出力の応答性の優先を指示するパワー優先指示スイッチがオフのときには、第1の制振トルクを用いた電動機による制振制御を伴って駆動軸に要求される要求トルクに基づくトルクにより走行するよう電動機を制御する。一方、パワー優先指示スイッチがオンのときには、第1の制振トルクより大きな第2の制振トルクを用いた電動機による制振制御を伴って要求トルクに基づくトルクにより走行するよう電動機を制御する。これにより、パワー優先指示スイッチがオフのときには、制振トルクを大きくすることによる不都合(例えば、ロスの増加などによるエネルギ効率の低下や、電動機からの出力トルクが値0近傍のときのギヤの歯打ちの発生頻度の増加やノイズレベルの上昇など)を抑制しつつ車両の振動(ピッチングやヨー)を抑制することができ、パワー優先指示スイッチがオンのときには、車両の振動をより抑制して加速要求時にその加速要求に対するパワー出力の応答性の向上を図ることができる。即ち、運転者の意図を反映しながら車両の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】制御用アクセル開度設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図6】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【図10】変形例のハイブリッド自動車420の構成の概略を示す構成図である。
【図11】変形例の電気自動車520の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0016】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0017】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0018】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2や回転数Nm1,Nm2を演算したり、リングギヤ軸32aに換算した駆動輪63a,63bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbをモータMG2の回転角速度ωm2に基づいて演算したりしている。実施例では、駆動輪回転角速度ωbは、モータMG2から駆動輪39a,39bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとした。
【0019】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOC残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,パワー出力の応答性の優先を指示するパワーモードスイッチ89からのパワーモードスイッチ信号PSWなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。ここで、パワーモードスイッチ89は、運転者のアクセルペダル83の操作に対するある程度のパワー出力の応答性と燃費との両立を図るノーマルモードと、ノーマルモードに比して運転者のアクセルペダル83の操作に対するパワー出力の応答性の優先を図るパワーモードとを切り替えるスイッチであり、パワーモードスイッチ89がオフ(パワーモードスイッチ信号PSWがオフ)のときにはノーマルモードが設定され、パワーモードスイッチ89がオン(パワーモードスイッチ信号PSWがオン)のときにはパワーモードが設定される。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に応じたアクセル開度と車速とに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0022】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0023】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,モータMG2の回転角速度ωm2,駆動輪回転角速度ωb,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,パワーモードフラグFpwなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1の回転数Nm1は、回転位置検出センサ43により検出されたモータMG1の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとし、モータMG2の回転数Nm2や回転角速度ωm2,駆動輪回転角速度ωbは、回転位置検出センサ44により検出されたモータMG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。パワーモードフラグFpwは、パワーモードスイッチ89からのパワーモードスイッチ信号PSWがオフのとき(ノーマルモードが設定されているとき)には値0が設定され、パワーモードスイッチ信号PSWがオンのとき(パワーモードが設定されているとき)には値1が設定される。
【0024】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度AccとパワーモードフラグFpwとに基づいて制御上のアクセル開度としての制御用アクセル開度Acc*を設定する(ステップS110)。ここで、制御用アクセル開度Acc*は、実施例では、アクセル開度AccとパワーモードフラグFpwと制御用アクセル開度Acc*との関係を予め定めて制御用アクセル開度設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度AccとパワーモードフラグFpwとが与えられると記憶したマップから対応する制御用アクセル開度Acc*を導出して設定するものとした。制御用アクセル開度設定用マップの一例を図3に示す。図3の例では、パワーモードフラグFpwが値0のとき即ちノーマルモードが設定されているときの制御用アクセル開度Acc*は、アクセル開度Accを設定するものとした。一方、パワーモードフラグFpwが値1のとき即ちパワーモードが設定されているときの制御用アクセル開度Acc*は、アクセル開度Accが低開度領域(例えば、15%以下や20%以下などの領域)内のときには低車速時における車両の飛び出し感を抑制するためにアクセル開度Accを設定するものとし、アクセル開度Accが低開度領域外のときにはアクセル操作に対するパワー出力の応答性を向上させるためにノーマルモードが設定されているときに比して大きな値を設定するものとした。
【0025】
続いて、制御用アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS120)。要求トルクTr*は、実施例では、制御用アクセル開度Acc*と車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、制御用アクセル開度Acc*と車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めたりすることができる。
【0026】
そして、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS130)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0027】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクであるトルク指令Tm1*を計算し(ステップS140)、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを式(3)により計算する(ステップS150)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)や式(3)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0028】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
【0029】
次に、パワーモードフラグFpwの値を調べ(ステップS160)、パワーモードフラグFpwが値1のとき即ちノーマル走行モードが設定されているときには、制振トルクを設定するための制御ゲインkvに値kset1を設定すると共に(ステップS170)、制振トルクの大きさ(正側および負側の大きさ)を制限するための制限トルクTlimに値Tset1を設定し(ステップS180)、次式(4)により駆動輪回転角速度ωbとモータ回転角速度ωm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものとの差に制御ゲインkvを乗じた値として仮の制振トルクTvtmpを設定し(ステップS210)、式(5)に示すように、仮制振トルクTvtmpの大きさ(正側および負側の大きさ)を制限トルクTlimによって制限することにより制振トルクTvを設定する(ステップS220)。そして、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(6)および式(7)により計算し(ステップS230)、式(8)に示すように、仮トルクTm2tmpに制振トルクTvを加えたものをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限することによりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS240)。ここで、制御ゲインkvとして設定した値kset1は、車両の振動を抑制することができる程度に設定されたものであり、実験などにより求めることができる。また、制限トルクTlimとして設定した値Tset1は、車両の振動を抑制することができる程度に制振トルクTvの大きさを制限するために設定されたものであり、実験などにより定めることができる。
【0030】
Tvtmp=kv(ωb-ωm2/Gr) (4)
Tv=max(min(Tvtmp,Tlim),-Tlim) (5)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (6)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (7)
Tm2*=max(min(Tm2tmp+Tv,Tm2max),Tm2min) (8)
【0031】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS250)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、車両の振動(ピッチングやヨー)を抑制しながら、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0032】
一方、ステップS160でパワーモードフラグFpwがオンのとき即ちパワーモードが設定されているときには、運転者がパワー出力の応答性の優先を要求していると判断し、ノーマルモードが設定されているときの値kset1より大きな値kset2を制御ゲインkvに設定すると共に(ステップS190)、ノーマルモードが設定されているときの値Tset1より大きな値Tset2を制限トルクTlimに設定し(ステップS200)、設定した制御ゲインkvと制限トルクTlimとを前述の式(4)および式(5)に適用して制振トルクTvを設定し(ステップS210,S220)、前述の式(6)〜(8)によりモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS230,S240)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS250)、駆動制御ルーチンを終了する。このように、パワーモードが設定されているときには、ノーマルモードが設定されているときに比して大きな制御ゲインkvと制限トルクTlimとを用いることによって大きな制振トルクTvが設定されるようにすることにより、ノーマルモードが設定されているときに比して車両の振動(ピッチングやヨー)をより抑制することができる。この結果、運転者による加速要求時にその加速要求に対するパワー出力の応答性の向上を図ることができる。なお、この場合、大きな制振トルクTvが設定されるようにすることにより、ロスの増加などによってエネルギ効率の低下やモータMG2による発熱の増加を招いたり、モータMG2からの出力トルクが値0近傍のときのギヤの歯打ちの発生頻度の増加やノイズレベルの上昇を招いたりする。ノーマルモードが設定されているときには、パワーモードが設定されているときに比して小さな制御ゲインkvと制限トルクTlimとを用いることによって小さな制振トルクTvが設定されるようにすることにより、こうした不都合を解消しつつ車両の振動を抑制することができる。
【0033】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、ノーマルモードが設定されているときには、値kset1を設定した制御ゲインkvと値Tset1を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定してモータMG2による制振制御を行ない、パワーモードが設定されているときには、値kset1より大きな値kset2を設定した制御ゲインkvと値Tset1より大きな値Tset2を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定してモータMG2による制振制御を行なうから、前者の場合には制振トルクTvを大きくすることによる不都合を抑制しつつ車両の振動を抑制することができ、後者の場合には車両の振動をより抑制して加速要求時にその加速要求に対するパワー出力の応答性の向上を図ることができる。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、パワーモードが設定されているときには、ノーマルモードが設定されているときの制御ゲインkvに値kset1より大きな値kset2を設定すると共に制限トルクTlimにノーマルモードが設定されているときの値Tset1より大きな値Tse2を設定し、この制御ゲインkvと制限トルクTlimとを用いてノーマルモードが設定されているときより大きな制振トルクTvを設定してモータMG2による制振制御を行なうものとしたが、ノーマルモードが設定されているときに比して大きな制振トルクTvを設定してモータMG2による制振制御を行なうものであればよいから、制御ゲインkvにはノーマルモードが設定されているときの値kset1より大きな値kset2を設定するが制限トルクTlimにはノーマルモードが設定されているときと同様の値Tset1を設定するものとしたり、逆に、制限トルクTlimにはノーマルモードが設定されているときの値Tset1より大きな値Tset2を設定するが制御ゲインkvにはノーマルモードが設定されているときと同様に値kset1を設定するものとしたりしても構わない。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動輪回転角速度ωbについては、モータMG2から駆動輪63a,63bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、駆動輪63a,63bに車輪速センサを取り付けて車輪速センサからの信号に基づいて演算するものなどとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図7の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図7における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すると共にモータMG2からの動力を減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪63a,63bに接続された駆動軸に変速機230を介してモータMGを取り付け、モータMGの回転軸にクラッチ229を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機230とを介して駆動軸に出力すると共にモータMGからの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。また、図9の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22からの動力を変速機330を介して駆動輪63a,63bに接続された車軸に出力すると共にモータMGからの動力を駆動輪63a,63bが接続された車軸とは異なる車軸(図9における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。さらに、図10の変形例のハイブリッド自動車420に例示するように、エンジン22と、エンジン22からの動力により発電する発電機430と、発電機430やバッテリ50からの電力を用いて走行用の動力を出力するモータMGと、を備えるものとしても構わない。あるいは、図11の変形例の電気自動車520に例示するように、エンジンを備えないと共に走行用の動力を出力するモータMGを備える単純な電気自動車に適用するものとしてもよい。即ち、走行用の動力を入出力可能な電動機と、電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、を備えるものであれば、如何なるタイプのハイブリッド自動車や電気自動車としてもよいのである。
【0038】
また、ハイブリッド自動車や電気自動車の形態だけでなく、ハイブリッド自動車や電気自動車の制御方法の形態としてもよい。
【0039】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、パワーモードスイッチ89が「パワー優先指示スイッチ」に相当し、アクセル開度AccとパワーモードフラグFpwとを用いて得られる制御用アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する図2の駆動制御ルーチンのステップS120の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求トルク設定手段」に相当し、ノーマルモードが設定されているときには、値kset1を設定した制御ゲインkvと値Tset1を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定し、パワーモードが設定されているときには、値kset1より大きな値kset2を設定した制御ゲインkvと値Tset1より大きな値Tset2を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定し、設定した制振トルクTvを用いたモータMG2による制振制御を伴って要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信する図2の駆動制御ルーチンのステップS130〜S250の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、受信したトルク指令Tm2*に基づいてモータMG2を制御するモータECU40と、が「制御手段」に相当する。また、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「遊星歯車機構」に相当する。
【0040】
ここで、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、バッテリ50に限定されるものではなく、電動機と電力をやりとり可能なものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「パワー優先指示スイッチ」としては、パワーモードスイッチ89に限定されるものではなく、パワー出力の応答性の優先を指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求トルク設定手段」としては、アクセル開度AccとパワーモードフラグFpwとを用いて得られる制御用アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、制御用アクセル開度Acc*だけに基づいて要求トルクを設定するものなど、駆動軸に要求される要求トルクを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、ノーマルモードが設定されているときには、値kset1を設定した制御ゲインkvと値Tset1を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定し、パワーモードが設定されているときには、値kset1より大きな値kset2を設定した制御ゲインkvと値Tset1より大きな値Tset2を設定した制限トルクTlimとを用いて制振トルクTvを設定し、設定した制振トルクTvを用いたモータMG2による制振制御を伴って要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG2を制御するものに限定されるものではなく、パワーモードが設定されているときに、制御ゲインkvにはノーマルモードが設定されているときの値kset1より大きな値kset2を設定するが制限トルクTlimにはノーマルモードが設定されているときと同様の値Tset1を設定するものとしたり、逆に、制限トルクTlimにはノーマルモードが設定されているときの値Tset1より大きな値Tset2を設定するが制御ゲインkvにはノーマルモードが設定されているときと同様に値kset1を設定するものとしたりするなど、パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制振トルクを用いた電動機による制振制御を伴って要求トルクに基づくトルクにより走行するよう電動機を制御し、パワー優先指示スイッチがオンのときには第1の制振トルクより大きな第2の制振トルクを用いた電動機による制振制御を伴って要求トルクに基づくトルクにより走行するよう電動機を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「遊星歯車機構」としては、シングルピニオン式のプラネタリギヤとして構成された動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式のプラネタリギヤなど如何なる遊星歯車機構としてもよい。
【0041】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
20,120,220,320,420,520 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 パワーモードスイッチ、229 クラッチ、230,330 変速機、430 発電機、MG,MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、を備える自動車であって、
パワー出力の応答性の優先を指示するパワー優先指示スイッチと、
前記駆動軸に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記設定された要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制振トルクより大きな第2の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記設定された要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御する制御手段と、
を備える自動車。
【請求項2】
請求項1記載の自動車であって、
前記制御手段は、前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制御ゲインを用いて前記第1の制振トルクを設定し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制御ゲインより大きな第2の制御ゲインを用いて前記第2の制振トルクを設定する手段である、
自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車であって、
前記制御手段は、前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制限トルクで制限を課して前記第1の制振トルクを設定し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制限トルクより大きな第2の制限トルクで制限を課して前記第2の制振トルクを設定する手段である、
自動車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の自動車であって、
内燃機関と、
動力を入出力可能な発電機と、
車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、
を備え、
前記電動機は、前記駆動軸に接続されてなる、
自動車。
【請求項5】
走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、パワー出力の応答性の優先を指示するパワー優先指示スイッチと、を備える自動車の制御方法であって、
前記パワー優先指示スイッチがオフのときには第1の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記駆動軸に要求される要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御し、前記パワー優先指示スイッチがオンのときには前記第1の制振トルクより大きな第2の制振トルクを用いた前記電動機による制振制御を伴って前記要求トルクに基づくトルクにより走行するよう前記電動機を制御する、
自動車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−219008(P2011−219008A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91666(P2010−91666)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】