説明

自動車のリアサスペンション装置

【課題】 サスペンションクロスメンバを車体に弾性マウント部により連結する場合には、サスペンションクロスメンバを有効活用して車体剛性を強化できず、またサスペンションクロスメンバを車体にリジッドなマウント部を介して連結する場合には後輪からの振動が車体に直接伝搬するため乗り心地が悪化する。
【解決手段】サスペンションクロスメンバ5は、車体前後方向向きの左右1対のサイドメンバ16と、車幅方向向きの1対のサイドメンバ部16,16同士を連結するクロスメンバ14,15とを備え、1対のサイドメンバ16,16の各々を車体に連結する3組のマウント部として、サイドメンバ16の前端部に配設された弾性体付きの前側マウント部32と、サイドメンバ16の後端部に配設されリジッドな後側マウント部34と、サイドメンバ16の前側マウント部32と後側マウント部34との間に配設されリジッドな中間マウント部33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームの車体内方側の端部を揺動自在に支持するサスペンションクロスメンバを備え、サスペンションクロスメンバを片側3点計6点のマウント部により車体に連結するようにした自動車のリアサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車のリアサスペンション装置としては、ドイツ特許第19615207号公報( DE19615207C1) に記載のものがある。図8,図9にその片側のみ示すように、リアサスペンションフレーム91に前端マウント部92、中間マウント部93、後端マウント部94の合計3個の弾性マウント部を配置し、これら片側3個の弾性マウント部92〜94を、図8に示すように平面視で車体前後方向に延びるライン95上に一直線上に配設すると共に、図9に示すように側面視でマウント部92〜94を結ぶ直線96〜98が三角形を構成するように配設してある。
【0003】
従前の一般的なリアサスペンション装置においては、左右で計4個の弾性マウント部によりサスペンションクロスメンバを車体に支持している。この場合、車輪側から入力される入力荷重を4点で支えるので、弾性マウント部のバネ定数をある程度大きく設定することが必要である。
【0004】
しかし、図8、図9に示すように片側3個、左右両側で6個の弾性マウント部を採用すると、弾性マウント部92〜94のバネ定数を低くすることができ、乗り心地を向上でき、図9に示すように三角形の面で荷重を受けることができるので、横剛性の向上を図ることができる。特に、弾性マウント92〜94をライン95上に一直線に配列すると、上下荷重入力時に弾性中心がライン95上に位置し、不要なモーメントが発生しないのでリアサスペンション装置の剛性の面で有利であり、乗り心地の向上と操縦安定性を両立させることができる。
【特許文献1】ドイツ特許第19615207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載のリアサスペンション装置では、片側3点計6点の弾性マウント部を採用しているため、マウント部のバネ定数を低く設定して乗り心地を向上することができるものの、6点のマウント部を全てラバーブッシュを組み込んだ弾性マウント部に構成しているので、オープンボディ型自動車に採用した場合など、サスペンションクロスメンバを有効活用して車体剛性(特に、ねじり剛性)を強化することができない。
【0006】
従来、サスペンションクロスメンバを4点のマウント部により車体に連結し、4点のマウント部の全てをリジッドなマウント部に構成することも公知である。
そこで、前述のリアサスペンション装置のサスペンションクロスメンバを6点のリジッドなマウント部により車体に連結することも考えられる。しかし、この場合、後輪からの振動の全部が車体に直接伝わるため、車室に伝搬するロードノイズが悪化し乗り心地が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の自動車のリアサスペンション装置は、サスペンションアームの車体内方側の端部を揺動自在に支持するサスペンションクロスメンバを備えた自動車のリアサスペンション装置において、前記サスペンションクロスメンバは、車体前後方向に延設される左右1対のサイドメンバと、車幅方向に延設され1対のサイドメンバ部同士を連結するクロスメンバとを備え、前記1対のサイドメンバの各々を車体に連結する3組のマウント部として、サイドメンバの前端部に配設される前側マウント部と、サイドメンバの後端部に配設された後側マウント部と、サイドメンバの前側マウント部と後側マウント部との間に配設された中間マウント部とを設け、前記中間マウント部と後側マウント部はサイドメンバを車体にリジッドに連結し、前側マウント部はサイドメンバを車体に弾性体を介して連結するように構成されたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、このリアサスペンション装置は、前記サスペンションアームがアッパアームとロアアームとを有するダブルウイッシュボン形式のものに構成してもよく、前記サスペンションクロスメンバのうちのクロスメンバはフロントクロスメンバとリアクロスメンバとを有する構成としてもよい。
【0009】
このリアサスペンション装置においては、サスペンションクロスメンバの左右1対のサイドメンバの各々が、前側マウント部と中間マウント部と後側マウント部の、片側3点計6点のマウント部により車体に連結されるため、リアサスペンション装置の横剛性が向上する。しかも、中間マウント部と後側マウント部はサイドメンバを車体にリジッドに連結するように構成されているため、リアサスペンション装置の横剛性が一層向上するうえ、サスペンションクロスメンバにより車体を有効に補強して車体剛性(特に、ねじり剛性)を強化することができる。
【0010】
そのため、オープンボディ型自動車など車体剛性の面で不利な自動車に採用するのに適したリアサスペンション装置となる。しかも、最も前側の前側マウント部はサイドメンバを弾性体を介して車体に連結するように構成したため、この前側マウント部をリジッドなマウント部に構成する場合に比較し、後輪から車体に伝搬する振動を低減して乗り心地を向上することができる。
【0011】
請求項2の自動車のリアサスペンション装置は、請求項1において、前記サスペンションアームは、車輪を回転自在に支持する車輪支持部材の上端部に揺動自在に連結され且つ前記サイドメンバに揺動自在に連結される2点のアッパー連結部を有するアッパーラテラルアームと、前記車輪支持部材の下端近傍部に揺動自在に連結され且つサイドメンバに揺動自在に連結される2点のロアー連結部を有するロアーラテラルアームとを備え、前記中間マウント部は、平面視で前記2点のアッパー連結部の間に且つ後側のロアー連結部より前方に配設されたことを特徴とする。
【0012】
そのため、アッパーラテラルアームとロアーラテラルアームから作用する横力の大部分を車体にリジッドに連結される中間マウント部と後側マウント部とで分担することができるから、リアサスペンション装置の横剛性を高めると共に、前側マウント部の弾性体のバネ定数を低くして乗り心地を高めることができる。
【0013】
請求項3の自動車のリアサスペンション装置は、請求項2において、前記サスペンションアームは、車輪支持部材の前端部のほぼ中段高さの部位に揺動自在に連結されると共にサイドメンバに揺動自在に連結されるトーコントロールリンクであって、平面視で前記中間マウント部より前方に配設されたトーコントロールリンクを有することを特徴とする。 そのため、コーナーリング時に、後輪から入力される横力によって、トーコントロールリンクが中間マウント部より前方のサイドメンバの部分を車体内方へ撓ませ、この撓みを利用することで後輪をトーイン方向に指向させることができ、操縦安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、サスペンションクロスメンバが片側3点計6点のマウント部により車体に連結されるため、リアサスペンション装置の横剛性が向上する。しかも、中間マウント部と後側マウント部はサイドメンバを車体にリジッドに連結するため、サスペンション装置の横剛性が一層向上するうえ、サスペンションクロスメンバにより車体を有効に補強して車体剛性(特に、ねじり剛性)を強化することができる。
【0015】
そのため、オープンボディ型自動車など車体剛性の面で不利な自動車に採用するのに適したリアサスペンション装置となる。しかも、最も前側の前側マウント部はサイドメンバを弾性体を介して車体に連結するように構成したため、この前側マウント部をリジッドなマウント部に構成する場合に比較し、後輪から車体に伝搬する振動を低減して乗り心地を向上することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、アッパーラテラルアームとロアーラテラルアームから作用する横力の大部分を車体にリジッドに連結される中間マウント部と後側マウント部とで分担することができるから、リアサスペンション装置の横剛性を高めると共に、前側マウント部の弾性体のバネ定数を低くして乗り心地を高めることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、コーナーリング時に、後輪から入力される横力によって、トーコントロールリンクが中間マウント部より前方のサイドメンバの部分を車体内方へ撓ませ、この撓みを利用することで後輪をトーイン方向に指向させることができ、操縦安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る自動車のリアサスペンション装置は、サスペンションアームの車体内方側の端部を揺動自在に支持するサスペンションクロスメンバを備えたものである。前記サスペンションクロスメンバは、車体前後方向に延設される左右1対のサイドメンバと、車幅方向に延設され1対のサイドメンバ部同士を連結するクロスメンバとを備えている。
前記1対のサイドメンバの各々を車体に連結する3組のマウント部として、サイドメンバの前端部に配設される前側マウント部と、サイドメンバの後端部に配設された後側マウント部と、サイドメンバの前側マウント部と後側マウント部との間に配設された中間マウント部とが設けられている。前記中間マウント部と後側マウント部はサイドメンバを車体にリジッドに連結し、前側マウント部はサイドメンバを車体に弾性体を介して連結するように構成されている。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例に係る自動車のリアサスペンション装置について図面に基づいて説明する。図1に示すように、FR( フロントエンジン・後輪駆動) 方式の駆動系を構成するように、オープンボディ型の自動車の前部にエンジン1と変速機2とを備えたパワーユニット3が配設され、自動車の後部にリアデファレンシャル装置4が配設され、変速機2の出力軸2aとリアデファレンシャル装置4の入力軸とがプロペラシャフト6で連結されている。
【0020】
エンジン1の回転力が、変速機2、自在継手8、プロペラシャフト6、自在継手9、リアデファレンシャル装置4の順に伝達され、アクスルシャフト7,7を介して左右の後輪が駆動される。パワーユニット3のケースとリヤデファレンシャル装置4のケースとは、車両前後方向に延びるパワープラントフレーム10により連結されている。
このパワープラントフレーム10は、エンジン駆動系からのロール方向の動きを許容する一方、リヤデファレンシャル装置4のワインドアップを防止するフレームであり、曲げ剛性が強く、ねじりに対して柔軟性を有するように構成されている。
【0021】
このパワープラントフレーム10の主要部は、図2−1に示すように矩形状の閉断面構造に形成され、ミッションケースへの取付け部とデフケースへの取付け部の付近では、図2−2に示すように断面がコの字状に形成されている。
【0022】
次に、リアサスペンション装置11について図3〜図7に基づいて説明する。
図3、図4に示すように、このリアサスペンション装置11は、左右の後輪を独立懸下するダブルウィッシュボーン形式のサスペンション装置のうちのマルチリンク形式のサスペンション装置であり、左右ほぼ対称に構成されている。このリアサスペンション装置11は、サスペンションアームの車体内方側の端部を揺動自在に支持するサスペンションクロスメンバ5を備えている。
【0023】
図3、図4に示すように、サスペンションアームは、自動車の右側と左側に夫々設けられるが、片側のサスペンションアームは、前後のロアラテラルアーム12F,12Rと、このロアラテラルアーム12F,12Rよりもアーム長が短い前後のアッパーラテラルアーム13F,13Rとから構成されている。
【0024】
サスペンションクロスメンバ5は、車体前後方向に延設される湾曲した左右1対のサイドメンバ16,16と、車幅方向に延設されて1対のサイドメンバ16,16同士を夫々リジッドに連結するフロントクロスメンバ14とリアクロスメンバ15とを平面視で枠状に構成したものである。
【0025】
図4、図5に示すように、後側のロアラテラルアーム12Rはアッパラテラルアーム13F,13Rよりもアーム長が長く形成され、このロアラテラルアーム12Rの外側端部はホイールサポート17( 車輪支持部材) の後方延長部17aに硬い弾性ブッシュを介して揺動自在に枢支され、ロアラテラルアーム12Rの内側端部のロアー連結部は、リアクロスメンバ15の下部に硬い弾性ブッシュを介して揺動自在に枢支されている。
【0026】
図4、図5に示すように、前側のロアラテラルアーム12Fの外側端部はホイールサポート17の下方延長部17cに硬い弾性ブッシュを介して揺動自在に枢支され、ロアラテラルアーム12Fの内側端部のロアー連結部はサイドメンバ16の前部下面に硬い弾性ブッシュを介して揺動自在に枢支されている。アッパラテラルアーム13F,13Rの外側端部はボールジョイント18を介してホイールサポート17の上方延長部17b(上端部)に揺動自在に連結され、アッパラテラルアーム13F,13Rの内側端部のアッパー連結部は硬い弾性ブッシュ19とブラケット20を介してサイドメンバ16の前部と後部に揺動自在に枢支されている。
【0027】
コントロールリンク22の外側端部は、ホイールサポート17の中段高さ位置の前方延長部17dにボールジョイントを介して揺動自在に枢支され、コントロールリンク22の内側端部はサイドメンバ16の前部上面に揺動自在に枢支されている。また、リヤクロスメンバ15の背面部にブラケット23と保持具24によりスタビライザ25が保持され、このスタビライザ25はそのねじり剛性により片輪のみのバンプ、リバウンド時にロール角を抑制するものである。
【0028】
図3〜図5に示すように、ホイールサポート17の内方延長部17eとボディとの間にはダンパ30が設けられ、このダンパ30はアッパシート26、ロアシート27、コイルスプリング28、ストラット29を備えている。このダンパ30は前後のアッパラテラルアーム13F,13Rの間に配設されている。また、図4に示すように、サイドメンバ16の前部下面とリアクロスメンバ15の前側の縦壁との間には補強メンバ31が斜交い状に張架されている。
【0029】
図3に示すように、1対のサイドメンバ16,16の各々を車体に連結する3組のマウント部として、サイドメンバ16の前端部に配設される前側マウント部32と、サイドメンバ16の後端部に配設された後側マウント部34と、サイドメンバ16の前側マウント部32と後側マウント部34との間に配設された中間マウント部33とが設けられ、中間マウント部33と後側マウント部34はサイドメンバ16を車体にリジッドに連結し、前側マウント部32はサイドメンバ16を車体に弾性体を介して連結するように構成されている。
【0030】
図3に示すように、片側3点づつの前側マウント部32,中間マウント部33,後側マウント部34がそれぞれ前後方向に配置され、図3に示す平面視において、中間マウント部33と後側マウント部34は、それらを結ぶ線が車体前後方向に延びる車体中心線L2と略平行となるように配設されている。また、前側マウント部32と後側マウント部34を結ぶ直線L1に対して、中間マウント部33が車体内方側に位置するように配設され、左右の中間マウント部33,33間の車幅方向のスパン短縮を図っている。
【0031】
ここで、フロントクロスメンバ14の両端部は左右のサイドメンバ16のうちの前側マウント部32と中間マウント部33の間の部位に固着され、リアクロスメンバ15の両端部は左右のサイドメンバ16のうちの中間マウント部33と後側マウント部34の間の部位に固着されている。そのため、後側のロアラテラルアーム12Rの内端部は中間マウント部33と後側マウント部34の間においてリアクロスメンバ15に枢支されている。また、ダンパ30は中間マウント部33と後側マウント部34との間のうちの中間マウント部33の近傍位置に配設されている。
【0032】
図1に示すように、エンジン1はその左右両部から車幅方向外方に延びるブラケット37,37およびエンジンマウント38,38を介して車体に支持されている。リアクロスメンバ15には、その前側の縦壁に固定のブラケット35,35を介してリヤデファレンシャル装置4が取付けられている。
【0033】
図3、図5に示すように、サイドメンバ16は平面視にて車幅方向内方側へ凸となる湾曲状に形成され、その前部は車体外側方向に向けて斜め下方に延びるように形成されている。図5に示すように、中間マウント部33と後側マウント部34とは側面から見てほぼ同一水平面上に設けられる一方、前側マウント部32は前記水平面よりも車体下方側に位置するようにサイドメンバ16の前端部に設けられている。前側マウント部32の下部にはその下部から車外方向前方に向けて延びるブラケット39が設けられている。
【0034】
サイドメンバ16を車体にリジッドに連結する中間マウント部33と後側マウント部34の構造について説明する。図6に示すように、サイドメンバ16に形成された円形穴に鍔付きスリーブ体40が嵌合され、このスリーブ体40に対応するように車体のリアサイドフレーム41には補強板42が固着され、スリーブ体40に合成樹脂製又は金属製の厚肉スリーブ43が嵌合固着され、この厚肉スリーブ43の下端側に金属製の円形板43aが配設され、この厚肉スリーブ43と円形板43aに挿通させたボルト44を補強板42に螺合することでサイドメンバ16が車体にリジッドに連結されている。
【0035】
サイドメンバ16を車体に弾性体を介して連結する前側マウント部32の構造について説明する。図7に示すように、サイドメンバ16に形成された円形穴に鍔付きスリーブ体45が嵌合され、このスリーブ体45に対応するように車体のリアサイドフレーム41には補強板46が固着され、スリーブ体45には厚肉スリーブ状の弾性体ブロック47が内嵌固着され、この弾性体ブロック47に挿通させたボルト48を補強板46に螺合することでサイドメンバ16が車体に弾性的に連結されている。弾性体ブロック47は、金属製の内筒47aとそれに外嵌固着されたラバーブッシュ47b(弾性体に相当する)と、ラバーブッシュ47bに外嵌固着された金属製スリーブ47cと、ラバーブッシュ47bの下端に固着され内筒47aに外嵌されたフランジ板47dとを一体的に構成したものである。
【0036】
以上のリアサスペンション装置11の作用、効果について説明する。
サスペンションクロスメンバ5の左右1対のサイドメンバ16の各々が、前側マウント部32と中間マウント部33と後側マウント部34の、片側3点計6点のマウント部により車体に連結されるため、エアサスペンション装置11の横剛性が向上する。しかも、中間マウント部33と後側マウント部34はサイドメンバ16を車体にリジッドに連結するように構成されているため、リアサスペンション装置11の横剛性が一層向上するうえ、サスペンションクロスメンバ5により車体を有効に補強して車体剛性(特に、ねじり剛性)を強化することができる。
【0037】
そのため、オープンボディ型自動車など車体剛性の面で不利な自動車に採用するのに適したリアサスペンション装置11となる。しかも、最も前側の前側マウント部32はサイドメンバ16を弾性体(47b)を介して車体に連結するように構成したため、この前側マウント部32をリジッドなマウント部に構成する場合に比較し、後輪から車体に伝搬する振動を低減して乗り心地を向上することができる。
【0038】
サスペンションアームは、ホイールサポート17の上端部に揺動自在に連結され且つサイドメンバ16に揺動自在に連結される2点のアッパー連結部を有するアッパーラテラルアーム13F,13Rと、ホイールサポート17の下端近傍部に揺動自在に連結され且つサイドメンバ16に揺動自在に連結される2点のロアー連結部を有するロアーラテラルアーム12F,12Rとを備え、中間マウント部33は平面視で前記2点のアッパー連結部の間に且つ後側のロアー連結部より前方に配設されたので、アッパーラテラルアーム13F,13Rとロアーラテラルアーム12F,12Rから作用する横力の大部分を車体にリジッドに連結される中間マウント部33と後側マウント部34とで分担することができるから、リアサスペンション装置11の横剛性を高めると共に、前側マウント部32の弾性体のバネ定数を低くして乗り心地を高めることができる。
【0039】
また、平面視で前記中間マウント部33より前方に配設されたトーコントロールリンク22を有するため、コーナーリング時に、後輪から入力される横力によって、トーコントロールリンク22が中間マウント部33より前方のサイドメンバ16の部分を車体内方へ撓ませ、この撓みを利用することで後輪をトーイン方向に指向させることができ、操縦安定性を向上させることができる。
【0040】
中間マウント部33と後側マウント部34は、それらを結ぶ線が車体前後方向に延びる車体中心線に対してほぼ平行となるように配設されているため、特にエンジンロールがサスペンションクロスメンバ5に作用した時、中間マウント部33と後側マウント部34とで入力荷重を受けるので、ねじれの発生がなく、乗り心地の向上と騒音低減とを図ることができる。さらに、中間マウント部33は平面視にて前側マウント部32と後側マウント部34を結ぶ線よりも車体内方側に配設されているため、左右の中間マウント部33間のスパンが短くなり、その結果、エンジンロールがサスペンションクロスメンバ5に作用した際のショック、振動を軽減することができると共に、操縦安定性の低下を抑制することができる。
【0041】
前記サスペンションクロスメンバ5のクロスメンバとして、左右のサイドメンバ16,16のうちの前側マウント部32と中間マウント部33の間の部位に両端部が固着されるフロントクロスメンバ14と、左右のサイドメンバ16,16のうちの中間マウント部33と後側マウント部34の間の部位に両端部が固着されるリアクロスメンバ15とを有し、リアクロスメンバ15にデファレンシャル装置4が支持され、リアクロスメンバ15の両端部が左右のサイドメンバ16,16のうちの中間マウント部33と後側マウント部34の間の部位に固着されたため、エンジンからの振動力、特にエンジンロールがサスペンションクロスメンバ5に作用した時、この入力荷重を中間マウント部33と後側マウント部34との双方に分担させることができるから、前側マウント部32の弾性体のバネ定数を低くすることができ、乗り心地の向上と、操縦安定性の向上を図ることができる。
【0042】
中間マウント部33と後側マウント部34は側面視でほぼ同一水平面上に配設され、前側マウント部32は前記水平面より車体下方側に配設されているため、ほぼ同一水平面上に位置する中間マウント部33と後側マウント部34でエンジンからの振動を受け、上記水平面より車体下方側に位置する前側マウント部32が配設された部分のねじれを許容して、この前側マウント部32の弾性体のバネ定数を小さくして、乗り心地の向上を図ることができ、ロードノイズの車室側への伝達を低減することができる。
【0043】
前側マウント部32と中間マウント部33と後側マウント34が平面視で三角形状に配設されるので、固有振動数が向上し、デフ振動の軽減、サスペンションクロスメンバ5の軽量化が図れる。しかも、中間の弾性マウント33が前端マウント部32と後側マウント34とを結ぶ線より車体内方側に配設されているので、左右の中間マウント部33,33間のスパンが短くなり、この結果、パワープラントフレーム10の作用にともなうエンジンロールがサスペンションクロスメンバ5に作用した際の振動を軽減することができると共に、操縦安定性の低下を抑制することができる。
【0044】
そのうえ、リアクロスメンバ15の両端部が左右のサイドメンバ16,16のうちの中間マウント部33と後側マウント部34との間に固着され、リヤクロスメンバ15にリヤデファレンシャル装置4が支持されたため、エンジンからの振動がリヤデファレンシャル装置4を介してサスペンションクロスメンバ5に作用したとき、その振動を主に中間マウント部33と後側マウント部34とに分担させることができる。
【0045】
次に、前記実施例に係るリアサスペンション装置11を部分的に変更する変更例について説明する。
1)リアサスペンション装置の形式をマルチリンク形式から純粋なダブルウイッシュボン形式に変更することも可能である。この場合、サスペンションアームの、2つのアッパーラテラルアーム13F,13Rを1つのアッパーラテラルアームで構成し、2つのロアラテラルアーム12F,12Rを1つのロアラテラルアームで構成してもよい。
【0046】
2)サスペンションクロスメンバ5の構造は、一例を示すものであり、種々の構造のサスペンションクロスメンバを採用可能である。
【0047】
3)図6に示す中間マウント部33と後側マウント部34の構造は、図7の前側マウント部32における弾性体ブロック47の代わりに厚肉スリーブ43と円形板43aを採用した構造であるから、弾性マウント部と互換性がある。但し、マウント部33〜34の構造は、図6、図7に図示の構造に限定されるものではなく、種々の構造のマウント部を採用可能である。
【0048】
4)その他、当業者ならば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加して実施可能であり、本発明はそれらの種々の変更例をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例の自動車の駆動系とリアサスペンション装置の平面図である。
【図2−1】パワープラントフレームの断面図である。
【図2−2】パワープラントフレームの断面図である。
【図3】リアサスペンション装置の平面図である。
【図4】リアサスペンション装置の底面図である。
【図5】リアサスペンション装置の要部の側面図。
【図6】中間マウント部と後側マウント部の断面図である。
【図7】前側マウント部の断面図である。
【図8】従来のサスペンションクロスメンバの要部平面図である。
【図9】図8のサスペンションクロスメンバの側面図である。
【符号の説明】
【0050】
4 リヤデファレンシャル装置
5 サスペンションクロスメンバ
10 パワープラントフレーム
11 リアサスペンション装置
12F,12R ロアラテラルアーム
13F,13R アッパラテラルアーム
14 フロントクロスメンバ
15 リアクロスメンバ
16 サイドメンバ
32 前側マウント部
33 中間マウント部
34 後側マウント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションアームの車体内方側の端部を揺動自在に支持するサスペンションクロスメンバを備えた自動車のリアサスペンション装置において、
前記サスペンションクロスメンバは、車体前後方向に延設される左右1対のサイドメンバと、車幅方向に延設され1対のサイドメンバ部同士を連結するクロスメンバとを備え、 前記1対のサイドメンバの各々を車体に連結する3組のマウント部として、サイドメンバの前端部に配設される前側マウント部と、サイドメンバの後端部に配設された後側マウント部と、サイドメンバの前側マウント部と後側マウント部との間に配設された中間マウント部とを設け、
前記中間マウント部と後側マウント部はサイドメンバを車体にリジッドに連結し、前側マウント部はサイドメンバを車体に弾性体を介して連結するように構成された、
ことを特徴とする自動車のリアサスペンション装置。
【請求項2】
前記サスペンションアームは、車輪を回転自在に支持する車輪支持部材の上端部に揺動自在に連結され且つ前記サイドメンバに揺動自在に連結される2点のアッパー連結部を有するアッパーラテラルアームと、
前記車輪支持部材の下端近傍部に揺動自在に連結され且つサイドメンバに揺動自在に連結される2点のロアー連結部を有するロアーラテラルアームとを備え、
前記中間マウント部は、平面視で前記2点のアッパー連結部の間に且つ後側のロアー連結部より前方に配設された、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車のリアサスペンション装置。
【請求項3】
前記サスペンションアームは、車輪支持部材の前端部のほぼ中段高さの部位に揺動自在に連結されると共にサイドメンバに揺動自在に連結されるトーコントロールリンクであって、平面視で前記中間マウント部より前方に配設されたトーコントロールリンクを有することを特徴とする請求項2に記載の自動車のリアサスペンション装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−192932(P2006−192932A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3834(P2005−3834)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】