説明

自動車パネル補修積層体

自動車パネル補修積層体類は、支持裏材に接合した感圧接着剤を含む。支持裏材は、熱可塑性または熱硬化性物質を含む、可塑的に変形可能な高分子材料類のような様々な物質から構成されてよく、そして補修に必要な望ましい整合性および剛性に応じて様々な厚さを有してよい。支持裏材は、溶剤などの接着促進剤を適用することによって、感圧接着剤に接合されてよい。補修積層体は自動車パネルの裏面または非化粧面に適用され、そして前面は標準的な充填および仕上げ技術を用いて補修される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷された自動車部品のための補修作業に関する。さらに詳細には、本発明は、自動車部品の損傷領域を補修するために用いられる補修積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
実質上自動車のあらゆるパネルは、損傷して補修を必要とする可能性がある。自動車は、様々な内装および外装パネルを包含し、これらは衝突や誤用などに起因して損傷する場合がある。例えば、自動車のバンパーは、非常に傷つきやすく、擦り傷、切り傷、穴、割れ目などを含む、衝突損傷を受ける場合が多い。
【0003】
多くの場合、損傷された自動車パネルは交換するよりも補修するほうが安価である。これは、特に、前面のみを処置しなければならないような、前面に影響を及ぼすだけの擦り傷などの自動車パネルへの軽度の損傷に当てはまる。しかしながら、穴のように両面を処置しなければならないより激しい損傷の場合、補修は時間のかかるプロセスとなる場合がある。更に、このような激しい損傷は、自動車パネルの構造一体性に影響を及ぼし、そして結果として成された補修が、構造一体性を十分に復元しないか、または損傷前には有していた柔軟性を欠く自動車パネルをもたらす場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、自動車パネルの裏面または非化粧面に適用されて、この裏面への比較的迅速な補修を可能にすると同時に、構造一体性の修復に必要なエネルギー吸収および適合特性を前記パネルに与える、自動車の補修積層体を提供することによって、これらの問題点その他に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態は、感圧接着剤と、前記感圧接着剤に接合された可塑的に変形可能な高分子支持裏材とを含む補修積層体であって前記支持裏材の厚さは、少なくとも0.75ミリメートルである。
【0006】
別の実施形態は、感圧接着剤の提供を伴う、補修積層体の作製方法である。可塑的に変形可能な高分子支持裏材の厚さは少なくとも0.75ミリメートルであり、また感圧接着剤は支持裏材に接合されている。
【0007】
もう一つの実施形態は、前面と、裏面と、損傷領域とを有する自動車パネルの補修方法である。補修積層体は、損傷領域において自動車パネルの裏面に適用されて損傷領域を補強し、また補修積層体は、支持裏材に接合された感圧接着剤を含む。補修積層体は、感圧接着剤を前記裏面に接合することによって、その裏面に適用される。補修積層体の適用後、前記前面の外見を補修する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の一つの実施形態で利用される自動車パネル補修積層体10を示す。自動車パネル補修積層体10は、ゴムまたは高分子材料の中心コア16の両面に接着剤層14を備えた、感圧接着剤(PSA)材料12を有する。一つの実施形態では、コア材料は、高分子発泡体の形態である。別の実施形態では、PSA材料は、別々の接着剤層が必要ないように、接着剤物質から完全に構成されていてもよい(図示せず)。PSA材料12は、自動車パネルに適合する材料であって、しかも耐衝撃性を与えるエネルギー吸収を提供する材料を提供するために包含される。自動車パネル補修積層体の様々な実施形態におけるPSAのバリエーションに関する詳細を、以下により詳細に論じる。
【0009】
図1に示す自動車パネル補修積層体10の実施形態はまた、PSA材料12に接合された支持裏材20も含む。支持裏材20の表面18には、支持裏材20とPSA材料12との間の接合を達成する接着促進剤層22が含まれる。可塑的に変形可能な支持裏材20はPSA材料12と共に適合し、更に、パネルから外れずに、自動車パネルを反対側から嵌めることができるのに必要な構造上の剛性も提供する。自動車パネル補修積層体の様々な実施形態における支持裏材20のバリエーションに関する詳細もまた、以下で、より詳細に論じる。
【0010】
図2は、本発明の一つの実施形態に従って補修された自動車パネル24を示す。本明細書で使用するとき、自動車パネルには、ドア類、バンパー類、フェンダー類などのような外装パネル、並びにダッシュボード、ドアパネル類、中央コンソール類などのような内装パネルを含む自動車のあらゆるパネルが包含される。自動車パネル24の裏面26には、自動車パネル補修積層体10の接着剤層14との接合を構成する接着促進剤層22’が適用されている。自動車パネル24の損傷された前面28には、接着促進剤層22”と接着充填剤物質30が適用されており、これらは自動車パネル表面28と同一平面を成すように紙やすりで磨かれている。接着促進剤層22”は、充填剤物質30との接合を促進するために適用され、そしてその後、充填剤物質30が、存在するあらゆる亀裂または穴を埋めるために、自動車パネル24の損傷された箇所に適用される。接着促進剤層22、22’、および22”は、同一であっても、異なっていてもよいことが分かるであろう。
【0011】
自動車パネル24を補修するために、はじめに裏面26は、その表面26を従来の溶剤で洗浄することによって準備される。前面部28は、その後、充填剤物質30の受容に備えて、当該技術分野で知られているように凹ませてもよい。続いて、補修積層体の露出したPSA層14を、裏面26に適用する。その後、前面28の損傷された領域は、接着促進剤22”を適用し、充填剤物質30を損傷された領域に入れた後、紙やすりでの研磨、下塗りの適用、および塗装を含むいずれかの仕上げ工程を行うことによって、外見の補修を行ってよい。自動車パネル24は、外見の補修工程中、パネルから外れることはなく、むしろその構造上の剛性および裏面26との接合を維持する。
【0012】
自動車パネル補修積層体10は、自動車パネルの補修方法で使用するために多様な形式で提供されてよい。一つの実施形態では、PSA材料12は、0.125〜1.25ミリメートル(mm)の厚さ、典型的に厚さ約0.40〜0.64mmを有してよい。前記実施形態の支持裏材は、厚さ0.75〜5mm、典型的には1〜2mmを有してよい。自動車パネル補修積層体10は、用途に適するように、多様な形状および寸法で提供されてよい。一つ以上の実施形態では、自動車パネル補修積層体10は、この積層体10が、充填材30を配置した自動車パネル24の損傷領域を少なくとも50mm越えて広がるように選択された寸法を有してよい。特定の実施形態では、自動車パネル補修積層体10の接着剤表面14は、使える状態になるまで剥離ライナー(図示せず)で覆われてよい。
【0013】
本発明の様々な実施形態で利用されるPSA材料は、様々な強力接着PSA類から選択されてよい。本質的に、PSA類は、他のいかなる処置をも受けずに、圧力を加えた直後に即座に接合するという点で、本来、粘着性である。一つの実施形態では、感圧接着剤はアクリル発泡体テープの形態である。アクリル発泡体テープ類は、ミネソタ州セント・ポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から商標「VHB」および「アクリル発泡体テープ(Acrylic Foam Tape)」として市販されている。更なる実施形態では、ポリウレタン発泡体テープを使用してもよい。ポリウレタン発泡体テープ類は、ニューヨーク州グランビル(Grandville)のサン−ゴバン・パフォーマンス・プラスチックス(Saint-Gobain Performance Plastics)から商標「2845ウレタン発泡体テープ(Urethane Foam Tape)」、「熱接着剤(Thermalbond)V2100」および「T−ボンドII(T-Bond II)」として市販されている。本発明の感圧接着剤物質は、接合を形成するために熱または放射線を用いて硬化しなくてよい利点がある。
【0014】
好適な感圧接着剤物質の例は、米国特許第6,103,152号(ゲールセン(Gehlsen)ら)、米国特許第6,630,531号(カーンドパー(Khandpur)ら)、および米国特許第6,586,483号(コルブ(Kolb)ら)に記載されており、これらの開示内容をそれぞれ参照として本明細書に組み込む。感圧接着剤の更なる例は、米国特許第6,777,080号(カーンドパー(Khandpur)ら)に記載されており、この内容も全て参照として本明細書に組み込む。
【0015】
一つの実施形態では、PSA材料は、米国特許第6,103,152号に記載されているようなアクリルポリマー発泡体物品である。発泡体には、複数の微小球が包含されるが、そのうちの少なくとも一つは膨張性ポリマー微小球である。
【0016】
本明細書で使用するとき、「ポリマー発泡体」とは、物品の密度がポリマーマトリックス単独の密度よりも小さい、ポリマーマトリックスを含む物品を指す。一つ以上の実施形態では、ポリマー発泡体物質は、実質的に平滑な表面を有してよく、このことが基材への一様な接着を促進する。
【0017】
「実質的に平滑な」表面とは、レーザ三角測量法測定によって測定したときに、Ra値が約75マイクロメートル未満の表面を指す。一つの実施形態では、前記表面のRa値は約50マイクロメートル未満であり、更なる実施形態では、前記表面のRa値は約25マイクロメートル未満である。特定の実施形態の表面はまた、しわ、波形、および折り目のように目に見える巨視的欠陥が実質的に存在しないことを特徴とする場合もある。加えて、特定の実施形態の表面は、関係する基材との適正な接触、そしてそれによるその基材との接着を表すように、十分に平滑であってよい。
【0018】
「膨張性ポリマー微小球」は、ポリマーシェルと、気体、液体、またはこれらの組み合わせの形態のコア物質とを含む微小球であって、これは加熱すると膨張する。コア物質の膨張の結果、少なくとも加熱温度でシェルの膨張が生じる。膨張性微小球は、シェルが最初に膨張し得るか、または破壊せずに更に膨張することができるものである。幾つかの微小球は、加熱温度かまたはその付近でコア物質のみを膨張させることができるポリマーシェルを有してよい。
【0019】
ポリマー発泡体PSA材料は、少なくとも2つの異なる方法のうち一つで構成されてよい。ポリマー発泡体自体が接着剤であってもよく、あるいはポリマー発泡体物質は、発泡体に接合された1つ以上の別個の接着剤組成物類を、例えば、連続層または別個の構造体(例えば、細片類、棒類、長繊維など)の形態で包含してよく、この場合、発泡体自体は接着剤でなくてもよい。
【0020】
特定の実施形態のポリマー発泡体PSAは、ウレタン架橋および尿素架橋を実質的に有さなくてよく、それ故に、組成物中にイソシアネート類を必要としない。ポリマー発泡体を作製するのに好適な材料の一例は、アクリルポリマーまたはコポリマーである。例えば、高い凝集強度および/または高い弾性率が必要とされる場合には、発泡体を架橋してもよい。
【0021】
特定の実施形態のポリマー発泡体には、複数の膨張性ポリマー微小球が包含されてよい。発泡体はまた、1つ以上の非膨張性微小球を包含してもよく、これはポリマー微小球であっても、非ポリマー微小球(例えば、ガラス微小球類)であってもよい。1つ以上の実施形態のポリマー発泡体物質における膨張性ポリマー微小球の例としては、シェルが塩化ビニリデン単位を本質的に含まないものを挙げることができる。様々な実施形態のコア物質としては、加熱すると膨張する、空気以外の物質を挙げることができる。
【0022】
様々な実施形態の発泡体は、微小球類に加えて、媒介剤を含有してよい。好適な媒介剤の例としては、粘着付与剤類、可塑剤類、顔料類、染料類、固体充填剤類、およびこれらの組み合わせから成る群より選択されるものが挙げられる。発泡体はまた、ポリマーマトリックス中に、気体を充填した空隙を包含してもよい。このような空隙は、典型的に、ポリマーマトリックス材料中に膨張剤を包含させた後、例えば、熱または放射線にポリマーマトリックス材料を曝露することによってその膨張剤を活性化させることにより、形成される。
【0023】
特定の実施形態の発泡体は、実質的に非架橋のまたは熱可塑性のポリマーマトリックス材料を含むことが望ましい場合もある。特定の実施形態の発泡体のマトリックスポリマーは、多少の架橋度を示すことが望ましい可能性もある。このような架橋に対する一つの潜在的な利点は、発泡体が、殆どまたは全く架橋していない同じ発泡体に比べて改善された機械的特性(例えば、凝集強度を増強する)を示す可能性があるということである。
【0024】
一つの実施形態では、PSA材料は、(a)複数の微小球類であって、これらのうち少なくとも一つが(上記で定義されたように)膨張性ポリマー微小球であるもの、および(b)ウレタン架橋および尿素架橋を実質的に含まないポリマーマトリックスを含むポリマー発泡体を含む。マトリックスには、2つ以上のポリマーのブレンドが包含され、この場合、このブレンド中のポリマーの少なくとも一つは、感圧接着剤ポリマー(すなわち、感圧接着組成物を形成するために粘着付与剤と組み合わされなければならないポリマーとは対照的に、本来感圧接着性であるポリマー)であり、また前記ポリマーのうち少なくとも一つは、不飽和の熱可塑性エラストマー類、アクリレート−不溶性の飽和した熱可塑性エラストマー類、および非感圧接着性の熱可塑性ポリマー類から成る群より選択される。
【0025】
PSA材料は、様々な方法、例えば次のような方法で調製されてよい:(a)ポリマー組成物と複数の微小球類(これらのうち1つ以上は(上記で定義したような)膨張性ポリマー微小球である)とを、膨張性の押出成形可能な組成物を形成するように選択された温度、圧力、および剪断速度を含むプロセス条件下で溶融混合する方法;(b)前記組成物をダイから押出成形して、(上記に定義したような)ポリマー発泡体を形成する方法;および(c)ポリマー組成物がダイから排出される前に、1つ以上の膨張性ポリマー微小球類を少なくとも部分的に膨張させる方法。特定の実施形態では、ポリマー組成物がダイから排出される前に、全てではないが、ほとんどの膨張性微小球類を少なくとも部分的に膨張させることが、望ましい場合がある。組成物がダイから排出される前に膨張性ポリマー微小球類を膨張させることにより、結果として得られる押出成形された発泡体は、より厳しい許容度で製造することができる。
【0026】
特定の実施形態では、PSA材料が実質的に溶媒を含まないことが望ましい場合がある。一つの実施形態では、PSA材料は、20重量%未満の溶媒を含有してよく、更なる実施形態では、前記材料は、実質的に全く溶媒を含有しないかないしは約10重量%以下までの溶媒を含有してよく、そして更に別の実施形態では、前記材料は、約5重量%以下の溶媒を含有してよい。
【0027】
様々な実施形態のPSA材料の重量平均分子量は、一つの実施形態では、少なくとも約10,000g/モル、そして更なる実施形態では少なくとも約50,000g/モルであってよい。様々な実施形態のPSA材料を製造するのに使用されるポリマー類は、175℃の温度および100秒−1の剪断速度で測定される剪断粘度が、一つの実施形態では、少なくとも約30パスカル−秒(Pa−s)、更なる実施形態では、少なくとも約100Pa−s、そして更に別の実施形態では、少なくとも約200Pa−sを示してよい。
【0028】
様々な実施形態のPSA発泡体材料は架橋されてもよい。例えば、発泡体は、発泡体を架橋するために、押出し成形後に熱線、化学線、電離放射線、またはこれらの組み合わせに曝露されてよい。架橋はまた、イオンの相互作用に基づく化学架橋法を用いて達成されてもよい。
【0029】
本発明の実施形態で用いられる支持裏材は、様々な材料から選択されてよく、熱可塑性材料および熱硬化性材料を含む可塑的に変形可能な高分子材料類が挙げられる。可塑的に変形可能であることにより、支持裏材を容易に形成することができ、そしてその形状を維持することができる。一つの実施形態では、可塑的に変形可能な支持裏材は連続的なシートである。別の実施形態では、可塑的に変形可能な支持裏材は、ASTM D−412に従って少なくとも50%の破断点伸びを有する。別の実施形態では、可塑的に変形可能な支持裏材は、ASTM D−412に従って少なくとも100%の破断点伸びを有する。なお別の実施形態では、可塑的に変形可能な支持裏材は、ASTM D−412に従って少なくとも200%の破断点伸びを有する。
【0030】
特に、車体側部の成形材料および自動車用クラッド材のような自動車構造において有用な材料が、支持裏材として利用されてよい。例としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム類(EPDM)、熱可塑性ウレタン類(TPU類)、反応射出成形(RIM)ウレタンプラスチック類、およびポリプロピレンと、ポリエチレンと、ゴムとのコポリマー類である熱可塑性オレフィン類(TPO類)が挙げられる。別の実施形態では、オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のポリワン・コーポレーション(PolyOne Corporation)から商標「ブラックTPO−TG化合物(Black TPO-TG Compound)」として市販されている黒色の自動車用クラッド材を使用してもよい。支持裏材は、所望により、美的感覚に訴えるもの(aesthetics)のように、他の目的のために意図される一つ以上のトップコートを含んでよく、これは接着力を促進することが分かっている。
【0031】
本発明で利用される接着促進剤類は、損傷された車体パネルおよび用いられる補修積層体の種類に応じて様々な物質類から選択されてよい。代表的な接着促進剤類としては、アクリル発泡体テープ類、RIM、およびTPO用のものが挙げられ、ミネソタ州セント・ポール(St. Paul)の3M社から商標3Mオートミックス・ポリオレフィン接着促進剤(3M Automix Polyolefin Adhesion Promoter)、品番5907および3M自動車用接着促進剤(3M Automotive Adhesion Promoter)品番06396として市販されている。
【0032】
前記5907または06396接着促進剤類などの溶剤型接着促進剤を用いる場合、補修積層体は、TPOの平滑な面などの支持裏材の片面に溶剤を適用することによって製造される。溶剤を適用した支持裏材の前記面を、次に、PSAと接触させて配置し、そして圧力を加えてよい。溶剤を乾燥させて、結果として、TPOをPSAに接合させる。
【0033】
溶剤型のもの以外の接着促進剤を用いる場合、接着促進剤は、TPOの平滑な面などの支持裏材に適用されてよく、また圧力を加えてもよい。接着促進剤は、重合性液体として適用されてもよく、そして米国特許第6,287,685号(ジャンセン(Janssen)ら)および欧州特許第384,598号(ジョンソン(Johnson)ら)に記載されているように電子ビーム照射によって硬化されるが、これら特許の開示内容をそれぞれ参照として本明細書に組み込む。この照射によって、接着促進剤の2つのモノマーを重合させて、接着促進剤を支持裏材にグラフト化させる。
【0034】
本発明の実施形態の使用を更に例示するために、単に例示目的のために提供される本発明の具体的な実施形態の非限定的な例を、比較と併せて以下に論じる。実施例および比較例の記述において特に注記がない限り、報告した部、百分率、および比はいずれも重量基準であって、実施例および比較例において用いられるすべての媒介剤は、例えば、ミズーリ州セント・ルイス(Saint Louis)のシグマ−アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Sigma-Aldrich Chemical Company)などの一般化学品供給業者から購入されたか、または入手可能であるか、あるいは従来の方法によって合成されてもよい。
【0035】
実施例および比較例では次の略語を使用する:
「ADH1」:ミネソタ州セント・ポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から商標「4125万能接着剤(4125 Universal Adhesive)」として市販されている可撓性ウレタン接着剤;
「ADH2」:3M社(3M Company)から商標「4240万能接着剤(4240 Universal Adhesive)」として市販されている可撓性ウレタン接着剤;
「ADPR1」:3M社(3M Company)から商標「3Mオートミックス・ポリオレフィン接着促進剤(3M Automix Polyolefin Adhesion Promoter)、品番5907」として市販されているポリオレフィン接着促進剤;
「ADPR2」:3M社(3M Company)から商標「3M自動車用接着促進剤(3M Automotive Adhesion Promoter)品番06396」として市販されている接着促進剤;
「FPR1」:3M社(3M Company)から商標「3MオートミックスEZサンド5887可撓性プラスチック・リペア(3M Automix EZ Sand 5887 Flexible Plastic Repair)」として市販されている2液型エポキシ;
「SCRM1」:3M社(3M Company)から商標「4904補強補修剤(4904 Reinforcement Patch)」として市販されている、剥離可能なフィルム付き構造スクリム;
「SCRM2」:3M社(3M Company)から商標「3Mガラス繊維布(3M Fiberglass Cloth)、品番05838」として市販されているガラス繊維布;
「SCRM3」:3M社(3M Company)から商標「3Mガラス繊維マット(3M Fiberglass Mat)、品番05837」として市販されているガラス繊維マット;
「SCRM4」:3M社(3M Company)から商標「スコッチ長繊維テープ898(Scotch Filament Tape 898)、品番06895」として市販されている帯状テープ;
「SSLR1」:3M社(3M Company)から商標「4227シーム・シーラー(4227 Seam Sealer)」として市販されている可撓性ウレタン・シーム・シーラー;
「TPO1」:オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のポリワン・コーポレーション(PolyOne Corporation)から< >として市販されている1ミリメートル(mm)の黒色熱可塑性ポリオレフィン製の装飾用自動車クラッド材;
「TPO2」:オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のポリワン・コーポレーション(PolyOne Corporation)から< >として市販されている2ミリメートル(mm)の黒色熱可塑性ポリオレフィン製の装飾用自動車クラッド材;
「VHB1」:3M社(3M Company)から商標「4936VHBテープ(4936 VHB Tape)」として市販されている0.64mm(25−ミル)の両面感圧接着剤アクリル発泡体テープ;
「VHB2」:3M社(3M Company)から商標「4926VHBテープ(4926 VHB Tape)」として市販されている0.40mm(15−ミル)の両面感圧接着剤アクリル発泡体テープ;
試験を標準化するために、次の全試料は、裏面の調整が完了次第、20℃で16時間保持した。当然のことながら、実際の使用時には、本発明の実施形態を含む試料は、20〜30分間だけ保持される。
【0036】
比較例A
ミシガン州ヒルズデール(Hillsdale)のACTラボラトリーズ(ACT laboratories)から商標「BASFハイファックス・ブラック−可撓性TPOエクステリア(BASF Hifax Black- Flexible TPO Exterior)」として入手した、黒色熱可塑性ポリオレフィン製の10.2×10.2×0.32cmのパネルから5.08センチメートル(cm)の中心穴を切り抜いた。次に、穴には、両側に環の幅0.48cmまで対称的に斜角をつけた。パネルの両面を、イリノイ州ロックフォード(Rockford)のナショナル・デトロイト社(National Detroit, Inc.)製の二重作用研磨機、型番「DAQ」において、3M社(3M Company)から入手した、商標「等級80インペリアル・フッキットII(Grade 80 Imperial Hookit II)」として市販されているサンドペーパーを用いて粗面化した。ADPR1をパネルの片面(裏面として表記)に20℃で適用して、5分間乾燥させた。3M社(3M Company)から商標「スコッチ自動車用塗り替えマスキングテープ233+(Scotch Automotive Refinish Masking Tape 233+)、品番26340」として市販されているマスキングテープをパネルの前面に適用した。ADH1は、下塗りした裏面に3M散布機(3M Spreader)、品番05842を用いて適用した。裏面の調整を完了するために、10.2×10.2cmのSCRM1シートを接着剤に押しつけて、支持用の剥離フィルムを取り外して、接着剤を20℃で15分間硬化させた。マスキングテープを取り除き、前面を、同一平面ラインよりも下に凹みが形成されるまで、裏面と同様の方法で粗面化した。次に、ADPR1をパネルの前面に適用して、20℃で5分間乾燥させた。続いて、穴にFPR1を充填して、20℃で15分間部分硬化させた後、プラスチック補修物質がパネルと同一平面を成すように、二重作用研磨機と3M社(3M Company)から入手した「等級180インペリアル・フッキットII(Grade 180 Imperial Hookit II)」とを用いて研磨した。別の4つの試験パネルもそれに従って調製した。引張り強度試験のために、プレート(the plate)から、はす縁の外周部に隣接した10.2×6.03cmの試験部分を切り取った。
【0037】
比較例B
比較例Bは、SCRM1をSCRM2に置き換えたこと以外は、比較例Aに記載した方法に従って調製した。
【0038】
比較例C
比較例Cは、ADH1をSSLR1に置き換え、そしてSCRM2をSCRM3に置き換えたこと以外は、比較例Bに記載した方法に従って調製した。
【0039】
比較例D
比較例Dは、SCRM3をSCRM2に置き換えたこと以外は、比較例Cに記載した方法に従って調製した。
【0040】
比較例E
比較例Eは、SLR1をFPR1に置き換えたこと以外は、比較例Cに記載した方法に従って調製した。
【0041】
比較例F
比較例Fは、SCRM3をSCRM2に置き換えたこと以外は、比較例Eに記載した方法に従って調製した。
【0042】
比較例G
比較例Gは、ADH1をADH2に置き換えたこと以外は、比較例Aに記載した方法に従って調製した。
【0043】
比較例H
比較例Hは、SCRM2をSCRM1に置き換えたこと以外は、比較例Fに記載した方法に従って調製した。
【0044】
比較例I
比較例Iは、SCRM1を5層のSCRM4と置き換え、そしてADPR1をADPR2に置き換えたこと以外は、比較例Aに記載した方法に従って調製した。引張り強度試験は、長繊維テープの機械方向に行った。
【0045】
比較例J
比較例Jは、引張り強度試験を長繊維テープのウェブ横断方向に行ったこと以外は、比較例Iに記載した方法に従って調製した。
【0046】
(実施例1)
ミシガン州ヒルズデール(Hillsdale)のACTラボラトリーズ(ACT laboratories)から商標「BASFハイファックス・ブラック−可撓性TPOエクステリア(BASF Hifax Black- Flexible TPO Exterior)」として入手した、黒色熱可塑性ポリオレフィン製の10.2×10.2×0.32cmのパネルから5.08センチメートル(cm)の中心穴を切り抜いた。次に、穴には、両側に環の幅0.48cmまで対称的に斜角をつけた。パネルの前面を、二重作用研磨機と「等級80インペリアル・フッキットII(Grade 80 Imperial Hookit II)」サンドペーパーを用いて粗面化した。ADPR2をパネルの平滑な裏面に適用して、20℃で5分間乾燥させた。ADPR2を22.9×27.9cmのTPO1シートの片面に適用し、そして20℃で5分間乾燥させた。次に、ハンドローラーを用いて22.9×27.9cmのVHB1シートをTPO1の下塗りした表面に積層し、そして得られたTPO−VHB積層体を10.2×10.2cmに切り揃えた。裏面の調整を完了するために、前記積層体の発泡体テープ面をパネルの下塗りした表面上に手で押さえつけた。ADPR1をパネルの前面と発泡体テープの露出面に適用して、20℃で5分間乾燥させた後、FPR1を充填した。20℃で15分間部分硬化した後、次いで、プラスチック補修物質を、二重作用研磨機と「等級180インペリアル・フッキットII(Grade 180 Imperial Hookit II)」サンドペーパーを用いてパネルと同一平面となるように研磨した。
【0047】
(実施例2)
実施例2は、VHB1をVHB2に置き換え、そしてTPO1をTPO2に置き換えたこと以外は、実施例1に記載の方法に従って調製した。
【0048】
実施例1および2に記載した裏面の積層体は個別に調製したが、剥離ライナーを含むより大きな様式を、例えばロール形態で作製し、そして必要に応じて適当な補修寸法に切断することができると理解されるべきである。予め作製された積層体は、それ故に、補修店に更なる時間の節約を提供するであろう。
【0049】
試験方法。
【0050】
試料調製時間。試験パネルの裏面を完了するまでにかかる時間を、比較例Aと比べて「より遅い」、「同じ」、または「より速い」と評価した。
【0051】
耐衝撃性。耐衝撃性は、20℃において、ニューヨーク州アミティビル(Amityville)のテスティング・マシーンズ社(Testing Machines Inc.)から入手したモデル「43−02」衝撃試験機を用いて求めた。試験断片は、補修剤面を2.8×1.8cmのアルミニウム製ブロックとは反対側に向けて、中央に配置した。ハンマー重量は4.54キログラム(Kg)であり、また衝撃速度は2.1メートル/秒(m/s)であった。試料につき2つの試験断片を評価した。両方の試験パネルが、破壊せずまたは目に見える亀裂を示さずに衝撃試験に耐えた場合、「合格」と評価した。
【0052】
引張り強度。引張り強度は、ASTM D−638−91に従って、ノースカロライナ州キャリー(Cary)のMTSシステムズ・コーポレーション(MTS Systems Corporation)製のモデル「Q試験100(QTest 100)」機を用いて求めた。つかみ具間隔は7.6cmであり、そして一定の延伸速度は20℃において5.08cm/分であった。報告した引張り強度および破断点伸び率は、試料につき3つの試験断片の平均である。3.45メガパスカル(MPa)(500ポンド/インチ(psi))を超える引張り強度が自動車パネルの補修に許容可能であると考えられる。
【0053】
補修速度、並びにその結果得られる、一度補修した自動車パネルの耐衝撃性および引張り強度を含む試験結果を表1に列挙する。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明の実施形態を用いることで、大半の比較例よりも速い(faster that)補修速度となると同時に、耐衝撃性試験にも合格し、そして自動車パネル補修にとって望ましい引張り強度を与えることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】自動車パネル補修積層体の一つの実施形態の様々な層を示す断面図。
【図2】自動車パネル補修積層体の層を含む様々な補修層を示す、補修した自動車パネルの断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成要素:
感圧接着剤、および
感圧接着剤に接合された可塑的に変形可能な高分子支持裏材を備える補修積層体であって、前記支持裏材の厚さが少なくとも0.75ミリメートルである、前記補修積層体。
【請求項2】
前記支持裏材が、ASTM D−412に従って少なくとも50%の破断点伸びを有する、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項3】
前記支持裏材が、ASTM D−412に従って少なくとも100%の破断点伸びを有する、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項4】
前記支持裏材が、ASTM D−412に従って少なくとも200%の破断点伸びを有する、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項5】
前記感圧接着剤が発泡体を含む、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項6】
前記支持裏材がポリオレフィンを含む、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項7】
前記支持裏材が熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項8】
前記支持裏材が連続的な熱可塑性ポリオレフィンシートである、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項9】
第1の接着剤物質と第2の物質との間に配置することによって前記支持裏材と前記感圧接着剤との間の接合に寄与する接着促進剤を更に含む、請求項1に記載の補修積層体。
【請求項10】
前記接着促進剤が溶剤型接着促進剤である、請求項9に記載の補修積層体。
【請求項11】
前記接着促進剤が電子ビーム照射によって硬化する、請求項9に記載の補修積層体。
【請求項12】
次の工程:
感圧接着剤を提供する工程;
厚さが少なくとも0.75ミリメートルの、可塑的に変形可能な高分子支持裏材を提供する工程;および
前記感圧接着剤を前記支持裏材に接合する工程を含む、補修積層体の作製方法。
【請求項13】
前記感圧接着剤が発泡体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記支持裏材が連続的な熱可塑性ポリオレフィンシートである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記感圧接着剤を前記支持裏材に接合する工程が、接着促進剤を前記支持裏材に適用する工程、およびその後、前記接着促進剤を適用した前記支持裏材に前記感圧接着剤を適用する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記接着促進剤が、溶剤型接着促進剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接着促進剤が重合性液体として適用される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記接着促進剤を電子ビーム照射を用いて硬化することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前面、裏面、および損傷領域を有する自動車パネルの補修方法であって、次の工程:
補修積層体を損傷領域における前記自動車パネルの前記裏面に適用して前記損傷領域を補強する工程であって、前記補修積層体は、支持裏材に接合された感圧接着剤を備え、前記補修積層体が、前記感圧接着剤を前記損傷領域の裏面に接合することによって適用される工程;および
前記補修積層体の適用後に、前記前面の外見を補修する工程を含む、前記方法。
【請求項20】
前記感圧接着剤が発泡体を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記支持裏材が熱可塑性ポリオレフィンシートを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記感圧接着剤が接着促進剤を用いて前記支持裏材に接合される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記支持裏材が、少なくとも0.75ミリメートルの厚さを有する、可塑的に変形可能な高分子材料である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記感圧接着剤の厚さが、前記支持裏材の厚さよりも薄い、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記補修積層体を前記裏面に適用する工程が、接着促進剤を前記裏面に適用する工程、およびその後、前記接着促進剤を適用した前記裏面に前記感圧接着剤を適用する工程を含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501097(P2009−501097A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521444(P2008−521444)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/026392
【国際公開番号】WO2007/011539
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】