説明

自動車用内装部品並びにその製造方法

【課題】自動車用内装部品の全体、あるいは一部に採用される軽量型トリムの裏面に別物部品を簡単かつ廉価に取り付ける取付構造及び取付方法を提供する。
【解決手段】ドアトリム20におけるドアトリムアッパー・フロント(積層構造体)30は、軽量で保形性を有する発泡樹脂基材31と、その裏面に一体化される剛性を付与する樹脂リブ32との積層体から構成され、裏面側にウエストガーニッシュ(別物部品)50を取り付ける構造として、樹脂リブ32に一体化した溶着用ボス34によりウエストガーニッシュ50の一部を溶着一体化するとともに、ウエストガーニッシュ50のドアトリムアッパー・フロント30の端縁側に相当する箇所は、発泡樹脂基材31周縁の巻込みシロ35による既存の巻込み処理を利用し、ウエストガーニッシュ50の上側端末50aを巻込みシロ35により巻込み保持することでウエストガーニッシュ50の保持形態を簡素化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品並びにその製造方法に係り、特に、積層構造体の裏面側にガーニッシュ、ブラケット、パッド等の別物部品を簡単かつ廉価で、しかも見栄え良く取り付けることができる自動車用内装部品並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用内装部品の構成をドアトリムを例示して図21,図22を基に説明する。ドアトリム1は、保形性及びドアパネルへの取付剛性を備え、製品面のほぼ全面にゆきわたっている樹脂芯材2の表面に、表面外観に優れた表皮3を積層一体化して構成されている。上記樹脂芯材2としては、タルクを混入したポリプロピレン系樹脂を素材としており、また、表皮3は、それ自体保形性を備えておらず、塩ビシート等の合成樹脂シートの単一シート材料か、あるいは合成樹脂シートの裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が使用され、最近では、環境面やリサイクル面を考慮して、サーモプラスチックオレフィン(TPO)シート等のエラストマーシートが多用される傾向にある。
【0003】
次に、上記ドアトリム1の成形方法における従来例について図23を基に説明する。まず、ドアトリム1を成形する成形金型4は、所定ストローク上下動可能な成形上型5と、成形上型5と対をなす固定側の成形下型6と、成形下型6と接続される射出機7とから大略構成されている。そして、成形上下型5,6を型締めした際、ドアトリム1の製品形状を形造るために成形上型5にはキャビティ部5aが形成され、成形下型6にはコア部6aが設けられている。上記成形上型5を所定ストローク上下動作させるために、昇降シリンダ5bが連結され、成形下型6には射出機7からの溶融樹脂の通路となるマニホールド6b、ゲート6cが設けられている。また、上下動作する成形上型5には、適正姿勢を維持させるために、成形下型6の4隅部にガイドポスト6dが設けられ、このガイドポスト6dに対応して成形上型5にガイドブッシュ5cが設けられている。
【0004】
従って、成形上下型5,6が型開き状態にある時、表皮3を金型内にセットし、その後、成形上下型5,6を型締めする直前か、または型締めした後のいずれかのタイミングで両金型間の製品キャビティ内に射出機7からマニホールド6b、ゲート6cを通じて溶融樹脂Mを射出充填することにより、樹脂芯材2を所要の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材2の表面に表皮3を一体成形している(例えば、特許文献1参照。)。尚、図23では、説明の便宜上、コア部6aの型面にオープン状態で溶融樹脂Mが供給されているが、溶融樹脂Mは成形上下型5,6の型締め後にキャビティ内に射出充填されても良い。
【0005】
そして、最近では、図24,図25に示すように、軽量で廉価に製作できる軽量型のドアトリム10が提案されている。この軽量型のドアトリム10は、発泡樹脂シートを所要形状にプレス成形してなる軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材11と、この発泡樹脂基材11の周縁部分や補強を必要とする部分に樹脂リブ12が格子形状等、肉抜き状に設定されて一体化されているとともに、発泡樹脂基材11の表面には、表面風合いや感触を良好に維持するための表皮13が一体化されている。この種、軽量型のドアトリム10の構成並びに製造方法については、特許文献2に詳細に示されている。また、この種、軽量型のドアトリム10においては、ガーニッシュ、ブラケット、パッド等の別物部品14を所定位置に固定するには、例えば、図26に示すように、樹脂リブ12の裏面から溶着用ボス15を立設し、この溶着用ボス15を別物部品14のボス孔14a内に挿通した後、溶着用ボス15の先端を超音波加工等により、カシメ固定するか、あるいは、図27に示すように、別物部品14を発泡樹脂基材11の裏面にホットメルト系接着剤層16を介して接着一体化する方法が従来では実施されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−138268号公報
【0007】
【特許文献2】特開2005−28722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、発泡樹脂基材11の裏面に所定パターン形状の樹脂リブ12を一体化した軽量型のドアトリム10は、軽量でかつ低コストに製作できるという特質を備えている。しかし、ドアトリム10の裏面側にガーニッシュ、ブラケット、あるいはパッド等の別物部品14を取付固定するには、例えば、溶着用ボス15による溶着固定構造か、ホットメルト系接着剤層16による接着固定構造が考えられるが、溶着用ボス15を使用する方法では、成形金型への型加工上、溶着用ボス15の設定箇所に制約を受けるため、別物部品14の設定位置が制限され、設計自由度が制約されるという不具合があるとともに、溶着用ボス15を複数箇所に設定して、個々の溶着用ボス15をカシメ加工するため、加工が面倒であり、作業時間が多くかかる等、作業性に問題があった。
【0009】
また、図27に示すホットメルト系接着剤層16を使用する方法では、同様にホットメルト系接着剤層16の塗布工程が必要となり、工数が嵩みコストアップを招来するとともに、作業環境上好ましくないという問題点があった。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、発泡樹脂基材をベースとした軽量型の内装部品であって、基材の裏面側にガーニッシュ、ブラケット、パッド等の別物部品を取り付ける際、簡単かつ廉価で、しかも見栄え良く取り付けることができるとともに、別物部品の設置箇所に制約を受けることがなく、任意位置に設定できる等、造形自由度を向上させることができる自動車用内装部品並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、積層構造体の端末処理構造として、周縁全周、あるいは周縁の一部に設けた巻込みシロを加熱軟化させて本体側裏面に巻込み処理する際、別物部品の端末部分をこの巻込みシロにより包み込むように固定することで、溶着用ボスによるボス固定構造に替えて、別物部品を簡単かつ廉価に固定できることに着目して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブとを備えた積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品において、前記積層構造体における発泡樹脂基材は、成形上下型間でプレス成形されるとともに、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される樹脂リブは、成形下型の溝部内に溶融樹脂を射出充填して成形され、更に、発泡樹脂基材、樹脂リブの裏面側に別物部品が配置され、この別物部品の端末部分は、積層構造体における周縁端末の巻込みシロにより巻込み支持されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、自動車用内装部品の用途としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。また、自動車用内装部品の全体構造に本発明に係る積層構造体を適用することもできるが、自動車用内装部品の一部、例えば上下二分割体のドアトリムにおけるドアトリムアッパーのみに本発明に係る積層構造体を適用するか、あるいはドアトリムアッパーにおいても、フロント、リヤの前後二分割体から構成する場合において、ドアトリムアッパー・フロント側にのみ積層構造体を適用することもできる。
【0014】
更に、保形性を有する発泡樹脂基材は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所望の曲面形状に成形することで、リブ等の補強材がなくても、成形後、型から脱型しても形状を保持する程度の剛性(保形性)を有している。また、製品形状が高展開率部分を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
【0015】
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。上記発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。その時の発泡樹脂基材のセル径は0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmの範囲のものが良い。
【0016】
次いで、積層構造体の外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に表皮が積層一体化されていても良い。この表皮としては、材料は限定しないが、表面外観を高めるトップ層と、クッション性能を付与するクッション層との積層シート材料とから構成しても良い。トップ層としては、サーモプラスチックオレフィン(TPO)シート、サーモプラスチックウレタン(TPU)シート、塩ビシート等の合成樹脂シート、あるいは織布、不織布、編布等の布地シート等を使用することができ、クッション層としては、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等を使用することができる。
【0017】
一方、樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂は、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等がある。また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子などがある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。更に、上記樹脂リブは、発泡樹脂基材の裏面に所定パターン形状に沿って配置される。配置箇所としては、反り変形、波打ち変形等が生じ易い周縁部及び荷重が加わり易いウエスト部やアームレスト部等、荷重が集中する部位に部分的に配置される。
【0018】
更に、積層構造体の背面側に取り付けられる別物部品としては、ガーニッシュ、ブラケット、パッド等があり、従来では、ボスによる溶着固定、ホットメルト系接着剤による溶着固定が一般的であったが、本発明では、一部にボス溶着固定を採用するが、別物部品の端末部分において、発泡樹脂基材の周縁端末に沿う巻込みシロにより巻き込み処理することで、積層構造体の端末処理と別物部品の端末処理が同時に実施されることが特徴である。
【0019】
そして、本発明に係る自動車用内装部品によれば、その一部に軽量で低コストに製作できる積層構造体を採用したため、製品の軽量化を図ることができ、かつ製品コストを低減化させることができることに加えて、積層構造体の裏面側に配設される別物部品の取付構造について、積層構造体の周縁端末に沿って設定した巻込みシロの端末処理工程時に別物部品の端末部分を包持状に巻込み固着するという構成を採用したため、溶着用ボスの設定箇所を低減でき、金型加工等にかかる費用を低減できるとともに、別物部品の端末部分の切断木口は巻込みシロで被包され、外観見栄えが向上するとともに、造形自由度も向上させることができる。
【0020】
次いで、本発明に係る自動車用内装部品の更に好ましい実施の形態においては、前記積層構造体における巻込みシロは、別物部品の端末部分を巻込み支持することに加えて、別物部品のボス孔に挿通させた溶着用ボスの先端面と別物部品の側面に対して一体に溶着固定されていることを特徴とする。
【0021】
そして、この実施の形態によれば、積層構造体における発泡樹脂基材の製品端末に沿って設けられる巻込みシロは略90°折曲操作されて、別物部品の側面に溶着すると同時に、別物部品のボス孔に挿通させた溶着用ボスの先端面も別物部品の貼付面と一体に巻込みシロと溶着するという構成であるため、ボスを設定することで、別物部品を取り付ける位置精度が向上し、かつ別物部品のより確実な固定が可能になるという効果を有する。
【0022】
次いで、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブとを備えた積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品の製造方法において、前記積層構造体は、発泡樹脂基材の素材である発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内に投入し、成形金型の型締めにより、発泡樹脂基材を所要形状にプレス成形するとともに、上記成形金型の型締め後に、成形下型の溝部内に溶融樹脂を射出充填して、発泡樹脂基材の裏面側に所定パターン形状の樹脂リブを一体化して成形され、その後、成形金型から積層構造体を脱型した後、積層構造体の背面側に別物部品を配置して、樹脂リブに一体化した溶着用ボスを別物部品のボス孔に挿入した後、溶着用ボスをカシメ加工することで、発泡樹脂基材並びに樹脂リブの裏面側所定位置に別物部品を一体化し、次いで、積層構造体の周縁端末部に設定した巻込みシロの裏面側を端末処理装置における加熱治具により加熱軟化処理した後、端末処理装置における巻込み機構部の進退操作により、別物部品の端末部分を包み込むように巻込みシロを折曲操作することで、別物部品の端末部分を端末処理する工程を付加したことを特徴とする。
【0023】
そして、本発明方法は、自動車用内装部品の一部、あるいは全体を構成する積層構造体の製造方法として、積層構造体の成形工程、成形金型から積層構造体を脱型後、積層構造体の裏面に別物部品を取り付ける別物部品の取付工程の2工程からなっており、特に、別物部品の取付工程は、ボスの溶着固定工程と、巻込みシロの巻込み処理工程とからなっている。
【0024】
ここで、積層構造体の成形方法に使用する成形金型は、例えば、型開方向を上下方向に設定した仕様の成形金型においては、上下動可能な成形上型と、成形上型の下方側に位置する固定側である成形下型と、成形下型に連結される射出機とから構成され、射出機から供給される溶融樹脂は、成形下型に設けられたマニホールド、ゲート等の樹脂通路を通じて成形下型の型面に穿設加工されている所定パターン形状の溝部内に供給される。また、所望ならば、成形上型に真空吸引機構を付設しても良く、発泡樹脂基材の絞り成形時、成形上型から真空吸引力を作用させることで、製品形状の賦形性を高めるとともに、絞模様等の転写に有利である。一方、成形下型にエアブロー機構を付設しても良く、エアブロー機構は、発泡樹脂基材の成形時に冷却用エアを吹き付けることで冷却サイクルを短縮化できる。
【0025】
従って、発泡樹脂基材の素材である発泡樹脂シートをヒーター等により、加熱軟化処理を行なった後、発泡樹脂シートを成形金型内に投入し、その後、成形上下型を型締めすることで、発泡樹脂基材を所要形状にプレス成形するとともに、発泡樹脂基材の成形と同時、あるいは若干のタイム差を設定した後、発泡樹脂基材裏面に対して射出機から溶融樹脂をマニホールド、ゲート等の樹脂通路を通じて成形下型の溝部内に供給して、発泡樹脂基材の裏面に所定パターン形状の樹脂リブを一体化することができる。また、所望ならば、発泡樹脂シートに予め表皮を貼付しておくか、あるいは成形時に表皮を一体化することで、発泡樹脂基材の表面に表皮を積層することもできる。
【0026】
次いで、積層構造体の裏面に別物部品を取り付ける取付構造に使用する設備としては、溶着用ボスのカシメ加工に使用するカシメ装置と、別物部品の端末部分を包持するように巻込みシロにより巻込み処理する端末処理装置とがある。カシメ装置としては、加工対象となる積層構造体をセットする溶着用治具と、樹脂リブと一体に設けた溶着用ボスに対応して超音波加工を施すための超音波ホーンがプレス機に連結されたものが使用される。また、端末処理装置は、成形後の積層構造体をセットする受け治具と、積層構造体の端縁部に相当する巻込みシロを加熱軟化処理する加熱治具と、巻込みシロを発泡樹脂基材本体の裏面側に折返し処理する巻込み機構部とからなる。上記受け治具は、積層構造体をセットするためのセット台と、セット台上にセットされた積層構造体を固定するためのスペーサ、及び受け治具押さえとから構成されている。また、加熱治具としては、ボックス状のヒーターを備えたヒーター支持体が横方向にスライド可能であり、かつ上下方向に対しても昇降可能な構成を採用しても良い。更に、巻込み機構部としては、直方体形状の巻込みコマが進退用シリンダにより水平方向に沿って進退駆動されるとともに、進退用シリンダを支持するテーブルがテーブル駆動用シリンダにより上下方向に沿って駆動される。
【0027】
従って、積層構造体の成形が完了すれば、成形金型を型開きして積層構造体を取り出した後、カシメ装置における溶着用治具に積層構造体をセットし、その上に別物部品を載置する。この時、樹脂リブに立設した溶着用ボスを別物部品のボス孔に挿通させ、溶着用ボスの先端に対してプレス機に連結した超音波ホーンを下降させて溶着加工を行ない、積層構造体の樹脂リブに設けた溶着用ボスを介して別物部品を部分的に溶着固定する。
【0028】
その後、別物部品を一体化した積層構造体を端末処理装置のセット用治具上にセットし、積層構造体における発泡樹脂基材の周縁端末に相当する巻込みシロ裏面を加熱治具により加熱軟化させ、その後、巻込みコマをシリンダ駆動させることにより巻込みシロを巻込み操作し、この巻込みシロにより、別物部品の端末部分を包み込むように巻込み処理すれば良い。
【0029】
このように、本発明方法によれば、積層構造体の製造方法は、所要形状に成形された積層構造体に対して、別物部品を取り付ける別物部品の取付工程が付加されており、この別物部品の取付工程は、溶着用ボスの溶着カシメ工程と、発泡樹脂基材の巻込みシロにより別物部品の端末部分を巻き込む端末処理工程とからなっており、従来のボス溶着固定方法に比べ、ボス設定箇所の制約が緩和され、かつボスの個数も低減でき、溶着加工作業を簡素化できるとともに、別物部品の端末部分を発泡樹脂基材により巻き込むため、外観見栄えも向上し、特に、発泡樹脂基材における一般の巻込みシロの端末処理工程を利用するため、工数アップを抑えられる。
【0030】
更に、本発明方法の好ましい実施の形態においては、積層構造体の周縁端末に設定した巻込みシロの端末処理工程において、別物部品の端末部分は、積層構造体の裏面から面直方向に配置され、巻込みシロを略90°折曲操作することにより、別物部品に溶着固定されるとともに、溶着用ボスの先端面と別物部品の側面との双方を巻込みシロと一体に溶着することを特徴とする。
【0031】
そして、この実施の形態においては、別物部品の端末部分は、樹脂リブと発泡樹脂基材の巻込みシロにより挟持され、かつ樹脂リブから立設した溶着用ボスの先端面部が巻込みシロと溶着一体化することで、別物部品の端末部分が樹脂リブと巻込みシロにより確実に保持されることになる。また、ボスを設定することで別物部品を取り付ける位置精度を向上させることができるという効果を有する。
【発明の効果】
【0032】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品並びにその製造方法によれば、自動車用内装部品の全体、あるいは一部を構成する積層構造体は軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面で剛性が必要とされる部位に一体化される樹脂リブとから構成されているため、従来の重量の嵩む樹脂芯材を配置できることから、軽量で低コストに自動車用内装部品を提供できるとともに、積層構造体の裏面に取り付けるガーニッシュ、ブラケット、パッド等の別物部品については、積層構造体の周縁端末部に設定した巻込みシロの端末処理時に別物部品の端末部分を一体に巻込み処理するというものであるから、従来のボス溶着工法やホットメルト接着工法に比べ、工数を低減でき、別物部品の端末部分が発泡樹脂基材の巻込みシロで短時間に被包されるため、端末部分の見栄えを廉価な方法で高めることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る自動車用内装部品並びにその製造方法の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0034】
図1乃至図20は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同ドアトリムにおけるドアトリムアッパーを示す正面図、図3は同ドアトリムアッパーの構成を示す断面図、図4は同ドアトリムアッパーにおけるドアトリムアッパー・フロントの構成を示す断面図、図5は同ドアトリムアッパー・フロントの成形に使用する成形金型の構成を示す全体図、図6乃至図8は同ドアトリムアッパー・フロントの成形工程を示す各説明図、図9乃至図14は同ドアトリムアッパー・フロントに別物部品を取り付ける各工程を示すもので、図9,図10は溶着用ボスのカシメ加工工程を示す各説明図、図11乃至図14は別物部品の端末部分をサポートする巻込みシロの加熱軟化処理、巻込み処理をそれぞれ示す各説明図、図15乃至図20は本発明の変形例を示すもので、図15は別物部品の形状を変更した断面図、図16乃至図20は図15に示す別物部品をドアトリムアッパー・フロントに取り付ける各工程を示す説明図である。
【0035】
図1乃至図4に基づいて、本発明に係る自動車用内装部品を適用した自動車用ドアトリム20の構成について説明する。図1に示すように、自動車用ドアトリム20は、ドアトリムアッパー20Aと、ドアトリムロア20Bの上下二分割体から構成されており、ドアトリムアッパー20Aには、インサイドハンドルユニット21がその中接部のフロント側に取り付けられている。一方、ドアトリムロア20Bには、室内側に膨出するアームレスト22が形成され、アームレスト22の上面には、パワーウインドウスイッチ等のスイッチパネル23、プルハンドルユニット24が設けられている。更に、アームレスト22の下方には、備品を収容できるドアポケット25が設けられており、このドアポケット25のフロント側にスピーカグリル26がドアトリムロア20Bと一体あるいは別体に設けられている。
【0036】
このように、本発明を適用した自動車用ドアトリム20は、ドアトリムアッパー20Aとドアトリムロア20Bとの上下二分割体から構成され、外観上の対比効果により意匠性を高めるとともに、成形金型のコンパクト化を図ることができる。更に、本発明においては、ドアトリムアッパー20Aについても、前後方向に二分割構成が採用されている。すなわち、図2乃至図4に示すように、ドアトリムアッパー20Aについては、ドアトリムアッパー・フロント30とドアトリムアッパー・リヤ40との前後二分割体から構成されている。尚、ドアトリムアッパー・フロント30及びドアトリムアッパー・リヤ40双方の下縁には、ドアトリムロア20Bと接合させるための接合用フランジ27が設定されている。そして、ドアトリムアッパー・フロント30の構成として、軽量で低コストに製作できる積層構造体の構成を採用するとともに、その裏面側に、例えば、ガーニッシュ、ブラケット、パッド等の別物部品が配置される場合、本実施例ではウエストガーニッシュ50が取り付けられているが、ウエストガーニッシュ50の取り付けを簡単かつ廉価でしかも外観見栄えも良好に行なえるようにしたことが特徴である。
【0037】
次に、ドアトリムアッパー・フロント30並びにドアトリムアッパー・リヤ40の具体的な構成について説明する。まず、積層構造体から構成されるドアトリムアッパー・フロント30は、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材31と、この発泡樹脂基材31の裏面側に一体化され、剛性を付与する樹脂リブ32と、発泡樹脂基材31の表面側に一体化される加飾機能をもつ表皮33とから大略構成されている。
【0038】
上記発泡樹脂基材31は、保形性を備えるように、発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形して、形状が付与される。上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施形態では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材31の発泡倍率は2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に好ましくは1〜10mmの範囲に設定されている。
【0039】
次いで、樹脂リブ32は、縦横方向、あるいは斜め方向等に延びる格子状パターンに設定されている。そして、この樹脂リブ32は、ガラス繊維、天然繊維等の強化繊維を添加した汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。
【0040】
このように、積層構造体であるドアトリムアッパー・フロント30が構成されているが、このドアトリムアッパー・フロント30と連接するドアトリムアッパー・リヤ40は、合成樹脂の射出成形体から構成されており、使用する素材としては、ドアトリムアッパー・フロント30の樹脂リブ32と同一の素材が使用でき、ドアトリムアッパー・フロント30とドアトリムアッパー・リヤ40との外観上のアクセント効果により、優れた外観意匠性が保証される点はドアトリムアッパー20Aとドアトリムロア20Bとの関係と同一である。
【0041】
更に、本発明に係る自動車用ドアトリム20においては、ドアトリムアッパー・フロント30の裏面側にウエストガーニッシュ50が取り付けられているが、このウエストガーニッシュ50の取付構造が簡素化されている。すなわち、図4に示すように、ドアトリムアッパー・フロント30の裏面側にウエストガーニッシュ50が重ね合わされ、樹脂リブ32から裏面側に立設した溶着用ボス34がウエストガーニッシュ50のボス孔51内に差し込まれ、溶着用ボス34の先端部分がカシメ加工されることにより、ウエストガーニッシュ50の下半部分がドアトリムアッパー・フロント30の裏面に固定されているとともに、ウエストガーニッシュ50の上半部分については、発泡樹脂基材31の端末部に設けた巻込みシロ35でウエストガーニッシュ50の上側端末50aが巻込み固着されている。
【0042】
従って、上側部分にボス溶着箇所を設定する必要がないため、ウエストガーニッシュ50を取り付けるための溶着用ボス34の個数を低減でき、金型加工工数を削減でき、発泡樹脂基材31の巻込みシロの巻込み操作は、通常の周縁部分の端末処理工程と併用できるため、工数アップを伴なうこともなく、ウエストガーニッシュ50の上側端末50aを巻込みシロ35で被包するため、外観見栄え上も好ましい。
【0043】
次いで、ドアトリムアッパー・フロント30を成形する際に使用する成形金型60の構成について、図5を基に説明する。成形金型60は、所定ストローク上下動可能な成形上型61と、成形上型61と対をなす固定側の成形下型62と、成形下型62に接続される射出機63とから大略構成されている。更に詳しくは、成形上型61は、製品形状に合致したキャビティ部611が形成されており、成形上型61の上面に連結された昇降シリンダ612により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型61の4隅部にはガイドブッシュ613が設けられている。
【0044】
一方、成形下型62には、成形上型61のキャビティ部611に対応するコア部621が設けられている。また、このコア部621の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド622、ゲート623が成形下型62に設けられており、このマニホールド622、ゲート623の樹脂通路を経て、射出機63から供給される溶融樹脂Mがコア部621の上面に供給される。尚、樹脂リブ32を形成するために、コア部621上面に溶融樹脂Mが供給される溝部624が穿設されている。また、成形下型62の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト625が穿設され、このガイドポスト625は、成形上下型61,62が型締めされる際、成形上型61のガイドブッシュ613内にガイドポスト625が案内されることで、成形上型61のプレス性を適正に維持することができる。
【0045】
次に、上記ドアトリムアッパー・フロント30の成形方法の各工程について説明する。まず、発泡樹脂シートSの一方面に表皮33をラミネートしたものを図示しないヒーター装置により加熱軟化処理を行ない、成形上下型61,62が型開き状態にある時、型内に投入する。この実施例では、発泡樹脂シートSとして、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み3mm)が使用されている。尚、所望により、発泡樹脂シートSと表皮33とを成形金型60内に別々に重ね合わせるようにセットしても良い。そして、発泡樹脂シートSをセットした後、昇降シリンダ612の駆動により成形上型61が所定ストローク下降して、成形上下型61,62が型締めされて、発泡樹脂シートSが所望の型面形状に沿って賦形される(図7参照)。
【0046】
更に、発泡樹脂基材31の成形と同時、あるいは一定時間経過後に樹脂リブ32の射出成形が行なわれる。すなわち、成形上下型61,62が型締め状態にある時、射出機63からマニホールド622、ゲート623を通じて溝部624内に溶融樹脂Mを射出充填して、樹脂リブ32が所定パターン形状に成形される。尚、この溶融樹脂Mとしては、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=80g/10分)を使用している。また、溶融樹脂Mには、タルク等のフィラーが適宜割り合いで混入されていても良い。
【0047】
以上説明したように、ドアトリムアッパー・フロント30が所要形状に成形されるが、成形が完了すれば、成形上下型61,62が型開きされ、成形金型60からドアトリムアッパー・フロント30を取り出し、図9に示すカシメ装置70における溶着用治具71にドアトリムアッパー・フロント30をセットする。そして、ウエストガーニッシュ50をドアトリムアッパー・フロント30の裏面側に位置決めするが、この時、ドアトリムアッパー・フロント30の樹脂リブ32に一体化している溶着用ボス34をウエストガーニッシュ50のボス孔51内に挿入して、溶着用ボス34の先端部分を超音波ホーン72でカシメ加工することで、図10に示すように、ウエストガーニッシュ50の下半部分は、溶着用ボス34のカシメ接合により、ドアトリムアッパー・フロント30の裏面側所定位置に固定される。この時、ウエストガーニッシュ50の上側端末50aより上方に発泡樹脂基材31の端末部分が延在している。そして、この部位が巻込みシロ35に相当する。
【0048】
次いで、ドアトリムアッパー・フロント30に対してウエストガーニッシュ50の取り付けを完了させるために、図11に示す端末処理装置80を使用する。この端末処理装置80は、ドアトリムアッパー・フロント30をセットするセット用治具81と、ドアトリムアッパー・フロント30における巻込みシロ35を加熱軟化させる加熱治具82と、巻込みシロ35を本体の裏面側に巻込み処理する巻込み機構部83とから大略構成されている。
【0049】
更に詳しくは、セット用治具81は、ドアトリムアッパー・フロント30をセットするためのセット台81aと、ドアトリムアッパー・フロント30を所定位置に位置決め固定するためのスペーサ81bと、受け治具押さえ81cとから構成されている。次に、加熱治具82としては、ヒーター82aを支持するヒーター支持体82bが駆動用シリンダ82cに連結されており、この加熱治具82のヒーター82aにより、ドアトリムアッパー・フロント30の巻込みシロ35の裏面が加熱軟化される。更に、巻込み機構部83の動作については、巻込みシロ35を巻込み処理する巻込みコマ83aが進退用シリンダ83bにより水平方向に沿って進退駆動されるとともに、進退用シリンダ83bを取り付けたテーブル83cは、上下動作用シリンダ83dにより上下方向に沿って所定ストローク駆動される。
【0050】
従って、図10に示す半完成品の端末処理を行なうには、図11に示すように、端末処理装置80のセット用治具81のセット台81aにドアトリムアッパー・フロント30とウエストガーニッシュ50の下半部分を一体化した状態でセットする。そして、スペーサ81b、受け治具押さえ81cにより所定位置で固定した後、図12に示すように、加熱治具82が所定位置に駆動し、ヒーター82aにより発泡樹脂基材31の周縁部分に沿って設定された巻込みシロ35の裏面側が加熱軟化される。
【0051】
その後、図13に示すように、ヒーター82aを支持するヒーター支持体82bは、駆動用シリンダ82cの駆動により後退し、代わりに巻込み機構部83における巻込みコマ83aが進退用シリンダ83bの動作によりスライド動作して、巻込みシロ35を略90°折曲操作し、ウエストガーニッシュ50の上側端末50aを基点として巻込み処理を行なう。この時、図14に示すように、進退用シリンダ83b及び上下動作用シリンダ83dの双方の動作により、巻込みシロ35はほぼ180°の折曲角度で巻込み処理を行なうことができる。そして、巻込みシロ35の端末処理動作は、ドアトリムアッパー・フロント30の周縁に沿って通常行なわれるため、通常の端末処理と同時にウエストガーニッシュ50の巻込み処理動作も行なえるため、工数が新たに付加されることがなく、また、ボスの個数も低減でき、しかも、外観見栄えも高めることができる等、大きな作用効果が期待できる。
【0052】
次に、図15乃至図20は、本発明の変形例を示すもので、図15に示すように、この変形例においてもドアトリム20におけるドアトリムアッパー・フロント30にウエストガーニッシュ50を取り付ける形態について適用されている。そして、図面から明らかなように、ウエストガーニッシュ50は、屈曲形状に設定されており、上部と下部のそれぞれ複数箇所にボス孔51a,51b(上側ボス孔を51a、下側ボス孔を51bとする)が形成され、それに対応して、樹脂リブ32についても、対応する溶着用ボス34a,34bが設定されている。そして、ウエストガーニッシュ50の下側については、溶着用ボス34bがウエストガーニッシュ50のボス孔51b内に差し込まれ、先端をカシメ加工することでウエストガーニッシュ50の下半部分がボス固定されているとともに、ウエストガーニッシュ50の上側端末50aを含む上端側は、樹脂リブ32と巻込みシロ35との間で挟持固定されており、更に、巻込みシロ35は、溶着用ボス34aの先端面と溶着固定している。
【0053】
従って、溶着用ボス34aを設定することで、ウエストガーニッシュ50を取り付ける位置精度をより高めることができ、端末部分を確実かつ堅固に固定することができる。この場合についても、図16に示すように、溶着用治具71にドアトリムアッパー・フロント30をセットした後、各ボス34a,34bに対して、ウエストガーニッシュ50のボス孔51a,51bをそれぞれ挿通させてセットするが、ウエストガーニッシュ50の上下側にそれぞれ位置決め機能をもつボス孔51a,51bが設定されているため、位置決め精度を精密に制御できる。そして、図17に示すように、下側の溶着用ボス34bの先端を超音波ホーン72で溶着加工することで、ウエストガーニッシュ50の下半部分をドアトリムアッパー・フロント30に固定することができる。
【0054】
次いで、図18に示すように、端末処理装置80のセット用治具81にドアトリムアッパー・フロント30をセットした後、図19に示すように、加熱治具82により発泡樹脂基材31の先端の巻込みシロ35の裏面を加熱溶融させた後、図20に示すように、巻込み機構部83の巻込みコマ83aを進退用シリンダ83bの駆動により進退動作させて、巻込みシロ35をウエストガーニッシュ50の溶着面に沿って折曲操作すれば、巻込みシロ35と樹脂リブ32との間でウエストガーニッシュ50の上側端末50aを挟持でき、更に、溶着用ボス34aの先端面と巻込みシロ35とが溶着一体化するため、アンカー結合することでより強固な保持が可能となる。
【0055】
従って、この変形例においても、発泡樹脂基材31における端末処理方法を利用して、ウエストガーニッシュ50の上側端末50aを樹脂リブ32と巻込みシロ35とで挟持固定するとともに、溶着用ボス34aを巻込みシロ35と一体化することで、アンカー構造となり、より堅固な保持が可能になる等、構造を簡素化する一方、確実な取付強度も保証することができるとともに、巻込みシロ35は略90°の折曲操作で良く、巻込み機構部83の動作は進退用シリンダ83bのみで済むため、巻込みシロ35の巻込み作業を簡素化できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明した実施例は、ドアトリムアッパー20Aとドアトリムロア20Bとを接合するタイプであり、かつドアトリムアッパー20Aが前後に二分割されたドアトリムアッパー・フロント30に本発明に係る積層構造体の構成を採用するとともに、ウエストガーニッシュ50等の別物部品を簡単かつ廉価に取り付ける構造に適用したが、積層構造体をドアトリムアッパー20A全体に適用するか、一体型のドアトリム、あるいはドアトリム以外の内装部品、例えば、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等、内装トリム全般に本発明構造及び本発明方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る自動車用内装部品の構造を適用した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1に示す自動車用ドアトリムにおけるドアトリムアッパーを示す正面図である。
【図3】図2中III −III 線断面図である。
【図4】図2中IV−IV線断面図である。
【図5】図2に示すドアトリムアッパー・フロントを成形するために使用する成形金型の全体構成を示す説明図である。
【図6】図2に示すドアトリムアッパー・フロントの成形方法における素材のセット工程を示す説明図である。
【図7】図2に示すドアトリムアッパー・フロントの成形方法における発泡樹脂基材の成形工程を示す説明図である。
【図8】図2に示すドアトリムアッパー・フロントの成形方法における樹脂リブの成形工程を示す説明図である。
【図9】図2に示すドアトリムアッパー・フロントにウエストガーニッシュをセットする状態を示す説明図である。
【図10】図2に示すドアトリムアッパー・フロントにウエストガーニッシュをボス溶着固定する状態を示す説明図である。
【図11】図2に示すドアトリムアッパー・フロントの端末処理を行なう端末処理装置の全体構成を示す説明図である。
【図12】図11に示す端末処理装置を使用してドアトリムアッパー・フロントの巻込みシロを加熱軟化させる工程を示す説明図である。
【図13】図11に示す端末処理装置を使用して、ドアトリムアッパー・フロントの巻込みシロを巻込み処理する工程を示す説明図である。
【図14】図11に示す端末処理装置を使用して、ドアトリムアッパー・フロントの巻込みシロを巻込み処理する工程を示す説明図である。
【図15】図2に示すドアトリムアッパー・フロントに形状を変更したウエストガーニッシュを取り付けた状態を示す断面図である。
【図16】図15に示すドアトリムアッパー・フロントとウエストガーニッシュとを溶着用治具にセットする状態を示す説明図である。
【図17】図15に示すドアトリムアッパー・フロントとウエストガーニッシュとの溶着固定状態を示す説明図である。
【図18】図15に示すドアトリムアッパー・フロントの端末処理を行なう端末処理装置を示す説明図である。
【図19】図15に示すドアトリムアッパー・フロントにおける巻込みシロの加熱軟化状態を示す説明図である。
【図20】図15に示すドアトリムアッパー・フロントにおける巻込みシロの巻込み処理工程を示す説明図である。
【図21】従来の自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図22】図21中XXII−XXII線断面図である。
【図23】従来のドアトリムを成形する成形金型の全体構成を示す説明図である。
【図24】従来の軽量型の自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図25】図24中XXV −XXV 線断面図である。
【図26】従来の軽量型の自動車用ドアトリムに別物部品をボス溶着固定した状態を示す断面図である。
【図27】従来の軽量型の自動車用ドアトリムに別物部品をホットメルト系接着剤により接着固定した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
20 自動車用ドアトリム
20A ドアトリムアッパー
20B ドアトリムロア
30 ドアトリムアッパー・フロント
31 発泡樹脂基材
32 樹脂リブ
33 表皮
34 溶着用ボス
35 巻込みシロ
40 ドアトリムアッパー・リヤ
50 ウエストガーニッシュ
50a 上側端末
51,51a,51b ボス孔
60 成形金型
61 成形上型
612 昇降シリンダ
62 成形下型
622 マニホールド
623 ゲート
624 溝部
63 射出機
70 カシメ装置
71 溶着用治具
72 超音波ホーン
80 端末処理装置
81 セット用治具
81a セット台
81b スペーサ
81c 受け治具押さえ
82 加熱治具
82a ヒーター
82b ヒーター支持体
82c 駆動用シリンダ
83 巻込み機構部
83a 巻込みコマ
83b 進退用シリンダ
83c テーブル
83d 上下動作用シリンダ
M 溶融樹脂
S 発泡樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材(31)と、この発泡樹脂基材(31)の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブ(32)とを備えた積層構造体(30)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(20)において、
前記積層構造体(30)における発泡樹脂基材(31)は、成形上下型(61,62)間でプレス成形されるとともに、この発泡樹脂基材(31)の裏面に一体化される樹脂リブ(32)は、成形下型(62)の溝部(624)内に溶融樹脂(M)を射出充填して成形され、更に、発泡樹脂基材(31)、樹脂リブ(32)の裏面側に別物部品(50)が配置され、この別物部品(50)の端末部分(50a)は、積層構造体(30)における周縁端末の巻込みシロ(35)により巻込み支持されていることを特徴とする自動車用内装部品。
【請求項2】
前記積層構造体(30)における巻込みシロ(35)は、別物部品(50)の端末部分(50a)を巻込み支持することに加えて、別物部品(50)のボス孔(51)に挿通させた溶着用ボス(34a)の先端面と別物部品(50)の側面に対して一体に溶着固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装部品。
【請求項3】
所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材(31)と、この発泡樹脂基材(31)の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブ(32)とを備えた積層構造体(30)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(20)の製造方法において、
前記積層構造体(30)は、発泡樹脂基材(31)の素材である発泡樹脂シート(S)を加熱軟化処理した後、成形金型(61,62)内に投入し、成形金型(61,62)の型締めにより、発泡樹脂基材(31)を所要形状にプレス成形するとともに、上記成形金型(61,62)の型締め後に、成形下型(62)の溝部(624)内に溶融樹脂(M)を射出充填して、発泡樹脂基材(31)の裏面側に所定パターン形状の樹脂リブ(32)を一体化して成形され、その後、成形金型(61,62)から積層構造体(30)を脱型した後、積層構造体(30)の背面側に別物部品(50)を配置して、樹脂リブ(32)に一体化した溶着用ボス(34)を別物部品(50)のボス孔(51)に挿入した後、溶着用ボス(34)をカシメ加工することで、発泡樹脂基材(31)並びに樹脂リブ(32)の裏面側所定位置に別物部品(50)を一体化し、次いで、積層構造体(30)の周縁端末部に設定した巻込みシロ(35)の裏面側を端末処理装置(80)における加熱治具(82)により加熱軟化処理した後、端末処理装置(80)における巻込み機構部(83)の進退操作により、別物部品(50)の端末部分(50a)を包み込むように巻込みシロ(35)を折曲操作することで、別物部品(50)の端末部分(50a)を端末処理する工程を付加したことを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項4】
積層構造体(30)の周縁端末に設定した巻込みシロ(35)の端末処理工程において、別物部品(50)の端末部分(50a)は、積層構造体(30)の裏面から面直方向に配置され、巻込みシロ(35)を略90°折曲操作することにより、別物部品(50)に溶着固定されるとともに、溶着用ボス(34a)の先端面と別物部品(50)の側面との双方を巻込みシロ(35)と一体に溶着することを特徴とする請求項3に記載の自動車用内装部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−47207(P2010−47207A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215195(P2008−215195)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】