説明

自己位置標定装置、自己位置標定方法および自己位置標定プログラム

【課題】道路上の白線や、道路標識といった既存の道路インフラを利用して、自己位置標定装置の標定精度を向上させる。
【解決手段】車両に搭載した自己位置標定装置100において、DR演算部3はデッドレコニングにより車両位置を算出する。擬似距離残差計算部22は擬似距離と衛星軌道パラメータに基づく衛星−車両間の距離とで擬似距離残差を算出する。カメラ7は車両前方の道路を撮像し、画像処理部8は画像に映る白線の方位角を算出し、白線方位角取得部23は白線情報データベース9から白線の方位角を取得し、白線方位角残差計算部24は画像処理部8が算出した白線の方位角と白線方位角取得部23が取得した白線の方位角とで方位角残差を算出する。拡張カルマンフィルタ6は擬似距離残差と方位角残差とを観測量として入力し、DR演算部3の測位結果の誤差を推定する。DR演算部3は拡張カルマンフィルタ6の推定誤差で測位結果を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、GIS(Geographic Information System)データベースを作成するために地理データ収集車両に搭載したり、一般車両に搭載してナビゲーションシステムに利用したりする自己位置標定装置、自己位置標定方法および自己位置標定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)の受信機の価格が低下すると共にカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ、カーナビゲーションともいう)が普及し、カーナビゲーションシステムの自己位置標定精度を向上するための技術やドライバーの運転補助のための技術などさまざまな技術が開発されてきた。例えば、自己位置標定精度を向上させる技術として、GPSの観測情報の一つである擬似距離に対して補正情報を反映して測位精度を向上させるディッファレンシャルGPS(DGPS)や、地図情報を使って自己位置を補正するマップマッチング技術や、白線を認識して認識した白線を基準にして行うレーンキーピングなどの技術が挙げられる。
【0003】
国土交通省は、1991年からASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)の開発を主導し、現在は第3期の計画を進行中であり、車車間通信を使った事故回避システムの実用化を目指している。そのような高度なシステムには、現在よりも精度の高い自己位置標定装置が必要とされているが、一般の乗用車に搭載可能な装置ではGPSのアベイラビリティ(Availability,可用性)が悪い状況などにおいて十分な位置標定精度が保てないのが現状である。
【0004】
従来のカーナビ用途などの車両用自己位置標定装置では、GPS、慣性装置、車速パルスなどを利用するものが開発されている。この自己位置標定装置の標定精度を高めるため、道路上の通行区分帯表示用の断続線あるいは連続線(通常“白線”であるので、以下便宜上“白線”と呼ぶ)や道路標識、信号機、建物などのランドマークを利用して自己位置標定精度を高める手法が提案されてきた。
【0005】
例えば、白線を利用する方法として、車両に搭載したビデオカメラで白線を撮影し、その画像を処理した観測値から車両と白線との間の距離を計算し、車両と白線との距離を自己位置補正に利用する方式(特許文献1)がある。
また、建物などのランドマークを利用する方式として、車両に搭載したレーザレーダ等の測距型センサによる観測値と建造物データベースに登録されている値との照合結果に基づく位置補正方式(特許文献2)などが提案されている。さらには、車両の周囲にある建物などのランドマークの並び方や位置関係から自己位置を同定する方式も考案されている(特許文献3)。
また、道路標識や信号を利用する方式として、車両に搭載したカメラによって標識を認識し、二つのカメラまたはレーダを用いて標識までの距離を検出し、データベースから得たその標識の座標と、検出した距離とを使って自己位置を補正する手法(特許文献4)がある。さらには、信号機認識装置と、信号機への方向の仰角を計算する手段を備え、信号機までの水平方向距離を計算し、信号機までの水平方向距離を自己位置補正に利用する方式(特許文献5)などが提案されている。
【0006】
ところが、車載カメラによって認識した白線までの距離を自己位置補正に使う従来方式は、カーナビゲーションシステム等の自己位置標定装置用の地図データベースの精度が十分なものとはいえないため、補正による効果は非常に限定的である。現状、カーナビゲーションに使われているような地図データベースの精度は、車両が道路上に位置する程度の位置補正を行うレーンキーピングに対しては有効であるが、従来方式によりサブメートル級の標定精度を達成するには十分な精度ではない。地図データベースの精度は今後向上すると考えられるが、地球の地殻変動によって1年に数センチメートル程度の絶対座標変動が起きるのが普通であり、地図データベースにおいて確保できる位置座標精度には限界がある。
また、従来方式のうち特許文献2には、専用の建物データベース構築が必要となり、また、高速で高精度なレーザレーダが必要となるといった課題がある。
【0007】
一方、このような状況において、簡便な方法で道路や建造物等のGISデータを作成する方法が開発されつつある。例えば、白線のデータベースを構築する方法(特許文献6)などは、すでに実用化段階に入っている。
【特許文献1】第2687645号公報
【特許文献2】特開2006−138834号公報
【特許文献3】特開平8−247775号公報
【特許文献4】特開2000−97714号公報
【特許文献5】特開平7−35560号公報
【特許文献6】特開2006−47291号公報
【非特許文献1】藤本、“カーナビ用地図データフォーマット KIWI”、デンソーテクニカルレビュー VOL.6 No.1、2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カーナビなどに代表される車両用の自己位置標定装置は、GPS、慣性装置、車速パルスなどを利用するものが標準的である。このような自己位置標定装置では、都市部やトンネル内などのGPS測位信号のアベイラビリティが悪い環境では標定精度が劣化するという課題があった。そのため、GPS測位信号のアベイラビリティが悪い環境でも一定の測位精度を維持するためには、他に何らかの補助手段等が必要である。
【0009】
そこで、本発明は、道路上の白線や、道路標識といった既存の道路インフラを利用して、自己位置標定装置の標定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の自己位置標定装置は、自己位置を測位する測位部と、前記測位部が測位した際の特定の方向を撮像するカメラと、前記カメラが撮像した画像に基づいて前記画像に映っている特定の地物の長さ方向が基準方向に対して成す前記特定の地物の方位角をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する画像方位角部と、地物の長さ方向が基準方向に対して成す当該地物の方位角を記憶する方位角データベースと、前記測位部が測位した自己位置に基づいて前記方位角データベースから前記特定の地物に対応する地物の方位角を取得するデータベース方位角部と、前記画像方位角部が算出した地物の方位角と前記データベース方位角部が取得した地物の方位角との差分を地物方位角残差としてCPUを用いて算出する方位角残差算出部と、前記方位角残差算出部が算出した地物方位角残差に基づいて前記測位部が測位した自己位置の誤差をCPUを用いて推定するカルマンフィルタとを備え、前記測位部は測位した自己位置を前記カルマンフィルタが推定した誤差に基づいて補正し、補正した自己位置を測位結果とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、画像方位角部が画像に映った白線の方位角を算出し、カルマンフィルタが方位角データベースに記憶されている白線の方位角と画像から算出した白線の方位角との方位角残差を観測量として誤差推定を行うことにより、自己位置標定精度を向上させることができる。
【0012】
従来方式は、白線の方位角データを自己位置補正に利用していなかったり(特許文献1)、道路標識が存在する位置の(車両から見た)方位角データを自己位置補正に利用していなかったり(特許文献4)、自己位置標定装置としては改良の余地があった。
そこで、本発明は、方位角が地球の地殻変動による変化が少なく、方位角が絶対位置座標よりも比較的精度良く検出可能であるという点に着目し、白線の方位角や道路標識の方位角を自己位置補正に利用することにより自己位置標定精度を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における自己位置標定装置100の構成図である。
図2は、実施の形態1における自己位置標定装置100の自己位置標定方法を示すフローチャートである。
実施の形態1における自己位置標定装置100の構成の概要および自己位置標定装置100の実行する自己位置標定方法の概要について、図1および図2に基づいて以下に説明する。
自己位置標定装置100の各部は図2に基づいて説明する各処理をCPUを用いて実行する。
【0014】
図1において、自己位置標定装置100は車両(移動体の一例)に搭載され、任意の測位方式によって測位した測位部110の測位結果に含まれる誤差を誤差推定部140を用いて推定し、推定した誤差により測位部110の測位結果を補正して車両の位置や姿勢角を高精度に標定する。
【0015】
<S110:測位処理>
図2において、測位部110は車両の方位角データと速度データを用いたデッドレコニング計算や、3軸の加速度計および3軸のジャイロを利用するストラップダウン演算によって、車両の位置および姿勢角を算出する。デッドレコニング計算に使われる方位角データはジャイロから、速度データは車速パルスから取得することが多い。
【0016】
<S120:GPS観測残差算出処理>
次に、GPS観測残差算出部120は、擬似距離や位相差やドップラー量などのGPS観測量について、GPS観測部121の観測値とGPS観測量演算部122の演算値との差分をGPS観測残差として算出する。
このとき、GPS観測部121はGPS受信機を用いて測位信号を受信してGPS観測量を取得し、GPS観測量演算部122はGPS観測部121のGPS観測量に相当する量を演算により算出する。そして、GPS観測残差算出部120はGPS観測部121の観測値とGPS観測量演算部122の演算値との差分をGPS観測残差として誤差推定部140の入力にする。GPS観測部121によるGPS観測量には、例えば、GPS衛星が測位信号を発信してからGPS受信機が測位信号を受信するまでの時間に光速を乗じることにより算出されるGPS衛星とGPS受信機との間の擬似距離がある。また例えば、特定のGPS衛星からの測位信号(搬送波)を複数のGPS受信機で受信した際のGPS受信機間での受信測位信号の位相差(一重位相差)やGPS受信機間の一重位相差を複数のGPS衛星について得た際の一重位相差同士の差を示す二重位相差もGPS観測量の一例である。また例えば、受信した測位信号の周波数と測位信号の基準周波数との差に基づいて算出されるGPS衛星とGPS受信機との相対速度を示すドップラー量もGPS観測量の一例である。GPS観測量演算部122は、例えば、測位部110が測位した車両の位置と測位信号に含まれる衛星軌道パラメータが示すGPS衛星の位置とに基づいて擬似距離に相当する距離を算出する。また例えば、GPS観測量演算部122は各GPS受信機から各GPS衛星への方向を示すLOS(Line Of Sight)ベクトルとあるGPS受信機から別のGPS受信機への方向を示す基線ベクトルとに基づいて位相差や二重位相差を算出する。また例えば、GPS観測量演算部122はGPS衛星の位置・速度と車両の位置・速度とに基づいてドップラー量を算出する。そして、GPS観測残差算出部120はGPS観測部121のGPS観測値とGPS観測量演算部122のGPS観測値に相当する演算値との差分をGPS観測残差として算出する。
【0017】
<S130:方位角残差算出処理>
次に、方位角残差算出部130は、車両が走行している道路における白線の直線部分の方位角や車両から見た標識の方位角について、方位角観測部131の観測値と方位角演算部132の演算値との差分を方位角残差として算出する。
このとき、方位角観測部131はカメラを用いて車両の進行方向を撮像して白線の直線部分の方位角や車両から見た標識の方位角の観測値を取得し、方位角演算部132はデータベースに登録されているデータに基づいて白線の方位角や標識の方位角の演算値を取得する。そして、方位角残差算出部130は方位角観測部131の観測値と方位角演算部132の演算値との差分を方位角残差として誤差推定部140の入力にする。
【0018】
<S140:誤差推定処理・補正処理>
そして、誤差推定部140は、GPS観測残差と方位角残差とに基づいて、測位部110の測位結果に含まれる誤差を推定する。
測位部110は誤差推定部140が推定した誤差に基づいて位置および姿勢角を補正する。
このとき、誤差推定部140はカルマンフィルタを用いて位置および姿勢角の誤差推定を行う。
このカルマンフィルタは、状態量のダイナミクスをモデル化した状態方程式と、観測量と状態量との関係を定式化した観測方程式とに基づいて状態量の誤差推定を行う。自己位置を標定するような場合、カルマンフィルタは、GPS受信機による特定の観測量の観測値と特定の観測値に相当する演算値(理論値)との差分(観測残差という)を観測量として、自己位置の座標や姿勢角(方位角、仰角、回転角)などの状態量について誤差推定を行う。カルマンフィルタは自己位置の座標や姿勢角の誤差を状態量として算出する。
【0019】
しかし、自己位置標定装置100を搭載した車両がトンネル内やビルの間を移動する際にGPS衛星から測位信号を受信できないというような場合、誤差推定部140(カルマンフィルタ)が誤差推定を行うことができず自己位置標定装置100の標定精度は悪化する。
そこで、実施の形態1における誤差推定部140(カルマンフィルタ)は、測位信号が受信できない場合でも画像に基づいて観測可能な白線や標識に関する方位角残差を観測量として、測位部110の測位結果について誤差推定を行う。
【0020】
ここで、GPS観測量以外の観測量として車両と白線との距離や車両と標識との距離を用いる方法も考えられるが、距離を観測量として用いる方法は、距離の観測値を得るためにステレオカメラやレーザレーダが必要になったり、地殻変動によるデータベースの精度の低下によりデータベースに登録された白線や標識の位置に基づいて算出する距離の演算値の精度が低くなったりするという課題がある。
【0021】
一方、実施の形態1のようにGPS観測量以外の観測量として方位角を用いた場合、単眼カメラが一台あればそのカメラで撮像した画像から方位角の観測値を得ることができ、方位角は地殻変動による変化が少ないためデータベースに記憶された白線や標識の位置に基づく方位角の演算値の精度が比較的高いという利点がある。
【0022】
また、誤差推定部140(カルマンフィルタ)は測位部110の測位結果の誤差以外に、測位部110が用いるジャイロについてのレート誤差やGPS観測残差算出部120が用いるGPS受信機についてのクロック誤差や方位角残差算出部130が用いるカメラについてのアライメント誤差などについても誤差推定を行い、推定した誤差を補正用に出力する。
【0023】
図3は、実施の形態1における自己位置標定装置100のハードウェア資源の一例を示す図である。
図3において、自己位置標定装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、表示装置901、GPS受信機1、ジャイロ4、オドメータ5、カメラ7、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶機器、記憶装置あるいは記憶部の一例である。また、入力データが記憶されている記憶機器は入力機器、入力装置あるいは入力部の一例であり、出力データが記憶される記憶機器は出力機器、出力装置あるいは出力部の一例である。
通信ボード915は入出力機器、入出力装置あるいは入出力部の一例である。
【0024】
通信ボード915は、無線または有線により、LAN(ローカルエリアネットワーク)、インターネット、WAN(ワイドエリアネットワーク)、電話回線などの通信網に接続されている。
【0025】
ジャイロ4は自己位置標定装置100の搭載された車両の方位角、仰角、回転角の角加速度(以下、レートとする)を計測するセンサである。また、ジャイロ4は後述するように方位角のレートのみ計測する1軸ジャイロであってもよい。
オドメータ5は自己位置標定装置100の搭載された車両の車速に応じてパルス(以下、車速または車速パルスとする)を出力する車速センサである。
カメラ7は自己位置標定装置100の搭載された車両の前方に向けて設置され、車両の進行方向に位置する白線や道路標識を撮像する。カメラ7は単眼カメラで構わない。但し、ステレオカメラであっても構わない。また、カメラ7以外に、白線や標識などの地物との距離を計測するためにレーザレーダを備えても構わない。
GPS受信機1はGPS衛星から測位信号を受信し、GPS衛星が測位信号を発信してから測位信号を受信するまでの時間に基づいて擬似距離を算出したり、擬似距離や受信した測位信号の位相に基づいて自己位置を算出したりする。GPS受信機1は車両には1台備える。GPS観測量として二重位相差を観測する場合、位置座標が既知である車両外の地点にもう一台のGPS受信機を備えておき、そのGPS受信機の観測データを車両に送信して利用する場合もある。
【0026】
磁気ディスク装置920には、OS921(オペレーティングシステム)、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、OS921により実行される。
【0027】
上記プログラム群923には、実施の形態において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0028】
ファイル群924には、実施の形態において、「〜部」の機能を実行した際の「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」などの結果データ、「〜部」の機能を実行するプログラム間で受け渡しするデータ、その他の情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。測位部110が測位した自己位置・姿勢角、カメラ7が撮像した画像、方位角残差算出部130が方位角の取得に用いる白線情報や標識情報、GPS観測残差算出部120が観測したGPS観測量やGPS観測残差算出部120が算出したGPS観測残差、方位角残差算出部130が画像から得た白線・標識の方位角や方位角残差算出部130が算出した方位角残差などはファイル群924に含まれるものの一例である。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、実施の形態において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD(Digital・Versatile・Disc)等の記録媒体に記録される。また、データや信号値は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0029】
また、実施の形態において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、自己位置標定プログラムは、「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0030】
図4は、実施の形態1における自己位置標定装置100の構成図である。
図1に基づいて説明した自己位置標定装置100の具体例として、測位部110がジャイロ4やオドメータ5を用いたデッドレコニング(Dead Reckoning、推測航法)により測位を行い、GPS観測残差算出部120がGPS観測量として擬似距離を用いて擬似距離残差を算出し、方位角残差算出部130が白線の方位角残差を算出し、誤差推定部140が擬似距離残差と白線方位角残差とを観測量として入力し、測位部110の測位結果に含まれる航法誤差と方位角残差算出部130が白線の撮像に用いたカメラ7のアライメント誤差とを状態量として計算して補正量として出力する構成について、図4に基づいて以下に説明する。
【0031】
図4において、自己位置標定装置100はDR演算部3、ジャイロ4およびオドメータ5を測位部110として備える。
ジャイロ4は、自己位置標定装置100が搭載された車両の方位角のレートを計測する1軸ジャイロである。
オドメータ5は、自己位置標定装置100が搭載された車両の車速を出力する。
DR演算部3は、ジャイロ4が出力した方位角レートとオドメータ5が出力した車速とに基づいて車両の移動量を推測し、推測した移動量を前回の測位結果に反映して車両の位置や方位角を算出するデッドレコニングをCPUを用いて実行する。
【0032】
また、自己位置標定装置100はGPS受信機1、衛星軌道演算部2、衛星距離計算部21および擬似距離残差計算部22をGPS観測残差算出部120として備え、GPS受信機1および衛星軌道演算部2はGPS観測部121を構成し、衛星距離計算部21はGPS観測量演算部122を構成する。
GPS受信機1は、GPS衛星が発信した測位信号を受信し、GPS衛星が測位信号を発信してから測位信号を受信するまでの時間に基づいて車両とGPS衛星との擬似距離を算出する。また、GPS受信機1は受信した測位信号に含まれるGPS衛星の軌道を示す衛星軌道パラメータを出力する。
衛星軌道演算部2は、GPS受信機1が出力した衛星軌道パラメータに基づいてGPS衛星の位置をCPUを用いて算出する。
衛星距離計算部21は、DR演算部3が算出した車両の位置と衛星軌道演算部2が算出したGPS衛星の位置とに基づいて車両とGPS衛星との距離を衛星距離としてCPUを用いて算出する。
擬似距離残差計算部22は、GPS受信機1が算出した擬似距離と衛星距離計算部21が算出した衛星距離との差分を擬似距離残差としてCPUを用いて算出する。
【0033】
また、自己位置標定装置100はカメラ7、画像処理部8、白線情報データベース9、白線方位角取得部23および白線方位角残差計算部24を方位角残差算出部130として備え、カメラ7および画像処理部8は方位角観測部131を構成し、白線情報データベース9および白線方位角取得部23は方位角演算部132を構成する。
カメラ7は車両に対して前方に向けて設置された単眼カメラであり、車両が走行している道路の進行方向を撮像する。
画像処理部8(画像方位角部の一例)は、カメラ7が撮像した画像に映っている白線が成す角度とDR演算部3が算出した車両の方位角とに基づいて画像に映っている白線の方位角を算出する。
白線情報データベース9(方位角データベース、位置データベースの一例)には各白線について位置(座標、レーンなど)や形状(直線、カーブなど)や方位角などの情報が予め記憶されている。例えば、方位角の情報は白線が位置するレーンの通行方向に応じて白線の上流側を基点として白線の下流側(進行先)が向いている方位を示す。図10に、白線と白線(の直線部分)の方位角とレーンの通行方向との関係を示す。白線情報データベース9は、例えば、特許文献6を利用することにより構築できる。特許文献6によって作成されるデータベースは、平面線形については直線/円曲線/クロソイドの3種類、縦断曲線については直線/2次曲線の2種類によって構成される。
白線方位角取得部23(データベース方位角部)は、DR演算部3が算出した車両の位置と方位角とに基づいて白線情報データベース9から車両の進行方向に位置する白線の方位角を取得する。
白線方位角残差計算部24は、画像処理部8が出力した画像に基づく白線の方位角と白線方位角取得部23が出力した白線情報データベース9に基づく白線の方位角との差分を白線方位角残差としてCPUを用いて算出する。
【0034】
また、自己位置標定装置100は拡張カルマンフィルタ6を誤差推定部140として備える。
拡張カルマンフィルタ6は、擬似距離残差計算部22が算出した擬似距離残差と白線方位角残差計算部24が算出した白線方位角残差とを観測量として入力し、DR演算部3のデッドレコニングによる測位結果に含まれる航法誤差とカメラ7のアライメント誤差とを状態量として計算して補正量として出力する。
【0035】
図5は、実施の形態1における自己位置標定装置100の自己位置標定方法1を示すフローチャートである。
図4に示した自己位置標定装置100の自己位置標定方法1について、図5に基づいて以下に説明する。
図5において、S210は図2の測位処理(S110)に対応し、S221〜S224は図2のGPS残差算出処理(S120)に対応し、S231〜S234は図2の方位角残差算出処理(S130)に対応し、S240は図2の誤差推定処理(S140)に対応する。
自己位置標定装置100の各部は以下に説明する各処理をCPUを用いて実行する。
【0036】
<S210:測位処理の一例>
まず、DR演算部3はジャイロ4から車両の方位角のレートを、オドメータ5から車両の速度を随時入力する。そして、DR演算部3は方位角のレートと車両の速度とを積分して前回測位時からの移動量を算出し、前回測位した車両の位置および方位角に前回測位時からの移動量を加算して現在の車両の位置および方位角を算出するデッドレコニング処理(または、慣性航法処理)を行う。例えば、DR演算部3は東西南北を基準方位として車両の方位角を算出する。
また、DR演算部3は算出した車両の位置および方位角を拡張カルマンフィルタ6が推定した航法誤差に基づいて補正し、補正した値を車両の位置および方位角として出力する。
【0037】
<S221>
また、GPS受信機1は、DR演算部3が測位を行った際にGPS衛星から受信した測位信号に基づいて、DR演算部3が測位を行った際のGPS受信機1(車両)からGPS衛星までの擬似距離と、測位信号が示す衛星軌道パラメータとを出力する。
<S222>
次に、衛星軌道演算部2はGPS受信機1の出力した衛星軌道パラメータに基づいてGPS衛星の位置を算出する。
<S223>
次に、衛星距離計算部21はDR演算部3が測位した車両の位置と衛星軌道演算部2が算出したGPS衛星の位置とに基づいて車両からGPS衛星までの距離を衛星距離として算出する。
<S224>
次に、擬似距離残差計算部22はGPS受信機1が算出した擬似距離と衛星距離計算部21が算出した衛星距離との差分を擬似距離残差として算出する。
【0038】
<S231:撮像処理の一例>
また、DR演算部3が測位を行った際、カメラ7は車両の走行している道路の進行方向を撮像する。
<S232:画像方位角算出処理の一例>
次に、画像処理部8はカメラ7が撮像した画像から画像に映っている道路上の白線を検出する。例えば、画像処理部8は画像を二値化してエッジ部分などの特徴点を抽出し、各特徴点が成す形状や特徴点の位置(路面上か否か)に基づいて画像上の白線を検出する。また例えば、画像処理部8は画像の色情報に基づいて白線を検出する。
そして、画像処理部8は画像上の白線の長さ方向(直線部分)が成す角度(車両に対する白線の相対角度)を算出し、DR演算部3が算出した車両の方位角に画像上の白線の角度を加算して白線の方位角を算出する。もしくは、白線の絶対方位角を直接計算する方法もある。
画像処理部8は、カメラ7の特性に応じて2次元の撮像面に画像として投影された白線について、画像上での白線の角度をカメラ7の特性に応じて実世界の3次元上の角度に変換することにより、実際の白線の相対角、方位角を算出する。
例えば、白線の画像から得られる白線上の複数の点の目視線角の情報と、カメラの道路面からの高さ情報と、道路の形状の情報と、DR演算部3が算出した車両位置および方位角から計算されるカメラの位置座標と向きの情報を用いて、白線上の複数の点の位置座標を計算することで白線の方位角を計算できる。
ここで、カメラ7は撮像方向を車両の進行方向と同じにするように取り付けられているものとする。但し、カメラ7が車両に設置された際に車両に対してカメラ7の設置角に多少のずれが生じることが考えられるため、画像処理部8は拡張カルマンフィルタ6が推定したカメラアライメント誤差を加算して白線の方位角を算出することも可能である。その場合は、カメラアライメント誤差を推定する場合には車両の左右両方の白線を検出して角度を算出する必要がある。
<S233:データベース方位角取得処理の一例>
次に、白線方位角取得部23は、DR演算部3が測位した車両の位置および方位角に基づいて、車両の進行方向に位置する白線の方位角を白線情報データベース9から取得する。つまり、白線方位角取得部23はカメラ7が撮像した画像に映っている白線について白線情報データベース9から方位角を取得する。例えば、白線情報データベース9は東西南北を基準方位として白線の方位角を示している。
<S234:方位角残差算出処理の一例>
次に、白線方位角残差計算部24は画像処理部8が画像に基づいて算出した白線の方位角と白線方位角取得部23が白線情報データベース9から取得した白線の方位角との差分を白線方位角残差として算出する。
【0039】
<S240:誤差推定処理の一例>
そして、拡張カルマンフィルタ6は擬似距離残差計算部22が算出した擬似距離残差と白線方位角残差計算部24が算出した白線方位角残差とを観測量として入力し、DR演算部3の測位結果に含まれる航法誤差とDR計算に用いられるジャイロ4の誤差とDR計算に用いられるオドメータ5の誤差とGPS受信機1のGPSクロック誤差とカメラ7のアライメント誤差とを状態量として計算して補正量として出力する。
【0040】
DR演算部3は拡張カルマンフィルタ6が出力した航法誤差に基づいて測位した車両の位置および方位角を補正し、補正した車両の位置および方位角を出力する。
また、画像処理部8は拡張カルマンフィルタ6が出力したカメラアライメント誤差に基づいてカメラ7の車両に対する設置角を算出し、次回、算出したカメラ7の設置角に基づいて画像に映る白線の方位角を算出する。
【0041】
カルマンフィルタは1960年にKalmanが提唱したアルゴリズムで、計算により求める物理量(状態量と呼ぶ)のダイナミクス(時間発展、時間変化)を線形モデルで与え、状態量の誤差の確率分布関数をガウス分布であるとした場合に、推定誤差を最小とする解を与えるものである。ここで推定誤差を最小にするとは、状態量に選んだ変数(例えば、航法誤差、カメラアライメント誤差、自己位置・姿勢角)のダイナミクスも考慮して残差の二乗和が最小になるように解を推定することを意味する。
一般的なカルマンフィルタの基本方程式は、離散時間系(discrete time system)の場合、以下の状態方程式(式1)と観測方程式(式2)とで表される。
【0042】
【数1】

【0043】
特に、拡張カルマンフィルタ6(Extended Kalman Filter,EKF)は、系の方程式が非線形の場合に、現在の推定量のまわりで線形化した方程式を作り、それをもとに上記基本方程式を構成したカルマンフィルタである。
すなわち、xとzが、以下の式3、式4のように、それぞれxk−1,u,wの関数fおよびx,vの関数hとして表される場合、Jacobianを使って式5、式6のように線形化する。
【0044】
【数2】

【0045】
そして、状態方程式(式7)と観測方程式(式8)とは、式5、式6に示す線形化によって得られたFとHとを用いて次のように表される。
【0046】
【数3】

【0047】
また、カルマンフィルタの演算は時間伝播(Time Update)と観測更新(Measurement Update)とからなる。
【0048】
まず、状態量xの誤差共分散行列Pの時間伝播は、システムのダイナミクスを表す行列Fを用いて以下の式9および式10で表される。
式9については、例えば、第二項あるいは第三項までを使って近似計算する。
【0049】
【数4】

【0050】
また、観測更新は以下の式11〜式13で計算される。
【0051】
【数5】

【0052】
以上の各式において、実施の形態1では、DR演算部3の測位した自己位置や方位角に含まれる航法誤差と航法計算に利用するセンサ(ジャイロ4、オドメータ5、GPSクロックなど)の誤差とカメラ7のアライメント誤差とが状態量xに対応し、擬似距離残差と白線方位角残差とが観測残差Δzに対応する。
拡張カルマンフィルタ6は、以上の各式および理論に基づいて、航法誤差およびカメラアライメント誤差を推定する。
【0053】
実施の形態1では、以下のような自己位置標定装置100について説明した。
実施の形態1における自己位置標定装置100は、ハードウェアとして、既存のカーナビレベルのハードウェア構成(GPS受信機1+1軸ジャイロ4+車速パルス[オドメータ5])以外に、単眼カメラ7を備える。
また、実施の形態1における自己位置標定装置100は、カメラ7の画像から白線の方位角を得る画像処理部8と、道路線形データベース(白線情報データベース9)と、そのデータから白線の直線部分の方位角を計算する方位角算出部(白線方位角取得部23)と、自己位置・姿勢角を算出するためのDR演算部3と拡張カルマンフィルタ6とを備える。
道路線形データベースは一から構築する必要はなく、すでに実用化段階に入っている特許文献6により構築されたデータベースに対して、白線の直線部分を示すデータに新たに方位角を加えるだけでよいところが特徴である。また、自己位置標定装置100が使用するカメラ7も単眼でよく低価格のものを利用できる点が特徴である。
DR演算部3は、慣性装置(1軸ジャイロ4(方位角方向))と、車速パルスデータを利用してデッドレコニング計算を行う。そして、拡張カルマンフィルタ6は、GPS観測データと上記白線方位角データとを観測量として自己位置・姿勢角の誤差推定を行ってDR演算部3の自己位置標定精度を向上させる。
つまり、実施の形態1で説明した白線の方位角を自己位置補正に利用する方式では、ハードウェアの構成として単眼のカメラ7を1台追加するだけでよい利点がある。つまり、実施の形態1における自己位置標定装置100は自己位置から白線までの距離を観測するためのステレオカメラやレーザレーダなどが不要である。また、白線の直線部分の角度(白線の方位角)が単眼カメラ7で撮像した画像から比較的正確に検出でき、一度計測され道路線形データベースに記録された方位角は地球の地殻変動による劣化がほとんどないことも白線の方位角を自己位置補正に利用する利点の一つである。言い換えると、道路の座標のデータベースを正確に作るのは難しく、現在使われているカーナビゲーション用のデジタル地図データの座標精度を考慮すると、座標または座標に基づいて算出される距離を自己位置補正に利用する方式ではデシメートル級の座標精度を達成するのは困難である。
このような事情を考慮すると、白線の方位角データを利用する実施の形態1における方式は有望な自己位置標定手法であると言える。
【0054】
また、実施の形態1の自己位置標定手法は、白線の直線部のような車両移動方向に対して画像エッジ位置の変化率が小さい特徴量をランドマークとしているため、低価格単眼カメラ+低価格画像処理器で十分に精度が出せる点が特徴である。
また、実施の形態1では、車載カメラ7の取り付け角誤差(アライメント誤差)も拡張カルマンフィルタ6で推定し、その誤差を補正できる。このため、アライメントの厳しいステレオカメラが用いられる場合でも自己位置標定精度を高めることができる。
【0055】
実施の形態1に示した自己位置標定方法により、既存のカーナビレベルのハードウェア構成に単眼カメラ7を加え、道路線形データベースとGPS/DR/画像複合アルゴリズムを適用するだけで、都市部やトンネル内等における自己位置標定精度を向上させることができる。
【0056】
実施の形態2.
実施の形態2では、前記実施の形態1において図1に基づいて説明した自己位置標定装置100の具体例として、方位角残差算出部130が、白線の方位角の代わりに、車両から見た道路標識の位置する方向(以下、標識の方位角という)についての残差(以下、標識方位角残差という)を算出する形態について説明する。
また、実施の形態2において、方位角残差算出部130は車両から道路標識までの距離(以下、標識距離という)についての残差(以下、標識距離残差という)を算出する。そして、誤差推定部140は擬似距離残差と標識方位角残差と標識距離残差とを観測量として入力して航法誤差とカメラアライメント誤差とを算出する。
以下、前記実施の形態1と異なる事項について説明し、説明を省略した事項については前記実施の形態1と同様とする。
【0057】
図6は、実施の形態2における自己位置標定装置100の構成図である。
図6において、実施の形態2における自己位置標定装置100は、前記実施の形態1における自己位置標定装置100に対して、白線情報データベース9、白線方位角取得部23および白線方位角残差計算部24の代わりに標識情報データベース11、標識方位角・距離算出部31および標識方位角・距離残差計算部32を備える点を特徴とする。
また、実施の形態2における自己位置標定装置100は、画像処理部8が、白線の方位角の代わりに、カメラ7の撮像した画像に映っている道路標識について、車両に対する道路標識の位置する方向を示す標識の方位角と、車両から道路標識までの距離を示す標識距離とを算出することを特徴とする。
【0058】
標識情報データベース11(位置データベースの一例)には各道路標識の位置情報が予め記憶されている。例えば、道路標識を含む各種ランドマークの位置情報が登録されカーナビゲーションシステムに一般的に用いられている道路情報データベースを標識情報データベース11として利用することができる。
【0059】
標識方位角・距離算出部31(データベース距離部の一例)は、DR演算部3が算出した車両の位置および方位角に基づいて、標識情報データベース11から車両の進行方向に位置する道路標識の位置情報を取得し、車両の進行方向に位置する道路標識について方位角と距離とをCPUを用いて算出する。
【0060】
標識方位角・距離残差計算部32(距離残差算出部の一例)は、画像処理部8(画像距離部の一例)が算出した画像に基づく標識の方位角と標識方位角・距離算出部31が算出した標識情報データベース11に基づく標識の方位角との差分を標識方位角残差としてCPUを用いて算出する。また、標識方位角・距離残差計算部32は画像処理部8が算出した画像に基づく標識距離と標識方位角・距離算出部31が算出した標識情報データベース11に基づく標識距離との差分を標識距離残差としてCPUを用いて算出する。
【0061】
図7は、実施の形態2における自己位置標定装置100の自己位置標定方法2を示すフローチャートである。
図7において、S310は図2の測位処理(S110)に対応し、S321〜S324は図2のGPS残差算出処理(S120)に対応し、S331〜S334bは図2の方位角残差算出処理(S130)に対応し、S340は図2の誤差推定処理(S140)に対応する。
自己位置標定装置100の各部は以下に説明する各処理をCPUを用いて実行する。
【0062】
<S310〜S324>
測位処理(S110)およびGPS残差算出処理(S120)に関するS310〜S324は、前記実施の形態1における自己位置標定方法1(図5参照)のS210〜S224と同じである。
【0063】
<S331:撮像処理の一例>
DR演算部3が測位を行った際、カメラ7は車両が走行している道路の進行方向を撮像する。
【0064】
<S332a:画像方位角算出処理の一例>
次に、画像処理部8はカメラ7が撮像した画像から画像に映っている道路標識を検出する。例えば、画像処理部8は、画像を二値化して抽出した特徴点が成す形状に基づいて特定形状のマークを表示する道路標識を検出する。また例えば、画像処理部8は画像に対して文字認識処理を行い、認識した文字情報に基づいて特定文字列を表示する道路標識を検出する。
そして、画像処理部8は画像上の道路標識の位置(道路標識の画素位置)に基づいて車両から見た道路標識の位置する方向を示す相対角を算出し、DR演算部3が算出した車両の方位角に画像上の道路標識の相対角を加算して車両を基点として道路標識が位置する方向を示す標識の方位角を算出する。例えば、画像処理部8は画像の中心から道路標識が位置する画素位置までの水平方向の画素数に1画素が成す角度を乗じて画像に映っている道路標識の車両に対する実際の相対角を算出する。各画素に相当する角度はカメラのパラメータ(例えば、焦点距離)に依存し、カメラのパラメータに基づいて算出される。画像処理部8は、カメラ7の特性に応じて2次元の撮像面に画像として投影された標識について、画像上での標識の位置をカメラ7の特性に応じて実世界の3次元上の位置に変換することにより、実際の標識の方位角および距離を算出する。
<S332b:画像距離算出処理の一例>
また、画像処理部8は画像上の道路標識の位置に基づいて車両から道路標識までの標識距離を算出する。
例えば、画像処理部8はカメラ7が連続する異なる時刻に撮像した2枚の画像を用いてモーションステレオ視処理を行い車両から道路標識までの標識距離を算出する。
【0065】
<S333a>
次に、標識方位角・距離算出部31は、DR演算部3が測位した車両の位置および方位角に基づいて、車両の進行方向に位置する道路標識の位置情報を標識情報データベース11から取得する。つまり、標識方位角・距離算出部31はカメラ7が撮像した画像に映っている道路標識について標識情報データベース11から位置情報を取得する。
<S333b>
次に、標識方位角・距離算出部31は、標識情報データベース11から取得した道路標識の位置とDR演算部3が算出した車両の位置とに基づいて車両から見て道路標識が位置する相対角を算出し、DR演算部3が算出した車両の方位角に車両から見た道路標識の相対角を加算して車両を基点とした道路標識の方位角を算出する。
<S333c>
また、標識方位角・距離算出部31は、標識情報データベース11から取得した道路標識の位置とDR演算部3が算出した車両の位置とに基づいて、車両から道路標識までの標識距離を算出する。
【0066】
<S334a>
次に、標識方位角・距離残差計算部32は画像処理部8が画像に基づいて算出した標識の方位角と標識方位角・距離算出部31が標識情報データベース11に基づいて算出した標識の方位角との差分を標識方位角残差として算出する。
<S334b>
また、標識方位角・距離残差計算部32は画像処理部8が画像に基づいて算出した標識距離と標識方位角・距離算出部31が標識情報データベース11に基づいて算出した標識距離との差分を標識距離残差として算出する。
【0067】
<S340>
そして、拡張カルマンフィルタ6は擬似距離残差計算部22が算出した擬似距離残差と標識方位角・距離残差計算部32が算出した標識方位角残差および標識距離残差とを観測量として入力し、DR演算部3の測位結果に含まれる航法誤差とカメラ7のアライメント誤差とを状態量として計算して補正量として出力する。
【0068】
実施の形態2では、以下のような自己位置標定装置100について説明した。
実施の形態2における自己位置標定装置100は、ハードウェアとして、既存のカーナビレベルのハードウェア構成(GPS受信機1+1軸ジャイロ4+車速パルス[オドメータ5])以外に、単眼カメラ7を備える。
また、実施の形態2における自己位置標定装置100は、カメラ7の画像から「車両−標識間の距離」および「車両から見た標識の相対方位角」を得る画像処理部8と、標識座標のデータベース(標識情報データベース11)と、自己位置・姿勢角を算出するためのDR演算部3と拡張カルマンフィルタ6とを備える。
DR演算部3は、慣性装置(1軸ジャイロ4(方位角方向))と、車速パルスデータを利用してデッドレコニング計算を行う。そして、拡張カルマンフィルタ6は、GPS観測データと上記標識データとを観測量として自己位置・姿勢角の誤差推定を行ってDR演算部3の自己位置標定精度を向上させる。
【0069】
実施の形態3.
実施の形態3では、前記実施の形態1において図1に基づいて説明した自己位置標定装置100の具体例として、方位角残差算出部130が前記実施の形態1で説明した白線方位角残差と前記実施の形態2で説明した標識方位角残差および標識距離残差とを算出する形態について説明する。
また、実施の形態3において、測位部110はデッドレコニングにより算出した自己位置を道路データベース49のデータを利用したマップマッチングにより補正して自己位置を算出する。
また、実施の形態3において、誤差推定部140は擬似距離残差と白線方位角残差と標識方位角残差と標識距離残差とを観測量として入力して航法誤差とカメラアライメント誤差とを算出する。
以下、前記実施の形態1および前記実施の形態2と異なる事項について説明し、説明を省略した事項については前記実施の形態1または前記実施の形態2と同様とする。
【0070】
図8は、実施の形態3における自己位置標定装置100の構成図である。
図8において、実施の形態3における自己位置標定装置100は、前記実施の形態1における自己位置標定装置100に対して、白線情報データベース9、白線方位角取得部23および白線方位角残差計算部24の代わりに道路データベース49、方位角・距離算出部41および方位角・距離残差算出部42を備える点を特徴とする。
また、実施の形態3における自己位置標定装置100は、DR演算部3が車両の位置する周辺の道路情報を道路データベース49から取得してマップマッチングにより車両の位置を補正することを特徴とする。
【0071】
道路データベース49には前記実施の形態1で説明した白線情報データベース9の白線情報や前記実施の形態2で説明した道路標識情報や道路のレーン情報(例えば、位置、幅、上り下り)などの各種道路情報が予め記憶されている。
【0072】
方位角・距離算出部41は、DR演算部3が算出した車両の位置および方位角に基づいて、道路データベース49から車両の進行方向に位置する白線の方位角と車両の進行方向に位置する道路標識の位置情報とを取得し、車両の進行方向に位置する道路標識の方位角と車両から道路標識までの標識距離とをCPUを用いて算出する。
【0073】
方位角・距離残差算出部42は、画像処理部8が算出した画像に基づく白線の方位角と方位角・距離算出部41が取得した道路データベース49に基づく白線の方位角との差分を白線方位角残差としてCPUを用いて算出する。また、方位角・距離残差算出部42は、画像処理部8が算出した画像に基づく標識の方位角と方位角・距離算出部41が算出した道路データベース49に基づく標識の方位角との差分を標識方位角残差としてCPUを用いて算出する。また、方位角・距離残差算出部42は画像処理部8が算出した画像に基づく標識距離と方位角・距離算出部41が算出した道路データベース49に基づく標識距離との差分を標識距離残差としてCPUを用いて算出する。
【0074】
図9は、実施の形態3における自己位置標定装置100の自己位置標定方法3を示すフローチャートである。
図9において、S410a〜S410cは図2の測位処理(S110)に対応し、S421〜S424は図2のGPS残差算出処理(S120)に対応し、S431〜S434cは図2の方位角残差算出処理(S130)に対応し、S440は図2の誤差推定処理(S140)に対応する。
自己位置標定装置100の各部は以下に説明する各処理をCPUを用いて実行する。
【0075】
<S410a>
まず、DR演算部3はデッドレコニングにより車両の位置および方位角を算出する。
<S410b>
次に、DR演算部3は算出した車両の位置に基づいて周辺の道路情報を道路データベース49から取得する。
<S410c:測位処理の一例>
次に、DR演算部3は、道路データベース49から取得した道路情報が示すレーン情報に基づいて、車両の進行方向(方位角)と通行方向が対応するレーン上に車両が位置するように車両の位置を補正するマップマッチング(または、レーンキーピング)を行う。また、DR演算部3はマップマッチングを行った車両の位置および方位角を拡張カルマンフィルタ6が算出した航法誤差に基づいて補正して車両の位置および方位角を算出する。DR演算部3はマップマッチング処理としてカーナビゲーションシステムで一般的に行われている処理を用いる。ただし、マップマッチング処理は、走行中の道路が1レーンしかないなど走行レーンが明らかな場合や、拡張カルマンフィルタの状態量誤差標準偏差が適切に設定した閾値を超えた場合などの自己位置標定精度が悪化していると推定される場合のみ行うものとする。
【0076】
<S421〜S424>
GPS残差算出処理(S120)に関するS421〜S424は、前記実施の形態1における自己位置標定方法1(図5参照)のS221〜S224と同じである。
【0077】
<S431〜S434c>
白線の方位角残差算出処理に関するS431、S432a、S433aおよびS434aは、前記実施の形態1における自己位置標定方法1(図5参照)のS231〜S234と同じである。
また、道路標識の方位角残差算出処理および標識距離残差算出処理に関するS432b、S433bおよびS434bは、前記実施の形態2における自己位置標定方法2(図7参照)のS332a〜S334bと同じである。
【0078】
そして、拡張カルマンフィルタ6は擬似距離残差計算部22が算出した擬似距離残差と方位角・距離残差算出部42が算出した白線方位角残差、標識方位角残差および標識距離残差とを観測量として入力し、DR演算部3のデッドレコニングによる測位結果に含まれる航法誤差とカメラ7のアライメント誤差とを状態量として計算して補正量として出力する。
【0079】
上記では、白線について方位角のみを対象としたが、標識と同様に車両から白線までの距離の残差を拡張カルマンフィルタ6の観測量としてもよいし、画像に基づいて算出した白線の長さとデータベースから取得した白線の長さとの残差を拡張カルマンフィルタ6の観測量としてもよい。
【0080】
実施の形態3では、以下のような自己位置標定装置100について説明した。
実施の形態3における自己位置標定装置100は、前記実施の形態1に記載した自己位置標定装置100に、前記実施の形態2に記載した「車両−標識間の距離」と「車両からみた標識の相対方位角」を得る画像処理部8の機能と、標識座標のデータベースとを加え、拡張カルマンフィルタ6は白線と標識との両方を観測量として自己位置・姿勢角の誤差推定を行ってDR演算部3の自己位置標定精度を向上させる。
【0081】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、各白線について位置や形状や方位角などの情報が予め記憶されている白線情報データベース9を利用する形態について説明した。但し、各白線の情報を用意することがコスト的に難しい場合も考えられる。
そこで、実施の形態4では、上記実施の形態1で示した白線情報データベース9の代わりに道路の方位角を示す道路情報(道路線形情報)を記憶するデータベースを用い、道路の方位角を白線の方位角として用いる形態について説明する。
【0082】
(1)KIWIデータベースを用いる方法
道路情報を記憶するデータベースとして、カーナビゲーションシステムに使用されているデータベースを使用することができる。カーナビゲーションシステムのデータベースにはKIWIフォーマットが使用されている。以下、道路情報をKIWIフォーマット(日本工業規格 JIS−D0810)で示すデータベースをKIWIデータベースとする。非特許文献1にKIWIフォーマットに関する文献を示す。
KIWIデータベースのデータ構造には、交差点に関する情報を示すノード情報、道路が接続する交差点を示すリンク情報、新たに情報を追加することが可能な拡張部などが含まれる。ノード情報には各交差点をノードとしてノード名と交差点の座標(例えば、交差点中央の2次元座標)とが対応付けて記憶されている。リンク情報には“ノードA(交差点A)とノードB(交差点B)が接続されている(A、B)”というような道路が接続している交差点を示す情報が記憶されている。そして、実施の形態4では、KIWIデータベースの拡張部に、リンク情報(接続情報)と方位角とを対応付けて、リンク情報が表す道路について方位角を示す方位角情報を記憶する。例えば、ノード情報とリンク情報とが図11のような関係を示す場合、拡張部には「接続情報」として(A、B)、「方位角」としてθ1が記憶され、また、「接続情報」として(B、C)、「方位角」としてθ2が記憶される。
【0083】
そして、上記実施の形態1における白線方位角取得部23は、図12に示すようにして、KIWIデータベースから道路情報を取得し、道路の方位角を白線の方位角として算出する。
【0084】
<S510>
白線方位角取得部23は、DR演算部3から自己位置N、自己方位角φNを取得する。
<S520>
次に、白線方位角取得部23はKIWIデータベースにおいてノード情報が示す各交差点の座標と自己位置Nとを比較して車両が位置する道路を示すリンク情報を検索する。
<S530>
次に、白線方位角取得部23は検索したリンク情報に対応する道路の方位角θnを拡張部から抽出する。
<S540>
次に、白線方位角取得部23は自己方位角φNが示す進行方向における道路の方位角θnを取得する。ただし、白線を見る向きによって方位角の表現は180度異なるため、自己方位角φNに応じて、θnに180度だけ加算することがある。
<S550>
そして、白線方位角取得部23は取得した道路の方位角θnを白線方位角として出力する。
【0085】
(2)道路線形データベースを用いる方法
道路の幾何構造は横断面と平面線形とで表すことができるが、実施の形態4で用いる道路線形データベースは道路の平面線形について直線や円曲線や緩和曲線(クロソイド)などの線形要素で表した道路情報を記憶する。道路の直線は例えば始点の座標と終点の座標とで表される。
そして、実施の形態4における白線方位角取得部23は、図13に示すようにして、道路線形データベースに記憶された道路の直線部分のデータに基づいて、道路の方位角を白線方位角として算出する。
【0086】
<S610>
白線方位角取得部23は、DR演算部3から自己位置Nを取得する。
<S620>
次に、白線方位角取得部23は道路線形データベースにおいて自己位置Nが位置する道路の直線部分のデータを検索する。
<S630>
次に、白線方位角取得部23は検索した道路の直線部分のデータが示す始点と終点の座標に基づいて道路の方位角を算出する。但し、道路の方位角を予め道路線形データベースに記憶しておいても構わない。
<S640>
そして、白線方位角取得部23は算出した道路の方位角を白線方位角として出力する。
【0087】
各実施の形態において、GPS受信機1がMSAS(MTSAT Satellite−based Augmentation System)からのGPS補正情報やFM多重放送を受信することなどで得られるGPS補正情報を用いて擬似距離の補正をする方式も考えられる。また、将来的には準天頂衛星からの放送データの中にGPS補正情報が含まれる予定であり、GPS受信機1がこれを利用してGPSの擬似距離補正を行う方法も考えられる。
また、GPS受信機1が擬似距離を搬送波位相観測データを使ってスムージングする方法(キャリアスムージング)や、DR演算部3がGPS基準局の搬送波位相データとGPS受信機1で観測するGPS搬送波位相データとを用いてCPDGPS(Carrier Phase Differential GPS)計算を行い測位する方法なども考えられる。
さらに、拡張カルマンフィルタ6の構成方法には、前記実施の形態1で説明したGPSの観測生データ(擬似距離、位相差など)をGPS観測量として利用するタイトカプリング(Tightly Coupled、密結合)方式の他に、GPS観測値から得た測位解をGPS観測量として利用するルーズカプリング(Loosely Coupled、粗結合)方式も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施の形態1における自己位置標定装置100の構成図。
【図2】実施の形態1における自己位置標定装置100の自己位置標定方法を示すフローチャート。
【図3】実施の形態1における自己位置標定装置100のハードウェア資源の一例を示す図。
【図4】実施の形態1における自己位置標定装置100の構成図。
【図5】実施の形態1における自己位置標定装置100の自己位置標定方法GPS受信機1を示すフローチャート。
【図6】実施の形態2における自己位置標定装置100の構成図。
【図7】実施の形態2における自己位置標定装置100の自己位置標定方法2を示すフローチャート。
【図8】実施の形態3における自己位置標定装置100の構成図。
【図9】実施の形態3における自己位置標定装置100の自己位置標定方法を示すフローチャート。
【図10】実施の形態1における白線と白線(の直線部分)の方位角とレーンの通行方向との関係図。
【図11】実施の形態4におけるKIWIデータの関係図。
【図12】実施の形態4における方位角取得処理のフローチャート。
【図13】実施の形態4における方位角取得処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0089】
1 GPS受信機、2 衛星軌道演算部、3 DR演算部、4 ジャイロ、5 オドメータ、6 拡張カルマンフィルタ、7 カメラ、8 画像処理部、9 白線情報データベース、11 標識情報データベース、21 衛星距離計算部、22 擬似距離残差計算部、23 白線方位角取得部、24 白線方位角残差計算部、31 標識方位角・距離算出部、32 標識方位角・距離残差計算部、41 方位角・距離算出部、42 方位角・距離残差算出部、49 道路データベース、100 自己位置標定装置、110 測位部、120 GPS観測残差算出部、121 GPS観測部、122 GPS観測量演算部、130 方位角残差算出部、131 方位角観測部、132 方位角演算部、140 誤差推定部、901 表示装置、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己位置を測位する測位部と、
前記測位部が測位した際の特定の方向を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像に基づいて前記画像に映っている特定の地物の長さ方向が基準方向に対して成す前記特定の地物の方位角をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する画像方位角部と、
地物の長さ方向が基準方向に対して成す当該地物の方位角を記憶する方位角データベースと、
前記測位部が測位した自己位置に基づいて前記方位角データベースから前記特定の地物に対応する地物の方位角を取得するデータベース方位角部と、
前記画像方位角部が算出した地物の方位角と前記データベース方位角部が取得した地物の方位角との差分を地物方位角残差としてCPUを用いて算出する方位角残差算出部と、
前記方位角残差算出部が算出した地物方位角残差に基づいて前記測位部が測位した自己位置の誤差をCPUを用いて推定するカルマンフィルタと
を備え、
前記測位部は測位した自己位置を前記カルマンフィルタが推定した誤差に基づいて補正し、補正した自己位置を測位結果とする
ことを特徴とする自己位置標定装置。
【請求項2】
自己位置を測位する測位部と、
前記測位部が測位した際の特定の方向を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像に基づいて前記画像に映っている特定の地物の方位角を自己位置を基点としてCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する画像方位角部と、
地物の位置を記憶する位置データベースと、
前記測位部が測位した自己位置に基づいて前記位置データベースから前記特定の地物に対応する地物の位置を取得し、取得した地物の位置に基づいて地物の方位角を前記測位部が測位した自己位置を基点としてCPUを用いて算出するデータベース方位角部と、
前記画像方位角部が算出した地物の方位角と前記データベース方位角部が算出した地物の方位角との差分を地物方位角残差としてCPUを用いて算出する方位角残差算出部と、
前記方位角残差算出部が算出した地物方位角残差に基づいて前記測位部が測位した自己位置の誤差をCPUを用いて推定するカルマンフィルタと
を備え、
前記測位部は測位した自己位置を前記カルマンフィルタが推定した誤差に基づいて補正し、補正した自己位置を測位結果とする
ことを特徴とする自己位置標定装置。
【請求項3】
前記カルマンフィルタは、
自己位置の誤差を含む状態量について状態量のダイナミクスをモデル化した状態方程式と、地物方位角残差を含む観測量と自己位置の誤差を含む状態量とについて観測量と状態量との関係を定式化した観測方程式とに基づいて状態量の誤差推定を行う
ことを特徴とする請求項1〜請求項2いずれかに記載の自己位置標定装置。
【請求項4】
前記自己位置標定装置は、さらに、
前記カメラが撮像した画像に基づいて前記特定の地物までの距離をCPUを用いて算出する画像距離部と、
地物の位置を記憶する位置データベースと、
前記測位部が測位した自己位置に基づいて前記位置データベースから前記特定の地物に対応する地物の位置を取得し、前記測位部が測位した自己位置と前記位置データベースから取得した地物の位置とに基づいて地物までの距離を算出するデータベース距離部と、
前記画像距離部が算出した地物までの距離と前記データベース距離部が算出した地物までの距離との差分を地物距離残差としてCPUを用いて算出する距離残差算出部と
を備え、
前記カルマンフィルタは前記距離残差算出部が算出した地物距離残差を観測量に含めて自己位置の誤差を含む状態量の誤差推定を行う
ことを特徴とする請求項3記載の自己位置標定装置。
【請求項5】
測位部が自己位置を測位する測位処理を行い、
カメラが前記測位部が測位した際の特定の方向を撮像する撮像処理を行い、
画像方位角部が前記カメラの撮像した画像に基づいて前記画像に映っている特定の地物の長さ方向が基準方向に対して成す前記特定の地物の方位角をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する画像方位角算出処理を行い、
データベース方位角部が前記測位部が測位した自己位置に基づいて地物の長さ方向が基準方向に対して成す当該地物の方位角を記憶する方位角データベースから前記特定の地物に対応する地物の方位角を取得するデータベース方位角取得処理を行い、
方位角残差算出部が前記画像方位角部が算出した地物の方位角と前記データベース方位角部が取得した地物の方位角との差分を地物方位角残差としてCPUを用いて算出する方位角残差算出処理を行い、
カルマンフィルタが前記方位角残差算出部が算出した地物方位角残差に基づいて前記測位部が測位した自己位置の誤差をCPUを用いて推定する誤差推定処理を行い、
前記測位部は測位した自己位置を前記カルマンフィルタが推定した誤差に基づいて補正し、補正した自己位置を測位結果とする測位結果補正処理を行う
ことを特徴とする自己位置標定方法。
【請求項6】
測位部が自己位置を測位する測位処理を行い、
カメラが前記測位部が測位した際の特定の方向を撮像する撮像処理を行い、
画像方位角部が前記カメラが撮像した画像に基づいて前記画像に映っている特定の地物の方位角を自己位置を基点としてCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する画像方位角算出処理を行い、
データベース方位角部が前記測位部が測位した自己位置に基づいて地物の位置を記憶する位置データベースから前記特定の地物に対応する地物の位置を取得し、取得した地物の位置に基づいて地物の方位角を前記測位部が測位した自己位置を基点としてCPUを用いて算出するデータベース方位角算出処理を行い、
方位角残差算出部が前記画像方位角部が算出した地物の方位角と前記データベース方位角部が算出した地物の方位角との差分を地物方位角残差としてCPUを用いて算出する方位角残差算出処理を行い、
カルマンフィルタが前記方位角残差算出部が算出した地物方位角残差に基づいて前記測位部が測位した自己位置の誤差をCPUを用いて推定する誤差推定処理を行い、
前記測位部は測位した自己位置を前記カルマンフィルタが推定した誤差に基づいて補正し、補正した自己位置を測位結果とする測位結果補正処理を行う
ことを特徴とする自己位置標定方法。
【請求項7】
請求項5〜請求項6いずれかに記載の自己位置標定方法をコンピュータに実行させる自己位置標定プログラム。
【請求項8】
前記画像方位角部は、前記画像に映っている白線の方位角を算出し、
前記方位角データベースは、道路の直線部分が基準方向に対して成す当該道路の方位角を示す道路情報をKIWIフォーマットで記憶し、
前記データベース方位角部は、前記方位角データベースに記憶された道路の直線部分の方位角を道路に標示された白線の方位角として取得し、
前記方位角残差算出部は、白線の方位角残差を前記地物方位角残差として算出し、
前記カルマンフィルタは、白線の方位角残差に基づいて自己位置の誤差を推定する
ことを特徴とする請求項1記載の自己位置標定装置。
【請求項9】
前記画像方位角部は、前記画像に映っている白線の方位角を算出し、
前記方位角データベースは、道路の平面形状を円弧と直線とクロソイドとの少なくともいずれかにより示す道路情報を記憶し、
前記データベース方位角部は、前記方位角データベースから取得した道路情報が示す道路の平面形状に基づいて道路の直線部分の方位角を道路に標示された白線の方位角として算出し、
前記方位角残差算出部は、白線の方位角残差を前記地物方位角残差として算出し、
前記カルマンフィルタは、白線の方位角残差に基づいて自己位置の誤差を推定する
ことを特徴とする請求項1記載の自己位置標定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−249639(P2008−249639A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94134(P2007−94134)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】