説明

船舶のアイドル回転数制御装置

【課題】空気量ではなくエンジンが発生できる最大トルクに対する発生させたいトルクの割合にて適合データの設定を行い、また実点火時期と所定値の偏差に基づき基本充填効率の補正を行うように構成することで開発工数・コストの低減を図ることができる船舶のアイドル回転数制御装置を得る。
【解決手段】走行負荷補正では模擬船速と目標回転数の偏差にてエンジン負荷を検出して補正値を設定し、シフト位置が後進の場合のみ走行負荷補正として目標トルク率へ足しこみトルクが足らなくなる前に補正することでエンジンストールを防止する。また、特性ドリフトの要因別に学習を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶に搭載される内燃機関のアイドル時のエンジン回転数を制御する船舶のアイドル回転数制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子制御式のエンジンでは所定のアイドル条件が整った時に、エンジンに供給する空気量を制御し、エンジン回転数を所定値に制御するアイドル回転数制御技術がよく知られている。この種の技術では、アイドル運転時の目標回転数と実回転数との差に応じ、フィードバック制御によりその差がなくなるように吸気調整弁にて空気量を制御している。
【0003】
また、モーターボートや漁船などの小型船舶においては、アイドル近辺の低速度域において定速走行を行うトロール走行が一般的に行われており、このように船外機特有の使用時にも対応するようなアイドル回転数制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−201974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のアイドル回転数制御装置においては、エンジンがアイドル運転時はエンジンを目標回転数に定常運転するためにエンジン負荷に見合った空気量の供給を行い、かつ目標回転数と実回転数との差がなくなるようフィードバック制御を行っている。しかし、船舶の場合、シフト状態やトロール走行を行う目標回転数やアイドル時の船舶速度によりエンジンにかかる負荷が大きく異なる。特に、走行中(シフトは前進)で船舶速度が高い場合(たとえば50km/h以上)にスロットルを閉じてアイドル状態にするような減速運転の場合、船舶の速度はすぐには下がらず、この間、プロペラが水流にて駆動されているためエンジンはプロペラより駆動される。
【0006】
このような場合、エンジンがアイドル状態であってもエンジン回転数はアイドル時の目標回転数よりかなり高くなる。この状態で回転数フィードバックを実施した場合、回転数を低下させるために回転数フィードバック補正にてエンジンに供給する空気量を絞り過ぎてしまい、この状態でシフトをニュートラルにするとプロペラによるエンジン駆動力がなくなり、また、アイドルを維持する空気量が不足するためエンストが発生する場合がある。上記のように、プロペラからの駆動のような外乱によるフィードバック発散によるエンストを回避するため、回転数フィードバックゲイン設定を上げることがでず、そのため、アイドル回転数制御装置の安定性と減速などの過渡時の応答性を両立することが困難であった。
【0007】
また、アイドルを維持するための必要なトルクはエンジンの機差ばらつきや経年変化により変わる。また、船舶特有の使用用途により、装着されるプロペラの大きさ・形状が船舶ごとに異なる場合が多く、このため、プロペラの種類によりアイドルでの前進走行負荷(トルク)も変わる。よって、設定値によるエンジン出力トルクと目標回転数を維持するために必要なトルクに差が生じる場合がある。この場合は、回転数に偏差が生じるため、これを回転数フィードバックにて吸収しており、このため、回転数が目標値に安定するまでにはフィードバックが追従するまでの所定時間が必要となり、アイドル回転数制御の応答遅れが生じる。また、フィードバックで吸気量を調整しエンジン回転偏差を吸収するためには制御の遅れ時間が存在するため、エンジンの発生するトルクとエンジンにかかるトルクの差が大きい場合はエンストとなる場合も懸念される。
【0008】
また、前進走行中にスロットルをアイドルに戻し、かつシフト状態をニュートラルとした場合は、プロペラによるエンジン駆動がないため、エンジン回転数はスムーズに目標回転数に収束できるが、前進する船舶速度がある状態でシフト位置を後進とした場合は、水流にてプロペラが順方向(前進)に回されているため、逆方向に回転(後進)させるためにエンジンにかかるプロペラ負荷が大きく、エンジンの出力トルクとつりあわず、エンストが発生しやすいといった問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、減速運転からアイドル運転に移行する場合や、船舶速度がある状態でシフトを後進に切り換えた場合などに生じる回転落ちやエンストを防止でき、また、エンジンの機差ばらつきや経年変化によるアイドル回転数維持に必要なトルク変化やプロペラ負荷の変化を吸収し、すばやく目標回転数に安定させることができる船舶のアイドル回転数制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明に係る船舶のアイドル回転数制御装置は、船舶に搭載するエンジンのアイドル時の回転速度を制御する船舶のアイドル回転数制御装置において、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記エンジンの暖機状態を検出するエンジン温度検出手段と、前記エンジンのアイドル運転状態を検出するアイドル運転状態検出手段と、前記エンジンのシフト位置状態がニュートラル、前進、または後進であるかを検出する負荷検出手段と、前記各検出手段の検出に基づいて前記エンジンがアイドル状態のときに前記検出手段にて検出したエンジン状態を基にエンジン回転数を目標回転数に収束させるように制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、エンジンの回転速度、シフト位置及び目標回転速度に基づいて模擬船速を算出する模擬船速算出機能部と、エンジンが船舶の走行状態によりプロペラにて回転させられているか、または自力にて回転しているかを判定する減速走行判定手段と、前記エンジンがアイドル状態のときに前記エンジンを目標回転数にて定常運転させるために必要な、前記エンジンの最大トルクに対し発生させるトルクの割合である基本トルク率を算出する基本トルク率算出機能部と、目標回転数とエンジン回転数との偏差に応じ前記基本トルク率に対して偏差がなくなるよう補正する回転数フィードバック補正信号を出力する回転数フィードバック補正算出機能部と、前記回転数フィードバック補正信号に基づいてトルク率補正値を学習するトルク率学習補正機能部と、船舶速度に応じて基本トルク率を補正する走行負荷補正信号を算出する走行負荷補正算出機能部と、前記基本トルク率、前記回転フィードバック補正信号、前記トルク率学習補正信号、及び走行負荷補正信号に基づいて目標トルク率を算出する目標トルク率算出機能部と、前記目標トルク率を発生させるために必要な目標空気量を算出する目標空気量算出機能部と、前記目標空気量に基づいて前記エンジンに供給される吸入空気量を調整する吸入空気量調整機能部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、減速運転からアイドル運転に移行する場合や、船舶速度がある状態でシフトを後進に切り換えた場合などに生じる回転落ちやエンストを防止でき、また、エンジンの機差ばらつきや経年変化によるアイドル回転数維持に必要なトルク変化やプロペラ負荷の変化を吸収し、すばやく目標回転数に安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施の形態を具体的に説明する前に、この発明による船舶のアイドル回転数制御装置における制御内容について概説する。この発明は、エンジン回転数を目標回転数に維持させるために必要なエンジントルク、具体的にはエンジンが発生できる最大トルクに対する発生させたいトルクの割合(以降、トルク率)にて適合データを設定し制御するものである。ニュートラル位置でエンジンを所定回転数で定常運転するために必要なトルク率は、エンジンのフリクションにより変わり、エンジンのフリクションはエンジンの温度と定常運転する回転数により決まるものである。よって、目標回転数とエンジン温度をパラメータとしたマップデータを備え、エンジン負荷に見合ったトルク率データをECU内メモリに設定する。また、シフト位置状態でも必要トルク率は異なるため、ニュートラル、前進、後進位置ごとに必要なトルク率のマップを備え、シフト位置状態、エンジン温度、目標回転数を基にマップ演算にて必要なトルク率の算出を行い基本トルク率の算出を行う。
【0013】
また、エンジンの機差ばらつきや経年変化でのエンジン・吸気系特性変化を吸収するために目標回転数と実回転数との偏差に基づき偏差がなくなるように基本トルク率をフィードバック補正する。このフィードバック補正を所定の条件時に学習記憶し、基本トルク率の補正を常時あるいは定期的に行うものとし、上記フィードバック補正と並行し補正を行う。また、走行状態が前進から後進に切り替わったときは船速に応じてエンジントルクを増やす側に走行負荷補正を行う。この走行負荷補正量は、船速と目標回転数の比率、あるいは偏差を基にマップ補間にて算出されるものとする。これらの基本トルク率や各補正より目標トルク率を算出し、エンジンより発生させるトルクの算出を行う。
【0014】
次に、アイドル時の点火時期を所定値とした場合に「目標トルク率=エンジンの充填効率」と仮定し、目標トルク率から基本充填効率を求める。そして、このときのエンジンの実点火時期にて基本充填効率の補正を行う。実点火時期と所定値との偏差に基づきあらかじめ設定されたマップデータにより、進角側の場合は小さくなるように、他方、遅角側の場合は大きくなるように補正し目標充填効率の算出を行う。この目標充填効率から、目標回転数とエンジン排気量と空気密度よりエンジンに供給すべき空気量を算出し、この空気量が供給できるように吸入空気量調整手段の制御を行う。
【0015】
上記方法により、目標回転数やエンジン温度よりエンジンで発生させる基本トルク率を算出し、経年変化などによるエンジンや吸気系特性ずれによる回転偏差分はトルク率学習補正にて吸収し、シフト位置変化によるエンジンにかかる負荷変動分は走行負荷補正にて吸収し、また、その他要因による回転変動は回転フィードバックにて吸収することで目標のエンジン回転数に素早く制御することができる。
【0016】
また、エンジン回転数を一次なまし処理して船舶速度を予測算出し、かつシフト状態にてなまし係数を切替る。また、アイドル状態か否かでエンジン回転数とアイドル時の目標回転数とを切り替えることで、船舶速度を検出するセンサを別途設置しなくとも、船舶速度を近似算出することを可能にする。また、上記船舶速度とエンジン回転数の偏差、または比率から船舶が減速状態であるか否かを判断し、シフト状態が前進で減速状態と判断した場合はエンジンがアイドル状態であっても回転フィードバックを停止とすることで、減速時にエンジントルク(空気量)を低下させ過ぎることがなくし、エンストを防止する。
【0017】
また、アイドル時にエンジン回転数を目標回転数に維持するため、基本トルク率で制御し、実回転数と目標回転数の偏差を基にトルク率をフィードバック補正し、偏差がなくなった時のフィードバック補正値を基にトルク率学習補正値(N)を算出する構成とし、まずはシフト位置がニュートラルの状態にて学習を行い、エンジン・吸気系特性のばらつきや、経年変化による特性変化分を吸収するように基本トルク率を補正する。また、このニュートラルでの学習値はシフト状態に関係なく、常時補正するものとする。次に、上記ニュートラルでの学習が完了している状態で、アイドルかつ、シフト位置が前進状態で上記フィードバック補正を行い、偏差がなくなった時のフィードバック補正値を基にトルク率学習補正値(F)を算出し、シフト位置が前進時は常時補正する構成とすることで、船外機に装着されるプロペラ負荷の違いによる回転変動分を吸収し、フィードバックだけで行うより応答性のよい回転数制御を可能とし、安定性も向上させる。
【0018】
以下、この発明の具体的な実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の実施の形態に係る船舶のアイドル回転数制御装置の全体構成を示す概略図である。内燃機関(以下「エンジン」という)、シャフト、プロペラなどが一体化された推進機関(以下「船外機」という)船外機10は、船舶(小型船)11の船尾に装着される。操船席にはスロットルレバー12が配置され、スロットルレバー12は、スロットルケーブル13を介して船外機10内のリンク機構(図示せず)を経てスロットルバルブに連結され、スロットルバルブの開度量(吸入空気量)を調節する。また、スロットルレバー12は、シフトケーブル14を介して船外機10内のリンク機構(図示せず)およびギヤ機構(図示せず)を経てシフト位置(前進/中立/後進)を設定する。
【0019】
図2は、図1に示す船外機10内のエンジンを示す概略図である。図2に示すエンジンには吸気管20を介して空気が吸入され、吸入空気は、スロットルバルブ21を介して流量が調整されつつインテークマニホールド22を流れる。インテークマニホールド22の燃焼室直前にはインジェクタ23が配置され、ガソリン燃料を噴射する。吸入空気は、噴射されたガソリン燃料と混合して混合気を形成し、各気筒燃焼室に流入し、スパークフラグ24で点火されて燃焼する。そして、燃焼後の排気ガスは、エキゾーストマニホールド25を流れ、エンジン外に放出される。
【0020】
スロットルバルブ21には、エンジンのアイドル運転状態を検出するアイドル運転状態検出手段としてのスロットル開度センサ31が接続され、スロットルバルブシャフトの回転に応じてスロットル開度に比例した信号を出力する。スロットル開度信号よりスロットルバルブが全閉かどうかを判定し、エンジンがアイドル状態であることの検出を行う。スロットルバルブ21の下流には絶対圧センサ32が配置され、吸気管絶対圧P(エンジン負荷)に応じた信号を出力する。スロットルバルブ21の上流には吸気温センサ33が配置され、吸入空気温度ATに比例した信号を出力する。
【0021】
また、エキゾーストマニホールド25には、オーバーヒートセンサ34が配置され、エンジン排気温度に比例した信号を出力すると共に、その付近のシリンダブロックの適宜位置にはエンジンの暖機状態を検出するエンジン温度検出手段としての壁温センサ35が配置され、エンジン冷却壁温WTに比例した信号を出力する。
【0022】
ISC(Idol Speed Control)バルブ26では、アイドル運転時、アイドル状態を保持するための空気量をコントロールする。空気量が必要な場合はSTEP数減少指令によりISCバルブ26を縮める方向に動かしスペース27を広げて入り込む空気量を増加させる。空気量を絞り込む場合にはSTEP増加指令によりISCバルブ26を伸ばす方向に動かしスペース27をバルブにて埋め、入り込む空気量を減少させアイドル状態の保持を実現する。
【0023】
また、シフトリンク機構付近には、ギアボックス37内にエンジンのシフト位置状態がニュートラル、前進、または後進であるかを検出する負荷検出手段としてのシフト位置センサが配置され、操作されたシフト位置(前進/中立/後進)に応じた信号を出力し、これにより、エンジン負荷を検出する。
【0024】
上記した各種センサは信号線を介して制御手段としてのECU(Electronic Control Unit)30に送られる。また、クランクシャフトを介して取り付けているフライホイール28の付近にはエンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段として機能するクランク角センサ36が配置され、クランク角度信号を出力し、ECU30に送出する。ECU30は、クランク角センサ36の出力からエンジン回転速度NEを算出する。
【0025】
次いで、図1及び図2に示された船舶のアイドル回転数制御装置の動作を、図3に示すECU30の動作機能ブロック図を参照して説明する。図3において、ECU30は、クランク角センサ36から算出されるエンジン回転速度NE301と、壁温センサ35からのシリンダ壁温WT302と、シフト位置センサからのシフト位置SPS303とを入力して、各種算出機能を果たす。
【0026】
すなわち、ECU30は、シリンダ壁温WT302、シフト位置SPS303及び後述する目標回転速度NOBJに基づいてエンジンがアイドル状態のときにエンジンを目標回転数にて定常運転させるために必要なエンジンの最大トルクに対し発生させるトルクの割合である、基本トルク率Tqbaseを算出する基本トルク率算出機能部310と、シリンダ壁温WT302から目標回転速度NOBJを算出する目標回転速度算出機能部311と、エンジン回転速度NE301、シフト位置SPS303、目標回転速度NOBJ及び後述する模擬船速に基づいて回転フィードバックI補正信号tqfb及び回転フィードバックP補正信号tqfbpをそれぞれ算出する回転フィードバックI補正算出機能部401及び回転フィードバックP補正算出機能部402と、シリンダ壁温WT302、シフト位置SPS303、回転フィードバックI補正信号tqfb及び後述する回転偏差信号Neabsに基づいてトルク率F学習補正信号tqlrf及びトルク率N学習補正信号tqlrnをそれぞれ算出するトルク率F学習補正算出機能部403及びトルク率N学習補正算出機能部404とを備える。なお、ここでは、シフト位置SPS303が「F」の場合に、エンジン負荷のばらつき分(F分の学習量)として学習を実施し、シフト位置SPS303が「N」の場合に、エンジン無負荷分(N分の学習量)として学習を実施する。
【0027】
また、ECU30は、エンジン回転速度NE301、シフト位置SPS303及び目標回転速度NOBJに基づいて模擬船速を算出する船舶の走行速度を検出する手段としての模擬船速算出機能部405と、模擬船速及び目標回転速度NOBJに基づいて船速負荷比率を算出することで、エンジンが船舶の走行状態によりプロペラにて回転させられているか、または自力にて回転しているかを判断する減速走行判定手段をなす船速負荷比率算出機能部406と、船速負荷比率及びシフト位置SPSに基づいて走行負荷補正信号tqrfを算出する走行負荷補正算出機能部407とを備える。
【0028】
さらに、ECU30は、基本トルク率Tqbase、回転フィードバックI補正信号tqfb、回転フィードバックP補正信号tqfbp、トルク率F学習補正信号tqlrf、トルク率N学習補正信号tqlrn及び走行負荷補正信号tqrfに基づいて目標トルク率TQを算出する目標トルク率算出機能部313と、目標トルク率TQ及び目標点火時期信号ADV315に基づいて充填効率QBを算出する充填効率算出機能部314と、充填効率QB、目標回転速度NOBJ、あらかじめ設定されている排気量データXDISPLACE317及びあらかじめ設定されている標準大気密度XDENSITY318に基づいて目標空気量QOBJを算出する目標空気量算出機能部319と、算出した目標空気量がエンジンに供給できるようなISCバルブ開度の設定を行うことで、エンジンに供給される吸入空気量を調整する吸入空気量調整手段をなす吸入空気量調整機能部320とを備えている。
【0029】
(基本トルク率算出機能)
図4は、基本トルク率算出機能部310による基本トルク率算出機能を説明するもので、目標回転速度を維持するために必要な基本トルク率Tqbaseを設定するフローチャートである。図4において、シフト位置=F(前進)と判断されると(S401)、基本トルク"F"マップTIQBFを検索して基本トルク率Tqbaseを設定する(S403)。他方、シフト位置=R(後進)と判断されると(S402)、基本トルク"R"マップTIQBRを検索して基本トルク率Tqbaseを設定する(S404)。S401とS402でいずれもNOと判断されると、シフト位置=N(中立)なので、基本トルク"N"マップTIQBNを検索して基本トルク率Tqbaseを設定する(S405)。基本トルクマップTIQBF/TIQBR/TIQBNは、目標回転速度NOBJとシリンダ壁温WTとの3次元マップにて構成される。
【0030】
図5は、基本トルク率算出機能部310内に格納される基本トルク率マップの特性を説明するグラフである。基本トルク率マップとして、各シフト位置に応じてTIQBF、TIQBR、TIQBNが備えられ、各マップには、目標回転速度NOBJ(図5では目標回転数で表示)とシリンダ壁温WTに応じた基本トルク率Tqbaseが定められている。
【0031】
(目標回転速度算出機能)
図6と図7は、目標回転速度算出機能部311による目標回転速度算出機能を説明するもので、図6は、目標回転速度NOBJを設定するフローチャートであり、図7は、基本目標回転速度マップの特性を説明するグラフである。図6において、目標回転速度NOBJは、基本目標回転速度マップTINOBJを検索してシリンダ壁温WTに応じた値が設定される。図7に示すごとく特性を有する基本目標回転速度マップTINOBJは、シリンダ壁温WTでの2次元マップにて構成され、目標回転速度算出機能部311に格納されている。
【0032】
(模擬船速算出機能)
図8は、模擬船速算出機能部405による模擬船速算出機能を説明するもので、模擬船速SNEを設定するフローチャートである。図8において、シフト位置=R(後進)以外と判断されると(S801)、模擬船速SNE=フィルタゲイン1×前回の模擬船速SNE[i−1]+(1−フィルタゲイン1)×回転速度NEを模擬船速SNEとして設定する(S802)。シフト位置=R(後進)以外と判断されなければ(S801)、模擬船速SNE=フィルタゲイン2×前回の模擬船速SNE[i−1]+(1−フィルタゲイン2)×目標回転速度NOBJを模擬船速SNEとして設定する(S803)。すなわち、模擬船速算出機能部405は、模擬船速を、エンジン回転数またはアイドル時の目標回転数をなまし処理して算出し、かつシフト位置状態にてなまし係数を切り替えるようになされている。
【0033】
(船速負荷比率算出機能)
図9は、船速負荷比率算出機能部406による船速負荷比率算出機能を説明するもので、船速負荷比率Dspdを設定するフローチャートである。図9において、船速負荷比率Dspdとして、模擬船速SNE÷目標回転速度NOBJの結果を設定する。また、この際、船速負荷比率Dspdは係数1.0を最小として設定する(S901)。なお、ここでは、船速負荷比率算出機能部406は、模擬船速と目標回転速度との比を求めることで、エンジンがプロペラにて回転させられているか、または自力で回転しているかの判定を行うものであるが、比の代わりに偏差を求めることで、同様にしてエンジンがプロペラにて回転させられているか、または自力で回転しているかの判定を行うことができる。
【0034】
(走行負荷補正算出機能)
図10は、走行負荷補正算出機能部407による走行負荷補正算出機能を説明するもので、走行負荷補正信号tqrfを設定するフローチャートである。図10において、シフト位置=R(後進)以外またはエンストと判断されると(S101)、走行負荷補正信号tqrf=0として設定する(S102)。S101でNOと判断された場合、走行負荷補正マップTIQSFTRを検索して走行負荷補正信号tqrfを設定する(S103)。走行負荷補正マップTIQSFTRは、船速負荷比率Dspdの2次元マップにて構成され、走行負荷補正算出機能部407に格納されている。ここで、走行負荷補正マップTIQSFTRは、船舶速度とアイドル時の目標船舶速度の比率の他に偏差に基づいたものでもよい。
【0035】
(回転フィードバックI補正算出機能)
図11は、回転フィードバックI補正算出機能部401による回転フィードバックI補正算出機能を説明するもので、回転フィードバックI補正信号tqfbを設定するフローチャートである。図11において、回転フィードバック(F/B)条件を確認し実行/禁止を判断する(S111)。ここで、模擬船速の状態が減速であると判定された時(SNE>XKSSP)(またはオフアイドル時または始動後所定時間内)には、回転F/Bは禁止され、回転F/BI補正信号tqfbは、前回値の状態から0%に近づける(S117)。すなわち、アイドル運転時、シフト位置がニュートラル状態でなく、かつプロペラにて回転させられていると判断した場合に、回転数フィードバック制御による基本トルク率の補正を禁止する。
【0036】
回転F/B条件が実行されると、回転偏差NDEFを算出する(S112)。ここでは、回転偏差NDEFとして、回転速度NEと目標回転速度NOBJの絶対値を算出する。次に、回転偏差NDEFとシフト位置SPSからあらかじめ設定されている回転偏差マップTIFBI*を検索してIゲインを算出する(S113)。そして、目標回転速度NOBJと回転速度NEの状態を比較し(S114)、条件が成立すると回転F/BI補正信号tqfb=tqfb[i−1]+Iゲイン(S113で算出した値)とし設定する(S115)。回転速度NEが目標回転速度NOBJより高い場合は、回転F/BI補正信号tqfb=tqfb[i−1]−Iゲイン(S113で算出した値)とし設定する(S116)。回転偏差マップTIFBI*は、回転偏差NDEFの2次元マップにて構成され、回転フィードバックI補正算出機能部401に格納されている。
【0037】
(回転フィードバックP補正算出機能)
図12は、回転フィードバックP補正算出機能部402による回転フィードバックP補正算出機能を説明するもので、回転フィードバックP補正信号tqfbpを設定するフローチャートである。図12において、まず、回転比率NRAを算出する(S121)。回転比率NRAは、回転比率NRA=回転速度NE/目標回転速度NOBJにて設定される。次に、模擬船速を参照し、模擬船速SNE>XNEISCFBPが成立した場合は回転F/BP補正信号tqfbpを0%と設定する(S122→S124)。S122で条件不成立の場合は、S121で算出した回転比率NRAとシフト位置SPSからあらかじめ設定されている回転比率マップTIQSFT*FBを検索しその値を回転F/BP補正信号tqfbpとして設定する(S123)。回転比率マップTIQSFT*FBは、回転比率NRAの2次元マップにて構成され、回転フィードバックP補正算出機能部402に格納されている。
【0038】
(トルク率F学習補正算出機能)
図13は、トルク率F学習補正算出機能部403によるトルク率F学習補正算出機能を説明するもので、トルク率F学習補正信号tqlrfを設定するフローチャートである。図13において、まず、禁止/実行の学習条件を判定する(S131)。判定条件としては、シフト≠F、または|NE−NOBJ|<XKNEL、または壁温WT<XKWTFB、または回転F/B条件=禁止、または始動後所定時間内、または故障時であり、これらが成立した場合は学習禁止とし、回転F/BI補正平均値tqfbave2=0%と設定する(S133)。学習条件が実行の場合は、回転F/BI補正平均値tqfbave2=回転F/BI補正値の所定時間(TIME2)の平均値と設定する(S132)。次に、トルク率F学習値tqlrfeprを算出する(S134)。トルク率F学習値tqlrfeprは、トルク率F学習値tqlrfepr=tqlrfepr[i−1]+tqfbave2/2として設定する(tqfbave2更新時に実施する)。さらに、シフト位置センサ=Nならば(S135)、トルク率F学習補正信号tqlrf=0%と設定する(S136)。他方、シフト位置≠Nならば、トルク率F学習補正信号tqlrf=tqlrfeprとして設定する(S137)。
【0039】
(トルク率N学習補正算出機能)
図14は、トルク率N学習補正算出機能部404によるトルク率N学習補正算出機能を説明するもので、トルク率N学習補正信号tqlrnを設定するフローチャートである。図14において、まず、禁止/実行の学習条件を判定する(S141)。判定条件としては、シフト≠N、または|NE−NOBJ|<XKNEL、または壁温WT<XKWTFB、または回転F/B条件=禁止、または始動後所定時間内、または故障時であり、これらが成立した場合は学習禁止とし、回転F/BPI補正平均値tqfbave=0%と設定する(S143)。学習条件が実行の場合は、回転F/BI補正平均値tqfbave=回転F/BI補正値の所定時間(TIME)の平均値と設定する(S142)。次に、トルク率N学習補正信号tqlrnを算出する(S144)。トルク率N学習補正信号tqlrnは、トルク率N学習補正信号tqlrn=tqlrn[i−1]+tqfbave/2として設定する(tqfbave更新時に実施する)。
【0040】
すなわち、トルク率学習補正は、アイドル時、所定条件が成立したときに回転数フィードバック補正値の平均値に基づいて、シフト位置がニュートラル、ニュートラル以外のシフト位置ごとに独立に学習値を算出し、独立に学習値の更新を行い、ニュートラルのシフト位置での学習値はシフト状態に関係なく常時目標トルク率算出に使用し、ニュートラル以外のシフト位置での学習はニュートラルの学習が完了後に行う。
【0041】
(回転偏差算出機能)
回転偏差算出機能部408により、目標回転速度NOBJとエンジン回転速度NEの絶対値を回転偏差Neabsとして算出する。
Neabs=|NE−NOBJ|
【0042】
(目標トルク率算出機能)
図15は、目標トルク率算出機能部313による目標トルク率算出機能を説明するもので、目標トルク率算出機能を説明するフローチャートである。上記で算出した基本トルク率Tqbaseと、回転フィードバックI補正信号tqfbと、回転フィードバックP補正tqfbpと、トルク率F学習補正信号tqlrfと、トルク率N学習補正信号tqlrnと、走行負荷補正信号tqrfを加算し、目標トルク率TQと設定する(S151)。
【0043】
(充填効率算出機能)
図16は、充填効率算出機能部314による充填効率算出機能を説明するもので、充填効率算出機能を設定するフローチャートである。まず、充填効率補正マップTITQTQを検索して補正ゲインKTを設定する(S161)。充填効率補正マップTITQTQは、目標点火時期ADVでの2次元マップにて構成される。次に、上記で算出した目標トルク率TQと充填効率補正ゲインKTを乗算して充填効率QBを算出する(S162)。
【0044】
図17は、充填効率算出機能部314に格納される充填効率補正マップTITQTQの特性を説明するグラフである。アイドル時の目標点火時期(例:0CA)を基準(1.0)とし、点火時期の変化に対して充填効率が一定となる補正値を設定する。通常(AF値は固定)は、点火時期が進角すればトルクが上昇するため、充填効率を一定にさせるには基準値より小さい値を設定する。逆に、点火時期が遅角すればトルクが減少するため、充填効率を一定にさせるには基準値より大きな値を設定する。
【0045】
(目標空気量算出機能)
図18は、目標空気量算出機能部319による目標空気量算出機能を説明するもので、目標空気量算出機能を設定するフローチャートである。ここでは、充填効率QB[%]、目標回転速度NOBJ[r/min]、標準大気密度[g/l]、排気量[cc]及び単位換算調整値(1/1200000)を乗算し、目標空気量QOBJ[g/s]を算出する(S171)。
【0046】
(吸入空気量調整機能)
図19は、吸入空気量調整機能部320による吸入空気量調整機能を説明するもので、吸入空気量調整機能を設定するフローチャートである。ここでは、ISCバルブ流量特性TIVSTEPと目標空気量QOBJに基づいてISCバルブ開度を算出する(S181)。ISCバルブ流量特性マップTIVSTEPは、目標空気量QOBJとの2次元マップにて構成され、吸入空気量調整機能部320に格納されている。
【0047】
図20は、ISCバルブ特性マップの特性を説明するグラフである。マップ値は、吸入空気量[g/s]に相当するISCバルブ開度値があらかじめ設定されている。
【0048】
尚、本実施の形態を例に説明したが、吸気空気量調整機能部320は、ISCバルブのようにスロットルバルブをバイパスする形態の構成だけでなく、アイドル制御機能を持った電子スロットルアクチュエータを用いた構成でも同様に有効である。
【0049】
以上のように、この発明によれば、エンジンがアイドル状態である場合はシフト位置の状態やトローリング速度に関係なく、トルク率で適合データを設定することができ、供給空気量の算出においては、目標回転速度や点火時期またはエンジン排気量などの相違を自動補償するため容易に適合設定ができる。
【0050】
また、制御ロジックが簡素化できることで開発工数が削除でき、他のエンジンへの適合データの流用が可能となる。
【0051】
また、走行負荷補正により前進での運転からの急なシフト操作(前進→中立→後進)を行ったとしても船速負荷を考慮したISC流量値にて制御することが可能となるため、エンストを防止することができる。
【0052】
さらに、エンジン状態とギアボックスの状態より負荷を検出することで、より高精度な船舶のアイドル回転数制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施の形態に係る船舶のアイドル回転数制御装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す船外機10内のエンジンを示す概略図である。
【図3】図1に示す船舶のアイドル回転数制御装置の動作を説明するもので、図1に示すECU30の動作機能ブロック図である。
【図4】図3に示す基本トルク率算出機能部310の機能を説明するフローチャートである。
【図5】図3に示す基本トルク率算出機能部310内に格納される基本トルク率マップの特性を説明するグラフである。
【図6】図3に示す目標回転速度算出機能部311の機能を説明するフローチャートである。
【図7】図3に示す目標回転速度算出機能部311内に格納される基本目標回転速度マップの特性を説明するグラフである。
【図8】図3に示す模擬船速算出機能405の機能を説明するフローチャートである。
【図9】図3に示す船速負荷比率算出機能部406の機能を説明するフローチャートである。
【図10】図3に示す走行負荷補正算出機能部407の機能を説明するフローチャートである。
【図11】図3に示す回転フィードバックI補正算出機能部401の機能を説明するフローチャートである。
【図12】図3に示す回転フィードバックP補正算出機能部402の機能を説明するフローチャートである。
【図13】図3に示すトルク率学習F補正算出機能部403の機能を説明するフローチャートである。
【図14】図3に示すトルク率学習N補正算出機能部404の機能を説明するフローチャートである。
【図15】図3に示す目標トルク率算出機能部313の機能を説明するフローチャートである。
【図16】図3に示す充填効率算出機能部314の機能を説明するフローチャートである。
【図17】図3に示す充填効率算出機能部314内に格納される充填効率補正値マップの特性を説明するグラフである。
【図18】図3に示す目標空気量算出機能部319の機能を説明するフローチャートである。
【図19】図3に示す吸入空気量調整機能部320の機能を説明するフローチャートである。
【図20】図3に示す吸入空気量調整機能部320内に格納されるISCバルブ流量特性マップの特性を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0054】
10 船外機、11 船舶、12 スロットルレバー、13 スロットルケーブル、14 シフトケーブル、20 吸気管、21 スロットルバルブ、22 インテークマニホールド、23 インジェクタ、24 スパークフラグ、25 エキゾーストマニホールド、31 スロットル開度センサ(アイドル運転状態検出手段)、32 絶対圧センサ、33 吸気温センサ、34 オーバーヒートセンサ、35 壁温センサ(エンジン温度検出手段)、26 ISCバルブ、27 スペース、37 ギアボックス(負荷検出手段としてのシフト位置センサが内蔵)、30 ECU(制御手段)、28 フライホイール、36 クランク角センサ(エンジン回転数検出手段)、310 基本トルク率算出機能部、311 目標回転速度算出機能部、401 回転フィードバックI補正算出機能部、402 回転フィードバックP補正算出機能部、403 トルク率F学習補正算出機能部、404 トルク率N学習補正算出機能部、405 模擬船速算出機能部(船舶の走行速度を検出する手段)、406 船速負荷比率算出機能部(減速走行判定手段)、407 走行負荷補正算出機能部、313 目標トルク率算出機能部、314 充填効率算出機能部、319 目標空気量算出機能部、320 吸入空気量調整機能部(吸入空気量調整手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載するエンジンのアイドル時の回転速度を制御する船舶のアイドル回転数制御装置において、
エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記エンジンの暖機状態を検出するエンジン温度検出手段と、
前記エンジンのアイドル運転状態を検出するアイドル運転状態検出手段と、
前記エンジンのシフト位置状態がニュートラル、前進、または後進であるかを検出する負荷検出手段と、
前記各検出手段の検出に基づいて前記エンジンがアイドル状態のときに前記検出手段にて検出したエンジン状態を基にエンジン回転数を目標回転数に収束させるように制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
エンジンの回転速度、シフト位置及び目標回転速度に基づいて模擬船速を算出する模擬船速算出機能部と、
エンジンが船舶の走行状態によりプロペラにて回転させられているか、または自力にて回転しているかを判定する減速走行判定手段と、
前記エンジンがアイドル状態のときに前記エンジンを目標回転数にて定常運転させるために必要な、前記エンジンの最大トルクに対し発生させるトルクの割合である基本トルク率を算出する基本トルク率算出機能部と、
目標回転数とエンジン回転数との偏差に応じ前記基本トルク率に対して偏差がなくなるよう補正する回転数フィードバック補正信号を出力する回転数フィードバック補正算出機能部と、
前記回転数フィードバック補正信号に基づいてトルク率補正値を学習するトルク率学習補正機能部と、
船舶速度に応じて基本トルク率を補正する走行負荷補正信号を算出する走行負荷補正算出機能部と、
前記基本トルク率、前記回転フィードバック補正信号、前記トルク率学習補正信号、及び走行負荷補正信号に基づいて目標トルク率を算出する目標トルク率算出機能部と、
前記目標トルク率を発生させるために必要な目標空気量を算出する目標空気量算出機能部と、
前記目標空気量に基づいて前記エンジンに供給される吸入空気量を調整する吸入空気量調整機能部と
を有することを特徴とする船舶のアイドル回転数制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶のアイドル回転数制御装置において、
前記走行負荷補正算出機能部は、船舶速度とアイドル時の目標船舶速度の偏差または比率に基づいた走行負荷補正マップを予め格納し、シフト位置が後進時のみ前記走行負荷補正マップのデータに基づいた走行負荷補正を行う
ことを特徴とする船舶のアイドル回転数制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の船舶のアイドル回転数制御装置において、
前記模擬船速算出機能部は、模擬船速を、エンジン回転数またはアイドル時の目標回転数をなまし処理して算出し、かつシフト位置状態にてなまし係数を切り替える
ことを特徴とする船舶のアイドル回転数制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の船舶のアイドル回転数制御装置において、
前記減速走行判定手段は、エンジン回転数と模擬船速の比率または偏差に基づいてエンジンがプロペラにて回転させられているか、または自力で回転しているかの判定を行う
ことを特徴とする船舶のアイドル回転数制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の船舶のアイドル回転数制御装置において、
前記回転数フィードバック補正算出機能部は、アイドル運転時、前記シフト位置がニュートラル状態でなく、かつ前記減速走行判定手段にてプロペラにて回転させられていると判断した場合に、回転数フィードバック制御による基本トルク率の補正を禁止する
ことを特徴とする船舶のアイドル回転数制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の船舶のアイドル回転数制御装置において、
前記トルク率学習補正機能部は、アイドル時、所定条件が成立したときに前記回転数フィードバック補正信号の平均値に基づいて、シフト位置がニュートラル、ニュートラル以外のシフト位置ごとに独立に学習値を算出し、独立に学習値の更新を行い、ニュートラルのシフト位置での学習値はシフト状態に関係なく常時目標トルク率算出に使用し、ニュートラル以外のシフト位置での学習はニュートラルの学習が完了後に行う
ことを特徴とする船舶のアイドル回転数制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−38067(P2010−38067A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203108(P2008−203108)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】