説明

色素脱失のためのトロポロン−およびヒドロキシベンゾール置換オリゴペプチド

式、R−NH−CH((CH−NH)−C=O−NH−CH(CH)−C=O−R[式中、nは、1、2、3の値をとることができ、Rは、H、ベンジルオキシカルボニル−、tert−ブチルオキシカルボニル−、アセチル、3〜24個の炭素原子を有する直鎖脂肪族アシル基、ビニルオキシカルボニル−(Voc)、アリルオキシカルボニル−(Alloc)、1−イソプロピルアリルオキシカルボニル−(Ipaoc)、−C=O−シクロヘキシル、シンナミルオキシカルボニル−(Coc)、N−(4,4−ジメチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−4−ペンテニル)、N−(4,6−ジメチル−1−オキソ−2,4−ドデカジエニル)、N−(1−オキソ−9,12,15−オクタデカトリエニル)、N−(4−メチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−10−ウンデセニル)、N−(2−メチル−1−オキソプロピル)、9−フルオレニルメトキシカルボニル−(Fmoc)、(ホモ−ベンジルオキシカルボニル)−(ホモ−Z)、P−メトキシベンジルオキシカルボニル−(Moz)、9−アントリルメチル、N−フェニルエチルおよびトリフェニルメチル−(Trt)から選択される基を表し、Rは、p−ヒドロキシフェニル−、4−ヒドロキシヘプタ−1,3,6−トリエン−5−オン−1−イル−、2,4−ジヒドロキシフェニル−、4[(ヒドロキシアミノ)カルボニル]フェニル−、(5−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2イル)−、(3−ヒドロキシ−4−オキソピリジン−1−(4H)−イル)−、(2−チオキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル)−、4−[(アミノカルボノチオイル)アミノ]フェニル)−、(2,2’ビピリジン4−イル)−、(5−ブチル−2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−、2,4−ジヒドロキシ−5−(1−フェニルエチル)フェニル−、(4−ヒドロキシ−5−チオキソシクロヘプタ−1,3,6−トリエン−1−イル)−から選択される基を表し、Rは、−OH、NHから選択される基である]の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
局所色素沈着過度および強すぎる構成色素沈着は美容上の欠点として感じられる。皮膚の色素沈着は、皮膚独自の色素メラニンによって完全に内在的に決定される。これは上皮の特殊化細胞、メラニン細胞によって形成される。メラニン合成に際しては、チロシナーゼがペースメーカー酵素としてきわめて重要な役割を果たす。
【背景技術】
【0002】
いわゆるフォトタイプにおいて反映される皮膚の均一の色素沈着に加えて、局所色素沈着の増強も生じうるが、これらはさまざまな原因を有しうる。これら局所色素沈着過度の例として挙げられるのは、そばかす、老人性色素斑、メラニン沈着、肝斑、炎症後色素沈着過度、黒子等々であろう。色素沈着のすべての形態は共通しており、(過度の)メラニンが発生する。
【0003】
局所色素沈着過度およびそれ自体で皮膚型に完全に十分な色素沈着はしばしば美容上の欠点として認識される。したがって、皮膚の色素沈着を回避するさまざまな方法が開発された。ペースメーカー酵素チオシナーゼによって決定的に制御されるメラニン合成の阻害に加えて、メラニン細胞からメラニンの周囲のケラチン生成細胞へ輸送することを阻止する方法も周知である。例えば、この輸送を抑制する大豆からのセリンプロテアーゼ阻害剤が記載されている。ニアシンアミドは同様にして色素沈着を低減するという。皮膚のメラニン含有角質細胞の剥離増大を伴う皮膚の再生増強についても皮膚を明るくするために記載されている。この方法のためには特に乳酸、グリコール酸、さらにはビタミンA酸も使用される。また、ビタミンCおよびその誘導体などの抗酸化剤が使用されるか、または、ペースメーカー酵素チロシナーゼの細胞内安定が(例えばリノール酸によって)減少される皮膚を明るくする治療法も周知である。
【0004】
皮膚を明るくするための先に記載された方法に加えて、チロシナーゼの直接の阻害が多くの方法の前面に出ている。大部分の阻害剤はフェノール構造またはカテコール構造である。これにより、コウジ酸、アルブチン、およびヒドロキノンなど一般に周知のチロシナーゼ阻害剤が使用される。ヒドロキノンは文献においてしばしば「ゴールドスタンダード」として記載されている。ただし、インビボで効果のある濃度はしばしば明らかな副作用も示す。ほぼすべての皮膚を明るくする成分において生じうるこの毒性問題のため、毒性学的に問題のない効果のある色素沈着を低減する作用原理が依然として不足している。これまで入手可能なチロシナーゼ阻害剤はマッシュルームチロシナーゼのために最適化された。本発明の課題はさらに、ヒトチロシナーゼの阻害剤を開発し、ヒトチロシナーゼを高効率に阻害し、皮膚色素沈着を最小限にするための阻害剤を開発することであった。
【0005】
トロポロンおよびその誘導体は、特許文献において、皮膚を明るくするためのチロシナーゼ阻害剤および物質としてすでに記載されている。例えば、特許文献1では皮膚のしみおよびそばかすの治療のためのトロポロンの使用が記載されている。特許文献2および特許文献3では、ツジャプリシンとも呼ばれる天然に存在するトロポロン誘導体であるイソプロピルトロポロンの皮膚を明るくする効果が記載されている。特許文献4では他の白化作用物質と組合せたトロポロンの使用が記載されている。
【0006】
また、特許文献においてチロシナーゼ阻害のためのペプチド構造も記載されている(例えば、特許文献5、特許文献6)。これらの構造のいずれも本発明による化合物との一致を示していない。したがって、本発明の構成要素は、新種の酵素アッセイおよびそれを使用して識別される構造である。
【0007】
【特許文献1】日本国特許第63033313号公報
【特許文献2】日本国特許第1979−82213号公報
【特許文献3】米国特許第4361581号明細書
【特許文献4】欧州特許第308919号明細書
【特許文献5】国際公開第2000064926号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5126327号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外にも、式
−NH−CH((CH−NH)−C=O−NH−CH(CH)−C=O−R
[nは、1、2、3の値をとることができ、
は、H、ベンジルオキシカルボニル−、tert−ブチルオキシカルボニル−、アセチル、3〜24個の炭素原子を有する直鎖脂肪族アシル基、Voc(ビニルオキシカルボプニル)、Alloc(アリルオキシカルボニル)、Ipaoc(1−イソプロピルアリルオキシカルボニル)、−C=O−シクロヘキシル、Coc(シンナミルオキシカルボニル)、N−(4,4−ジメチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−4−ペンテニル)、N−(4,6−ジメチル−1−オキソ−2,4−ドデカジエニル)、N−(1−オキソ−9,12,15−オクタデカトリエニル)、N−(4−メチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−10−ウンデセニル)、N−(2−メチル−1−オキソプロピル)、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)、ホモ−Z(ホモ−ベンジルオキシカルボニル)、Moz(P−メトキシベンジルオキシカルボニル)、9−アントリルメチル、N−フェニルエチルおよびTrt(トリフェニルメチル)から選択される基を表し、
は、p−ヒドロキシフェニル−、4−ヒドロキシヘプタ−1,3,6−トリエン−5−オン−1−イル−または2,4−ジヒドロキシフェニル−、4[(ヒドロキシアミノ)カルボニル]フェニル−、(5−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2イル)−、(3−ヒドロキシ−4−オキソピリジン−1−(4H)−イル)−、(2−チオキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル)−、4−[(アミノカルボノチオイル)アミノ]フェニル)−、(2,2’ビピリジン4−イル)−、(5−ブチル−2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−、2,4−ジヒドロキシ−5−(1−フェニルエチル)フェニル−、(4−ヒドロキシ−5−チオキソシクロヘプタ−1,3,6−トリエン−1−イル)−から選択される基を表し、
は、−OH、NHから選択される基である]の本発明による化合物が従来技術の欠点を取り除くことが示された。
【0009】
これらは、ヒトチロシナーゼを阻害し、したがって皮膚色素沈着の低減をもたらすことに非常に適している。具体的には、これはそれぞれの皮膚型において自然に完全に適切に発生しうる(白化)および局所色素沈着過度のさまざまな形態(例えば、老人性色素斑、メラニン沈着、肝斑、そばかす、黒子、日焼け後、内生(ひげ)髪後、体毛の除去後、ひげそり後、および皮膚の炎症性病変(例えば、にきび)に際して等に発生する炎症後色素沈着過度のさまざまな形態などの色素沈着障害)におけるような望ましくない色素沈着の低減に関する。
【0010】
さらに、本発明による化合物は、
・ 自然の髪色を明るくし、
・ UV光線(日焼け)に対する皮膚の後続反応を減少させ、
・ ひげそり(かみそり負け)に対する皮膚の後続反応を減少させ、
・ 皮膚に有用な保護および修復機序(例えば、機能不全の酵素、DNA、脂質、タンパク質に対する)を上昇させ、
・ かつ、例えば、皺および傷跡の低減に役立ち、結果として生じる皮膚の刺激に抵抗するとともに損傷した皮膚における再生過程を促進させるレーザーの局所使用に際しての前
後処置および擦りむきの処置のために非常に適している。
【0011】
さらに、本発明による化合物およびその製剤は次のさらなる利点、すなわち、予防的および治療のために
・ きわめて優れた皮膚忍容性
・ 製剤における優れた配合性および高い安定性
・ それによって健康な肌の色がもたらされる皮膚の血行および再生および細胞再生の改善
・ 皮膚の引締めおよびセルライトの減少
・ 皮膚老化および皮膚障害の(UV誘発性)徴候の減少、すなわち、小皺および皺ならびに毛細血管拡張の減少
・ 刺激作用および肌の張りの改善
・ 肌の潤い改善
・ 掻痒感の減少
を有する。
【0012】
好ましくは、本発明による化合物において、nは1または2である。
【0013】
さらに好ましくは、Rは、H、tert−ブチルオキシカルボニル−またはベンジルオキシカルボニル−である。
【0014】
特に好ましくは、Rは、Hまたはベンジルオキシカルボニルである。
【0015】
非常に好ましくは、本発明による化合物は、C末端が、2,4−ジアミノ酪酸、またはオルニチンとペプチド結合されているチロシン、そのトロポロン類似体、または2,4−ジヒドロキシ類似体からなるオリゴペプチドである。
【0016】
さらに好ましくは、本発明による化合物は、トリペプチド、好ましくは、ジペプチドである。本発明は、0.0001〜15重量%、好ましくは、0.01〜1重量%の使用濃度でヒトチロシナーゼの阻害および皮膚色素沈着の低減のための本発明による化合物の使用をも包含する。本発明は、本発明による化合物を含有する化粧用調製物をも包含する。
【0017】
本発明は、自然の髪色を明るくし、UV光線(日焼け)に対する皮膚の後続反応を減少させ、ひげそり(かみそり負け)に対する皮膚の後続反応を減少させ、皮膚に有用な保護および修復機序(例えば、機能不全の酵素、DNA、脂質、タンパク質に対する)を上昇させるための、かつ、例えば、皺および傷跡の減少に役立ち、結果として生じる皮膚刺激性に抵抗するとともに損傷した皮膚における再生過程を促進させるレーザーの局所使用に際しての前後処置および擦りむきの処置を促進するための調製物における本発明による化合物の使用もしくは本発明による調製物の非治療的な使用をも包含する。
【0018】
本発明による化合物は、オリゴペプチド、具体的には、C末端がチロシン残基もしくはその類似体であり、図2によれば、さまざまなR基から由来し、オルニチン、または好ましくは、2,4−ジアミノ酪酸、または特に好ましくは、2,3−ジアミノプロパン酸とペプチド結合されているジペプチドでありうる。図1において、この化合物の一般構造が示されている。特殊な効果は、酵素の基本的な銅イオンのリガンドとしてチロシナーゼとの錯体において機能するR基とのペプチド構造の組合せにある。好ましいR基は、2/1、2/2、2/3、2/5 2/9であり、このうち特に好ましくは、R6、R4が−HおよびR5が−OHの2/1、および2/2である。
【0019】
【化1】

【表1】

【0020】
【化2】

(R、Rは−Hまたは−OH、RはH、OH、−(CH−CHであり、nが0−15、−CH(Me)(Ph)、Ph、OAc):
2/1:フェノールおよびカテコール、
2/2:トロポロン、
2/3:サリチルヒドロキサム酸、
2/4:5−ヒドロキシ−4−ピロン、
2/5:3−ヒドロキシ−4−オキソピリジン、
2/6:チオオキサゾリドン、
2/7:フェニルチオ尿素
2/8:α,α’−ジピリジル
2/9:2−ヒドロキシチオトロポロン
【0021】
図1および2に補足して次の特徴が確認される。すなわち、
・ N末端アミノ酸において側鎖における遊離アミノ基が必須であり、さらに、n=1はn=2より有効であり、n=2はn=3より有効である(図1を参照)
・ 立体的に大きな疎水性置換基Rは阻害効果を改善しうる。
・ 非保護N末端アミノ官能に加えて、これはさまざまな保護基によって保護されうる。N末端保護基は、疎水性の脂肪族直鎖、脂肪族分岐、もしくは環状、および特に好ましくは、芳香族基から選択されうる。
・ 好ましい基は、−Ac、−C=O(CHCH、ここでn=1−22であり、Voc、Alloc、Ipaocである。
・ C=O−シクロヘキシル、Coc、N−(4,4−ジメチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−4−ペンテニル)、N−(4,6−ジメチル−1−オキソ−2,4−ドデカジエニル)、N−(1−オキソ−9,12,15−オクタデカトリエニル)、N−(4−メチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−10−ウンデセニル)、N−(2−メチル−1−オキソプロピル)、およびFmoc、ホモ−Z、Moz、9−アントリルメチル、N−フェニルエチル、Boc、およびTrtである。
・ 特に好ましくは、Cbs(カルボベンゾキシ)である。
・ 置換基Rとしては優れた銅リガンドが特に効果がある。
・ C末端アミド化ペプチド(R=−NH)は、遊離酸よりも効果がある。
【0022】
表1は、特に効果のある阻害剤として証明された(+++)図1に示された一般構造(R=4−ヒドロキシベンゾイル−)の化合物を示す。この場合、構造の効果に対して決定的な影響を有する立体化学(両方のアミノ酸のL−もしくはD−配置)も考慮される。ほとんどの場合、L−配置が好ましいが、オルニチンの場合にはD−配置が好ましい。
【0023】
特に有効に次の本発明による構造が製造された。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

【0036】
【化15】

【0037】
【化16】

【0038】
【化17】

【0039】
【化18】

【0040】
上記の物質は部分的にバッヒェム(Bachem)社から購入されうるが、アミノ酸トロポロニルアラニンは、酵素チロシン_フェノルリアーゼによって、トポロンもしくは2−ヒドロキシチオトロポンおよびアンモニアからなるドーパの製造と同様に製造されうる(フール(Foor)F、モリン(Morin)N、ボスティアン(Bostian)KA(1993年)エルビニア・ヘルビコーラ(Erwinia herbicola)からクローン化したチロシンフェノールリアーゼ遺伝子による大腸菌(Escherichia coli)におけるL−ジヒドロキシフェニルアラニンの製造(Production of L−dihydroxyphenylalanine in Escherichia coli with the tyrosine phenol−lyase gene cloned from Erwinia herbicola)、Appl Environ Microbiol 59、3070−3075頁、および「チロシン−フェノール−リアーゼによるトロポノリルアラニンの酵素的製造のための方法(Verfahren zur enzymatischen Herstellung von Troponolylalanin mit Tyrosin−Phenol−Lyase)」:日本国特許第08070878号公報)。次いで、ペプチドは、従来のペプチド合成法により特殊合成として製造される。
【0041】
本発明による調製物は有利には本発明によるペプチドをさらに2個以上含有しうる。
【0042】
本発明による調製物は、さらに有利に、例えば、ジヒドロキシアセトン、メラニン誘導体、およびエリトルロースなど自己褐変物質をも含有しうるが、この物質は調製物の総重量を基準にして0.1重量%〜8重量%、好ましくは、0.4−2重量%の濃度で使用される。本発明による製剤は、さらに有利には、ジヒドロキシアセトンに加えて、クルミ抽出物のほか、褐色性を保持または生成し、またはさらに増強する別の物質をも含有しうる。きわめて有利と証明されたのは、望ましくない色素沈着過度(黒皮症、老人性色素斑、そばかす等)を治療するための、自己褐変物質、具体的には、ジヒドロキシアセトンおよびエリトルロースと本発明による化合物の化粧用調製物における組合せである。
【0043】
保湿剤と呼ばれるのは、皮膚表面への塗布後もしくは配置後に角質層の湿度放出(経表皮水分喪失量(TEWL)とも呼ばれる)を低減し、かつ/または角質層の水和に好ましい影響を及ぼす特徴を化粧用または皮膚科用調製物に付与する物質または物質の混合物である。
【0044】
本発明による保湿剤は、有利には、グリセリン、乳酸、および/または乳酸塩、具体的には乳酸ナトリウム、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ビオサッカリド G
um−1、ツルマメ(Glycine Soja)、エチルヘキシロキシグリセリン、ピロリドンカルボン酸、および尿素からなる群から選択される。さらに具体的に有利であるのは、水溶性、水中で膨張可能、または水によってゲル化可能な多糖類の群からなるポリマー保湿剤の使用である。具体的に有利なのは、ヒアルロン酸、キトサン、およびフコースが豊富な多糖類であり、これは登録番号178463−23−5でケミカルアブストラクト(Chemical Abstracts(CA))にファイリングされ、かつ例えば、フコゲル(Fucogel)(登録商標)1000の名称でソラビア(SOLABIA)S.A.社から得られるものである。保湿剤は、例えば、皮膚の老化に際して発生する美容上または皮膚科の皮膚の変化を予防および治療するための抗皺作用物質としても有利に使用されうる。本発明において特に有利であるのは、保湿剤としてのグリセリンを、好ましくは、調製物の総重量を基準にして0.05〜30重量%、特に好ましくは、1〜10重量%の濃度で使用することである。
【0045】
本発明においてさらに有利に使用される作用物質は、皮膚の状態に好ましく影響を及ぼすもの、具体的には、皺の発生または既存の皺を減少させる老年性皮膚に好ましい影響を及ぼす作用物質である。有利には、具体的には、バイオキノン、具体的には、ユビキノン(Q10)、ユビキノール、葉酸およびその誘導体(具体的には、テトラヒドロ葉酸およびジヒドロ葉酸)、ニアシンおよびその誘導体(具体的には、ニアシンアミド)、クレアチンおよびクレアチニン、カルニチン、ビオチン、イソフラボン、カルジオリピン、リポン酸、凍結抑制タンパク質、ホップおよびホップ−モルト抽出物である。結合組織の再構成を促進する、天然および合成イソフラボノイドおよびイソフラノイド含有植物抽出物、例えば、大豆およびクローバー抽出物などの薬剤も本発明による製剤においてきわめて優れて使用されうる。これらの製剤は、乾燥した皮膚における皮膚機能を補助するための作用物質(例えば、ビタミンC、ビオチン、カルニチン、プロピオン酸、緑茶−抽出物、ユーカリ油、尿素および金属塩(例えば、NaCl、海底鉱物)およびオスモライト(例えば、イノシトール、ベタイン、第四級アンモニウム化合物)の使用に特殊な方法で適していることも示されている。同様にして、刺激性皮膚状態の軽減、もしくはこれに好ましい影響を及ぼすための作用物質の添加は、一般に敏感な皮膚の場合であれ、害毒物によって刺激された皮膚(UV光線、化学物質)の場合であれ、有利と証明された。ここで挙げられる作用物質は、例えば、セリコサイド、甘草のさまざまな抽出物、リコカルコン、具体的には、リコカルコンA、シリマリン、シリフォス(Silyphos)、デクスパンテノール、プロスタグランジン代謝、具体的には、シクロオキシゲナーゼ、ロイコトリエン代謝、具体的には、5−リポキシゲナーゼ、あるいはまた5−リポキシゲナーゼ阻害剤タンパク質、FLAPの阻害剤である。前述した作用物質はさらに具体的には、(エネルギー)デポーを適用し、または更新し、かつさまざまな細胞構造、具体的には、DNAの修復(修理)を活性化するために適している。
【0046】
また、色素沈着のその他の調節因子の添加も非常に特別に有利であると証明された。ここで作用物質として挙げられるのは、皮膚の色素沈着を減少させ、かつ皮膚に美容上望ましい明るさをもたらし、老人性色素斑の発生を低減し、または既存の老人性色素斑を明るくするものである。強調すべきは、チロシン硫酸、二酸(8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸)のほか、リポン酸およびリポアミド、グラブリジン、甘草、桑、銅ブナ、マロニエ、マンサクのほか、バイカル・ヘルムクラウト(Baikal−Helmkraut)のさまざまな抽出物、パンテテインスルホン酸、コウジ酸、ヒドロキノン、アルブチン、α−アルブチン、Deオキシアルブチン、果実酸、具体的にはα−ヒドロキシ酸(AHA)、ベアベリー抽出物(ベアベリーまたはウワウルシ)、ウルソル酸、ルシノール、デオキシアルブチン、Bio377、H−Tyr−Gly−Trp−OH、トロポロン、ツジャプリシンアスコルビン酸、緑茶−抽出物、アミノグアニジン、ピリドキサミン、ナイアシンアミドおよびその誘導体、プロテイナーゼ活性化受容体2(PAR−2)の阻害剤である。非常に特に好ましくは、さらに、UV光線の影響の有無に関係なく、皮膚の
増強された、または迅速な褐変をもたらすその他の作用物質を含有する本発明による製剤である。これは、局所色素沈着過度(とりわけ老人性色素斑、そばかす、黒皮症)の低減に役立つような本発明による製剤に非常にきわめて該当する。かかる作用物質として、例えば、最終糖化生成物(AGE)、リポフスチン、グリセルレチンおよびグリシルレチン酸、ヌクレイン酸オリゴヌクレオチド、プリンおよびピリミジン、NO−放出物質、チロシンおよびその誘導体(具体的にはN−アセチル−チロシン)、フェニルアラニンおよびその誘導体、具体的にはN−アセチル−フェニルアラニンのほか、プロテイナーゼ活性化受容体2(PAR−2)の活性化剤が使用されうる。
【0047】
特に有利な調製物はさらに、添加物質または作用物質として抗酸化剤が使用されると得られる。本発明によれば、調製物は有利には1つもしくはそれ以上の抗酸化剤を含有する。有利であるが、しかし随意に使用される抗酸化剤としては、化粧用および皮膚科用の使用に適し、または従来のすべての抗酸化剤が使用されうる。
【0048】
本発明において非常に特に有利に、水溶性抗酸化剤、例えば、ビタミン、例えば、アスコルビン酸およびその誘導体、具体的には、パルミチン酸アスコルビル、NaおよびMgリン酸アスコルビル、および酢酸アスコルビルのほか、ルチン酸およびその誘導体、具体的には、αグルコシルルチン、クエルセチン、およびイソクエルセチンが使用されうる。
【0049】
特に好ましい抗酸化剤はさらにビタミンEおよびその誘導体(具体的には、酢酸ビタミンE)、ビタミンAおよびその誘導体(具体的には、パルミチン酸ビタミンA)のほか、カルノシン、リポ酸およびその誘導体(具体的には、ジヒドロリポン酸およびリポンアミド)、ブチルヒドロキシトルオール、ブチルヒドロキシアニソール、β−アラニンのほか、カロチノイド(具体的には、β−カロチン)、およびフェトエンである。
【0050】
調製物における抗酸化剤(1つもしくは複数の化合物)の量は、好ましくは、調製物の総重量を基準にして、0.001〜30重量%、特に好ましくは、0.05〜20重量%、具体的には、0.1〜10重量%である。
【0051】
ビタミンEおよび/またはその誘導体が抗酸化剤を表す限り、そのそれぞれの濃度を製剤の総重量を基準にして、0.001〜10重量%の範囲から選択することが有利である。
【0052】
ビタミンAもしくはビタミンA誘導体、もしくはカロチンもしくはその誘導体が抗酸化剤を表す限り、そのそれぞれの濃度を製剤の総重量を基準にして、0.001〜10重量%の範囲から選択することが有利である。
【0053】
具体的には、本発明による化粧用調製物が化粧用または皮膚科用作用物質を含有し、好ましくは、作用物質が、皮膚を酸化負荷から保護しうる抗酸化剤である場合に有利である。
【0054】
本発明において有利には、本発明における調製物は、好ましくは、少なくとも1つの他のUV−A−、UV−B−および/または広帯域フィルター物質を含有する。製剤は、必ずしも必要ではないが、場合により、UVフィルター物質として、水相および/または油相において存在しうる1つもしくは複数の有機および/または無機色素を含有しうる。
【0055】
かかるUV−フィルター物質は、フェニレン−1,4−ビス−(2−ベンゾイミダゾール)−3,3’−5,5’−テトラスルホン酸塩、2−フェニルベンゾイミダゾール5−スルホン酸塩、1,4−ジ(2−オキソ−10−スルホ−3−ボルニリデンメチル)−ベンゾニルおよびその塩、4−(2−オキソ−3−ボルニリデンメチル)ベンゾールスルホ
ン酸塩、2−メチル5−(2−オキソ−3−ボルニリデンメチル)スルホン酸塩、2,2’−メチレン−ビス−(6−(2H−ベンゾトリアゾル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール)、2−(2H−ベンゾトリアゾル−2−イル)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサンイル]プロピル]−フェノール、3−(4−メチルベンジリデン)カンファー、3−ベンゾイルデンカンファー、エチルヘキシルサリチル酸塩、テトラフタリデンジカンファースルホン酸、4−(ジメチルアミノ)−安息香酸(2−エチルヘキシル)エステル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸−アミルエステル、4−メトキシベンザルマロン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、4−メトキシシナモン酸(2−エチルヘキシル)エステル、4−メトキシシナモン酸イソアミルエステル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(4’−ジエチルアミノ−2’−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシルエステル、4−(tert−ブチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ホモメチルサリチル酸塩、2−エチルヘキシル−2−ヒドロキシ安息香酸塩、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸塩、ジメチコジエチルベンザルマロン酸塩、3−(4−(2,2−ビスエトキシカルボニルビニル)−フェノキシ)プロペニル)−メトキシシロキサン/ジメチルシロキサン−コポリマー、2,4−ビス−{[4−(2−エチル−ヘキシロキシ)−2−ヒドロキシ]−フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(INCI:ビス−エチルヘキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)、ジオクチルアミドトリアゾン(INCI:ジエチルヘキシル−ブタミドトリアゾン)、2,4−ビス−[5−1(ジメチルプロピル)ベンゾキサゾール−2−イル−(4−フェニル)−イミノ]−6−(2−エチルヘキシル)−イミノ−1,3,5−トリアジン((CAS番号288254−16−0)を有する)、4,4’,4’’−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリルトリイミノ)−トリス−安息香酸−トリス(2−エチルヘキシルエステル)(さらに:2,4,6−トリス−[アニリノ−(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシロキシ)]−1,3,5−トリアジン(INCI:エチルヘキシルトリアゾン)、2,4,6−トリビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン、2−(4’−(ジエチルアミノ)−2’−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシルエステルメロシアニン、チチアン二酸化物、調製物の総重量を基準にして0.01〜40重量%の濃度、および好ましくは、1〜20重量%の濃度での亜鉛酸化物でありうる。
【0056】
好ましい無機色素は、金属酸化物および/または水難溶性または不溶性金属化合物、具体的には、チタンの酸化物(TiO)、亜鉛の酸化物(ZnO)、鉄の酸化物(例えば、Fe)、ジルコニウムの酸化物(ZrO)、珪素の酸化物(SiO)、マンガンの酸化物(例えば、MnO)、アルミニウムの酸化物(Al)、セリウムの酸化物(例えば、Ce)、かかる酸化物からの対応する金属および混合物の混合酸化物およびバリウムの硫酸塩(BaSO)である。
【0057】
これらの色素は、本発明において有利に油性または水性の前分散液の形でも使用されうる。これらの前分散液には有利に分散助剤および/または溶解補助剤が添加されうる。
【0058】
色素は本発明によれば有利に表面処理されうるが、例えば、親水性、両親媒性、または疎水性の特性が形成され、もしくは保持されるべきである。この表面処理は、それ自体周知の方法に従って薄い親水性および/または疎水性の無機層および/または有機層が色素に付与されることで行なわれうる。さまざまな表面コーティングは本発明において水も含有しうる。
【0059】
本発明による無機表面コーティングは、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウムAl(OH)、もしくは水酸化アルミニウム(別称:アルミナ、CAS番号1
333−84−2)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(NaPO、メタリン酸ナトリウム(NaPO、二酸化ケイ素(SiO)(別称:シリカ、CAS番号7631−86−9)、または酸化鉄(Fe)からなりうる。これらの無機表面コーティングは、単独で、組合せて、および/または有機コーティング材料と組合せて存在しうる。
【0060】
本発明による有機表面コーティングは、植物性または動物性のステアリン酸アルミニウム、植物性または動物性のステアリン酸、ラウリン酸、ジメチルポリシロキサン(別称:ジメチコン)、メチルポリシロキサン(メチコン)、ジメチコン(平均鎖長200〜350のジメチルシロキサン単位およびシリカゲルとのジメチルポリシロキサンの混合物)またはアルギン酸からなりうる。これらの有機表面コーティングは、単独で、組合せて、および/または無機コーティング材料と組合せて存在しうる。
【0061】
本発明による適切な亜鉛酸化物粒子および亜鉛酸化物粒子の前分散液は、次の商品名で記載された会社において購入可能である。
【0062】
【表2】

【0063】
適切なチタン二酸化物粒子およびチタン二酸化物粒子の前分散液は、次の商品名で記載された会社において購入可能である。
【0064】
【表3】

【0065】
さらに有利な色素はラテックス粒子である。本発明により有利なラテックス粒子は、次の刊行物に記載されている。すなわち、米国特許第5,663,213号明細書および欧州特許第0761201号明細書である。特に有利なラテックス粒子は、水およびスチロール/アクリレートコポリマーで形成され、かつ例えば、ローム(Rohm)アンド(&)ハース(Haas)社において「Alliance SunSphere」の商品名で得られるものである。
【0066】
無機色素、具体的には、完成した化粧用または皮膚科用調製物における疎水性の無機微小色素の総量は、有利には、調製物の総重量を基準にして、0.1−30重量%、好ましくは、0.1−10.0、具体的には、0.5−6.0重量%の範囲から選択される。
【0067】
本発明によれば、化粧用および/または皮膚科用の光線防護製剤は従来どおりに組成され、かつ、皮膚および/または髪の治療、手入れ、および洗浄のために、かつ化粧品として装飾的な美容術において、化粧用および/または皮膚科用紫外線防護に役立ちうる。
【0068】
使用のために、化粧用および皮膚科用調製物は、本発明によれば、化粧品に従来どおりの方法で皮膚および/または髪へ十分な量でもたらされる。
【0069】
特に好ましくは、かかる化粧用および皮膚科用調製物は、日焼け防止剤の形で存在する。有利には、これらはさらに少なくとも1つの他のUVAフィルターおよび/または少なくとも1つの他のUVBフィルター、および/または少なくとも1つの無機色素、好ましくは、無機微小色素を含有しうる。
【0070】
非常に特に好ましい有機UVフィルターは、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチル酸ブチルメトキシジベンゾイルメタン、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸、ベンゾフェノン−3(オキシベンゾン)および−4(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸)、テトラフタルイリデンジカンファースルホン酸、エチルヘキシルトリアゾン、ビス−エチルヘキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、3−(4−メチルベンジリデン)カンファー、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、ホモメチルサルチル酸である。
【0071】
酸として挙げられたすべての物質は、アルカリ塩、アンモニウムまたはアルキルアンモニウム塩として溶解された形でも存在し、または使用されうる。
【0072】
同じく非常に特に好ましい無機色素は、金属化合物および/または水難溶性または不溶性の他の金属化合物、具体的には、チタンの酸化物(TiO)、亜鉛の酸化物(ZnO)、鉄の酸化物(例えば、Fe)、ジルコニウムの酸化物(ZrO)、珪素の酸化物(SiO)、マンガンの酸化物(例えば、MnO)、アルミニウムの酸化物(Al)、セリウムの酸化物(例えば、Ce)、かかる酸化物からの対応する金属および混合物の混合酸化物およびバリウムの硫酸塩(BaSO)である。
【0073】
色素は、本発明によれば、有利に表面処理されうるが、例えば、親水性、両媒性、または疎水性の性質が形成され、もしくは保持されるべきでる。この表面処理は、それ自体周知の方法に従って薄い親水性および/または疎水性の無機層および/または有機層が色素に付与されることで行なわれうる。さまざまな表面コーティングは本発明において水も含有しうる。
【0074】
本発明による無機表面コーティングは、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アル
ミニウムAl(OH)、もしくは水酸化アルミニウム(別称:アルミナ、CAS番号1333−84−2)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(NaPO、メタリン酸ナトリウム(NaPO、二酸化ケイ素(SiO)(別称:シリカ、CAS番号7631−86−9)、または酸化鉄(Fe)からなりうる。これらの無機表面コーティングは、単独で、組合せて、および/または有機コーティング材料と組合せて存在しうる。
【0075】
本発明による有機表面コーティングは、植物性または動物性のステアリン酸アルミニウム、植物性または動物性のステアリン酸、ラウリン酸、ジメチルポリシロキサン(別称:ジメチコン)、メチルポリシロキサン(メチコン)、ジメチコン(平均鎖長200〜350のジメチルシロキサン単位およびシリカゲルとのジメチルポリシロキサンの混合物)またはアルギン酸からなりうる。これらの有機表面コーティングは、単独で、組合せて、および/または無機コーティング材料と組合せて存在しうる。イシレート、ホモサレート(=3,3,5−トリメチルシクロヘキシル−2−ヒドロキシ安息香酸塩),
【0076】
化粧用および皮膚科用調製物は、本発明によれば、化粧用助剤を含有しうるが、それらは通常、かかる調製物において使用されるものであり、例えば、保存剤、殺菌剤、香水、発泡を阻止するための物質、色素、着色効果を有する顔料、凝縮剤、湿潤および/または保湿物質、脂肪、油、ワックス、または化粧用もしくは皮膚科用製剤の通常の他の成分であるアルコール、ポリオール、ポリマー、発泡安定剤、電解質、有機溶剤、またはシリコーン誘導体などである。
【0077】
I.ヒトチロシナーゼの阻害剤
表1に示されたK値は、ユーカリ発現系において予め組換えられたヒトチロシナーゼが得られる新種のチロシナーゼアッセイに基づく(付録1を参照)。その原理が発表されているこのアッセイにおいて、チロシナーゼのL−DOPA−オキシダーゼ活性が使用され、L−DOPAがドーパキノンに変換される。形成されたドーパキノンは、MBTH(ベストロン(Besthorn)のヒドラゾン)で変換される。ピンク色の反応生成物は光度計で測定されうる。作用物質の開発用のこのアッセイの利点は、とりわけ、これにより作用物質の候補の阻害特性が初めてヒトチロシナーゼで検査されうる点にあるが、これによって、それがこれまで唯一利用可能のマッシュルームチロシナーゼと構造的に明らかに異なることが証明される。
【0078】
表1に示されたK値は、例えば、本発明による物質ではR2=2/1で示されている。
【0079】
【表4】

表1は、特に効果があると証明された(+++)一部の化合物を示す。表1に挙げられた構造において、さらに、構造の効果に決定的な影響を有する立体化学も考慮されている。
【0080】
II.チロシナーゼアッセイ
A)ヒトチロシナーゼのクローニングおよび発現
チロシナーゼの発現のために、70%の融合付着性Sf9細胞を10−15のMOI(感染の多重度、細胞当りの感染粒子の数)で使用した。高いドーパオキシダーゼ活性が感染後3日で確認可能であった。この時点で細胞の回収も行なわれた。細胞分離し、PBS(4℃)で2回洗浄し、かつペレットをその後の使用まで−80℃で保存した。細胞抽出物の調製のために、ペレットを氷上に浮かせ、溶解バッファー(50mM HEPES、200mM NaCl、1%トリトンX−100またはチャップス(Chaps))中に再懸濁し、かつ超音波によって溶解した。溶解物を残屑の除去のために15分、15,000×gで遠心分離し、PBS(20mM KP、150mM NaCl、pH7.3−7.4、0.5%、トリトンX−100)に対して透析し、またはセファデックス(Sepadex)25を介して緩衝した。透析溶解物は2週間まで4℃で保存され、活性測定のために使用されうる。酵素の観察された安定性に基づき、プロテアーゼ阻害剤の添加は行われなかった。組換え酵素はグリコシル化され、文献に記載された動態特性およびコウジ酸やミモシンなど代表的なチロシナーゼ阻害剤による抑制性を示した。
【0081】
ヒトチロシナーゼの発現は、10−15のMOI(感染の多重度、細胞当りの感染粒子の数)で組換えウィルスで昆虫細胞(Sf9)の感染によって行なわれた。
【0082】
発現のために、付着性に成長するSf9細胞およびSf9懸濁培養も使用されうる。この感染は、70%の融合で付着性に成長する細胞および2×10細胞/mlの細胞密度で懸濁培養で成長する細胞で行なわれた。
【0083】
高いドーパオキシダーゼ活性が感染後3日に確認可能であり、この時点で細胞の回収も行なわれた。細胞分離し、もしくは遠心分離によって回収し、PBSで2回洗浄し、かつペレットをその後に使用するまで−80℃で保存した。
【0084】
細胞抽出物の調製のために細胞を25mM トリスpH8.0に取り、かつ27ゲージのカニューレを通じて3回押圧することによって溶解した。細胞断片を15分の遠心分離によって18,000rpm(ベックマン(Beckman)、Ja−20ローター)で分離し、かつ溶解性タンパク質を含有する上清を廃棄した。
【0085】
膜残留タンパク質の抽出のために2%チャップス(Chaps)PBS中にペレットを取り、ポッター(Potter)均質化装置(Homogenisator)によって懸濁し、攪拌しながら1時間インキュベートした。次いで、細胞残屑は新たに15分の遠心分離によってJa−20ローターの18,000rpmで分離した。上清は緩衝(アマシャム(Amersham)、G−25)後に0.1%チャップス(CHAPS)PBSで直接、活性測定のために使用されるか、またはイオン交換クロマトグラフィーによって前洗浄にかけることができた。さらに、抽出物を25mM トリスpH8.0、0.1%チャップス(CHAPS)で緩衝し、同じ緩衝液で平衡化したQ−セファロース(Sepharose)(アマシャム(Amersham)に結合し、25mM トリスpH8.0、300mM NaCl、0.1%チャップス(CHAPS)で溶出した。溶出物は0.1%チャップス(CHAPS)PBSでの緩衝(G−25)後に活性測定のために使用することができた。陰イオン交換クロマトグラフィーのステップは、タンパク質抽出物におけるチロシナーゼの濃縮に役立つ。
【0086】
B)チロシナーゼアッセイ
使用されたドーパオキシダーゼアッセイは、実質的にビンダー(Winder)とハリス(Harris)によって記載されたプロトコル[ビンダー(Winder)AJ、ハリス(Harris)H(1991年)「チロシンヒドロキシラーゼおよびチロシナーゼのドーパオキシダーゼ活性の新しいアッセイ(New assays for the tyrosine hydroxylase and dopa oxidase activities of tyrosinase)」Eur J Biochem 198(2)、317−26頁]に基づく。反応は、50mMカリウム−リン酸緩衝液pH7.0、[ビンダー(Winder)とハリス(Harris)ではpH6.9]12% DMSO[2%DMF]、6mM MBTH(ベストロン(Besthorn)のヒドラゾン)および基質L−ドーパ(0−7.5mM)のさまざまな濃度で37℃下、96穴プレートにおいて行なわれた。各々の反応添加物の容量は250μlであり、感染した昆虫細胞からのチロシナーゼ抽出物10−30μlの各々の調製物の活性に応じて使用された。チロシナーゼはオキシダーゼをL−ドーパからL−ドーパキノンへ触媒するが、これは使用されたMBTHとのさらなる反応において、安定したピンクの色素に対して反応し、これは光度計により505nmの波長(マイクロプレート光度計:490nmフィルター)で測定されうる。反応添加物における12%DMSOの標準的な使用により、高い塩濃度でも使用されたMBTHの溶解性は保証され、かつアッセイで試験された多くの阻害剤の溶解性が明らかに改善される。唯一の基質としてL−ドーパの存在下のマッシュルームチロシナーゼの時間依存不活性化、およびDMSOによるドーパオキシダーゼ活性の不活性化[チェン(Chen)QX、リウ(Liu)XD、ファン(Huang) M(2003年)「ジメチルスルホキシド溶液におけるマッシュルームチロシナーゼの不活性化速度(Inactivation kinetics of mushroom tyrosinase in the dimethyl sulfoxid Solution)」]は文献に記載されている。実施されたアッセイにおいて、高いDMSO濃度(20%以下)でもチロシナーゼの活性の低下は確認できなかった。組換えヒトチロシナーゼの時間依存不活性化はアッセイでは確認できなかったが、反応経過は15分よりも長く線形であるのに対して、マッシュルームチロシナーゼ(シグマ(Sigma))は時間依存的に明らかな活性の喪失を示し、反応経過は5分未満の測定時間でのみ線形に経過した。
【実施例】
【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
【表10】

【0093】
【表11】

【0094】
【表12】

【0095】
【表13】

【0096】
【表14】

【0097】
【表15】

【0098】
【表16】

【0099】
【表17】

【0100】
【表18】

【0101】
【表19】

【0102】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

−NH−CH((CH−NH)−C=O−NH−CH(CH)−C=O−R
[式中、nは、1、2、3の値をとることができ、
は、H、ベンジルオキシカルボニル−、tert−ブチルオキシカルボニル−、アセチル、3〜24個の炭素原子を有する直鎖脂肪族アシル基、ビニルオキシカルボプニル−(Voc)、アリルオキシカルボニル−(Alloc)、1イソプロピルアリルオキシカルボニル−(Ipaoc)、−C=O−シクロヘキシル、シンナミルオキシカルボニル−(Coc)、N−(4,4−ジメチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−4−ペンテニル)、N−(4,6−ジメチル−1−オキソ−2,4−ドデカジエニル)、N−(1−オキソ−9,12,15−オクタデカトリエニル)、N−(4−メチル−1−オキソペンチル)、N−(1−オキソ−10−ウンデセニル)、N−(2−メチル−1−オキソプロピル)、9−フルオレニルメトキシカルボニル−(Fmoc)、(ホモ−ベンジルオキシカルボニル)−(ホモ−Z)、P−メトキシベンジルオキシカルボニル−(Moz)、9−アントリルメチル、N−フェニルエチルおよびトリフェニルメチル−(Trt)から選択される基を表し、
は、p−ヒドロキシフェニル−、4−ヒドロキシヘプタ−1,3,6−トリエン−5−オン−1−イル−、2,4−ジヒドロキシフェニル−、4[(ヒドロキシアミノ)カルボニル]フェニル−、(5−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2イル)−、(3−ヒドロキシ−4−オキソピリジン−1−(4H)−イル)−、(2−チオキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル)−、4−[(アミノカルボノチオイル)アミノ]フェニル)−、(2,2’ビピリジン4−イル)−、(5−ブチル−2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−、2,4−ジヒドロキシ−5−(1−フェニルエチル)フェニル−、(4−ヒドロキシ−5−チオキソシクロヘプタ−1,3,6−トリエン−1−イル)−から選択される基を表し、
は、−OH、NHから選択される基である]の化合物。
【請求項2】
nが1または2であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、H、tert−ブチルオキシカルボニル−またはベンジルオキシカルボニル−であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
が、Hまたはベンジルオキシカルボニルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、C末端が1,3−ジアミノプロパン酸、2,4−ジアミノ酪酸、またはオルニチンとペプチド結合されているチロシンもしくはそのトロポロン−または2,4−ジヒドロキシ類似体−類似体からなるオリゴペプチドであり、前記C末端がカルボキシル官能またはアミド官能、好ましくは、アミド官能を表すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物がジペプチドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
0.0001〜15重量%、好ましくは、0.01〜1重量%の使用濃度でヒトチロシナーゼの阻害および皮膚色素沈着の低減のための請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の非治療的な使用。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を含有する化粧用調製物。
【請求項9】
さらにジヒドロキシアセトン、メラニン誘導体、クルミ抽出物、またはエリトルロースが、前記調製物の総重量を基準にして、好ましくは、0.1重量%〜8重量%、特に好ましくは、0.4−2重量%の濃度で含有されていることを特徴とする請求項8に記載の調製物。

【公表番号】特表2009−529513(P2009−529513A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557762(P2008−557762)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052206
【国際公開番号】WO2007/101882
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(591010376)バイヤースドルフ・アクチエンゲゼルシヤフト (20)
【氏名又は名称原語表記】BEIERSDORF AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】