荷電粒子線装置および試料作製装置
【課題】 大口径ウェハ用の探針移動機構ならびにサイドエントリ型試料ステージを試料作製装置、不良検査装置に適用することで、小型で従来と同等の操作性を有する試料作製装置、評価装置を提供する。
【解決手段】 探針ならびにサイドエントリ型試料ステージを、上記イオンビーム照射光学軸とウェハ面の交点を通る傾斜角を持って真空容器を大気開放することなく真空容器に出し入れ可能とする真空導入手段を配した探針移動機構およびサイドエントリ型試料ステージ微動機構用い、さらにサイドエントリ型試料ステージの試料ホルダの試料片設置部分をウェハ面と平行とする回転自由度を有したサイドエントリ型試料ステージを用いる。
【効果】
真空容器の容積が必要最小限の設置面積の小さい小型で使い勝手の優れた、大口径ウェハ用の試料作製装置、評価装置が実現できる。
【解決手段】 探針ならびにサイドエントリ型試料ステージを、上記イオンビーム照射光学軸とウェハ面の交点を通る傾斜角を持って真空容器を大気開放することなく真空容器に出し入れ可能とする真空導入手段を配した探針移動機構およびサイドエントリ型試料ステージ微動機構用い、さらにサイドエントリ型試料ステージの試料ホルダの試料片設置部分をウェハ面と平行とする回転自由度を有したサイドエントリ型試料ステージを用いる。
【効果】
真空容器の容積が必要最小限の設置面積の小さい小型で使い勝手の優れた、大口径ウェハ用の試料作製装置、評価装置が実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線と移送手段を利用して、試料基板から分析や観察に必要な部分のみを摘出して、分析や観察に好適な形状に加工する試料作製装置、および荷電粒子線下で試料の電気試験を行う荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化に伴い、電子素子の分析や観察、評価の手段として、観察分解能が高い透過型電子顕微鏡(以下ではTEMとする)が有力視されている。TEM用の試料作製方法として、例えば特開平5−52721号公報に開示されている集束イオンビーム加工を利用する手段が考案されている。
【0003】
この手段は、集束イオンビーム(以下ではFIBとする)観察下で試料片を貼り付けたサイドエントリ型試料ステージを試料ステージ微動手段に装填し、真空容器内に導入する。なお、サイドエントリ型試料ステージは、真空容器内を大気に暴露することなく、真空容器外からの出し入れが可能である。この後、試料片の所望の観察部位を含む領域を、数μmから十数μmの所望の大きさにFIBで加工した後、探針移動機構を駆動して探針を該当する試料片に接触させて摘出し、一旦保持後、サイドエントリ型試料ステージを引き抜き、TEMホルダを搭載した別のサイドエントリ型試料ステージを導入する。サイドエントリ型試料ステージの交換後、探針移動機構の探針に保持されている試料片を、デポジション膜を形成することでTEMホルダに固着する。固着後、真空容器から引き抜き、TEM装置に装填することでTEM観察を行う手段である。
【0004】
またサブミクロンの配線を有する電子素子の評価手段として、例えば特開平9−326425号公報に開示されている、荷電粒子線観察下で高精度の探針移動機構を用い、直接探針を電子素子に接触させて動作試験を行う検査手段が考案されている。この探針に電圧印加手段、電流測定手段を設けることによって、微細な電子素子の電流電圧特性の評価、導通不良個所の特定が可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した微細な電子素子の評価手段として有効な試料作製装置、不良検査装置を、近年その導入が加速されている大口径の半導体ウェハを扱う装置に適用しようとした場合、以下の解決すべき問題を生じる。
【0006】
図13は、一例として従来の探針移動機構を大口径ウェハ用の試料作製装置に用いた場合の装置の断面図である。従来の探針移動機構1は、ウェハ17に対して水平方向から進入する構成となっている。一方、大口径ウェハ17を積載し、ウェハ17の直径以上の可動範囲を要するウェハステージ34と、それを収納する真空容器6は、大型化が避けられない。一概ではないが、12インチウェハ17用の真空容器6には、800mm角以上の面積を有する大きさを要することが予想できる。
【0007】
ところで、図13の従来例のように探針3をウェハ17に対して水平に進入させる移動機構1とした場合、探針3の移動量を吸収する探針移動機構1に不可欠なベローズ(図示せず)等の機械部品がウェハ17面より低い位置にくることが避けられず、このためこれら機械部品類はステージ34との干渉しない位置すなわちステージ34の可動範囲外になるように置かざるを得ない。このため真空容器6はさらに大型化が余儀なくされる。しかし、真空容器6の大型化は装置の占有面積の増大および大重量化、高価格化、また真空容器6の排気手段の大型化を招くことから、極力小型化しなければならない。
【0008】
また、上述のような配置とした場合、探針3を荷電粒子線の光学系における光学軸の中心近傍まで延長させる必要があるが、探針3および探針3を保持している探針ホルダ10が図13に示すように長大となることから、探針ホルダ10の剛性の著しい劣化は避けられず、数μmの試料片32の取扱いや、サブミクロンの配線を有する電子素子の所望の位置に短針を接触させる操作が極めて困難なものとなる。
【0009】
同様の問題は試料作製装置に不可欠な試料ホルダ(図示せず)、特にTEMホルダを搭載するサイドエントリ型試料ステージ(図示せず)にも発生する。また探針ホルダ10と同様にサイドエントリ型試料ステージを荷電粒子線の光学系26の光学軸中心近傍まで延長した場合、サイドエントリ型試料ステージをそのままTEM装置64に装填できないことになる。このため、操作者がピンセット等を用いて、数μmの試料片(図示せず)が固着されているTEMホルダをTEM用のサイドエントリ型試料ステージ42に移し変える操作を要することになり、使用・操作上の制限が課せられ、実用的ではない。
【0010】
この対策として、サイドエントリ型試料ステージ42そのものを真空容器6内に搬送する手段も考えられるが、専用の長大な搬送装置が必要となるため、さらに装置の大型化を招くことになる他、基本的に触手にて取り扱うサイドエントリ型試料ステージ42を真空容器6内に導入する事は、真空容器6内の圧力の増加、汚染等の問題を招くことになる。
【0011】
本発明の目的は、大口径ウェハ用の探針移動機構ならびにサイドエントリ型試料ステージを提供し、これらを試料作製装置あるいは不良検査装置に適用することで、真空容器の容積が必要最小限ですみ、占有面積が小さく、かつ従来より高いの操作性を有する試料作製装置、不良検査装置、荷電粒子線装置を提供することにある。
【0012】
さらに本発明の目的は、試料からイオンビームにより加工して取り出した数μmの試料片の取扱い操作およびサブミクロンの配線を有する電子素子上の所望の位置に位置付けたり、試料片を所定の位置に移動し荷電粒子線の照射光学系の方向に回動させたり、探針の操作を容易化した試料作製装置、不良検査装置、荷電粒子線装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は試料からイオンビームにより加工して取り出した数μmの試料片が固着されているTEM用ホルダを試料作製装置の真空容器内に導入する際に真空容器内の圧力増加や汚染が生じにくい試料作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記本発明の目的は、以下の構成によって達成される。
(1)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、荷電粒子ビーム照射光学系と、荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、試料にその先端を接触可能な針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダとを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える荷電粒子線装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダの概略中心軸が試料ステージの試料設置面と傾斜角を持って交わることを特徴とする荷電粒子線装置とする。
(2)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、荷電粒子ビーム照射光学系と、荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、試料にその先端を接触可能な針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダとを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える荷電粒子線装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダを真空容器に支持する部材から荷電粒子ビーム照射光学系の概略中心軸までの最短距離が、上記試料ステージの水平方向最大可動範囲の1/2以下であることことを特徴とする荷電粒子線装置。
【0015】
これにより、真空容器の容積が必要最小限の、占有面積の小さい小型で、装置レイアウトの自由度が広い荷電粒子線装置を提供できる。
(3)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、イオンビーム照射光学系と、イオンビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、上記試料の一部を分離した摘出試料片を保持する針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダと、上記摘出試料片を設置可能な試料ホルダを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える試料作製装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダの概略中心軸が試料ステージの試料設置面と傾斜角を持って交わることを特徴とする試料作製装置とする。
【0016】
数μmの試料片の取り扱い操作の容易化を実現する試料作製装置を提供できる。
(4)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、イオンビーム照射光学系と、イオンビビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、上記試料の一部を分離した摘出試料片を保持する針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダと、上記摘出試料片を設置可能な試料ホルダを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える試料作製装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダを真空容器に支持する部材から荷電粒子ビーム照射光学系の概略中心軸までの最短距離が、上記試料ステージの水平方向最大可動範囲の1/2以下であることことを特徴とする試料作製装置とする。
【0017】
(5)(3)または(4)記載の試料作製装置において、上記試料ホルダを載置するサイドエントリ型試料ステージを備え、その概略中心軸が試料ステージの試料設置面と傾斜角を持って交わるように構成し、かつ上記サイドエントリ型試料ステージは、上記真空容器を真空状態に保持して上記真空容器外からの出し入れが可能な真空導入手段と、上記サイドエントリ型試料ステージの微動手段を有した構成とした試料作製装置とする。
【0018】
(6)(5)記載のサイドエントリ型試料ステージは、上記試料ホルダの上記試料片設置部が、上記探針ホルダの概略中心軸を上記試料ステージ試料設置面に投影した線分と平行線を回転軸として回転する回転自由度を有することを特徴とする。
【0019】
(7)(3)または(4)記載の移送手段は、上記探針ホルダの概略中心軸を上記試料ステージ試料設置面に投影した線分と平行線を回転中心軸として、上記針状部材が回転する回転自由度を有した移送手段である試料作製装置とする。
(8)(5)記載のサイドエントリ型試料ステージにおいて、上記試料ホルダが上記真空導入手段の概略中心軸廻りに回転移動可能なサイドエントリ型試料ステージである試料作製装置とする。
(9)(3)または(4)記載の移送手段は、上記針状部材は探針と探針保持具で構成され、上記探針の先端を保護する保護カバーを有し、上記保護カバーが上記探針を収納する構成とすることを特徴とする試料作製装置とする。
(10)(5)記載のサイドエントリ型試料ステージが、集束荷電粒子ビーム装置、投射荷電粒子ビーム装置、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、オージェ電子分光分析装置、電子プローブX線微小分析装置、電子エネルギ欠損分析装置、二次イオン質量分析装置、中性粒子イオン化質量分析装置、X線光電子分光分析装置、またはプローブを用いた電気計測装置のうちの少なくとも一つ以上に装填できることを特徴とする試料作製装置とする。
(11)(1)または(2)記載の荷電粒子線装置において、上記針状部材は上記針状部材を上記試料に接触させて上記試料の一部に電圧を供給する電圧印加手段に連結していることを特徴とする荷電粒子線装置とする。
(12)(1)または(2)記載の荷電粒子線装置において、上記針状部材を試料に接触させ、上記試料の電気的特性を測定することを特徴とする荷電粒子線装置とする。
(13)(1)または(2)記載の荷電粒子線装置において、二次粒子検出器で得られた二次粒子像を表示する画像表示器と、上記針状部材に電圧を供給する電源とを有し、上記針状部材を上記試料に接触させて上記試料の一部に電圧を供給し、上記試料の二次粒子像を上記画像表示器に表示することを特徴とする荷電粒子線装置とする。
【0020】
以上の構成によって、真空容器の容積が必要最小限の、占有面積の小さい小型で、かつ従来より高い操作性を有する荷電粒子線装置、試料作製装置、荷電粒子線加工装置、不良解析装置を提供できる。さらに、サブミクロンの配線を有する電子素子の所望の位置への、探針の接触操作の容易化を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
探針および試料ホルダを搭載するサイドエントリ型試料ステージを、ウェハに対して斜めに入射させることによって、真空容器の容積が必要最小限の設置面積の小さい小型で従来と同等の操作性を有する、大口径ウェハ用の試料作製装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第1の実施例を示す試料作製装置の縦断面図であり、図2は第1の実施例に使用する探針移動機構1のみを抜粋した縦断面図、図3はその平面図である。なお、以下本明細書に示す符号において、同一の符号を用いた部材は同等の機能を有する部材である。
【0023】
図2および図3を用いて本発明の探針移動機構1を説明する。探針移動機構1に設けているエアロック室2は探針3の移動量を吸収するベローズ4を介してベースフランジ5に結合している。ベースフランジ5は真空シール7を介在させて真空容器6に固定される。エアロック室2の端面には開閉可能なエアロックバルブ8が配されており、円筒状のエアロックバルブ開閉機構9を回転させることで開閉の操作が行われる。図2ではエアロックバルブ8が開放され、探針ホルダ10はその中心軸がウェハ17面に対して斜めになるように真空容器6内に導入されている状態を示している。エアロックバルブ8、エアロックバルブ開閉機構9を収納するエアロック室外筒11は同心円状の中空2重構造としてあり、中空部の一端はエアロック室2と通じ、他端は排気管12に通じている。上記のような構成とすることで、従来必要としていたエアロック室2用の小型ベローズは不要となり、探針移動機構1の簡易化、小型化、安価化が実現できる。
【0024】
ベローズ4の固定側フランジ13には、気密機能を有する電流導入端子14を配している。電流導入端子14の真空側は、探針3を保持する絶縁材に探針3とプローブホルダストッパ15の接触部に導通処理を施した探針保持具49に導線16で接続させることで、大気側から探針3への給電が可能である。
【0025】
エアロック室外筒11の一方は、図示のようにウェハ17面に平行にY軸直進案内18aを固定したY軸ステージ19aが固定されており、図3に示すようにY軸直進案内18aを介してY軸ベース20に結合している。Y軸の直進駆動はY軸ベース20に保持されているY軸リニアアクチュエータ21aを用いて行う。Y軸リニアアクチュエータ21aの出力軸はY軸てこ22aを介してY軸ステージ19aと結合している。Y軸ベース20はZ軸ステージ19bと結合している。
【0026】
Z軸ステージ19bは、図示のようにY軸直進案内18aと90°位相の異なるウェハ17面に鉛直に配したZ軸直進案内18bを介してX軸ステージ19cと結合している。Z軸ステージ19bの直進駆動はX軸ステージ19cに保持されているZ軸リニアアクチュエータ21bを用いて行う。Z軸リニアアクチュエータ21bの出力軸はZ軸てこ22bを介してZ軸ステージ19bと結合している。
【0027】
同様にX軸ステージ19cは図示のようにY軸直進案内18aと90°位相の異なるウェハ17面に平行に配したX軸直進案内18cを介してベースフランジ5と結合している。X軸ステージ19cの直進駆動はベースフランジ5に保持しているX軸リニアアクチュエータ21cを用いて行う。X軸リニアアクチュエータ21cの出力軸はX軸てこ22cを介してX軸ステージ19cと結合している。
【0028】
以上のようにX,Y,Z軸を各々のてこを介して各々のリニアアクチュエータと結合することで、リニアアクチュエータ部分の突出物をなくすることが可能であり、探針移動機構1の小型化が実現できる。本実施例の探針移動機構1のX軸方向の幅およびZ軸方向の高さは、使用しているリニアアクチュエータとほぼ同じ172mm、165mmである。
【0029】
本実施例による探針ホルダ10の真空容器6内への導入は以下の手順を採る。
探針ホルダ10をエアロックバルブ8の手前まで挿入する。この状態でエアロック室2は探針ホルダ10の外筒に配した真空シール7で気密が保たれる。挿入後排気管12からエアロック室外筒11の中空部分を通して、エアロック室2内を真空に排気する。エアロック室2の圧力が所定の圧力に到達したことを確認後、エアロックバルブ開閉機構9を用いてエアロックバルブ8を開放し、探針ホルダ10を真空容器6内に導入する。以上の操作で、真空容器6を大気にさらすことなく探針3を真空容器6内に導入することができる。
【0030】
探針ホルダ10の真空容器6からの引き抜きは、挿入と逆の手順を踏むことで可能である。すなわち探針ホルダ10をエアロックバルブ8の手前まで一旦引き抜き、この後エアロックバルブ8を、エアロックバルブ開閉機構9を用いて閉止する。閉止を確認後、排気管12からエアロック室2をリークする。大気圧確認後探針ホルダ10を探針移動機構1から取り出す。以上の構成を採ることによって、消耗品である探針3の交換作業を、真空容器6を大気にさらすことなく行うことができる。
【0031】
以上説明してきた探針移動機構1を用いた試料作製装置が図1である。探針ホルダ10を、探針ホルダ10の概略中心軸がウェハ17に対して斜めに進入する構成(本実施例では30度傾斜して入射させた)としたことで、探針ホルダ10を最小限の長さで荷電粒子線光学系の光学軸24近傍まで到達させることができたことから、剛性の高い探針ホルダ10が実現でき、数μmの試料片32の取扱いや、サブミクロンの配線を有する電子素子の所望の位置に探針先端を接触させるといった操作が極めて容易なものとなる。
【0032】
また、探針3の移動量を吸収するベローズ4などの機械部品が、ウェハ17面より低い位置にくることがないため、探針移動機構1は真空容器6の大きさに影響を与えることはなく、真空容器6はウェハ17の可動範囲で決定する最小の大きさとすることができる。装置の大きさを決定する真空容器6を最小とすることで、装置の占有面積の縮小、および軽量化、低価格化、また排気手段の小型化を可能とした探針移動機構を搭載した大口径用試料作製装置が実現できる。なお、本実施例では、探針ホルダ10の入射角度を30度としているが、30度に限定されるものではなく、探針3が画像表示器38で表示できる範囲にあるように真空容器6に斜めに挿入することで同様の効果が得られる。
【0033】
また、探針移動機構1と真空容器6を結合するベースフランジ5の中心と、光学軸24の垂線との交点までの距離を、試料ステージ34の水平方向の可動範囲の1/2以下、本実施例では150mm以下となる位置に探針移動機構1を配することで、任意の傾斜角度で探針ホルダ10を最小限の長さで真空容器6に導入することが可能となり、真空容器6の小型化を可能としながら、装置レイアウトの自由度を拡げることができる。さらに真空容器6に対して斜入射する探針移動機構1の各々のリニアアクチュエータと各々のステージをてこを介して結合した構成を採ることで、特出した突出物がない探針移動機構1とすることができるため真空容器6に配される他の測定機機などにレイアウト上の制限を与えず、また予期しない干渉等の問題を未然に防げ、装置の小型化が実現できる。
【0034】
本装置を用いた試料作製は以下の手順で行う。イオン源25から放出されたイオンビーム27は、光学系26を通ることでステージ34上の所望の位置に集束される。集束されたイオンビームすなわちFIB27は、ウェハ17表面を走査した形状にスパッタすることで、試料片(図示せず)の精密な加工が行える。ステージ34上には、ウェハ17と摘出した試料片を保持する試料ホルダ33aを載置しており、ステージ位置コントローラ35によってFIB加工および摘出する位置の特定を行う。
【0035】
探針移動機構1に装着された探針3は、ステージ34とは独立に駆動可能な探針位置コントローラ23によって、ウェハ17上の摘出位置まで移動させる。移動および加工の操作は、FIBコントローラ36によってウェハ17の摘出位置近傍にFIBを走査して、ウェハ17からの二次電子を二次電子検出器37によって検出し、得られた二次粒子像を画像表示器38に表示させ、観察しながら行う。
【0036】
試料片の摘出には、ウェハ17の姿勢を変化させながらFIB加工を行うことによって、試料片をクサビ状に切り出し、探針3を試料片の一端に接触させる接触部にはデポジションガス源39を用いて堆積ガスを供給し、イオンビームアシストデポジション膜を形成することで、探針3と試料片との接着を行う。この後、探針位置コントローラ23によって探針3をウェハ17から引き上げ、ステージ34上の試料ホルダ33bの位置に移動する。探針3を下降し、探針3に接着した試料片のクサビ部分が試料ホルダ33bの表面に接触したことを確認し、イオンビームアシストデポジションにて試料片の側面と試料ホルダ33aを接着する。探針3の先端はFIBによって試料片32から切断され、探針位置コントローラ23によって次の試料摘出位置への移動を行う。
【0037】
以上の工程によってウェハ17から所望とする箇所の試料片32を摘出し、試料ホルダ33bに移載することが可能である。また以上の動作は、中央演算処理装置40によって、一括して制御されている。なお、本実施例では、探針3と試料片32との接着手段としてイオンビームアシストデポジション膜による接着手段を採っているが、静電気による吸引力を用いた静電吸着手段でも何ら問題はなく、その際にも本実施例と同様の効果が得られる。
【0038】
図4は斜入射の試料ステージ微動手段41を用いた第2の実施例の試料作製装置の断面図を示している。図5は図4の探針3の周辺部分の拡大図であり、図6は図4に使用しているサイドエントリ型試料ステージ42を抜粋した縦断面図(a)および平面図(b)である。
【0039】
まず、サイドエントリ型試料ステージ42について、図6を用いて説明する。
試料片32を固着する試料設置部43は試料ホルダ33aに保持する。試料ホルダ33aの駆動軸44側の端面に突出部45を設ける。突出部45の形状は問わない。駆動軸44の真空側の端面に、自由端が駆動軸44の回転中心軸から偏芯した位置に、前述した突出部45の面と駆動軸44の中心軸と平行な姿勢で接触する回転軸46を配する。試料ホルダ33aの回転移動は、駆動軸44をつまみ47を回転することで回転軸46が偏芯回転し、回転軸46の自由端が接触した突出部45が回転軸46の偏芯量と回転量に応じて回転軸受73を回転中心として回転移動する。すなわち試料ホルダ33aが回転移動する。本実施例では30°回転できる。また試料ホルダ33a部分の外筒48の一部を切り欠いた構造としたことで、試料片32の試料設置部43への固着およびFIBによる試料片32の成形加工が容易に行える。またサイドエントリ型試料ステージ42を駆動する試料ステージ微動機構41および試料ステージ位置コントローラ78を、図2および図3に示した探針移動機構1と同1の機構系、制御系を用いることで、生産性が向上し、装置価格の低価格化が図られる他、メンテナンス性、操作性の向上を実現できる。
【0040】
本発明による試料作製装置を用いた試料作製は以下の手順を踏む。サイドエントリ型試料ステージ42は、真空容器6への導入および引き抜きの操作は、前述した探針移動機構1における探針ホルダ10の操作を、サイドエントリ型試料ステージ42に置き換えた操作とすることで行われる。
【0041】
ウェハ17から所望の位置の試料片32を摘出するまでは、第1の実施例と同様の工程を採る。試料片32の摘出後、サイドエントリ型試料ステージ42を真空容器6内に真空容器6の真空を大気に暴することなく挿入する。この際、第1の実施例と同様に、サイドエントリ型試料ステージ42を、サイドエントリ型試料ステージ42の概略中心軸がウェハ17に対して斜入射した構成としたことで、真空容器6の大きさを最小限とすることができ、またサイドエントリ型試料ステージ42も必要最小限の長さでイオンビーム27の光学軸24とウェハ17の交点近傍まで到達できる。本実施例では、サイドエントリ型試料ステージ42はウェハ17面に対して30度傾斜して入射させているが、30度に限定されるものではなく、試料ホルダ33aが画像表示器38で表示できる範囲にあるように真空容器6に斜めに挿入することで同様の効果が得られる。
【0042】
本構成とすることで、前述した第1の実施例の探針移動機構1と同様の理由から、試料ステージ微動機構41は真空容器6の大きさに影響を与えることはなく、真空容器6はウェハ17の可動範囲で決定する最小の大きさとすることができる。また、試料ステージ微動機構41と真空容器6を結合するベースフランジ5の中心と、光学軸24の垂線との交点までの距離を、試料ステージ34の水平方向の可動範囲の1/2以下、本実施例では150mm以下となる位置に試料ステージ微動機構41を配することで、任意の傾斜角度でサイドエントリ型試料ステージ42を最小限の長さで導入することが可能となり、真空容器6の小型化を可能としながら、装置レイアウトの自由度を拡げることができる。
【0043】
サイドエントリ型試料ステージ42の挿入後、つまみ47を回して試料ホルダ33aに保持した試料設置部43を、図5に示すようにウェハ17面と平行になる角度、すなわち本実施例では30°回転させる。その後、試料片32を保持している探針3を、図4に示す探針移動機構1および探針位置コントローラ23によって駆動し、微小試料片32を試料ホルダ33aにデポジション膜を形成することで固着する。固着後、試料ホルダ33aを再びサイドエントリ型試料ステージ42の軸線と平行な姿勢になるまで回転させた後、サイドエントリ型試料ステージ42を前述した手段で真空容器6から引き抜き、例えばTEM装置(図示せず)に装填することでTEM観察が行える。試料ホルダ33aの回転は、TEM観察の際の試料片32の微妙な回転調整にも使用することで、より確実な分析が行える。
【0044】
本実施例による構成を採ることで、真空容器6の大きさを第1の実施例と同等の大きさに抑えた、ウェハ17の任意の個所の試料片32を摘出可能な探針移動機構1と各種分析装置に装填可能なサイドエントリ型試料ステージ42を搭載したFIB装置が実現できる。本FIB装置を用いることで、真空容器6内で大口径ウェハ17の任意の個所の試料片32の試料ホルダ33aへの移載が可能となり、さらに試料ホルダ33aを載置しているサイドエントリ型試料ステージ42を、真空容器6を大気にさらすことなく取り出す事で、速やかに各種の分析装置に装填、評価が行えるようになる。また試料ステージ微動手段として探針移動機構1と同方式を採ることで、装置の生産性、メンテナンス性、操作性の向上が実現できる。
【0045】
図7は本発明の別の実施例の試料作製装置の断面図を示している。第2の実施例とは、図8に示す探針3に図1に記載した座標系で示すY軸廻りの回転自由度を付加した探針ホルダ10を搭載した探針移動機構1と、図9に示す試料ホルダ33aにサイドエントリ型試料ステージ42の中心軸廻りの回転自由度を付加した試料ステージ微動機構を用いている点が異なる。
【0046】
図8を用いて、探針ホルダ10の構成を説明する。同図(a)は探針3が突出した状態を示しており、(b)は探針3が外筒48に収納した状態を示している。探針3は板ばね52を介して探針保持具49に固定されており、探針保持具49は回転自在な回転軸受50を介して直進移動する内筒51に保持される。内筒51は回転方向の自由度を規制させて外筒48内に挿入してあり、駆動軸53とは回転自在な軸受54を介して駆動軸53に押圧させている。探針保持具49の端は圧縮コイルバネ59と接続しており、圧縮コイルバネ59のもう一方の端は駆動軸53と結合している。回転軸受50の回転中心は、探針ホルダ10の挿入傾斜角度分だけ探針ホルダ10の中心線に対して傾斜させている。これによって、探針3は真空容器6内でウェハ17面と平行に回転移動することが可能である。
【0047】
駆動軸53は回転および直進自在な軸受55および真空シール(図示せず)を介在させて外筒48内に挿入する。駆動軸53の端部は外筒48から突出する。
突出した駆動軸53には歯車56bを固定し、駆動軸53の端面には直進移動のアクチュエータである微小送り機構57を押圧させている。歯車56bと噛み合う別の歯車56aを、駆動軸53と平行に配し、歯車56aに回転移動用のつまみ47を固定する。図示していないがこれら歯車56a、56bは回転自在な部材を介して保持されていることは言うまでもない。以上が探針3の回転、および収納の2自由度を有する探針ホルダ10の基本的な構成である。
【0048】
次に動作を説明する。微小送り機構57を用いて駆動軸53を直進移動させる。駆動軸53の直進移動は外筒48に伝達されることで、探針ホルダ10に保持した探針3は回転することなく直進移動する。本構成とすることで、微細な探針ホルダ10の真空容器6への挿入または引き抜きなどの取り回しの際の、微細な探針3の損傷などの事故を未然に防ぐことができ、操作者は安易に使用できる。
【0049】
探針3の回転移動は、つまみ47を回し、歯車56a、56bを介して駆動軸53を回転運動させることでなされる。内筒51の回転自由度は規制されているので、駆動軸53の回転運動で内筒51が回転移動することはなく、圧縮コイルバネ59による弾性変形によって回転運動の方向が変化されるが、回転動力は探針保持具49に伝達され、内筒51と回転軸受50を介して保持している探針保持具49が回転移動する。以上述べてきたように単一の駆動軸53の直進および回転運動の簡易な操作によって探針3は直進移動および回転移動することができる。
【0050】
次に回転自由度付加したサイドエントリ型試料ステージ42微動機構について、図9の実施例を用いて説明する。X軸、Y軸、Z軸の各々の移動機構は図2および図3に示した探針移動機構1と同型であり、以下では変更点のみについて説明する。
【0051】
本実施例では、サイドエントリ型試料ステージ42の把持部60に歯車61aを配し、歯車61aと噛み合う歯車61bおよび歯車61bを回転駆動する駆動源62をY軸ステージ19a配した点が第2の実施例と異なる点である。本実施例の構成とすることによって、サイドエントリ型試料ステージ42は、試料ホルダ33a部分を、サイドエントリ型試料ステージ42ごと回転移動させることで、任意の角度に傾斜させることが可能である。また回転動力の伝達媒体として歯車61a、61bを用いることによって、サイドエントリ型試料ステージ42の抜き差しになんら支障をきたすことなく、ねじ等の機械部品を用いずに、サイドエントリ型試料ステージ42に結合している歯車61aと駆動源62と結合している歯車61bを結合することが可能である。
【0052】
図10は図7の試料作製装置で試料片32を加工する操作を工程に分けて示したものである。本図を用いて本実施の試料作製装置による試料作製手段を説明する。ウェハ17から試料片32を摘出する(a)までは第1の実施例と同じ工程を採る。
【0053】
ウェハ17の極表面の分析を行う場合は、第2の実施例で説明したように探針3を回転させずに、そのままウェハ17面と平行に回転移動させた試料設置部43に移載する。ウェハ17の深さ方向の分析を行う場合は、ウェハ17から試料片32を摘出後、探針3を90度回転させ、必要に応じてX軸、Y軸、Z軸を駆動し、ウェハ17の面と平行に回転移動させた試料設置部43に、イオンビームアシストデポジション膜にて接着する(図10(b))。試料片32を試料設置部43に移載後、探針3を、微小送り機構57を用いて外筒48内に収納するように直進移動させる。次につまみ47を回転し、試料設置部43を保持する試料ホルダ33aの傾斜を戻す(図10(c))。この後駆動源62を駆動させ試料設置部43がFIB27と対向するように試料ホルダ33aを回転移動させ、FIB27による試料片32の成形加工を行う(図10(d))。
【0054】
この際、加工の過程で試料ホルダ33aを回転、傾斜させて、図10(b)の姿勢にすることで、試料面からの二次粒子像を表示する画像表示器38を通して随時観察面の状態を観察することが可能である。成形加工後、サイドエントリ型試料ステージ42を真空容器6から引き抜き、例えばTEM等の分析装置にそのまま装填して分析することが可能である。
【0055】
本実施例による試料作製装置によれば、ウェハ17の極表面層および深さ方向の分析を可能とし、さらに各種分析装置に装填可能なサイドエントリ型試料ステージ42と同形状であることから試料の分析を多岐に渡って実施することが可能であり、試料作製装置としての運用範囲を格段に拡大することができる。
【0056】
以上の実施例では、説明上TEM試料の作製、観察を一例として説明してきたが、TEMに限定されるものではなく、集束イオンビーム、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、オージェ電子分光分析装置、電子プローブX線微小分析装置、電子エネルギ欠損分析装置、二次イオン質量分析装置、二次中性子イオン化質量分析装置、X線光電子分光分析装置、またはプローブを用いた電気計測装置のうちのいずれかに装填できる構成とすることで、試料面分析や観察が容易にできるようになることは当然である。
イオン源とイオン源からのイオンビームを集束するレンズとイオビームを偏向する偏向器と試料に照射するための対物レンズとから成るイオンビーム光学系を収納したイオビーム鏡筒を有する。更に、電子源と電子源からの電子ビームを集束するレンズと電子ビームを偏向する偏向器と試料に照射するための対物レンズとからなる電子ビーム光学系を収納した電子ビーム鏡筒を有する。このようなイオンビーム鏡筒と電子線鏡筒を有する荷電粒子線装置では、イオンビーム鏡筒と電子線鏡筒とが互いに試料ステージの試料載置面に対して相対的に傾斜させている。試料ステージに載置した試料から試料片をイオンビームで分離し探針の先端に取り付けられた針状部材にイオンビームとガスとで堆積接合して摘出する。取り出した試料片を電子線鏡筒の下に移動させ電子線が試料片の所定の部分に照射できるように試料片を保持している探針ホルダを回動させる。試料からの二次電子を検出器で検出して走査電子顕微鏡像を得ることも可能となる。
【0057】
また以上述べてきた試料作製装置において、説明上FIB27のみに特化して記載しているが、例えば偏向器30と対物レンズ31をマスク板と投射レンズに置き換えて構成される投射イオンビームを用いた試料作製装置、あるいは、イオン源25をレーザ光源に置き換えて構成されるレーザビームを用いた試料作製装置であっても、本発明と同様の効果が得られる。さらに以上述べてきた試料作製装置に、走査電子顕微鏡の光学系を付加した構成の試料作製装置としてもなんら問題はなく、その際は本発明の第3の実施例で示したY軸廻りの回転自由度を有する探針移動機構1を用いることによって、試料片32をウェハ17から摘出後、試料片32を探針3毎走査型電子顕微鏡の光学系に対向させることで、試料片32を高分解能に観察することができるようになる。
【0058】
図11は、本発明の探針移動機構1を、不良検査装置に適用した実施例を示す断面である。図において電子銃65から放出された電子ビーム66は電子ビーム光学系67を通過し、ステージ34上に積載したウェハ17面に集束される。ステージ34は、ステージ位置コントローラ35によって制御され、ウェハ17の評価する素子の位置を特定する。探針移動機構1は、本図では2式のみの記載であるが、紙面鉛直方向に互いに対向するようにさらに2式を配しており、不良検査装置として4式の探針移動機構1を備えている。
【0059】
上記4式の探針移動機構1に配されている探針3は、ステージ34とは独立に駆動可能な探針位置コントローラ23によって、ウェハ17上の評価素子の位置にそれぞれの探針3を移動させる。移動の際は、電子ビームコントローラ71によって、ウェハ17上の評価素子近傍に電子ビーム66を走査し、ウェハ17からの二次電子を二次電子検出器37により検出し、上記部分の画像を画像表示器38にひょうじさせ、確認しながら行う。
【0060】
本実施例では、探針3が接触したウェハ17の微小部分に電圧を印加できるように、各々の探針3には電源69が接続している。同時に各々の探針3に流れる電流を測定できるように、電流計70も接続している。評価方法の例として、ウェハ17上に形成されたMOSデバイスにおける場合を示す。まず三つの探針3を、それぞれソース電極、ゲート電極、ドレイン電極に接触させる。ここで探針3を用いてソース電極をアースに落とし、探針3によりゲート電極の電圧をパラメータとして振りながら、探針3によりドレイン電圧と、ソースードレイン間を流れるドレイン電流の関係を測定する。これによってMOSの出力特性を得ることができる。これらの動作は中央演算処理装置40によって一括して制御されている。
【0061】
各々の探針3の移動機構は、図2および図3に示した斜入射型の探針移動機構1を用いることによって、大口径のウェハ17の検査を小型の装置で実現でき、また探針3の交換などが容易に可能な構成であることから、装置の稼働率が向上できる。
【0062】
図12は、本発明の探針移動機構1を、試料観察装置に適用したときの断面図である。図において、イオン源25から放出されたイオンビーム27は、光学系26を通ることでステージ34上の所望の位置に集束される。集束されたイオンビームすなわちFIB27は、ウェハ17表面を走査した形状にスパッタすることで精密な加工が行える。ステージ34上には、ウェハ17や半導体チップ等を載置しており、ステージ位置コントローラ35によってウェハ17上の観察位置の特定を行う。探針移動機構1に装着された探針3は、ステージ34とは独立に駆動可能な探針位置コントローラ23によって、ウェハ17上の観察位置まで移動させる。移動および加工の際は、FIBコントローラ36によってウェハ17の観察位置近傍にFIBを走査して、ウェハ17からの二次電子を二次電子検出器37によって検出し、得られた二次粒子像を画像表示する画像表示器38で表示、観察しながら行う。接触したウェハ17の微小部分に電圧を印加できるよう、探針3には電源69が接続されている。観察を行う場合は、観察したい回路を他の回路から電気的に孤立させるように、FIBにて回路周囲に溝加工を施す。
回路の一端に電圧を印加した探針3を接触させ、その回路に設計上接続されているであろう個所の観察を行う。もし断線もなく接続されている場合、コントラストが変化する(明るくなる)ため、回路の不良判定を行える。これらの動作は中央演算処理装置40によって一括して制御される。本実施例において、探針3の移動機構は、図2および図3に示した斜入射型の探針移動機構1を用いることによって、大口径のウェハ17の検査を小型の装置で実現でき、また探針3の交換などが容易に可能な構成であることから、装置の稼働率が向上できる。
【0063】
また本実施例において、偏向器30と対物レンズ31をマスク板と投射レンズに置き換えて構成される投射イオンビームを用いた試料作製装置、あるいは、イオン源25をレーザ光源に置き換えて構成されるレーザビームを用いた試料観察装置であっても、本発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施例の試料作製装置を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施例の試料作製装置用探針移動機構を示す断面図。
【図3】本発明の第1の実施例の試料作製装置用探針移動機構を示す平面図。
【図4】本発明の第2の実施例の試料作製装置を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施例の試料作製装置の要部拡大図。
【図6】本発明の第2の実施例の試料ステージを示す断面図および平面図。
【図7】本発明の第3の実施例の試料作製装置を示す断面図。
【図8】本発明の第3の実施例の探針ホルダを示す断面図および平面図。
【図9】本発明の第3の実施例の試料ステージ微動機構を示す断面図。
【図10】本発明の第3の実施例の試料作製装置の部分拡大図。
【図11】本発明の第4の実施例の不良検査装置を示す断面図。
【図12】本発明の第5の実施例の試料観察装置を示す断面図。
【図13】従来の探針移動機構を備えた試料作製装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0065】
1…探針移動機構、2…エアロック室、3…探針、4…ベローズ、5…ベースフランジ、6…真空容器、7…真空シール、8…エアロックバルブ、9…エアロックバルブ開閉機構、10…探針ホルダ、11…エアロック室外筒、12…排気管、13…固定側フランジ、14…電流導入端子、15…プローブホルダストッパ、16…導線、17…ウェハ、18a…Y軸直進案内、18b…Z軸直進案内、18c…X軸直進案内、19a…Y軸ステージ、19b…Z軸ステージ、19c…X軸ステージ、20…Y軸ベース、21a…Y軸リニアアクチュエータ、21b…Z軸リニアアクチュエータ、21c…X軸リニアアクチュエータ、22a…Y軸てこ、22b…Z軸てこ、22c…X軸てこ、23…探針位置コントローラ、24…光学軸、25…イオン源、26…光学系、27…イオンビーム、28…ビーム制限アパーチャ、29…集束レンズ、30…偏向器、31…対物レンズ、32…試料片、33a…試料ホルダ、33b…試料ホルダ、34…ステージ、35…ステージ位置コントローラ、36…FIBコントローラ、37…二次電子検出器、38…画像表示機、39…デポジションガス源、40…中央演算処理装置、41…試料ステージ微動手段、42…サイドエントリ型試料ステージ、43…試料設置部、44…駆動軸、45…突出部、46…回転軸、47…つまみ、48…外筒、49…探針保持具、50…回転軸受、51…内筒、52…板ばね、53…駆動軸、54…軸受、55…軸受、56a…歯車a、56b…歯車b、57…微小送り機構、58…つまみ、59…圧縮コイルばね、60…把持部、61a…歯車a、61b…歯車b、62…駆動源、63…駆動部、64…TEM装置、65…電子銃、66…電子ビーム、67…電子ビーム光学系、68…アパーチャ、69…電源、70…電流計、71…電子ビームコントローラ、72…絶縁材、73…回転軸、74…回転軸受、75…集束レンズ、76…偏向器、77…対物レンズ、78…試料ステージ位置コントローラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線と移送手段を利用して、試料基板から分析や観察に必要な部分のみを摘出して、分析や観察に好適な形状に加工する試料作製装置、および荷電粒子線下で試料の電気試験を行う荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化に伴い、電子素子の分析や観察、評価の手段として、観察分解能が高い透過型電子顕微鏡(以下ではTEMとする)が有力視されている。TEM用の試料作製方法として、例えば特開平5−52721号公報に開示されている集束イオンビーム加工を利用する手段が考案されている。
【0003】
この手段は、集束イオンビーム(以下ではFIBとする)観察下で試料片を貼り付けたサイドエントリ型試料ステージを試料ステージ微動手段に装填し、真空容器内に導入する。なお、サイドエントリ型試料ステージは、真空容器内を大気に暴露することなく、真空容器外からの出し入れが可能である。この後、試料片の所望の観察部位を含む領域を、数μmから十数μmの所望の大きさにFIBで加工した後、探針移動機構を駆動して探針を該当する試料片に接触させて摘出し、一旦保持後、サイドエントリ型試料ステージを引き抜き、TEMホルダを搭載した別のサイドエントリ型試料ステージを導入する。サイドエントリ型試料ステージの交換後、探針移動機構の探針に保持されている試料片を、デポジション膜を形成することでTEMホルダに固着する。固着後、真空容器から引き抜き、TEM装置に装填することでTEM観察を行う手段である。
【0004】
またサブミクロンの配線を有する電子素子の評価手段として、例えば特開平9−326425号公報に開示されている、荷電粒子線観察下で高精度の探針移動機構を用い、直接探針を電子素子に接触させて動作試験を行う検査手段が考案されている。この探針に電圧印加手段、電流測定手段を設けることによって、微細な電子素子の電流電圧特性の評価、導通不良個所の特定が可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した微細な電子素子の評価手段として有効な試料作製装置、不良検査装置を、近年その導入が加速されている大口径の半導体ウェハを扱う装置に適用しようとした場合、以下の解決すべき問題を生じる。
【0006】
図13は、一例として従来の探針移動機構を大口径ウェハ用の試料作製装置に用いた場合の装置の断面図である。従来の探針移動機構1は、ウェハ17に対して水平方向から進入する構成となっている。一方、大口径ウェハ17を積載し、ウェハ17の直径以上の可動範囲を要するウェハステージ34と、それを収納する真空容器6は、大型化が避けられない。一概ではないが、12インチウェハ17用の真空容器6には、800mm角以上の面積を有する大きさを要することが予想できる。
【0007】
ところで、図13の従来例のように探針3をウェハ17に対して水平に進入させる移動機構1とした場合、探針3の移動量を吸収する探針移動機構1に不可欠なベローズ(図示せず)等の機械部品がウェハ17面より低い位置にくることが避けられず、このためこれら機械部品類はステージ34との干渉しない位置すなわちステージ34の可動範囲外になるように置かざるを得ない。このため真空容器6はさらに大型化が余儀なくされる。しかし、真空容器6の大型化は装置の占有面積の増大および大重量化、高価格化、また真空容器6の排気手段の大型化を招くことから、極力小型化しなければならない。
【0008】
また、上述のような配置とした場合、探針3を荷電粒子線の光学系における光学軸の中心近傍まで延長させる必要があるが、探針3および探針3を保持している探針ホルダ10が図13に示すように長大となることから、探針ホルダ10の剛性の著しい劣化は避けられず、数μmの試料片32の取扱いや、サブミクロンの配線を有する電子素子の所望の位置に短針を接触させる操作が極めて困難なものとなる。
【0009】
同様の問題は試料作製装置に不可欠な試料ホルダ(図示せず)、特にTEMホルダを搭載するサイドエントリ型試料ステージ(図示せず)にも発生する。また探針ホルダ10と同様にサイドエントリ型試料ステージを荷電粒子線の光学系26の光学軸中心近傍まで延長した場合、サイドエントリ型試料ステージをそのままTEM装置64に装填できないことになる。このため、操作者がピンセット等を用いて、数μmの試料片(図示せず)が固着されているTEMホルダをTEM用のサイドエントリ型試料ステージ42に移し変える操作を要することになり、使用・操作上の制限が課せられ、実用的ではない。
【0010】
この対策として、サイドエントリ型試料ステージ42そのものを真空容器6内に搬送する手段も考えられるが、専用の長大な搬送装置が必要となるため、さらに装置の大型化を招くことになる他、基本的に触手にて取り扱うサイドエントリ型試料ステージ42を真空容器6内に導入する事は、真空容器6内の圧力の増加、汚染等の問題を招くことになる。
【0011】
本発明の目的は、大口径ウェハ用の探針移動機構ならびにサイドエントリ型試料ステージを提供し、これらを試料作製装置あるいは不良検査装置に適用することで、真空容器の容積が必要最小限ですみ、占有面積が小さく、かつ従来より高いの操作性を有する試料作製装置、不良検査装置、荷電粒子線装置を提供することにある。
【0012】
さらに本発明の目的は、試料からイオンビームにより加工して取り出した数μmの試料片の取扱い操作およびサブミクロンの配線を有する電子素子上の所望の位置に位置付けたり、試料片を所定の位置に移動し荷電粒子線の照射光学系の方向に回動させたり、探針の操作を容易化した試料作製装置、不良検査装置、荷電粒子線装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は試料からイオンビームにより加工して取り出した数μmの試料片が固着されているTEM用ホルダを試料作製装置の真空容器内に導入する際に真空容器内の圧力増加や汚染が生じにくい試料作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記本発明の目的は、以下の構成によって達成される。
(1)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、荷電粒子ビーム照射光学系と、荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、試料にその先端を接触可能な針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダとを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える荷電粒子線装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダの概略中心軸が試料ステージの試料設置面と傾斜角を持って交わることを特徴とする荷電粒子線装置とする。
(2)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、荷電粒子ビーム照射光学系と、荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、試料にその先端を接触可能な針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダとを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える荷電粒子線装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダを真空容器に支持する部材から荷電粒子ビーム照射光学系の概略中心軸までの最短距離が、上記試料ステージの水平方向最大可動範囲の1/2以下であることことを特徴とする荷電粒子線装置。
【0015】
これにより、真空容器の容積が必要最小限の、占有面積の小さい小型で、装置レイアウトの自由度が広い荷電粒子線装置を提供できる。
(3)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、イオンビーム照射光学系と、イオンビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、上記試料の一部を分離した摘出試料片を保持する針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダと、上記摘出試料片を設置可能な試料ホルダを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える試料作製装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダの概略中心軸が試料ステージの試料設置面と傾斜角を持って交わることを特徴とする試料作製装置とする。
【0016】
数μmの試料片の取り扱い操作の容易化を実現する試料作製装置を提供できる。
(4)少なくとも、真空容器内に試料を載置する試料ステージと、イオンビーム照射光学系と、イオンビビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、上記試料の一部を分離した摘出試料片を保持する針状部材および上記針状部材を保持する探針ホルダと、上記摘出試料片を設置可能な試料ホルダを備え、さらに上記針状部材を真空容器内で移動させる移送手段を備える試料作製装置において、上記真空容器を真空状態に保持して真空装置外から探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段を有し、かつ上記探針ホルダを真空容器に支持する部材から荷電粒子ビーム照射光学系の概略中心軸までの最短距離が、上記試料ステージの水平方向最大可動範囲の1/2以下であることことを特徴とする試料作製装置とする。
【0017】
(5)(3)または(4)記載の試料作製装置において、上記試料ホルダを載置するサイドエントリ型試料ステージを備え、その概略中心軸が試料ステージの試料設置面と傾斜角を持って交わるように構成し、かつ上記サイドエントリ型試料ステージは、上記真空容器を真空状態に保持して上記真空容器外からの出し入れが可能な真空導入手段と、上記サイドエントリ型試料ステージの微動手段を有した構成とした試料作製装置とする。
【0018】
(6)(5)記載のサイドエントリ型試料ステージは、上記試料ホルダの上記試料片設置部が、上記探針ホルダの概略中心軸を上記試料ステージ試料設置面に投影した線分と平行線を回転軸として回転する回転自由度を有することを特徴とする。
【0019】
(7)(3)または(4)記載の移送手段は、上記探針ホルダの概略中心軸を上記試料ステージ試料設置面に投影した線分と平行線を回転中心軸として、上記針状部材が回転する回転自由度を有した移送手段である試料作製装置とする。
(8)(5)記載のサイドエントリ型試料ステージにおいて、上記試料ホルダが上記真空導入手段の概略中心軸廻りに回転移動可能なサイドエントリ型試料ステージである試料作製装置とする。
(9)(3)または(4)記載の移送手段は、上記針状部材は探針と探針保持具で構成され、上記探針の先端を保護する保護カバーを有し、上記保護カバーが上記探針を収納する構成とすることを特徴とする試料作製装置とする。
(10)(5)記載のサイドエントリ型試料ステージが、集束荷電粒子ビーム装置、投射荷電粒子ビーム装置、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、オージェ電子分光分析装置、電子プローブX線微小分析装置、電子エネルギ欠損分析装置、二次イオン質量分析装置、中性粒子イオン化質量分析装置、X線光電子分光分析装置、またはプローブを用いた電気計測装置のうちの少なくとも一つ以上に装填できることを特徴とする試料作製装置とする。
(11)(1)または(2)記載の荷電粒子線装置において、上記針状部材は上記針状部材を上記試料に接触させて上記試料の一部に電圧を供給する電圧印加手段に連結していることを特徴とする荷電粒子線装置とする。
(12)(1)または(2)記載の荷電粒子線装置において、上記針状部材を試料に接触させ、上記試料の電気的特性を測定することを特徴とする荷電粒子線装置とする。
(13)(1)または(2)記載の荷電粒子線装置において、二次粒子検出器で得られた二次粒子像を表示する画像表示器と、上記針状部材に電圧を供給する電源とを有し、上記針状部材を上記試料に接触させて上記試料の一部に電圧を供給し、上記試料の二次粒子像を上記画像表示器に表示することを特徴とする荷電粒子線装置とする。
【0020】
以上の構成によって、真空容器の容積が必要最小限の、占有面積の小さい小型で、かつ従来より高い操作性を有する荷電粒子線装置、試料作製装置、荷電粒子線加工装置、不良解析装置を提供できる。さらに、サブミクロンの配線を有する電子素子の所望の位置への、探針の接触操作の容易化を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
探針および試料ホルダを搭載するサイドエントリ型試料ステージを、ウェハに対して斜めに入射させることによって、真空容器の容積が必要最小限の設置面積の小さい小型で従来と同等の操作性を有する、大口径ウェハ用の試料作製装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第1の実施例を示す試料作製装置の縦断面図であり、図2は第1の実施例に使用する探針移動機構1のみを抜粋した縦断面図、図3はその平面図である。なお、以下本明細書に示す符号において、同一の符号を用いた部材は同等の機能を有する部材である。
【0023】
図2および図3を用いて本発明の探針移動機構1を説明する。探針移動機構1に設けているエアロック室2は探針3の移動量を吸収するベローズ4を介してベースフランジ5に結合している。ベースフランジ5は真空シール7を介在させて真空容器6に固定される。エアロック室2の端面には開閉可能なエアロックバルブ8が配されており、円筒状のエアロックバルブ開閉機構9を回転させることで開閉の操作が行われる。図2ではエアロックバルブ8が開放され、探針ホルダ10はその中心軸がウェハ17面に対して斜めになるように真空容器6内に導入されている状態を示している。エアロックバルブ8、エアロックバルブ開閉機構9を収納するエアロック室外筒11は同心円状の中空2重構造としてあり、中空部の一端はエアロック室2と通じ、他端は排気管12に通じている。上記のような構成とすることで、従来必要としていたエアロック室2用の小型ベローズは不要となり、探針移動機構1の簡易化、小型化、安価化が実現できる。
【0024】
ベローズ4の固定側フランジ13には、気密機能を有する電流導入端子14を配している。電流導入端子14の真空側は、探針3を保持する絶縁材に探針3とプローブホルダストッパ15の接触部に導通処理を施した探針保持具49に導線16で接続させることで、大気側から探針3への給電が可能である。
【0025】
エアロック室外筒11の一方は、図示のようにウェハ17面に平行にY軸直進案内18aを固定したY軸ステージ19aが固定されており、図3に示すようにY軸直進案内18aを介してY軸ベース20に結合している。Y軸の直進駆動はY軸ベース20に保持されているY軸リニアアクチュエータ21aを用いて行う。Y軸リニアアクチュエータ21aの出力軸はY軸てこ22aを介してY軸ステージ19aと結合している。Y軸ベース20はZ軸ステージ19bと結合している。
【0026】
Z軸ステージ19bは、図示のようにY軸直進案内18aと90°位相の異なるウェハ17面に鉛直に配したZ軸直進案内18bを介してX軸ステージ19cと結合している。Z軸ステージ19bの直進駆動はX軸ステージ19cに保持されているZ軸リニアアクチュエータ21bを用いて行う。Z軸リニアアクチュエータ21bの出力軸はZ軸てこ22bを介してZ軸ステージ19bと結合している。
【0027】
同様にX軸ステージ19cは図示のようにY軸直進案内18aと90°位相の異なるウェハ17面に平行に配したX軸直進案内18cを介してベースフランジ5と結合している。X軸ステージ19cの直進駆動はベースフランジ5に保持しているX軸リニアアクチュエータ21cを用いて行う。X軸リニアアクチュエータ21cの出力軸はX軸てこ22cを介してX軸ステージ19cと結合している。
【0028】
以上のようにX,Y,Z軸を各々のてこを介して各々のリニアアクチュエータと結合することで、リニアアクチュエータ部分の突出物をなくすることが可能であり、探針移動機構1の小型化が実現できる。本実施例の探針移動機構1のX軸方向の幅およびZ軸方向の高さは、使用しているリニアアクチュエータとほぼ同じ172mm、165mmである。
【0029】
本実施例による探針ホルダ10の真空容器6内への導入は以下の手順を採る。
探針ホルダ10をエアロックバルブ8の手前まで挿入する。この状態でエアロック室2は探針ホルダ10の外筒に配した真空シール7で気密が保たれる。挿入後排気管12からエアロック室外筒11の中空部分を通して、エアロック室2内を真空に排気する。エアロック室2の圧力が所定の圧力に到達したことを確認後、エアロックバルブ開閉機構9を用いてエアロックバルブ8を開放し、探針ホルダ10を真空容器6内に導入する。以上の操作で、真空容器6を大気にさらすことなく探針3を真空容器6内に導入することができる。
【0030】
探針ホルダ10の真空容器6からの引き抜きは、挿入と逆の手順を踏むことで可能である。すなわち探針ホルダ10をエアロックバルブ8の手前まで一旦引き抜き、この後エアロックバルブ8を、エアロックバルブ開閉機構9を用いて閉止する。閉止を確認後、排気管12からエアロック室2をリークする。大気圧確認後探針ホルダ10を探針移動機構1から取り出す。以上の構成を採ることによって、消耗品である探針3の交換作業を、真空容器6を大気にさらすことなく行うことができる。
【0031】
以上説明してきた探針移動機構1を用いた試料作製装置が図1である。探針ホルダ10を、探針ホルダ10の概略中心軸がウェハ17に対して斜めに進入する構成(本実施例では30度傾斜して入射させた)としたことで、探針ホルダ10を最小限の長さで荷電粒子線光学系の光学軸24近傍まで到達させることができたことから、剛性の高い探針ホルダ10が実現でき、数μmの試料片32の取扱いや、サブミクロンの配線を有する電子素子の所望の位置に探針先端を接触させるといった操作が極めて容易なものとなる。
【0032】
また、探針3の移動量を吸収するベローズ4などの機械部品が、ウェハ17面より低い位置にくることがないため、探針移動機構1は真空容器6の大きさに影響を与えることはなく、真空容器6はウェハ17の可動範囲で決定する最小の大きさとすることができる。装置の大きさを決定する真空容器6を最小とすることで、装置の占有面積の縮小、および軽量化、低価格化、また排気手段の小型化を可能とした探針移動機構を搭載した大口径用試料作製装置が実現できる。なお、本実施例では、探針ホルダ10の入射角度を30度としているが、30度に限定されるものではなく、探針3が画像表示器38で表示できる範囲にあるように真空容器6に斜めに挿入することで同様の効果が得られる。
【0033】
また、探針移動機構1と真空容器6を結合するベースフランジ5の中心と、光学軸24の垂線との交点までの距離を、試料ステージ34の水平方向の可動範囲の1/2以下、本実施例では150mm以下となる位置に探針移動機構1を配することで、任意の傾斜角度で探針ホルダ10を最小限の長さで真空容器6に導入することが可能となり、真空容器6の小型化を可能としながら、装置レイアウトの自由度を拡げることができる。さらに真空容器6に対して斜入射する探針移動機構1の各々のリニアアクチュエータと各々のステージをてこを介して結合した構成を採ることで、特出した突出物がない探針移動機構1とすることができるため真空容器6に配される他の測定機機などにレイアウト上の制限を与えず、また予期しない干渉等の問題を未然に防げ、装置の小型化が実現できる。
【0034】
本装置を用いた試料作製は以下の手順で行う。イオン源25から放出されたイオンビーム27は、光学系26を通ることでステージ34上の所望の位置に集束される。集束されたイオンビームすなわちFIB27は、ウェハ17表面を走査した形状にスパッタすることで、試料片(図示せず)の精密な加工が行える。ステージ34上には、ウェハ17と摘出した試料片を保持する試料ホルダ33aを載置しており、ステージ位置コントローラ35によってFIB加工および摘出する位置の特定を行う。
【0035】
探針移動機構1に装着された探針3は、ステージ34とは独立に駆動可能な探針位置コントローラ23によって、ウェハ17上の摘出位置まで移動させる。移動および加工の操作は、FIBコントローラ36によってウェハ17の摘出位置近傍にFIBを走査して、ウェハ17からの二次電子を二次電子検出器37によって検出し、得られた二次粒子像を画像表示器38に表示させ、観察しながら行う。
【0036】
試料片の摘出には、ウェハ17の姿勢を変化させながらFIB加工を行うことによって、試料片をクサビ状に切り出し、探針3を試料片の一端に接触させる接触部にはデポジションガス源39を用いて堆積ガスを供給し、イオンビームアシストデポジション膜を形成することで、探針3と試料片との接着を行う。この後、探針位置コントローラ23によって探針3をウェハ17から引き上げ、ステージ34上の試料ホルダ33bの位置に移動する。探針3を下降し、探針3に接着した試料片のクサビ部分が試料ホルダ33bの表面に接触したことを確認し、イオンビームアシストデポジションにて試料片の側面と試料ホルダ33aを接着する。探針3の先端はFIBによって試料片32から切断され、探針位置コントローラ23によって次の試料摘出位置への移動を行う。
【0037】
以上の工程によってウェハ17から所望とする箇所の試料片32を摘出し、試料ホルダ33bに移載することが可能である。また以上の動作は、中央演算処理装置40によって、一括して制御されている。なお、本実施例では、探針3と試料片32との接着手段としてイオンビームアシストデポジション膜による接着手段を採っているが、静電気による吸引力を用いた静電吸着手段でも何ら問題はなく、その際にも本実施例と同様の効果が得られる。
【0038】
図4は斜入射の試料ステージ微動手段41を用いた第2の実施例の試料作製装置の断面図を示している。図5は図4の探針3の周辺部分の拡大図であり、図6は図4に使用しているサイドエントリ型試料ステージ42を抜粋した縦断面図(a)および平面図(b)である。
【0039】
まず、サイドエントリ型試料ステージ42について、図6を用いて説明する。
試料片32を固着する試料設置部43は試料ホルダ33aに保持する。試料ホルダ33aの駆動軸44側の端面に突出部45を設ける。突出部45の形状は問わない。駆動軸44の真空側の端面に、自由端が駆動軸44の回転中心軸から偏芯した位置に、前述した突出部45の面と駆動軸44の中心軸と平行な姿勢で接触する回転軸46を配する。試料ホルダ33aの回転移動は、駆動軸44をつまみ47を回転することで回転軸46が偏芯回転し、回転軸46の自由端が接触した突出部45が回転軸46の偏芯量と回転量に応じて回転軸受73を回転中心として回転移動する。すなわち試料ホルダ33aが回転移動する。本実施例では30°回転できる。また試料ホルダ33a部分の外筒48の一部を切り欠いた構造としたことで、試料片32の試料設置部43への固着およびFIBによる試料片32の成形加工が容易に行える。またサイドエントリ型試料ステージ42を駆動する試料ステージ微動機構41および試料ステージ位置コントローラ78を、図2および図3に示した探針移動機構1と同1の機構系、制御系を用いることで、生産性が向上し、装置価格の低価格化が図られる他、メンテナンス性、操作性の向上を実現できる。
【0040】
本発明による試料作製装置を用いた試料作製は以下の手順を踏む。サイドエントリ型試料ステージ42は、真空容器6への導入および引き抜きの操作は、前述した探針移動機構1における探針ホルダ10の操作を、サイドエントリ型試料ステージ42に置き換えた操作とすることで行われる。
【0041】
ウェハ17から所望の位置の試料片32を摘出するまでは、第1の実施例と同様の工程を採る。試料片32の摘出後、サイドエントリ型試料ステージ42を真空容器6内に真空容器6の真空を大気に暴することなく挿入する。この際、第1の実施例と同様に、サイドエントリ型試料ステージ42を、サイドエントリ型試料ステージ42の概略中心軸がウェハ17に対して斜入射した構成としたことで、真空容器6の大きさを最小限とすることができ、またサイドエントリ型試料ステージ42も必要最小限の長さでイオンビーム27の光学軸24とウェハ17の交点近傍まで到達できる。本実施例では、サイドエントリ型試料ステージ42はウェハ17面に対して30度傾斜して入射させているが、30度に限定されるものではなく、試料ホルダ33aが画像表示器38で表示できる範囲にあるように真空容器6に斜めに挿入することで同様の効果が得られる。
【0042】
本構成とすることで、前述した第1の実施例の探針移動機構1と同様の理由から、試料ステージ微動機構41は真空容器6の大きさに影響を与えることはなく、真空容器6はウェハ17の可動範囲で決定する最小の大きさとすることができる。また、試料ステージ微動機構41と真空容器6を結合するベースフランジ5の中心と、光学軸24の垂線との交点までの距離を、試料ステージ34の水平方向の可動範囲の1/2以下、本実施例では150mm以下となる位置に試料ステージ微動機構41を配することで、任意の傾斜角度でサイドエントリ型試料ステージ42を最小限の長さで導入することが可能となり、真空容器6の小型化を可能としながら、装置レイアウトの自由度を拡げることができる。
【0043】
サイドエントリ型試料ステージ42の挿入後、つまみ47を回して試料ホルダ33aに保持した試料設置部43を、図5に示すようにウェハ17面と平行になる角度、すなわち本実施例では30°回転させる。その後、試料片32を保持している探針3を、図4に示す探針移動機構1および探針位置コントローラ23によって駆動し、微小試料片32を試料ホルダ33aにデポジション膜を形成することで固着する。固着後、試料ホルダ33aを再びサイドエントリ型試料ステージ42の軸線と平行な姿勢になるまで回転させた後、サイドエントリ型試料ステージ42を前述した手段で真空容器6から引き抜き、例えばTEM装置(図示せず)に装填することでTEM観察が行える。試料ホルダ33aの回転は、TEM観察の際の試料片32の微妙な回転調整にも使用することで、より確実な分析が行える。
【0044】
本実施例による構成を採ることで、真空容器6の大きさを第1の実施例と同等の大きさに抑えた、ウェハ17の任意の個所の試料片32を摘出可能な探針移動機構1と各種分析装置に装填可能なサイドエントリ型試料ステージ42を搭載したFIB装置が実現できる。本FIB装置を用いることで、真空容器6内で大口径ウェハ17の任意の個所の試料片32の試料ホルダ33aへの移載が可能となり、さらに試料ホルダ33aを載置しているサイドエントリ型試料ステージ42を、真空容器6を大気にさらすことなく取り出す事で、速やかに各種の分析装置に装填、評価が行えるようになる。また試料ステージ微動手段として探針移動機構1と同方式を採ることで、装置の生産性、メンテナンス性、操作性の向上が実現できる。
【0045】
図7は本発明の別の実施例の試料作製装置の断面図を示している。第2の実施例とは、図8に示す探針3に図1に記載した座標系で示すY軸廻りの回転自由度を付加した探針ホルダ10を搭載した探針移動機構1と、図9に示す試料ホルダ33aにサイドエントリ型試料ステージ42の中心軸廻りの回転自由度を付加した試料ステージ微動機構を用いている点が異なる。
【0046】
図8を用いて、探針ホルダ10の構成を説明する。同図(a)は探針3が突出した状態を示しており、(b)は探針3が外筒48に収納した状態を示している。探針3は板ばね52を介して探針保持具49に固定されており、探針保持具49は回転自在な回転軸受50を介して直進移動する内筒51に保持される。内筒51は回転方向の自由度を規制させて外筒48内に挿入してあり、駆動軸53とは回転自在な軸受54を介して駆動軸53に押圧させている。探針保持具49の端は圧縮コイルバネ59と接続しており、圧縮コイルバネ59のもう一方の端は駆動軸53と結合している。回転軸受50の回転中心は、探針ホルダ10の挿入傾斜角度分だけ探針ホルダ10の中心線に対して傾斜させている。これによって、探針3は真空容器6内でウェハ17面と平行に回転移動することが可能である。
【0047】
駆動軸53は回転および直進自在な軸受55および真空シール(図示せず)を介在させて外筒48内に挿入する。駆動軸53の端部は外筒48から突出する。
突出した駆動軸53には歯車56bを固定し、駆動軸53の端面には直進移動のアクチュエータである微小送り機構57を押圧させている。歯車56bと噛み合う別の歯車56aを、駆動軸53と平行に配し、歯車56aに回転移動用のつまみ47を固定する。図示していないがこれら歯車56a、56bは回転自在な部材を介して保持されていることは言うまでもない。以上が探針3の回転、および収納の2自由度を有する探針ホルダ10の基本的な構成である。
【0048】
次に動作を説明する。微小送り機構57を用いて駆動軸53を直進移動させる。駆動軸53の直進移動は外筒48に伝達されることで、探針ホルダ10に保持した探針3は回転することなく直進移動する。本構成とすることで、微細な探針ホルダ10の真空容器6への挿入または引き抜きなどの取り回しの際の、微細な探針3の損傷などの事故を未然に防ぐことができ、操作者は安易に使用できる。
【0049】
探針3の回転移動は、つまみ47を回し、歯車56a、56bを介して駆動軸53を回転運動させることでなされる。内筒51の回転自由度は規制されているので、駆動軸53の回転運動で内筒51が回転移動することはなく、圧縮コイルバネ59による弾性変形によって回転運動の方向が変化されるが、回転動力は探針保持具49に伝達され、内筒51と回転軸受50を介して保持している探針保持具49が回転移動する。以上述べてきたように単一の駆動軸53の直進および回転運動の簡易な操作によって探針3は直進移動および回転移動することができる。
【0050】
次に回転自由度付加したサイドエントリ型試料ステージ42微動機構について、図9の実施例を用いて説明する。X軸、Y軸、Z軸の各々の移動機構は図2および図3に示した探針移動機構1と同型であり、以下では変更点のみについて説明する。
【0051】
本実施例では、サイドエントリ型試料ステージ42の把持部60に歯車61aを配し、歯車61aと噛み合う歯車61bおよび歯車61bを回転駆動する駆動源62をY軸ステージ19a配した点が第2の実施例と異なる点である。本実施例の構成とすることによって、サイドエントリ型試料ステージ42は、試料ホルダ33a部分を、サイドエントリ型試料ステージ42ごと回転移動させることで、任意の角度に傾斜させることが可能である。また回転動力の伝達媒体として歯車61a、61bを用いることによって、サイドエントリ型試料ステージ42の抜き差しになんら支障をきたすことなく、ねじ等の機械部品を用いずに、サイドエントリ型試料ステージ42に結合している歯車61aと駆動源62と結合している歯車61bを結合することが可能である。
【0052】
図10は図7の試料作製装置で試料片32を加工する操作を工程に分けて示したものである。本図を用いて本実施の試料作製装置による試料作製手段を説明する。ウェハ17から試料片32を摘出する(a)までは第1の実施例と同じ工程を採る。
【0053】
ウェハ17の極表面の分析を行う場合は、第2の実施例で説明したように探針3を回転させずに、そのままウェハ17面と平行に回転移動させた試料設置部43に移載する。ウェハ17の深さ方向の分析を行う場合は、ウェハ17から試料片32を摘出後、探針3を90度回転させ、必要に応じてX軸、Y軸、Z軸を駆動し、ウェハ17の面と平行に回転移動させた試料設置部43に、イオンビームアシストデポジション膜にて接着する(図10(b))。試料片32を試料設置部43に移載後、探針3を、微小送り機構57を用いて外筒48内に収納するように直進移動させる。次につまみ47を回転し、試料設置部43を保持する試料ホルダ33aの傾斜を戻す(図10(c))。この後駆動源62を駆動させ試料設置部43がFIB27と対向するように試料ホルダ33aを回転移動させ、FIB27による試料片32の成形加工を行う(図10(d))。
【0054】
この際、加工の過程で試料ホルダ33aを回転、傾斜させて、図10(b)の姿勢にすることで、試料面からの二次粒子像を表示する画像表示器38を通して随時観察面の状態を観察することが可能である。成形加工後、サイドエントリ型試料ステージ42を真空容器6から引き抜き、例えばTEM等の分析装置にそのまま装填して分析することが可能である。
【0055】
本実施例による試料作製装置によれば、ウェハ17の極表面層および深さ方向の分析を可能とし、さらに各種分析装置に装填可能なサイドエントリ型試料ステージ42と同形状であることから試料の分析を多岐に渡って実施することが可能であり、試料作製装置としての運用範囲を格段に拡大することができる。
【0056】
以上の実施例では、説明上TEM試料の作製、観察を一例として説明してきたが、TEMに限定されるものではなく、集束イオンビーム、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、オージェ電子分光分析装置、電子プローブX線微小分析装置、電子エネルギ欠損分析装置、二次イオン質量分析装置、二次中性子イオン化質量分析装置、X線光電子分光分析装置、またはプローブを用いた電気計測装置のうちのいずれかに装填できる構成とすることで、試料面分析や観察が容易にできるようになることは当然である。
イオン源とイオン源からのイオンビームを集束するレンズとイオビームを偏向する偏向器と試料に照射するための対物レンズとから成るイオンビーム光学系を収納したイオビーム鏡筒を有する。更に、電子源と電子源からの電子ビームを集束するレンズと電子ビームを偏向する偏向器と試料に照射するための対物レンズとからなる電子ビーム光学系を収納した電子ビーム鏡筒を有する。このようなイオンビーム鏡筒と電子線鏡筒を有する荷電粒子線装置では、イオンビーム鏡筒と電子線鏡筒とが互いに試料ステージの試料載置面に対して相対的に傾斜させている。試料ステージに載置した試料から試料片をイオンビームで分離し探針の先端に取り付けられた針状部材にイオンビームとガスとで堆積接合して摘出する。取り出した試料片を電子線鏡筒の下に移動させ電子線が試料片の所定の部分に照射できるように試料片を保持している探針ホルダを回動させる。試料からの二次電子を検出器で検出して走査電子顕微鏡像を得ることも可能となる。
【0057】
また以上述べてきた試料作製装置において、説明上FIB27のみに特化して記載しているが、例えば偏向器30と対物レンズ31をマスク板と投射レンズに置き換えて構成される投射イオンビームを用いた試料作製装置、あるいは、イオン源25をレーザ光源に置き換えて構成されるレーザビームを用いた試料作製装置であっても、本発明と同様の効果が得られる。さらに以上述べてきた試料作製装置に、走査電子顕微鏡の光学系を付加した構成の試料作製装置としてもなんら問題はなく、その際は本発明の第3の実施例で示したY軸廻りの回転自由度を有する探針移動機構1を用いることによって、試料片32をウェハ17から摘出後、試料片32を探針3毎走査型電子顕微鏡の光学系に対向させることで、試料片32を高分解能に観察することができるようになる。
【0058】
図11は、本発明の探針移動機構1を、不良検査装置に適用した実施例を示す断面である。図において電子銃65から放出された電子ビーム66は電子ビーム光学系67を通過し、ステージ34上に積載したウェハ17面に集束される。ステージ34は、ステージ位置コントローラ35によって制御され、ウェハ17の評価する素子の位置を特定する。探針移動機構1は、本図では2式のみの記載であるが、紙面鉛直方向に互いに対向するようにさらに2式を配しており、不良検査装置として4式の探針移動機構1を備えている。
【0059】
上記4式の探針移動機構1に配されている探針3は、ステージ34とは独立に駆動可能な探針位置コントローラ23によって、ウェハ17上の評価素子の位置にそれぞれの探針3を移動させる。移動の際は、電子ビームコントローラ71によって、ウェハ17上の評価素子近傍に電子ビーム66を走査し、ウェハ17からの二次電子を二次電子検出器37により検出し、上記部分の画像を画像表示器38にひょうじさせ、確認しながら行う。
【0060】
本実施例では、探針3が接触したウェハ17の微小部分に電圧を印加できるように、各々の探針3には電源69が接続している。同時に各々の探針3に流れる電流を測定できるように、電流計70も接続している。評価方法の例として、ウェハ17上に形成されたMOSデバイスにおける場合を示す。まず三つの探針3を、それぞれソース電極、ゲート電極、ドレイン電極に接触させる。ここで探針3を用いてソース電極をアースに落とし、探針3によりゲート電極の電圧をパラメータとして振りながら、探針3によりドレイン電圧と、ソースードレイン間を流れるドレイン電流の関係を測定する。これによってMOSの出力特性を得ることができる。これらの動作は中央演算処理装置40によって一括して制御されている。
【0061】
各々の探針3の移動機構は、図2および図3に示した斜入射型の探針移動機構1を用いることによって、大口径のウェハ17の検査を小型の装置で実現でき、また探針3の交換などが容易に可能な構成であることから、装置の稼働率が向上できる。
【0062】
図12は、本発明の探針移動機構1を、試料観察装置に適用したときの断面図である。図において、イオン源25から放出されたイオンビーム27は、光学系26を通ることでステージ34上の所望の位置に集束される。集束されたイオンビームすなわちFIB27は、ウェハ17表面を走査した形状にスパッタすることで精密な加工が行える。ステージ34上には、ウェハ17や半導体チップ等を載置しており、ステージ位置コントローラ35によってウェハ17上の観察位置の特定を行う。探針移動機構1に装着された探針3は、ステージ34とは独立に駆動可能な探針位置コントローラ23によって、ウェハ17上の観察位置まで移動させる。移動および加工の際は、FIBコントローラ36によってウェハ17の観察位置近傍にFIBを走査して、ウェハ17からの二次電子を二次電子検出器37によって検出し、得られた二次粒子像を画像表示する画像表示器38で表示、観察しながら行う。接触したウェハ17の微小部分に電圧を印加できるよう、探針3には電源69が接続されている。観察を行う場合は、観察したい回路を他の回路から電気的に孤立させるように、FIBにて回路周囲に溝加工を施す。
回路の一端に電圧を印加した探針3を接触させ、その回路に設計上接続されているであろう個所の観察を行う。もし断線もなく接続されている場合、コントラストが変化する(明るくなる)ため、回路の不良判定を行える。これらの動作は中央演算処理装置40によって一括して制御される。本実施例において、探針3の移動機構は、図2および図3に示した斜入射型の探針移動機構1を用いることによって、大口径のウェハ17の検査を小型の装置で実現でき、また探針3の交換などが容易に可能な構成であることから、装置の稼働率が向上できる。
【0063】
また本実施例において、偏向器30と対物レンズ31をマスク板と投射レンズに置き換えて構成される投射イオンビームを用いた試料作製装置、あるいは、イオン源25をレーザ光源に置き換えて構成されるレーザビームを用いた試料観察装置であっても、本発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施例の試料作製装置を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施例の試料作製装置用探針移動機構を示す断面図。
【図3】本発明の第1の実施例の試料作製装置用探針移動機構を示す平面図。
【図4】本発明の第2の実施例の試料作製装置を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施例の試料作製装置の要部拡大図。
【図6】本発明の第2の実施例の試料ステージを示す断面図および平面図。
【図7】本発明の第3の実施例の試料作製装置を示す断面図。
【図8】本発明の第3の実施例の探針ホルダを示す断面図および平面図。
【図9】本発明の第3の実施例の試料ステージ微動機構を示す断面図。
【図10】本発明の第3の実施例の試料作製装置の部分拡大図。
【図11】本発明の第4の実施例の不良検査装置を示す断面図。
【図12】本発明の第5の実施例の試料観察装置を示す断面図。
【図13】従来の探針移動機構を備えた試料作製装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0065】
1…探針移動機構、2…エアロック室、3…探針、4…ベローズ、5…ベースフランジ、6…真空容器、7…真空シール、8…エアロックバルブ、9…エアロックバルブ開閉機構、10…探針ホルダ、11…エアロック室外筒、12…排気管、13…固定側フランジ、14…電流導入端子、15…プローブホルダストッパ、16…導線、17…ウェハ、18a…Y軸直進案内、18b…Z軸直進案内、18c…X軸直進案内、19a…Y軸ステージ、19b…Z軸ステージ、19c…X軸ステージ、20…Y軸ベース、21a…Y軸リニアアクチュエータ、21b…Z軸リニアアクチュエータ、21c…X軸リニアアクチュエータ、22a…Y軸てこ、22b…Z軸てこ、22c…X軸てこ、23…探針位置コントローラ、24…光学軸、25…イオン源、26…光学系、27…イオンビーム、28…ビーム制限アパーチャ、29…集束レンズ、30…偏向器、31…対物レンズ、32…試料片、33a…試料ホルダ、33b…試料ホルダ、34…ステージ、35…ステージ位置コントローラ、36…FIBコントローラ、37…二次電子検出器、38…画像表示機、39…デポジションガス源、40…中央演算処理装置、41…試料ステージ微動手段、42…サイドエントリ型試料ステージ、43…試料設置部、44…駆動軸、45…突出部、46…回転軸、47…つまみ、48…外筒、49…探針保持具、50…回転軸受、51…内筒、52…板ばね、53…駆動軸、54…軸受、55…軸受、56a…歯車a、56b…歯車b、57…微小送り機構、58…つまみ、59…圧縮コイルばね、60…把持部、61a…歯車a、61b…歯車b、62…駆動源、63…駆動部、64…TEM装置、65…電子銃、66…電子ビーム、67…電子ビーム光学系、68…アパーチャ、69…電源、70…電流計、71…電子ビームコントローラ、72…絶縁材、73…回転軸、74…回転軸受、75…集束レンズ、76…偏向器、77…対物レンズ、78…試料ステージ位置コントローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に試料を載置する試料ステージと、荷電粒子源と、前記荷電粒子源からの荷電粒子ビームを試料に照射するための照射光学系と、試料に荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出器と、先端を試料に接触可能な針状部材と、上記針状部材を保持する探針ホルダと、前記真空容器の外から前記探針ホルダを出し入れ可能とする導入機構と、上記探針ホルダを前記試料ステージの表面に対し傾斜させる機構を有する移動機構と、を具備したことを特徴とする試料作製装置。
【請求項2】
真空容器内に試料を載置する試料ステージと、第1の荷電粒子源と、前記第1の荷電粒子源からの荷電粒子ビームを前記試料ステージ上の試料の一部を分離加工する第1の照射光学系と、分離した試料片を摘出するための針状部材と、前記針状部材を保持する探針ホルダと、第2の荷電粒子源と、前記第2の荷電粒子源からの荷電粒子ビームを前記探針ホルダに取り付けられている試料片にまたは試料ステージ上の試料に照射する第2の照射光学系と、前記第1または第2の荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、前記針状部材を上記真空容器内で移動させ前記試料ステージの表面に対し傾斜させる構造を有する移動機構と、上記真空容器外から上記探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段と、を有することを特徴とする試料作製装置。
【請求項3】
前記第1の荷電粒子源と第1の照射光学系と、第2の荷電粒子源と第2の照射光学系とは前記試料ステージの試料載置面に対し相対的に傾斜して配置されていることを特徴する請求項2記載の試料作製装置。
【請求項4】
試料を載置する試料ステージと、
当該試料ステージを内部に有する試料室と、
イオンビームを試料に照射する照射光学系と、
前記イオンビームの照射により前記試料より分離した試料片を摘出する針状部材と、
摘出された前記試料片を載置する試料ホルダと、
少なくとも前記試料片に電子ビームを照射する電子ビーム光学系とを備え、
前記試料ステージの表面に対して前記針状部材を傾斜させる手段を備えることを特徴とする試料作製装置。
【請求項5】
前記試料ホルダを搭載し、前記試料室内に導入可能なサイドエントリ型ステージを備えることを特徴とする請求項4に記載の試料作製装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の試料作製装置において、
前記試料ホルダに前記試料片を載置した後に当該試料片に前記イオンビームを照射することを特徴とする試料作製装置。
【請求項1】
真空容器内に試料を載置する試料ステージと、荷電粒子源と、前記荷電粒子源からの荷電粒子ビームを試料に照射するための照射光学系と、試料に荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出器と、先端を試料に接触可能な針状部材と、上記針状部材を保持する探針ホルダと、前記真空容器の外から前記探針ホルダを出し入れ可能とする導入機構と、上記探針ホルダを前記試料ステージの表面に対し傾斜させる機構を有する移動機構と、を具備したことを特徴とする試料作製装置。
【請求項2】
真空容器内に試料を載置する試料ステージと、第1の荷電粒子源と、前記第1の荷電粒子源からの荷電粒子ビームを前記試料ステージ上の試料の一部を分離加工する第1の照射光学系と、分離した試料片を摘出するための針状部材と、前記針状部材を保持する探針ホルダと、第2の荷電粒子源と、前記第2の荷電粒子源からの荷電粒子ビームを前記探針ホルダに取り付けられている試料片にまたは試料ステージ上の試料に照射する第2の照射光学系と、前記第1または第2の荷電粒子ビームの照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、前記針状部材を上記真空容器内で移動させ前記試料ステージの表面に対し傾斜させる構造を有する移動機構と、上記真空容器外から上記探針ホルダを出し入れ可能とする導入手段と、を有することを特徴とする試料作製装置。
【請求項3】
前記第1の荷電粒子源と第1の照射光学系と、第2の荷電粒子源と第2の照射光学系とは前記試料ステージの試料載置面に対し相対的に傾斜して配置されていることを特徴する請求項2記載の試料作製装置。
【請求項4】
試料を載置する試料ステージと、
当該試料ステージを内部に有する試料室と、
イオンビームを試料に照射する照射光学系と、
前記イオンビームの照射により前記試料より分離した試料片を摘出する針状部材と、
摘出された前記試料片を載置する試料ホルダと、
少なくとも前記試料片に電子ビームを照射する電子ビーム光学系とを備え、
前記試料ステージの表面に対して前記針状部材を傾斜させる手段を備えることを特徴とする試料作製装置。
【請求項5】
前記試料ホルダを搭載し、前記試料室内に導入可能なサイドエントリ型ステージを備えることを特徴とする請求項4に記載の試料作製装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の試料作製装置において、
前記試料ホルダに前記試料片を載置した後に当該試料片に前記イオンビームを照射することを特徴とする試料作製装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−47162(P2007−47162A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214034(P2006−214034)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【分割の表示】特願2000−340387(P2000−340387)の分割
【原出願日】平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【分割の表示】特願2000−340387(P2000−340387)の分割
【原出願日】平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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