説明

蒸気供給装置及び蒸気供給方法

【課題】 既設の発電設備を活用して、外部からの要求に応じて可変且つ迅速に蒸気供給できる技術を提供する。
【解決手段】 蒸気供給装置であって、蒸気を発生させる蒸気発生手段10と、蒸気発生手段10に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器101と、過熱器101から供給される蒸気を導入する第一次タービン11と、蒸気発生手段10に設けられ且つ第一次タービン11から供給される蒸気を導入して再過熱する再熱器102と、再熱器102から供給される蒸気を導入する第二次タービン12と、再熱器102に導入される蒸気又は再熱器102から供給される蒸気の一部を供給する蒸気供給手段32と、蒸気発生手段10の燃焼負荷が一定となるように供給される蒸気の圧力変動に応じて第二次タービン12へ導入される蒸気量を調整する調整手段15とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備を活用して蒸気供給を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蒸気の需要に対して様々な形態での蒸気供給が行われている。例えば、既設の発電設備を改造する又は新規に専用の設備を設置するなどして外部(例えば、クライアント)などへの蒸気供給が行われている。
【0003】
ここで、既設の発電設備を改造して蒸気供給を行う場合は、新規に専用の設備を設置する場合に比べて低コストではあるが、基本的には蒸気発生手段(ボイラ本体)の大幅な改造を伴わないよう計画し、一般的に発電を優先する形態を採っているため、ボイラ本体の許容蒸気発生量の範囲内、すなわち発電に使用される蒸気量以外で可能な蒸気供給に限られていた。
【0004】
このように改造した発電設備による蒸気供給では、発電に影響を与えない範囲で蒸気供給を行うことになるため、例えば、クライアントなどから要求される蒸気供給量への対応が制限されてしまう。このため、改造した発電設備による蒸気供給では、蒸気供給量を固定した運用形態が一般的であり、クライアントなどからの要求に応じて蒸気供給量が可変できる運用形態を採用することができなかった。
【0005】
一方、仮にこのような設備で蒸気供給量を可変させた場合であっても、多量な蒸気が必要となりボイラ本体内の燃焼負荷が変動することで、その追従性が劣ってしまうため、クライアントなどからの要求に対する迅速な対応が不可能であった。
【0006】
その他に、発電設備などの蒸気タービンを利用して熱を回収するシステムなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−81790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、既設の発電設備を活用して、外部からの要求に応じて可変且つ迅速に蒸気供給できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、この過熱器から供給される蒸気を導入する第一次タービンと、前記蒸気発生手段に設けられ且つ前記第一次タービンから供給される蒸気を導入して再過熱する再熱器と、この再熱器から供給される蒸気を導入する第二次タービンと、前記再熱器に導入される蒸気又は前記再熱器から供給される蒸気の一部を供給する蒸気供給手段と、前記蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように前記蒸気供給手段から供給される蒸気の圧力変動に応じて前記第二次タービンへ導入される蒸気量を調整する調整手段とを具備することを特徴とする蒸気供給装置にある。
【0010】
かかる第1の態様では、蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように、供給される蒸気の圧力変動に応じて第二次タービンへ導入される蒸気量が調整される。これにより、所定の範囲内において、供給できる蒸気量を可変させることができる。さらに、蒸気発生手段の燃焼負荷を一定に保持し第二次タービンへ導入される蒸気量を調整することで、例えば、外部からの要求に応じて所定の範囲内の蒸気量を迅速に供給することができるため、需要に応じた柔軟な対応をとることが可能となる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記蒸気供給手段の途中に設けられた減温器を具備することを特徴とする蒸気供給装置にある。
【0012】
かかる第2の態様では、減温器を設けることで、供給される蒸気の温度を所定の温度に設定することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記第一次タービン及び前記第二次タービンから電気を出力する電気出力手段をさらに具備することを特徴とする蒸気供給装置にある。
【0014】
かかる第3の態様では、電気出力手段によって、供給される蒸気量に応じた所定量の電気が出力される。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、発電設備を改造したものであることを特徴とする蒸気供給装置にある。
【0016】
かかる第4の態様では、発電設備を改造して活用することで、比較的容易に可変且つ迅速に蒸気を供給することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記蒸気発生手段は、石炭を燃料とするボイラであることを特徴とする蒸気供給装置にある。
【0018】
かかる第5の態様では、燃料に石炭を用いることができるため、比較的低コストな蒸気を供給することができる。
【0019】
本発明の第6の態様では、第1〜4の何れかの態様において、前記蒸気発生手段は、排熱を回収して蒸気を発生させるボイラであることを特徴とする蒸気供給装置にある。
【0020】
かかる第6の態様では、蒸気発生手段として、排熱を回収して蒸気を発生させるボイラを適用することができる。
【0021】
本発明の第7の態様では、蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、この過熱器から供給される蒸気の一部を供給する蒸気供給手段と、前記蒸気供給手段から供給される蒸気以外の蒸気を導入するタービンと、前記蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように前記蒸気供給手段から供給される蒸気の圧力変動に応じて前記タービンへ導入される蒸気量を調整する調整手段とを具備することを特徴とする蒸気供給装置にある。
【0022】
かかる第7の態様では、蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように、供給される蒸気の圧力変動に応じてタービンへ導入される蒸気量が調整される。これにより、所定の範囲内において、供給できる蒸気量を可変させることができる。このように、再熱器を具備しない蒸気供給装置であっても、蒸気発生手段の燃焼負荷を一定に保持しタービンへ導入される蒸気量を調整することで、例えば、外部からの要求に応じて所定の範囲内の蒸気量を迅速に供給することができるため、需要に応じた柔軟な対応をとることが可能となる。
【0023】
本発明の第8の態様は、蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、この過熱器から供給される蒸気を導入する第一次タービンと、前記蒸気発生手段に設けられ且つ前記第一次タービンから供給される蒸気を導入して再過熱する再熱器と、この再熱器から供給される蒸気を導入する第二次タービンとを少なくとも備える電力発電設備を改造した設備によって蒸気を供給する方法であって、前記再熱器へ導入される蒸気又は前記再熱器から供給される蒸気の何れかを外部へ供給するようにする一方、前記再熱器から供給される蒸気の圧力を検出して前記外部からの蒸気の需要に応じて当該蒸気の供給量を調整するようにしたことを特徴とする蒸気供給方法にある。
【0024】
かかる第8の態様では、再熱器から供給される蒸気の圧力を検出して外部からの需要に応じて、供給させる蒸気量を調整している。これにより、所定の範囲内において、需要に応じた蒸気量を可変させて供給することができる。
【0025】
本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記蒸気の供給量は、前記蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように調整されることを特徴とする蒸気供給方法にある。
【0026】
かかる第9の態様では、蒸気発生手段の燃焼負荷が一定に保持されながら運転されるため、可変に対して追従性よく蒸気を供給することができる。
【0027】
本発明の第10の態様は、第8又は9の態様において、前記蒸気の供給量は、所定の範囲内で可変することを特徴とする蒸気供給方法にある。
【0028】
かかる第10の態様では、需要に応じて所定の範囲内で蒸気の供給量を変動させることができる。
【0029】
本発明の第11の態様は、第8〜10の何れかの態様において、前記再熱器から供給される蒸気の温度を検出し、所定の温度からなる蒸気を供給するようにしたことを特徴とする蒸気供給方法にある。
【0030】
かかる第11の態様では、要求に応じた温度からなる蒸気を供給することができる。
【0031】
本発明の第12の態様は、第8〜11の何れかの態様において、前記外部へ供給する蒸気は、石炭を燃焼させて発生させた蒸気であることを特徴とする蒸気供給方法にある。
【0032】
かかる第12の態様では、燃料に石炭を用いることによって、比較的低コストな蒸気を供給することができる。
【0033】
本発明の第13の態様は、第8〜11の何れかの態様において、前記外部へ供給する蒸気は、回収された排熱により発生させた蒸気であることを特徴とする蒸気供給方法にある。
【0034】
かかる第13の態様では、回収された排熱により発生させた蒸気を供給することができる。
【0035】
本発明の第14の態様は、蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、過熱器から供給される蒸気を導入するタービンとを少なくとも備える電力発電設備を改造した設備によって蒸気を供給する方法であって、前記過熱器から供給される蒸気の一部を外部へ供給するようにする一方、前記過熱器から供給される蒸気の圧力を検出して前記外部からの蒸気の需要に応じて当該蒸気の供給量を調整するようにしたことを特徴とする蒸気供給方法にある。
【0036】
かかる第14の態様では、過熱器から供給される蒸気の圧力を検出して外部からの需要に応じて、供給させる蒸気量を調整している。これにより、所定の範囲内において、需要に応じた蒸気量を可変させて供給することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、蒸気発生手段(ボイラ本体)の燃料負荷を一定に保持しながら、外部へ供給される蒸気量に応じて発電に使用する蒸気を導入しているため、外部からの要求に応じて蒸気の供給量を可変させて迅速に所定量の蒸気を供給することができる。また、本発明によれば、既設の発電設備を改造することで、比較的簡単に可変且つ迅速に蒸気供給できる設備を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0039】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る蒸気供給装置の概略系統図であり、高温の再熱蒸気によって蒸気供給を行う場合の例示である。なお、本実施形態に係る蒸気供給装置は、既設の発電設備を改造したものを想定している。
【0040】
図示するように、蒸気供給装置1は、主な構成として、蒸気を発生させる蒸気発生手段として燃料を燃焼させるボイラ本体10と、ボイラ本体10内で過熱された蒸気が導入されて駆動する高圧タービン11と、ボイラ本体10内で再過熱された再熱蒸気が導入されて駆動する中圧タービン12と、中圧タービン12からの排気が導入されて駆動する低圧タービン13と、再熱蒸気の一部を外部へ供給する蒸気供給弁14と、蒸気供給弁14から外部などへ供給される蒸気の圧力変動に応じて中圧タービン12へ導入する蒸気量を調整する再熱蒸気圧力調整弁15と、各タービン11、12及び13の回転エネルギーに基づいて電気を出力(発電)する発電機16とを備えている。
【0041】
具体的には、ボイラ本体10の内部に、導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器101と、高圧タービン11から供給される蒸気を導入して再過熱する再熱器102とが備わっており、過熱器101の出口側が高圧タービン11の一端に連通するように蒸気配管30が設けられていると共に、高圧タービン11の他端が再熱器102の入口側に連通するように蒸気配管31が設けられている。これにより、過熱器101から供給される蒸気が高圧タービン11に導入される一方で、高圧タービン11から供給される蒸気はボイラ本体10の再熱器102に導入されて再過熱されるようになっている。
【0042】
そして、再熱器102の出口側は、蒸気供給配管32を介して蒸気供給元弁20と蒸気供給弁14と連通しており、これにより、再熱器102から供給される再熱蒸気の一部が供給されるようになっている。
【0043】
また、蒸気供給配管32には、中圧タービン12と連通するように上流側から分岐した分岐配管33が設けられており、その分岐配管33の途中には、再熱蒸気圧力調整弁15が設けられている。さらに、分岐配管33の分岐部分よりも上流側には圧力センサ40が設けられており、この圧力センサ40によって検出される圧力に応じて再熱蒸気圧力調整弁15が開閉されることで、中圧タービン12へ導入される蒸気量が調整されるようになっている。
【0044】
さらに、蒸気供給配管32の途中には、分岐配管33より下流側に蒸気供給流量制限弁19が設けられると共に、蒸気供給弁14より上流側に流量センサ41が設けられており、これらの制御により蒸気供給弁14から外部へ供給される蒸気量の上限が制限されるようになっている。
【0045】
また、蒸気の供給先などにトラブルが生じた際には、蒸気供給流量制限弁19の急閉動作により蒸気の供給が停止されるようになっている。これにより、蒸気供給にかかる設備以外の設備が保護されている。
【0046】
なお、蒸気供給配管32には、ボイラ本体10内の蒸気圧力を規定以下に保つように動作する再熱器出口安全弁21、流体の逆流を防止する逆止弁22が設けられている。
【0047】
また、蒸気供給配管32の途中には、減温器17が設けられており、この減温器17がスプレー水系統と連携して動作することで蒸気供給弁14から供給される蒸気の温度が調整されるようになっている。
【0048】
具体的には、減温器17と連通するようにスプレー水供給配管34が設けられており、このスプレー水供給配管34を介して2系統のスプレー水ポンプ50が設けられている。このスプレー水ポンプ50は、脱気器貯水タンク18から供給される流体によって動作するものであり、スプレー水供給配管34の途中に設けられたスプレー調整弁51が、蒸気供給配管32に設けられた流量センサ41及び温度センサ42からの信号に基づいて開閉されることにより減温器17に流体が供給されて、減温器17を通過する蒸気の温度が調整されるようになっている。
【0049】
その他、スプレー水供給配管34には、減温器17への流体の供給を停止するスプレー遮断弁52が設けられており、蒸気供給が遮断された際、当該スプレー遮断弁52の動作により蒸気供給配管32への流体の流入が防止されるようになっている。さらに、スプレー調整弁51とスプレー遮断弁52を迂回するようにスプレー調整弁バイパス配管53とスプレー調整弁バイパス弁54が設けられており、スプレー調整弁51が故障した場合に代用されるようになっている。
【0050】
また、低圧タービン13の下端部には復水器23が設けられており、発電に使用された低圧タービン13内の蒸気は、外部から補給される補給水(海水)によって冷却されて水に戻され、復水ポンプ25の動作により脱気器26を介して再びボイラ本体10に導入されるようになっている。外部からの補給水は、復水器23に連通する復水器補給水配管35に設けられた補給水流量調整弁24の開閉動作によって補給されることになる。このような補給水流量調整弁24の開閉動作、及び上述した各種制御弁14、15、20〜22、並びに各種センサ40〜42にかかる一連の動作は、図示しない制御部によって制御されている。
【0051】
上述のように、蒸気供給装置1は、基本的には、一般的な発電設備に備わる各種装置及び機器により構成することが可能であり、例えば、本実施形態のように既設の発電設備を改造することにより、蒸気供給装置1として活用することが可能である。このため、本実施形態では、ボイラ本体10の燃料として、石炭を使用することができる。これにより、例えば、石油を燃料として蒸気を外部へ供給する場合に比べて、低コストで蒸気を供給することが可能となる。
【0052】
次に、上述のような構成からなる蒸気供給装置1の動作サイクルについて説明する。なお、ここでは、本実施形態に係る蒸気供給に直接的に関連する正常時の動作について説明するものとし、蒸気供給に直接的に関連しない動作については、特に言及しないこととする。
【0053】
ボイラ本体10内に導入された水は、過熱器101によって過熱され蒸気となって発生する。ここで発生した蒸気は、蒸気配管30を通過して高圧タービン11に導入される。高圧タービン11に導入された蒸気は、蒸気配管31を通過してボイラ本体10内の再熱器102に導入されて再過熱される。なお、本実施形態では、高圧タービン11を改造し最終段を除去しているため、これにより、圧力4.41MPaからなる蒸気が再熱器102に導入されることになる。
【0054】
そして、再熱器102で再過熱された蒸気は、蒸気供給配管32を通過して蒸気供給弁14から供給される一方、蒸気供給弁14から供給される蒸気の量に応じた圧力降下が、蒸気供給配管32に設けられた圧力センサ40によって検出されて、その圧力に応じて再熱蒸気圧力調整弁15の開閉度合いが調整される。このような制御により、蒸気供給弁14から供給される蒸気量に応じて、中圧タービン12に導入される蒸気量を調整して蒸気供給配管32の圧力を一定とすることで、外部へ供給する蒸気の量に関係なくボイラ本体10の燃焼負荷が一定に保持されている。
【0055】
ここで、蒸気供給配管32に設けられた流量センサ41及び温度センサ42は、それぞれ通過する蒸気の流量及び温度を検出する。このとき、検出した蒸気の流量及び温度が所定の範囲内にない場合には、流量センサ41及び温度センサ42からの信号に基づいてスプレー調整弁51が開放されることで所定量の流体が減温器17に供給される。このような制御により、減温器17を通過した蒸気が所定の温度となるように調整されており、これにより、所定の温度からなる蒸気を外部へ供給することが可能となる。なお、本実施形態では、再熱器102から供給される約538℃からなる蒸気温度を減温器17で調整して、約385℃からなる蒸気が蒸気供給弁14から供給されている。
【0056】
一方、中圧タービン12に導入された蒸気は、駆動後に低圧タービン13へと導入されて、発電機16の発電エネルギーとして使用される。
【0057】
上述のような動作により、蒸気供給弁14から外部へ供給される蒸気量に対応した量の電気が発電機16から出力される。そして、発電に使用された蒸気は、復水器23内で水に戻されて再びボイラ本体10に導入される。
【0058】
以上のような動作サイクルによって、蒸気供給装置1は、ボイラ本体10の燃焼負荷を一定に保ちながら、再熱器102で再過熱された蒸気の一部を蒸気供給弁14から蒸気として供給すると共に、残りの蒸気によって発電機16を駆動させて電気を出力することができる。最終的に、本実施形態では、圧力4.02MPa、温度385℃からなる蒸気が供給されている。
【0059】
ここで、本実施形態において蒸気供給弁14から供給される蒸気量、すなわち外部へ提供される蒸気量(以下、蒸気供給量ともいう)は、外部からの需要に応じて40t/h〜260t/hの範囲内で可変供給することができる。一方で、ボイラ本体10内の燃焼負荷は、蒸気供給量に関わらず一定に保持されるため、本実施形態における蒸気供給量と電気出力量との関係は図2に示すようなものになる。
【0060】
なお、以降の説明は、既設の発電設備の中でも、相当年数(40〜50年程度)使い込まれた古い発電設備を改造して活用した場合の例示である。
【0061】
本実施形態の設計点においては、ボイラ本体10内のボイラ蒸発量が500t/hで蒸気供給量が最大、すなわち供給量(以下、最大供給量という)が260t/hのときに、83.5MWの電気が出力されることになる。一方で、供給先との契約上の運用下限値として、ボイラ蒸発量を454t/h以上にする必要がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、上述のような関係、及び古くなった発電設備を改造する点を考慮して、ボイラ蒸発量の運用目標値を483t/hとした。この場合にあっては、最大供給量260t/hのときに、78MWの電気が出力される一方、蒸気供給量が最小、すなわち供給量(以下、最小供給量という)が40t/hのときに、143MWの電気が出力されることになる。
【0063】
本実施形態のようにボイラ蒸発量を483t/hとして運用した場合、最大供給量(260t/h)となった場合の電気出力量は78MWとなり、既設の発電設備における電気出力量156MWの1/2以上の電気出力量が確保されるため、電気事業の一部として運用することが可能になる。
【0064】
また、本実施形態では、ボイラ蒸発量、すなわちボイラ本体10の燃焼負荷を一定に保持することで、図2に示すような蒸気供給量と電気出力量との関係が構築されている。このように、ボイラ本体10の燃焼負荷を一定に保持することにより、需要に応じて蒸気供給量が可変されても追従性よく蒸気を外部などに供給することが可能となる。具体的に、本実施形態では、再熱蒸気圧力調整弁15のストロークが0%〜100%で約10秒程度であるため、例えば、蒸気供給量が急激に且つ大幅に可変されたとしても数秒程度で柔軟に対応することが可能である。
【0065】
このように本実施形態では、既設の発電設備を改造することによって、所定の範囲内で可変かつ迅速に蒸気を供給することが可能になる。そして、例えば、電気事業として十分に活用させることが難しくなりつつある古い発電設備を改造することにより、現状の使用形態と同等、若しくはそれ以上の採算価値を得ることも可能となる。
【0066】
また、既設の発電設備を改造して活用することで、上述のような設備を新規に設置した場合に比べて、設備投資にかかる費用を大幅に削減することが可能となる。さらに、発電設備を活用することで、石炭を燃料とする蒸気を供給することができるため、例えば、石油を燃料とする場合などに比べて、低コストで蒸気を供給することも可能となる。
【0067】
以上、本発明における一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではなく、次のような変形構成が可能である。
【0068】
上述した実施形態では、基本的に蒸気供給を優先させる場合を想定しているため、分岐配管33よりも上流側に圧力センサ40を設けることで、蒸気供給弁14から供給される蒸気量に応じて中圧タービン12に導入される蒸気量を調整するような構成を採っているが、これに限定されず、例えば、電気出力をある程度優先させたい場合には、分岐配管33よりも下流側に圧力センサ40を設けるようにしてもよい。このような構成により、中圧タービン12に導入される蒸気量に応じて蒸気供給弁14から供給される蒸気量を調整することもできる。すなわち、発電に利用するために中圧タービン12に導入される蒸気の一部を取り出して蒸気供給に充てることができる。
【0069】
(実施形態2)
本発明は、上述した実施形態1に係る蒸気供給装置に限定されるものではなく、例えば、図3に示すような蒸気供給装置1Aを構成してもよい。図3は、本発明の実施形態2に係る蒸気供給装置の概略系統図であり、低温の蒸気によって蒸気供給を行う場合の例示である。なお、上述した実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して重複する説明については省略する。
【0070】
本実施形態は、再熱器102に導入される前の蒸気、すなわち高圧タービン11から供給される蒸気の一部をそのまま蒸気供給弁14から供給している点が上述した実施形態1と異なっている。
【0071】
具体的には、ボイラ本体10の内部に設けられた過熱器101の出口側が高圧タービン11の一端と連通するように蒸気配管30Aが設けられると共に、高圧タービン11の他端が蒸気供給弁14と連通するように蒸気供給配管32Aが設けられており、また、再熱器102の出口側が中圧タービン12と連通するように蒸気配管36が設けられている。さらに、蒸気供給配管32Aには、上流側で分岐する蒸気配管31Aが再熱器102の入口側と連通するように設けられている。このような構成により、高圧タービン11から供給される蒸気の一部が蒸気供給弁14から外部などへ供給されるようになっている。
【0072】
また、蒸気供給配管32Aには、蒸気配管31Aとの分岐部分よりも上流側に圧力センサ40Aが設けられ、蒸気配管31Aの途中には、蒸気供給弁14から供給される蒸気の圧力変動に応じて再熱器102を経て中圧タービン12に導入される蒸気量を調整する再熱蒸気圧力調整弁15Aが設けられている。上述した実施形態1と同様に、この再熱蒸気圧力調整弁15A及び圧力センサ40Aが図示しない制御部によって制御されることにより、蒸気供給弁14から供給される蒸気量に応じて再熱器102を経て中圧タービン12へ導入される蒸気量が調整されるようになっている。
【0073】
ここで、ボイラ本体10内へ水が導入されると、過熱器101によって過熱された蒸気が発生する。ここで発生した蒸気は、蒸気配管30Aを通過して高圧タービン11へ導入される。そして、高圧タービン11に導入された蒸気は、蒸気供給配管32Aを通過して蒸気供給弁14から供給される一方、蒸気供給弁14から供給される蒸気の圧力に応じた蒸気量が蒸気配管31Aを通過して再熱器102へと導入される。すなわち、蒸気供給配管32Aに設けられた圧力センサ40Aによって通過する蒸気の圧力が検出されて、当該検出された蒸気の圧力に応じて再熱蒸気圧力調整弁15Aの開閉度合いが調整される。このような制御により、蒸気供給弁14から供給される蒸気量に応じて、再熱器102を経て中圧タービン12へ導入される蒸気量が調整されることで、外部へ供給する蒸気の量に関係なくボイラ本体10の燃焼負荷が一定に保持されている。
【0074】
また、蒸気供給配管32Aの途中には、上述した実施形態1と同様に、減温器17、流量センサ41及び温度センサ42が設けられており、これらの制御により、減温器17を通過した蒸気が所定の温度となるように調整されて蒸気供給弁14から供給される。
【0075】
また、本実施形態では、蒸気供給弁14から供給される蒸気量、すなわち蒸気供給量は、40t/h〜140t/hの範囲内で可変する。ここで、本実施形態における蒸気供給量と電気出力量の関係は、図4に示すようになる。
【0076】
図示するように、本実施形態では、上述した実施形態1と異なり、再熱器102の過熱防止制限も加わって、運用上のボイラ蒸発量を400t/h以上にする必要がある。この場合にあっては、最大供給量140t/hのときに、89MWの電気を出力することができる。
【0077】
したがって、図3に示すような蒸気供給装置1Aを構成しても、上述した実施形態1と同様に、所定の範囲内で可変かつ迅速に蒸気を供給することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、蒸気供給の可変範囲が上述した実施形態1よりも狭く、最大供給量も低下するが、実施形態1に比べて比較的安価に設備を改造することができる利点を有している。
【0079】
なお、本実施形態においても、上述した実施形態1と同様の変形構成が適用できることは言うまでもない。
【0080】
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3に係る蒸気供給装置の概略系統図である。なお、上述した実施形態1及び2と同様の構成には同一の符号を付して重複する説明については省略する。
【0081】
本実施形態は、蒸気発生手段としてのボイラ本体10に再熱器102を具備していない点が上述した実施形態1及び2と異なっている。
【0082】
具体的には、ボイラ本体10の内部に設けられた過熱器101の出口側が蒸気供給弁14と連通するように蒸気供給配管32Bが設けられている。そして、蒸気供給配管32Bには、高圧タービン11と連通するように上流側から分岐した分岐配管33が設けられている。このような構成により、過熱器101から供給される蒸気の一部が蒸気供給弁14から外部などへ供給されるようになっている。
【0083】
また、蒸気供給配管32Bには、分岐配管33との分岐部分よりも上流側に圧力センサ40が設けられ、分岐配管33の途中には、蒸気供給弁14から供給される蒸気の圧力変動に応じて高圧タービン11に導入される蒸気量を調整する過熱蒸気圧力調整弁15Bが設けられている。上述した実施形態1及び2と同様に、過熱蒸気圧力調整弁15B及び圧力センサ40が図示しない制御部によって制御されることにより、蒸気供給弁14から供給される蒸気量に応じて過熱器101から高圧タービン11へ導入される蒸気量が調整されるようになっている。なお、その他の構成については、上述した実施形態1及び2と同様となるため説明を省略する。
【0084】
ここで、ボイラ本体10内へ水が導入されると、過熱器101によって過熱された蒸気が発生する。ここで発生した蒸気は、蒸気供給配管32Bを通過して蒸気供給弁14から供給される一方、蒸気供給弁14から供給される蒸気以外の蒸気量が高圧タービン11へ導入される。すなわち、蒸気供給配管32Bに設けられた圧力センサ40によって通過する蒸気の圧力が検出されて、当該検出された蒸気の圧力に応じて過熱蒸気圧力調整弁15Bの開閉度合いが調整される。このような制御により、蒸気供給弁14から供給される蒸気量に応じて、高圧タービン11へ導入される蒸気量が調整されることで、外部へ供給する蒸気の量に関係なくボイラ本体10の燃焼負荷が一定に保持されている。
【0085】
上述のような蒸気供給装置1Bを構成した場合であっても、実施形態1及び2と同様に、所定の範囲内で可変かつ迅速に蒸気を供給することができる。また、本実施形態のようにボイラ本体10の再熱器を省いて過熱器101からの蒸気を直接外部へ供給させる構成を採ることにより、実施形態1及び2に比べて、蒸気発生手段及び配管の構成をシンプルにすることができる。また、再熱器と過熱器の双方を具備する設備を蒸気供給に使用する場合には、再熱器を使用せずに過熱器のみを使用して蒸気供給をさせるようにしてもよい。
【0086】
なお、本実施形態においても、上述した実施形態1と同様の変形構成が適用できることは言うまでもない。
【0087】
(他の実施形態)
上述した実施形態1〜3では、蒸気を発生させる蒸気発生手段として燃料を燃焼させるボイラ本体10を例示しているが、これに限定されず、例えば、ガスタービンの排気を熱回収する排熱回収ボイラを採用してもよい。これにより、例えば、蒸気タービンとガスタービンから構成されるコンバインドサイクルからなる設備にも同様に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態1に係る蒸気供給装置の概略系統図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る蒸気供給量と電気出力量の関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る蒸気供給装置の概略系統図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る蒸気供給量と電気出力量の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る蒸気供給装置の概略系統図である。
【符号の説明】
【0089】
1、1A、1B 蒸気供給装置
10 ボイラ本体
11 高圧タービン
12 中圧タービン
13 低圧タービン
14 蒸気供給弁
15、15A 再熱蒸気圧力調整弁
15B 過熱蒸気圧力調整弁
16 発電機
17 減温器
18 脱気器貯水タンク
19 蒸気供給流量制限弁
20 蒸気供給元弁
21 再熱器出口安全弁
22 逆止弁
23 復水器
24 補給水流量調整弁
25 復水ポンプ
26 脱気器
30、30A、31、31A 蒸気配管
32、32A、32B 蒸気供給配管
33 分岐配管
34 スプレー水供給配管
35 復水器補給水配管
36 蒸気配管
40、40A 圧力センサ
41 流量センサ
42 温度センサ
50 スプレー水ポンプ
51 スプレー調整弁
52 スプレー遮断弁
53 スプレー調整弁バイパス配管
54 スプレー調整弁バイパス弁
101 過熱器
102 再熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、この過熱器から供給される蒸気を導入する第一次タービンと、前記蒸気発生手段に設けられ且つ前記第一次タービンから供給される蒸気を導入して再過熱する再熱器と、この再熱器から供給される蒸気を導入する第二次タービンと、前記再熱器に導入される蒸気又は前記再熱器から供給される蒸気の一部を供給する蒸気供給手段と、前記蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように前記蒸気供給手段から供給される蒸気の圧力変動に応じて前記第二次タービンへ導入される蒸気量を調整する調整手段とを具備することを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項2】
請求項1において、前記蒸気供給手段の途中に設けられた減温器を具備することを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第一次タービン及び前記第二次タービンから電気を出力する電気出力手段をさらに具備することを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、発電設備を改造したものであることを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記蒸気発生手段は、石炭を燃料とするボイラであることを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記蒸気発生手段は、排熱を回収して蒸気を発生させるボイラであることを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項7】
蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、この過熱器から供給される蒸気の一部を供給する蒸気供給手段と、前記蒸気供給手段から供給される蒸気以外の蒸気を導入するタービンと、前記蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように前記蒸気供給手段から供給される蒸気の圧力変動に応じて前記タービンへ導入される蒸気量を調整する調整手段とを具備することを特徴とする蒸気供給装置。
【請求項8】
蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、この過熱器から供給される蒸気を導入する第一次タービンと、前記蒸気発生手段に設けられ且つ前記第一次タービンから供給される蒸気を導入して再過熱する再熱器と、この再熱器から供給される蒸気を導入する第二次タービンとを少なくとも備える電力発電設備を改造した設備によって蒸気を供給する方法であって、
前記再熱器へ導入される蒸気又は前記再熱器から供給される蒸気の何れかを外部へ供給するようにする一方、前記再熱器から供給される蒸気の圧力を検出して前記外部からの蒸気の需要に応じて当該蒸気の供給量を調整するようにしたことを特徴とする蒸気供給方法。
【請求項9】
請求項8において、前記蒸気の供給量は、前記蒸気発生手段の燃焼負荷が一定となるように調整されることを特徴とする蒸気供給方法。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記蒸気の供給量は、所定の範囲内で可変することを特徴とする蒸気供給方法。
【請求項11】
請求項8〜10の何れかにおいて、前記再熱器から供給される蒸気の温度を検出し、所定の温度からなる蒸気を供給するようにしたことを特徴とする蒸気供給方法。
【請求項12】
請求項8〜11の何れかにおいて、前記外部へ供給する蒸気は、石炭を燃焼させて発生させた蒸気であることを特徴とする蒸気供給方法。
【請求項13】
請求項8〜11の何れかにおいて、前記外部へ供給する蒸気は、回収された排熱により発生させた蒸気であることを特徴とする蒸気供給方法。
【請求項14】
蒸気を発生させる蒸気発生手段と、この蒸気発生手段に設けられ且つ導入された水を過熱して蒸気を供給する過熱器と、過熱器から供給される蒸気を導入するタービンとを少なくとも備える電力発電設備を改造した設備によって蒸気を供給する方法であって、
前記過熱器から供給される蒸気の一部を外部へ供給するようにする一方、前記過熱器から供給される蒸気の圧力を検出して前記外部からの蒸気の需要に応じて当該蒸気の供給量を調整するようにしたことを特徴とする蒸気供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−242522(P2006−242522A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61868(P2005−61868)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】