説明

蓄電素子接続プレート

【課題】 電気モータを用いた電気自動車や、電気モータと内燃機関を併用したハイブリッド自動車等に用いられる蓄電素子接続プレートにおいて、外部との接続部であるコネクタを介して生じる蓄電素子接続プレート内への漏水を、生産性を考慮しながら防止すること。
【解決手段】 矩形孔21aが形成された略筒状のコネクタハウジング21をプレート本体1と一体成形し、その矩形孔21a内に接続端子23の一端を遊挿し、コネクタハウジング21内にリテーナー25を挿嵌して接続端子23を固定支持し、接続端子23の他端を電子回路基板4に接続し、プレート本体1にシール部材51を環装し、プレート本体1にカバー5を止着して、蓄電素子接続プレートa1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車やハイブリットカーに用いられ、複数の蓄電素子同士を相互接続させる蓄電素子接続プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータを用いた電気自動車や、電気モータと内燃機関を併用したハイブリッド自動車等は、蓄電素子接続プレートを用いて、複数本の蓄電素子を一括して電気的に接続させている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種の蓄電素子接続プレートは、蓄電素子に設けられた電極との接続手段や、電圧チェックや異常検出等の所要の回路が実装された電子回路基板の支持手段など、いくつかのタイプがある。特に、電子回路基板の支持手段として、例えば、図5に示すように、プレート本体上面の凹部内に配索されたバスバー等の配線部材f1から離間(所要の絶縁距離を得るため)するように、プレート本体f2端部に電子回路基板f3を支持したものがある。
【0004】
さらに、この電子回路基板f3の上面には外部との接続部であるコネクタf4が固着されている。このコネクタf4は、中途部から略90度に折り曲げられた端子f5が突出されており、その端子f5を電子回路基板f3に設けた接続孔f6に端子f5を挿通し、次いで、電子回路基板f3端部の上面に半田付けすることで、電子回路基板f3の上面に固着されている。(図5および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−95380(第3頁、図2)
【特許文献2】特開2004−319338(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気自動車やハイブリットカーに用いられるこの種の蓄電素子接続プレートは、様々な自然環境の中で用いられるため、特に上記した電子回路基板への防水処理は不可欠なものとなっている。
【0006】
しかしながら、従来は、コネクタと電子回路基板とを直に接続させた構成であったため、コネクタと電子回路基板との僅かな間隙から、蓄電素子接続プレート内に漏水する場合があった。
【0007】
そこで、本件発明者らは、蓄電素子接続プレートにコネクタを一体成形することを思料したが、しかしながら、従来のような、端子をコネクタ内に予め組み込んでおくことは技術的に困難で、しかも、経済性に欠けてしまうことを知見し、別途、簡易な手段を講じる必要が生じてきた。
【0008】
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できる蓄電素子接続プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかる蓄電素子接続プレートは、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる蓄電素子接続プレートは、複数の蓄電素子同士を相互接続させる蓄電素子接続プレートであって、所要の電子回路が実装された電子回路基板を支持させたプレート本体と、前記プレート本体と一体成形され、連通孔が形成された略筒状のコネクタハウジングと、前記電子回路基板に一端が固着されると共に他端が前記連通孔内に挿通され、外部と接続される接続端子と、前記コネクタハウジング内に挿嵌され前記コネクタハウジング内の前記接続端子を固定支持させたリテーナーとを備えてなることを特徴とする。
請求項2にかかる蓄電素子接続プレートは、請求項1において、前記プレート本体は、前記電子回路基板と略平行となるように、且つ、前記プレート本体から離間するように前記電子回路基板を支持させると共に、リブ状の突当部が立設され、前記接続端子は、中途部が折り曲げられて折曲部が形成されると共に、その折曲部を前記突当部に突き当てて該接続端子の一端が前記突当部突出方向に案内され、前記突出方向に位置した前記電子回路基板に該接続端子の一端が固着されていることを特徴とする。
請求項3にかかる蓄電素子接続プレートは、請求項2において、前記突当部に突き当てられた前記折曲部を上から被装させる断面視略L字状のホルダーを備えると共に、該ホルダー上面のコーナー部に前記折曲部を突き当てて前記接続端子が保持されていることを特徴とする。
請求項4にかかる蓄電素子接続プレートは、請求項3において、前記コーナー部に突き当てる前記接続端子をガイドさせる案内溝が、前記ホルダー上面に形成されていることを特徴とする。
請求項5にかかる蓄電素子接続プレートは、請求項3または4において、前記ホルダーは、前記リテーナーと前記突当部とで保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、連通孔が形成された略筒状のコネクタハウジングをプレート本体と一体成形し、その連通孔内に接続端子の一端を遊挿し、コネクタハウジング内にリテーナーを挿嵌して接続端子を固定支持し、接続端子の他端を電子回路基板に接続するから、電子回路基板側に漏水するおそれを無くすと同時に、簡易な手段でもって、コネクタ(コネクタハウジングと接続端子を備えて構成される)を組み上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明にかかる蓄電素子接続プレートの実施の形態を説明する。
本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートは、図1に示すように、中間プレートa2を挟んで上下2段3×6のマトリクス状に蓄電素子Bが配設され、上段の蓄電素子Bを被装するように配設された上部プレートa1と、下段の蓄電素子Bを被装するように配設された下部プレートa3と、前記した中間プレートa2とで、複数個の蓄電素子Bを直列接続可能に挟装させてなる蓄電装置Aにおいて、上部プレートa1に適用されたものを例示している。図中、符号1はプレート本体を示す。
【0012】
なお、この蓄電素子Bとは高容量のキャパシタであり、外観形状が略四角柱状に形成されるとともに、その上下面に電極(正極、負極)を備えてなるものである。さらにこの電極は、同心円状となるように2つの環状電極b1,b2が夫々突出形成されており、中側の環状電極b1は、配線部を介して他の蓄電素子Bと直列接続され、外側の環状電極b2は、電圧チェック用の端子を介して電子部品に接続されるようになっている。
【0013】
以下、本発明の要部である蓄電素子接続プレートa1(上部プレート)について詳述する。
本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートa1は、プレート本体1と、コネクタ部2と、配線部3と、電子回路基板4と、カバー5とを備えて構成される。
【0014】
プレート本体1は、図2及び図3に示すように、上面が凹設された平面視略長方形状に形成されると共に、略四角柱状に形成された蓄電素子Bの本体部を挿嵌させる矩形凹部11が、3×6のマトリクス状となるように底面に形成され、さらにその矩形凹部11中央に上面へ連通された連通孔12が設けられてなる。
【0015】
コネクタ部2は、コネクタハウジング21と、突当部22と、接続端子23と、ホルダー24と、リテーナー25とを備えてなる。
【0016】
コネクタハウジング21は、プレート本体1の延設方向と同一方向に、矩形孔21a(連通孔)が連通された略筒状に形成され、プレート本体1端部にプレート本体1と一体成形されている。この矩形孔21aは、図2に示すように、プレート本体1に向かって中途部から縮径された段部21bが形成されている。
【0017】
突当部22は、後述する接続端子23を突き当てて上方へガイドさせるリブ状に形成され、プレート本体1側のコネクタハウジング21端部近傍のプレート本体1上面に立設されている。また、この突当部22の側壁面(接続端子23との当接側側壁面)と、その突当部22側壁面と連続するプレート本体1上面には、接続端子23をガイドさせる第1案内溝22aが形成されている。
【0018】
接続端子23は、略L字状となるように中途部が折り曲げられて折曲部23aが形成された線状部材であり、第1案内溝22aにガイドされるように配設されている。この接続端子23の一端は、折曲部23aが突当部22に突き当てられて上方へ案内され、突当部22上方に位置した電子回路基板4に半田付けされており、一方、接続端子23の他端は、矩形孔21a内に遊挿されている。なお、この接続端子23は、後述するホルダー24の上面にも配設されて上下方向2段に並設されている。
【0019】
ホルダー24は、上面に接続端子23をガイドさせる第2案内溝24aが形成された断面視略L字状の部材であり、第1案内溝22aにガイドされた接続端子23の上から、突当部22に突き当てられた折曲部23aを被装するように配設されている。
【0020】
また、このホルダー24の上面には、上記したように、第2案内溝24aに係合した接続端子23が配設されている。この接続端子23は、第1案内溝22aにガイドされた接続端子23と同様に、一端は上方へ案内されて、ホルダーのコーナー部24b上方に位置した電子回路基板4に半田付けされており、他端は、矩形孔21a内に遊挿されている。
【0021】
リテーナー25は、矩形孔21a内に形成された段部21bと係止可能、及び矩形孔21a内に挿嵌可能に形成された断面視略T字状の部材であり、リテーナー25長手方向に連通する接続端子挿入孔25aが設けられてなる。このリテーナー25は、図2に示すように、コネクタハウジング21内に挿嵌されて、コネクタハウジング21内の接続端子23を固定支持させている。
【0022】
配線部3は、隣接する2つの連通孔12を一組(合計9組)として、夫々の連通孔12間に亘ってプレート本体1上面に沿うように配索された帯板状のバスバーからなる配線部材31と、その配線部材31の両端部底面から連通孔12内に環装されるように垂設され蓄電素子Bの中側の環状電極b1と嵌脱可能な端子金具32とを備えてなる。この端子金具32は、複数個の爪が環状に配置されており、その爪内に蓄電素子Bの中側の環状電極b1が挿嵌されることにより電気的な接続がされるようになっている。また、配線部3の上には絶縁プレート6が配設されている。
【0023】
電子回路基板4は、電圧チェックや異常検出等の所要の回路が実装されてなる。そして、この電子回路基板4は、その裏面がプレート本体1上面から突出形成された取付ボス(図示せず)に各コーナー部が螺着されて、配線部3から離間するように支持されている。また、電子回路基板4に設けられた挿通孔41に、接続端子23の先部が挿嵌されハンダ付けされている。
【0024】
カバー5は、プレート本体1上面を被装可能に薄板部材で略凸状に形設されてなり、カバー5端部とプレート本体1端部とが螺着されてプレート本体1に止着されている。また、その螺着部より内側のプレート本体1端部に、カバー5端部に圧接されたシール部材51が環装されて、蓄電素子接続プレートa1内への漏水を防止している。
【0025】
以上のように構成された本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートa1は、まず、矩形孔21a内に接続端子23の他端が位置するようにプレート本体1の上から接続端子23を入れ、突当部22に折曲部23aを突き当てるように第1案内溝22aに下段の接続端子23をセットする。
【0026】
次いで、第1案内溝22aにガイドされた接続端子23の上から、突当部22に突き当てられた折曲部23aを被装するようにホルダー24をセットし、上記と同様に、矩形孔21a内に接続端子23の他端が位置するようにプレート本体1の上から接続端子23を入れ、コーナー部24bに折曲部23aを突き当てるように第2案内溝24aに上段の接続端子23をセットする。
【0027】
次いで、矩形孔21a内に形成された段部21bに突き当たるまでリテーナー25を矩形孔21aに挿嵌する。このとき、矩形孔21a内の(上下段の)接続端子23は、接続端子挿入孔25aに挿嵌されて、リテーナー25によって固定支持される。
【0028】
次いで、上方へ突出した接続端子23の先部と、電子回路基板4に設けた挿通孔41とを位置合わせし、その位置合わせ後に、挿通孔41に接続端子23の先部を挿嵌し、プレート本体1上面から突出形成した取付ボスに電子回路基板4を載置する。そして、その取付ボスに電子回路基板4を螺着して固定する。
【0029】
電子回路基板4の固定が完了したら、電子回路基板4の上面から突出した接続端子23の先部を、電子回路基板4にハンダ付けし、プレート本体1にシール部材51を環装し、プレート本体1にカバー5を螺着して一連の組立が完了する。
【0030】
このように本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートa1は、矩形孔21aが形成された略筒状のコネクタハウジング21をプレート本体1と一体成形し、その矩形孔21a内に接続端子23の一端を遊挿し、コネクタハウジング21内にリテーナー25を挿嵌して接続端子23を固定支持し、接続端子23の他端を電子回路基板4に接続し、プレート本体1にシール部材51を環装し、プレート本体1にカバー5を止着するから、電子回路基板4側に漏水するおそれを完全に無くすことができるようになっている。また、本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートa1は、簡易な手段でもって、コネクタを組み上げることができる極めて好適なものになっている。
【0031】
以上、本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートa1を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0032】
例えば、本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートa1は、ホルダー24を介して、上下方向2段に接続端子23を並設したが、3段や4段などの複数段にしても良く、また、その逆に1段の接続端子23にする場合、図4に示すように、ホルダー24は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態にかかる蓄電素子接続プレートを適用した蓄電装置の斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿える部分拡大断面図である。
【図3】要部の斜視図である。
【図4】要部の他の態様を示した部分拡大断面図である。
【図5】従来の蓄電素子接続プレートの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
A 蓄電装置
a1 蓄電素子接続プレート(上部プレート)
a2 中間プレート
a3 下部プレート
B 蓄電素子
b1 中側の環状電極
b2 外側の環状電極
1 プレート本体
11 矩形凹部
12 連通孔
2 コネクタ部
21 コネクタハウジング
21a 矩形孔
21b 段部
22 突当部
22a 第1案内溝
23 接続端子
23a 折曲部
24 ホルダー
24a 第2案内溝
24b コーナー部
25 リテーナー
25a 接続端子挿入孔
3 配線部
31 配線部材
32 端子金具
4 電子回路基板
41 挿通孔
5 カバー
51 シール部材
6 絶縁プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子同士を相互接続させる蓄電素子接続プレートであって、
所要の電子回路が実装された電子回路基板を支持させたプレート本体と、
前記プレート本体と一体成形され、連通孔が形成された略筒状のコネクタハウジングと、
前記電子回路基板に一端が固着されると共に他端が前記連通孔内に挿通され、外部と接続される接続端子と、
前記コネクタハウジング内に挿嵌され前記コネクタハウジング内の前記接続端子を固定支持させたリテーナーとを
備えてなることを特徴とする蓄電素子接続プレート。
【請求項2】
前記プレート本体は、前記電子回路基板と略平行となるように、且つ、前記プレート本体から離間するように前記電子回路基板を支持させると共に、リブ状の突当部が立設され、
前記接続端子は、中途部が折り曲げられて折曲部が形成されると共に、その折曲部を前記突当部に突き当てて該接続端子の一端が前記突当部突出方向に案内され、前記突出方向に位置した前記電子回路基板に該接続端子の一端が固着されていることを特徴とする請求項1記載の蓄電素子接続プレート。
【請求項3】
前記突当部に突き当てられた前記折曲部を上から被装させる断面視略L字状のホルダーを備えると共に、該ホルダー上面のコーナー部に前記折曲部を突き当てて前記接続端子が保持されていることを特徴とする請求項2記載の蓄電素子接続プレート。
【請求項4】
前記コーナー部に突き当てる前記接続端子をガイドさせる案内溝が、前記ホルダー上面に形成されていることを特徴とする請求項3記載の蓄電素子接続プレート。
【請求項5】
前記ホルダーは、前記リテーナーと前記突当部とで保持されていることを特徴とする請求項3または4記載の蓄電素子接続プレート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−48498(P2007−48498A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229119(P2005−229119)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】