説明

薄片炭素粒子及びその製造方法

【課題】優れた電子放出性能を有し、電子伝導性が高く、特に二次電池に使用した場合優れた特性を発揮し、二次電池以外の様々なデバイスにも好適に適用できる炭素粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】複数のナノカーボンが集合して形成された1辺0.1μm〜100μmで厚み10nm〜1μmの六角形状の薄片であることを特徴とする炭素粒子。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた電子放出性能を有し且つ電子伝導性が高い炭素粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1985年に炭素原子60個から成るサッカーボール状分子のフラーレン(バックミンスターフラーレンC60)がH. W. Kroto, R. E. Smallry, R. F. Curlによって発見され、また、1991年に飯島によりグラフェンシート(炭素六角網面)が捲かれてチューブ状になったカーボンナノチューブが発見されて以来、そうしたフラーレン及びカーボンナノチューブを含めた所謂炭素粒子の製造方法が開発され、それら炭素粒子の様々な分野への適用が検討されている。
【0003】
フラーレンの製造方法としては、1200℃程度の高温に加熱したアルゴンガス流の中で黒鉛にレーザーを照射して得られるススから抽出するオーブン・レーザー蒸発法、ヘリウムガス中で黒鉛棒を通電加熱して得られるススから抽出する抵抗加熱法、2本の黒鉛電極間でアーク放電を起こし得られた炭素媒から抽出するアーク放電法、高周波誘導により原料黒鉛に渦電流を流し加熱蒸発させて得られるススから抽出する高周波誘導加熱法、ベンゼンと酸素の混合ガスをアルゴンガスで希釈し、燃焼させて得られるススから抽出する燃焼法、などが提案されている。また、特開平5−186865号公報には、不活性ガスで充填された容器の中に配置された炭素棒と金属棒からなる一対の電極にアーク放電または抵抗加熱して炭素クラスターを製造する方法が開示されている。この他、特開平6−56414号公報及び特開平6−32606号公報には、発生した熱プラズマ中に芳香族化合物を供給して得られる固形分からフラーレンを分離する製造方法が開示されている。
【0004】
カーボンナノチューブは、電界放出機能を有し、水素吸蔵機能を有し、更に電気化学反応でリチウムを効率的に貯蔵放出する機能を有することから、FED(Field Emission Display)、リチウム二次電池、或いは水素吸蔵システムなどへの適用が研究されている。
カーボンナノチューブ製造方法としては、炭化水素などの炭素原料を含むガス雰囲気下でのアーク放電を行うアーク放電法、黒鉛をターゲットにレーザーを照射させて蒸発させて形成するレーザー蒸発法、コバルト金属もしくはニッケル金属の触媒を配した基板上でアセチレンなどの炭素原料となるガスを熱分解する熱分解法、などが提案されている。
また、特開平6−157016号公報には、Heガス雰囲気中で一対の炭素棒間に直流電流を加えてアーク放電させ陰極炭素棒にカーボンナノチューブを堆積させる方法が開示されている。特開平9−188509号公報には、無電極の高周波プラズマを発生させ、炭素原料と金属触媒を前記プラズマ中に供給することによりカーボンナノチューブを製造する方法が開示されている。特開平10−273308号公報には、カーボンロッドにレーザーを照射するレーザー蒸発法によるカーボンナノチューブの製造方法が開示されている。特開2000−86217号公報には、モリブデン金属又モリブデン金属含有物からなる触媒上で炭化水素を高温で分解して前記触媒上にカーボンナノチューブを堆積させるカーボンナノチューブの製造方法が開示されている。特開2000−95509号公報には、炭素及び非磁性遷移金属元素を含有する棒状の陽極の先端と棒状の陰極の先端とを対向させ、これらの間でアーク放電を行うことにより炭素蒸気と非磁性遷移金属元素の微粒子を発生させ、陰極の基端部にカーボンナノチューブを析出させる方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のフラーレンやカーボンナノチューブなどの炭素粒子の製造方法では、得られる炭素粒子の純度が低く、製造装置や精製工程に問題があり、高純度の炭素粒子を低コストで大量に製造することは困難である。
本発明の目的は、優れた電子放出性能を有し、電子伝導性が高く、特に二次電池に使用した場合優れた特性を発揮し、二次電池以外の様々なデバイスにも好適に適用できる炭素粒子を提供することにある。本発明の他の目的は、前記炭素粒子を安価に量産できる炭素粒子の製造方法を提供することにある。
【0006】
【問題を解決するための手段】
本発明者らは、従来技術における上述した課題を解決し、上記目的を達成すべく実験を介して鋭意検討した。その結果、比較的安価で容易に入手できる芳香族炭素水素を原料に使用し、この芳香族炭化水素と、少なくとも触媒とチオール鉄若しくは鉄化合物とチオールと、二酸化炭素、アルコール、エーテル、炭化水素、水、及び不活性ガスからなる群から選択される少なくとも一種の媒体とを、2.5MPa乃至60MPaの範囲の圧力と80℃乃至800℃の範囲の温度条件で反応させる場合、炭素粒子を効率的に製造できることが判明した。この炭素粒子を評価したところ、該炭素粒子は、優れた電子放出性能を有し且つ電子伝導性が高く、特に二次電池に使用した場合優れた特性を発揮するものであることが判った。そして、この炭素粒子について、フィールドエミッション走査型電子顕微鏡(FESEM、日立製S−4500、以下「SEM」という)及び透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子製JEO−200SX、以下「TEM」という)で観察したところ、前記炭素粒子は、基本的には、複数のナノカーボンが集合して形成された1辺0.1μm〜100μmで厚み10nm〜1μmの六角形状の薄片炭素粒子であることが判った。本発明は、これらの判明した事実に基づいて完成に至ったものである。
本発明は、前記特定の外観形状及び内部構造で特徴づけられる六角形状薄片炭素粒子及びその製造方法を提供する。
【0007】
本発明の炭素粒子は、以下の態様を包含する。
即ち、本発明の炭素粒子の第一の態様は、複数のナノカーボンが集合して形成された1辺0.1μm〜100μmで厚み10nm〜1μmの六角形状の薄片であることを特徴とする炭素粒子である。
本発明の炭素粒子の第二の態様は、前記六角形状の薄片が層状構造を有し、炭素粒子の厚み/1辺の長さの比率が、1/10〜1/100であることを特徴とする。
本発明の炭素粒子の第三の態様は、前記六角形状の薄片の炭素粒子において、複数の六角形状シートが積層されて六角形状の薄片が構成されていることを特徴とする。
本発明の炭素粒子の第四の態様は、前記複数の六角形状の薄片は、積層されたグラフェンシートが複数集合した微小構造を含有していることを特徴とする。ここで、グラフェン(graphene)とは、単原子層のグラファイト、すなわち炭素原子から成る二次元六員環ネット構造を示す。
本発明の炭素粒子の第五の態様は、前記グラフェンシート平面が、前記六角形状の薄片平面に対してほぼ垂直であるように配列していることを特徴とする。
本発明の炭素粒子の第六の態様として、前記六角形状の薄片炭素粒子が、結晶格子面間隔0.329〜0.346nm、0.209〜0.219nm、0.199〜0.209nmの各々の格子面を同時に有する微結晶の集合体であることを特徴とする。
【0008】
本発明の炭素粒子の製造方法は、上記六角形状薄片炭素粒子の製造方法であり、芳香族炭化水素(イ)と、少なくとも鉄とチオール若しくは鉄化合物とチオール(ロ)と、二酸化炭素、アルコール、エーテル、炭化水素、水、及び不活性ガスからなる群から選択される少なくとも一種の媒体(ハ)とを、2.5MPa乃至60MPaの範囲の圧力と80℃乃至800℃の範囲の温度条件で反応させる工程を含有していることを特徴とする。
前記反応の際の前記温度条件及び前記圧力条件は、前記芳香族炭化水素(イ)又は/及び前記媒体(ハ)が超臨界流体若しくは亜臨界流体となる条件であることが好ましい。
本発明の前記炭素粒子の製造方法においては、必要とあらば、前記(イ)、前記(ロ)及び(ハ)を反応させる工程によって得られる生成物を焼成処理してもよい。前記焼成処理は、窒素ガス、アルゴンガス、等の不活性ガス雰囲気下、900℃〜2800℃の温度範囲で行なうのが好ましい。
【0009】
本発明により提供される、【0007】で述べたような特定の外観形状及び内部構造を有する六角形状薄片炭素粒子は、従来の炭素粒子から客観的に区別さる別異のものであるので、新規な炭素粒子であると云うことができる。そして、本発明により提供される該炭素粒子は、上述した微細構造のため、優れた電子放出性能を有し且つ電子伝導性が高く、特に二次電池に使用した場合優れた特性を発揮するものであることから、産業上有用なものである。また、該炭素粒子は、比較的安価で容易に入手できる芳香族炭素水素を原料に使用し、上述したような比較的簡単な製造方法で効率的に製造できることから、低コストで市場に提供できるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の六角形状薄片炭素粒子の製造方法について、より詳しく説明する。
本発明の炭素粒子の製造方法の代表的態様においては、芳香族炭化水素(イ)と、少なくとも触媒として機能すると考えられる鉄とチオール若しくは鉄化合物とチオールとを含有する触媒(ロ)と、二酸化炭素、アルコール、エーテル、炭化水素、水、及び不活性ガスからなる群から選択される少なくとも一種の媒体(ハ)とを高圧な状態にできる反応容器に入れ、前記反応容器内に導入したこれらの原料を所定の圧力で加圧しながら所定の温度で加熱して、所定時間反応させ、その後冷却することにより所望の炭素粒子(【0007】で述べたような特定の外観形状及び内部構造を有する炭素粒子を得ることができる。得られる炭素粒子中に存在する金属元素成分が、該炭素粒子を使用して作製されるデバイスにとって不必要なものである場合には、焼成処理によって昇華除去するか、酸・アルカリ等による洗浄処理或いはその他の精製処理などの後処理に付してそれを除去するのが望ましい。前記反応の際の加圧圧力及び加熱温度は、前記芳香族炭化水素又は/及び前記媒体が超臨界流体若しくは亜臨界流体の状態になる条件であることが好ましく、前記加圧圧力は、好ましくは2.5MPa乃至60MPaの範囲であり、前記加熱温度は、好ましくは80℃乃至800℃の範囲である。前記製造方法では、前記媒体(ハ)の存在下で前記芳香族炭化水素(イ)が前記触媒(ロ)と接触して反応する際、少なくとも前記芳香族炭化水素(イ)が好ましくは超臨界流体の状態を為すことにより、前記芳香族炭化水素(イ)から活性な反応中間体が生成され、触媒の元で生成された反応中間体が自己集合し自己組織化して、所望の炭素粒子(【0007】で述べたような特定の外観形状及び内部構造を有する炭素粒子)が生成するところとなると推察される。
【0011】
図1は、【0010】に述べた六角形状薄片炭素粒子の製造方法を実施するに適した製造装置の一例の構成を模式的に示す図である。図1において、101は、製造装置全体を示す。また、102は反応容器を示し、103は反応容器102の内部を加熱する為のヒーターを示し、104は上部封止部材を示し、105は下部封止部材を示し、106は反応容器102内の圧力を検出し調整する為の圧力コントローラーを示し、107は熱電対等の温度センサーを備えた、反応容器102内の温度を検出する為の温度検出手段を示す。図1に示す製造装置101による炭素粒子の製造は、例えば、次のように行われる。先ず、原料〔芳香族炭化水素(イ)、少なくとも鉄主体の遷移金属とチオール若しくは鉄主体の遷移金属化合物とチオール(ロ)、及び二酸化炭素、アルコール、エーテル、炭化水素、水、及び不活性ガスからなる群から選択される少なくとも一種の媒体(ハ)〕を反応容器102内に導入し、反応容器102を上部封止部材104で密閉する。次いで、反応容器102内をヒーター103により所定の温度まで加熱し、温度検出手段107及び圧力コントローラー106を介して反応容器102内の温度を所定の温度に維持し且つ反応容器102内の圧力を所定の圧力に維持する。この状態を所定時間維持して反応容器102内の原料を反応せしめる。反応終了後、反応容器102内を冷却し、上部封止部材104を外し、反応容器102内の反応生成物(特定の外観形状及び内部構造を有する炭素粒子からなる炭素粒子)を取り出す。該反応生成物は、必要に応じて、焼成処理、酸・アルカリによる洗浄処理、或いは精製処理などの後処理に付してもよい。900℃〜2800℃の焼成処理によって、前記製造工程で得られた六角形状薄片炭素粒子は、六角形状薄片の形状を保持しながら、非晶質部分が減少し、グラフェン構造の結晶化が進む。焼成温度が高いと結晶化の程度も高くなる。この結晶化の程度は、電子線回折やX線回折によって、分析することができる。また、1500℃以上の温度の熱処理では、触媒として残存していた鉄主体の遷移金属化合物は、昇華して除去される。この昇華除去によって、(鉄等の遷移金属化合物が抜けた)虫食い状の孔が生じた六角形状薄片炭素粒子が得られる。
【0012】
以下に、これらの原料の夫々について詳しく述べる。
【0013】
[芳香族炭化水素(イ)]
出発原料である芳香族炭化水素(イ)としては、公知のものを適宜使用することができる。好ましい具体例として、フルオランテン、ピレン、クリセン、フェナントレン、アントラセン、ナフタレン、フルオレン、インデン、ビフェニル、アセナフテン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素化合物を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、或いは二種またはそれ以上を混合して用いてもよい。この他、これらの芳香族炭化水素化合物を含有するピッチ、ピッチコークス、石油コークス、コールタール等を芳香族炭化水素(イ)として使用することができる。尚、炭素粒子の製造工程においては、芳香族炭化水素(イ)は、超臨界状態で使用されるのが望ましい。
【0014】
〔触媒(ロ)〕
炭素粒子の製造において使用する前記鉄主体の遷移金属若しくは前記鉄主体の遷移金属化合物は、炭素粒子の原料を分解し、分解して生成された反応中間体を結合させて炭素粒子を生成させる主触媒として機能していると考えられる。また、前記チオールは、原料あるいは反応中間体を自己集合させ、自己組織化する、助触媒として機能していると推察される。前記鉄化合物の好ましい具体例として、フェロセン、硫化鉄、鉄アセチルアセトナート、及び鉄カルボニルが挙げられる。主触媒としての前記鉄或いは前記鉄化合物に加えて、鉄以外の遷移金属或いは遷移金属化合物を使用することができる。これらの遷移金属或いは遷移金属化合物は、触媒(ロ)に混合して使用することができる。前記鉄若しくは前記鉄化合物に加えて前記遷移金属或いは前記遷移金属化合物を使用することにより、上記反応生成物を生成する反応は促進される。
前記遷移金属は、ニッケル、コバルト、銅、クロム、タングステン、モリブデン、及びチタンを包含する。前記遷移金属化合物は、遷移金属硫化物、遷移金属炭化物、及び有機遷移金属化合物を包含する。前記遷移金属硫化物の好ましい例としては、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化銅、硫化チタン、硫化タングステン、及び硫化モリブデンが挙げられる。前記遷移金属炭化物の好ましい例としては、炭化タングステン、炭化モリブデン、及び炭化チタンが挙げられる。前記有機遷移金属化合物の好ましい例としては、ニッケロセン、コバルトセン、ニッケルフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銅フタロシアニン、ギ酸ニッケル、ギ酸コバルト、ニッケルアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナート、ニッケルカルボニル、及びコバルトカルボニルが挙げられる。
【0015】
〔チオール〕
前記チオールは、助触媒として機能すると考えられ、主触媒としての前記鉄主体の遷移金属若しくは前記鉄主体の遷移金属化合物と同時に添加することができる。前記チオールは、本製造方法の反応中に分解され、生成物の炭素粒子の一部を構成するかもしれない。また、チオールの分解により生じたイオン元素と鉄等の遷移金属元素が反応して、遷移金属硫化物をも形成する。チオールとしては、アルカンチオールに代表されるチオールが好ましく用いられる。前記チオールの好ましい具体例としては、1−オクタンチオール(n−オクチルメルカプタン)、1−デカンチオール(n−デシメルカプタン)、1−ドデカンチオール(n−ドデシルメルカプタン)、n−ブチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、エチルメルカプタン、メチルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、及びチオフェノールが挙げられる。こうしたチオールは、該助触媒のイオウ原子を介して遷移金属触媒(主触媒)と出発原料(芳香族炭化水素)に配位して、前記原料が前記遷移金属触媒と反応して生成する複数のナノカーボンに自己配列作用をもたらすと考えられる。より詳しくは、前記生成する複数のナノカーボンが並んで集合しやすくさせ、それにより複数のナノカーボンが集合して
【0007】で述べたような特定の外観形状及び内部構造を有する炭素粒子が形成されやすくなると考えられる。尚、本発明者らが行った実験においては、主触媒と助触媒の最も好ましい組み合わせは、フェロセンとアルカンチオールであった。
【0016】
〔媒体(ハ)〕
炭素粒子の製造において使用する媒体としては、上述したように、二酸化炭素、アルコール、エーテル、炭化水素、水、及び不活性ガスからなる群から選択される少なくとも一種の媒体(ハ)が使用される。媒体(ハ)として、ここに列挙したものの中、二酸化炭素及び水がより好ましい。
媒体(ハ)は、出発原料(芳香族炭化水素)の分子の衝突確率を下げ副反応を抑制する機能と、溶媒の場合のように、前記原料及び上記触媒(ロ)を均一に分散させ、前記原料と上記記遷移金属触媒との反応を助長する機能を奏すると考えられる。また、前記炭素粒子合成中には、原料又は/及びチオールの分解、あるいはそれらと反応容器中に含有していた酸素との反応によって、二酸化炭素も生成していると推測される。前記媒体(ハ)として、二酸化炭素を使用する場合は、反応系内の二酸化炭素濃度が増加しない方向に平衡反応がずれるためか、生成物の炭素粒子の収率が高まる。
媒体(ハ)としての前記炭化水素の好ましい具体例としては、エタン、プロパン、及びブタンが挙げられる。また、前記アルコールの好ましい具体例としては、メタノール及びエタノールが挙げられる。上記炭化水素及びアルコールは、本発明の炭素粒子の合成材料の一部に成り得る。
前記不活性ガスの具体例としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスが挙げられる。
必要に応じて、媒体(ハ)に加えて、水素ガスを添加ことができる。水素ガスは、非晶質炭素の成長を抑える効果がある。
【0017】
〔反応温度及び反応圧力〕
炭素粒子の製造工程においては、芳香族炭化水素(イ)又は/及び媒体(ハ)が超臨界流体若しくは亜臨界流体の状態となる温度及び圧力の条件で反応を行うことが望ましい。前記反応温度及び前記反応圧力は、使用する製造装置により多少異なるが、前記反応温度は、好ましくは80℃乃至800℃の範囲であり、より好ましくは200℃乃至650℃の範囲であり、最も好ましくは350℃乃至500℃の範囲である。前記反応圧力は、好ましくは2.5MPa乃至60MPaの範囲であり、より好ましくは2.5MPa乃至50MPaの範囲であり、最も好ましくは3.1MPa乃至40MPaの範囲である。
本発明において、超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界の温度及び圧力(臨界点)を超えた温度及び圧力の状態にある、液体の性質と気体の性質とを併せ持った流体を意味する。亜臨界流体とは、超臨界流体に準ずる流体を意味し、具体的には、前記臨界点における温度(臨界温度)と圧力(臨界圧力)をT0(絶対温度)とP0(MPa)としたときに、下記式を満たす温度T(絶対温度)と圧力P(MPa)で臨界点を超えない状態にある流体を意味する。
T≧0.8T0
P≧0.8P0
【0018】
〔後処理〕
上述したように、芳香族炭化水素(イ)、触媒(ロ)及び媒体(ハ)を芳香族炭化水素(イ)又は/及び媒体(ハ)が超臨界流体若しくは亜臨界流体の状態となる温度及び圧力の条件で反応させることにより所望の炭素粒子(
【0007】で述べたような特定の外観形状及び内部構造を有する炭素粒子)が得られる。得られた炭素粒子は、必要に応じて、焼成処理、洗浄処理、或いは精製処理等の後処理を施すことができる。この後処理は、製造工程で使用した触媒に含まれる金属を除去したり、不純物や副生成物の除去、或いは炭素粒子たる炭素粒子の純度をあげる目的で行う。例えば、デバイスを作製する際に金属成分が不要な場合には、不活性ガス中にて、500℃〜2800℃の温度で焼成処理し、金属成分を除去する。500℃〜1000℃の温度での焼成処理では、未反応の原料の除去、あるいは、非晶質炭素の除去に効果がある。900℃〜2800℃の温度での焼成処理では、グラフェン構造の発達を促すことができる。1500℃〜2800℃の温度での焼成処理では、触媒に用いた遷移金属元素から派生した遷移金属化合物の除去を行なうことができる。この場合の焼成処理は多段階で行ってもよい。前記不活性ガスとしては、He、Ar、N2等を用いることが好ましい。また、金属成分、不純物、及び副生成物の除去は、酸またはアルカリによる洗浄で行うことができる。この他、精製処理として、超音波分散、遠心分離及び焼成処理を組み合わせて行うことにより、炭素粒子たる炭素粒子の純度を高めることもできる。
【0019】
〔炭素粒子の外観形状及び内部構造〕
本発明の製造方法で製造した炭素粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)〔フィールドエミッション走査型電子顕微鏡(FESEM、日立製S−4500)〕で観察したところ、主に図2(A)に示すような幾何学的に対象性を有した六角形状の薄片炭素粒子であることが判明した。上記六角形は、正六角形に近い形状であった。前記走査型電子顕微鏡と透過電子顕微鏡(TEM)〔日本電子製JEO−200SX〕〕の観察から、層状構造に発達した六角形状シートの一部が欠けた炭素粒子(模式的に示した図2(C))が認められたため、図2(B)に示すように六角形状シートが複数積層して成る炭素粒子であるとも考えられる。尚、図2(B)に示すLは、六角形状の薄片炭素粒子の六角形の1辺の長さを示し、Dは該炭素粒子(即ち、前記積層体)の厚みを示す。
また、本発明の製造方法にて得られた炭素粒子を焼成し、焼成温度が高い場合、六角形の形状は保たれたまま、図2(D)に示すように、孔のあいた六角形状の薄片が得られた。その場合、X線元素分析からは鉄等の遷移金属元素は検出されず、透過電子顕微鏡観察での格子縞模様の発達からグラフェン構造の発達が認められた。
また、図3(B)はこの炭素粒子を、その六角形シート面[図3(A)に□で示す]に対し垂直方向から透過型電子顕微鏡で観察した高分解能像である。図3(B)では微小構造が観察され、この微小構造は積層されたグラフェンシートが六角形平面に垂直方向に配向している構造であると考えられる。この微小構造は、天然黒鉛等にみられるような無数のグラフェンシートが積層された構成やカーボンナノチューブのグラフェンシートを丸めた筒状のものとも異なる特殊な構造である。
本発明の六角形状薄片炭素粒子の微細構造を模式図に徴して説明すると、図3(C)に示すように、複数の層面が微小なグラフェンシート(模式図3(C)中の長方形シート)の集合体を形成し、この集合体が複数集まって、均整のとれた薄片状の六角形に自己成長して形成されていると考えられる。
【0020】
〔分析方法〕
本発明の製造方法で製造される炭素粒子たる炭素粒子の外観形状及び内部内部構造は、以下に述べる分析方法で確認することができる。即ち、前記炭素粒子の外観形状を、上記走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。前記炭素粒子の内部構造を上記透過型電子顕微鏡(TEM)で観察する。更に、前記炭素粒子の結晶状態の分析を、反射高速電子線回折により電子回折パターンを得ることにより行う。即ち、得られる電子回折パターンから、以下の式により、格子面間隔を求めることができる。
d=ml・λ/r
d:面間隔、l:カメラ長、r:回折パターン上での半径、λ:電子線の波長、m:写真倍率、ml:最終カメラ長
【0021】
[電子放出性能の評価]
本発明の製造方法で製造される炭素粒子の電子放出性能は、図5に示す電界電子放出装置(FED)を用いて評価することができる。図5において、501は電界電子放出装置全体を示す。また、502はガラス板、503は電極(陽極及び陰極)、505は電極503上に形成した炭素粒子層(前記炭素粒子たる炭素粒子を用いて形成した層)、504はスペーサーとしての雲母板、506は真空容器、をそれぞれ示す。
電極503上への炭素粒子層505の形成は、例えば次のようにして行うことができる。溶媒中に本発明の製造方法で製造された炭素粒子たる炭素粒子を分散させた分散液の中に、電極503と対向電極(不図示)をいれ、電圧をかけられる電源に接続し、所定時間、所定電圧をかけ電着させる。別の形成方法として、前記炭素粒子に結着材等を添加してペースト化したものを電極503に塗布することにより炭素粒子層505を形成できる。この他、有機溶媒中に前記炭素粒子を分散させ、電極503に噴霧し付着させる方法によっても炭素粒子層505を形成できる。
以上のようにして、電極503上に炭素粒子層505が形成された基板の上に、雲母板504を載せ、さらに対向電極としての他方の電極503を載せ、これらを一対のガラス板502で挟んでセルを作製する。このセルを真空容器506に入れ、該セルに電界をかけ、炭素粒子層505の電界電子放出特性を計測する。
【0022】
[リチウム二次電池]
リチウム二次電池(所謂リチウムイオン二次電池を包含する)に本発明の製造方法で製造される炭素粒子たる炭素粒子を使用する場合は、前記炭素粒子を負極材料として使用するのが好ましい。図7はリチウム二次電池の構成の概念図である。図7において、701はリチウム二次電池全体を示す。また、702は負極、703はイオン伝導体、704は正極、705は負極端子、706は正極端子、707は電池ハウジング(電槽)、をそれぞれ示す。図7の負極702は、図8に示す電極構造体801で構成される。図8において、802は集電体、803は炭素粒子(本発明の製造方法で製造された薄片炭素粒子)、804は結着材、805は導電補助材、806は活物質層、をそれぞれ示す。
【0023】
電極構造体801は、炭素粒子803に有機高分子からなる結着材804を混合し、これに、必要に応じて、導電補助材805及び溶媒を添加・混合し、得られる混合物を用いて銅箔等からなる集電体802上に負極活物質層806を形成することにより作製できる。この電極構造体801を、図7に示すリチウム二次電池の負極702として使用する。正極703としては、例えば、リチウム−遷移金属酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、若しくはリチウム−遷移金属硫化物の粉末に黒鉛粉末等の導電補助材、有機高分子からなる結着材、溶媒を適宜添加混合し、得られる混合物を使用してアルミニウム箔等からなる集電体上に正極活物質層を形成することにより作製される電極構造体を使用する。尚、前記結着材としては、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂或いはポリビニルアルコール等の水溶性高分子が用いられる。また、正極材料として使用する前記リチウム−遷移金属酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物及びリチウム−遷移金属硫化物の遷移金属元素は、コバルト、ニッケル、マンガン、及び鉄の中から選ばれる遷移金属元素であるのが好ましい。
【0024】
負極701と正極703の間に、イオン伝導体703として機能する、リチウム塩の電解質を保持した微孔性ポリオレフィン系フィルムをセパレータとして配置する。これによりリチウム二次電池が得られる。前記電解質としては、リチウムイオン(Li+)とルイス酸イオン(BF4-、PF6-、AsF6-、ClO4-、CF3SO3-、N(CF3SO22-、BPh4-(Ph:フェニル基))からなるリチウム塩を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、またはジエチルカーボネート等の有機溶媒に溶解した電解液を使用する。尚、前記電解液に高分子を添加してゲル化したものをイオン伝導体703として使用してもよい。上記微孔性ポリオレフィン系フィルムとしては、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが使用される。
【0025】
[水素貯蔵性能の評価]
本発明の製造方法で製造された炭素粒子たる炭素粒子を、上述したようにリチウム二次電池に使用した場合の水素貯蔵性能評価は、図9に示す測定装置を使用して、低温下で前記炭素粒子に水素ガスを吸蔵させた後、昇温して脱離した水素量を計測し、単位重量当たりの水素吸蔵量を求めることで行うことができる。図9において、900は高圧水素ボンベ、901は水素貯蔵容器(該容器は容積が既知のものである)、902は前記炭素粒子の充填容器(該充填容器は容積が既知のものである)、903は温度コントローラー、904は真空ポンプ、905は圧力計、906は真空計、907は調圧弁、をそれぞれ示す。908、909、910、911、912、及び913は開閉バルブである。充填容器902には、開閉バルブ911、912、913を介して真空計906が接続され、また、開閉バルブ911、912を介して真空ポンプ904が接続されている。開閉バルブ909を介して圧力計905が接続され水素貯蔵容器901には、開閉バルブ908と調圧弁907を介して水素ボンベ900が接続されている。このように構成された図9に示す測定装置を使用した測定は、まず、十分に乾燥した炭素粒子の重量を計測し、これを充填容器902内に充填し、真空ポンプ904で高真空領域まで脱気した後、所定の圧力になっている水素貯蔵容器901から充填容器902に開閉バルブ910、911を開いて水素を導入し、所定時間の経過後、導通した二つの容器(901と902)の水素圧力を計測し、最初の水素貯蔵容器901の水素圧と二つの容器の容積から、炭素粒子の単位重量当たりの水素吸蔵量を計算することができる。実際には、炭素粒子の充填された充填容器902に導入する水素の圧力を変化させながら、平行圧力時の吸蔵・放出量を測定し、単位重量当たりの水素吸蔵量を計算する。
【0026】
【実施例】
以下に示す実施例に徴して、本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は例示的なのものであり、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0027】
【実施例1】
本実施例では、図1に示した製造装置を用いて、表1に示す原料を使用し、同表に示す製造条件にて炭素粒子を製造した。
手順は、表1に示した原料を図1に示した製造装置の反応容器102に導入し、上部封止部材104で密閉化した。その後、ヒーター103にて、反応容器102内を450℃まで加熱し、反応室102内を温度検出手段107を介してこの温度に維持し、且つ反応室102内の圧力を圧力コントローラー106により所定の圧力に維持した。この状態を維持しながら、反応室102内の原料を12時間反応させた。その際の反応室102内の到達圧力は28MPaであった。反応終了後、反応室102内を冷却し、上部封止部材104を外して、反応容器102内の反応生成物(特定の外観形状及び内部構造を有する炭素粒子)を取り出した。得られた反応生成物のSEM写真を図2(A)に示す。また、前記反応生成物のTEM写真を図3(B)に示す。SEM写真を図2(A)とTEM写真を図3(B)から、前記反応生成物は、複数のナノカーボンが集合して形成された1辺0.3〜2.9μmで厚み0.08〜0.1μmの六角形状の薄片炭素粒子であることが判った。また、TEM観察から、六角形状の薄片炭素粒子は六角形シートが複数層状に積層された構造であることを示す像も見出された。さらに、前記炭素粒子を元素分析装置(EMAX5770 堀場製作所製)で定性分析を行ったところ、前記炭素粒子の主たる構成元素は炭素元素であることが判った。尚、図4は、前記炭素粒子の反射高速電子線回折により得られた電子線回折パターンである。この反電子線回折パターンと前述の式から、格子面間隔が0.337nm、0.214nm、0.204nmである各々の面を同時に有する微結晶集合体であることが判った。なお、上記得られた格子面間隔は、グラファイトと類似していた。
また、上記で得られた炭素粒子をアルゴン雰囲気下で1500℃の熱処理を行い、熱処理された炭素粒子に含まれる元素を分析したところ、触媒として使われた、Fe,Ni,Co,Sは検出されなかった。このことからも、前記炭素粒子の主たる構成成分は炭素であることが判った。また、上記TEM写真及び上記電子線回折パターンに基づく観察結果から、本実施例で得られた炭素粒子は、黒鉛類似のグラフェンから成る微結晶が集合し、それが自己成長して幾何学的に対象性のよい、六角形薄片として形成されたものと考えられる。
【0028】
【表1】

【0029】
【実施例2】
実施例1で得られた炭素粒子の電界-電子放出特性を、図5に示す電界電子放出装置を用いて用いて評価した。先ず前記実施例1で得られた炭素粒子を遊星ボールミルにより粉砕したもの0.22gをイソプロピルアルコール75mlに加え、均一な分散液を得るため、超音波を6時間加えた。その後、マグネットスターラーで攪拌しながら、DC100Vの電圧を加えて電着を5分行った。電着時の陽・陰極ともにステンレス基板を用いた。得られた電着基板を図5の測定装置501のガラス基板502上に設置し、雲母板504、対向電極(ステンレス)503、ガラス板502の順に重ね、測定セルを作製し、測定装置501に入れ、陰極−陽極間に300Vまで電圧をかけ、電圧−電流特性を調べた。(サンプルNo.1)。
比較として、多層カーボンナノチューブ(本荘ケミカル社製、以下、“多層CNT”と呼称する)を用いて同様に電極を作製した。(サンプルNo.2)
サンプルNo.1及びサンプルNo.2を用い、電界-電子放出特性を測定した。その結果を図6に示す。図6では、横軸に印加電圧をとり縦軸に計測された電流値をプロットしたものである。図6には、実施例2(サンプルNo.1)と比較例(サンプルNo.2)の電流曲線を示した。
図6に示す結果から、実施例1で得られた炭素粒子を遊星ボールミルにより粉砕処理して得られた本実施例の炭素粒子は、従来の多層CNTに比べ、電界電子放出特性が明らかに優れていることが判った。本発明の製造方法で製造される炭素粒子は、図3(B)に示すTEM写真に徴して明らかなように、薄片中に特徴的な微細組織がみられる。この微細構造は、複数のグラフェンシートが積層した微小な集合体のナノカーボンからなり、そのグラフェンシート面の多くは六角形状の薄片平面に対して垂直に配列していると考えられる。そのため、電界放出のサイトとなるグラフェンシートエッジが六角形状薄片炭素粒子の表面(六角形面)に多く存在し、結果的に電界電子放出特性が高くなると推察される。また、六角形状薄片炭素粒子を電極上に形成するとき、扁平であるために、電極面に平行に配列しやすく、この六角形状薄片炭素粒子から形成された電極層の電気伝導性が高いことも電界電子放出特性が高い原因となっていると考えられる。上記理由から、本実施例のサンプルが、比較例のサンプルより低い電圧で電子放出する機能を発揮するものと考えられる。
【0030】
【実施例3】
実施例1で得られた炭素粒子を2500℃の不活性ガス中で焼成処理し、金属成分を除去した。このように焼成処理した炭素粒子を、バインダー及びアルコールと混合してペーストを作製し、該ペーストを銅箔からなる集電体上に塗布し負極を作製した。これとは別に、リチウムコバルト酸化物を使用して正極を作製した。前記負極と前記正極を使用して、上述したリチウム二次電池の作製方法に従い、図7に示す構成のリチウム二次電池を作製した。得られたリチウム二次電池の充放電効率を充放電サイクル試験を介して評価したところ、50サイクル目の充放電効率は、黒鉛を負極に用いたリチウム二次電池のそれを1とすると、1.12と良好であった。
通常、電極作製時に薄片材料であれば、電極密度を上げるためのプレス処理を行うことで面方向に配向してしまう傾向がある。この場合、カーボンへのリチウムイオンの挿入―脱離の繰り返しによって発生するc軸方向の歪みにより、電極内部の破壊が生じ、サイクル特性が低下する。しかしながら本実施例で得られた上記焼成処理した炭素粒子を用いたリチウム二次電池用の負極は、プレス処理を行って面方向に配向してもa軸方向やb軸方向とc軸方向との電気比抵抗の差が少なく、このことがリチウムイオンの挿入―脱離の繰り返しによって発生するc軸方向の歪みの生起を防ぎ、これが故に充放電サイクル特性の劣化が少ないと考えられる。
【0031】
【実施例4】
本実施例では、出発原料としてトルエン5.0g、主触媒の鉄化合物としてフェロセン0.25g、助触媒としてドデカンチオール0.25g、媒体として二酸化炭素40gを図1に示す製造装置の反応容器102に導入し、温度430℃、圧力25MPaで3時間反応させた。得られた反応生成物(炭素粒子)を分析したところ、形状は実施例1と同様の形状であった。また前記炭素粒子を実施例3におけると同様にして焼成処理し、焼成処理した炭素粒子を用いて、実施例3におけると同様にして、リチウム二次電池を作製した。
得られたリチウム二次電池の充放電効率を充放電サイクル試験をかいして評価した。その結果、該リチウム二次電池の50回目の充放電時のリチウムの吸蔵量は、黒鉛を負極に用いた二次電池のそれを1とすると、1.19と良好であった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、安価な原料から特徴的な外観形状と内部構造を有する炭素粒子からなる炭素粒子を安価に量産でき、該炭素粒子は優れた電子放出性能を有し、電子伝導性が高く、特に二次電池に使用した場合優れた特性を発揮し、二次電池以外の様々なデバイスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の炭素粒子の製造するについて使用する製造装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明で製造した炭素粒子のSEM写真および模式図である。
【図3】本発明で製造した炭素粒子のTEM写真および模式図である。
【図4】本発明で製造した炭素粒子の電子線回折パターンを示す。
【図5】電解電子放出装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図6】電界-電子放出特性を示すグラフである。
【図7】リチウム二次電池の一例の構成を示す概念図である。
【図8】リチウム二次電池の負極として使用する電極構造体の一例の構成を模式的に示す図である。
【図9】水素貯蔵性能評価装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
101 製造装置
102 反応容器
103 ヒーター
104 上部封止部材
105 下部封止部材
106 圧力コントローラー
107 温度検出手段
501 電解電子放出装置
502 ガラス板
503 電極
504 雲母板
505 炭素粒子層
506 真空容器
701 リチウム二次電池
702 負極
703 イオン伝導体
704 正極
705 負極端子
706 正極端子
707 電池ハウジング
801 電極構造体
802 集電体
803 炭素粒子
804 結着剤
805 導電補助剤
806 負極活物質層
900 高圧水素ボンベ
901 水素貯蔵容器
902 炭素粒子充填容器
903 温度コントローラー
904 真空ポンプ
905 圧力計
906 真空計
907 調圧弁
908、909、910、911、912、913 開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノカーボンが集合して形成された1辺0.1μm〜100μmで厚み10nm〜1μmの六角形状の薄片であることを特徴とする炭素粒子。
【請求項2】
前記六角形状の薄片炭素粒子が層状構造を有していることを特徴とする請求項1記載の炭素粒子。
【請求項3】
前記六角形状の薄片炭素粒子の厚み/1辺の長さの比率が1/10〜1/100であることを特徴とする請求項1に記載の炭素粒子。
【請求項4】
前記六角形状の薄片炭素粒子において、複数の六角形状シートが積層されていることを特徴とする請求項2に記載の炭素粒子。
【請求項5】
前記六角形状の薄片炭素粒子は、積層されたグラフェンシートが集合した微小構造を含有していることを特徴とする請求項1に記載の炭素粒子。
【請求項6】
前記グラフェンシート平面は、前記六角形状の薄片平面に対してほぼ垂直であるように配列していることを特徴とする請求項5に記載の炭素粒子。
【請求項7】
前記六角形状の薄片炭素粒子は、結晶格子面間隔0.329〜0.346nm、0.209〜0.219nm、0.199〜0.209nmの各々の結晶格子面を同時に有する微結晶集合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の炭素粒子。
【請求項8】
芳香族炭化水素(イ)と、少なくとも鉄とチオール若しくは鉄化合物とチオール(ロ)と、二酸化炭素、アルコール、エーテル、炭化水素、水、及び不活性ガスからなる群から選択される少なくとも一種の媒体(ハ)とを、2.5MPa乃至60MPaの範囲の圧力と80℃乃至800℃の範囲の温度条件で反応させる工程を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の六角形状薄片炭素粒子の製造方法。
【請求項9】
前記反応の際の前記温度条件及び前記圧力条件は、前記芳香族炭化水素(イ)又は/及び前記媒体(ハ)が超臨界流体若しくは亜臨界流体となる条件であることを特徴とする請求項8に記載の六角形状薄片炭素粒子の製造方法。
【請求項10】
前記(イ)、前記(ロ)及び前記(ハ)を反応させる工程にて得られる生成物を焼成処理することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の六角形状薄片炭素粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−69015(P2008−69015A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−102030(P2003−102030)
【出願日】平成15年4月4日(2003.4.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】