説明

薄膜基板の製造方法

【課題】SCAM(ScAlMgO4:スカンジウム・アルミニウム・マグネシウム・オキサイド)結晶基板の簡便かつ安価な製造方法を提供する。
【解決手段】サファイア(0001)の薄膜成膜用基板1を真空チャンバー内に導入し、導入後に、パルスドレーザー蒸着法によって、フラックスをターゲットとして、薄膜成膜用基板1上にフラックスの薄膜2を作製し、その後スカンジウム(S)、アルミニウム(A)及びマグネシウム(M)を含むSAM成分をターゲットとして、薄膜成膜用基板1をフラックスが溶融する温度で加熱しながら薄膜成膜用基板の薄膜上にSAM成分の薄膜3を積層して、SCAM単結晶膜4を有するSCAM薄膜基板を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エレクトロニクス分野におけるIII−V族窒化物半導体や酸化亜鉛などの薄膜基板を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ScAlMgO(スカンジウム・アルミニウム・マグネシウム・オキサイド)(以下「SCAM」という。)の単結晶薄膜基板は、窒化ガリウム(GaN)をはじめとするIII−V族窒化物半導体薄膜や、青色発光ダイオード及びレーザーダイオードの新しい材料として期待されている酸化亜鉛などと非常に格子整合性が良いことから注目されており、また使用もされてきている。
例えば、SCAM基板上に窒化ガリウムのヘテロエピタキシャル膜を作製すると、このヘテロエピタキシャル膜の特性は現行のサファイア基板を用いた場合と比較し、結晶性や光学特性において優位性があることが知られている(非特許文献1参照)。
また、SCAM基板への酸化亜鉛薄膜のヘテロエピタキシャルを作製した場合においても、従来のサファイア基板では成し得なかった特性が得られることなどが報告されている(非特許文献2参照)。
さらに、SCAM基板上への酸化亜鉛薄膜のヘテロエピタキシャルによって青色発光が観察されたことなども報告され始めている(非特許文献3参照)。
これらの開示技術から、今後、SCAM基板の量産化、大型化、低価格化及び高品質化などが求められることが容易に推測することができる。
しかしながら、SCAM基板の材料となるSCAM単結晶は構成成分が多く、融点が高いこともあって、単結晶育成自体が難しく、高品質化、大型化などは困難を極める。そして、単結晶の原料であるスカンジウムは非常に高価であるため、単結晶及び薄膜成長用基板も高価なものとなっている。また、サファイアなどの単結晶基板に直接SCAMのヘテロエピタキシーをパルスドレーザーデポジション(PLD:Pulse Laser Deposition)法や、モレキュラービームエキタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法などで試みたが、エピタキシャル成長をさせることが困難であった。
【非特許文献1】E.S.Hellman et al, MIJ−NSR Vol.1,Article 1.(1996)
【非特許文献2】A.Ohtomo et al,Appl.Phys.Lett.Vol.75,2635(1999)
【非特許文献3】Atsushi Tsukazaki et al,Nature Material,Vol.4,42,(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SCAM単結晶は、前項で述べたように単結晶の育成や高品質化、大型化、低価格化が非常に難しく、さらに窒化ガリウムのようにサファイア基板などの単結晶基板上へのヘテロエピタキシャル成長も困難である。
本発明の目的は、簡便にかつ安価にSCAM結晶基板を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、全く新しい方法であるフラックス・メディエイデッド・エピタキシー(Flux−Mediated Epitaxy)法を開発し、この方法によって、SCAM結晶表面を持つ薄膜基板の作製が簡便にかつ安価に行えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は、結晶系が三方晶系若しくは六方晶系のC面を有する薄膜成膜用基板又は結晶系が立方晶系の(111)面を有する薄膜成膜用基板上に、酸化スカンジウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムを溶解することできる溶解成分であるフラックスと、スカンジウム、アルミニウム、マグネシウムを含む成分(以下「SAM成分」という。)とを用いて薄膜を形成する成膜工程と、成膜中に又は成膜後に上記フラックスを除く除去工程を備えているものである。
【0006】
本発明は、上記フラックスを用いて成膜してから、上記フラックスが溶融する温度を保ちながらSAM成分を用いて薄膜成膜用基板上に成膜する方法、上記フラックスとSAM成分とを同時に上記フラックスが溶融する温度を保ちながら薄膜成膜用基板上に成膜する方法、上記薄膜成膜用基板上に上記フラックスと、上記SAM成分とをそれぞれ用いて成膜した後に、上記フラックス及びSAM成分の各薄膜を有する薄膜成膜用基板をフラックスが溶融する温度で熱処理する方法、上記薄膜成膜用基板上にフラックスを成膜した後に、フラックスが溶融する温度で熱処理しながらSAM成分を用いて成膜する方法などを含む。
本発明は、上記フラックスを介して目的とするSCAMの薄膜を基板上にエピタキシャル成長させる方法である。
【0007】
本発明に使用する結晶系が三方晶系のC面を有する薄膜成膜用基板として、例えばサファイア(0001)基板などを使用する。また、結晶系が六方晶系のC面を有する薄膜成膜用基板として、例えば酸化亜鉛、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、ランタンアルミネート、ネオジウムアルミネートなどを使用する。さらに、結晶系が立方晶系の(111)面を有する薄膜成膜用基板としては、例えばYSZ、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルミネート(MgAl)、酸化イットリウム、(LaAlO0.3−(SrAl0.5Ta0.50.7(LSAT)、シリコンなどを使用する。
上記薄膜成膜用基板はどの材質でもSCAMの成長が期待できるが、サファイア、YSZ、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウムなどが品質とコストの面で有望である。
本発明は、フラックスと、SAM成分とを用いてフラックスが溶融する温度で成膜するか、又は成膜後に薄膜基板を上記フラックスが溶融する温度で熱処理することにより、フラックスを介して目的とするSCAMの薄膜を薄膜成膜用基板上に成長させる。
【0008】
上記フラックスとしては、酸化鉛、フッ化鉛、酸化ビスマス、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、フッ化アルミニウム、酸化バナジウム、酸化バリウムなどやそれらの混合物から選択されるが、溶解度や蒸気圧、SAM成分との反応性、環境保全の面から酸化ビスマスを含むものが望ましい。また、上記フラックスの蒸気圧、粘度、反応性を有効的に調整するために、フラックスに添加物を添加することが望ましい。
添加物は、亜鉛、アルミニウム、銅、カルシウム又はマグネシウムなどを使用する。添加物として、例えば酸化銅(CuO)をフラックス量の0〜5%添加して成膜を行うことは、SCAM単結晶の薄膜を薄膜成膜用基板上に成長させる観点から望ましい。
成膜工程において使用するターゲットは、フラックスを焼結した焼結体ターゲット、SAM成分の単結晶又は各成分を混合して焼結した焼結体ターゲット、フラックスとSAM成分をそれぞれ所定の比率で酸化物の形で混合して焼結した焼結体ターゲットなどが用いられる。
混合ターゲットにおけるフラックスの混合量は、スカンジウム、アルミニウム、マグネシウムを含む成分の量の1〜15倍程度の範囲が望ましい。この範囲より少ないと、SCAMの成長が不十分になり、上記範囲より多いと、SCAMの成長が遅すぎて生産的でない。混合比率として、フラックスが例えば酸化ビスマス(Bi)であれば、ビスマス:スカンジウム:アルミニウム:マグネシウム=8:1:1:1(Bi:SAM成分=8:1)とすることが、SCAMの薄膜を薄膜成膜用基板上に成長させる観点から望ましい。
本発明において、フラックスと、SAM成分とをそれぞれターゲットとしたり、又はフラックスとSAM成分をそれぞれ混合して焼結した焼結体ターゲットなどを用いて、このターゲット表面に例えばパルスドレーザー光を照射して、ターゲット表面の材料を瞬間的に分離・剥離し、プラズマされた原子や分子を上記薄膜成膜用基板上に堆積させて薄膜を作製する。
SAM成分のターゲットは、上述したようにスカンジウム、アルミニウム及びマグネシウムをそれぞれ所定の比率で酸化物の形で混合して焼結した焼結体であっても、またSCAM単結晶であっても良い。スカンジウム、アルミニウム、マグネシウムの比率を1:1:1よりもスカンジウムを0〜5%の範囲で過剰として添加したり、予め薄膜成膜用基板に成膜しておくことで、エピタキシャル成長し易いマグネシウムアルミネート(MgAl)などの不純物の成長を抑制することができる。
【0009】
本発明は、温度条件や圧力条件、フラックス材やその量などをコントロールすることによって、フラックスと新たに成長したSCAM結晶との界面で溶解と結晶化の過程を可逆的に制御及び促進させ、ついには表面にSCAM結晶薄膜を構成させることを特徴とする製造方法である。
フラックス、SAM成分を用いて成膜する際の基板温度は、成膜後に薄膜基板に対して熱処理を施す実施形態の場合においては、薄膜が堆積する温度であれば特に問わない。しかし、フラックスと、目的とするSAM成分との比率を制御し易くし、さらに成膜の時間短縮につなげる観点からも、SAM成分を用いて成膜する際の温度について、上記フラックスが溶融する温度に設定することが効果的である。成膜時の際の温度、そして成膜後の熱処理の温度としては、フラックスの蒸発や器などとの反応性、設備の面から共晶温度以上共晶温度+500℃程度が望ましい。
また成膜時の上記真空チャンバー内は酸素雰囲気とし、圧力は400〜1300Paが望ましい。
フラックスの除去工程において、基板温度を上記フラックスが溶融する温度に設定し加熱によって蒸発させる方法が望ましいが、加熱によらずに、減圧によって除去したり、溶液により除去する方法などを必要に応じて選択する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フラックスと、SAM成分とを用いて成膜することにより、簡便にかつ安価にSCAM結晶基板を提供することができる。
本発明によれば、III−V族窒化物半導体薄膜や、酸化亜鉛薄膜の格子整合基板として使用することにより、発光デバイスの高品質化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
図1に示す本発明に係る薄膜基板の製造方法において、例えばサファイア(0001)の薄膜成膜用基板1を用い、この基板を前処理後(有機溶剤などによる洗浄をした後)、真空チャンバー内に導入する。導入後に、パルスドレーザー蒸着法(PLD法)によって、フラックスの薄膜2を作製する。フラックスの薄膜2の作製後、SAM成分をターゲットとして、薄膜成膜用基板1をフラックスが溶融する温度で加熱しながら薄膜成膜用基板上にSAM成分の薄膜3を形成することにより、SCAM単結晶膜4を有するSCAM薄膜基板が作製される。
成膜中のフラックスが溶融する温度としては、フラックスなどとの反応性や設備の面から共晶温度以上共晶温度+500℃の範囲が望ましい。
【0012】
図2に示す本発明に係る薄膜基板の製造方法において、薄膜成膜用基板1を前処理してから真空チャンバー内へ導入し、この真空チャンバー内の温度を室温に保ちながらパルスドレーザー蒸着法(PLD法)によって、薄膜成膜用基板1上にフラックスの薄膜2と、SAM成分の薄膜3を積層状態に作製し、作製後に薄膜2,3を有する薄膜成膜用基板1を真空チャンバーより取り出して、フラックスを除去するために、大気中にて所定の共晶温度で熱処理をすることにより、SCAM単結晶膜4を有するSCAM薄膜基板が作製される。
熱処理のための温度は、フラックスなどとの反応性や設備の面から共晶温度以上共晶温度+500℃の範囲が望ましい。
図2では、加熱工程に入る前に、薄膜成膜用基板1のフラックスの薄膜2上にSAM成分の薄膜3が(SAM成分/フラックスの順で)成膜されているが、成膜の順序を逆にしても良い。
また、薄膜成膜用基板1上にフラックスの薄膜2を成膜した後、薄膜2を有する薄膜成膜用基板1を共晶温度以上共晶温度+500℃以下で熱処理をしながら、薄膜2上にSAM成分の薄膜3を積層状態に作製し、SCAM単結晶膜4を有するSCAM薄膜基板を作製しても良い。
【0013】
図3に示すSCAM薄膜基板は、フラックスとSAM成分とを所定比率で混合した混合ターゲットを用い、このような混合ターゲット表面にパルスドレーザー光を照射して、薄膜成膜用基板1上に成膜したものである。
すなわち、フラックスとして例えば酸化ビスマス(Bi)を選択し、ビスマスとSAM成分とを所定比率で混合した焼結体ターゲットを用いる。薄膜成膜用基板1を前処理してから真空チャンバー内へ導入し、導入後に図1に示す製造方法と同様に、この薄膜成膜用基板をフラックスが溶融する温度で加熱しながら、薄膜成膜用基板上にフラックス及びSAM成分に基づく薄膜5を成膜して、SCAM単結晶膜4を有するSCAM薄膜基板を作製する。
【0014】
図4に示す本発明に係る薄膜基板の製造方法は、フラックス例えば酸化ビスマス(Bi)のターゲット、フラックスの添加物例えば酸化銅(CuO)のターゲット及びSAM成分のターゲットを用いてSCAM薄膜基板を作製する。
すなわち、図1に示す製造方法と同様に、薄膜成膜用基板1を前処理してから真空チャンバー内へ導入し、導入後に薄膜成膜用基板上に酸化銅(CuO)の薄膜6を成膜し、この薄膜上にフラックス(酸化ビスマス)の薄膜2を作製し、薄膜成膜用基板をフラックスが溶融する温度で加熱しながら、薄膜2上にSAM成分の薄膜3を成膜することにより、SCAM単結晶膜4を有するSCAM薄膜基板を作製する。
なお、酸化銅(CuO)などを添加した場合には、作製された基板の表面の少量の添加物が残存することがあるので、その場合には溶液処理や研磨などによって除去する。
【0015】
図5に示す本発明に係る薄膜基板の製造方法において、酸化スカンジウム(Sc)の焼結体ターゲット、フラックスである酸化ビスマス(Bi)のターゲット及びSAM成分のターゲットを用いてSCAM薄膜基板を作製する。
すなわち、図1に示す製造方法と同様に、薄膜成膜用基板1を前処理してから真空チャンバー内へ導入し、薄膜成膜用基板上に酸化スカンジウムの薄膜7を成膜した後、この薄膜上にフラックス(酸化ビスマス)の薄膜2を作製する。そして薄膜成膜用基板1を加熱しながら、SAM成分の薄膜3を成膜することにより、SCAM単結晶膜4を有するSCAM薄膜基板を作製する。
【実施例】
【0016】
以下、実施例について、必要に応じて比較例を参照しながら説明する。
実施例1〜13及び比較例1〜6における成膜の評価を表1に示す。
(実施例1)
薄膜成膜用基板にはサファイア単結晶基板(0001)を用いた。薄膜成膜用基板を洗浄後、乾燥し、真空チャンバーに導入した。フラックスには酸化ビスマス(Bi)を用い、添加物として酸化銅(CuO)をフラックス量に対し0〜5%添加した。酸化ビスマス(Bi)及び酸化銅(CuO)の各ターゲットは焼結体を用いた。
SAM成分においては、スカンジウム:アルミニウム:マグネシウム=1:1:1となるように酸化物の形で混合した後、焼結体ターゲットとして用いた。
酸化ビスマス、酸化銅及びSAM成分の各焼結体ターゲットに基づく成膜は、別々に行った。
基板温度をフラックスが溶融する温度に熱して薄膜成膜用基板上に成膜した。成膜温度は共晶温度以上共晶温度+500℃以下の温度範囲で行い、酸素雰囲気で400〜1300Paとなるようにした。
成膜方法は、パルスドレーザー蒸着法(PLD法)を用いた。
成膜順は、上面側から下側に向けてSAM成分/Bi/CuO/サファイアとなるようにして成膜を行った。SAM成分を1μm以下の膜厚だけ成膜した後に、薄膜基板ごと急冷し、これを真空チャンバーより取り出した。
取り出した薄膜基板はX線回折装置を用いてθ・2θスキャンを行った。X線回折測定結果とJCPDSカードのNo.40−1393とを照らし合わせた結果から、表1に示すように、SCAM<001>のピークが確認され、サファイア単結晶基板上にSCAMがエピタキシャルに成長していることが確認された。
【0017】
(比較例1)
実施例1において、フラックスなしで成膜した後、基板のX線回折測定結果によれば、SCAMのピークは観察されなかった。
【0018】
(実施例2)
実施例2では、実施例1において成膜中に行う加熱工程を成膜後に行うものである。
酸化ビスマス、酸化銅及びSAM成分のそれぞれを用いて行う成膜時の温度を室温(約20℃)とし、成膜後に基板を真空チャンバーより取り出してから、大気中にて共晶温度以上共晶温度+500℃の範囲で熱処理をした。
その結果、表1に示すように実施例1と同様にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0019】
(比較例2)
実施例2における熱処理温度を共晶温度よりも低い温度で熱処理を行った。
しかし、表1に示すようにSCAMのエピタキシャル成長が観察されなかった。
【0020】
(比較例3)
実施例2における熱処理温度を共晶温度よりも600℃以上の温度で熱処理した。
しかし、表1に示すようにSCAMのエピタキシャル成長が観察されなかった。
【0021】
(実施例3)
実施例3では、実施例1に示すように各ターゲットを用いて成膜を別々に行うのではなく、酸化ビスマス(Bi)とSAM成分を混合ターゲット(混合比率 Bi: SAM成分=8:1)(Bi&SAM成分)として、上面側から下側に向けてBi&SAM成分/CuO/サファイアとなるようにして成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様にSCAMのエピタキシャル成長が観察され、実施例1よりもSCAM<001>のピーク強度が増加し、さらに実施例1で見られたような目的とするSCAM以外のMgAlや酸化マグネシウムなどのピーク(以下「不純物ピーク」という。)の強度が減少した。
【0022】
(比較例4)
実施例3における混合ターゲットの比率の違うもの(Bi: SAM成分=1:8)を用いた。
しかし、表1に示すように、SCAMのエピタキシャル成長が観察されなかった。
【0023】
(比較例5)
実施例3における基板温度を共晶温度よりも低い温度で成膜を行った。
しかし、表1に示すように、SCAMのエピタキシャル成長が観察されなかった。
【0024】
(実施例4)
実施例1において、スカンジウムを酸化スカンジウム(Sc)の形でSAM成分に対し0〜5%過剰になるように、SAM成分/Bi/CuO/Sc/サファイアの順で成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様にSCAMのエピタキシャル成長が観察され、さらに実施例1で見られたような目的以外の不純物ピークの発生が抑えられた。
【0025】
(比較例6)
実施例4において、スカンジウムをSAM成分に対し10%過剰になるように成膜を行った。
表1に示すように、SCAMのエピタキシャル成長が観察され、実施例1で見られたような目的以外の不純物ピークの発生は抑えられたものの、過剰に加えたSc<111>のエピタキシャル成長が新たに起こっていることが確認された。
【0026】
(実施例5)
実施例3において、スカンジウムを酸化スカンジウム(Sc)の形でSAM成分に対し0〜5%過剰になるように、Bi&SCAM/CuO/Sc/サファイアの順で成膜を行った。
その結果、表1に示すように、実施例1と同様にSCAMのエピタキシャル成長が観察され、さらに実施例3で観察されたような不純物ピークが見られなかった。
【0027】
(実施例6)
実施例3における基板をYSZ(111)に変更して(置き換えて)成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様に基板にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0028】
(実施例7)
実施例3における基板をZnO(0001)に変更して成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様に基板にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0029】
(実施例8)
実施例3における基板をZnO(000−1)に変更して成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様に基板にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0030】
(実施例9)
実施例3における基板をSrTiO(111)に変更して成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様に基板にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0031】
(実施例10)
実施例3における基板をMgO(111)に変更して成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様に基板にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0032】
(実施例11)
実施例1において、フラックスの成膜のみ室温で行い、その後に温度や圧力などの条件を実施例1のそれと同じにして、SAM成分の成膜を行った。
その結果、表1に示すように、実施例1と同様に、基板にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0033】
(実施例12)
実施例2における基板をYSZ(111)に変更したところ、表1に示すように、実施例1と同様にSCAMのエピタキシャル成長が観察された。
【0034】
(実施例13)
実施例3において、成膜順をBi&SAM成分/CuO/Bi&SCAM/サファイアの順で成膜を行った。
表1に示すように、実施例1と同様に、SCAMのエピタキシャル成長が観察され、実施例3よりもSCAM<001>のピーク強度が多少強くなった。
【0035】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態におけるSCAM薄膜基板の製造工程を示す図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態におけるSCAM薄膜基板の製造工程を示す図である。
【図3】本発明に係る第3の実施の形態により製造されたSCAM薄膜基板を示す正面図である。
【図4】本発明に係る第4の実施の形態におけるSCAM薄膜基板の製造工程を示す図である。
【図5】本発明に係る第5の実施の形態におけるSCAM薄膜基板の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 薄膜成膜用基板
2 フラックスの薄膜
3 SAM成分の薄膜
4 SCAM単結晶膜
5 フラックス及びSAM成分に基づく薄膜
6 CuOの薄膜
7 酸化スカンジウムの薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜成膜用基板上に、酸化スカンジウム、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムを溶解することができる溶解成分であるフラックスと、スカンジウム、アルミニウム及びマグネシウムを含む成分とをそれぞれ使用して薄膜を形成する成膜工程と、上記フラックスを除く除去工程を備えており、
上記薄膜成膜用基板は下記(1),(2)のうちから選択される
(1)結晶系が三方晶系又は六方晶系のC面を有するもの
(2)結晶系が立方晶系の(111)面を有するもの
ことを特徴とする薄膜基板の製造方法。
【請求項2】
薄膜成膜用基板上にフラックスを成膜した後に、スカンジウム、アルミニウム及びマグネシウムを含む成分をフラックスが溶融する温度で加熱して成膜することを特徴とする請求項1記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項3】
薄膜成膜用基板上にフラックスと、スカンジウム、アルミニウム及びマグネシウムを含む成分との薄膜を形成した後、上記フラックスが溶融する温度で熱処理することを特徴とする請求項1記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項4】
フラックスと、スカンジウム、アルミニウム、マグネシウムを含む成分とを、上記フラックスが溶融する温度で加熱しながら同時に成膜することを特徴とする請求項1記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項5】
フラックスは、酸化ビスマスを含む成分であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項6】
フラックスに、添加物として酸化銅をフラックス量に対し0〜5%添加することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項7】
成膜時の温度は共晶温度以上共晶温度+500℃範囲であることを特徴とする請求項2、請求項4、請求項5又は請求項6記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項8】
熱処理の温度は共晶温度以上共晶温度+500℃の範囲であることを特徴とする請求項3記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項9】
スカンジウム、アルミニウム及びマグネシウムの成分比を、スカンジウム:アルミニウム:マグネシウム=1:1:1として成膜することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項10】
スカンジウム、アルミニウム及びマグネシウムの成分比を、化学量論組成であるスカンジウム:アルミニウム:マグネシウム=1:1:1よりスカンジウムの成分を0〜5%の範囲で過剰として成膜することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項11】
結晶系が三方晶系である薄膜成膜用基板は、酸化アルミニウム(サファイア)単結晶(0001)面を有する基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項12】
結晶系が六方晶系である薄膜作成用基板は、酸化亜鉛単結晶(0001)及び(000−1)面を有する基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。
【請求項13】
結晶系が立方晶系である薄膜作成用基板は、下記(1),(2),(3)のうちから選択される
(1)イットリウムドープ安定化ジルコニア(YSZ)(111)面を有する基板
(2)チタン酸ストロンチウム(111)面を有する基板
(3)酸化マグネシウム(111)面を有する基板
であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の薄膜基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−246354(P2007−246354A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73731(P2006−73731)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(391049530)株式会社信光社 (14)
【Fターム(参考)】