説明

薬物の組み合わせを投与するための治療法

本発明は、組み合わせの薬物の一つが徐放用に製剤されるか、または反復投与される、組み合わせ療法投与のための投薬法、およびそれに関連する組成物を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は組み合わせ療法投与のための投薬法に関する。
【0002】
組み合わせ療法とは、疾患もしくは障害、または、2つまたはそれより多い共存症状態を治療するための、2つまたはそれより多い薬物の投与を意味する。組み合わせの各成分が他の成分とは独立に作用する場合もあれば、2つの薬物が組み合わせ様式で、例えば相乗的に作用し、2つの薬物の重複しない様式での投与では達成されない結果を生成する場合もあり得る。
【0003】
前述したことにもかかわらず、後者のカテゴリーに分類される組み合わせ療法は、異なる薬物動態特性(例えば、異なるTmax時間)を有する薬物を含む場合もある。これらの場合には、組み合わせ療法の完全な利益は実現されていない。
【0004】
したがって、組み合わせ療法のより良い方法の開発が望まれる。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
第一の局面において、本発明は薬物の組み合わせの有効性を増強する方法を特徴とする。この方法は、i)第一の薬物を、第一の薬物の有効な血漿濃度を時間Tlの間生成するために十分な量投与する段階、および、ii)第二の薬物を、第二の薬物の有効な血漿濃度を時間Tlの少なくとも70%の間生じるのに十分な様式で投与する段階を含む。望ましくは、第二の薬物を、第二の薬物の有効な血漿濃度を時間Tlの少なくとも75%、80%、85%、またはさらには90%の間生成するために十分な様式で投与する。任意で、第二の薬物の一部もしくはすべてを徐放用に製剤し、かつ/または第二の薬物を時間Tlの間に複数回投与する。
【0006】
本発明は薬物の組み合わせの投与方法も特徴とする。この方法は、徐放用に製剤されていない第一の薬物および徐放用に製剤された第二の薬物を同時、または互いに30分以内に投与する段階を含み、ただし第二の薬物が徐放用に製剤されなかった場合Tmax1>Tmax2であるとの条件下で、a)第一の薬物はTmax1で最大血漿濃度を生成し、b)第二の薬物はTmax2で最大血漿濃度を生成し、かつc)Tmax2はTmax1と等しいかTmax1より大きい。
【0007】
本発明は、三環系化合物、SSRI、SNRI、NsIDI、抗ヒスタミン剤、および四置換ピリミドピリミジンから選択される第一の薬物;および徐放用に製剤された第二の薬物とを含む単位剤形を含む薬学的組成物もさらに特徴とする。
【0008】
本発明は(a)徐放用に製剤されていない第一の薬物、(b)徐放用に製剤された第二の薬物、および(c)第一の薬物および第二の薬物を同時、または互いに30分以内に投与するための取扱説明書を含むキットを特徴とする。
【0009】
前述の方法、組成物、およびキットにおいて、第一または第二の薬物は望ましくは三環系化合物、SSRI、SNRI、NsIDI、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、または四置換ピリミドピリミジンである。
【0010】
前述のいかなる方法、組成物、およびキットにおいても、第一の薬物および第二の薬物を任意に単位剤形中において共に製剤する。単位剤形には、例えば、徐放用に製剤されていない第一の薬物を含む第一層および徐放用に製剤された第二の薬物を含む第二層を有する二層錠が含まれる。単位剤形はまた、徐放用に製剤された第二の薬物を含む内部コアおよび徐放用に製剤されていない第一の薬物を含む外部コートを有する錠剤であってもよい。さらに、単位剤形は徐放用に製剤された第二の薬物を含むビーズおよび徐放用に製剤されていない第一の薬物を含むビーズを有するカプセル剤であってもよい。
【0011】
本明細書に記載のいかなる単位剤形も、徐放用に製剤されていない第二の薬物をさらに含んでもよい。
【0012】
前述のいかなる方法、組成物、およびキットにおいても、アモキサピンとプレドニゾロンとの組み合わせ、またはノルトリプチリンとブデソニドとの組み合わせのように、第一の薬物が三環系化合物であり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドであってもよく;パロキセチンとプレドニゾロンとの組み合わせのように、第一の薬物がSSRIであり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドであってもよく;第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンなどのコルチコステロイドであってもよく;シクロスポリンAとロラタジンとの組み合わせのように、第一の薬物がNsIDIであり、かつ第二の薬物が抗ヒスタミン剤であってもよく;または、第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がロラタジンなどの抗ヒスタミン剤であってもよい。
【0013】
組成物はいかなる投与経路用にも製剤することができる。例えば、ノルトリプチリンとブデソニドとの組み合わせを吸入用に製剤することができる。望ましくは、組み合わせを経口投与用に製剤する。
【0014】
本発明において有用な化合物には、それらのジアステレオマーおよび鏡像異性体などの異性体、塩、エステル、溶媒和物、および多形、ならびに本明細書に記載の化合物のラセミ混合物および純粋な異性体を含む、薬学的に許容される任意の形態の、本明細書に記載の化合物が含まれる。
【0015】
本発明は、本明細書に記載の組成物もしくはキットに対するインビボ試験を行う、もしくは計画する会社、または本明細書に記載の組成物もしくはキットを販売する、もしくは販売を計画する会社における投資を促進する方法を特徴とする。この方法は、組成物またはキットの同一性、治療上の使用、毒性、有効性、または政府による認可の予定日に関する情報を普及させる段階を含む。
【0016】
本発明はまた、本明細書に記載の治療方法に対するインビボ試験を行う、または計画する会社における投資を促進する方法も特徴とする。投資を促進する方法は、治療方法の投薬法、毒性、有効性、または政府による認可の予定日に関する情報を普及させる段階を含む。
【0017】
本明細書において用いられる「同一性」とは、本明細書に記載の組成物、キット、または方法の同一性を伝えることが意図される識別子(identifier)を意味する。識別子には、例えば、構造、図表(diagram)、図(figure)、化学名、一般名、商品名、式、参照ラベル、または組成物、キット、もしくは方法の同一性を人に伝える任意の他の識別子が含まれうる。
【0018】
「インビボ試験」とは、例えば、毒性および有効性に関するデータを収集するための非臨床試験、ならびに臨床試験を含むがそれらに限定されない、本発明の組成物、キット、または方法を哺乳動物に投与する、いかなる試験をも意味する。
【0019】
「政府による認可の予定日」とは、会社が本発明の組成物、キット、または方法を、例えば、患者、医師、または病院に販売するための、政府機関からの認可を受けるいかなる予定日も意味する。政府による認可には、例えば、特に食品医薬品局(Food and Drug Administration)による薬物適用の認可が含まれる。
【0020】
「SSRI」とは、(i)中枢神経系のニューロンによるセロトニンの取り込みを阻害し、(ii)10nMまたはそれより小さい阻害定数(Ki)を有し、かつ(iii)セロトニンを超えるノルエピネフリンの選択性(すなわちKi(セロトニン)に対するKi(ノルエピネフリン)の比)が100よりも大きい化合物のクラスのいかなるメンバーも意味する。
【0021】
典型的には、SSRIは抗うつ薬として用いる場合には、1日あたり10mgよりも多い用量で投与する。本発明において用いる例示的SSRIを本明細書に記載する。
【0022】
「コルチコステロイド」とは、水素化シクロペンタノペルヒドロフェナントレン環系によって特徴付けられ、免疫抑制および/または抗炎症活性を有する、いかなる天然または合成化合物をも意味する。天然のコルチコステロイドは一般的に副腎皮質によって生成される。合成コルチコステロイドはハロゲン化されていてもよい。コルチコステロイドの例を本明細書において提供する。
【0023】
「非ステロイド性イムノフィリン依存性免疫抑制剤」または「NsIDI」とは、炎症誘発性サイトカインの生成または分泌を低下させる、イムノフィリンに結合する、または炎症性反応の下方制御を引き起こす、任意の非ステロイド性物質を意味する。NsIDIには、シクロスポリン、タクロリムス、アスコマイシン、ピメクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤、ならびにカルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害する他の薬物(ペプチド、ペプチド断片、化学修飾されたペプチド、またはペプチド模倣物)が含まれる。NsIDIにはラパマイシン(シロリムス)およびエベロリムスも含まれ、これらはFK506結合タンパク質であるFKBP-12に結合し、白血球の抗原誘導性増殖およびサイトカイン分泌を阻止する。
【0024】
「治療」とは、疾患または障害の治療または予防のために薬学的組成物を投与または処方することを意味する。
【0025】
「患者」とは、任意の哺乳動物(例えば、ヒト)を意味する。
【0026】
「有効な血漿濃度」とは、本発明の組み合わせにおける、患者の血漿中の薬物濃度が、臨床上関連する様式で疾患または障害を治療または予防するのに必要とされる範囲内にあることを意味する。本発明の実施に用いる活性化合物の、例えば、免疫炎症疾患によって引き起こされる、または免疫炎症疾患に寄与する状態を治療するために十分な量は、投与の様式、患者の年齢、体重、および全身の健康状態に依存して変動する。最終的に、処方者が適切な量および投与法を決定する。加えて、有効量は、規制当局(米国食品医薬品局など)によって決定され、かつ認可された各薬物単独よりも、疾患または障害を有する患者の治療において安全でかつ効果的な、本発明の組み合わせにおける化合物の量でありうる。
【0027】
「増強する」または「増強」とは、治療が、同一の活性成分を採用するが本発明の組成物または方法を用いない治療と比較して、より高い有効性を示し、またはより毒性が低く、またはより安全であることを意味する。有効性は、当技術分野の当業者により、所与の適応に適切な任意の標準的方法を用いて測定することができる。
【0028】
「免疫炎症性障害」という用語は、自己免疫疾患、増殖性皮膚疾患、および炎症性皮膚疾患を含む、様々な状態を含む。免疫炎症性障害は、炎症過程、免疫系の調節不全、および細胞の望ましくない増殖によって健康な組織の破壊をきたす。免疫炎症性障害の例は、尋常性ざ瘡;急性呼吸困難症候群;アジソン病;アレルギー性鼻炎;アレルギー性眼内炎症性疾患、ANCA関連小血管血管炎;強直性脊椎炎;関節炎、喘息;アテローム性動脈硬化症;アトピー性皮膚炎;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性肝炎;ベーチェット病;ベル麻痺;類天疱瘡;脳虚血;硬変;慢性閉塞性肺疾患;コーガン症候群;接触皮膚炎;COPD;クローン病;クッシング症候群;皮膚筋炎;糖尿病;円板状エリテマトーデス;好酸球性筋膜炎;結節性紅斑;剥脱性皮膚炎;線維筋痛;巣状糸球体硬化症;巨細胞動脈炎;痛風;痛風性関節炎;移植片対宿主病;手湿疹;ヘノッホ-シェーンライン紫斑病;妊娠性疱疹;多毛;特発性角膜-強膜炎;特発性肺線維症;特発性血小板減少性紫斑病;炎症性腸または胃腸障害、炎症性皮膚疾患;扁平苔癬;ループス腎炎;リンパ腫性気管気管支炎;黄斑性浮腫;多発性硬化症;重症筋無力症;筋炎;骨関節炎;膵炎;妊娠性類天疱瘡;尋常性天疱瘡;歯周病;結節性多発性動脈炎;リウマチ性多発性筋痛;陰嚢そう痒症;心因性そう痒症/炎症、乾癬;乾癬性関節炎;慢性関節リウマチ;再発性多発性軟骨炎;サルコイドーシスが原因の酒さ;強皮症が原因の酒さ;スイート症候群が原因の酒さ;全身性エリテマトーデスが原因の酒さ;じんま疹が原因の酒さ;帯状疱疹関連疼痛が原因の酒さ;サルコイドーシス;強皮症;分節性糸球体硬化症;敗血症性ショック症候群;肩腱炎または滑液包炎;シェーグレン症候群;スティル病;発作誘導性脳細胞死;スイート病;全身性エリテマトーデス;全身性硬化症;高安動脈炎;側頭動脈炎;中毒性表皮壊死症;結核;1型糖尿病;潰瘍性大腸炎;ブドウ膜炎;血管炎;ならびにヴェグナー肉芽腫症である。
【0029】
「非皮膚炎症性障害」には、例えば、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、および慢性閉塞性肺疾患が含まれる。
【0030】
「皮膚炎症性障害」または「炎症性皮膚疾患」には、例えば、乾癬、急性熱性好中球皮膚疾患、湿疹(例えば、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、小水疱性掌蹠湿疹)、形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、ベーチェット病、遠心性環状紅斑、素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、扁平苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、貨幣状皮膚炎、壊疽性膿皮症、サルコイドーシス、角層下膿疱症、じんま疹、および一過性棘細胞離開性皮膚病が含まれる。
【0031】
「増殖性皮膚疾患」とは、表皮または真皮における細胞分裂の加速によって特徴付けられる良性または悪性疾患を意味する。増殖性皮膚疾患の例は乾癬、アトピー性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、皮膚の基底細胞および扁平上皮癌、葉状魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖、前悪性角化症、ざ瘡、および脂漏性皮膚炎である。
【0032】
当業者に理解されるとおり、特定の疾患、障害、または状態が、増殖性皮膚疾患および炎症性皮膚疾患の双方であると特徴付けられることもある。そのような疾患の例は乾癬である。
【0033】
「徐放」とは、ヒトへ投与した際に、薬物の有効な血漿濃度が、徐放用に製剤されていない同一薬物の、他は同一の条件下で投与した際の有効な血漿濃度が維持される期間の150%、200%、300%、400%、またはさらには500%よりも長い期間維持されるような、制御された速度での放出用に製剤された薬物を意味する。
【0034】
「徐放用に製剤されていない」とは、製剤中に存在する賦形剤のどの一つを除去しても、ヒトへ投与した際に薬物の有効な血漿濃度が維持される期間を50%を上回って変更することができない、いかなる製剤をも意味する。
【0035】
「Cmax」とは、投与した薬物で観察される血漿濃度の最大値を意味する。
【0036】
「Tmax」とは、時間=0に薬物を投与した後にCmaxが起こる時間を意味する。
【0037】
本明細書において用いられる「時間Tlの間」とは、薬物が有効な血漿濃度を有する期間の長さを意味する。特定の薬物に対して、投与量、生物学的利用(bioavailability)、および排出半減期に応じて、時間Tlは30分と短いこともあれば、7日と長いこともある。典型的には、時間Tlは30分から24時間の間である。
【0038】
本明細書において用いられる「十分な様式で投与する」とは、共に投与する別の薬物の薬物動態特性により密接に合致させるための、薬物の投与量、投与法、または製剤における変化を意味する。
【0039】
本発明の組成物および方法は、組み合わせの薬物の薬物動態特性の重なりが不十分な、薬物の組み合わせの有効性を増強するために有用である。本発明の方法および組成物は、組み合わせ療法のために投与する各薬物が、2つの薬物が共に治療上より有効となる量で、被験者の血漿中において同時に存在する期間を増加させるように設計される。
【0040】
本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0041】
詳細な説明
本発明は薬物の組み合わせの有効性を増強するための方法、組成物、およびキットを提供する。薬物の一つが徐放用に製剤されているか、または反復投与される、薬物の組み合わせの投与は、組み合わせの有効性を改善するために各薬物の薬物動態特性を改変しなければならない場合に有用である。本発明の製剤においては、例えば、いずれかの薬物が単独投与される場合と比較して2つの薬物が共に治療上より有効となる量で、被験者の血漿中において各薬物が同時に存在する期間を増加させるために、薬物動態特性を改変する。徐放製剤は、双方の薬物の血漿レベルを治療レベルで持続させるために必要とされうる高頻度の投与を避けるために用いることができる。
【0042】
例えば、二層錠をSSRI/ステロイドの組み合わせのために製剤することができ、この場合、組み合わせの各薬物について異なる個別の造粒を行い、2つの薬物を二層圧縮機上で圧縮して1個の錠剤を形成する。例えば、パロキセチンt1/2が15から20時間となる徐放用に製剤されたパロキセチン12.5mg、25mg、37.5mg、または50mgを、t1/2がパロキセチンのt1/2に近似するように製剤したプレドニゾロン3mgと同一の錠剤中で組み合わせてもよい。二層錠で用いられるものを含む、パロキセチンの長期放出製剤の例は、米国特許第6,548,084号において見出すことができる。プレドニゾロンのインビボでの放出速度を制御することに加えて、プレドニゾロンのTmaxがパロキセチンのTmax(すなわち、5から10時間)に近似するように薬物放出の開始を遅らせる、腸溶または遅延放出コートが含まれてもよい。
【0043】
本発明を以下により詳細に記載する。
【0044】
組み合わせ療法
SSRIまたはSNRIと、コルチコステロイドとの組み合わせ
2003年9月24日出願の「Methods and Reagents for the Treatment of Diseases and Disorders Associated with Increased Levels of Proinflammatory Cytokines」なる標題の米国特許出願第10/670,488号に記載のとおり、免疫炎症障害の治療のために、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)または選択的セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)を、コルチコステロイドとの組み合わせで投与することができる。この出願はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0045】
NsIDIと抗ヒスタミン剤との組み合わせ
2004年2月12日出願の「Combination Therapy for the Treatment of Immunoinflammatory Disorders」なる標題の米国特許出願第10/777,518号に記載のとおり、免疫炎症障害の治療のために、非ステロイド性イムノフィリン依存性免疫抑制剤(NsIDI)を抗ヒスタミン剤との組み合わせで投与することができる。この出願はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0046】
三環系化合物とコルチコステロイドとの組み合わせ
2003年11月13日出願の「Methods and Reagents for the Treatment of Diseases and Disorders Associated with Increased Levels of Proinflammatory Cytokines」なる標題の特許仮出願第60/520,446号に記載のとおり、免疫炎症障害の治療のために、三環系化合物をコルチコステロイドとの組み合わせで投与することができる。この出願はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0047】
ジピリダモールとコルチコステロイドとの組み合わせ
2002年10月4日出願の「Combinations for the Treatment of Immunoinflammatory Disorders」なる標題の米国特許出願第10/264,991号に記載のとおり、免疫炎症障害の治療のために、ジピリダモールおよび他の四置換ピリミドピリミジンをコルチコステロイドとの組み合わせで投与することができる。この出願はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0048】
ジピリダモールと抗ヒスタミン剤との組み合わせ
2003年10月15日出願の「Methods and Reagents for the Treatment of Diseases and Disorders Associated with Increased Levels of Proinflammatory Cytokines」なる標題の特許仮出願第60/512,415号に記載のとおり、免疫炎症障害の治療のために、ジピリダモールおよび四置換ピリミドピリミジンを抗ヒスタミン剤との組み合わせで投与することができる。この出願はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0049】
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて有用な様々な薬物のためのTmaxおよび排出半減期のデータを下記の表1に示す。パロキセチン/プレドニゾロンおよびアモキサピン/プレドニゾロンを除き、これらのデータは単剤療法で投与した各薬物の薬物動態パラメーターを反映している。
【0050】
(表1)

1. 図1に示すPK試験からのデータ。
2. 図2に示すPK試験からのデータ。
【0051】
SSRIおよびSNRI
本発明の方法、組成物、およびキットには、SSRI、またはその構造もしくは機能類縁体を採用してもよい。適切なSSRIには、セリクラミン(例えば、塩酸セリクラミン);シタロプラム(例えば、臭化水素酸シタロプラム);クロボキサミン;シアノドチエピン(cyanodothiepin);ダポキセチン;エスシタロプラム(シュウ酸エスシタロプラム);フェモキセチン(例えば、塩酸フェモキセチン);フルオキセチン(例えば、塩酸フルオキセチン);フルボキサミン(例えば、マレイン酸フルボキサミン);イフォキセチン(ifoxetine);インダルピン(例えば、塩酸インダルピン);インデロキサジン(例えば、塩酸インデロキサジン);リトキセチン;ミルナシプラン(例えば、塩酸ミルナシプラン);パロキセチン(例えば、塩酸パロキセチン0.5水和物;マレイン酸パロキセチン;パロキセチンメシレート);セルトラリン(例えば、塩酸セルトラリン);塩酸タメトラリン;ビクアリン(viqualine);およびジメルジン(例えば、塩酸ジメルジン)が含まれる。
【0052】
SSRIの機能類縁体も、本発明の方法、組成物、およびキットにおいて用いることができる。例示的なSSRI機能類縁体を以下に示す。SSRI類縁体の一つのクラスはSNRI(選択的セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤)で、これには、ベンラファキシン、デュロキセチン、および4-(2-フルオロフェニル)-6-メチル-2-ピペラジノチエノ[2,3-d]ピリミジンが含まれる。
【0053】
例示的SSRIの標準推奨用量を下記の表2に提供する。他の標準用量は、例えば、Merck Manual of Diagnosis & Therapy (17th Ed. MH Beers et al., Merck & Co.)およびPhysicians' Desk Reference 2003 (57th Ed. Medical Economics Staff et al., Medical Economics Co., 2002)に提供されている。
【0054】
(表2)

【0055】
一般的に、ヒトに経口投与する場合、SSRIの用量は通常は1日当たり約0.001mgから200mg、望ましくは1日当たり約1mgから100mg、より望ましくは1日当たり約5mgから50mgである。1日当たり200mgにのぼる用量が必要なこともある。SSRIの注射による投与については、用量は通常1日当たり約1mgから250mg、望ましくは1日当たり約5mgから200mg、より望ましくは1日当たり約10mgから150mgである。注射は望ましくは1日に1回から4回投与される。
【0056】
ヒトに全身投与する場合、SSRIとの組み合わせで用いるためのコルチコステロイドの用量は、通常1日当たり約0.1mgから1500mg、望ましくは1日当たり約0.5mgから10mg、より望ましくは1日当たり約0.5mgから5mgである。
【0057】
コルチコステロイド
本発明の方法、組成物、およびキットにはコルチコステロイドを採用してもよい。適切なコルチコステロイドには以下が含まれる:11-α、17-α、21-トリヒドロキシプレグン-4-エン-3,20-ジオン;11-β、16-α、17,21-テトラヒドロキシプレグン-4-エン-3,20-ジオン;11-β、16-α、17,21-テトラヒドロキシプレグン-1,4-ジエン-3,20-ジオン;11-β、17-α、21-トリヒドロキシ-6-α-メチルプレグン-4-エン-3,20-ジオン;11-デヒドロコルチコステロン;11-デオキシコルチゾール;11-ヒドロキシ-1,4-アンドロスタジエン-3,17-ジオン;11-ケトテストステロン;14-ヒドロキシアンドロスト-4-エン-3,6,17-トリオン;15,17-ジヒドロキシプロゲステロン;16-メチルヒドロコルチゾン;17,21-ジヒドロキシ-16-α-メチルプレグナ-1,4,9(11)-トリエン-3,20-ジオン;17-α-ヒドロキシプレグン-4-エン-3,20-ジオン;17-α-ヒドロキシプレグネノロン;17-ヒドロキシ-16-β-メチル-5-β-プレグン-9(11)-エン-3,20-ジオン;17-ヒドロキシ-4,6,8(14)-プレグナトリエン-3,20-ジオン;17-ヒドロキシプレグナ-4,9(11)-ジエン-3,20-ジオン;18-ヒドロキシコルチコステロン;18-ヒドロキシコルチゾン;18-オキソコルチゾール;21-デオキシアルドステロン;21-デオキシコルチゾン;2-デオキシエクジソン;2-メチルコルチゾン;3-デヒドロエクジソン;4-プレグネン-17-α、20-β、21-トリオール-3,11-ジオン;6,17,20-トリヒドロキシプレグン-4-エン-3-オン;6-α-ヒドロキシコルチゾール;6-α-フルオロプレドニゾロン、6-α-メチルプレドニゾロン、6-α-メチルプレドニゾロン21-アセテート、6-α-メチルプレドニゾロン21-ヘミスクシネートナトリウム塩、6-β-ヒドロキシコルチゾール、6-α、9-α-ジフルオロプレドニゾロン21-アセテート17-ブチレート、6-ヒドロキシコルチコステロン;6-ヒドロキシデキサメタゾン;6-ヒドロキシプレドニゾロン;9-フルオロコルチゾン;アルクロメタゾンジプロピオネート;アルドステロン;アルゲストン;アルファダーム;アマジノン;アムシノニド;アナゲストン;アンドロステンジオン;酢酸アネコルタブ;ベクロメタゾン;ベクロメタゾンジプロピオネート;ベクロメタゾンジプロピオネート一水和物;ベタメタゾン17-バレレート;ベタメタゾンナトリウムアセテート;ベタメタゾンナトリウムホスフェート;吉草酸ベタメタゾン;ボラステロン;ブデソニド;カルステロン;クロルマジノン;クロロプレドニゾン;酢酸クロロプレドニゾン;コレステロール;クロベタゾール;プロピオン酸クロベタゾール;クロベタゾン;クロコルトロン;ピバル酸クロコルトロン;クロゲストン;クロプレドノール;コルチコステロン;コルチゾール;酢酸コルチゾール;酪酸コルチゾール;コルチゾールシピオネート;オクタン酸コルチゾール;コルチゾールナトリウムホスフェート;コルチゾールナトリウムスクシネート;吉草酸コルチゾール;コルチゾン;酢酸コルチゾン;コルトドキソン;ダツラオロン;デフラザコート、21-デオキシコルチゾール、デヒドロエピアンドロステロン;デルマジノン;デオキシコルチコステロン;デプロドン;デスシノロン;デソニド;デスオキシメタゾン;デキサフェン;デキサメタゾン;デキサメタゾン21-アセテート;酢酸デキサメタゾン;デキサメタゾンナトリウムホスフェート;ジクロリゾン;ジフロラゾン;ジフロラゾンジアセテート;ジフルコルトロン;ジヒドロエラテリシンa;ドモプレドネート;ドキシベタゾール;エクジソン;エクジステロン;エンドリゾン;エノキソロン;フルシノロン;フルドロコルチゾン;酢酸フルドロコルチゾン;フルゲストン;フルメタゾン;ピバル酸フルメタゾン;フルモキソニド;フルニソリド;フルオシノロン;フルオシノロンアセトニド;フルオシノニド;9-フルオロコルチゾン;フルオコルトロン;フルオロヒドロキシアンドロスエンジオン;フルオロメトロン;酢酸フルオロメトロン;フルオキシメステロン;フルプレドニデン;フルプレドニゾロン;フルランドレノリド;フルチカゾン;プロピオン酸フルチカゾン;フォルメボロン;フォルメスタン;フォルモコータル;ゲストノロン;グリデリニン;ハルシノニド;ヒルカノシド;ハロメタゾン;ハロプレドン;ハロプロゲステロン;ヒドロコルチゾンシピオネート;ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾン21-ブチレート;ヒドロコルチゾンアセポネート;酢酸ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾンブテプレート;酪酸ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾンシピオネート;ヒドロコルチゾンヘミスクシネート;ヒドロコルチゾンプロブテート;ヒドロコルチゾンナトリウムホスフェート;ヒドロコルチゾンナトリウムスクシネート;吉草酸ヒドロコルチゾン;ヒドロキシプロゲステロン;イノコステロン;イソフルプレドン;酢酸イソフルプレドン;イソプレドニデン;メクロリゾン;メコルトロン;メドロゲストン;メドロキシプロゲステロン;メドリゾン;メゲストロール;酢酸メゲストロール;メレンゲストロール;メプレドニゾン;メタンドロステノロン;メチルプレドニゾロン;メチルプレドニゾロンアセポネート;酢酸メチルプレドニゾロン;メチルプレドニゾロンヘミスクシネート;メチルプレドニゾロンナトリウムスクシネート;メチルテストステロン;メトリボロン;モメタゾン;モメタゾンフロエート;モメタゾンフロエート一水和物;ニゾン;ノメゲストロール;ノルゲストメット;ノルビニステロン;オキシメステロン;パラメタゾン;酢酸パラメタゾン;ポナステロン;プレドニゾラメート;プレドニゾロン;プレドニゾロン21-ヘミスクシネート;酢酸プレドニゾロン;プレドニゾロンファルネシレート;プレドニゾロンヘミスクシネート;プレドニゾロン-21(β-D-グルクロニド);プレドニゾロンメタスルフォベンゾエート;プレドニゾロンナトリウムホスフェート;プレドニゾロンステアグレート;プレドニゾロンテブテート;プレドニゾロンテトラヒドロフタレート;プレドニゾン;プレドニバル;プレドニリデン;プレグネノロン;プロシノニド;トラロニド;プロゲステロン;プロメゲストン;ラポンティステロン;リメキソロン;ロキシボロン;ルブロステロン;スティゾフィリン;ティキソコルトール;トプテロン;トリアムシノロン;トリアムシノロンアセトニド;トリアムシノロンアセトニド21-パルミテート;トリアムシノロンジアセテート;トリアムシノロンヘキサアセトニド;トリメゲストン;トゥルケステロン;およびウォルトマンニン。
【0058】
様々なステロイド/疾患の組み合わせに対する標準推奨用量を下記の表3に示す。
【0059】
(表3)コルチコステロイド標準推奨用量

【0060】
コルチコステロイドの他の標準推奨用量は、例えば、Merck Manual of Diagnosis & Therapy (17th Ed. MH Beers et al., Merck & Co.)およびPhysicians' Desk Reference 2003 (57th Ed. Medical Economics Staff et al., Medical Economics Co., 2002)に提供されている。一つの態様において、投与するコルチコステロイドの用量は本明細書において定義されるプレドニゾロン用量に等価な用量である。例えば、コルチコステロイドの低用量はプレドニゾロンの低用量と等価な用量であると考えることができる。
【0061】
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて、ステロイド受容体調節物質(例えば、アンタゴニストおよびアゴニスト)を、コルチコステロイドの代わりに、またはコルチコステロイドに加えて用いてもよい。したがって、一つの態様において、本発明はSSRI(またはその類縁体もしくは代謝産物)とグルココルチコイド受容体調節物質または他のステロイド受容体調節物質との組み合わせ、およびそれによる免疫炎症障害の治療方法を特徴とする。
【0062】
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて用いることができるグルココルチコイド受容体調節物質には、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,380,207号、第6,380,223号、第6,448,405号、第6,506,766号、および第6,570,020号、米国特許公報第20030176478号、第20030171585号、第20030120081号、第20030073703号、第2002015631号、第20020147336号、第20020107235号、第20020103217号、および第20010041802号、ならびにPCT国際公開公報第00/66522号に記載される化合物が含まれる。他のステロイド受容体調節物質もまた、本発明の方法、組成物、およびキットにおいて用いることができ、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,093,821号、第6,121,450号、第5,994,544号、第5,696,133号、第5,696,127号、第5,693,647号、第5,693,646号、第5,688,810号、第5,688,808号、および第5,696,130号に記載されている。
【0063】
NsIDI
本発明の方法、組成物、およびキットには非ステロイド性イムノフィリン依存性免疫抑制剤(NsIDI)を用いてもよい。
【0064】
NsIDIにはカルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス)、およびラパマイシンが含まれる。
【0065】
シクロスポリン
シクロスポリンは、免疫抑制剤として作用する環状オリゴペプチド類を含む真菌代謝物である。シクロスポリンA、およびその重水素化類縁体ISAtx247は、11アミノ酸からなる疎水性環状ポリペプチドである。シクロスポリンAは細胞内受容体シクロフィリンと結合して複合体を形成する。シクロスポリン/シクロフィリン複合体はCa2+-カルモジュリン依存性セリン-トレオニン特異的タンパク質ホスファターゼであるカルシニューリンに結合し、これを阻害する。カルシニューリンはT細胞活性化に必要なシグナル伝達事象を仲介する(Schreiber et al., Cell 70:365-368, 1991に総説掲載)。シクロスポリンならびにそれらの機能構造類縁体は、抗原誘発性シグナル伝達を阻害することにより、T細胞依存性免疫応答を抑制する。この阻害はIL-2などの炎症誘発性サイトカインの発現を低下させる。
【0066】
多くのシクロスポリン(例えば、シクロスポリンA、B、C、D、E、F、G、H、およびI)が真菌によって産生される。シクロスポリンAはNovartisからNEORALの商標で市販されている。シクロスポリンAの構造および機能類縁体には、一つまたは複数のフッ素化アミノ酸を有するシクロスポリン(例えば、米国特許第5,227,467号に記載);修飾アミノ酸を有するシクロスポリン(例えば、米国特許第5,122,511号および第4,798,823号に記載);ならびにISAtx247などの重水素化シクロスポリン(米国特許公報第20020132763号に記載)が含まれる。その他のシクロスポリン類縁体は米国特許第6,136,357号、4,384,996号、第5,284,826号、および第5,709,797号に記載されている。シクロスポリン類縁体には、D-Sar(α-SMe)3Val2-DH-Cs (209-825)、Allo-Thr-2-Cs、Norvaline-2-Cs、D-Ala(3-アセチルアミノ)-8-Cs、Thr-2-Cs、およびD-MeSer-3-Cs、D-Ser(O-CH2CH2-OH)-8-Cs、およびD-Ser-8-Csが含まれるが、これらに限定されることはなく、これらはCruz et al. (Antimicrob. Agents Chemother. 44:143-149, 2000)に記載されている。
【0067】
シクロスポリンは疎水性が高く、水存在下で(例えば、体液と接触すると)容易に沈殿する。バイオアベイラビリティが改善されたシクロスポリン製剤を提供する方法は、米国特許第4,388,307号、6,468,968号、5,051,402号、5,342,625号、5,977,066号、および6,022,852号に記載されている。シクロスポリンマイクロエマルジョン組成物は、米国特許第5,866,159号、5,916,589号、5,962,014号、5,962,017号、6,007,840号、および6,024,978号に記載されている。
【0068】
シクロスポリンは静脈内または経口のいずれでも投与することができるが、経口投与が好ましい。シクロスポリンAの疎水性に対抗するために、静脈内用シクロスポリンAは通常、エタノール-ポリオキシエチル化ヒマシ油媒体中で提供され、投与前に希釈しなければならない。シクロスポリンAは、例えば、25mgもしくは100mg錠のマイクロエマルジョンとして、または100mg/ml経口溶液(登録商標NEORAL)で提供することができる。
【0069】
典型的に、経口シクロスポリンの患者用量は患者の状態に応じて変動するが、先行技術の治療法におけるいくつかの標準推奨用量を本明細書で提示する。臓器移植を受けた患者には、経口シクロスポリン12から15mg/kg/日の間の初回用量を投与する。次いで、1週間あたり5%で、7〜12mg/kg/日の維持量に達するまで徐々に用量を減らす。静脈内投与では、ほとんどの患者で2〜6mg/kg/日が好ましい。クローン病または潰瘍性大腸炎と診断された患者に対しては、一般に6〜8mg/kg/日の用量を投与する。全身性エリテマトーデスと診断された患者には、一般に2.2〜6.0mg/kg/日の用量を投与する。乾癬または慢性関節リウマチに対しては、0.5〜4mg/kg/日の用量が典型的である。他の有用な用量には、0.5〜5mg/kg/日、5〜10mg/kg/日、10〜15mg/kg/日、15〜20mg/kg/日、または20〜25mg/kg/日が含まれる。シクロスポリンは、グルココルチコイドなどの他の免疫抑制剤との組み合わせで投与することが多い。その他の情報を表4に示す。
【0070】
(表4)NsIDI

略号
CsA=シクロスポリンA
RA=慢性関節リウマチ
UC=潰瘍性大腸炎
SLE=全身性エリテマトーデス
【0071】
タクロリムス
タクロリムス(PROGRAF、Fujisawa)はFK506としても知られ、T細胞の細胞内シグナル伝達経路を標的とする免疫抑制物質である。タクロリムスは、シクロフィリンと構造的に無関係の細胞内タンパク質FK506結合タンパク質(FKBP-12)に結合する(Harding et al. Nature 341:758-7601, 1989;Siekienka et al. Nature 341:755-757, 1989;およびSoltoff et al., J. Biol. Chem. 267:17472-17477, 1992)。FKBP/FK506複合体はカルシニューリンに結合し、カルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害する。この阻害により、リンフォカイン(例えば、IL-2、ガンマインターフェロン)産生およびT細胞活性化に必要とされる遺伝子転写を開始する核成分、NFATの脱リン酸化および核転座が防止される。したがって、タクロリムスはT細胞活性化を阻害する。
【0072】
タクロリムスはストレプトミセス・ツクバエンシスによって産生されるマクロライド抗生物質である。これは免疫系を抑制し、移植臓器の生存を延長させる。現在、経口および注射用製剤が入手可能である。タクロリムスカプセルはゼラチンカプセル殻内に0.5mg、1mg、または5mgの無水タクロリムスを含む。注射用製剤はヒマシ油およびアルコール中に5mgの無水タクロリムスを含み、注射前に9%塩化ナトリウムまたは5%デキストロースで希釈する。経口投与が好ましいが、経口カプセルを服用できない患者にはタクロリムス注射剤を投与することができる。初回投与は移植後6時間以上経ってから連続静脈内注入により行うべきである。
【0073】
タクロリムスおよびタクロリムス類縁体はTanaka et al., (J. Am. Chem. Soc., 109:5031, 1987)、および米国特許第4,894,366号、第4,929,611号、および第4,956,352号に記載されている。FR-900520、FR-900523、およびFR-900525を含むFK506関連化合物は米国特許第5,254,562号に記載されており;O-アリール、O-アルキル、O-アルケニル、およびO-アルキニルマクロライドは米国特許第5,250,678号、第532,248号、5,693,648号に記載されており;アミノO-アリールマクロライドは米国特許第5,262,533号に記載されており;アルキリデンマクロライドは米国特許第5,284,840号に記載されており;N-ヘテロアリール、N-アルキルヘテロアリール、N-アルケニルヘテロアリール、およびN-アルキニルヘテロアリールマクロライドは米国特許第5,208,241号に記載されており;アミノマクロライドおよびその誘導体は米国特許第5,208,228号に記載されており;フルオロマクロライドは米国特許第5,189,042号に記載されており;アミノO-アルキル、O-アルケニル、およびO-アルキニルマクロライドは米国特許第5,162,334号に記載されており;かつハロマクロライドは米国特許第5,143,918号に記載されている。
【0074】
推奨用量は患者の状態に応じて変動することになるが、先行技術の治療法において用いられる標準推奨用量を以下に示す。クローン病または潰瘍性大腸炎と診断された患者には0.1〜0.2mg/kg/日の経口タクロリムスを投与する。移植臓器を有する患者には典型的に0.1〜0.2mg/kg/日の経口タクロリムスを投与する。慢性関節リウマチを治療中の患者には典型的に1〜3mg/日の経口タクロリムスを投与する。乾癬の治療には、0.01〜0.15mg/kg/日の経口タクロリムスを患者に投与する。アトピー性皮膚炎は0.03〜0.1%タクロリムスのクリームを患部に適用することにより、1日2回治療することができる。経口タクロリムスカプセルの投与を受ける患者で、初回投与は典型的には移植後6時間以上経ってから、または静脈内タクロリムス注入を中止した後8から12時間の時点で行う。他の推奨タクロリムス用量には、0.005〜0.01mg/kg/日、0.01〜0.03mg/kg/日、0.03〜0.05mg/kg/日、0.05〜0.07mg/kg/日、0.07〜0.10mg/kg/日、0.10〜0.25mg/kg/日、または0.25〜0.5mg/kg/日が含まれる。
【0075】
タクロリムスは混合機能オキシダーゼ系、特にチトクロムP-450系によって大々的に代謝される。代謝の主なメカニズムは脱メチル化およびヒドロキシル化である。様々なタクロリムス代謝物が免疫抑制性の生物活性を示すと考えられるが、13-メチル代謝物はタクロリムスと同等の活性を有することが報告されている。
【0076】
ピメクロリムスおよびアスコマイシン誘導体
アスコマイシンはFK506の近縁の構造類縁体で、強力な免疫抑制剤である。これはFKBP-12に結合し、そのプロリンロタマーゼ活性を抑制する。アスコマイシン-FKBP複合体は2B型ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害する。
【0077】
ピメクロリムス(SDZ ASM-981としても知られている)はアスコマイシンの33-エピ-クロロ誘導体である。これはストレプトミセス・ハイグロスコピクスvar. ascomyceitusによって産生される。タクロリムスと同様に、ピメクロリムス(登録商標ELIDEL、Novartis)はFKBP-12に結合し、カルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害し、初期サイトカインの転写を阻止することによってT細胞活性化を阻害する。特に、ピメクロリムスはIL-2産生および他の炎症誘発性サイトカインの放出を阻害する。
【0078】
ピメクロリムスの構造および機能類縁体は米国特許第6,384,073号に記載されている。ピメクロリムスは特にアトピー性皮膚炎の治療のために有用である。ピメクロリムスは現在、1%クリームとして入手可能である。個々の投薬は患者の状態に応じて変動することになるが、いくつかの標準推奨用量を以下に示す。経口ピメクロリムスは乾癬または慢性関節リウマチの治療のために、40〜60mg/日の量で投与することができる。クローン病または潰瘍性大腸炎の治療のために、80〜160mg/日の量のピメクロリムスを投与することができる。臓器移植を受けた患者には、160〜240mg/日のピメクロリムスを投与することができる。全身性エリテマトーデスと診断された患者には、40〜120mg/日のピメクロリムスを投与することができる。ピメクロリムスの他の有用な用量には、0.5〜5mg/日、5〜10mg/日、10〜30mg/日、40〜80mg/日、80〜120mg/日、または120〜200mg/日が含まれる。
【0079】
ラパマイシン
ラパマイシン(RAPAMUNE(登録商標)シロリムス、Wyeth)は、ストレプトミセス・ハイグロスコピクスによって産生される環状ラクトンである。ラパマイシンはTリンパ球活性化および増殖を阻害する免疫抑制物質である。シクロスポリン、タクロリムス、およびピメクロリムスと同様に、ラパマイシンはイムノフィリンFKBP-12と複合体を形成するが、ラパマイシン-FKBP-12複合体はカルシニューリンホスファターゼ活性を阻害しない。ラパマイシン-イムノフィリン複合体は、細胞周期の進行に必要とされるキナーゼである、哺乳動物ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)に結合し、これを阻害する。mTORキナーゼ活性の阻害により、Tリンパ球増殖およびリンホカイン分泌が阻止される。
【0080】
ラパマイシンの構造および機能類縁体には、モノおよびジアシル化ラパマイシン誘導体(米国特許第4,316,885号);ラパマイシン水溶性プロドラッグ(米国特許第4,650,803号);カルボン酸エステル(PCT国際公開公報第92/05179号);カーバメート(米国特許第5,118,678号);アミドエステル(米国特許第5,118,678号);ビオチンエステル(米国特許第5,504,091号);フッ素化エステル(米国特許第5,100,883号);アセタール(米国特許第5,151,413号);シリルエーテル(米国特許第5,120,842号);二環式誘導体(米国特許第5,120,725号);ラパマイシン二量体(米国特許第5,120,727号);O-アリール、O-アルキル、O-アルケニルおよびO-アルキル誘導体(米国特許第5,258,389号);ならびに重水素化ラパマイシン(米国特許第6,503,921号)が含まれる。その他のラパマイシン類縁体は米国特許第5,202,332号および第5,169,851号に記載されている。
【0081】
エベロリムス(40-O-(2-ヒドロキシエチル)ラパマイシン;登録商標CERTICAN;Novartis)は、ラパマイシンに構造的に関連する免疫抑制剤で、シクロスポリンAとの組み合わせで投与した場合、臓器移植片の急性拒絶の防止において特に有効であることが判明している。
【0082】
ラパマイシンは現在、経口投与用に液体製剤および錠剤で入手可能である。登録商標RAPAMUNE液は1mg/mLのラパマイシンを含み、投与前に水またはオレンジジュースで希釈する。1または2mgのラパマイシンを含む錠剤も入手可能である。ラパマイシンは好ましくは移植後できるだけ早く1日1回投与する。これは経口投与後、迅速かつ完全に吸収される。典型的には、ラパマイシンの患者用量は患者の状態に応じて変動するが、いくつかの標準推奨用量を以下に示す。ラパマイシンの初回用量は6mgである。その後2mg/日の維持量が典型的である。または、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgの初回量および1日あたり1mg、3mg、5mg、7mg、または10mgの維持量を用いることもできる。体重40kg未満の患者では、ラパマイシン用量は典型的には体表面積に基づいて調節する;一般には、3mg/m2/日の初回量および1mg/m2/日の維持量を用いる。
【0083】
三環系化合物
本発明の方法、組成物、およびキットには三環系化合物を採用してもよい。三環系化合物には以下が含まれる:アミトリプチリン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、ロフェプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ミルタザピン、ノルトリプチリン、オクトリプチリン、オキサプロチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、10-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリド(4,3-b)(1,4)ベンゾチアゼピン;11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-5H-ジベンゾ(b,e)(1,4)ジアゼピン;5,10-ジヒドロ-7-クロロ-10-(2-(モルフォリノ)エチル)-11H-ジベンゾ(b,e)(1,4)ジアゼピン-11-オン;2-(2-(7-ヒドロキシ-4-ジベンゾ(b,f)(1,4)チアゼピン-11-イル-1-ピペラジニル)エトキシ)エタノール;2-クロロ-11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-5H-ジベンゾ(b,e)(1,4)ジアゼピン;4-11H-ジベンズ(b,e)アゼピン-6-イル)ピペラジン;8-クロロ-11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-5H-ジベンゾ(b,e)(1,4)ジアゼピン-2-オール;8-クロロ-11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-5H-ジベンゾ(b,e)(1,4)ジアゼピン一塩酸塩;(Z)-2-ブテンジオエート5H-ジベンゾ(b,e)(1,4)ジアゼピン;アジナゾラム;アミネプチン;アミトリプチリンオキシド;ブトリプチリン;クロチアピン;クロザピン;デメキシプチリン;11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-ジベンゾ(b,f)(1,4)オキサゼピン;11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-2-ニトロ-ジベンゾ(b,f)(1,4)オキサゼピン;2-クロロ-11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-ジベンゾ(b,f)(1,4)オキサゼピン一塩酸塩;ジベンゼピン;11-(4-メチル-1-ピペラジニル)-ジベンゾ(b,f)(1,4)チアゼピン;ジメタクリン;フルアシジン;フルペルラピン;イミプラミンN-オキシド;イプリンドール;ロフェプラミン;メリトラセン;メタプラミン;メチアピン;メトラリンドール;ミアンセリン;ミルタザピン;8-クロロ-6-(4-メチル-1-ピペラジニル)-モルファントリジン;N-アセチルアモキサピン;ノミフェンシン;ノルクロミプラミン;ノルクロザピン;ノキシプチリン;オピプラモール;オキサプロチリン;ペルラピン;ピゾチリン;プロピゼピン;クエチアピン;キヌプラミン;チアネプチン;トモキセチン;フルペンチキソール;クロペンチキソール;ピフルチキソール;クロルプロチキセン;およびチオチキセン。他の三環系化合物としては、例えば、米国特許第2,554,736号;第3,046,283号;第3,310,553号;第3,177,209号;第3,205,264号;第3,244,748号;第3,271,451号;第3,272,826号;第3,282,942号;第3,299,139号;第3,312,689号;第3,389,139号;第3,399,201号;第3,409,640号;第3,419,547号;第3,438,981号;第3,454,554号;第3,467,650号;第3,505,321号;第3,527,766号;第3,534,041号;第3,539,573号;第3,574,852号;第3,622,565号;第3,637,660号;第3,663,696号;第3,758,528号;第3,922,305号;第3,963,778号;第3,978,121号;第3,981,917号;第4,017,542号;第4,017,621号;第4,020,096号;第4,045,560号;第4,045,580号;第4,048,223号;第4,062,848号;第4,088,647号;第4,128,641号;第4,148,919号;4,153,629号;第4,224,321号;第4,224,344号;第4,250,094号;第4,284,559号;第4,333,935号;第4,358,620号;第4,548,933号;第4,691,040号;第4,879,288号;第5,238,959号;第5,266,570号;第5,399,568号;第5,464,840号;第5,455,246号;第5,512,575号;第5,550,136号;第5,574,173号;第5,681,840号;第5,688,805号;第5,916,889号;第6,545,057号;および第6,600,065号に記載の化合物、および、米国特許出願第10/617,424号または第60/504,310号の式(I)に適合するフェノチアジン化合物が挙げられる。
【0084】
典型的には、マプロチリンの患者用量は患者の状態に応じて変動するが、本明細書においていくつかの標準推奨用量を提示する。マプロチリンは現在25、50、および100mg錠で入手可能であり、100〜150mg/日の用量で投与されることが最も多いが、1〜25mg/日、25〜100mg/日、100〜150mg/日、150〜225mg/日、または225〜350mg/日の標準推奨用量を投与することができる。ほとんどの抗うつ薬は経口投与した場合によく吸収されるが、いくつかのTCA(例えば、アミトリプチン、クロミプラミン)の筋肉内投与も可能である。
【0085】
ジピリダモールおよび関連する四置換ピリミドピリミジン
本発明の方法、組成物、およびキットには、ジピリダモールまたは四置換ピリミドピリミジンを採用してもよい。ジピリダモール(2,6-ビス(ジエタノールアミノ)-4,8-ジピペリジノピリミド(5,4-d)ピリミジン)は、血小板阻害剤として、例えば、心臓弁手術後の血餅形成を防止し、かつ、心筋梗塞および脳梗塞を含む凝固障害に関連する瀕死状態を低減するために用いられる、四置換ピリミドピリミジンである。典型的には、抗凝血療法(予防または治療)は、ジピリダモール約75〜200mgを1日2回、1日3回、または1日4回、単独またはアスピリンとの組み合わせのいずれかで投与することにより行う。本発明において、一般的にこれよりも低い用量、例えば、20〜80mgを任意の先行技術の経路で投与して用いることができる。
【0086】
四置換ピリミドピリミジンは、本発明の方法および組成物においてジピリダモールの代わりに用いることができる構造類縁体である。四置換ピリミドピリミジンは一般的に、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、2002年10月4日出願の「Combinations for the Treatment of Immunoinflammatory Disorders」なる標題の米国特許出願第10/264,991号に記載の式(I)のものである。
【0087】
本発明の方法および組成物において有用な例示的四置換ピリミドピリミジンには、2,6-二置換4,8-ジベンジルアミノピリミド[5,4-d]ピリミジンが含まれる。特に有用な四置換ピリミドピリミジンには、ジピリダモール(2,6-ビス(ジエタノールアミノ)-4,8-ジピペリジノピリミド(5,4-d)ピリミジンとしても公知)、モピダモール、ジピリダモールモノアセテート、NU3026(2,6-ジ-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-メトキシ-4,8-ジ-ピペリジノピリミドピリミジン)、NU3059(2,6-ビス-(2,3-ジメチオキシプロポキシ)-4,8-ジ-ピペリジノピリミドピリミジン)、NU3060(2,6-ビス[N,N-ジ(2-メトキシ)エチル]-4,6-ジ-ピペリジノピリミドピリミジン)、およびNU3076(2,6-ビス(ジエタノールアミノ)-4,8-ジ-4-メトキシベンジルアミノピリミドピリミジン)が含まれる。
【0088】
四置換ピリミドピリミジンの経口、筋肉内、皮下、局所、吸入、直腸内、腟内、および眼内投与のために、本発明に従って用いる用量は約0.5〜800mg/日、好ましくは約5〜600mg/日、10〜100mg/日、より好ましくは0.5〜50mg/日である。投与は1日1回から4回で、1日から1年間行うことができ、かつ患者の一生の間行ってもよい。多くの症例で慢性の長期投与が指示される。重篤な疾病のいくつかの症例では、1600mg/日までが必要になることもある。四置換ピリミドピリミジンの静脈内投与のために、用いる用量は約0.1〜200mg/日、好ましくは約0.5〜150mg/日、1〜100mg/日、より好ましくは約0.5〜50mg/日である。投与は1日1回から4回行うことができる。全身投与により、好ましくは0.1〜7.0μM、より好ましくは0.5〜5.0μM、最も好ましくは1.0〜2.0μMの血漿濃度の定常状態が得られるであろう。
【0089】
抗ヒスタミン剤
本発明の方法、組成物、およびキットには、抗ヒスタミン剤を採用してもよい。抗ヒスタミン剤はヒスタミンの作用を阻止する化合物である。抗ヒスタミン剤類には下記が含まれる:
(1)エタノールアミン(例えば、ブロモジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クレマスチン、ジメンヒドリネート、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、およびドキシルアミン);
(2)エチレンジアミン(例えば、フェニラミン、ピリラミン、トリペレナミン、およびトリプロリジン);
(3)フェノチアジン(例えば、ジエタジン、エトプロパジン、メトジラジン、プロメタジン、チエチルペラジン、およびトリメプラジン);
(4)アルキルアミン(例えば、アクリバスチン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、デスブロムフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、ピロブタミン、およびトリプロリジン);
(5)ピペラジン(例えば、ブクリジン、セチリジン、クロルシクリジン、シクリジン、メクリジン、ヒドロキシジン);
(6)ピペリジン(例えば、アステミゾール、アザタジン、シプロヘプタジン、デスロラタジン、フェキソフェナジン、ロラタジン、ケトチフェン、オロパタジン、フェニンダミン、およびテルフェナジン);
(7)異型抗ヒスタミン剤(例えば、アゼラスチン、レボカバスチン、メタピリレン、およびフェニルトキサミン)。
【0090】
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて、非鎮静および鎮静抗ヒスタミン剤の双方を用いることができる。本発明の方法、組成物およびキットにおいて用いるために特に望ましい抗ヒスタミン剤は、ロラタジンおよびデスロラタジンなどの非鎮静抗ヒスタミン剤である。鎮静抗ヒスタミン剤も本発明の方法、組成物、およびキットにおいて用いることができる。本発明の方法、組成物およびキットにおいて用いるために好ましい鎮静抗ヒスタミン剤は、アザタジン、ブロモジフェンヒドラミン;クロルフェニラミン;クレミゾール;シプロヘプタジン;ジメンヒドリネート;ジフェンヒドラミン;ドキシルアミン;メクリジン;プロメタジン;ピリラミン;チエチルペラジン;およびトリペレナミンである。
【0091】
本発明の方法および組成物において用いるのに適した他の抗ヒスタミン剤は、アクリバスチン;アヒスタン;アンタゾリン;アステミゾール;アゼラスチン(例えば、塩酸アゼラスチン);バミピン;ベポタスチン;ビエタナウチン;ブロムフェニラミン(例えば、マレイン酸ブロムフェニラミン);カルビノキサミン(例えば、マレイン酸カルビノキサミン);セチリジン(例えば、塩酸セチリジン);セトキシム;クロロシクリジン;クロロピラミン;クロロテン;クロルフェノキサミン;シンナリジン;クレマスチン(例えば、フマル酸クレマスチン);クロベンゼパム;クロベンズトロピン;クロシニジン;シクリジン(例えば、塩酸シクリジン;乳酸シクリジン);デプトロピン;デクスクロルフェニラミン;マレイン酸デクスクロルフェニラミン;ジフェニルピラリン;ドキセピン;エバスチン;エンブラミン;エメダスチン(例えば、2フマル酸エメダスチン);エピナスチン;塩酸エチメマジン;フェキソフェナジン(例えば、塩酸フェキソフェナジン);ヒスタピロジン;ヒドロキシジン(例えば、塩酸ヒドロキシジン;パモ酸ヒドロキシジン);イソプロメタジン;イソチペンジル;レボカバスチン(例えば、塩酸レボカバスチン);メブヒドロリン;メクイタジン;メタフリレン;メタピリレン;メトロン;ミゾラスチン;オラパタジン(例えば、塩酸オロパタジン);オルフェナドリン;フェニンダミン(例えば、酒石酸フェニンダミン);フェニラミン;フェニルトロキサミン;p-メチルジフェンヒドラミン;ピロブタミン;セタスチン;タラスチン;テルフェナジン;テニルジアミン;チアジナミウム(例えば、メチル硫酸チアジナミウム);塩酸トンジラミン;トルプロパミン;トリプロリジン;およびトリトクアリンである。
【0092】
抗ヒスタミン剤の構造類縁体も本発明に従って用いることができる。抗ヒスタミン剤類縁体には、10-ピペラジニルプロピルフェノチアジン;4-(3-(2-クロロフェノチアジン-10-イル)プロピル)-1-ピペラジンエタノール2塩酸塩;1-(10-(3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロピル)-10H-フェノチアジン-2-イル)-(9CI)1-プロパノン;3-メトキシシプロヘプタジン;4-(3-(2-クロロ-10H-フェノチアジン-10-イル)プロピル)ピペラジン-1-エタノール塩酸塩;10,11-ジヒドロ-5-(3-(4-エトキシカルボニル-4-フェニルピペリジノ)プロピリデン)-5H-ジベンゾ(a,d)シクロヘプテン;アセプロメタジン;アセトフェナジン;アリメマジン(例えば、塩酸アリメマジン);アミノプロマジン;ベンズイミダゾール;ブタペラジン;カルフェナジン;クロルフェネタジン;クロルミダゾール;シンプラゾール;デスメチルアステミゾール;デスメチルシプロヘプタジン;ジエタジン(例えば、塩酸ジエタジン);エトプロパジン(例えば、塩酸エトプロパジン);2-(p-ブロモフェニル-(p'-トリル)メトキシ)-N,N-ジメチル-エチルアミン塩酸塩;N,N-ジメチル-2-(ジフェニルメトキシ)-エチルアミン臭化メチル;EX-10-542A;フェネタジン;フプラゾール;メチル10-(3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロピル)フェノチアジン-2-イルケトン;レリセトロン;メドリルアミン;メソリダジン;メチルプロマジン;N-デスメチルプロメタジン;ニルプラゾール;ノルチオリダジン;ペルフェナジン(例えば、エナント酸ペルフェナジン);10-(3-ジメチルアミノプロピル)-2-メチルチオ-フェノチアジン;4-(ジベンゾ(b,e)チエピン-6(11H)-イリデン)-1-メチル-ピペリジン塩酸塩;プロクロルペラジン;プロマジン;プロピオマジン(例えば、塩酸プロピオマジン);ロトキサミン;ルパタジン;Sch 37370;Sch 434;テカステミゾール;チアジナミウム;チオプロパゼート;チオリダジン(例えば、塩酸チオリダジン);および3-(10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ(a,d)シクロヘプテン-5-イリデン)-トロパンが含まれるが、これらに限定されることはない。本発明において用いるのに適した他の化合物は、AD-0261;AHR-5333;アリナスチン;アルプロミジン;ATI-19000;ベルマスチン;ビラスチン;Bron-12;カレバスチン;クロルフェナミン;クロフレナジン;コルシム;DF-1105501;DF-11062;DF-1111301;EL-301;エルバニジン;F-7946T;F-9505;HE-90481;HE-90512;ヒベニル;HSR-609;イコチジン;KAA-276;KY-234;ラミアカスト;LAS-36509;LAS-36674;レボセチリジン;レボプロチリン;メトクロプラミド;NIP-531;ノベラスチン;オキサトミド;PR-881-884A;クイスルタジン;ロカスチン;セレノチフェン;SK&F-94461;SODAS-HC;タゴリジン;TAK-427;テメラスチン;UCB-34742;UCB-35440;VUF-K-8707;Wy-49051;およびZCR-2060である。本発明において用いるのに適したさらに他の化合物は、米国特許第3,956,296号;第4,254,129号;第4,254,130号;第4,282,833号;第4,283,408号;第4,362,736号;第4,394,508号;第4,285,957号;第4,285,958号;第4,440,933号;第4,510,309号;第4,550,116号;第4,692,456号;第4,742,175号;第4,833,138号;第4,908,372号;第5,204,249号;第5,375,693号;第5,578,610号;第5,581,011号;第5,589,487号;第5,663,412号;第5,994,549号;第6,201,124号;および第6,458,958号に記載されている。
【0093】
いくつかの例示的抗ヒスタミン剤の標準推奨用量を表5に示す。他の標準用量は、例えば、Merck Manual of Diagnosis & Therapy (17th Ed. MH Beers et al., Merck & Co.)およびPhysicians' Desk Reference 2003 (57th Ed. Medical Economics Staff et al., Medical Economics Co., 2002)に記載されている。
【0094】
(表5)

【0095】
ロラタジン(CLARITIN(登録商標))は、選択的末梢ヒスタミンH1-受容体アンタゴニストとして作用する三環式ピペリジンである。発明者らは本明細書において、ロラタジンならびにピペリジン、三環式ピペリジン、ヒスタミンH1-受容体アンタゴニストなどの、その構造および機能類縁体が、免疫炎症性障害、移植臓器拒絶、および移植片対宿主疾患を治療するための本発明の抗免疫炎症薬物の組み合わせにおいて有用であることを報告する。
【0096】
ロラタジン機能および/または構造類縁体には、AHR-11325、アクリバスチン、アンタゾリン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、ブロモフェニラミン、カレバスタチン、セチリジン、クロルフェニラミン、クロルシクリジン、クレマスチン、シプロヘプタジン、デスカルボエトキシロラタジン、デクスクロルフェニラミン、ジメンヒドリネート、ジフェニルピラリン、ジフェンヒドラミン、エバスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン ケトチフェン、ロドキサミド、レボカバスチン、メトジラジン、メクイタジン、オキサトミド、フェニラミン ピリラミン、プロメタジン、ピリラミン、セタスチン、タジフィリン、テメラスチン、テルフェナジン、トリメプラジン、トリペレナミン、トリプロリジン、ウトリジン、および類似の化合物(例えば、米国特許第3,956,296号;第4,254,129号;第4,254,130号;第4,283,408号;第4,362,736号;第4,394,508号;第4,285,957号;第4,285,958号;第4,440,933号;第4,510,309号;第4,550,116号;第4,692,456号;第4,742,175号;第4,908,372号;第5,204,249号;第5,375,693号;第5,578,610号;第5,581,011号;第5,589,487号;第5,663,412号;第5,994,549号;第6,201,124号;第6,458,958号に記載されている)などの他のH1-受容体アンタゴニストが含まれる。
【0097】
ロラタジン、セチリジン、およびフェキソフェナジンは、多くの第一世代H1-受容体アンタゴニストの鎮静効果を持たない、第二世代H1-受容体アンタゴニストである。ピペリジンH1-受容体アンタゴニストには、ロラタジン、塩酸シプロヘプタジン(PERIACTIN)、および酒石酸フェニンジアミン(NOLAHIST)が含まれる。ピペラジンH1-受容体アンタゴニストには、塩酸ヒドロキシジン(ATARAX)、パモ酸ヒドロキシジン(VISTARIL)、塩酸シクリジン(MAREZINE)、乳酸シクリジン、および塩酸メクリジンが含まれる。
【0098】
ロラタジン経口製剤には、錠剤、redi-tab、およびシロップが含まれる。ロラタジン錠は10mgの微粉化ロラタジンを含む。ロラタジンシロップは1mg/mlの
微粉化ロラタジンを含み、reditab(急速崩壊錠)は口中で速やかに崩壊する錠剤中に10mgの微粉化ロラタジンを含む。推奨用量は患者の状態に応じて変動することになるが、標準推奨用量を以下に示す。ロラタジンは典型的には10mg用量で1日1回投与するが、本発明の抗免疫炎症薬物の組み合わせにおいて有用な他の1日用量には0.01〜0.05mg、0.05〜1mg、1〜3mg、3〜5mg、5〜10mg、10〜15mg、15〜20mg、20〜30mg、および30〜40mgが含まれる。
【0099】
ロラタジンは経口投与後に速やかに吸収される。肝臓でチトクロムP450 3A4およびチトクロムP450 2D6により、デスカルボエトキシロラタジンに代謝される。ロラタジン代謝物も本発明の抗免疫炎症薬物の組み合わせにおいて有用である。
【0100】
投与
本発明の方法を用いて、薬物を互いに30分以内に、または同時に投与する。薬物は一つの組成物として共に製剤してもよく、または別々に製剤して投与してもよい。患者に、NSAID(例えば、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン、コリンマグネシウム三サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メロキシカム、オキサプロジン、スリンダク、およびトルメチン)、COX-2阻害剤(例えば、ロフェコキシブ、セレコキシブ、バルデコキシブ、およびルミラコキシブ)、グルココルチコイド受容体調節剤、またはDMARDなどの他の化合物を投与することが望ましい場合もある。本発明の組み合わせ療法は、他の抗サイトカイン剤もしくは細胞接着に影響をおよぼす薬剤などの疾患に明確に影響するよう免疫応答を調節する薬剤、または生物製剤(すなわち、IL-6、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15またはTNFαの作用を阻止する薬剤(例えば、エタネルセプト、アデリムマブ、インフリキシマブ、またはCDP-870)との組み合わせで、免疫炎症性障害の治療のために特に有用である。この例(TNFαの効果を阻止する薬剤)において、組み合わせ療法はサイトカインの産生を減少させ、エタネルセプトまたはインフリキシマブは炎症性サイトカインの残りの画分に作用し、治療の増強をもたらす。
【0101】
本発明の治療法は、単独で、または別の治療法と共に実施してもよく、家庭、医師のオフィス、診療所、病院の外来部門、または病院で提供することができる。治療は、医師が治療効果を詳細に観察し、必要な調節を行うことができるよう、入院させて開始してもよく、または外来で開始してもよい。治療の期間は治療中の疾患または障害のタイプ、患者の年齢および状態、患者の疾患の病期およびタイプ、ならびに患者が治療にどのように反応するかに応じて変わる。加えて、炎症性疾患を発生するリスクが高い人(例えば、年齢に関連してのホルモン変化が起きている人)は、症状発生を阻害する、または遅らせるための治療を受けることができる。
【0102】
様々な態様に対する投与経路には、局所、経皮、および全身投与(静脈内、筋肉内、皮下、吸入、直腸内、口腔内、腟内、腹腔内、関節内、眼内または経口投与など)が含まれるが、これらに限定されることはない。本明細書において用いられる「全身投与」とは、すべての皮膚以外の投与経路を意味し、特に局所および経皮投与経路を除外する。
【0103】
組み合わせ療法において、組み合わせの各成分の用量および投与頻度は独立に制御することができる。例えば、一つの化合物を1日3回投与し、一方で第二の化合物を1日1回投与することもできる。組み合わせ療法は、患者の体が今までのところ予測されていない副作用があれば、それから回復する機会を持つよう、休止期間を含むオン-オフサイクルで投与してもよい。1回の投与で双方の化合物を送達できるよう、化合物を共に製剤することもできる。
【0104】
薬学的組成物の製剤
本発明の組み合わせの投与は、所望の治療的成果を引き起こす、いかなる適切な手段によるものであってもよい。化合物、または全体の組み合わせは任意の適切な担体物質中に任意の適切な量で含まれてもよく、一般には組成物の全重量の1〜95重量%の量で存在する。組成物は経口、非経口(例えば、静脈内、筋肉内)、直腸、皮膚、鼻、膣、吸入、皮膚(パッチ)、または眼内投与経路に適した剤形で提供することができる。したがって、組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ヒドロゲルを含むゲル剤、ペースト、軟膏、クリーム、硬膏剤、水薬、浸透圧送達装置、坐剤、浣腸、注射剤、植込錠、噴霧剤、またはエアロゾルの形であってもよい。薬学的組成物は通常の薬学的業務に従って製剤することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, 2000, ed. A.R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New York参照)。
【0105】
組み合わせの各化合物は、当技術分野において公知の様々な様式で製剤することができる。例えば、第一および第二の薬物を共に製剤してもよく、または別々に製剤してもよい。望ましくは、第一および第二の薬物を薬物の同時またはほぼ同時投与のために共に製剤する。そのような同時製剤組成物は、例えば、同じ丸剤、カプセル剤、液剤などに共に製剤されたSSRIおよびステロイドを含む。異なる薬物に対して異なる製剤戦略を用いることにより、各薬物の薬物動態特性を適切に調和させる事ができる。
【0106】
個々にまたは別々に製剤された薬物をキットとして共に包装することができる。非限定例には、例えば、2個の丸剤、丸剤と散剤、坐剤とバイアル中の液剤、二つの局所クリームなどを含むキットが含まれる。キットは、散剤を再構成するためのバイアル、注射のためのシリンジ、個別調整されたIV送達系、吸入器などの、単位用量の患者への投与を助ける任意の成分を含むことができる。加えて、単位用量キットは組成物の調製および投与についての説明書を含むこともできる。キットは、一人の患者用の単回使用単位用量、特定の患者用の複数回使用(一定用量で、または治療の進行に合わせて個々の化合物の効力が変動してもよい)として製造してもよく;またはキットは複数の患者への投与に適した複数用量を含むこともできる(「バルク包装」)。キット成分はカートン、ブリスターパック、ボトル、チューブなどに組み合わせてもよい。
【0107】
徐放製剤
活性薬剤の一つが徐放用に製剤されている、本発明の任意の組み合わせの投与は、薬剤の一つが(i)狭い治療指数(例えば、有害副作用または毒性反応を引き起こす血漿濃度と治療効果をもたらす血漿濃度との差が小さい;一般的には治療指数TIは50%致死量(LD50)の50%有効量(ED50)に対する比と定義される);(ii)胃腸管における狭い吸収ウィンドウ(absorption window);(iii)短い生物学的半減期を有する場合;または(iv)組み合わせの有効性を改善するために各成分の薬物動態特性を改変しなければならない場合に有用である。本発明の製剤において、例えば、いずれかの薬物が単独投与される場合と比較して2つの薬物が共に治療上より有効となる量で、被験者の血漿中において各薬物が同時に存在する期間を増加させるために、薬物動態特性を改変することができる。したがって、薬剤の一つの徐放製剤は、双方の薬剤の血漿レベルを治療レベルで持続させるために必要とされうる高頻度の投与を避けるために用いることができる。例えば、本発明の好ましい経口薬学的組成物において、本発明の組み合わせの一つまたは双方の薬剤で、10〜20時間の半減期および平均滞留時間が観察される。
【0108】
治療化合物の放出速度が代謝速度を上回る徐放を得るために、多くの戦略を遂行することができる。例えば、徐放は製剤パラメーターおよび成分の適当な選択(例えば、適当な徐放組成物およびコーティング)により得ることができる。例には、単一または複数単位の錠剤またはカプセル組成物、油溶液、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ナノ粒子、パッチ、およびリポソームが含まれる。放出メカニズムを制御して、組み合わせの薬物が定期的間隔で放出される、放出は同時でありうる、または一方の特定の薬剤が他方よりも早く放出されることが好ましい場合には、組み合わせの薬剤の一方の遅延放出が起こりやすくすることができる。
【0109】
徐放製剤は、分解性または非分解性のポリマー、ヒドロゲル、オルガノゲル、または薬剤の生体吸収、半減期もしくは生体分解を改変する他の物理的構造物を含んでいてもよい。徐放製剤は、患部の内部または外部のいずれかに塗布または他の様式で適用される物質であってもよい。一例において、本発明は、対象部位またはその近傍(例えば、関節炎を起こした関節の近位)に外科的に挿入した生体分解性巨丸剤または植込錠を提供する。別の例において、徐放製剤植込錠は、炎症性腸疾患を治療するために下部腸管などの臓器中に挿入することもできる。
【0110】
ヒドロゲルを本発明の組み合わせの徐放製剤において用いることができる。そのようなポリマーには、米国特許第5,626,863号に記載のものが含まれる。例えば、制御された速度での送達のために、ヒドロゲルをゲル化して、本発明の組み合わせを捕捉し、かつ均質に分散させるために用いることができる生分解性ネットワークを形成する。
【0111】
キトサンおよびキトサンとカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)との混合物は、Inouye et al., Drug Design and Delivery 1: 297-305, 1987に記載のとおり、薬物の持続放出のための媒体として用いられている。これらの化合物および本発明の組み合わせ薬剤の混合物を、200kg/cm2で圧縮すると、被検者への投与後、そこから活性物質がゆっくり放出される錠剤が形成される。放出特性は、キトサン、CMC-Na、および活性物質の比率を変動させることにより変えることができる。錠剤は、乳糖、CaHPO42水和物、ショ糖、結晶セルロース、またはクロスカルメロースナトリウムを含む他の添加物も含むことができる。いくつかの例を表6に示す。
【0112】
(表6)

【0113】
Baichwalは、米国特許第6,245,356号において、アモルファス型の治療上活性な薬物(例えば、本発明の組み合わせ、またはその成分)の凝集粒子、ゲル化剤、イオン化可能なゲル強度増強剤および不活性希釈剤を含む、徐放性経口固体剤形を記載している。ゲル化剤はザンサンガムおよび周囲の液体に曝露されるとザンサンガムと架橋することができるローカストビーンガムの混合物でありうる。好ましくは、イオン化可能なゲル増強剤は、ザンサンガムとローカストビーンガムとの間の架橋強度を増強するよう作用し、それにより製剤の医薬成分の放出を延長する。ザンサンガムおよびローカストビーンガムに加えて、同様に用いることができる許容されるゲル化剤には、当技術分野において公知のゲル化剤が含まれる。例には、アルギネート、カラゲナン、ペクチン、グアーガム、化工デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、および他のセルロース材料などの、天然もしくは改変された天然ガム、または、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのポリマー、ならびに前述の混合物が含まれる。
【0114】
本発明の組み合わせにとって有用な別の製剤において、BaichwalおよびStaniforthは米国特許第5,135,757号に、ヘテロ多糖(例えば、ザンサンガムまたはその誘導体など)および水溶液存在下でヘテロ多糖と架橋することができる多糖材料(例えば、ガラクトマンナン、および最も好ましくはローカストビーンガム)を含む約20から約70重量パーセント以上の親水性材料、ならびに約30から約80重量パーセントの不活性薬学的充填剤(例えば、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、フルクトースまたはその混合物など)を含む、薬学的賦形剤として用いるための流動性徐放性顆粒形成を記載している。賦形剤を本発明の組み合わせ、または組み合わせ薬剤と混合後、混合物を直接圧縮して錠剤などの固体剤形とする。このようにして形成した錠剤は、摂取され、胃液に曝露されると、薬物をゆっくり放出する。薬物に対する賦形剤の量を変動させることにより、徐放性を得ることができる。
【0115】
本発明の組み合わせは、溶液中の薬物を溶解性によって制御される速度で放出する徐放性経口剤形を記載する、米国特許第5,007,790号において提供されるように製剤することができる。この剤形には、投与期間中は物理的完全性を維持するが、その後急速に溶解する、親水性、水膨潤性の架橋ポリマー中に溶解性が限られた薬物が分散した複数の粒子を含む錠剤またはカプセル剤が含まれる。いったん摂取されると、粒子は膨潤して胃での保持を促進し、胃液が粒子に浸透し、薬物を溶解し、薬物を粒子から浸出させることを可能にし、薬物が確実に、固体状態の薬物よりも胃に対して害が少ない溶液状態で胃に到達するようにする。ポリマーの計画された最終的溶解は、ポリマーの性質および架橋の程度に依存する。ポリマーは非繊維性で、その非架橋状態で実質的に水溶性であり、かつ架橋の程度はポリマーが望ましい期間、通常は少なくとも約4時間から8時間、12時間までであるが、取り込まれた薬物および関与する医学的治療に応じて選択される期間、不溶のままであるのに十分である。本発明において用いることができる適当な架橋ポリマーの例は、ゼラチン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびキチンである。ポリマーに応じて、架橋は熱もしくは放射線処理またはアルデヒド、ポリアミノ酸、金属イオンなどの架橋剤の使用により達成することができる。
【0116】
本発明の組み合わせの製剤において有用なpH制御胃腸薬送達のためのシリコンミクロスフェアが、Carelli et al., Int. J. Pharmaceutics 179: 73-83, 1999に記載されている。そのように記載されたミクロスフェアは、500から1000μmのサイズ範囲のシリコンミクロスフェア中にカプセル化された、様々な比率のポリ(メタクリル酸-co-メタクリル酸メチル)(Eudragit L100またはEudragit S100)および架橋ポリエチレングリコール8000で作られたpH感受性半相互浸透ポリマーヒドロゲルである。
【0117】
徐放性製剤は、容易に水に溶解しないが、ゆっくり攻撃され、水によって除去される、または水がゆっくり浸透しうるコーティングを含むことができる。したがって、本発明の組み合わせは、Kitamori et al., 米国特許第4,036,948号によって記載されたように、連続流動条件下で結合剤の溶液により噴霧コーティングすることができる。水溶性結合剤の例には、α化デンプン(例えば、α化トウモロコシデンプン、α化ジャガイモデンプン)、α化化工デンプン、水溶性セルロース(例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、アラビアガムおよびゼラチン、セルロース誘導体(例えば、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース)などの有機溶媒溶解性結合剤が含まれる。
【0118】
徐放特性を有する本発明の組み合わせ、またはその成分は、噴霧乾燥技術により製剤することもできる。一例としては、Espositio et al., Pharm. Dev. Technol. 5: 267-78, 2000に記載のとおり、Mini Spray Dryer、model 190(Buchi, Laboratorium Technik AG, Flawil, Germany)を用いてプレドニゾロンがメチアクリレート微小粒子(Eudragit RS)中に封入された。微粒子形成の最適条件は、アセトニトリル10mL中にプレドニゾロン50mgを含む溶液の供給(ポンプ)速度が0.5mL/分、噴霧空気の流速が600L/時間、80℃で加熱した乾燥空気温度、および吸引される乾燥空気の流速が28m3/時間であることが判明した。
【0119】
徐放性の組み合わせのさらに別の剤形は、微小透析セルとして作用する膜中の組み合わせ薬剤粒子のマイクロカプセル化によって調製することができる。そのような製剤において、胃液はマイクロカプセルの壁に浸透し、マイクロカプセルを膨潤させて、活性薬剤を外側に透析することを可能にする(例えば、Tsuei et al.,米国特許第5,589,194号を参照)。この種の一つの市販の徐放システムは、アカシアゴム/ゼラチン/エチルアルコールの膜を有するマイクロカプセルからなる。この製品はEurand Limited(フランス)からDiffucaps(商標)の商品名で入手可能である。そのように製剤されたマイクロカプセルを通常のゼラチンカプセルに入れてもよく、または錠剤化してもよい。
【0120】
SSRIおよびコルチコステロイドの双方の長期放出製剤および/または徐放製剤が公知である。例えば、GlaxoSmithKlineから市販されている登録商標Paxil CRは、分解性ポリマーマトリックス(商標GEOMATRIX、米国特許第4,839,177号、第5,102,666号、および5,422,123号も参照されたい)中の塩酸パロキセチンの長期放出剤形で、錠剤が胃を通過してしまうまで薬物放出の開始を遅らせるための腸溶コーティングも施されている。例えば、米国特許第5,102,666号は、(1)水膨潤性であるが、水不溶性の繊維性架橋カルボキシ官能基ポリマーである、ポリカルボフィルカルシウム成分であって、(a)少なくとも約80%が少なくとも一つのカルボキシル官能基を含む複数の反復単位と、(b)ポリアルケニルポリエーテルを実質的に含まない約0.05から約1.5%の架橋剤(パーセンテージはそれぞれ重合していない反復単位および架橋剤の重量に基づく)とを含むポリマーと、(2)水との、パロキセチンなどのSSRIからなる群より選択される活性物質存在下での相互作用により生成する反応複合体を含む、ポリマーの徐放組成物を記載している。存在するポリカルボフィルカルシウムの量は約0.1から約99重量%、例えば約10%である。存在する活性物質の量は約0.0001から約65重量%、例えば約5から20%の間である。存在する水の量は約5から約200重量%、例えば約5から10%の間である。相互作用は約3から約10の間、例えば約6から7で行う。ポリカルボフィルカルシウムは元は約5から約25%のカルシウムを含むカルシウム塩の形で存在する。
【0121】
他の長期放出製剤の例は米国特許第5,422,123号に記載されている。したがって、(a)活性物質の有効量を含み、定義された幾何学的形状を有する貯蔵核(deposit-core)、および(b)貯蔵核に適用される支持プラットフォーム(ただし、貯蔵核は少なくとも一つの活性物質、ならびに(1)水または水性の液体との接触により膨潤するポリマー材料およびゲル化可能なポリマー材料(膨潤性ポリマー材料のゲル化可能なポリマー材料に対する比は1:9から9:1の範囲である)と、(2)膨潤およびゲル化特性の両方を有する単一のポリマー材料とからなる群より選択される少なくとも一つのメンバーを含み、かつ支持プラットフォームは、貯蔵核の表面を部分的に覆い、貯蔵核の水和による変化に従い、水性の液体中でゆっくり可溶化および/またはゆっくりゲル化可能となるように、貯蔵核に適用される弾性支持体である)を含む、パロキセチンなどのSSRIである活性物質の制御放出のためのシステム。支持プラットフォームは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのポリマー、グリセリドなどの可塑剤、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、乳糖およびシリカなどの親水性物質ならびに/またはステアリン酸マグネシウムおよびグリセリドなどの疎水性物質を含んでいてもよい。ポリマーは典型的には支持プラットフォームの30から90重量%、例えば約35から40%を構成する。可塑剤は支持プラットフォームの少なくとも2重量%、例えば約15から20%を構成してもよい。結合剤、親水性物質および疎水性物質は典型的には合計で支持プラットフォームの約50重量%、例えば約40から50%となる。
【0122】
もう一つの例において、ベンラファキシンの長期放出製剤(登録商標Effexor XR)はWyeth Pharmaceuticalsから市販されている。この製剤は、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースでコーティングされた塩酸ベンラファキシン、微結晶セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む(米国特許第6,403,120号および第6,419,958号参照)。
【0123】
炎症性腸疾患治療用のブデソニドの徐放製剤(3mgカプセル)はAstraZenecaから入手可能である(「Entocort(商標)」として販売)。コルチコステロイドにとって有用な徐放製剤は米国特許第5,792,476号にも記載されており、この製剤は2.5〜7mgのグルココルチコイドを活性物質として含み、グルココルチコイドが患者の小腸に入って約1〜3時間後に始まり、グルココルチコイドの少なくとも90重量%が約40〜80分の間に放出されるように調節された徐放性を有する。このような活性物質の低い用量レベルを可能にするために、活性物質、すなわちプレドニゾロンまたはプレドニゾンなどのグルココルチコイドを微粉化し、デンプンおよび乳糖などの公知の希釈剤と適切に混合し、かつPVP(ポリビニルピロリドン)と共に造粒する。さらに、顆粒をpH6.8に抵抗性の徐放内層およびpH1.0に抵抗性の徐放外層と共に積層する。内層はEudragit(登録商標) RL(低含量の第四アンモニウム基を有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマー)で作製され、かつ外層はEudragit(登録商標) L(メタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルから合成された陰イオンポリマー)で作製される。
【0124】
本発明の任意の組み合わせのために、組み合わせの各薬剤で異なる個別の顆粒化を行い、二つの薬剤を二層プレスで圧縮して単一の錠剤を形成する、二層錠を製剤することができる。例えば、パロキセチン12.5mg、25mg、37.5mg、または50mgを、パロキセチンのt1/2が15から20時間となる徐放のために製剤し、これをt1/2がパロキセチンと近似するよう製剤した3mgのプレドニゾロンと同一錠剤中で組み合わせてもよい。二層錠で用いられるものを含む、パロキセチン長期放出製剤の例は、米国特許第6,548,084号に見いだすことができる。プレドニゾロンのインビボでの放出速度を制御することに加えて、プレドニゾロンのTmaxがパロキセチンの値(すなわち、5から10時間)に近似するように、薬物放出の開始を遅らせる、腸溶または遅延放出コーティングも含まれうる。
【0125】
シクロデキストリンはα-(1,4)-結合に天然のD(+)-グルコピラノース単位を含む環状多糖である。それぞれ6、7または8つのグルコピラノース単位を含むアルファ、ベータおよびガンマシクロデキストリンが最もよく用いられ、適当な例は国際公開公報第91/11172号、第94/02518号および第98/55148号に記載されている。構造的には、シクロデキストリンの環状の特性が、内部に非極性または疎水性の空隙を有するトーラスすなわちドーナツ様の形状を作り、2級ヒドロキシル基がシクロデキストリントーラスの一方の側に位置し、1級ヒドロキシル基が他方の側に位置する。2級ヒドロキシル基が位置する側は1級ヒドロキシル基が位置する側よりも大きい直径を有する。シクロデキストリン内部空隙が疎水性であるため、様々な化合物の包接が可能になる。(Comprehensive Supramolecular Chemistry, Volume 3, J. L. Atwood et al., eds., Pergamon Press (1996);Cserhati, Analytical Biochemistry 225: 328-32, 1995;Husain et al., Applied Spectroscopy 46: 652-8, 1992. シクロデキストリンは、その疎水性空隙中に合う様々な薬物と包接複合体を形成することにより、または他の生物活性分子と非共有結合複合体を形成することにより、様々な治療化合物の送達媒体として用いられている。米国特許第4,727,064号は、実質的に水溶性が低い薬物と、薬物が混合物のシクロデキストリンと包接複合体を形成する、アモルファスの水溶性シクロデキストリン混合物とからなる製剤を記載している。
【0126】
薬物-シクロデキストリン複合体の形成は、薬物の溶解性、溶解速度、生物学的利用、および/または安定性特性を改変することができる。例えば、シクロデキストリンは、Uekama et al., J. Pharm Dyn. 6: 124-7, 1983に記載のとおり、プレドニゾロンの生物学的利用を改善するために記載されている。β-シクロデキストリン/プレドニゾロン複合体は、両成分を水に加え、25℃で7日間撹拌することにより調製することができる。回収して得られた沈殿はプレドニゾロン/シクロデキストリンの1:2の複合体である。
【0127】
スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBE-β-CD、CyDex, Inc, Overland Park, KA, USAから登録商標CAPTISOLとして市販されている)も、本発明の組み合わせ薬剤の徐放性製剤調製における補助として用いることができる。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス中で圧縮されたプレドニゾロンおよびSBE-β-CDを含む徐放錠が調製されている(Rao et al., J. Pharm. Sci. 90: 807-16, 2001参照)。様々なシクロデキストリンの使用のもう一つの例において、EP 1109806 B1はパロキセチンのシクロデキストリン複合体であって、エプタキス(2-6-ジ-α-メチル)-β-シクロデキストリン、(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、モノスクシニルエプタキス(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、または2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを無水または水和型で含む、α-、β-、またはγ-シクロデキストリンにより、薬剤とシクロデキストリンとの比1:0.25から1:20で形成されるた複合体が得られることを記載している。
【0128】
米国特許出願第10/021,294号および第10/021,312号に記載のとおり、ポリマー性シクロデキストリンも調製されている。そのように生成されたシクロデキストリンポリマーは、本発明の組み合わせ薬剤を製剤するために有用でありうる。これらの多官能基ポリマー性シクロデキストリンはInsert Therapeutics, Inc., Pasadena, CA, USAから市販されている。
【0129】
薬剤との直接複合体生成の代わりに、シクロデキストリンを担体、希釈剤または可溶化剤などの補助的添加剤として用いることもできる。シクロデキストリンおよび本発明の組み合わせの他の薬剤(例えば、三環系化合物、SSRI、SNRI、NsIDI、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、および/または四置換ピリミドピリミジン)を含む製剤を、本明細書に記載のシクロデキストリン製剤の調製と同様の方法で調製することができる。
【0130】
リポソーム製剤
本発明の組み合わせの一つもしくは両方の成分、または二成分の混合物を一緒に、投与のためのリポソーム担体に取り込むこともできる。リポソーム担体は、小胞形成脂質成分の3つの一般的なタイプからなる。第一のタイプには、リポソームにおいて小胞構造の大きい塊を形成する小胞形成脂質が含まれる。一般に、これらの小胞形成脂質は疎水性および極性ヘッドグループ部分を有するいかなる両親媒性脂質も含み、(a)リン脂質によって例示されるとおり、水中で自発的に二層性小胞を形成することができるか、または(b)その疎水性部分は二重層膜の内部の疎水性領域に接触し、その極性ヘッドグループ部分は外部の膜の極性表面に向けて、脂質二重層に安定に取り込まれる。
【0131】
このタイプの小胞形成脂質は、好ましくは二つの炭化水素鎖、典型的にはアシル鎖と、極性ヘッドグループを有するものである。このクラスに含まれるものは、ホスファチジルコリン(PC)、PE、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、およびスフィンゴミエリン(SM)で、二つの炭化水素鎖は典型的には約14〜22炭素原子の長さで、様々な程度の不飽和度を有する。アシル鎖が様々な程度の飽和度を有する前述の脂質およびリン脂質は市販されているか、または既報の方法に従って調製する。本発明に含まれうる他の脂質は糖脂質およびコレステロールなどのステロールである。
【0132】
第二の一般的成分には、組成物中でポリマー層を形成するポリマー鎖で誘導体化された小胞形成脂質が含まれる。第二の一般的小胞形成脂質成分として用いることができる小胞形成脂質は、第一の一般的小胞形成脂質成分について記載されたいかなるものでもある。リン脂質などのジアシル鎖を有する小胞形成脂質が好ましい。一つの例示的リン脂質は、活性化ポリマーとのカップリングに好都合な反応性アミノ基を提供するホスファチジルエタノールアミン(PE)である。例示的PEはジステアリルPE(ESPE)である。
【0133】
誘導体脂質における好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、好ましくは分子量が1,000〜15,000ダルトンの間、より好ましくは2,000から10,000ダルトンの間、最も好ましくは2,000から5,000ダルトンの間のPEG鎖である。適当であると考えられる他の親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ならびにヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが含まれる。
【0134】
加えて、PEGセグメントを特に含む、これらのポリマーのブロックコポリマーまたはランダムコポリマーも適当でありうる。PEGなどの親水性ポリマーで誘導体化された脂質の調製法は、例えば、米国特許第5,013,556号に記載のとおり、公知である。
【0135】
第三の一般的小胞形成脂質成分は任意であるが、これは脂質アンカーで、それによって標的部分をアンカーのポリマー鎖を通じてリポソームに固定する。加えて、標的となる基は、標的部分の生物活性が失われないような様式で、ポリマー鎖の遠位端に位置する。脂質アンカーは、リポソーム二重層表面の外層の脂質をアンカーに提供する疎水性部分、ポリマーの内部の端が共有結合する極性ヘッドグループ、および標的部分への共有結合のために活性化される、または活性化することができる遊離の(外部)ポリマーを有する。このタイプの脂質アンカー分子の調製法を以下に記載する。
【0136】
リポソームの形成に用いる脂質成分は、好ましくは約70〜90パーセントの小胞形成脂質、1〜25パーセントのポリマー誘導体化脂質、および0.1〜5パーセントの脂質アンカーのモル比で存在する。一つの例示的製剤は、50〜70モルパーセントの非誘導体化PE、20〜40モルパーセントのコレステロール、0.1〜1モルパーセントの、標的部分と結合するために遊離末端に化学反応性基を有するPE-PEG(3500)ポリマー、5〜10モルパーセントのPEG 3500ポリマー鎖で誘導体化されたPE、および1モルパーセントのアルファ-トコフェロールを含む。
【0137】
リポソームは、好ましくは、選択されたサイズ範囲、典型的には約0.03から0.5ミクロンの間の実質的に均質なサイズを有する。REVおよびMLVの一つの有効な分粒法は、リポソームの水性懸濁液を、0.03から0.2ミクロンの範囲、典型的には0.05、0.08、0.1、または0.2ミクロンの選択された均一の孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出すことである。膜の孔径は、特に調製物を同じ膜から複数回押し出す場合に、その膜からの押し出しにより生成したリポソームの最大径におおよそ対応する。リポソームを100nm以下のサイズに微小化するために、ホモジナイゼーション法も有用である。
【0138】
他の確立されたリポソーム製剤技術を必要に応じて適用することができる。例えば、細胞取り込みを促進するためのリポソームの使用が米国特許第4,897,355号および第4,394,448号に記載されている。
【0139】
本明細書に記載の任意の組み合わせにおける各薬物の投与は、独立に1日1回から4回、1日から1年間行うことができ、かつ患者の一生の間行ってもよい。多くの症例で慢性の長期投与が指示される。
【0140】
他の態様
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願および特許は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0141】
本発明を特定の態様に関して記載しているが、さらなる改変が可能であることが理解されるであろう。したがって、本出願は、当技術分野において公知または慣例となる本開示からの逸脱を含む、本発明の原理に一般的に従う、本発明の任意の変形、使用、または適応を網羅することが意図される。
【0142】
他の態様は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】ヒトに経口投与したプレドニゾロンおよびアモキサピンの薬物動態学的挙動を記述するプロットである。データは2つの薬物の薬物動態曲線の合致が乏しいことを示している。
【図2】ヒトに経口投与したプレドニゾロンおよびパロキセチンの薬物動態学的挙動を記述するプロットである。データは2つの薬物の薬物動態曲線の合致が乏しいことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、第一および第二の薬物の組み合わせの有効性を増強する方法:
i)第一の薬物を患者に、有効な血漿濃度を時間Tlの間生成するために十分な量投与する段階、および
ii)第二の薬物を患者に、有効な血漿濃度を時間Tlの少なくとも70%の間生成するために十分な様式で投与する段階。
【請求項2】
第二の薬物の一部またはすべてが徐放用に製剤されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第二の薬物を時間Tlの間に複数回投与する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第二の薬物を、第二の薬物の有効な血漿濃度を時間Tlの少なくとも80%の間生成するために十分な様式で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第一および第二の薬物の組み合わせを患者に投与する方法であって、徐放用に製剤されていない第一の薬物および徐放用に製剤された第二の薬物を同時、または互いに30分以内に投与する段階を含み:
第二の薬物が徐放用に製剤されなかった場合Tmax1>Tmax2であることを条件とし、
a)第一の薬物はTmax1で最大血漿濃度を生成し、
b)第二の薬物はTmax2で最大血漿濃度を生成し、かつ
c)Tmax2はTmax1と等しいかTmax1より大きい、方法。
【請求項6】
第一の薬物および第二の薬物を単位剤形中に共に製剤する、請求項1または5記載の方法。
【請求項7】
単位剤形が、徐放用に製剤されていない第一の薬物を含む第一層および徐放用に製剤された第二の薬物を含む第二層を有する二層錠である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
単位剤形が、徐放用に製剤された第二の薬物を含む内部コアおよび徐放用に製剤されていない第一の薬物を含む外部コートを有する錠剤である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
単位剤形が、徐放用に製剤された第二の薬物を含むビーズおよび徐放用に製剤されていない第一の薬物を含むビーズを有するカプセル剤である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
カプセルが徐放用に製剤されていない第二の物質を含むビーズをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第一の薬物または第二の薬物が三環系化合物、SSRI、SNRI、NsIDI、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、または四置換ピリミドピリミジンである、請求項1または5記載の方法。
【請求項12】
第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
第一の薬物が三環系化合物であり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
第一の薬物がアモキサピンであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第一の薬物がSSRIであり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項11記載の方法。
【請求項16】
第一の薬物がパロキセチンであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
第一の薬物が四置換ピリミドピリミジンであり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項11記載の方法。
【請求項18】
第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
第一の薬物がNsIDIであり、かつ第二の薬物が抗ヒスタミン剤である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
第一の薬物がシクロスポリンAであり、かつ第二の薬物がロラタジンである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第一の薬物が三環系化合物であり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項11記載の方法。
【請求項22】
第一の薬物がノルトリプチリンであり、かつ第二の薬物がブデソニドである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ノルトリプチリンおよびブデソニドを吸入用に製剤する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
第一の薬物が四置換ピリミドピリミジンであり、かつ第二の薬物が抗ヒスタミン剤である、請求項11記載の方法。
【請求項25】
第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がロラタジンである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
三環系化合物、SSRI、SNRI、NsIDI、抗ヒスタミン剤、および四置換ピリミドピリミジンから選択される第一の薬物と;徐放用に製剤された第二の薬物とを含む単位剤形を含む薬学的組成物。
【請求項27】
単位剤形が、徐放用に製剤されていない第一の薬物を含む第一層および徐放用に製剤された第二の薬物を含む第二層を有する二層錠である、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
単位剤形が、徐放用に製剤された第二の薬物を含む内部コアおよび徐放用に製剤されていない第一の薬物を含む外部コートを有する錠剤である、請求項26記載の組成物。
【請求項29】
錠剤が徐放用に製剤されていない第二の薬物をさらに含む、請求項27または28記載の組成物。
【請求項30】
単位剤形が、徐放用に製剤された第二の薬物を含むビーズおよび徐放用に製剤されていない第一の薬物を含むビーズを有するカプセル剤である、請求項26記載の組成物。
【請求項31】
カプセルが徐放用に製剤された第二の薬物を含むビーズをさらに含む、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
第一の薬物が三環系化合物であり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項26記載の組成物。
【請求項33】
第一の薬物がアモキサピンであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
第一の薬物がノルトリプチリンであり、かつ第二の薬物がブデソニドである、請求項32記載の組成物。
【請求項35】
ノルトリプチリンおよびブデソニドを吸入用に製剤する、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
第一の薬物がSSRIであり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項26記載の組成物。
【請求項37】
第一の薬物がパロキセチンであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
第一の薬物が四置換ピリミドピリミジンであり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項26記載の組成物。
【請求項39】
第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
第一の薬物がNsIDIであり、かつ第二の薬物が抗ヒスタミン剤である、請求項26記載の組成物。
【請求項41】
第一の薬物がシクロスポリンAであり、かつ第二の薬物がロラタジンである、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
第一の薬物が四置換ピリミドピリミジンであり、かつ第二の薬物が抗ヒスタミン剤である、請求項26記載の組成物。
【請求項43】
第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がロラタジンである、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
(a)徐放用に製剤されていない第一の薬物、
(b)徐放用に製剤された第二の薬物、および
(c)第一の薬物および第二の薬物を同時に、または互いに30分以内に投与するための取扱説明書を含むキット。
【請求項45】
第一の薬物が三環系化合物であり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項44記載のキット。
【請求項46】
第一の薬物がアモキサピンであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項45記載のキット。
【請求項47】
第一の薬物がノルトリプチリンであり、かつ第二の薬物がブデソニドである、請求項45記載のキット。
【請求項48】
第一の薬物がSSRIであり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項44記載のキット。
【請求項49】
第一の薬物がパロキセチンであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項48記載のキット。
【請求項50】
第一の薬物が四置換ピリミドピリミジンであり、かつ第二の薬物がコルチコステロイドである、請求項44記載のキット。
【請求項51】
第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がプレドニゾロンである、請求項50記載のキット。
【請求項52】
第一の薬物がNsIDIであり、かつ第二の薬物が抗ヒスタミン剤である、請求項44記載のキット。
【請求項53】
第一の薬物がシクロスポリンAであり、かつ第二の薬物がロラタジンである、請求項52記載のキット。
【請求項54】
第一の薬物が四置換ピリミドピリミジンであり、かつ第二の薬物が抗ヒスタミン剤である、請求項44記載のキット。
【請求項55】
第一の薬物がジピリダモールであり、かつ第二の薬物がロラタジンである、請求項54記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−517766(P2007−517766A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528154(P2006−528154)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031195
【国際公開番号】WO2005/030132
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(501273808)コンビナトアールエックス インコーポレーティッド (21)
【Fターム(参考)】