説明

薬物送達デバイスのための基材および調製方法および使用

凝縮エアロゾルを生成するためのアセンブリおよび方法が開示される。本アセンブリは、耐酸化性外面(14)を備える熱伝導性金属基材(12)および上記外面上の薬物組成物フィルム(18)を含んでおり、エアロゾルデバイスに使用される。上記フィルムおよび上記基材の表面の厚さは、上記薬物組成物を気化および凝縮させるステップによって形成されるエアロゾルが重量で10%以下の薬物分解生成物および上記フィルム中の上記薬物組成物の総量の少なくとも50%を含有するエアロゾルを提供するような厚さである。上記外面を処理するための方法には、熱処理および化学処理が含まれ、また保護膜の形成も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に関する相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、米国特許法第119条の下で、2003年8月4日に提出された米国仮特許出願第60/492630号からの優先権を主張するものであり、その開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
[0002]本発明は、一般に医薬上有効な物質(例、薬物)を投与するためのデバイスおよび方法の分野に関する。より詳細には、本発明は、薬物エアロゾル粒子の生成に使用するための吸入デバイスに組み込むための薬物供給アセンブリに関する。
【背景】
【0003】
[0003]伝統的に、吸入療法は、経口送達および注射による送達といったより伝統的な薬物投与経路に比較して、治療薬の投与において余り大きな役割を果たしてこなかった。伝統的な投与経路に結び付いた緩徐な作用開始、患者のコンプライアンス不良、不便さおよび/または不快感を含む欠点のために、代替の投与経路が模索されてきた。肺送達は、より伝統的な経路より優れた幾つかの長所を提供できるそうした代替投与経路の1つである。これらの長所には、迅速な作用開始、患者が自己投与可能な利便性、薬物副作用が減少する可能性、吸入による送達の容易さ、注射針の排除などが含まれる。吸入用化合物を用いた多数の前臨床試験および臨床試験は、肺内および全身のいずれにおいても有効性を達成できることを証明している。
【0004】
[0004]しかしそのような試験結果にもかかわらず、ヘルスケア分野において吸入療法が果たす役割は、一部には吸入用医薬調製物、詳細には吸入による全身性送達用調製物の開発にとって固有の一組の問題のために、主として喘息の治療に限定されたままである。定量吸入器用調製物は、環境にとって危険であることの多い加圧式噴射剤を含んでおり、そして一般に吸入による全身性送達にとって望ましくない大きなエアロゾル粒径を生成させる。更に、加圧粒子が定量吸入器から高速度で放出されることで、不都合にも患者が吸入する正確な時機および速度によって粒子が沈着してしまう。ドライパウダー調製物は、定量吸入器に関わる問題の一部は解決できるが、凝集および低流動性現象を示す傾向があり、ドライパウダーに基づく吸入療法の有効性を相当に大きく減少させる。このような問題は、粒径が減少するにつれて粒子分布拡散の困難さが増大するために、深部肺送達において最適であるように十分に小さいエアロゾル粒径を有するドライパウダーにとって特に重要である。そこで、分散させることのできるパウダーを生成するためには賦形剤が必要とされる。液状エアロゾル調製物も、同様に非薬物成分、すなわち溶媒、ならびに溶媒中の薬剤を安定化させるための保存料を含んでいる。液体の分散には、一般に複雑で取扱いの面倒なデバイスが関係するので、特殊な物理特性、例えば粘度を備える液剤にしか有効ではない。薬物の溶解特性のために、そのような液剤を多数の薬物のために生成することはできない。更に、これらの添加される賦形剤、溶媒、噴射剤などは、結果として送達される薬物の純度に大きな影響を及ぼす。純度は、薬物をヒトに送達するために対処しなければならない極めて重要な問題である。
【0005】
[0005]上述した問題の多数に対処しながらエアロゾルを形成する薬物の気化は、薬物を熱的、酸化的、および/またはその他の手段により化学分解させる可能性がある。気化は、送達される薬物の純度に大きな影響を及ぼすこともある。
【0006】
[0006]そこで、当分野においては、例えば吸入もしくは局所適用によって送達するための薬物エアロゾルを生成することのできるデバイス、詳細には、流動性を向上させて凝集を防止するための追加の賦形剤、および/または溶媒、噴射剤を必要としない高純度のエアロゾル、または薬物を分散させるための薬物溶解度を作り出すデバイスに対する必要が依然として存在する。
【概要】
【0007】
[0006]本発明は、基材、耐酸化性外面、および化合物を含むフィルムと、を備える薬物供給アセンブリを提供する。一態様では、上記基材は熱伝導性基材である。また別の態様では、上記フィルムは薬物もしくは他の治療薬を備えている。更にまた別の態様では、上記外面は金属酸化物層を備えている。上記金属酸化物層は、上記基材の熱処理もしくは化学処理の結果であってもよい。あるいは、上記酸化物層は上記基材に適用された材料の異種層であってもよい。代表的な金属基材には、スチール、ステンレススチール、アルミニウム、チタンおよび銅が含まれる。上記金属基材は、例えば酸化鉄、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、またはそれらの組み合わせなどの金属酸化物を備える外面を生成するために、熱もしくは化学薬品によって処理することができる。あるいは、上記基材は、例えば酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および/または炭化ケイ素などの耐酸化性材料を用いてコーティングすることができる。
【0008】
[0007]また別の態様では、本発明は、エアロゾルデバイスにおいて使用するための上述した薬物供給アセンブリを作製する方法であって、耐酸化性外面を生成するために熱および/または化学薬品を用いて基材を処理するステップを備える方法を含んでいる。また別の態様では、基材は耐酸化性外面を生成するために耐酸化性材料を用いてコーティングされる。外面は、次に薬物を含むフィルムでコーティングされる。
【0009】
[0008]また別の態様では、本発明は、修飾された金属基材上の薬物組成物を実質的に気化させるステップおよび薬物粒子を形成するために蒸気を凝縮させるステップを備える、基材上の薬物を含むフィルムを実質的に気化および凝縮させるステップによって生成される凝縮薬物エアロゾル中の薬物凝縮粒子の純度を上昇させる方法を含んでいる。
【詳細な説明】
【0010】
[0022]凝縮エアロゾルを生成するための薬物供給アセンブリおよび方法を開示する。薬物供給アセンブリは、酸化不活性な外面を備える熱伝導性基材を含んでいる。薬物供給アセンブリは、エアロゾルデバイスと組み合わせることができる。薬物もしくは化合物を備えるフィルムは、外面上に層状に積み重ねられる。フィルムおよび基材の外面の厚さは、フィルムを気化および凝縮させるステップによって形成されるエアロゾルが重量で10%以下の薬物分解生成物およびフィルム中の薬物組成物の総量の少なくとも50%を含有するエアロゾルを提供するような厚さである。外面を処理するための方法には、熱処理および化学処理が含まれ、基材上の保護膜の形成もまた提供される。
【0011】
[0023]薬物には、1つの症状の予防、診断、緩和、治療もしくは治癒に使用されるあらゆる物質が含まれる。薬物は、好ましくは、例えばエステル、遊離酸、もしくは遊離塩基形などの熱蒸気送達のために適合する形態にある。薬物は、典型的には英気回復薬ではない。より詳細には、薬物は、典型的には非医療用英気回復用途のため、例えば単にヒトの気分を変えるため、意識状態に影響を及ぼすため、または英気回復用途のために身体機能に不必要に影響を及ぼすために使用される英気回復薬ではない。用語「薬物」、「化合物」、および「薬剤」は、本明細書では互換的に使用する。
【0012】
[0024]本発明において有用な薬物は、典型的には、約150〜700の範囲内、典型的には約200〜650の範囲内、より典型的には250〜600の範囲内、更により典型的には約250〜500の範囲内、および最も典型的には約300〜450の範囲内にある分子量を有する。
【0013】
[0025]使用できる特定の薬物には、次の種類のうちの1つの薬物が含まれるが、それらに限定されない。麻酔薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、解毒薬、制吐薬、抗ヒスタミン薬、抗感染薬、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、抗リウマチ薬、抗精神病薬、抗不安薬、食欲刺激薬および食欲抑制薬、血液調整剤、心血管薬、中枢神経系興奮薬、アルツハイマー病を管理するための薬物、嚢胞性線維症を管理するための薬物、診断薬、栄養補助食品、勃起不全症治療薬、消化器薬、ホルモン剤、アルコール中毒症治療薬、嗜癖治療薬、免疫抑制薬、肥満細胞安定剤、偏頭痛用製剤、乗り物酔い止め薬、多発性硬化症を管理するための薬物、筋弛緩薬、非ステロイド性抗炎症薬、オピオイド剤、その他の鎮痛薬および興奮薬、眼科用製剤、骨粗鬆症用製剤、プロスタグランジン、呼吸器薬、鎮静剤および催眠薬、皮膚および粘膜薬、禁煙補助剤、トゥーレット症候群薬、尿路障害治療薬、および眩暈薬。
【0014】
[0026]典型的には、薬物が麻酔薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ケタミンおよびリドカイン。
【0015】
[0027]典型的には、薬物が抗痙攣薬である場合は、次の種類の1つから選択される:GABAアナログ、チアガビン、ビガバトリン;ペントバルビタールなどのバルビツール酸塩類;クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン類;フェニトインなどのヒダントイン類;ラモトリジンなどのフェニルトリアジン類;カルバマゼピン、トピラメイト、バルプロ酸、およびゾニサミドなどの様々な抗痙攣薬。
【0016】
[0028]典型的には、薬物が抗うつ薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アミトリプチリン、アモキサピン、ベンモキシン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、キタンセリン、ロフェプラミン、メジフォキサミン、ミアンセリン、マプロトリン、ミトラザピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ベンラファキシン、ビロキサジン、シタロプラム、コチニン、デュロキセチン、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、ニソキセチン、パロキセチン、ロボキセチン、セルトラリン、チアネプチン、アセタフェナジン、ビンデダリン、ブロファロミン、セリクラミン、クロボキサミン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェニヒドラジン、フェネルジン、セレジリン、シブトラミン、トラニルシプロミン、アデメチオニン、アドラフィニル、アメセルジド、アミスルプリド、アンペロジド、ベナクチジン、ビュープロピオン、カプロキサゾン、ジェピロン、イダゾキサン、メトラリンドール、ミルナシプラン、ミナプリン、ネファゾドン、ノミフェンシン、リタンセリン、ロキシインドール、S−アデノシルメチオニン、トフェナシン、トラゾドン、トリプトファン、およびザロスピロン。
【0017】
[0029]典型的には、薬物が抗糖尿病薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ピオグリタゾン、ロシグリタゾンおよびトログリタゾン。
【0018】
[0030]典型的には、薬物が解毒薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:塩化エドロホニウム、フルマゼニル、デフェロキサミン、ナルメフェン、ナロキソン、およびナルトレキソン。
【0019】
[0031]典型的には、薬物が制吐薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ブロモプリド、ブクリジン、クロルプロマジン、シンナリジン、クレボプリド、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジフェニドール、ドラセトロン、ドロペリドール、グラニセトロン、ヒオスシン、ロラゼパム、ドロナビノール、メトクロプラミド、メトピマジン、オンダンセトロン、ペルフェナジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、スコポラミン、トリエチルペラジン、トリフロペラジン、トリフルプロマジン、トリメトベンズアミド、トロピセトロン、ドンペリドン、およびパロノセトロン。
【0020】
[0032]典型的には、薬物が抗ヒスタミン薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アステミゾール、アザタジン、ブロムフェニラミン、カルビノキサミン、セトリジン、クロルフェニラミン、シンナリジン、クレマスチン、シプロヘプタジン、デキスメデトミジン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ロラチジン、プロメタジン、ピリラミン、およびテルフェナジン。
【0021】
[0033]典型的には、薬物が抗感染薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:エファビレンツなどの抗ウイルス薬;ダプソンなどのAIDS補助薬;トブラマイシンなどのアミノグリコシド系;フルコナゾールなどの抗真菌薬;キニンなどの抗マラリア薬;エタンブトールなどの抗結核薬;セフメタゾール、セファゾリン、セファレキシン、セフォペラゾン、セフォキシチン、セファセトリル、セファログリシン、セファロリジンなどのβ−ラクタム系;セファロスポリンC、セファロチンなどのセファロスポリン系;セファマイシンA、セファマイシンB、およびセファマイシンC、セファピリン、セファラジンなどのセファマイシン系;クロファジミンなどの抗らい菌薬;アンピシリン、アモキシリン、ヘタシリン、カルフェシリン、カリンダシリン、カルベニシリン、アミルペニシリン、アジドシリン、ベンジルペニシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、メチシリン、ナフシリン、2−ペンテニルペニシリン、ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンS、ペニシリンV、ジクロキサシリン;ジフェニシリン;ヘプチルペニシリン;およびメンタムピシリンなどのペニシリン系;シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、ジフロキサシン、グレパフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、テマフロキサシンなどのキノロン系;ドキシサイクリンおよびオキシテトラサイクリンなどのテトラサイクリン系;リネゾリド、トリメトプリムおよびスルファメトキサゾールなどの様々な抗感染薬。
【0022】
[0034]典型的には、薬物が抗腫瘍薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ドロロキシフェン、タモキシフェン、およびトレミフェン。
【0023】
[0035]典型的には、薬物が抗パーキンソン病薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アマンタジン、バクロフェン、ビペリデン、ベンズトロピン、オルフェナドリン、プロシクリジン、トリヘキシフェニジル、レボドパ、カルビドパ、アンドロピニロール、アポモルヒネ、ベンセラジド、ブロモクリプチン、ブジピン、カベルゴリン、エリプロジル、エプスチグミン、エルゴリン、ガランタミン、ラザベミド、リスリド、マジンドール、メマンチン、モフェギリン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、プロペントフィリン、ラサギリン、レマセミド、ロピネロール、セリギリン、スフェラミン、テルグリド、エンタカポン、およびトルカポン。
【0024】
[0036]典型的には、薬物が抗リウマチ薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ジクロフェナク、ヒドロキシクロロキンおよびメトトレキサート。
【0025】
[0037]典型的には、薬物が抗精神病薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アセトフェナジン、アリザプリド、アミスルプリド、アミキサピン、アンペロザイド、アリピプラゾール、ベンペリドール、ベンズキナミド、ブロムペリドール、ブラメイト、ブタクラモール、ブタペラジン、カルフェナジン、カルピプラミン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロカプラミン、クロマクラン、クロペンチキソール、クロスピラジン、クロチアピン、クロザピン、シアメマジン、ドロペリドール、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルスピリレン、ハロペリドール、ロキサピン、メルペロン、メソリダジン、メトフェナザート、モリンドロン、オランザピン、ペンフルリドール、ペリシアジン、ペルフェナジン、ピモジド、ピパメロン、ピペラセタジン、ピポチアジン、プロクロルペラジン、プロマジン、クエチアピン、レモキシプリド、リスペリドン、セルチンドール、スピペロン、スルピリド、チオリダジン、チオチキセン、トリフルペリドール、トリフルプロマジン、トリフルオペラジン、ジプラシドン、ゾテピン、およびズクロペンチキソール。
【0026】
[0038]典型的には、薬物が抗不安薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アルプラゾラム、ブロマゼパム、オキサゼパム、ブスピロン、ヒドロキシジン、メクロクアロン、メデトミジン、メトミデート、アジナゾラム、クロルジアゼポキシド、クロベンゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ロプラゾラム、ミダゾラム、アルピデム、アルセロキシロン、アムフェニドン、アザシクロノール、ブロミソバルム、カプトジアミン、カプリド、カルブクロラール、カルブロマール、クロラールベタイン、エンシプラジン、フレシノキサン、イプサピラオン、レソピトロン、ロキサピン、メタクアロン、メスプリロン、プロパノロール、タンドスピロン、トラザドン、ゾピクロン、およびゾルピデム。
【0027】
[0039]典型的には、薬物が食欲刺激剤である場合は、ドロナビノールである。
【0028】
[0040]典型的には、薬物が食欲抑制薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:フェンフルラミン、フェンテルミンおよびシブトラミン。
【0029】
[0041]典型的には、薬物が血液調整剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:シロスタゾールおよびジピリダモール。
【0030】
[0042]典型的には、薬物が心血管薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、キナプリル、ラミプリル、ドキサゾシン、プラゾシン、クロニジン、ラベトロール、カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ジソピラミド、フレカニド、メキシレチン、プロカインアミド、プロパフェノン、キニン、トカイニド、アミオダロン、ドフェチリド、イブチリド、アデノシン、ゲンフィブロジル、ロバスタチン、アセブタロール、アテノロール、ビソプロロール、エスモロール、メトプロロール、ナドロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、スピロノラクトン、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、アミロリド、トリアムテレン、およびメトラゾン。
【0031】
[0043]典型的には、薬物が中枢神経系興奮薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アンフェタミン、ブルシン、カフェイン、デキスフェンフルラミン、デキストロアンフェタミン、エフェドリン、フェンフルラミン、マジンドール、メチフェニデート、ペモリン、フェンテルミン、シブトラミン、およびモダフィニル。
【0032】
[0044]典型的には、薬物がアルツハイマー病を管理するための薬物である場合は、次の化合物の1つから選択される:ドネペジル、ガランタミンおよびタクリン。
【0033】
[0045]典型的には、薬物が嚢胞性線維症を管理するための薬物である場合は、次の化合物の1つから選択される:トブラマイシンおよびセファドロキシル。
【0034】
[0046]典型的には、薬物が診断薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アデノシンおよびアミノ馬尿酸。
【0035】
[0047]典型的には、薬物が栄養補助食品である場合は、次の化合物の1つから選択される:メラトニンおよびビタミンE。
【0036】
[0048]典型的には、薬物が勃起不全症のための薬物である場合は、次の化合物の1つから選択される:タダラフィル、シルデナフィル、バルデナフィル、二酢酸アポモルヒネ、フェントラミン、およびヨヒンビン。
【0037】
[0049]典型的には、薬物が消化器薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ロペラミド、アトロピン、ヒオスシアミン、ファモチジン、ランソプラゾール、オメプラゾール、およびレベプラゾール。
【0038】
[0050]典型的には、薬物がホルモン剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:テストステロン、エストラジオール、およびコルチゾン。
【0039】
[0051]典型的には、薬物がアルコール中毒症治療薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ナロキソン、ナルトレキソン、およびジスルフィラム。
【0040】
[0052]典型的には、薬物が嗜癖治療薬である場合は、ブプレノルフィンである。
【0041】
[0053]典型的には、薬物が免疫抑制薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ミコフェノール酸、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムス、およびラパマイシン。
【0042】
[0054]典型的には、薬物が肥満細胞安定剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:クロモリン、ペミロラスト、およびネドクロミル。
【0043】
[0055]典型的には、薬物が偏頭痛薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アルモトリプタン、アルペロプリド、コデイン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン、エレトリプタン、フロバトリプタン、イソメテプテン、リドカイン、リスリド、メトクロプラミド、ナラトリプタン、オキシコドン、プロポキシフェン、リザトリプタン、スマトリプタン、トルフェナム酸、ゾルミトリプタン、アミトリプチリン、アテノロール、クロニジン、シプロヘプタジン、ジルチアゼム、ドキセピン、フルオキセチン、リシノプリル、メチセルジド、メトプロロール、ナドロール、ノルトリプチリン、パロキセチン、ピゾチフェン、ピゾチリン、プロパノロール、プロトリプチリン、セルトラリン、チモロール、およびベラパミル。
【0044】
[0056]典型的には、薬物が乗り物酔い止め薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ジフェンヒドラミン、プロメタジン、およびスコポラミン。
【0045】
[0057]典型的には、薬物が多発性硬化症を管理するための薬物である場合は、次の化合物の1つから選択される:ベンシクラン、メチルプレドニゾロン、ミトキサントロン、およびプレドニゾロン。
【0046】
[0058]典型的には、薬物が筋弛緩薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:バクロフェン、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール、オルフェナドリン、キニン、およびチザニジン。
【0047】
[0059]典型的には、薬物が非ステロイド抗炎症薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アルミノプロフェン、アンフェナク、アミノプロピロン、ミキセトリン、アスピリン、ベノキサプロフェン、ブロムフェナク、ブフェキサマク、カルプロフェン、セレコキシブ、コリン、サリチル酸塩、シンコフェン、シンメタシン、クロプリアク、クロメタシン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、マジプレドン、メクロフェナム酸塩、ナブメトン、ナプロキセン、パレコキシブ、ピロキシカム、ピルプロフェン、ロフェコキシブ、スリンダク、トルフェナム酸塩、トルメチン、およびバルデコキシブ。
【0048】
[0060]典型的には、薬物がオピオイド剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビフェン、シプラマドール、クロニタゼン、コデイン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、ジアモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、ジピパノン、フェンタニル、ヒドロモルホン、L−アルファアセチルメタドール、ロフェンタニル、レボルファノール、メペリジン、メタドン、メプタジノール、メトポン、モルヒネ、ナルブフィン、ナロルフィン、オキシコドン、パパベレタム、ペチジン、ペンタゾシン、フェナゾシン、レミフェンタニル、サフェンタニル、およびトラマドール。
【0049】
[0061]典型的には、薬物が他の鎮痛薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アパゾン、ベンズピペリロン、ベンジドラミン、カフェイン、クロニキシン、エトヘプタジン、フルピルチン、ネフォパム、オルフェナドリン、プロパセタモール、およびプロポキシフェン。
【0050】
[0062]典型的には、薬物が眼科用製剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:ケトチフェンおよびベタキソロール。
【0051】
[0063]典型的には、薬物が骨粗鬆症用製剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:アレンドロネート、エストラジオール、エストロピテート、リセドロネートおよびラロキシフェン。
【0052】
[0064]典型的には、薬物がホルモン剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:エポプロスタノール、ジノプロストン、ミソプロストール、およびアルプロスタジル。
【0053】
[0065]典型的には、薬物が呼吸器薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:アルブテロール、エフェドリン、エピネフリン、フォモテロール、メタプロテレノール、テルブタリン、ブデゾニド、シクレソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニド、臭化イプラトロピウム、プソイドエフェドリン、テオフィリン、モンテルカスト、およびザフィルルカスト。
【0054】
[0066]典型的には、薬物が鎮静剤および催眠薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ブタルビタール、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、テマゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデム、およびゾピクロン。
【0055】
[0067]典型的には、薬物が皮膚および粘膜薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:イソトレチノイン、ベルガプテンおよびメトキサレン。
【0056】
[0068]典型的には、薬物が禁煙補助剤である場合は、次の化合物の1つから選択される:ニコチンおよびバレニクリン。
【0057】
[0069]典型的には、薬物がトゥーレット症候群薬である場合は、ピモジドである。
【0058】
[0070]典型的には、薬物が尿路障害治療薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:トルテリジン、ダリフェニシン、臭化プロパンテリン、およびオキシブチニン。
【0059】
[0071]典型的には、薬物が眩暈薬である場合は、次の化合物の1つから選択される:ベタヒスチンおよびメクリジン。
【0060】
[0072]本明細書で使用する用語「1つの」および「その」は、特定の参照と組み合わせて、その内容が明白に他のことを意味しない限り、単数および複数を意味する。例えば、「1つの薬物」は、単一の薬物種または複数の薬物種の組み合わせを含んでいる。
【0061】
[0073]本明細書で使用する用語「薬物組成物」は、純粋の薬物だけを、2種以上の薬物を組み合わせて、または1種以上の薬物を追加の成分と組み合わせて備える組成物を意味する。追加の成分には、例えば医薬的に許容し得る賦形剤、担体、および界面活性剤を含むことができる。
【0062】
[0074]本明細書で使用する用語「薬物分解生成物」は、薬物の気化−凝縮プロセス中の医薬化合物の化学修飾の結果として生じる化合物を意味する。修飾は、例えば熱的もしくは光化学的または触媒的に誘導された反応の結果であってもよい。そのような反応には、制限なく、酸化および加水分解が含まれる。
【0063】
[0075]本明細書で使用する用語「薬物分解生成物分率」は、エアロゾル粒子中に存在する薬物分解生成物の量をエアロゾル中に存在する薬物の量に薬物分解生成物の量を加えた量で割った数値、すなわち(エアロゾル中に存在する全薬物分解生成物の総量)/((エアロゾル中に存在する医薬組成物の量)+(エアロゾル中に存在する全薬物分解生成物の総量))である。本明細書で使用する用語「薬物分解生成物百分率」は、薬物分解生成物分率に100%を掛けたものであるが、他方エアロゾルの「純度」は100%から薬物分解生成物百分率を引いたものである。
【0064】
[0076]用語「治療有効量」は、被験対象(例、ヒトなどの哺乳動物)における、所望の作用もしくは有効性、例えば症状の緩解もしくはエピソードの停止を達成するために必要とされる量を意味する。熱蒸気中で送達される薬物の用量は、規定の送達条件下で薬物を加熱するステップによって生成される単位用量を意味する。「単位用量」は、ある一定量の吸入される熱蒸気中に含まれる薬物の総量である。
【0065】
[0077]用語「外面」は、基材の最外層の境界を意味する。典型的には、外面は、基材の2nm、20nm、または200nmの最外層から構成される。また別の態様では、「外面」は、熱伝導性基材上に配置された層を含む薬物もしくは化合物と直接に接触する面である。この層は、外面層組成物が基材のバルク材料(例、保護膜材料)とは相違していてもよいように、基材上の別個の層であってもよい。適切な外面は、典型的には酸化不活性である。適切な基材の例には:スチール、ステンレススチール、アルミニウム、クロム、銅、鉄、チタン、導電性セラミック、および熱伝導性金属の合金が含まれる。適切な外側基材の例には:金属酸化物(MO、M、MO(Mの酸化状態は+2(例、Fe、Ca、Sr、Zn)もしくは+3(例、Fe、Al、Cr、Mo、ランタニド)もしくは+4(例、Zr、Ce、Siおよびランタニド)である);混合金属酸化物(M、MおよびMは+2、+3、もしくは+4の酸化状態を有する金属である;例、MgOAl、FeOFeOc、ZnOAl)が含まれる。
【0066】
[0078]用語「基材内部」は、外面を除く、基材の固体もしくはバルク材料の部分を意味する。
【0067】
[0079]用語「金属酸化物富裕な外面」は、そのような基材材料の基準外面より多量の1種以上の金属酸化物を含有する基材の外面を意味する。基準外面の酸化物層と比較して、金属酸化物富裕な外面は、酸化物層のより深い深度、外面中の特定金属酸化物種の増加量、および/または外面中の特定金属非酸化物種の減少量によって識別することができる。典型的には、基材がステンレススチールを備える場合は、基準外面は厚さが5nm未満の主として酸化鉄と酸化クロムの層を備えている。これとは対照的に、ステンレススチール基材の金属酸化物富裕な外面は、厚さが7.5nm以上の酸化鉄と酸化クロムの層を含んでいてもよい、または5nmの最外層中に基準外面より多量の耐酸化性金属酸化物を含有していてもよい、または5nmの最外層内に基準外面より少量の例えば鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、ケイ素、アルミニウムもしくはマンガンなどの金属/合金を含有していてもよい。金属基材の外面を分析する方法は、当分野において既知である。例えば、外面を分析するためには、静的もしくは動的二次イオン質量分析法(SIMS)、化学分析のためのX線光電子分光法/電子分光法(XPS/ESCA)、偏光解析法、およびオージェ電子分光法(AES)を使用できる。
【0068】
[0080]基材材料の「基準外面」という用語は、上記材料を室温の空気に短期間(例、1カ月間)曝露させると形成される外面相を意味する。基準外面を形成するために、1つの手段は、バルク材料の内部の一部分が処理された材料の外面になるように、上記バルク材料を薄く切り取るステップによってバルク金属基材材料を処理するステップである。室温の空気中で短期間(例、一般に類似の結果を生じさせる1日間のような短期間の保管とともに、1カ月間)における処理された材料の保管は、基準外面を生じさせる。
【0069】
[0081]「熱蒸気」は、例えば加熱によって形成される蒸気相、エアロゾル、またはエアロゾル蒸気相の混合気を意味する。熱蒸気は、薬物および任意で担体を備えていてもよい、そして薬物および任意で担体を加熱するステップによって形成することができる。蒸気相は、ガス相を意味する。エアロゾル相は、ガス相中に懸濁した固体および/または液体粒子を備えている。
【0070】
[0082]「処理された外面」は、熱、および/または化学処理/保護膜修飾を受けている外面を意味する。処理された面は、結果として上記表面において金属酸化物が富裕化させる場合がある。保護膜は、基材に化学的低反応性金属/金属酸化物の耐酸化性/保護膜を提供する。
【0071】
[0083]一態様では、本発明は、薬物化合物などの化合物のエアロゾルを生成するために、エアロゾルデバイスにおいて使用するための薬物供給アセンブリを供給する。エアロゾルは、気化−凝縮技術によって生成される。このアセンブリは、特に局所的もしくは全身性療法のために、被験者の肺に化合物(例、治療薬)を送達するために、吸入療法用のデバイスへの使用に適している。このアセンブリは、標的部位に薬物エアロゾル粒子を投与するために、気流を生成するデバイスに使用するためにも更に適している。例えば、薬物エアロゾル粒子を運ぶ気流は、急性もしくは慢性の皮膚症状を治療するために適用できる、手術中に切開部位に適用できる、または開放創に適用できる。このアセンブリおよび吸入デバイスにおけるその使用について記載する。
【0072】
[0084]本発明の薬物供給アセンブリの特別な長所および機能は、上記薬物への熱の適用による上記アセンブリからの薬物の気化後の実質的に純粋なエアロゾル粒子の形成である。
【0073】
[0085]本発明の一実施形態による凝縮エアロゾルデバイスにおいて使用するための薬物供給アセンブリは、図1Aに断面図で示されている。薬物供給アセンブリ10は、熱伝導性基材12から構成される。一態様では、基材は金属および/または金属合金を備えている。基材に適切な金属の例には、アルミニウム、チタン、鉄、銅、ステンレススチールなどが含まれる。熱伝導性基材12は、外面14および基材内面16を有する。外面14は、熱伝導性基材に適用された酸化不活性な材料の上塗り層であってもよい。また別の態様では、外面14は、基材12の熱処理もしくは化学処理によって入手される基材12の酸化物層を備えている。基材は、実質的にいかなる形状であってもよい。図1Aに示した正方形もしくは長方形の形状は単なる例示である。
【0074】
[0086]酸化不活性な材料の上塗りを実施しなければならない場合は、基材は、典型的には金属、セラミック、ガラスもしくはその他の材料である。上塗り層は、当分野において既知である多数の方法によって基材に適用できる。例えば、上塗り層は、溶液キャスト法または懸濁液キャスト法を用いて基材に適用することができる。一般に、溶液キャスト経路は、均質な構造および処理の容易さを提供することから有益である。溶液キャスト経路を用いると、上塗り層は、スピンコーティング、スプレーコーティングもしくはディップコーティングによって容易に作製することができる。懸濁液キャスト法もまたスピンコーティング、スプレーコーティングもしくはディップコーティングの可能性を提供するが、溶液キャスト法を用いた場合より不均質な構造が予想される。共通溶媒中に1種以上の材料が可溶性である系については、フィルムを溶液キャスト法によって作製できる。これは可溶性材料を溶解させ、溶媒が気化すると単一ステップでコンポジットフィルムの形成を可能にする。懸濁液キャスト法では、1種以上の材料を共通溶媒中に懸濁および/または溶解させる。懸濁液キャスト法は、広範囲の化学種に適用できるより一般的な技術である。懸濁液キャスト法の1つの適用では、材料は適切な溶媒中に溶解させ、第2材料が次にこの溶液に懸濁させ、そして結果として生じた混合物が基材をディップコートもしくはスプレーコートするために使用する。
【0075】
[0087]続けて図1Aを参照すると、基材12の外面14の全部もしくは一部分の上に、薬物を含むフィルム18が置かれている。そこで、外面14はエアロゾル化されるべき薬物の分子と接触している。上記で考察したように、外面14は酸化不活性である、および/またはフィルム18の酸化的もしくは化学的分解を回避するために(例えば、基材12および外面14の加熱前および/または加熱中に)選択または修飾されている。本発明の一実施形態では、外面14は、外面14の酸化物含有量を向上させるために処理される。
【0076】
[0088]基材が外面を有することに加えて、基材は、表面不規則性が相当に少ない、もしくは実質的に不規則性が認められない外面を有していなければならないので、外面上のフィルムから気化する化合物の分子はおそらく(i)他の高温蒸気分子、(ii)その領域を取り囲む高温ガス、または(iii)基材表面、との接触を通して化学結合の開裂、したがって化合物の分解を生じさせるために十分なエネルギーを獲得する可能性は少ない。化学的分解を生じさせる可能性を有する気化した化合物へのエネルギー入力を最小限に抑えるために、気化した化合物は加熱した表面または周囲の加熱ガスから冷却環境へ迅速に移行しなければならない。表面から気化した化合物はブラウン運動もしくは拡散を通してもよいが、この移行の所要時間は、表面全体を覆うガスの速度勾配および表面の物理的形状によって確立される表面における温度上昇領域の範囲によって大きな影響を受けることがある。高度の速度勾配(表面の近くでの速度勾配における急速な上昇)は、加熱された表面上方の高温ガス領域を縮小し、そして冷却環境への気化した化合物の移行時間を減少させる。同様に、より平滑な表面は、例えば基材もしくは外面の凹部、窪みもしくは孔内に捕捉されることによって高温ガスおよび化合物蒸気の迅速な移行が妨害されることがないので、この移行を円滑にする。上述した理由から、好ましくない基材は、0.5g/cc未満の基材密度を有する基材である。
【0077】
[0089]更に続けて図1Aを参照すると、薬物を含むフィルム18は約0.05μm〜20μmの厚さを有する。フィルムの付着は、一部には薬物の物理的特性および所望の薬物フィルム厚に依存して、様々な方法によって達成される。代表的な方法には、溶媒中の薬物溶液を調製するステップ、その溶液を外面に適用するステップ、および薬物のフィルムを残すために溶媒を除去するステップが含まれるが、それらに限定されない。薬物溶液は、基材を溶液中に浸漬するステップ、スプレーで塗布するステップ、ブラッシングするステップ、またはさもなければその溶液を基材に塗布するステップによって適用できる。例えば、薬物を含むフィルムは、溶液キャスト法および/または懸濁液キャスト法を用いて基材に適用することができる。一般に、溶液キャスト経路は、均質な構造および処理の容易さを提供するために有益である。溶液キャスト経路を用いると、フィルムは、スピンコーティング、スプレーコーティングもしくはディップコーティングによって容易に作製することができる。懸濁液キャスト法もまたスピンコーティング、スプレーコーティングまたはディップコーティングの可能性を提供するが、溶液キャスト法を用いた場合より不均質な構造が予想される。共通溶媒中に1種以上の薬物および/または担体またはその他の材料が可溶性である系については、フィルムを溶液キャスト法によって作製できる。これは可溶性薬物を溶解させ、溶媒が気化すると単一のステップにおいてコンポジットフィルムが形成されるのを可能にする。懸濁液キャスト法では、1種以上の薬物、担体、またはその他の材料が共通溶媒中に懸濁および/または溶解させる。懸濁液キャスト法は、広範囲の化学種に適用できるより一般的な技術である。懸濁液キャスト法の1つの適用では、薬物は適切な溶媒中に溶解させ、第2化合物もしくは薬物が次にこの溶液に懸濁させ、そして結果として生じた混合物を使用して外面がディップコートまたはスプレーコートされる。あるいは、薬物の溶融物を作製して、基材に適用することもできる。室温では液体である薬物のためには、固体薬物フィルムの適用を可能にするために、増粘剤を上記薬物と混合することができる。
【0078】
[0090]また別の態様では、薬物が流動の熱安定性、例えば融解粘度および流動性、加熱の均一性などを向上させるために未処理薬物と比較して上昇した温度で処理される。そのような上昇した熱安定性は、薬物組成物の保管寿命劣化を低減させることによってフィルム中の薬物の保管寿命安定性を更に上昇させることもできる。あるいは、または追加して、フィルム中の薬物の上昇した熱安定性は、薬物を含むフィルムの加熱およびその後の気化中における薬物の熱分解を減少させることによって、薬物フィルムを加熱して形成される凝縮エアロゾルの純度を上昇させるために役立つことがある。
【0079】
[0091]図1Bは、凝縮エアロゾルデバイス中で使用するための薬物供給アセンブリのまた別の形状の透視切取り図である。薬物供給アセンブリ20は、熱伝導性材料から形成された円筒形基材22から構成されている。図1Bに示した実施形態では、基材22は金属酸化物富裕な、または耐酸化性の外面24を有する。基材22の外面24上には、薬物を含むフィルム26が付着している。以下でより詳細に説明するように、使用時には、アセンブリ20の基材22は、フィルム26の全部もしくは一部分を気化させるために加熱される。気化中の基材表面を越える気流のコントロールは、所望のサイズの薬物エアロゾル粒子を生成する。図1Bでは、フィルム26および外面24は、基材22との間に熱伝達を有する発熱体28を露出させるために部分的に切り取られている。発熱体28は、300〜500℃の作動温度を維持するためのセンサを更に含んでいてもよい。より高温での作動もまた可能である。加熱器は、抵抗コイル、厚膜、またはシート加熱器の形状であってもよい。適切な熱電対アタッチメントは、正確な温度監視のためのセンサに作製される。固体化学燃料、発熱反応を受ける化学成分、誘導熱などを含むがそれらに限定されない他の発熱体が適している。誘導加熱による基材の加熱もまた適切である。1つの例示的加熱源には、2004年5月20日に提出された「SELF−CONTAINED HEATING UNIT AND DRUG−SUPPLY UNIT EMPLOYING SAME」と題するPCT国際特許出願第US04/16077号に記載されており、上記特許出願は参照として本明細書に組み込まれる。例えば、基材は中空間隙内に挿入された発熱体を備える中空であってもよい、または基材内に組み込まれた発熱体を備える固体であってもよい。図1Bに示した実施形態における発熱体28は、電気抵抗線の形態であり、電流が上記抵抗線を通って流れると熱が発生する。
【0080】
[0092]図2Aは、図1Bに示したデバイスに類似する凝縮エアロゾルデバイス中に使用するために薬物供給アセンブリが組み込まれている薬物送達デバイスの透視図である。デバイス30は、ユーザの口腔内に挿入するためにテーパ端34を備えるハウジング32を含んでいる。反対側のテーパ端34では、ハウジングは、ユーザがデバイスを口腔に配置して息を吸ったときに空気を取り込むために、スロット36などの1つ以上の開口部を有する。ハウジング32内には、図面の切取り部分で見ることができるように、薬物供給アセンブリ20が配置されている。薬物供給アセンブリ20は、ユーザに送達しなければならない薬物を含むフィルム26でコーティングされた外面24を備える基材を含んでいる。アセンブリ20は、吸入中に気流内に混入される、したがって薬物エアロゾル粒子を生成する薬物蒸気を形成するために、薬物を含むフィルム26の全部または一部分を気化させるために十分な温度まで迅速に加熱することができる。薬物供給アセンブリ20の加熱は、例えば、基材内に包埋もしくは挿入されて、ハウジング内に配置されたバッテリーに接続された電気抵抗線によって遂行される。基材の加熱は、ハウジング上のユーザ作動ボタンまたは呼吸作動によって引き起こすことができる。
【0081】
[0093]図2Bは、薬物供給アセンブリを組み込んでいるまた別の薬物送達デバイスを示しており、ここでデバイス構成要素は組み立てられないままの形で示されている。吸入デバイス50は、組み合わされる上方外側ハウジング部材52および下方外側ハウジング部材から構成される。各ハウジング部材の下流端は、下流端56で上方ハウジング部材52から最も明らかなように、ユーザの口腔内に挿入するために軽くテーパ付けされている。上方52および下方54ハウジング部材の上流端は、ユーザが吸入したときに空気を取り込むために、58での上方ハウジング部材内で素面から最も明らかなように、スロットが付けられている。上方52および下方54ハウジング部材は、組み合わされたときにチャンバ60を規定する。チャンバ60内には、部分切取り図に示されているように、薬物供給アセンブリ62が配置されている。薬物供給装置は、基材64の外面68上に薬物を含むフィルム66でコーティングされたテーパ付きの、実質的に円筒形の基材64を有している。薬物供給装置の切取り部分において見えるものは、熱を発生させるために適切な発熱体もしくは加熱物質を含有する基材の内部領域70である。発熱体もしくは加熱物質は、発熱を伴って電気抵抗線を混合する固体化学燃料、化学試薬などであってもよい。加熱のために必要な場合は電源、および吸入デバイスのために必要な弁体は、基材64と電気的、機械的および/または熱伝達を生じ得るエンドピース72内に含有されている。
【0082】
[0094]典型的な実施形態では、このデバイスは、凝縮領域を通るガス流量を制限するために薬物供給アセンブリの上流に配置されたガス流量調節弁を含んでいる。例えば、ガス流量調節弁は、空気がユーザの口腔によってチャンバ内に引き込まれて通過するときに、チャンバを通過する気流を制限する。特定の実施形態では、ガス流量弁は、弁に生じる圧力低下を促進させながら、チャンバと連絡している流入ポートと、上記流入ポートから外へ気流を方向転換させる、もしくは制限するために適合する変形可能なフラップと、を含んでいる。また別の実施形態では、ガス流量弁は、弁に生じる気圧差に反応して、弁がスイッチを閉鎖するように作用するように、弁運動と結合された作動スイッチを含んでいる。更にまた別の実施形態では、ガス流量弁は、チャンバ内への空気流量を制限するために設計された開口部を含んでいる。
【0083】
[0095]このデバイスは、更にまたユーザが空気をチャンバ内に引き込むにつれて、ガス流量調節弁によって生成される気流の減少を相殺するために、本装置の下流でチャンバと連絡しているバイパス弁を含んでいてもよい。バイパス弁は、ガス調節弁と協働してチャンバの凝縮領域を通る流量ならびにデバイスを通って引き出される空気の総量もしくは総容積を調節する。そのため、デバイスを通過する総空気容積流量は、ガス調節弁を通る空気容積流量とバイパス弁を通る空気容積流量の合計である。ガス調節弁は、選択されたサイズのエアロゾル粒子を生成するために、選択された空気流量に対応して、装置内に引き込まれる空気を事前に選択されたレベル、例えば15L/分に制限するために機能する。この選択された空気流量レベルに到達すると、デバイス内に引き込まれた追加の空気はバイパス弁を横断する圧力低下を生ぜしめ、これは次に気流をユーザの口腔に隣接するデバイスの下流端内へのバイパス弁に適応させる。これにより、ユーザは、所望の空気流量とバイパス空気流量との間に総空気流量を分布させる2つの弁を用いて、吸い込まれる全吸気を感知する。
【0084】
[0096]これらの弁を使用すると、チャンバの凝縮領域を通るガス流速を調節することができ、したがって蒸気凝縮によって生成したエアロゾル粒子の粒径を調節することができる。より急速な気流では、より小さな粒子に凝縮するように蒸気を希釈する。言い換えると、エアロゾルの粒径分布は、凝縮中の化合物蒸気の濃度によって判定される。この蒸気濃度は、順に、加熱されている基材の表面上方の気流が発生した蒸気を希釈する程度によって判定される。そこで、より小さな、もしくはより大きな粒子を達成するために、チャンバの凝縮領域を通るガス速度は、空気容積流量を増加もしくは減少させるためにガス流量調節弁を修飾することによって変化させることができる。例えば、1〜3.5μmの範囲内の空気力学的質量中央径(MMAD)を有する凝縮粒子を生成するために、チャンバは実質的に平滑面を備える壁を有していてもよく、そして選択されたガス流量は4〜50L/分の範囲内にあってもよい。
【0085】
[0097]更に、当業者であれば認識できるように、粒径は、ある一定の容積流量に対してガス線速度を増加もしくは減少させるためにチャンバ凝縮領域の断面を改変するステップおよび/またはチャンバ内で乱気流を生成するための構造の存在もしくは非存在によっても変化させることができる。そこで、例えば20〜100nmのMMADの粒径範囲内にある凝縮粒子を生成するために、チャンバは凝縮チャンバ内で乱気流を作り出すためのガス流障壁を提供することができる。これらの障壁は、典型的には基材表面から数千分の1インチ以内の距離に配置される。
【0086】
[0098]一実施形態における熱源は、少なくとも150℃、少なくとも250℃、少なくとも350℃、もしくは少なくとも400℃の基材温度を達成する速度で基材に熱を供給するために有効であり、そして2秒間以内、1秒間以内、もしくはより典型的には0.5秒間以内に薬物組成物の基材からの実質的に完全な気化を生じさせる。適切な熱源には、50〜500ms以内に、しかし典型的には50〜200msの範囲内に、少なくとも150℃、200℃、250℃、300℃、もしくは350℃の基材温度までの迅速な加熱を達成するために十分な速度で電流が供給される抵抗加熱装置が含まれる。例えばフラッシュバルブ型加熱装置などの、上述した「SELF−CONTAINED HEATING UNIT AND DRUG−SUPPLY UNIT EMPLOYING SAME」と題するPCT国際特許出願第US04/16077号に記載された加熱源などのスパークもしくは発熱体によって作動させると発熱反応を受ける化学的反応性材料を含有する熱源もしくは装置もまた適している。詳細には、熱源の化学的「負荷」が50〜500ミリ秒以下の時間中に消費される発熱反応によって熱を生成する熱源は、熱源と基材との良好な熱的結合を備えていて、一般的に適合しうる。
【0087】
[0099]図3A〜Eは、薬物供給アセンブリからのエアロゾル粒子の生成を示している高速度写真である。図3Aは、薬物を含むフィルムがコーティングされた長さ約2cmの円筒形ステンレススチール基材を示している。フィルムで基材をコーティングする前に、金属酸化物富裕な外面を形成するために、スチール製基材をおよそ2秒間にわたりおよそ400℃の温度まで空気中で約3回加熱した。薬物がコーティングされた基材は、その中を約15L/分の速度で上流−下流方向(図3Aにおいて矢印で指示した)に気流が流動するチャンバ内に配置した。基材を電気的に加熱し、薬物気化の進行をリアルタイム写真によって監視した。図3B〜3Eは、50ミリ秒、100ミリ秒、200ミリ秒、および500ミリ秒各々の時間間隔での薬物気化およびエアロゾル生成の順序を示している。写真では、流動気流内に混入した薬物蒸気から形成された薬物エアロゾル粒子の白色の曇りを見ることができる。薬物フィルムの完全な気化は、500ミリ秒によって達成された。
【0088】
[00100]薬物供給アセンブリは、典型的にはスプレーノズルによって、皮膚症状の短期もしくは長期治療、または手術中の切開部位もしくは開放創に薬物を投与することを含む様々な治療レジメンのために、ガスと容易に混合して局所部位に吸入または送達するためのエアロゾルを生成することができる薬物蒸気を生成する。薬物フィルムの急速な気化は、基材が有益にも処理された外面を有する場合は、薬物の最小の熱分解を伴って発生する。
【0089】
[00101]上述したように、凝縮エアロゾルデバイスにおいて使用するための薬物供給アセンブリは、外面を有する基材上に形成された薬物を含むフィルムを備えている。一態様では、処理された外面を提供するために基材の表面が処理される。一実施形態では、フィルムは2種以上の薬物を備えている。また別の実施形態では、フィルムは1種の純粋薬物を含んでいる。フィルムは、本発明の一実施形態では、約0.05〜20μm、0.1〜15μm、0.2〜10μm、または0.5〜10μmの厚さを有するが、最も典型的には1〜10μmである。ある一定の薬物もしくは薬物組成物のためのフィルム厚は、基材を加熱するステップによって薬物もしくは薬物組成物を気化させるステップおよび蒸気をガス流内に封入するステップによって形成される薬物エアロゾル粒子が、(i)重量で10%以下、典型的には重量で5%以下、および一般に重量で2.5%以下の薬物分解生成物と、(ii)フィルム中に含有された薬物組成物の総量の少なくとも50%と、を有しているような厚さである。その上に薬物フィルムが形成される外面が処理された基材の面積は、薬物エアロゾルの有効治療量を達成するために選択される。一部の態様では、基材は強化された酸化抵抗、金属酸化物層厚、酸化物層内の1種以上の金属もしくは金属酸化物の強化された含有量、または減少させた量の1種以上の非酸化金属種を備える外面を形成するための熱処理および化学処理を含む手段によって処理される。
【0090】
[00102]基材は、金属酸化物層を含む外面を形成するために基材外面の耐酸化性材料もしくは金属酸化物を富裕化させる、もしくは基材外面を耐酸化性材料もしくは金属酸化物でコーティングするための、様々な手段によって処理することができる。基材表面を処理する1つの手段は、熱処理である。一態様では、本発明はエアロゾルデバイスにおいて使用するための薬物供給アセンブリを作製する方法を含んでいるが、ここで上記アセンブリは、金属基材を熱処理するステップと、薬物を含むフィルムを用いて上記基材の少なくとも一部分をコーティングするステップと、を備える熱伝導性金属基材を備える。薬物を備えるフィルムは金属基材の外面上にコーティングされるが、ここでフィルム厚および外面は、基材を加熱するステップにより薬物フィルムを気化させるステップと、気化した薬物組成物を凝縮させるステップによって形成されたエアロゾルが、重量で10%以下の薬物分解生成物およびフィルム中の薬物組成物の総量の少なくとも50%を含有しているようなフィルム厚および外面である。基材は、約60℃〜800℃、より典型的には100℃〜500℃、または最も一般的には200℃〜400℃の間の温度で(フィルムを用いたコーティングの前に)熱処理されてもよい。そのような温度では、基材は約400℃で約1秒間に所望の外面を獲得できるが、例えば数分間、数時間、または数日間などのより長い熱処理期間が所望の外面を生じさせることがある。しかし、基材の熱処理は、基材が熱処理前に既に酸化抵抗性である、または金属酸化物富裕である場合は、薬物の純度を上昇させない可能性がある。一般に、処理のためにより低温が使用される場合は、典型的にはより長い処理時間が実施され、そして処理のためにより高温が使用される場合は、典型的には処理時間が短くなる。そこで、基材は1秒間〜5日間、典型的には5分間〜24時間、および一般的には15分間〜8時間にわたって熱処理されてもよい。処理は、他の条件の中でも空気、乾燥空気、酸素、または酸素が存在する部分真空中で実施されてもよい。特定の実施例では、熱処理は、350℃で少なくとも6時間にわたり、または少なくとも2秒間、および典型的には500℃の空気中で少なくとも5秒間にわたり、基材を加熱するステップを含んでいる。
【0091】
[00103]基材が金属である場合は、熱処理は一般に、熱処理されていない基準外面より厚い金属酸化物層を特徴とする金属酸化物富裕な基材外面を生じさせる。典型的には、基準外面はステンレススチール基材については<5nmの厚さの酸化物層を備える受動層を有しているが、他方熱処理基材は>7.5nm、>10nm、および典型的には>20nmの厚さの酸化物層を有する。熱処理はより十分に酸化した外面、すなわち基準外面と比較して量が減少した非酸化金属種を含有する外面を生じさせる。金属基材がスチールもしくはステンレススチールである場合には、熱処理後の外面は、多数の種の中でも、酸化鉄を富裕化させ、金属鉄が枯渇するようになる。金属基材がアルミニウムである場合には、熱処理は基材外面の酸化アルミニウム層厚を増加させる、または基材外面の酸化アルミニウム含有量を増加させる、または外面内の金属アルミニウムもしくはその他の金属の含有量を減少させる。
【0092】
[00104]外面が処理された基材を生じさせるまた別の方法は、基材表面の化学処理または保護膜を形成するステップである。化学処理は、酸(例、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、塩酸、ギ酸、およびクエン酸)、塩基(例、水酸化ナトリウム)、水、塩溶液(連、塩酸塩もしくはリン酸塩)を用いて、金属基材を横断する電位を適用して、または適用せずに実施できる。ステンレススチール基材の硝酸処理の場合には、例えば、処理された外面は主として金属酸化物富裕である。これは、薬物フィルムと接触している基材の最外層部分に含まれる金属鉄およびクロムの含有量における対応する減少を伴って、基材の外面の酸化クロム含有量の増加に反映される。化学処理は、典型的には金属基材を例えば30分間、15分間、5分間、もしくは3分間などの期間にわたり化学溶液中に浸漬するステップによって実施される。更に、超音波処理および/または熱も使用できる。化学処理後、基材は、典型的には洗浄して乾燥させる。化学的に低反応性の金属もしくは金属酸化物またはセラミック(例、金、白金、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素)は、(例えば蒸気溶着、電気めっき、ディップコーティング、スプレーコーティングなどによって)金属基材の化学的に修飾した外面を提供するために基材表面上に付着させることができる。化学保護膜を形成した後、基材は、典型的には適切な溶媒を用いて洗浄して乾燥させる。
【0093】
[00105]上記の処理アプローチは、制限なくスチール、ステンレススチール、アルミニウム、クロム、銅、鉄、チタンなどを含む極めて様々な金属および合金に適用できるが、典型的に使用されるものはアルミニウム、銅、およびスチール(ステンレススチールを含む)である。
【0094】
[00106]本発明を裏付けるために実施された試験では、様々な薬物が熱伝導性の、不透過性基材上のフィルムとして付着させ、基材は熱蒸気を生成するのに十分な温度まで加熱した。熱蒸気中の薬物エアロゾル粒子の純度が判定された。薬物分解生成物の分率を判定するために、エアロゾルは、典型的にはフィルタ、ガラスウール、インピンジャー、溶媒トラップ、またはコールドトラップなどのトラップ内に収集されるが、フィルタ内への収集が一般的に使用される技術である。トラップは、次に溶媒、例えばアセトニトリルを用いて抽出され、そして抽出物は当分野において既知である様々な分析方法による分析を受けさせるが、典型的にはガスおよび液体クロマトグラフィー法が使用されており、そして高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)が特に有用である。ガスもしくは液体クロマトグラフィー法は、質量分析計検出器もしくは紫外線吸収検出器などの検出器を含んでいる。理想的には、検出器システムは、重量での薬物組成物および薬物分解生成物の量の判定を可能にする。これは、実際には、当分野において周知のアプローチである、薬物組成物もしくは薬物分解生成物の成分の1つ以上の既知である質量(標準物質)についての分析後に入手されるシグナルを測定するステップと、エアロゾルの分析後に入手されたシグナルと2つ以上の標準物質の分析後に入手されたシグナルとを比較するステップによって達成される。多くの場合、薬物分解生成物の構造は知られていない、または薬物分解生成物の標準物質を入手できない。そのような場合には、薬物分解生成物が薬物組成物中の1種以上の薬物成分と同一の反応係数(例えば、紫外線吸収検出のためには、同一の吸光係数)を有していると想定することによって、薬物分解生成物の重量分率を計算することが許容される。そのような分析を実施する場合は、実用性のために、薬物分解生成物は、例えば薬物化合物の0.2%もしくは0.1%もしくは0.03%未満のような極めて小さな分率の薬物化合物より低い分率は、一般に分析から除外される。薬物分解生成物の重量パーセントを計算する際に薬物と薬物分解生成物とが同一反応係数を有すると想定する必要性が極めて頻回に生じるために、そのような前提が高い確率での妥当性を有する分析アプローチを使用するのが好ましい。これに関して、典型的には225nmでの紫外線の吸光によって検出を行う高性能液体クロマトグラフィーが使用される。化合物が250nmで実質的により強く吸光する場合においては、225nm以外のUV吸光度、最も一般的には250nmが使用される、または他の理由から当業者であれば250nmでの検出がHPLC分析を用いて重量で純度を推定する最も適切な手段であると見なすであろう。UVによる薬物の分析が実行できないある一定の場合には、純度を判定するためにGC/MSもしくはLC/MSなどの他の分析用ツールを使用することができる。
【0095】
[00107]本発明を裏付けるために、4種の基材材料:302/304ステンレススチール(箔および円筒)、T−430ステンレススチール箔、酸化ジルコニウムでコーティングした302/304スチール箔およびステンレススチール円筒を対象に例示的な試験(本発明を限定すると見なすべきではない)を実施した。これらの基材は、上述したように未処理もしくは処理のいずれかであった。
【0096】
[00108]ステンレススチール箔基材上にコーティングされた薬物フィルムを気化させるために、14〜17ボルトに充電されたコンデンサに接続された1対の電極間に基材を配置することによって、ステンレススチール基材を抵抗加熱した。図4Aは、コンデンサを13.5V(下方の線)、15V(中央の線)、および16V(上方の線)に充電することによって抵抗加熱されたステンレススチール箔基材について、細線熱電対(Omega、CO2−K型)を用いて気流のない場所で測定した時間(秒)に対する温度(℃)のプロット図である。13.5Vに充電すると、基材温度の上昇は約200〜300ミリ秒間以内に約250℃となった。コンデンサの電圧が上昇するにつれて、基材のピーク温度もまた上昇した。16Vへのコンデンサの充電は、200〜300ミリ秒間で箔基材温度を約375℃(最高約400℃)まで加熱した。表面基材温度は、未処理および処理基材の両方において類似であることが見いだされた。
【0097】
[00109]図4Bは、同様に細線熱電対(Omega、CO2−K型)によって測定された、16Vに充電された容量が1ファラッドのコンデンサによって加熱された厚さ0.005インチのステンレススチール箔基材についての時間−温度関係を示している。基材は約200ミリ秒間で400℃のピーク温度に到達し、そして1秒間の試験期間中その温度を維持した。
【0098】
[00110]また別の試験では、薬物フィルム基材として中空のステンレススチールチューブを使用した。薬物フィルムを気化させるために、直径13mmおよび長さ34mmを有する円筒形チューブを平行に配線した容量が1ファラッドのコンデンサ2つに接続した。図5A〜5Bは、空気中で約2秒間ずつ約400℃まで約3回加熱するステップによって熱処理されていた円筒形基材について、時間の関数として細線熱電対(Omega、CO2−K型)によって測定された基材温度を示している。そのような熱処理は、充電されたコンデンサから基材に電流を通過させるステップによって生成した。図5Bは、加熱の初期1秒間の詳細を示している。
【0099】
[00111]アルミニウムは、エアロゾル生成デバイスにおいて使用されるまた別の基材材料である。この実施形態におけるアルミニウム基材は、伝導手段によって、例えば薬物フィルムを気化させるためにアルミニウムを熱源(例、ハロゲンランプ)と接触させるステップによって加熱される。そのような技術は、ステンレススチールに比較してアルミニウムの熱伝導性が高く、そして電導性も高いために有用である。アルミニウム外面が処理された基材を得るために、基材は酸素を含有する炉内に挿入される。
【0100】
[00112]各基材タイプに対して、薬物を含むフィルムは、その薬物を含有する溶液を基材上に適用するステップによって形成された。様々な溶媒を使用することができ、一部には薬物の溶解特性および所望の溶液濃度に基づいて選択する。一般的溶媒の選択には、アセトン、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、その他の揮発性有機溶媒、ジメチルホルムアミド、水、および溶媒混合液が含まれた。薬物溶液はディップコーティングによって基材に適用したが、例えばスプレーコーティングなどの更に別の方法も同様に企図されている。あるいは、薬物の溶融物を基材に塗布することができる。
【0101】
[00113]適用すべきフィルムの厚さを判定するために、使用できる1つの方法は、基材の面積を判定して、以下の関係を用いて薬物フィルム厚を計算する方法である:
フィルム厚(cm)=薬物質量(g)/[薬物密度(g/cm)×基材面積(cm)]
【0102】
[00114]薬物質量は、薬物フィルムの形成前後に基材を計量するステップによって、または薬物を抽出してその量を分析法により測定するステップによって判定できる。薬物密度は、当業者には既知である、または参考文献もしくはCRCにおけるような標準テキストの中に見いだされる様々な技術によって実験的に判定できる。実際の薬物密度が知られていない場合は、単位密度の仮定が許容される。
【0103】
[00115]実施例に報告した試験では、既知である厚さの薬物フィルムを有する基材を、熱蒸気を生成するために十分な温度まで加熱した。熱蒸気の全部もしくは一部分を回収し、熱蒸気中のエアロゾル粒子の純度を判定するために、薬物分解生成物の存在について分析した。実施例1では、喘息の治療に使用される呼吸器用ステロイド剤であるフルニソリドを含有する基材アセンブリの調製について記載する。コーティングの前に、基材の半分を基材処理したが、残り半分は熱処理しなかった。厚さの範囲が約0.2μm〜約2.7μmであるフルニソリドのフィルムを含有する304ステンレススチール箔基材を調製した。コーティングしたステンレススチール基材を加熱し、各基材から生成した熱蒸気中の薬物エアロゾル粒子の純度を判定した。試験結果は図6に示した。予想外にも、未処理基材と比較して、熱処理基材からのエアロゾル純度においては顕著な改善が見られた。例えば、約0.2μmの厚さを有するフルニソリドフィルムについては、熱処理基材からの気化は、約93%の純度を有する熱蒸気を産生した。これとは対照的に、同等の厚さの未処理基材からのコーティングは約50%の純度の熱蒸気しか産生しなかった。しかし、驚くべきことに、フルニソリドがコーティングしたT−430ステンレス箔は、熱処理を施さなくても良好な蒸気純度を示す。更に、熱処理T−430箔からの気化後にフルニソリドエアロゾル純度の顕著な改善は見られなかった。更に、酸化ジルコニウムから製造された外面を有する304ステンレススチール箔上にコーティングされたフルニソリドは、熱処理を施さなくても良好なエアロゾル純度を提供する。同様の結果は、フルニソリドについては他のフィルム厚でも、そしてまた他の薬物についても得られた(実施例2、3、4および5を参照)。本明細書に提供した実施例は、耐酸化性金属もしくは金属酸化物の表面は、酸化傾向を示す金属基材と比較してエアロゾル純度が向上している。
【0104】
[00116]基材表面とエアロゾル純度との間の関係に加えて、フィルム厚が減少するにつれて純度が上昇するように、フィルム厚とエアロゾル粒子の純度との間にも関係が存在する。そのような関係は、熱処理基材と非熱処理基材の両方から見いだされた。例えば、熱処理基材からは、約0.2もしくは0.5μmの厚さを有するフルニソリドフィルムは、約93%の純度を有する熱蒸気を生成した。約2.6μmの厚さを有するフルニソリドフィルムは83%の純度を有する熱蒸気を生成した。非熱処理基材からは、約0.2の厚さを有するフルニソリドフィルムは、約50%の純度を有する熱蒸気を生成した。約1.5μmの厚さを有するフルニソリドフィルムは38%の純度を有する熱蒸気を生成した。
【0105】
[00117]基材の熱処理は、更にエアロゾル収率も向上させた。例えば、熱処理基材上の0.5μmのコーティングは約0.3mgのエアロゾル粒子を産生した。これは、フルニソリドコーティングされた、熱処理基材を備えるアセンブリを含有する試験装置から放出された、コーティングされた用量の97%〜100%に相当する。これとは対照的に、未処理基材上の1.5μmのコーティングは、試験装置から放出されたコーティングされた用量の約25%に相当する0.2mgのエアロゾル粒子しか産生しなかった。これは、熱処理表面上のはるかに薄いコーティングに比較して、未処理表面についての低い放出量率だけではなく、全体的に放出された少ない量の材料も表している。
【0106】
[00118]そこで、薬剤物質と接触している基材外面の性質ならびに薬物フィルムの厚さは、エアロゾル生成に影響を及ぼす。耐酸化性もしくは熱処理基材は、純粋エアロゾルおよび高いエアロゾル収率の両方を生成するために、例えば化学処理された表面、保護膜などの金属酸化物富裕な外面を備える他の基材と同様に有効な基材である。
【0107】
[00119]本薬物供給アセンブリのまた別の特徴は、被験者が使用した場合に治療量の薬物エアロゾルを産生するために基材の表面積が十分である点である。本発明のエアロゾル送達デバイスもしくはアセンブリについては、単位用量収率は、デバイスもしくはアセンブリの作動後に発生した熱蒸気を収集するステップと本明細書に記載したその組成を分析するステップと、既知である量の薬物を含有する一連の標準物質に比較した熱蒸気の分析結果を比較するステップと、によって判定することができる。熱蒸気として送達するための出発組成物中に必要とされる1種以上の薬物の量は、加熱したときに熱蒸気相に進入する1種以上の薬物の量(例えば、1種以上の出発薬物によって生成される用量)、熱蒸気相の1種以上の薬物のバイオアベイラビリティ、吸入の容量、および血漿中薬物濃度の関数としての1種以上の熱蒸気の力価に依存する。
【0108】
[00120]典型的には、熱蒸気のバイオアベイラビリティは20〜100%の範囲内であり、典型的には静脈内注射される薬物のバイオアベイラビリティに比較して50〜100%の範囲内である。単位血漿中薬物濃度当たりの1種以上の熱蒸気薬物の力価は、他の投与経路によって送達される1種以上の薬物の力価と同等以上である。これは、経口、筋肉内、または臨床作用が絶対血漿中薬物濃度よりはるかに強力に血漿中薬物濃度における上昇速度と実質的に関連している場合の他の投与経路での力価を超える可能性がある。一部の場合には、熱蒸気送達は、血漿中薬物濃度に比較して、脳などの標的器官中の薬物濃度を上昇させる(Lichtmanら、The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 279:69-76(1996))。そこで、現在は経口投与されている薬剤について、熱蒸気形にある薬物のヒトのための用量もしくは治療有効量は、一般に標準経口用量より少ない(例えば、標準経口用量の80%未満、より典型的には40%未満、そして最も一般的には20%未満)。現在は静脈内投与されている薬剤について、熱蒸気中の薬物用量は、一般に標準静脈内用量と類似であるか、より少ないであろう(例えば、標準静脈内用量の200%未満、典型的には100%未満、そして最も一般的には50%未満)。
【0109】
[00121]特定の症状を治療するために使用すべき熱蒸気の適切な用量の判定は、動物実験および用量設定(第I/II相)臨床試験によって実施できる。そのような動物実験は、試験動物を薬物熱蒸気に曝露させた後に血漿中薬物濃度を測定するステップを含んでいる。これらの実験は、更にまた熱蒸気の肺毒性の可能性を評価するためにも使用できる。試験動物がヒトに類似する呼吸器系を有する場合はこれらの結果のヒトへの正確な外挿が容易になるので、典型的には試験動物としてイヌもしくは霊長類などの哺乳動物が使用される。哺乳動物においてそのような実験を実施するステップは、更にまた哺乳動物における挙動もしくは生理学的反応の監視も可能にする。ヒトの初期用量レベルは、一般に、現在の標準静脈内用量、現在の標準経口用量、生理学的もしくは挙動的反応が哺乳動物の実験において入手された用量、およびヒトにおける薬物の治療作用と関連している血漿中薬物レベルを生じさせた哺乳動物モデルにおける用量より少ないか、もしくは同等であろう。用量の段階的増加は次に、最適な治療応答が確認されるまで、または用量制限毒性を呈するまで、ヒトにおいて実施できる。
【0110】
[00122]特定被験者での薬物の実際有効量は、(i)利用される特定の薬物もしくはその組み合わせ、(ii)処方された特定の組成物、(iii)投与形態、ならびに被験者の年齢、体重、および症状、そして(iv)治療されるエピソードの重症度に従って変動することがある。治療量を提供するための薬物の量は、一般に当分野において既知である、または上述したように判定できる。
【0111】
[00123](本明細書に記載したフィルム厚−純度の関係によって、所望のエアロゾル純度を産生するための)用量およびフィルム厚は、次の関係に従って、被験者によって使用されたときに治療量の薬物エアロゾルを産生するために十分な最小の基材表面積を判定する。
フィルム厚(cm)×薬物密度(g/cm)×基材面積(cm)=用量(g)
【0112】
[00124]上述したように、薬物密度は実験によって、または文献から判断できる、あるいは不明の場合は1g/ccであると推定できる。治療有効量を投与できる熱伝導性基材上の薬物フィルムから構成された薬物送達デバイスを調製するために、最小基材表面積は上述した関係を用いて判定される。例えば、フルニソリドについては6cm上にコーティングされた単位密度で0.5μmのフィルム厚は、治療量である0.3mgの薬物送達を提供する。治療量の化合物に対応するステップおよび気化により10%未満の化合物分解を生じるエアロゾルを形成する望みに基づくと、1mm/個(粒子)未満の表面積しかない基材は好ましくない。
【0113】
[00125]送達される薬物の実際用量、すなわち薬物供給製品から放出される収率は、他の要素とともに、基材を加熱すると気化される薬物フィルムの百分率に依存するであろう。そこで、薬物フィルムを加熱すると100%を産生する薬物フィルムおよび100%の薬物純度を有するエアロゾル粒子については、上記に提供した用量、厚さおよび表面積の間の関係は、被験者に提供される用量と直接相関している。収率および/または粒子純度が減少するにつれて、所望の用量を提供するために、必要に応じて基材表面積を調整することができる。同様に、当業者であれば認識できるように、特定フィルム厚に対する最小計算面積より大きな基材表面積を使用すると治療有効量の薬物を送達することができる。更に、当業者であれば理解できるように、選択されたフィルム厚から治療量を送達するために選択された表面積が、最小面積を超える場合は、フィルムが全表面積をコーティングする必要はない。基材外面の全部もしくは大部分が、金属酸化物富裕である薬剤物質と接触していることが有益ではあるが、そのように富裕であることが必要なのは基材表面の一部分だけである。
【0114】
[00126]上述したように、多数の薬物に対するエアロゾル粒子の純度は、フィルム厚と直接的に相関しており、ここで、より薄いフィルムは典型的により大きな純度を備えるエアロゾル粒子を生成する。そこで、開示した純度を最適化する1つの方法は、より薄いフィルムの使用である。同様に、エアロゾル収率もまたこの方法で最適化することができる。同様に、上述したように、基材の適切な処理はエアロゾル純度および/または収率を向上させることができる。本発明は、しかし更にエアロゾル純度もしくは収率のいずれかまたは両方を上昇させるために、基材のフィルム厚および処理を調整するステップに加えた、または組み合わせた戦略を企図している。これらの戦略には、薬物の構造もしくは形態を修飾するステップ、および/または不活性雰囲気中で熱蒸気を産生するステップが含まれる。
【0115】
[00127]そこで、一実施形態では、本発明は例えばプロドラッグ、またはその薬物の遊離塩基、遊離酸もしくは塩形の使用などの、その薬物の変化した形態の生成および/または使用を企図している。必ずしもすべての場合に当てはまるわけではないが、薬物の遊離塩基もしくは遊離酸形は、塩とは対照的に、一般に結果としてより高い純度もしくは収率のエアロゾルを生じさせる。そこで、本発明の一実施形態では、薬物の遊離塩基および遊離酸形が使用される。
【0116】
[00128]また別のアプローチは、例えばアルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスの制御された雰囲気下で熱蒸気を形成するステップによって所望のレベルの薬物純度を有する薬物エアロゾル粒子の生成を企図している。
【0117】
[00129]また別の態様では、本発明は、所望の純度を有する薬物組成物および所望の収率を提供するフィルムを有する薬物組成物のエアロゾル粒子を生成するためにエアロゾルデバイスにおいて使用するためのアセンブリを形成するステップの方法を企図している。本発明の一実施形態では、既知であるフィルム厚を備える薬物フィルムが基材(例、金属基材)上に作製される。基材は、フィルムを気化させるために加熱し、それによって薬物化合物を含有するエアロゾル粒子を生成する。熱蒸気中のエアロゾル粒子の純度、ならびに収率、すなわち本方法によって気化および送達される化合物の分率が判定される。基材外面は、次に上述した処理方法または所望のエアロゾル純度を産生するために当分野において既知である他の方法の使用によって最適化される。詳細には、本発明は、耐酸化性もしくは酸化物富裕な金属基材上の薬物組成物を実質的に気化させるステップと薬物粒子を形成するために上記蒸気を凝縮するステップと、を備える、基材上の薬物組成物フィルムを実質的に気化させて凝縮するステップによって生成される凝縮薬物エアロゾル中の薬物凝縮粒子の純度を上昇させる方法を含んでいる。例えば、厚さ1μmで特定薬物がコーティングされた非耐酸化性基材が80%の純度のエアロゾルを産生しなければならない場合は、基材は次に表面の金属酸化物含有量を上昇させるために熱処理して、0.5μmの薬物でコーティングすることができよう、そして薬物フィルムは気化すると純度95%のエアロゾルを産生できるであろう。
【0118】
[00130]処理された外面を備える金属基材上にコーティングされた薬物の薄いフィルム(例、0.02〜20μm)の生成を示している上記の実施例から理解できるように、本発明は医学分野において治療量の薬物を送達するための組成物および製品中に用途が見いだされる。そこで、本発明は、一態様では、薬物―エアロゾル粒子を含有する熱蒸気を生成するためのアセンブリを含んでいる。本アセンブリは、被験者、好ましくはヒト被験者に送達すべき薬物組成物のフィルムがコーティングされた処理された基材を含んでいる。薬物組成物フィルムの厚さは、薬物組成物フィルムの少なくとも50%を気化させるために十分な温度まで、典型的には少なくとも約50℃から約200℃まで、更により典型的には少なくとも約250℃、最も好ましくは少なくとも約350℃もしくは400℃まで基材を加熱するステップによってフィルムを気化させると、10%以下の薬物分解生成物を有する熱蒸気が生成されるように選択される。
【0119】
[00131]また別の態様では、本発明は、耐酸化性もしくは金属酸化物富裕な表面を有する基材および薬物を含むフィルムから構成される薬物供給アセンブリを形成する方法に関する。基材外面の金属酸化物の富裕化は、上述したように例えば加熱するステップもしくは化学処理するステップもしくはコーティングするステップによって行うことができる。薬物のフィルムは、次に外面上にコーティングされる。
【0120】
[00132]本発明のまた別の態様では、薄い薬物フィルムでコーティングされた耐酸化性もしくは金属酸化物富裕な外面を有する基材から構成された薬物供給アセンブリは、治療吸入量の薬物エアロゾル粒子を形成するために特に適している。薬物投与の吸入経路は、血流内への迅速な取り込み、経口投与のために必要とされる例えば2分の1のようなある薬物の吸入用量を可能にする初回通過効果の実質的減少の回避を含む、多数の薬物にとっていくつかの長所を提供する。肺への効率的なエアロゾルの送達は、粒子がある一定の浸透および沈降または拡散特性を有することを必要とする。より大きな粒子については、深部肺内の沈着は重力沈降によって発生し、粒子が空気力学的質量中央径(MMAD)として規定された1〜3.5μmの有効沈降サイズを有することを必要とする。より小さな粒子については、深部肺への沈着は、10〜100nm、典型的には20〜100nmの範囲内の粒径を有することを必要とする拡散プロセスによって発生する。100nm〜1μmの範囲内に含まれる粒径は沈着不良を呈する傾向があり、3.5μmを超える粒径は浸透不良を呈する傾向がある。このため、深部肺送達のための吸入用薬物送達デバイスはこれらの2つのサイズ範囲内の1つ、典型的には約1〜3μmのMMADにある粒子を有するエアロゾルを生成するはずである。フルニソリドなどの薬物については、喘息治療のために小気道に送達しなければならない場合は、1〜3μmの粒子もまた適切であるが、僅かに大きな粒子もまた有用な可能性がある。
【0121】
[00133]したがって、耐酸化性金属酸化物富裕な外面および約10%未満の薬物分解生成物、典型的には5%未満の薬物分解生成物、および最も典型的には約2.5%未満の薬物分解生成物とともに薬物組成物−エアロゾル粒子を有する熱蒸気を生成するために選択された薬物組成物フィルム厚を有する基材を含むエアロゾルデバイスに使用するための薬物供給アセンブリが提供される。ガス、空気もしくは不活性液体は、所望のMMADを有する粒子を生成するために有効な流量で基材上方を通過させる。流速が早いほど蒸気はより多く希釈され、したがって形成される粒子はより小さくなる。言い換えると、エアロゾルの粒径分布は、凝縮中の化合物蒸気の濃度によって判定される。この蒸気濃度は、順に、加熱基材の表面上方の気流が発生した蒸気を希釈する程度によって判定される。そこで、より小さな、もしくはより大きな粒子を得るために、チャンバの凝縮領域を通るガス速度は、空気容積流量を増加もしくは減少させるためにガス流量調節弁を改良することによって変更することができる。例えば、1〜3.5μmの範囲内のMMADを有する凝縮粒子を生成するために、チャンバは実質的に平滑面を備える壁を有していてもよく、そして選択されたガス流量は4〜50L/分の範囲内にあってもよい。
【0122】
[00134]更に、当業者であれば認識できるように、粒径は、所与の容積流量に対してガス線速度を増加もしくは減少させるためにチャンバ凝縮領域の断面を改良するステップおよび/またはチャンバ内で乱気流を生成するための構造の存在もしくは非存在によっても変化させることができる。そこで、例えば20〜100nmのMMADのサイズ範囲にある凝縮粒子を生成するために、チャンバは凝縮チャンバ内で乱気流を作り出すためのガス流障壁を提供することができる。これらの障壁は、典型的には基材表面から数千分の1インチ以内の距離に配置される。典型的には、基材の上方のガスの流量範囲は、約4〜50L/分、典型的には約5〜30L/分である。
【0123】
[00135]基材の上方にガスを通過させる前に、同時に、もしくは後に、薬物組成物フィルムを気化させるために基材に熱が加えられる。基材が加熱される温度は薬物の気化特性に従って変動することは理解されるであろうが、しかし基材は、典型的には少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、より典型的には少なくとも約250℃、および最も一般的には少なくとは約350℃もしくは400℃まで加熱される。基材を加熱するステップは、流動するガスの存在下で所望のサイズ範囲内にあるエアロゾル粒子を生成する薬物組成物蒸気を発生させる。一実施形態では、基材は約1秒間未満、約500ミリ秒間未満、およびいっそうより典型的には約200ミリ秒間未満にわたり加熱される。薬物エアロゾル粒子は、被験者によって吸入され肺に送達される。
【0124】
[00136]また別の実施形態では、例えば吸入療法において使用するために、薬物凝縮粒子のエアロゾルを生成するためのデバイスにおいて使用するための薬物供給アセンブリが提供される。本デバイスは、図2Aおよび2Bを参照して上述した要素を有するが、ここで、熱源は150℃を超える、または他の実施形態では200℃、250℃、350℃もしくは400℃を超える基材温度を生成するために、および2秒間以内の基材から薬物フィルムを実質的に気化させるために有効な速度でデバイス内の基材に熱を供給するように設計されている。基材上の薬物組成物のフィルムおよび処理された基材外面の厚さは、本デバイスが重量で10%未満の薬物分解生成物およびフィルム上の少なくとも50%の薬物組成物を含有するエアロゾルを生成するような厚さである。
【0125】
[00137]本デバイスは、2秒間以内の期間内に薬物組成物の実質的に完全な気化を生成するために、耐酸化性外面(例、金属酸化物富裕な外面)を有する基材、外面上の選択された薬物組成物のフィルム、および150℃を超える温度まで、または他の実施形態では200℃、250℃、350℃もしくは400℃を超える温度まで基材を加熱するために有効な速度で基材に熱を供給するための熱源から構成された薬物供給アセンブリを含んでいる。
【0126】
[00138]薬物フィルムは、熱伝導性基材の不浸透性表面上のフィルムから気化させたときに、エアロゾルが、フィルム厚の増加、特に0.05〜20ミクロンを超える厚さを備える薬物分解生成物が増加を示す薬物フィルムであってもよい。この一般的薬物組成物群については、基材上のフィルム厚は、例えば5%未満の薬物分解を伴う粒子エアロゾルの形成を可能にするこの範囲内の最大もしくはほぼ最大厚、典型的には0.05〜20ミクロンであろう。
【0127】
[00139]あるいは、アセンブリおよびデバイス内の薬物組成物は、20ミクロンを超えるフィルム厚でさえ5〜10%未満の分解を示す可能性がある。これらの化合物について、特に相当に多量の薬物用量が所望の場合には20ミクロンを超える、例えば20〜50ミクロンのフィルム厚を選択することができる。
【0128】
[00140]アセンブリおよびデバイス中の薬物組成物は、基材の耐酸化性もしくは処理された外面上のフィルムから気化させると、エアロゾルが所望の純度および薬物含有量を示すが、しかし未処理基材もしくは基準外面を有する基材上の同等のフィルムから気化させると、とりわけ、エアロゾル中の薬物組成物の少なくとも50%を回収せしめる選択された条件下でエアロゾル粒子を生成するために薬物組成物フィルムが気化されて凝縮されると、純度の低下もしくは薬物含有量の減少を示す薬物組成物であってもよい。詳細には、本アセンブリは、生成されたエアロゾルが、(i)重量で約10%未満の薬物分解生成物および(ii)基材が金属酸化物富裕な基材表面ではない場合に生成されるエアロゾルに比較して薬物分解生成物が減少したアセンブリであってもよい。
【0129】
[00141]本アセンブリは、基材を150℃を超える温度まで、または他の実施形態では200℃、250℃、350℃、もしくは400℃を超える温度まで加熱する、そして2秒間以内に化合物の実質的に完全な気化を発生させる速度で熱処理されている、または金属酸化物富裕な外面を有する基材を加熱するステップによって凝縮エアロゾルを生成するための方法において有用である。
【0130】
[00142]以下の実施例では、本明細書に記載した本発明を詳細に例示するが、本発明のいかなる範囲をも制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0131】
[実施例1]
材料
[00143]溶媒は、試薬等級以上のものであり、市販で購入した。
【0132】
[00144]他に特別に明記しない限り、実施例では、薬物の遊離塩基もしくは遊離酸形を使用した。
【0133】
方法
A. 薬物コーティング液の調製
[00145]薬物を適切な溶媒中に溶解させた。一般的な溶媒選択肢には、メタノール、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、3:1のクロロホルム:メタノール混合液、1:1のジクロロメタン:メチルエチルケトン混合液、ジメチルホルムアミド、および脱イオン水が含まれた。化合物を溶解させるための必要に応じて、超音波および/または熱を使用した。薬物濃度は、典型的には50〜200mg/mLであった。
【0134】
B. 薬物をコーティングしたステンレススチール箔基材の調製
[00146]1.3cm×7.0cmの寸法を有する、304型(厚さ0.0125cm、Thin Metal Sales社)、430型(厚さ0.0124cm、AK steels社)、厚さ1.5ミクロンの酸化ジルコニウム(thin film research corporationによって溶着させた蒸気)をコーティングした304型の清潔なステンレススチール箔のストリップに薬物溶液でディップコーティングした。この箔を次に、浸漬した箔の端部の最後の2〜3cmから薬物を洗い流すために溶媒中に部分的に3回浸漬した。あるいは、カミソリの刃を用いてこの領域から薬物コーティングを注意深く削り落とした。最終コーティング面積は、箔の両面で2.0〜2.5cm×1.3cmとなり、総面積は5.2〜6.5cmとなった。箔は上述したように調製し、次に一部は標準物質としてメタノールもしくはアセトニトリルを用いて抽出した。薬物の量は、定量的HPLC分析から判定した。既知である薬物コーティング表面積を使用して、厚さは次に、
フィルム厚(cm)=薬物質量(g)/[薬物密度(g/cm)×基材面積(cm)]
によって得た。薬物密度が不明の場合は、1g/cmの数値を仮定する。ミクロン単位でのフィルム厚は、cm単位でのフィルム厚に10,000を掛けることによって入手する。
【0135】
[00147]乾燥させた後、薬物コーティング箔をDelrin(登録商標)ブロック(気道)および電極として機能した真鍮の棒から構成された気化チャンバ内に入れた。気道の寸法は、高さ1.3cm×幅2.6cm×長さ8.9cmであった。薬物コーティング箔は、薬物コーティング区間が2組の電極間にあるように気化チャンバ内に挿入した。気化チャンバの上部を固定した後、電極を容量が1ファラッドのコンデンサ(Phoenix Gold社)に接続した。気化チャンバの背部を2つのTeflon(登録商標)ミクロンフィルタ(Savillex社)およびフィルタハウジングに接続し、これらを順に家庭用真空掃除機に接続した。開始から十分な気流を送り(典型的には30L/分=1.5m/秒)、その時点にコンデンサに電源を用いて、典型的には14〜17ボルトに充電した。回路は、薬物コーティング箔を約280〜430℃(赤外線カメラ(FLIR Thermacam SC3000)を用いて測定)に約200ミリ秒で抵抗加熱することを引き起こすスイッチを用いて閉鎖した(比較のために、図4Aの、静止空気中での熱電帯測定を参照されたい)。薬物が気化した後に、気流を停止させ、アセトニトリルを用いてTeflonフィルタを抽出した。フィルタから抽出した薬物は、一般に純度率を判定するための不純物の検出を目的とする勾配法を用いて一般に225nmでのHPLC UV吸光度によって分析した。同様に、抽出した薬物は、最初に基材上にコーティングされた薬物の質量に基づいて、収率を判定するために定量した。回収率は、基材上に残っているいずれかの薬物を定量するステップと、これをフィルタ内に回収された薬物の量に添加するステップと、そして最初に基材上にコーティングされた薬物の質量と比較するステップと、によって判定した。
【0136】
C. 薬物をコーティングしたステンレススチール円筒形基材の調製
[00148]薄い壁、典型的には厚さ0.12mmの壁厚、13mmの径、および34mmの長さを備える中空ステンレススチール円筒は、残留しているあらゆる揮発性物質を除去してステンレススチール表面を熱処理するために、ジクロロメタン、メタノール、およびアセトン中で洗浄し、次に乾燥させ、少なくとも1回燃やした。基材は、次に薬物コーティング溶液を用いてディップコーティングした。ディップコーティングは、基材表面の外側で薬物の薄層を生成するためにコンピュータ制御のディップコーティング機を用いて実施した。基材を典型的には5〜25cm/秒の速度で薬物溶液中に入れ、次に溶媒から取り出した(基材上により多量の物質をコーティングするためには、基材を溶媒からより迅速に除去した、または使用した溶液をさらに濃縮した)。基材は次に、ヒュームフード内で30分間乾燥させた。ジメチルホルムアミド(DMF)または水混合液のいずれかをディップコーティング溶媒として使用した場合は、基材を少なくとも1時間にわたり乾燥器の内側で真空乾燥させた。円筒の薬物コーティング部分は、全体で8cmの表面積を有していた。薬物に対して単位密度を仮定することによって、初期薬物コーティング厚を計算した。基材上にコーティングされた薬物の量は、本明細書に記載した方法と同一方法で判定した。基材をコーティングし、次にメタノールもしくはアセトニトリルを用いて抽出し、基材上にコーティングされた薬物の質量を判定するために、定量的HPLC法を用いて分析した。
【0137】
[00149]薬物コーティング基材は、Teflon(登録商標)フィルタ(Savillex社)を装備したフィルタホルダへTygon(登録商標)チュービングを介して出口端に接続した周囲のガラスチューブ内に配置した。チュービングとフィルタとの接合部は、パラフィンフィルムで密閉した。基材は、平行に配線して高電流リレーによって制御される2つの容量が1ファラッドのコンデンサに接続するための取付具内に配置した。コンデンサは別個の電源によって約18〜22ボルトに充電し、スイッチを閉鎖してコンデンサに基材内に放電させることによってほとんどの電力を基材に導いた。基材は、100ミリ秒間で約300〜500℃の温度まで加熱した(図5Aおよび5Bを参照)。加熱プロセスは、2ミクロンのTeflon(登録商標)フィルタ内に15L/分の気流下で気化した薬物エアロゾルを流入させて実施した。
【0138】
[00150]気化させた後、フィルタ上に捕捉したエアロゾルを定量および分析のために回収した。フィルタ内に回収した物質の量を使用して、基材上にコーティングされた薬物の質量に基づいて、収率を判定した。フィルタ内に回収した物質は、一般に熱蒸気の純度を判定するための不純物の検出を目的とする勾配法を用いて典型的には225nmでのHPLC UV吸光度によっても分析した。ガラススリーブ上に付着させた、もしくは基材上に残留している物質もまた回収し、そして総回収率を判定するために定量した((フィルタ内の薬物の質量+基材およびガラススリーブ上に残留している薬物の質量)/基材上にコーティングされた薬物の質量)×100)。UV吸収を示さない化合物に対しては、GC/MSもしくはLC/MSを使用して、純度を判定して回収率を定量した。一部のサンプルについては、LC/MSによって詳細に分析し、薬物およびいずれかの分解生成物の分子量の確証を行った。
【0139】
D. ステンレススチール箔基材の熱処理
[00151]ステンレススチール箔(304およびT−430)を有機溶媒(例、ジクロロメタン、アセトン、もしくはアセトニトリル)中で洗浄し、次に6時間にわたり350℃の炉内(空気中)で加熱した。箔の外観は顕著に変化し、銀色からブロンズ色に変化した。
【0140】
E. ステンレススチール円筒形基材の熱処理
[00152]ステンレススチール円筒形基材を有機溶媒(例、ジクロロメタン、アセトン、もしくはアセトニトリル)中で洗浄し、次に空気中で(上記で薬物コーティング基材について記載したように)コンデンサから非コーティング基材に電流を通過させるステップによっておよそ5秒間にわたり300℃〜500℃まで加熱した。熱処理は1〜5回繰り返した。
【0141】
F. ステンレススチール箔基材の塩基処理
[00153]ステンレススチール箔を1N水酸化ナトリウム溶液中に30分間浸漬し、5分間超音波処理し、そして脱イオン水を用いて完全に洗浄した。更に、塩基処理した箔をエタノール中で3〜5分間にわたり超音波処理し、脱イオン水、次にアセトンを用いて洗浄し、50℃で乾燥した。
【0142】
G. ステンレススチール箔基材のクエン酸処理
[00154]7.0gのCitriSurf 2250溶液(Stellar Solutions)は、35gの脱イオン水を添加するステップによって5倍に希釈した。塩基により洗浄したステンレススチール箔を15分間にわたり高温CitriSurf溶液(90℃)中に懸濁させ、次に超音波処理した。最後に、表面処理した箔は脱イオン水を用いて完全に洗浄し、風乾した。あるいは、2.0gのクエン酸(Aldrich社)を38.0gの蒸留脱イオン水中に溶解させた。塩基により洗浄したステンレス箔を15分間にわたり高温クエン酸溶液(90℃)中に懸濁させ、次に超音波処理した。最後に、箔は脱イオン水を用いて完全に洗浄し、風乾した。
【0143】
H. ステンレススチール箔基材のリン酸処理
[00155]4.0gの85%オルトリン酸は、36.0gの脱イオン水を添加するステップによって希釈した。塩基により洗浄したステンレス箔を15分間にわたり高温リン酸溶液(90℃)中に懸濁させ、次に超音波処理した。最後に、処理した箔は脱イオン水を用いて完全に洗浄し、風乾した。
【0144】
I. ステンレススチール箔基材の酸洗い
[00156]20%硝酸および5%フッ化水素酸を含有する酸洗い溶液は、14.3mLの70% HNOおよび5.2mLの48% HFを30.5mLの脱イオン水に添加するステップによって調製した。塩基で洗浄したステンレススチール箔を3分間にわたり酸洗い液中に懸濁させ、1分間にわたり超音波処理し(酸洗い液が僅かに緑色に変色する)、そして次に脱イオン水を用いて完全に洗浄した。1バッチの酸洗いステンレススチール箔サンプルを追加して1N NaOHを用いて処理し、次に水で洗浄したが、他のバッチのサンプルはアセトンを用いて洗浄した。いずれも100℃で乾燥させた。
【0145】
J. ステンレススチール箔基材の硝酸処理
[00157]4.0gの70%硝酸は、36gの脱イオン水を添加するステップによって希釈した。塩基により洗浄したステンレススチール箔を希硝酸溶液中に懸濁させ、5分間にわたり超音波処理した。ステンレススチール箔をアセトンにより洗い流し、脱イオン水を用いて完全に洗浄した後に風乾した。
【0146】
K. 304ステンレススチール上の酸化ジルコニウム保護膜
[00158]厚さ1.5ミクロンの酸化ジルコニウムコーティングを、Thin Films Research Incorporation(マサチューセッツ州ウェストフォード)の研究施設でイオンアシスト物理蒸着プロセスを用いて厚さ0.0125cmの304ステンレススチール箔の清潔な表面上に付着させた。
【0147】
[実施例2]
[00159]清潔な処理されたステンレススチール基材304およびT−430からのフルニソリドエアロゾルの生成:1.3cm×7.0cmの寸法を有するスチール箔304(厚さ0.0125cm、Thin Metal Sales社)、T−430(厚さ0.0125cm、AK steels社)、および酸化ジルコニウムでコーティングされた304箔(厚さ0.0125cm、厚さ1.5ミクロンのZrO保護膜、Thin films Research社)は、30分間にわたり6.5%のRidoline 298溶液中での超音波処理によって洗浄し、次に脱イオン水およびアセトンを用いて完全に洗い流した。非酸化ジルコニウムコーティング304箔の半分およびT−430スチール箔の半分を空気雰囲気下で6時間にわたり350℃の炉内で加熱した。加熱の結果として、これらの箔は酸化し、銀色からブロンズ色にの変色が見られた。全部の箔をジクロロメタン中のフルニソリド溶液でディップコーティングした。スチール箔上のフルニソリドコーティング厚を変化させるために、溶液の濃度を変動させた。乾燥後、カミソリの刃を用いて最後の2〜3cmからの薬物コーティングを注意深く削り落とした。箔はその後、本明細書の記載のとおり、気化させた。放電電圧は、赤外線カメラ(FLIR Thermacam SC3000)によって測定したときに約350℃のピーク基材温度を達成するために、304ステンレス箔については13.5Vに、T−430については14.5Vに、そして酸化ジルコニウムコーティングを施した304については14.0Vに設定した。
【0148】
[00160]すべての場合に、気化後に箔上に残留している薬物の量は負荷用量の15%未満であった。
【0149】
[00161]0.5μmの薬物フィルム厚を有する熱処理基材304については、0.253mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、100%の収率に対して0.253mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は94.4%であった。100%の総回収率に対して、試験装置および基材から0.253mgの総質量が回収された。
【0150】
[00162]0.9μmの薬物フィルム厚を有する非熱処理基材304については、0.485mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、42.4%の収率に対して、0.206mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は36.3%であった。43.3%の総回収率に対して、試験装置および基材から総質量で0.210mgが回収された。
【0151】
[00163]1.3μmの薬物フィルム厚を有する非熱処理基材T−430については、0.68mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、69.1%の収率に対して、0.47mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は82.8%であった。75.0%の総回収率に対して、試験装置および基材から0.51mgの総質量が回収された。
【0152】
[00164]1.2μmの薬物フィルム厚を有する基材304については、0.65mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、24.7%の収率に対して、0.161mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は30.2%であった。26.4%の総回収率に対して、試験装置および基材から0.172mgの総質量が回収された。
【0153】
[00165]1.5μmの薬物フィルム厚を有する熱処理基材304については、0.443mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、57.5%の収率に対して、0.255mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は76.5%であった。59.9%の総回収率に対して、試験装置および基材から0.265mgの総質量が回収された。
【0154】
[00166]0.8μmの薬物フィルム厚を有する酸化ジルコニウムコーティング基材304については、0.44mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、55.9%の収率に対して、0.246mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は90.0%であった。70.0%の総回収率に対して、試験装置および基材から0.31mgの総質量が回収された。
【0155】
[00167]熱処理対非熱処理ステンレススチール基材304からの0.2μm〜2.6μmの間のフルニソリドフィルムの加熱後に形成された薬物熱蒸気の純度は、図6に示した。熱処理箔は、フルニソリドエアロゾル純度の顕著な上昇を示している。更に、上述したように、酸化ジルコニウムコーティングを施した未処理T−430箔および304箔もまた、未処理304箔と比較して純度の向上を示している。図7を参照されたい。
【0156】
[実施例3]
[00168]熱処理外面を有する熱処理ステンレススチール基材からのエレトリプタンエアロゾルの生成:1.3cm×7.0cmの寸法を有する304ステンレススチール箔(厚さ0.0125cm、Thin Metal Sales社)のストリップをRidoline 298水溶液中での30分間にわたる超音波処理により洗浄し、その後に脱イオン水およびアセトンを用いて完全に洗い流した。箔の半分は、炉内への気流を用いて350℃の炉内で6時間にわたり加熱した。加熱の結果として、これらの箔は強度に酸化し、銀色からブロンズ色への変色が見られた。全部の箔をアセトン中のエレトリプタン溶液でディップコーティングした。ステンレス箔上のエレトリプタンコーティング厚を変化させるために、溶液の濃度を変動させた。箔は引き続き、本明細書に記載したとおり、気化させた。放電電圧は17.5ボルトに設定したが、これは赤外線カメラ(FLIR Thermacam SC3000)によって測定した場合に、約450℃のピーク基材温度を生じさせた。
【0157】
[00169]すべての場合に、気化後に箔上に残留している薬物の量は負荷用量の15%未満であった。
【0158】
[00170]4.2μmの薬物フィルム厚を有する熱処理基材については、2.26mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、78.9%の収率に対して、1.78mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は95.6%であった。79.3%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から1.79mgの総質量が回収された。
【0159】
[00171]4.2μmの薬物フィルム厚を有する非熱処理基材については、2.26mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、72.9%の収率に対して、1.647mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は92.8%であった。73%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から1.65mgの総質量が回収された。
【0160】
[00172]4.0〜9.5μmの薬物熱蒸気純度は、図8に示されている。熱処理箔は、エレトリプタンエアロゾル純度の上昇を示している。
【0161】
[実施例4]
[00173]熱処理ステンレススチール基材からのアルプラゾラムエアロゾルの生成:6.8cm×1.3cmの寸法を有する302/304ステンレススチール箔(厚さ0.00125cm、Thin Metal Sales社)は、ジクロロメタンを用いて洗い流しによって洗浄した。箔の3分の1は、次に1時間にわたり350℃の炉内で加熱した。箔のまた別の3分の1は、次に1時間にわたり350℃の炉内で加熱した。加熱の結果として、これらの箔は強度に酸化し、銀色からブロンズ色への変色が見られた。全部の箔をジクロロメタン中のアルプラゾラム溶液でディップコーティングした。溶液の濃度は、50mg/mLであった。この箔を次に、浸漬した箔の端部の底部から薬物を洗い流すために純粋ジクロロメタン中に部分的に2回浸漬した。最終コーティング面積は、箔の両面で2cm×1.3cmとなり、総面積は約5.2cmとなった。コントロール群および2つの熱処理群両方の数枚の箔は、アセトニトリルを用いて即時に抽出し、HPLC上で定量した。これらの量を使用してアルプラゾラムの負荷用量を判定したが、これを既知であるコーティング表面積と結び付けると、薬物コーティング厚を計算することができた。種々のロットの箔上にコーティングされたアルプラゾラムの量において有意差は見られなかった。コーティング厚は0.8〜1.0μmであると計算された。
【0162】
[00174]乾燥させた後、薬物コーティング箔をDelrin(登録商標)ブロック(気道)および電極として機能した真鍮の棒から構成された気化チャンバ内に入れた。気道の寸法は、高さ1.3cm×幅2.6cm×長さ8.9cmであった。薬物コーティング箔は、薬物コーティング区間が2組の電極間に位置するように気化チャンバ内に挿入した。気化チャンバの上部を固定した後、電極を容量が1ファラッドのコンデンサ(Phoenix Gold社)に接続した。気化チャンバの背部をガラスファイバー製フィルタ(Pall Gelman社)およびフィルタハウジングに接続し、これらを順に家庭用真空掃除機に接続した。気流を開始させ(45L/分)、その時点にコンデンサに電源を用いて7.0ボルトに充電された。回路は、薬物コーティング箔を抵抗加熱させるスイッチを用いて閉じた。薬物が気化した後に、気流を停止させ、アセトニトリルを用いてフィルタを抽出した。フィルタから抽出した薬物は、純度率を判定するための不純物の検出を目的とする勾配法を用いて225nmでのHPLC UV吸光度によって分析した。すべての場合に、気化後に箔上に残留している薬物の量は負荷用量の10%未満であった。
【0163】
[00175]未処理基材については、0.419mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、96.8%の収率に対して、0.405mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は98.4%であった。96.8%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.405mgの総質量が回収された。
【0164】
[00176]1時間熱処理した基材については、0.442mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、95.7%の収率に対して、0.422mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は99.5%であった。96.5%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.427mgの総質量が回収された。
【0165】
[00177]6時間熱処理した基材については、0.519mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、99.4%の収率に対して、0.516mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は99.6%であった。フィルタ、試験装置、および基材から回収された薬物総量は、約100%であった。
【0166】
[00178]図9は、3種の条件各々に対して2回の実験の純度を示している。熱処理ステンレススチール基材を用いることにより薬物蒸気純度が上昇することに留意されたい。
【0167】
[実施例5]
[00179]金属酸化物富裕な外面を有する熱処理および酸処理ステンレススチール基材からのブメタニドエアロゾルの生成:1.3cm×7.0cmの寸法を有する304ステンレススチール箔(厚さ0.0125cm、Thin Metal Sales社)のストリップをRidoline 298水溶液中での30分間にわたる超音波処理により洗浄し、その後に脱イオン水およびアセトンを用いて完全に洗い流した。箔の3分の1は、空気雰囲気中で350℃の炉内で6時間にわたり加熱した。加熱の結果として、これらの箔は強度に酸化し、銀色からブロンズ色への変色が見られた。また別の箔の3分の1は、超音波処理を30分間行うこと以外は手順Jに従って、硝酸中で洗浄するステップによって処理した。全部の箔をメタノール:ジクロロメタン5:1中のブメタニド溶液でディップコーティングした。カミソリの刃を用いて、最後の数cmからの薬物コーティングを注意深く削り落とした。最終コーティング面積は、箔の両面で2.2cm×1.3cmとなり、総面積は約5.5cmとなった。コントロール群、酸処理群および熱処理群の数枚の箔は、アセトニトリルを用いて抽出し、HPLC上で定量した。これらの量から、ブメタニドの平均負荷用量が0.77mgであると判定した。種々のロットの箔上にコーティングされたブメタニドの量において有意差は見られなかった。既知であるコーティング表面積と結び付けると、これによって薬物コーティング厚が平均1.4μmであると計算することができた。箔は引き続き、本明細書に記載したとおり、気化させた。放電電圧は15.0ボルトに設定し、これにより赤外線カメラ(FLIR Thermacam SC3000)によって測定した場合に、約320℃のピーク基材温度を生じさせた。
【0168】
[00180]すべての場合において、気化後に箔上に残留している薬物の量は負荷用量の5%未満であった。
【0169】
[00181]熱処理基材については、0.77mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、52%の収率に対して、0.40mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は99.3%であった。53%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.41mgの総質量が回収された。
【0170】
[00182]酸処理基材については、0.77mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、53%の収率に対して、0.41mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は98.3%であった。55%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.42mgの総質量が回収された。
【0171】
[00183]未処理基材については、0.77mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、48%の収率に対して、0.37mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は97.9%であった。48%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.37mgの総質量が回収された。
【0172】
[実施例6]
[00184]清潔な処理されたステンレス箔304およびT−430からのブデゾニドエアロゾルの生成:1.3cm×7.0cmの寸法を有するステンレス304箔(厚さ0.0125cm、Thin Metal Sales社)、T−430(厚さ0.0125cm、AK steels社)、および酸化ジルコニウムでコーティングされた304箔(厚さ0.0125cm、厚さ1.5ミクロンのZrO保護膜、Thin films Research社)を、6.5%のRidoline 298溶液中での超音波処理によって30分間にわたり洗浄し、次に脱イオン水およびアセトンを用いて完全に洗い流した。304およびT−430スチール箔の3分の1は、空気雰囲気中において350℃の炉内で6時間にわたり加熱した。加熱の結果として、これらの箔は酸化し、銀色からブロンズ色への変色が見られた。全部の箔をジクロロメタン中のブデゾニド溶液でディップコーティングした。カミソリの刃を用いて、最後の数cmから薬物コーティングを注意深く削り落とした。最終コーティング面積は、箔の両面で2.2〜2.5cm×1.3cmとなり、総面積は約5.7〜6.5cmとなった。コントロール群の数枚の箔は、アセトニトリルを用いて抽出し、HPLC上で定量した。これらの量から、ブデゾニドの平均負荷用量が0.55mg(清潔な熱処理された304、清潔なT−430)、0.85mg(熱処理T−430)、および0.28mg(酸化ジルコニウムコーティングが施された304)であることが判明した。既知であるコーティング表面積と結び付けると、これによって薬物コーティング厚の平均を計算することができた。箔は引き続き、本明細書に記載したとおり、気化させた。放電電圧は、赤外線カメラ(FLIR Thermacam SC3000)によって測定したときに約350℃のピーク基材温度を達成するために、304スチール箔については13.5Vに、T−430については14.5Vに、そして酸化ジルコニウムコーティングを施した304については14.0Vに設定した。
【0173】
[00185]すべての場合において、気化後に箔上に残留している薬物の量は負荷用量の5%未満であった。
【0174】
[00186]清潔な基材304については、0.55mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、12.7%の収率に対して、0.067mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は23.1%であった。試験装置、および基材からは極微量のブデゾニドが回収された。
【0175】
[00187]清潔な基材T−430については、0.55mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、68.5%の収率に対して、0.37mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は73.3%であった。80%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.44mgの総質量が回収された。
【0176】
[00188]熱処理基材304については、0.60mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、62%の収率に対して、0.373mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は71.6%であった。62%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.373mgの総質量が回収された。
【0177】
[00189]熱処理基材T−430については、0.85mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物を気化させた後、55.5%の収率に対して、0.47mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は66.9%であった。9%. 55.5%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.472mgの総質量が回収された。
【0178】
[00190]酸化ジルコニウムコーティングが施された304基材については、0.28mgの薬物が基材に適用された。この基材からの薬物の気化後、57.8%の収率に対して、0.162mgがフィルタから回収された。薬物エアロゾル粒子の純度は81.8%であった。62.8%の総回収率に対して、フィルタ、試験装置および基材から0.176mgの総質量が回収された。
【0179】
[実施例7]
[00191]未処理および熱処理304およびT−430箔に関するX線光電子分光法試験。基材の表面元素の組成を判定するために、未処理および熱処理(350℃の空気中で6時間実施)スチール箔304およびT−430を対象にXPS分析を実施した(カリフォルニア州サニーベル所在のCharles Evans & Associates)。薬物の化学蒸気純度は加熱基材の表面特性と直接相関していると思われているために。XPSデータは、相対感受性要素および均質層を仮定したモデルを用いて定量した。分析量は、分析の面積(スポットサイズもしくはアパーチャーサイズ)および情報の深さの積である。光電子はX線浸透深さ(典型的にはミクロン単位)内で生成されるが、一番上の3つの光電子脱出深さ内の光電子だけが検出される。この実験の分析パラメータは、表1に記載されている。脱出深さは約15〜35Åであり、これは約50〜100Åの分析深さを導く。典型的には、シグナルの95%はこの深さ内から発生する。表2および3から、未処理および熱処理ステンレス箔304および430の化学組成が明らかである。これらの2つの表から、熱処理が表面上の酸化物含有量を増加させ、反応性金属(例、Fe)含有量を減少させることが明らかである。更に、より高温での酸化抵抗性について既知であるT−430ステンレス箔は、その表面上で低含有量の純粋金属もしくはそれらの合金(例、鉄は少量でニッケルを有しない)および高含有量の不活性金属酸化物(例、酸化ケイ素)を有している。おそらく、これは304ステンレス箔に比較してT−430ステンレス箔の上方で観察された薬物フルニソリドおよびブデゾニドの純度の向上についての理由を説明している(図7および11を参照されたい)。
【0180】
【表1】

【0181】
【表2】

【0182】
【表3】

【0183】
[00192]上記の実施例は、本発明の様々な態様および本発明の方法の実践を例示している。これらの実施例は、本発明の多数の様々な実施形態の包括的な説明を提供することは企図されていない。そこで、上記の発明を明確に理解できるように例示および実施例によって詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神もしくは範囲から逸脱することなく多数の変更および改良を加えることができることを容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1A】本発明による薬物供給アセンブリの一般的な実施形態の断面図を示している。
【図1B】本発明による薬物供給アセンブリの一般的な実施形態の断面図を示している。
【図2A】薬物供給アセンブリを組み込んでいる薬物送達デバイスの透視図を示している。
【図2B】薬物供給アセンブリを組み込んでいる他の薬物送達デバイスの図を示しており、デバイス構成要素は未組み立て形で示されている。
【図3A】薬物供給アセンブリを備える薬物供給デバイスからのエアロゾル粒子の生成を示している高速度写真を示している。
【図3B】薬物供給アセンブリを備える薬物供給デバイスからのエアロゾル粒子の生成を示している高速度写真を示している。
【図3C】薬物供給アセンブリを備える薬物供給デバイスからのエアロゾル粒子の生成を示している高速度写真を示している。
【図3D】薬物供給アセンブリを備える薬物供給デバイスからのエアロゾル粒子の生成を示している高速度写真を示している。
【図3E】薬物供給アセンブリを備える薬物供給デバイスからのエアロゾル粒子の生成を示している高速度写真を示している。
【図4A】時間の関数としての、細線熱電対(Omega社、CO2−K型)を用いて静止空気中で測定した基材温度上昇のプロット図を示している。図4Aにおける基材は、13.5ボルト(下方の線)、15ボルト(中央の線)、および16ボルト(下方の線)に充電したコンデンサへの接続によって抵抗加熱された。
【図4B】時間の関数としての、細線熱電対(Omega社、CO2−K型)を用いて静止空気中で測定した基材温度上昇のプロット図を示している。図4Bにおける基材は、コンデンサの16ボルトでの放電によって抵抗加熱された。
【図5A】21ボルトでに充電したコンデンサへの接続により抵抗加熱された中空ステンレススチール円筒形基材についての、時間(秒)の関数としての、細線熱電対(Omega社、CO2−K型)を用いて静止空気中で測定した基材温度(℃)のプロット図を示しており、4秒間にわたる温度プロファイルを示している。
【図5B】21ボルトで充電したコンデンサへの接続により抵抗加熱した中空ステンレススチール円筒形基材についての、時間(秒)の関数としての、細線熱電対(Omega社、CO2−K型)を用いて静止空気中で測定した基材温度(℃)のプロット図を示しており、加熱の初期1秒間にわたる詳細な温度プロファイルを示している。
【図6】未処理ステンレススチール箔基材(菱形)および熱処理ステンレススチール箔基材(四角形)を用いて生成したフルニソリドエアロゾルについての純度対フィルム厚を比較したプロット図を示している。
【図7】304、T−430および酸化ジルコニウムがコーティングされた304の未処理および熱処理ステンレス箔上のフルニソリド蒸気の純度を示している棒グラフである。清潔なステンレス箔T−430は熱処理をしなくても極めて優れた純度を提供することに留意されたい。同様に、酸化ジルコニウムコーティング(化学処理)ステンレス箔は、熱処理および未処理ステンレス箔の両方と比較して極めて優れた蒸気純度を提供する。
【図8】未処理ステンレススチール箔基材(黒塗りの丸)および熱処理ステンレススチール箔基材(白抜きの丸)を用いて生成したエレトリプタンエアロゾルについての純度対フィルム厚を比較したプロット図を示している。
【図9】未処理ステンレススチール箔基材、350℃で1時間にわたり熱処理したステンレススチール箔基材、および350℃で6時間にわたり熱処理したステンレススチール箔基材を用いて生成したアルプラゾラムエアロゾルの純度を比較した棒グラフを示している。
【図10】350℃で6時間にわたり熱処理したステンレススチール箔基材、硝酸を用いて処理したステンレススチール箔基材および未処理ステンレススチール箔基材を用いて生成したブメタニドエアロゾルの純度を比較した棒グラフを示している。
【図11】未処理および熱処理ステンレス箔304およびT−430ならびに酸化ジルコニウムコーティングステンレス箔304上のブデゾニドの純度を示している棒グラフである。清潔なステンレス箔T−430は、熱処理をしなくても極めて優れた純度を提供することに留意されたい。同様に、酸化ジルコニウムコーティング(化学処理)ステンレス箔は、熱処理および未処理スチール箔両方に比較して極めて優れた蒸気純度を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性基材と、
前記熱伝導性基材上の非反応性外面と、
前記非反応性外面上に化合物を備えるフィルムと、
を備える薬物供給アセンブリ。
【請求項2】
前記熱伝導性基材が金属である、請求項1に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項3】
前記金属が、スチール、ステンレススチール、アルミニウム、クロム、銅、鉄、およびチタンから成る群より選択される、請求項2に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項4】
前記ステンレススチールが、オーステナイト合金、フェライト合金、またはその組み合わせから成る群より選択される、請求項3に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項5】
前記金属が、前記基材の表面上で非反応性金属種を生成するために処理される、請求項2に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項6】
前記金属が前記金属を加熱するステップによって処理され、そして非反応性金属種が酸化金属を備える、請求項5に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項7】
前記酸化金属が、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニックル、酸化モリブデン、酸化ケイ素および酸化アルミニウムから成る群より選択される、請求項6に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項8】
前記金属が化学薬品によって処理され、そして非反応性金属種が酸化金属を備える、請求項5に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項9】
前記酸化金属が、酸化鉄、酸化クロム、および酸化アルミニウムから成る群より選択される、請求項8に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項10】
前記非反応性外面が前記基材上に酸化金属層を備える、請求項1に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項11】
前記非反応性外面が、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、不活性金属、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項12】
前記不活性金属が金および/または白金である、請求項11に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項13】
前記熱伝導性基材との間に熱伝達を有する発熱体を更に備える、請求項1に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項14】
発熱体が、少なくとも約250℃の基材温度を生成するために前記基材に熱を供給する、請求項13に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項15】
前記基材温度が、前記非反応性外面から前記フィルムを気化させるために十分である、請求項14に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項16】
前記フィルムが薬物を備える、請求項1に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項17】
前記フィルムの厚さが約0.05〜20ミクロンである、請求項1に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項18】
前記フィルムが気化時に治療有効量の薬物を備える、請求項16に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項19】
請求項1に記載の薬物供給アセンブリを備える凝縮エアロゾルデバイス。
【請求項20】
凝縮エアロゾルデバイスにおいて使用するためのアセンブリであって、
(a)耐酸化性外面を有する熱伝導性基材と、
(b)前記外面上の薬物組成物フィルムであって、ここで、前記フィルム厚および外面が、前記基材を加熱するステップにより前記薬物組成物を気化させるステップと、前記気化した薬物組成物を凝縮させるステップとによって形成されたエアロゾルが、重量で10%以下の薬物分解生成物および前記フィルム中の薬物組成物の総量の少なくとも50%を含有しているようなフィルム厚および外面である薬物組成物フィルムと、を備えるアセンブリ。
【請求項21】
250℃を超える基材温度を生成するため、そして2秒間以内に前記基材から前記薬物組成物フィルムを実質的に気化させるために前記基材に熱を供給するための熱源を更に備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項22】
前記フィルムが0.05〜20ミクロンの厚さを備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記フィルムが、前記薬物がエアロゾル形で投与されたときに治療有効量の薬物を備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記熱伝導性金属基材が、スチール、アルミニウム、チタンもしくは銅を備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項25】
前記熱伝導性金属基材が、300℃を超える温度では酸化的および/または化学的に低反応性である、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項26】
前記耐酸化性外面が金属酸化物富裕であり、そして酸化ケイ素、酸化鉄、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化チタンおよび/または酸化アルミニウムを備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項27】
前記耐酸化性外面が、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および炭化ケイ素から成る群より選択される材料の保護膜を備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項28】
前記耐酸化性外面が不活性金属の保護膜である、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項29】
前記不活性金属が金および/または白金である、請求項28に記載のアセンブリ。
【請求項30】
エアロゾル粒子を生成するために薬物組成物フィルムが気化されて凝縮されると、エアロゾル中の薬物組成物の少なくとも50%の回収を引き起こす選択された条件下では、生成された前記エアロゾルが、(i)重量で約10%未満の薬物分解生成物と、(ii)前記基材表面が金属酸化物富裕な基材表面ではない場合に減少したレベルの薬物分解生成物を示す、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項31】
前記外面の耐酸化性を増加させるために熱伝導性基材の外面を処理するステップと、
フィルムを生成するための化合物で前記基材の酸化した外面の少なくとも一部分をコーティングするステップと、
を備える工程によって製造される薬物供給アセンブリ。
【請求項32】
前記熱伝導性基材が金属基材である、請求項31に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項33】
前記処理するステップが前記金属基材を、前記外面を酸化する化学薬品と接触させるステップによって行われる、請求項31に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項34】
前記処理するステップが前記外面を酸化するために前記金属基材を加熱するステップによって行われる、請求項31に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項35】
前記外面が耐酸化性材料の保護膜で処理される、請求項31に記載のアセンブリ。
【請求項36】
前記保護膜が、物理蒸着法、化学蒸着法、電子線蒸着法、スパッタリング法、イオンアシスト蒸着法、電気めっき法、ディップコーティング、スプレーコーティング、および/またはゾル−ゲル蒸着法によって形成される、請求項35に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項37】
前記化学薬品が酸である、請求項33に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項38】
前記化学薬品が塩基である、請求項33に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項39】
前記加熱が6時間にわたり約350℃で行われる、請求項34に記載の薬物供給アセンブリ。
【請求項40】
前記外面の耐酸化性を増加させるために熱伝導性基材の外面を処理するステップ、
フィルムを生成するための化合物で前記基材の酸化した外面の少なくとも一部分をコーティングするステップと、
を備える薬物供給アセンブリを製造する方法。
【請求項41】
前記熱伝導性基材が金属基材である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記処理するステップが金属基材を、外面を酸化する化学薬品と接触させるステップによって実施される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記処理するステップが外面を酸化するために前記金属基材を加熱するステップによって実施される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記外面が耐酸化性材料の保護膜で処理される、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記保護膜が、物理蒸着法、化学蒸着法、電子線溶着法、スパッタリング法、イオンアシスト蒸着法、電気めっき法、ディップコーティング、スプレーコーティング、および/またはゾル−ゲル蒸着法によって形成される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記化学薬品が酸である、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記化学薬品が塩基である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記加熱が6時間にわたり約350℃で行われる、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
請求項40に記載の方法によって製造された薬物供給アセンブリ。
【請求項50】
酸化物富裕な金属基材上の薬物組成物を実質的に気化させるステップと薬物粒子を形成するために前記蒸気を凝縮するステップを備える、基材上の薬物組成物フィルムを実質的に気化させて凝縮するステップによって生成される凝縮薬物エアロゾル中の薬物凝縮粒子の純度を上昇させる方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−501073(P2007−501073A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522721(P2006−522721)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/025313
【国際公開番号】WO2005/016421
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(503412296)アレックザ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】