説明

衝撃探知システム

【課題】FBG光ファイバセンサを用いた衝撃探知システムを構成する。
【解決手段】複合材構造物Zを伝播する弾性波を複数の光ファイバセンサFBG1〜FBG4で検出する。光ファイバセンサFBG1〜FBG4は一の光ファイバに構成される。1の光ファイバセンサにつき3以上の光学フィルタを対応さる。各光ファイバセンサの波長域R1〜R4は、検出対象の振動域同士が重ならない程度以上に離れて等間隔に分布する。一の光ファイバセンサに対応する光学フィルタの通過域(F1〜F4)は、対応する一の光ファイバセンサの衝撃無負荷時の中心波長(λ1)に跨って、当該対応する一の光ファイバセンサの検出対象の振動域に等間隔に分布する。これらの光学フィルタを通してセンサの出力値を得て、これを演算処理し、弾性波の発生源であるところの複合材構造物に負荷された衝撃の有無や位置及び大きさを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバセンサを用いた衝撃探知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機等の機体のような、素材に対する強度と軽量化の双方が要求される分野においては、このような要求に応えるために、CFRP等の複合材料の大幅な適用化が不可欠である。
このような複合材料の損傷、欠陥等の探知を行う装置として、特許文献1には、FBG(Fiber Bragg Grating)光ファイバセンサを用いた損傷探知装置が記載されている。光ファィバは、昨今では細径化(例えば、直径52[μm])が進んでおり、構造物に埋め込んでも、当該構造物の強度の低下がほとんど生じないため、その設置に関して自由度が高いという利点を備えている。
【0003】
特許文献1記載の発明によれば、複合材構造物の所定箇所に固定配置されたピエゾ素子と、ピエゾ素子に信号を伝達する導線と、ピエゾ素子との間に複合材構造物を構成する複合材料を挟んで固定配置されコア部に所定の波長光を反射するグレーティング部を有する光ファイバセンサと、コア部に光照射を行う光源と、グレーティング部からの反射光の特性を検出する特性検出手段とを用い、ピエゾ素子により加振し特性検出手段の出力の変化から損傷を探知する。また、特性検出手段としては、グレーティング部からの反射光の周波数特性を検出するスペクトラムアナライザ等が用いられる。
【特許文献1】特開2005−98921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の発明によっては、損傷探知を目的としているためピエゾ素子が所定位置に配置されており、対象構造物の任意の位置に、任意の大きさの衝撃をうけた時、その衝撃の有無や位置や大きさを特定することはできない。光ファイバセンサ(グレーティング部)からの反射光の振動は、衝撃の大きさと衝撃(振動源)からの距離により異なるから、ピエゾ素子により既知の振動を負荷してその伝播結果により損傷を探知するシステムでは、大きく振動する反射光の変化から小さく振動する反射光の変化までを捉えきれず、任意の衝撃の有無や位置や大きさを精度良く特定することはできない。
【0005】
本発明は、以上の従来技術の問題に鑑み、光ファイバセンサを用いた衝撃探知システムを構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、光を反射するグレーディングが複数設けられ隣り合うグレーディング間の距離が変化すると反射光の波長域が変化するグレーティング部がコア部に形成されてなり、被検体を伝播する弾性波に応じて前記波長域を振動させる複数のセンサ部を有した光ファイバと、
各センサ部の前記波長域の検出対象の振動域を含む程度以上に広帯域の光を前記光ファイバの前記コア部に入力する光源と、
前記反射光が出力される前記光ファイバの出力端に接続された光学フィルタと、
前記複数のセンサ部の前記光学フィルタを介した出力値を演算処理して前記被検体への衝撃を検知する演算処理装置とを備え、
一の光ファイバ内における各センサ部の前記波長域は、検出対象の振動域同士が重ならない程度以上に離れて分布し、
一のセンサ部に対応する前記光学フィルタの通過域は、対応する一のセンサ部の衝撃無負荷時の中心波長に跨って、当該対応する一のセンサ部の検出対象の振動域に分布してなる衝撃探知システムである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記一のセンサ部に対応する異なる通過域の光学フィルタの数を3以上とすることを特徴とする請求項1に記載の衝撃探知システムである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記演算処理装置は、前記被検体に負荷された衝撃の位置又は/及び大きさを特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衝撃探知システムである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、一のセンサ部に対応する光学フィルタの数をm(但し、mは3以上の整数とする。)とし、一の光ファイバ内における使用するセンサ部の数をn(但し、nは2以上の整数とする。)とするとき、必要となるm×nの前記光学フィルタは、m×n以上のチャンネル数を有した一のアレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)型光フィルタモジュールに構成されてなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の衝撃探知システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一の光ファイバに複数のセンサ部が構成されたものを検出デバイスとして用い、一の光ファイバ内における各センサ部の波長域は、振動域同士が重ならない程度以上に離れて分布し、一のセンサに対応する3以上の光学フィルタの通過域は、対応する一の光ファイバセンサの衝撃無負荷時の中心波長に跨って、当該対応する一の光ファイバセンサの振動域に分布している。そのため、大きく振動する反射光の変化から小さく振動する反射光の変化までを、1センサごと分離し3以上のフィルタで捉えることにより、正確かつ十分に捉え、任意の衝撃の有無や位置や大きさを精度良く特定することができる。
また、本件請求項4記載の発明によれば、複数の光ファイバセンサを有する一の光ファイバを一のアレイ導波路回折格子型光フィルタモジュールに接続して、必要な光学フィルタを装備することができ、アレイ導波路回折格子型光フィルタモジュールの多数の光学フィルタが集積された光波回路を利用することにより、多数の光学フィルタを必要としても、システム構成を小型、簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0012】
〔衝撃探知システムの基本構成〕
まず、衝撃探知システムの基本構成について説明する。
図1は、複合材構造物Zの衝撃探知を行う衝撃探知システム10の概略構成図である。本実施形態では、複合材構造物を被検体とする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の衝撃探知システム10は、衝撃21の探知を行うべき複合材構造物Zの所定の箇所に埋め込みや貼着等により設置された光ファイバセンサ(センサ部)30と、光ファイバセンサ30から得られる反射光の波長特性を検出するスペクトラムアナライザ42と、スペクトラムアナライザ42の出力値を演算処理する演算処理装置50とを備えている。なお、スペクトラムアナライザ42の電源装置43を図示した。
【0014】
光ファイバセンサ30は、FBG(Fiber Bragg Grating)光ファイバセンサであり、図2(a)の概略構成図に示すように、コア部32に所定の波長光を反射するグレーティング部33を有し、光ファイバ34に構成されている。
光ファイバ34は、その一端部においてスペクトラムアナライザ42に接続されており、当該スペクトラムアナライザ42が有する光源により、所定範囲の波長帯域を網羅する照射光がコア部32に入射される。このスペクトラムアナライザ42から入射する光は、コア部32を伝播してグレーティング部33でその一部の波長光のみが反射される。
【0015】
図2(b)は、コア部32の光進行方向における屈折率変化を示す線図であり、図中の範囲Lがグレーティング部33における屈折率を示している。
かかる図に示すように、グレーティング部33は、コア部32の屈折率を一定の周期で変化するように構成されている。グレーティング部33は、かかる屈折率の変化している境界部分で特定の波長の光のみ選択的に反射する。このグレーティング部33に振動によりひずみ等の外乱が加えられると格子間隔の変化(伸縮)に伴なって反射光の波長が変化する。
ここで、FBG光ファイバセンサの反射光の波長変化ΔλBは、コアの実効屈折率をn、グレーティング間隔をΛ、ポッケルス係数をP11,P12、ポアソン比をν、印加歪をε、ファイバ材の温度係数をα、温度変化をΔTとすると次式で表される(Alan D. Kersey, Fiber Grating Sensors”JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, Vol. 15, No. 8, 1997)。
【0016】
【数1】

【0017】
したがって、グレーティング部33に振動が伝播すると、グレーティング部33の歪み量εに変化を生じ、その結果、歪み量εに応じて反射光の波長が変動することとなる。すなわち、グレーティング部33に加えられる振動の大きさに応じて、波長の変化量ΔλBは変動することとなる。
【0018】
図3(a)に光ファイバセンサとこれに接続したスペクトラムアナライザ42の構成例を示す。図3(a)に示すように、スペクトラムアナライザ42は、光源61と、光サーキュレータ62と、AWGモジュール63と、光電変換器60とを備える。本構成例では、反射波長の異なる4つの光ファイバセンサ30a〜dが直列に設けられた光ファイバ34をスペクトラムアナライザ42に接続する。最少構成として光ファイバセンサ30は3つ必要である。
【0019】
光源61は、光ファイバセンサ30a〜dの反射波長の振動域を含む広帯域の光源である。光ファイバセンサの反射波長特性が光源の波長帯域外にまで変化すると、反射光は生じないため、光源の波長帯域は振動の検出範囲を限定することとなる。衝撃により光ファイバセンサ30a〜dの反射波長が振動しても、常に完全な反射光が出射されるように十分に広い帯域の光源とすることが好ましい。光ファイバセンサの反射波長の振動域は、光ファイバセンサの特性、衝撃及び被検体の材料の性質に依存する。
光サーキュレータ62は、光源61からの光を光ファイバのセンサ部30a〜d側へ進行させ、返ってきた光ファイバのセンサ部30a〜dからの反射光をAWGモジュール63の入力ポートP0へと導出する。光サーキュレータ62により導出された反射光は光ファイバ69によりAWGモジュール63の入力ポートP0に導入される。
【0020】
AWGモジュール63は、AWG基板64を有する。AWG基板64には、光導波路技術によりガラス基板上にモノリシック集積された光波回路が形成されている。AWG基板64上の光波回路は、入出力スラブ導波路65,66とアレイ導波路67と、出力導波路68とを有し、入力ポートP0に並列接続された通過域の異なる8つの光学フィルタを構成している。AWG基板64上の光波回路は、波長多重された入力光を分配して8つの光学フィルタに通すことより波長分離し、8つの出力ポートP1〜P8にパラレル出力する。但し、実用時の出力ポートは8つに限定されない。
【0021】
8つの出力ポートP1〜P8に対応する各光学フィルタの通過域を図3(b)のスペクトル図に示す。例えば図3(b)で、中心波長λ2の反射波長を有するセンサ部30bの反射光入力分布70が通過域71に重なる部分に相当する反射光を一の光学フィルタが通過させ出力ポートP3へ出力すると共に、これに並行して通過域72に重なる部分に相当する反射光を他の光学フィルタが通過させ出力ポートP4へ出力する。1つのセンサ部30bに対応させる光学フィルタを3以上とする。
【0022】
簡単のため、1つのセンサ部30からの反射光に対する2つの光学フィルタの作用を図4を参照して説明する。
図4(b)に示すように、センサ部30からの反射光の入力分布73Tが現れる。衝撃負荷時には、衝撃位置を振源位置とする弾性波が複合材構造物Zを伝播し、センサ30は複合材構造物Zを伝播する弾性波に応じて出力する反射光の波長を振動させる。この波長の振動を図示すると図4(a)の入力波73Wとなる。
この波長の振動により、図4(b)に示す反射光入力分布73Tは、上位、下位に交互にシフトして振動し、波長の値は増減を繰り返す。
上位の光学フィルタは反射光入力分布73Tが通過域75Tに重なる部分に相当する反射光を通過させて出力する。同様に、下位の光学フィルタは反射光入力分布73Tが通過域75Tに重なる部分に相当する反射光を通過させて出力する。
【0023】
したがって、反射光の波長の値が増加して反射光入力分布73Tが上位にシフトすると、通過域75Tを有する上位の光学フィルタの出力値は増加し、通過域74Tを有する下位の光学フィルタの出力値は減少する。逆に、反射光の波長の値が減少して反射光入力分布73Tが下位にシフトすると、通過域75Tを有する上位の光学フィルタの出力値は減少し、通過域74Tを有する下位の光学フィルタの出力値は増加する。
そのため、反射光の中心波長の変化が図4(a)に示す入力波73Wにより振動する時、通過域75Tを有する上位の光学フィルタの出力値は、図4(c)に示す出力波75Wを生成し、通過域74Tを有する下位の光学フィルタの出力値は、図4(c)に示す出力波74Wを生成する。図4(c)に示すように、出力波74Wと出力波75Wは逆位相の波動となる。
【0024】
以上の原理により、図3に示すスペクトラムアナライザ42は、出力ポートP1〜P8に光波を出力し、これらを光電変換器60により電気信号に変化して外部出力する。スペクトラムアナライザ42の出力は、図示しないインターフェースを介してA/D変換されて演算処理装置50に入力される。
【0025】
演算処理装置50は、スペクトラムアナライザ42の出力値に基づき、衝撃の有無や位置及び大きさを算出するための演算処理を行う。また、演算処理装置50は演算結果の記録を行う。
本実施形態の演算処理装置50は、電子計算機により構成される。例えば、演算処理装置50は、プログラムに従い演算処理を行うCPUと、そのプログラムを記憶するROMと、スペクトラムアナライザ42からの入力値データやプログラムに従った演算過程及び演算結果のデータを記憶するRAMと、スペクトラムアナライザ42とデータの送受を図るインターフェースと、演算結果の表示データを適正なフォーマットの画像信号に変換して表示モニタに出力する画像出力インターフェースと、上記各構成間での各種指令又はデータの伝送を行うデータバスとを備えて構成される。
【0026】
〔本発明の一実施形態の衝撃探知システム〕
次に、本発明の一実施形態の衝撃探知システムにつき説明する。本発明の一実施形態の衝撃探知システムは、上述した複数のFBG光ファイバセンサを有した光ファイバと、スペクトラムアナライザと、演算処理装置とを備えて以下のように構成される。
【0027】
一の光ファイバセンサに対応する光学フィルタの数をm(但し、mは3以上の整数とする。)とし、一の光ファイバ内における使用する光ファイバセンサの数をn(但し、nは2以上の整数とする。)とする。
スペクトラムアナライザに構成されるAWGモジュールは、(m×n)チャンネルのものを用いる。すなわち、このAWGモジュールには、入力ポートP0に並列接続された通過域の異なる(m×n)の光学フィルタを構成しており、各光学フィルタに対応する(m×n)の出力ポート(出力チャンネル)を有する。
ここでは、一例としてm=4、n=10として説明する。したがって、40チャンネルのAWGモジュールを用いる。
【0028】
図5(a)に示すように、10個の光ファイバセンサFBG1〜FBG10が構成された一の光ファイバを引き回して、複合材構造物Zに光ファイバセンサFBG1〜FBG10(FBG5〜FBG10図示せず)を間隔隔てて設置する。この光ファイバの反射光の出力端を入力ポートP0に接続する。光ファイバセンサFBG1〜FBG10の中心波長をそれぞれλ1〜λ10とする。中心波長をλ1〜λ10とする各光ファイバセンサFBG1〜FBG10の波長域R1〜R10(R5〜R10図示せず)は、図5(b)に示すように、検出対象の振動域同士が重ならない程度以上に離れて等間隔に分布する。また図5(b)に示すように、一の光ファイバセンサに対応する4つの光学フィルタの通過域(例えばF1〜F4)は、対応する一の光ファイバセンサの衝撃無負荷時の中心波長(F1〜F4に対してはλ1)に跨って、当該対応する一の光ファイバセンサの検出対象の振動域に等間隔に分布している。
【0029】
或いは、図6に示すように、10個の光ファイバセンサFBG1〜FBG10が構成された一の光ファイバを引き回して、複合材構造物Zに光ファイバセンサFBG1〜FBG10(FBG9,FBG10図示せず)を間隔隔てて設置する。この光ファイバの反射光の出力端を入力ポートP0に接続する。光ファイバセンサFBG1〜FBG10の中心波長をそれぞれλ1〜λ10とする。中心波長をλ1〜λ10とする各光ファイバセンサFBG1〜FBG10の波長域R1〜R10(R8,R10図示せず)は、図7に示すように、検出対象の振動域同士が重ならない程度以上に離れて等間隔に分布する。また図7に示すように、一の光ファイバセンサに対応する4つの光学フィルタの通過域(例えばF1〜F4)は、対応する一の光ファイバセンサの衝撃無負荷時の中心波長(F1〜F4に対してはλ1)に跨って、当該対応する一の光ファイバセンサの検出対象の振動域に等間隔に分布している。
【0030】
演算処理装置は、光ファイバセンサFBG1〜FBG10の位置座標と、中心波長λ1〜λ10とを対応付けて記憶している。
【0031】
光ファイバセンサの捕捉すべき検出対象の振動域と、一の光ファイバセンサに対応する光学フィルタの数m及びその分布間隔は、例えば次のように決定する。
FRP複合材料で問題となる目視困難な衝撃損傷の発生におけるひずみレベルは300〜500μεレベル程度である。この2倍程度のひずみレベル1000μεを最大検出可能ひずみとするには、1.0nmの振動域を捕捉する必要がある。
このとき、精度良く衝撃を検知するためには、最小300μεの変化を捉えられる0.2nm(166με相当)間隔もしくは0.4nm(333με)間隔のチャンネルを有したAWGモジュールが良いということになる。0.2nm間隔のチャンネルを有したAWGモジュールを使用する場合は、m=6を選択することを意味する。0.4nm間隔のチャンネルを有したAWGモジュールを使用する場合は、m=3を選択することを意味する。もちろんm=4や、m=5を選択しても良いし、m≧7としても良い。光学フィルタ数mを大きくすれば、反射光の変化の検出がより高精度になる反面、AWGモジュールが大規模化する。
【0032】
光源としては、使用するすべての光ファイバセンサの検出対象の振動域を含む程度以上に広帯域のものを用いる。
また、AWGモジュールの全てのチャンネルが常に検知可能な状態で用いることで、被検体である複合材構造物Zに対し、任意の時間に受ける衝撃を検知することが可能となる。
【0033】
例えば、図5(a)に示す構成で、衝撃S1が複合材構造物Zに加えられた時、図5(b)に示すように、各光ファイバセンサFBG1〜FBG10に異なる振幅A1,A2,A3,A4,・・・の波長振動が生じる。この例では、振幅A1>振幅A2>振幅A3>振幅A4となっている。
或いは、図6に示す構成で、衝撃S2が複合材構造物Zに加えられた時、図7に示すように、各光ファイバセンサFBG1〜FBG10に異なる振幅A1,A2,A3,A4,・・・の波長振動が生じる。
【0034】
以上のような現象が生じたとき、AWGモジュールの総出力ポートは、出力の有るもの、出力の無いもの、出力値に時間変化が有るもの、出力値に時間変化が無いもの、さらにはその時間変化の様子など、様々な情報を含んだ出力値を演算処理装置へ出力する。
演算処理装置は、このようにして得られたAWGモジュールの各出力ポートからの出力値を合成することにより、各光ファイバセンサFBG1〜FBG10に到達した弾性波のエネルギーレベルが測定できる。演算処理装置は、これらの情報を基に、衝撃の有無、衝撃が付与された位置およびその衝撃の大きさ(エネルギーレベル)を算出する。
【0035】
複合材構造物Zの規模に応じて、光ファイバ及びスペクトラムアナライザを増設し、共通の演算処理装置に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】基本的な衝撃探知システムの概略構成図である。
【図2】光ファイバセンサの概略構成図(a)、及び光進行方向におけるグレーティング部の屈折率変化を示す線図(b)である。
【図3】光ファイバセンサとこれに接続したスペクトラムアナライザの構成図(a)、及び8つの光学フィルタの通過域を示すスペクトル図(b)である。
【図4】光学フィルタに対する入力波波形(a)、2つの光学フィルタの通過域を示すスペクトル図(b)及び光学フィルタの出力波波形(c)である。
【図5】(a)は本発明の一実施形態における各光ファイバセンサの配置の一例を示した平面図であり、(b)は図(a)に対応する光学フィルタの通過域と反射光の波長分布を示したスペクトル図である。
【図6】本発明の一実施形態における各光ファイバセンサの配置の他の一例を示した平面図である。
【図7】図6に対応する光学フィルタの通過域と反射光分布域の波長分布を示したスペクトル図である。
【符号の説明】
【0037】
10 衝撃探知システム
30 光ファイバセンサ(センサ部)
32 コア部
33 グレーティング部
42 スペクトラムアナライザ
50 演算処理装置
63 AWGモジュール
64 AWG基板
65,66 入出力スラブ導波路
67 アレイ導波路
68 出力導波路
P0 入力ポート
P1〜P8 出力ポート
70,73T 反射光入力分布
71,72,74T,75T 通過域
73C 振動中心
FBG1〜FBG8 FBG光ファイバセンサ(センサ部)
R1〜R8 FBG光ファイバセンサの波長域
F1〜F32 光学フィルタの通過域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するグレーディングが複数設けられ隣り合うグレーディング間の距離が変化すると反射光の波長域が変化するグレーティング部がコア部に形成されてなり、被検体を伝播する弾性波に応じて前記波長域を振動させる複数のセンサ部を有した光ファイバと、
各センサ部の前記波長域の検出対象の振動域を含む程度以上に広帯域の光を前記光ファイバの前記コア部に入力する光源と、
前記反射光が出力される前記光ファイバの出力端に接続された光学フィルタと、
前記複数のセンサ部の前記光学フィルタを介した出力値を演算処理して前記被検体への衝撃を検知する演算処理装置とを備え、
一の光ファイバ内における各センサ部の前記波長域は、検出対象の振動域同士が重ならない程度以上に離れて分布し、
一のセンサ部に対応する前記光学フィルタの通過域は、対応する一のセンサ部の衝撃無負荷時の中心波長に跨って、当該対応する一のセンサ部の検出対象の振動域に分布してなる衝撃探知システム。
【請求項2】
前記一のセンサ部に対応する異なる通過域の光学フィルタの数を3以上とすることを特徴とする請求項1に記載の衝撃探知システム。
【請求項3】
前記演算処理装置は、前記被検体に負荷された衝撃の位置又は/及び大きさを特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衝撃探知システム。
【請求項4】
一のセンサ部に対応する光学フィルタの数をm(但し、mは3以上の整数とする。)とし、一の光ファイバ内における使用するセンサ部の数をn(但し、nは2以上の整数とする。)とするとき、必要となるm×nの前記光学フィルタは、m×n以上のチャンネル数を有した一のアレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)型光フィルタモジュールに構成されてなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の衝撃探知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−139171(P2008−139171A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326013(P2006−326013)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、「次世代部材創製・加工技術開発プロジェクト 航空機主/尾翼BOX構造の損傷モニタリングシステムの開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】