説明

表示装置及び表示装置の製造方法

【課題】コントラストの改善を図ることが可能であり、製造が容易なアパーチャープレートを提供すること。
【解決手段】本発明の表示装置においては、(A)透光性の基板130上に金属層132を形成し、(B)金属層132上に開口パターンが形成されたレジストマスク136を設け、この状態で金属層132の露出部分をエッチングして開口部126を形成し、(C)その後レジストマスク136を除去し、(D)金属層132の表面及び開口部126の側壁面を酸化して金属の酸化物層134を形成することにより、アパーチャープレートの表裏の反射率を異ならせる。酸化物層134は、レジストマスク136をアッシングするときに、レジスト除去と同時に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシャッターを用いた表示装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用したメカニカルシャッター(以下「MEMSシャッター」という。)を用いた表示装置が注目されてきている。MEMSシャッターを用いた表示装置(以下「MEMS表示装置」という。)とは、画素ごとに設けたMEMSシャッターを、トランジスタを用いて高速で開閉することによってシャッターを透過する光の量を制御し、画像の明暗の調整を行う表示装置である(例えば、特許文献1)。
【0003】
MEMS表示装置においては時間階調方式を採用し、赤色、緑色及び青色のLEDバックライトからの光を順次切り替えることにより画像の表示を行うことが主流である。よって、MEMS表示装置は、液晶表示装置に用いられる偏光フィルムやカラーフィルタなどを必要とせず、液晶表示装置と比較してバックライトの光の利用効率は約10倍、消費電力は半分以下になり、また、色再現性が優れている点に特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−197668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8に示すように、MEMSシャッターを用いた表示装置900は、MEMSシャッターアレイ902の他に、アパーチャープレート904及びバックライト906を有している。
【0006】
アパーチャープレート904は、ガラス基板908上に開口部912が形成された金属層910が設けられている。アパーチャープレート904は、金属層910がバックライト906の光を遮断し、開口部912においてのみ光が透過するように構成されている。
【0007】
アパーチャープレート904は、バックライト906の光を有効利用するため、金属層910のガラス基板908側の面で反射率が高くなるようにされている。一方、MEMSシャッターアレイ902側は表示画面側となり、MEMSシャッターアレイ902側の不要な反射光を減少させるため、金属層910の反射率を低くする必要がある。
【0008】
このような要件を満たすため、金属層910はガラス基板908側に反射率の高い第1の金属層914が用いられ、MEMSシャッターアレイ902側には反射率の比較的低い第2の金属層916が形成された二層構造を採用している。反射率の高い第1の金属層914としては、銀やアルミニウムなどが適用され、反射率が比較的低い第2の金属層916としてはクロムなどが用いられている。
【0009】
このため、アパーチャープレート904を作製するには、少なくとも二種類の金属層をガラス基板上に成膜し、開口部912を形成する必要があり、工程数が増加するばかりか、材料コストを増加させる要因となっている。また、図8に示すように金属層910の開口部912の端面では、反射率の高い第1の金属層914の端面が露出してしまうので、この部分でバックライト906の光が散乱されて(図8における“a”で示す散乱光)、コントラストを低下させる原因となっている。
【0010】
そこで、本発明は、MEMSシャッターを用いた表示装置において、コントラストの改善を図ることを目的としている。また、MEMSシャッターを用いた表示装置に用いられるアパーチャープレートを容易に製造することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、表示面に向けて光を放射するバックライトと、バックライトの前面に設けられ、開閉動作により該バックライトから表示画面側に放射される光量を制御するMEMSシャッターが設けられたMEMSシャッターアレイと、バックライトとMEMSシャッターアレイとの間に設けられたアパーチャープレートとを有する表示装置である。この表示装置におけるアパーチャープレートは、MEMSシャッターが設けられた位置に対応して開口部が形成された金属層を有しており、MEMSシャッター側における金属層の表面に金属の酸化物層が形成されている。
【0012】
この表示装置におけるアパーチャープレートは、MEMSシャッターアレイ側とその反対側の面で反射率が異なるようにするため、金属層の一方の面に金属の酸化物層を設けている。そして、金属の酸化物層をMEMSシャッターアレイ側に向けられるようにアパーチャープレートを配設することで、表示面側から見た反射率を低減することができる。一方、アパーチャープレートのバックライト側の面では、金属層による反射面が形成され、バックライトの光を反射することができる。
【0013】
このようなアパーチャープレートの態様において、金属層における開口部の側面にも、金属の酸化物層が形成されるようにしても良い。これにより、開口部の側壁部で光が散乱するのを防ぐことができる。
【0014】
金属の酸化物層は、金属層を形成する金属材料の酸化物であることが好ましい。金属の酸化物層は金属層よりも反射率が低くなるので、表裏で反射率の異なるアパーチャープレートを得ることができる。
【0015】
アパーチャープレートは、MEMSシャッターアレイ側の面の反射率を50%以下、好ましくは40〜30%以下とすることで、表示面が鏡面のように反射することを防ぐことができる。
【0016】
このようなアパーチャープレートを構成する金属層は、銀又は銀合金で形成されていることが好ましい。銀は可視光域の反射率が高く、その酸化物である酸化銀の反射率は50%以下であるからである。
【0017】
本発明の一実施形態は、MEMSシャッターアレイとアパーチャープレートとを有する表示装置の作製方法であって、透光性の基板上に金属層を形成し、金属層上に開口パターンが形成されたレジストマスクを設け、レジストマスクが設けられた状態で金属層の露出部分をエッチングして透光性の基板まで貫通する開口部を形成し、その後レジストマスクを除去し、金属層の表面及び開口部の側壁面を酸化することにより、アパーチャープレートの表裏の反射率を異ならせるようにする表示装置の作製方法である。
【0018】
レジストマスクをアッシング法により除去することで、該レジストマスクの除去と同時に、金属層の表面及び開口部の側壁面の酸化を行うことができる。
【0019】
金属膜の表面及び開口部の側壁面の酸化を、オゾン酸化法又は酸素ラジカルを生成するプラズマ酸化法で行うことができる。
【0020】
このようなアパーチャープレートを構成する金属層は、銀又は銀合金で形成することが好ましい。銀は可視光域の反射率が高く、その酸化物である酸化銀の反射率は50%以下であるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、アパーチャープレートを構成する金属層の表面に金属の酸化物層を設けることで、該アパーチャープレートの表裏で反射率を異ならせることができる。このようなアパーチャープレートをMEMSシャッターを用いた表示装置に用いることにより、表示画面側が鏡面状に反射するのを防ぎ、その一方でバックライトの光を有効利用することができる。
【0022】
また、アパーチャープレートの開口部の側壁面にも金属の酸化物層が形成されることで、該側壁部で光が散乱するのを防ぐことができ、コントラストの低下を防ぐことができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、アパーチャープレートにおいて、反射率の異なる複数の層を積層する必要がなく、一種類の金属層を成膜すれば良いので工程の簡略化を図ることができる。アパーチャープレートを構成する金属層の表面は、アッシング処理により、レジスト剥離と同時に酸化して低反射化することが可能である。そのため、金属酸化物層を形成するために特別な工程を追加する必要がなく、工程の簡略化を図ることができる。
【0024】
また、金属層の表面のみならず、その金属層に形成される開口部の側面も酸化により低反射化することができる。これにより、アパーチャープレートの開口部での光散乱を防ぎ、コントラストを高めた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の回路ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る表示装置の断面構造を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るアパーチャープレートの作製方法の一例を説明する断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るアパーチャープレートの作製方法の一例を説明する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る表示装置に用いるMEMSシャッターの構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る表示装置の断面構造を説明する図である。
【図8】金属層が二層積層されたアパーチャープレートを有する表示装置の断面構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の表示装置の実施形態について説明する。なお、本発明の表示装置は、以下の実施形態に限定されることはなく、種々の変形を行ない実施することが可能である。
【0027】
図1に本発明の一実施形態に係る表示装置100の斜視図を示す。本発明の表示装置100は、MEMSシャッターアレイ102及びアパーチャープレート104を有している。本発明の表示装置100には、コントローラ116(図2に図示)によって制御されるバックライト106からの光がアパーチャープレート104側から供給される。なお、コントローラ116及びバックライト122を含んで本発明の表示装置100を構成するようにしてもよい。
【0028】
表示部108は、MEMSシャッターアレイ102とアパーチャープレート104を含んでいる。この表示部108を駆動するゲートドライバ110、データドライバ112及び端子114が適宜設けられている。なお、図1で示す例では、データドライバ112が表示部108を挟むように配置されているが、これに限定されるわけではない。
【0029】
図2は、表示装置100の回路ブロック図の一例を示す。表示装置100には、コントローラ116から画像信号及び走査信号が、データドライバ112及びゲートドライバ110へ供給される。また、表示装置100には、コントローラ116によって制御されるバックライト106から光が供給される。
【0030】
表示部108は、マトリクス状に配置されたMEMSシャッター118、スイッチング素子122及び保持容量124を含む画素120が設けられている。データドライバ112は、スイッチング素子122へデータ線(D1、D2、・・・、Dm)を介してデータ信号を供給する。ゲートドライバ110は、スイッチング素子122へゲート線(G1、G2、・・・、Gn)を介してゲート信号を供給する。スイッチング素子122は、データ線(D1、D2、・・・、Dm)から供給されるデータ信号に基づきMEMSシャッター118を駆動する。
【0031】
図3は表示部108の断面構造を示す。表示部108は、MEMSシャッターアレイ102に設けられるMEMSシャッター118と、アパーチャープレート104の金属層132の開口部126が重なるように配設されている。
【0032】
MEMSシャッター118は透光性の基板128上に形成されている。MEMSシャッター118は複数の部品から構成され、機械的な動作を伴うものである。MEMSシャッター118の動作は、スイッチング素子122により制御される。MEMSシャッター118は透光性の基板128上で水平方向にスライドして、アパーチャープレート104の開口部126から放射されるバックライト106の光を遮断又は通過させるように動作する。
【0033】
表示部108は、画像信号に基づきMEMSシャッター118が開閉動作することにより、所定の画像を表示する。この場合、表示画面側には、このMEMSシャッター118の他、アパーチャープレート104の表面が向けられる。このアパーチャープレート104の表面の反射率が高いと外光を反射してしまい、コントラストを低下させてしまう。このため、アパーチャープレート104の表示画面側の反射率を低くしておく必要がある。
【0034】
アパーチャープレート104の表示画面側の反射率は可視光域において50%以下、好ましくは40〜30%以下とすることが望まれている。一方、アパーチャープレート104のバックライト側の面は、反射率を高めておくことが好ましい。これは、バックライトの光をアパーチャープレート104で反射させ、再度バックライト側に入射させることで光の有効利用を図るためである。
【0035】
この相反する要求を実現するため、本発明に係るアパーチャープレート104は、金属層132と金属の酸化物層134で構成されている。すなわち、アパーチャープレート104は、反射率の高い金属層を用い、その金属層の表面に金属を酸化させた層を設けることにより低反射の表面を形成した構成を有している。
【0036】
図3で示すように、アパーチャープレート104は、透光性の基板130の表面に金属層132が形成され、その金属層132の表面に酸化物層134が設けられた構造を有している。
【0037】
金属層132の好適な一例は銀又は銀合金であり、酸化物層134は銀又は銀合金の酸化物である。銀は可視光域の光に対して高い反射率を有しており、これに対して酸化銀の反射率は50%以下の特性を示す。金属材料としての銀及びその酸化物の光反射特性の違いを利用して、これを積層した構成とすることにより、バックライト106側の面では反射率が高く、表示画面側の面では反射率の低いアパーチャープレート104を実現している。
【0038】
アパーチャープレート104は、金属層132に形成された開口部126の側壁面にも酸化物層134が形成されようにすることで、この部分も低反射化することができる。それにより、この開口部126の側壁面部分に入射した光が反射して散乱光となるのを防ぐことができる。すなわち、金属層132の開口部126におけるエッジ部での光散乱を防ぐことができ、コントラストの向上を図ることができる。
【0039】
次に、図4(A)〜(D)を参照して、本実施形態に係る本発明の表示装置に用いるアパーチャープレート104の製造方法を説明する。本実施の形態では、金属層132を構成する金属材料として銀を用いる場合を例示する。なお、本発明はこの例示に限定されず、可視光域の反射率が高い金属材料であって、その金属材料の変性物(例えば、酸化物又は窒化物、硫化物)の反射率が低いものであれば、銀以外の金属材料を適用することが可能である。
【0040】
以下の説明では、(1)金属層のエッチングに用いるレジストマスクを剥離するとき、同時に金属層の表面を酸化する製造方法を図4で示し、(2)金属層のエッチングに用いるレジストマスクを剥離した後、別途、酸化処理を行って金属層の表面を酸化する製造方法を図5で説明する。
【0041】
図4(A)は、透光性の基板130として、例えばガラス基板を用いる。透光性の基板130上に金属層132を成膜する。金属層132は、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて形成する。金属層は、銀又は銀合金を用いて形成する。金属層132はバックライトの光を遮断するために、50nm以上、好ましくは100nm以上の膜厚で形成する。
【0042】
図4(B)は、金属層132に開口部を形成するため、レジストマスク136を形成する段階を示す。レジストマスク136は公知のフォトリソグラフィー法を使って形成すれば良い。レジストマスク136は金属層132に直接形成することができる。
【0043】
図4(C)は、エッチングにより金属層132をエッチングする段階を示す。レジストマスク136で覆われていない領域の金属層132をエッチングして、透光性の基板130が露出する開口部126を形成する。金属層132は単層であるため、エッチングするときに、複雑な条件設定は不要である。
【0044】
図4(D)は、レジストマスク136を剥離して、金属層132の表面を酸化する処理を行う段階である。この工程では、レジストマスク136を剥離するときに、同じ工程内で金属層132の表面も酸化処理をしてしまう。
【0045】
例えば、レジストマスク136をアッシングにより除去する。アッシングは、酸素が導入された処理室内で紫外線等の光を照射してオゾンを生成し、レジストを除去する光励起アッシングと、酸素プラズマを利用してレジストを除去するプラズマアッシングのいずれも利用することができる。光励起アッシングでは、生成されたオゾンが紫外線を吸収し励起状態の酸素原子が生成され、この酸化力の強い酸素原子により金属層132の表面を酸化することができる。また、プラズマアッシングでは、活性な酸素ラジカルによって金属層132の表面に酸化物層134を形成することが可能である。
【0046】
図5は、金属層のエッチングに用いるレジストマスクを剥離した後、別途、酸化処理を行って金属層の表面を酸化する製造方法を示す。
【0047】
図5(A)は、金属層132の上にレジストマスク136を形成する段階を示す。そして、図5(B)に示すように、金属層132をエッチングして開口部126を形成する。その後、図5(C)で示すように、レジストマスク136を剥離液で除去する。そして、図5(D)で示すように、基板130上に残存した金属層132の表面を、上記と同様なオゾンを用いた酸化処理、または酸素ラジカルによる酸化処理によって酸化物層134を形成する。
【0048】
いずれの場合にも、金属層132の表面のみならず、開口部126における該金属層132の側面部も酸化され、酸化物層134を形成することができる。これにより、金属層132のみならず、開口部126の側壁面部の反射率も低下させることができる。
【0049】
金属層132の表面に形成される酸化物層134の厚さに限定はないが、可視光域の反射率が50%以下、好ましくは40〜30%以下となる膜厚で形成する。
【0050】
以上、図4(A)〜(D)を参照して説明した工程によれば、反射率の異なる複数の層を積層する必要がなく、一種類の金属層を成膜すれば良いといった利点がある。また、この工程では、アパーチャープレートを構成する金属層の表面を、レジスト剥離に伴うアッシング処理により同時に酸化処理して低反射化することが可能であるといった利点を有する。アパーチャープレートをこうせいする金属層の表面のみならず、その金属層に形成される開口部の側面も酸化により低反射化することができる。
【0051】
次に、本発明に係る表示装置の他の構成要素としてMEMSシャッター118の構成について説明する。
【0052】
図6は、表示装置100に用いるMEMSシャッター118の構成を示す。MEMSシャッター118は、シャッター138、第1バネ142、144、第2バネ146、148、並びに第1アンカー部150、152、第2アンカー部154、156を有している。これらは透光性の基板128に設けられている。シャッター138は、シャッター開口部140を有しており、シャッター138本体が遮光部となる。
【0053】
シャッター138は非透光性の部材で形成され、そのシャッター開口部140と上述したアパーチャープレートの開口部とが略重なったときバックライトの光が透過し、シャッター138の部分が当該開口部と略重なるときバックライトの光は遮断されることになる。
【0054】
シャッター138は、片側が第1バネ142を介して第1アンカー部150と接続されている。また、もう一方の側が第1バネ144を介して第1アンカー部152と接続されている。第1アンカー部150、152は、第1バネ142、144とともに、シャッター138を透光性の基板128の表面から浮遊した状態に支持する機能を有している。
【0055】
第1アンカー部150は第1バネ142と電気的に接続されている。このため、第1アンカー部150にはバイアス電位が供給されると、第1バネ142も略同電位となる。これは、第1アンカー部152と第1バネ144との関係についても同様である。第2バネ146は、第2アンカー部154に接続されている。第2アンカー部154は、第2バネ146支持する機能を有する。第2アンカー部154は第2バネ146と電気的に接続されている。第2アンカー部154はグランド電位となっているため、第2バネ146もグランド電位となる。これは、第2アンカー部156と第2バネ148との関係についても同様である。
【0056】
第1バネ142に所定のバイアス電位が供給され、第2バネ146がグランド電位となると、この両者の電位差により第1バネ142と第2バネ146とが静電駆動され、互いが引き寄せあうように移動することでシャッター138が一方向にスライドする。また、第1バネ144にバイアス電位が供給され、且つ、第2バネ148にグランド電位が供給されと、第1バネ144と第2バネ148との間の電位差により、第1バネ144と第2バネ148とが静電駆動され、互いが引き寄せあうように移動し、シャッター138が一方向と反対側の方向にスライドする。
【0057】
なお、図6で例示するMEMSシャッター118は、表示装置100に用いることのできるMEMSシャッターの一例に過ぎず、スイッチング素子で駆動することができるMEMSシャッターであれば如何なる態様のものでも用いることができる。
【0058】
本発明に係る表示装置では、アパーチャープレートの開口部から透過してくるバックライトの光を、図6に示すようなMEMSシャッターの開閉動作により、表示画面に透過してくる光の量を制御することにより階調表示をすることが可能となる。MEMSシャッターは静電力で動くものであるので、高速動作が可能である。バックライトをR、G、B三色の順次駆動(フィールド・シーケンシャル駆動)することでカラー表示をすることが可能となる。この場合、液晶表示装置で必要な偏光板やカラーフィルタが不要となるので、バックライトの光を減衰させることなく利用することができる。また、本発明に係るアパーチャープレートは、表示面側及び開口部の端面の反射率が低減されているので、外光の反射及び開口部端での光の散乱が抑制され、コントラストの向上を図ることができる。さらに、アパーチャープレートのバックライト側の面は、高反射率を有しているので、バックライトの光を多重反射させ、光の有効利用を図ることができる。
【0059】
以上の説明では、MEMSシャッターアレイ102とアパーチャープレート104を別基板に形成して、これらを組み合わせる構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7で示すように同一基板上にMEMSシャッターアレイ102とアパーチャープレート104を設けることもできる。
【0060】
図7は、透光性の基板158上にまず、アパーチャープレート104が設けられる。アパーチャープレート104の金属層132は、図3で説明したように、金属層132の表面に酸化物層134が形成されたもので、画素に応じて開口部126が設けられている。金属層132は平坦化膜160で埋め込まれている。平坦化膜160は、例えば酸化シリコンなどの絶縁膜で形成されるものである。酸化物系の絶縁膜で金属層132を埋め込むことにより、酸化物層134から酸素が抜け還元されてしまうのを防ぐ効果を期待することができる。平坦化膜160の表面は、化学的機械研磨により平坦化加工することにより平坦化することができる。
【0061】
この平坦化膜160の上にMEMSシャッターアレイ102が形成されている。MEMSシャッター118の詳細は図6で示す例と同様である。MEMSシャッター118は、アパーチャープレート104の開口部126の位置に合わせて配設されており、スイッチング素子122によりその動作が制御される。MEMSシャッターアレイ102上には封止基板162が設けられている。
【0062】
バックライト106は、透光性の基板158側に設けられている。このような構成の表示装置であっても、バックライト106側の面では反射率が高く、表示画面側の面では反射率の低いアパーチャープレート104の効果を発揮させることができる。すなわち、表示画面側の面では反射率が低く、その反対側の面では反射率が高いことにより、コントラストの低下を抑制し、バックライトから放射される光の有効利用を図ることができる。また、アパーチャープレート104の作製工程も図4で示すものと同様に作製できるので、作製工程を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 表示装置
102 MEMSシャッターアレイ
104 アパーチャープレート
106 バックライト
108 表示部
110 ゲートドライバ
112 データドライバ
114 端子
116 コントローラ
118 MEMSシャッター
120 画素
122 スイッチング素子
124 保持容量
126 開口部
128 基板
130 基板
132 金属層
134 酸化物層
136 レジストマスク
138 シャッター
140 シャッター開口部
142 第1バネ
144 第1バネ
146 第2バネ
148 第2バネ
150 第1アンカー部
152 第1アンカー部
154 第2アンカー部
156 第2アンカー部
158 基板
160 平坦化膜
162 封止基板
900 表示装置
902 MEMSシャッターアレイ
904 アパーチャープレート
906 バックライト
908 ガラス基板
910 金属層
912 開口部
914 第1の金属層
916 第2の金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射するバックライトの前面に設けられ、開閉動作により前記バックライトから表示画面側に放射される光量を制御するMEMSシャッターが設けられたMEMSシャッターアレイと、
前記バックライトと前記MEMSシャッターアレイとの間に設けられたアパーチャープレートと、を有し、
前記アパーチャープレートは、前記MEMSシャッターが設けられた位置に対応して開口部が形成された金属層を有し、前記金属層の前記MEMSシャッター側の表面に金属の酸化物層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記金属層における前記開口部の側面にも、金属の酸化物層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記金属の酸化物層が、前記金属層を形成する金属材料の酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記アパーチャープレートの前記MEMSシャッターアレイ側の面の反射率が50%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の表示装置。
【請求項5】
前記金属層が、銀又は銀合金で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
MEMSシャッターアレイとアパーチャープレートとを有する表示装置の作製方法であって、
透光性の基板上に金属層を形成し、
前記金属層上に開口パターンが形成されたレジストマスクを設け、
前記レジストマスクが設けられた状態で前記金属層の露出部分をエッチングし、前記透光性の基板まで貫通する開口部を形成し、
前記レジストマスクを除去し、
前記金属層の表面及び前記開口部の側壁面を酸化することにより、前記アパーチャープレートの表裏の反射率を異ならせるようにすることを特徴とする表示装置の作製方法。
【請求項7】
前記レジストマスクをアッシング法により除去することで、該レジストマスクの除去と同時に、前記金属層の表面及び前記開口部の側壁面の酸化を行うことを特徴とする請求項6に記載の表示装置の作製方法。
【請求項8】
前記金属膜の表面及び前記開口部の側壁面の酸化を、オゾン酸化法又は酸素ラジカルを生成するプラズマ酸化法で行うことを特徴とする請求項6に記載の表示装置の作製方法。
【請求項9】
前記金属層を、銀又は銀合金を用いて形成することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の表示装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237865(P2012−237865A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106520(P2011−106520)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】