説明

表面処理装置

【課題】被処理物の大型化に対応して吹出ノズルが長大化しても、吹出ノズルのメンテナンスを容易に行うことができる表面処理装置を提供する。
【解決手段】表面処理装置1の吹出ノズル2は、吹出口2cを有して巾方向Wに延びている。吹出ノズル2は、巾方向Wの第1側の第1分割ノズル10と、巾方向Wの第2側の第2分割ノズル20とに分割されている。分割ノズル10,20どうしの接合面30が、巾方向Wに互いにずれた一対の当接面31,32を有し、これら当接面31,32間に段差33が形成されている。分割ノズル10,20が、それぞれ吹出口2cを挟んで搬送方向Yの両側の一対の分割ノズル部材11,12,23,24に分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反応ガスを吹出ノズルからガラス基板等の被処理物に吹き付け、上記被処理物を表面処理する表面処理装置に関し、特に、大型の被処理物に適した吹出ノズルを有する表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の被処理物に反応ガスを吹き付けてエッチング等の表面処理を行なう装置は公知である(特許文献1,2参照)。この種の表面処理装置には、反応ガスを被処理物に向けて吹き出すノズルが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−294642号公報
【特許文献2】特開2010−082494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造分野等では、ガラス基板等の被処理物が大型化する傾向にある。これに対応して、反応ガスを吹き出すノズルについても大型被処理物の巾寸法程度の長さにすることが求められている。一方、ノズルは、反応ガス中の反応成分との接触によって経年劣化していく。そのため、ある程度の期間使用したら劣化した部材を交換する等のメンテナンスが必要であるが、交換すべき部材が大型被処理物の巾寸法程度の長さを有していると、資材コストが嵩み、交換作業も容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明は、反応ガスを巾方向に延びる吹出口から吹き出して、前記巾方向と直交する搬送方向に相対移動される被処理物に前記反応ガスを接触させる表面処理装置において、
前記吹出口を有して前記巾方向に延びる吹出ノズルを備え、
前記吹出ノズルが前記巾方向の第1側の第1分割ノズルと、前記巾方向の第2側の第2分割ノズルとに分割され、
前記第1、第2分割ノズルどうしの接合面が、前記巾方向に互いにずれた一対の当接面を有し、これら一対の当接面どうしの間に段差が形成され、
さらに、前記第1分割ノズル及び前記第2分割ノズルが、それぞれ前記吹出口を挟んで前記搬送方向の両側の一対の分割ノズル部材に分割されていることを特徴とする。
これによって、吹出ノズルのメンテナンスに際しては、劣化した部分を含む分割ノズル部材だけを交換すればよい。したがって、資材コストを低減でき、かつ交換する部材が短小な分だけ交換作業を容易化できる。ノズル内に汚れが付着したときの掃除も容易である。また、第1分割ノズルと第2分割ノズルの接合面を段差状にすることで、これらノズルの連結作業を容易化でき、連結精度を向上させることができる。
【0006】
ここで、前記第1分割ノズルの前記吹出口の内面を画成する面と、前記第2分割ノズルの前記段差を画成する面とが、互いに面一になっていてもよい。この構造によれば、吹出ノズルの組立の際は、前記第1分割ノズルの前記吹出口の内面を画成する面と、前記第2分割ノズルの前記段差を画成する面とを互いに面一になるよう揃えることで、第1、第2分割ノズルどうしを精度良く継ぎ足すことができる。
前記第1分割ノズル内の前記吹出口と前記第2分割ノズル内の前記吹出口とが前記搬送方向にずれていてもよい。
【0007】
前記吹出口における前記第1分割ノズル内に設けられた部分と前記第2分割ノズル内に設けられた部分とが前記巾方向に一直線に連なり、前記第1、第2分割ノズルにおける前記吹出口よりも前記搬送方向の互いに同じ側に配置された分割ノズル部材どうしの接合面が、前記一対の当接面を含んでいてもよい。この構造によれば、吹出ノズルと被処理物との間の反応ガス流を前記巾方向に均一化できる。
【0008】
前記吹出ノズルが、前記第1分割ノズルと前記第2分割ノズルとに跨ってこれら第1、第2分割ノズルを連結する継部材を更に備え、前記継部材が、前記吹出口を挟んで前記搬送方向の両側の一対の分割継部材に分割されていてもよい。この構造によれば、第1分割ノズルと第2分割ノズルの接合面どうしがぴったり合わさっていなくても、継部材によって第1、第2分割ノズルを確実に連結できる。第1、第2分割ノズルの接合面どうし間に加工誤差や組み立て誤差によって隙間ができても、その隙間を継部材によって塞ぐことができ、封止性を向上できる。したがって、ノズル構成部材の加工の要求精度を緩和でき、嵌め合わせ作業を容易に行なうことができる。
【0009】
前記第1分割ノズル又は前記第2分割ノズルにおける前記一対の分割ノズル部材どうしの間に環状のスペーサが挟まれ、且つ前記一対の分割ノズル部材どうしが、前記環状のスペーサ内を通る連結ボルトにて連結されていることが好ましい。これによって、一対の分割ノズル部材どうしの間隔を維持しながら。これら一対の分割ノズル部材どうしを連結できる。吹出口内の連結ボルトを環状スペーサで包むことで、連結ボルトが反応ガスに触れて劣化するのを防止できる。環状スペーサを小さくすることで、反応ガスの流れに及ぼす影響を小さくできる。
前記環状スペーサ及びボルトは、前記接合面の近くに配置することが好ましい。第1、第2分割ノズルの前記巾方向の長さによっては、前記環状スペーサ及びボルトを第1分割ノズル又は第2分割ノズルの前記巾方向の中間部に1又は複数設けてもよい。
【0010】
本発明は、大気圧近傍下で行なう表面処理に好適である。前記反応ガスは大気圧近傍下で原料ガスをプラズマ化することによって生成することが好ましい。ここで、大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被処理物の大型化に対応して吹出ノズルが長大化しても、その構成部材を短くできる。更には、吹出口を挟んで両側部分を互いに別々の部材にて構成できる。したがって、吹出ノズルのメンテナンスに際して、劣化した部分を含む構成部材だけを交換すればよく、資材コストを低減でき、かつ交換作業を容易化できる。ノズル内に汚れが付着したときの掃除も容易である。加えて、第1分割ノズルと第2分割ノズルの接合面を段差状にすることで、これら第1、第2分割ノズルの連結作業を容易化でき、連結精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面処理装置を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う上記表面処理装置の側面断面図である。
【図3】上記表面処理装置のノズルの接合部を図2のIII−III線に沿って示す平面断面図である。
【図4】上記表面処理装置のノズルの斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る表面処理装置を示す平面図である。
【図6】上記第2実施形態に係る表面処理装置のノズルの斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る表面処理装置を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う上記表面処理装置のノズルの正面断面図である。
【図9】上記第3実施形態に係る表面処理装置のノズルの斜視図である。
【図10】上記第1実施形態に係るノズルの接合構造の変形例を示す斜視図である。
【図11】上記第2実施形態に係るノズルの接合構造の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示したものである。図1及び図2に示す被処理基板9は、例えばフラットパネルディスプレイ等の半導体装置になるべきガラス基板である。ガラス基板9は、SiO等のシリコン含有物を主成分として含み、四角形の平板状をなしている。ガラス基板9のW方向(巾方向、図1の上下方向)の寸法は、1100mm〜1500mm程度であり、ガラス基板9のX方向(巾方向と直交する搬送方向、図1の左右方向)の寸法は、1300mm〜1800mm程度である。ガラス基板9の厚さは、例えば0.5mm〜0.7mm程度である。この実施形態では、表面処理装置1によってガラス基板9の裏面(下面)を軽く粗化(ライトエッチング)する。なお、ガラス基板9の処理対象面は、裏面に限られず、おもて面であってもよい。ここで、ガラス基板9のおもて面とは、絶縁層、導電層、半導体層等の各種電子素子層が設けられるべき側の面を言う。
【0014】
図1及び図2に示すように、表面処理装置1は、吹出ノズル2と、外筺3を備えている。外筺3は、第1筺体3aと、第2筺体3bに分割されている。各筺体3a,3bは、上面が開口された箱状になっている。第1筺体3aは、相対的にW方向の第1側(図1の下側)に配置され、第2筺体3bは、相対的にW方向の第2側(図1の上側)に配置されている。これら筺体3a,3bの互いに向き合う壁どうしが突き当てられ、ボルト(図示省略)等の連結手段にて連結されている。
【0015】
筺体3a,3bの上方に天板3cが配置されている。天板3cは、外筺3のW方向の両側の端壁の上端部によって支持されている。図示は省略するが、天板3cには温調手段が組み込まれている。例えば、上記温調手段は、プレートヒータにて構成されている。或いは、上記天板3cの内部に冷却水等の温調媒体を通す温調路が形成されることで、この温調路が温調手段を構成していてもよい。
【0016】
図1に示すように、外筺3の内部に吹出ノズル2が収容されている。図4に示すように、吹出ノズル2の全体形状は、W方向に長く延びる概略直方体になっている。図1に示すように、吹出ノズル2のW方向の長さは、被処理基板9のW方向の寸法より少し大きい。図2に示すように、吹出ノズル2の平らな上面が天板3cと対向している。天板3cの下面と吹出ノズル2の上面との間に処理空間4が形成されている。被処理基板9が、X方向に搬送され、処理空間4に通される。
【0017】
図4に示すように、吹出ノズル2には、吹出口2cが設けられている。吹出口2cは、吹出ノズル2の全長にわたって設けられている。吹出口2cの上端部が、吹出ノズル2の上面に達している。
【0018】
図2に示すように、吹出ノズル2の下側には、ガス均一化部5が設けられている。吹出ノズル2がガス均一化部5を介して外筺3の底部に支持されている。詳細な図示は省略するが、ガス均一化部5は、W方向に延びるチャンバー、W方向に延びるスリット、W方向に分散して配置された多数の小孔等からなるガス均一化路を含む。反応ガス供給源6からの反応ガス供給路6aがガス均一化路の上流端に連なっている。ガス均一化路の下流端に吹出口2cが連なっている。供給路6aからのガスが、ガス均一化路を通過することによってW方向に均一化される。均一化後のガスが吹出口2cの下端部に導入される。このガスが吹出口2cを通り、吹出口2cから処理空間4へ吹き出される。
【0019】
上記供給源6からの反応ガスは、表面処理の内容に応じた反応成分を含む。この実施形態の反応成分は、HF、COF、F等のフッ素系反応成分にて構成されている。反応ガス供給源6は、例えば、互いに対向する一対の電極6e,6eを含む。これら電極6e,6eどうしの間に電界を印加することで、大気圧近傍のプラズマ放電が生成される。この電極間のプラズマ放電空間6pに原料ガスが供給されてプラズマ化される。原料ガスは、フッ素含有化合物と、水素含有化合物と、放電生成ガスとを含む。フッ素含有化合物としては、CF、C、C、C、C等の他のPFC(パーフルオロカーボン)や、CHF、CH、CHF等のHFC(ハイドロフルオロカーボン)が挙げられ、その他、SF、NF、XeF等が挙げられる。ここでは、フッ素含有化合物としてCFが用いられている。水素含有化合物としては、水、アルコール(OH基含有化合物)、過酸化水素等が挙げられる。ここでは、水素含有化合物として、HOが用いられている。放電生成ガスとしては、Ar、He等の希ガスや、窒素が挙げられる。ここでは、放電生成ガスとして、Nが用いられている。放電生成ガスは、フッ素含有化合物濃度を希釈する希釈ガスとしての機能、並びにフッ素含有化合物及び水素含有化合物を吹出ノズル2へ搬送するキャリアガスとしての機能をも併有している。上記原料ガスがプラズマ放電空間6pにおいてプラズマ化されることで、HF等のフッ素系反応成分を含む反応ガスが生成される。
【0020】
吹出ノズル2の構造を更に詳述する。
図1及び図4に示すように、吹出ノズル2は、第1分割ノズル10と、第2分割ノズル20とに分割されている。第1分割ノズル10は、W方向の第1側(図1において下側)に配置され、第2分割ノズル20は、W方向の第2側(第1側とは反対側、図1において上側)に配置されている。第1分割ノズル10と第2分割ノズル20がW方向に一列に並べられ、かつ互いに分離可能に接合されている。分割ノズル10,20の上面(処理空間4の底部を画成する面)は互いに面一になっている。第1分割ノズル10のX方向の各側面と、第2分割ノズル20のX方向の同じ側の側面とは、互いに面一になっている。
【0021】
図1及び図4に示すように、第1分割ノズル10と第2分割ノズル20の接合面30は段差状になっている。すなわち、接合面30は、W方向にずれた一対の当接面31,32を有している。これら当接面31,32どうし間に段差33が形成されている。第1の当接面31は、相対的にW方向の第1側に位置している。第2の当接面32は、相対的にW方向の第2側に位置している。分割ノズル10,20の第1当接面31を構成する面どうしが、互いに突き当てられている。かつ、分割ノズル10,20の第2当接面32を構成する面どうしが、互いに突き当てられている。
【0022】
さらに、第1分割ノズル10及び第2分割ノズル20は、それぞれ吹出口2cを挟んでX方向の両側の一対の分割ノズル部材に分割されている。詳述すると、図1及び図4に示すように、第1分割ノズル10は、第1の分割ノズル部材11と、第2の分割ノズル部材12とに分割されている。これら分割ノズル部材11,12が、間隙10cを挟んで平行に並べられている。間隙10cは、吹出口2cにおけるW方向の中央部より第1側の部分を構成する。第2分割ノズル20は、第3の分割ノズル部材23と、第4の分割ノズル部材24とに分割されている。これら分割ノズル部材23,24が、間隙20cを挟んで平行に並べられている。間隙20cは、吹出口2cにおけるW方向の中央部より第2側の部分を構成する。第3分割ノズル部材23は、吹出口2cよりも第1分割ノズル部材11と同じ側に配置されている。第4分割ノズル部材24は、吹出口2cよりも第2分割ノズル部材12と同じ側に配置されている。4つの分割ノズル部材11,12,23,24は、反応ガスに対して耐性が高いフッ素系樹脂等の樹脂にて構成されている。
【0023】
図1及び図4に示すように、各分割ノズル部材11,12,23,24の概略形状は、それぞれW方向に長い直方体形状をなしている。第1分割ノズル部材11は、第2分割ノズル部材12よりW方向に長く、第2分割ノズル部材12よりもW方向の第2側に突出している。第3分割ノズル部材23と第4分割ノズル部材24のW方向の長さは互いに等しく、これら分割ノズル部材23,24の第1側(ノズル2の中央側)の端面が面一に揃えられている。また、第3分割ノズル部材23の第1側の端部には、切欠凹部25が形成されている。切欠凹部25は、第3分割ノズル部材23の第1側の端面及び間隙20cとは反対側の側面に達している。切欠凹部25のW方向の第2側の内面25bと、間隙20c側の内面25cとは直角に交差している。
【0024】
第1分割ノズル部材11のW方向の第2側の端部(部材12よりも第2側に突出する部分)が、切欠凹部25に挿入され、内面25bに突き当てられている。これら部材11,23の互いに突き当てられた面が、第2当接面32を構成している。分割ノズル部材11,23どうしがボルト等にて連結されていてもよい。
【0025】
第3、第4分割ノズル部材23,24の第1側の互いに面一をなす端面には、第2分割ノズル部材12の第2側の端面が突き当てられている。これら部材12及び23,24の互いに突き当てられた面が、第1当接面31を構成している。分割ノズル部材12,24どうしがボルト等にて連結されていてもよい。
【0026】
第1分割ノズル部材11のX方向の寸法は、第2分割ノズル部材12のX方向の寸法より小さく、これら部材11,12間の間隙10cがX方向の一側(図1において左)に偏って配置されている。第3分割ノズル部材23のX方向の寸法は、第4分割ノズル部材24のX方向の寸法より大きく、これら部材23,24間の間隙20cが、X方向の他側(図1において右)に偏って配置されている。したがって、吹出口2cにおける第1分割ノズル10内に設けられた部分10cと第2分割ノズル20内に設けられた部分20cとが、X方向にずれている。
【0027】
図3に示すように、第2分割ノズル部材12における間隙10c側の面(吹出口2cの内面を画成する面)と、第3分割ノズル部材23の切欠凹部25の内面25c(段差33を画成する面)とは、互いに面一になっている。上記内面25cと、第1分割ノズル部材11の切欠凹部25に挿入された部分との間には、間隙10dが形成されている。間隙10dは、第1、第2分割ノズル部材11,12間の間隙10cに一直線に連なり、吹出口2cのW方向の中央部分を構成している。
【0028】
図1に示すように、分割ノズル部材11,12の第1側の端部どうし間には、平板状のスペーサ41が挟まれている。分割ノズル部材23,24の第2側の端部どうし間には、別の平板状のスペーサ41が挟まれている。分割ノズル部材23,24の第1側(接合面30の近く)の端部どうし間には、平板状のスペーサ42が挟まれている。スペーサ42は、切欠凹部25のW方向の寸法と同じ大きさの巾を有している。スペーサ42によって、間隙20cのうち間隙10dとX方向に重複する部分が埋められている。これら平板スペーサ41,42は、反応ガスに対して耐性が高いフッ素系樹脂等の樹脂にて構成されている。
【0029】
図3に示すように、分割ノズル部材11,12どうし間の第2側(接合面30の近く)の端部には、環状のスペーサ43が設けられている。環状スペーサ43の外径は、後記連結ボルト53の脚部の外径より少し大きい程度であり、平板スペーサ41,42の大きさに比べると十分に小さい。環状スペーサ43は、軸線をX方向に向け、その軸方向の両端部が分割ノズル部材11,12にそれぞれ埋め込まれている。環状スペーサ43は、反応ガスに対して耐性が高いフッ素系樹脂等の樹脂にて構成されている。これら平板スペーサ41,42及び環状スペーサ43によって間隙10c,20cの厚みが確保されている。
【0030】
図1に示すように、分割ノズル部材11,12の第1側の端部どうしは、連結ボルト51によって連結されている。分割ノズル部材23,24の第2側の端部どうしは、別の連結ボルト51によって連結されている。図3に示すように、分割ノズル部材23,24の第1側(接合面30の側)の端部どうしは、別の連結ボルト51によって連結されている。これら連結ボルト51は、それぞれ平板スペーサ41,42を貫通している。したがって、連結ボルト51が反応ガスに直接的に触れることはない。
【0031】
図3に示すように、分割ノズル部材11,12の第2側(接合面30の側)の端部どうしは、連結ボルト53によって連結されている。連結ボルト53は、環状スペーサ43の中心穴に通されている。したがって、連結ボルト53が反応ガスに直接的に触れることはない。
なお、第1分割ノズル10又は第2分割ノズル20のW方向の中間部にも、環状スペーサ43及び連結ボルト53を設けることにしてもよい。
【0032】
分割ノズル10,20のX方向の両側の側部にそれぞれ鍔60が設けられている。鍔60の上面は分割ノズル10,20の上面と面一になっている。鍔60によって、処理空間4が吹出ノズル2のX方向の両側に延長されている。
【0033】
鍔60には収容穴61が形成されている。収容穴61には、円盤状の回転体62が、軸線をW方向に向けて回転可能に取り付けられている。回転体62の上端部が、吹出ノズル2の上面より僅かに突出している。回転体62によって、被処理基板9が支持される。図示しない搬送手段によって被処理基板9がX方向に押されるのに伴い、回転体62が、被処理基板9との摩擦によって回転することで被処理基板9をX方向に案内する。
【0034】
外筺3のX方向の両側の各壁の上端部と鍔60の先端部との間に吸込み口7cが形成されている。処理空間4のX方向の両端部が、それぞれ吸込み口7cに連なっている。吸込み口7cは、外筺3の内側面と吹出ノズル2の外側面との間の吸込み路7dを介して排気路7aに連なっている。排気路7aが吸引排気手段7に接続されている。吸引排気手段7は、真空ポンプの他、スクラバ等の除害設備を含む。
【0035】
上記のように構成された表面処理装置1によって、被処理基板9を表面処理する方法を説明する。
被処理基板9を、図示しない搬送手段によってX方向に搬送し、処理空間4に通す。反応ガス供給源によってフッ素系原料ガスをプラズマ化して、HF等のフッ素系反応成分を含む反応ガスを生成する。この反応ガスを、供給路6aを介してガス均一化部5に導入する。ガス均一化部5は、反応ガスをW方向に均一化する。この反応ガスを吹出口2cから処理空間4へ吹き出す。反応ガスの吹出し流は、W方向に均一な流れになる。この反応ガスが、処理空間4内の被処理基板9の下面に接触する。そして、反応ガス中の水分子又は処理空間4内の雰囲気ガス中の水分子が、反応ガス中のHFと共に被処理基板9の下面に凝縮して、被処理基板9の下面にフッ酸凝縮層が形成される。このフッ酸が被処理基板9の下面の表層を構成するシリコン含有物と反応する。これによって、被処理基板9の下面を軽く粗化することができる。
【0036】
併行して、天板3cに内蔵の温調手段によって被処理基板9を温調し、例えば被処理基板9の上面を少し加熱する。これによって、被処理基板9の上面にフッ酸凝縮層が形成されるのを抑制又は防止できる。ひいては、被処理基板9の上面(おもて面)が粗化処理されるのを抑制又は回避できる。
【0037】
さらに、図示しない排気手段を駆動することで、処理済みの反応ガスを処理空間4のX方向の両端部から吸込み口7cに吸い込み、吸込み路7d及び排気路7aを順次経て排出する。
【0038】
表面処理装置1によれば、被処理基板9が大型であっても分割ノズル10,20をW方向に継ぎ足すことで、吹出ノズル2を大型の被処理基板9の巾寸法に対応する大きさにすることができる。これによって、被処理基板9のW方向の全域を一度に表面処理できる。吹出口2cからの吹き出し流をW方向に均一化することで、被処理基板9の表面処理の度合いをW方向に均一化できる。さらに、間隙20cにおける間隙10dとX方向に重複する部分を平板スペーサ42にて埋めることで、表面処理の均一性を確実に確保できる。吹出口2cのW方向の中間部には小径の環状スペーサ43を設けることで、スペーサ43による反応ガスの流れへの影響を充分に小さくでき、反応ガス流の均一性を確保できる。
【0039】
吹出ノズル2がW方向に長大化しても、分割構造にすることで、その構成部材11,12,23,24を短くできる。したがって、吹出ノズル2のメンテナンスに際して、これら構成部材11,12,23,24のうち劣化した部分を含む部材だけを交換すればよく、資材コストを低減でき、かつ交換対象の部材が短小な分だけ交換作業を容易化できる。ノズル2の内部に汚れが付着したときの掃除も容易である。加えて、第1分割ノズル10と第2分割ノズル20の接合面30を段差にすることで、これら分割ノズル10,20の嵌め合いが容易になる。すなわち、ノズル2の組立の際は、第1分割ノズル部材11を第3分割ノズル部材23の切欠凹部内面25bに突き当て、かつ、第2分割ノズル部材12を第3、第4分割ノズル部材23,24の第1側の端面に突き当てるとともに、第2分割ノズル部材12の間隙10cを画成する面と、第3分割ノズル部材23の切欠凹部内面25cとを面一に揃える。これによって、2つの分割ノズル10,20を精度良く継ぎ足すことができる。さらに、外筺3についても分割構造にすることで、その構成部材3a,3bを短くでき、メンテナンスを容易化できる。
4つの分割ノズル部材のうち3つの分割ノズル部材11,12,24については、直方体形状に形成すればよく、分割ノズル部材11,12,24自体に切欠凹部や段差を形成する必要がない。したがって、製作が容易であり、加工精度を高くできる。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図5及び図6は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、吹出口2cが、ノズル2のX方向のちょうど中央部に配置され、かつノズル2のW方向の全長にわたって一直線に延びている。すなわち、吹出口2cにおける第1分割ノズル10内に設けられた部分10cと、第2分割ノズル10内に設けられた部分20cとが、W方向に一直線に連なっている。第1分割ノズル部材11と第3分割ノズル部材23のW方向の寸法は互いに等しく、これら部材11,23における吹出口2cの内面を画成する面どうしが面一になっている。第2分割ノズル部材12と第4分割ノズル部材24のW方向の寸法は互いに等しく、これら部材12,24における吹出口2cの内面を画成する面どうしが面一になっている。
【0041】
さらに、第2実施形態では、吹出口2cを挟んで両側の接合面30a,30bがそれぞれ段差状になっている。すなわち、吹出口2cよりもX方向の互いに同じ側に配置された分割ノズル部材どうしの接合面30a,30bが段差状になっている。詳述すると、図5に示すように、第1、第3分割ノズル部材11,23どうしの接合面30aは、一対の当接面31a,32aを含む。これら当接面31a,32aは、互いにW方向にずれており、これら当接面31a,32aどうしの間に段差33bが形成されている。同様に、第2、第4分割ノズル部材12,24どうしの接合面30bは、一対の当接面31b,32bを含む。これら当接面31b,32bは、互いにW方向にずれており、これら当接面31b,32bどうしの間に段差33bが形成されている。
【0042】
図5に示すように、2つの接合面30a,30bは、吹出口2cに関して対称状になっている。何れの接合面30a,30bにおいても、第1側の当接面31a,31bがX方向の外側に位置し、第2側の当接面32a,32bがX方向の内側(吹出口2cの側)に位置している。
【0043】
図5に示すように、第1分割ノズル10における第2側(接合面30a,30bの近く)の端部には、第1実施形態と同様の環状スペーサ43及び連結ボルト53が設けられている。環状スペーサ43によって間隙10cの厚みが確保され、かつボルト53によって分割ノズル部材11,12どうしが連結されている。第2分割ノズル20における第1側(接合面30a,30bの近く)の端部にも、同様の環状スペーサ43及び連結ボルト53が設けられ、間隙20cの厚みが確保されるとともに、分割ノズル部材23,24どうしが連結されている。
なお、第1分割ノズル10又は第2分割ノズル20のW方向の中間部にも、環状スペーサ43及び連結ボルト53を設けることにしてもよい。
【0044】
第2実施形態では、吹出口2cから吸込み口7cまでのX方向の距離をW方向の位置によらず一定にできる。したがって、排気バランスを向上させることができ、処理空間4における反応ガスの流れをW方向に確実に均一にすることができる。また、接合面30a,30bをそれぞれ段差状にすることで、これら接合面30a,30bの封止性を高めることができる。
【0045】
図7〜図9は、本発明の第3実施形態を示したものである。
図7に示すように、第3実施形態は、第2実施形態(図5、図6)の吹出ノズル2に継部材70が付加されている。図9に示すように、継部材70は、ブロック状になっており、吹出ノズル2の上面のW方向の中央部に配置され、第1分割ノズル10と第2分割ノズル20とに跨っている。図8に示すように、継部材70の第1分割ノズル10に被さる部分が、ボルト57にて第1分割ノズル10に連結されている。継部材70の第2分割ノズル20に被される部分が、別のボルト57にて第2分割ノズル20に連結されている。第1分割ノズル10と第2分割ノズル20が継部材70を介して連結されている。これらボルト57は、吹出ノズル2の上方から継部材70を通して分割ノズル10,20にねじ込まれている。
なお、ボルト57が、吹出ノズル2の下方から分割ノズル10,20を通して継部材70にねじ込まれていてもよい。
【0046】
図8に示すように、第1分割ノズル10の上面のW方向の第2側の部分には、凹部17が形成されている。第2分割ノズル20の上面のW方向の第1側の部分には、凹部27が形成されている。第1分割ノズル10と第2分割ノズル20とが接合されることで、これら分割ノズル10,20の凹部17,27どうしが連続して一体になっている。この凹部17,27に継部材70が嵌め込まれている。継部材70の上面と分割ノズル10,20の上面とは、互いに面一になっている。継部材70の上面は、分割ノズル10,20の上面と共に処理空間4の底部を画成する画成面を構成する。継部材70のX方向の各側面と、分割ノズル10,20のX方向の同じ側の側面とは互いに面一になっている。
なお、継部材70を、ノズル2の上面(反応ガスの吹出し側)に代えて、ノズル2の下面(反応ガスのノズル2への導入側)に設けてもよい。
【0047】
図7に示すように、継部材70は、吹出口2cを挟んでX方向の両側の一対の分割継部材71,72に分割されている。第1の分割継部材71は、第1分割ノズル部材11と第3分割ノズル部材23とに跨っている。2つの分割ノズル部材11,23が第1分割継部材71を介して連結されている。第2の分割継部材72は、第2分割ノズル部材12と第4分割ノズル部材24とに跨っている。2つの分割ノズル部材12,24が第2分割継部材72を介して連結されている。
【0048】
図9に示すように、分割継部材71,72どうしの間に間隙70cが形成されている。間隙70cは、継部材70のW方向の全長にわたって延びている。間隙70cの上端部が、継部材70の上面に開口している。間隙70cの下端部及びW方向の両端部が、間隙10c,20cに連なっている。これら間隙10c,20c,70cによって、吹出口2cが構成されている。
【0049】
第3実施形態では、第1分割ノズル10と第2分割ノズル20の接合面どうしがぴったり合わさっていなくても、継部材70によって分割ノズル10,20を確実に連結できる。かつ分割ノズル10,20の接合面どうし間に誤差による隙間があっても、その隙間を継部材70によって上方から塞ぐことができ、封止性を向上できる。したがって、ノズル2の各構成部材11,12,23,24の加工の要求精度を緩和でき、嵌め合わせ作業を容易に行なうことができる。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採用できる。
例えば、被処理物9は、ガラス基板に限られず、半導体ウェハや樹脂シート等でもよい。
吹出ノズルが、W方向に3つ以上のノズルに分割されていてもよい。その場合、これら3つ以上の分割ノズルのうちW方向に隣り合う2つの分割ノズルの一方が、第1分割ノズルを構成し、上記2つの分割ノズルの他方が、第2分割ノズルを構成する。
分割ノズル10,20の接合構造は、その接合面が段差状になっていればよく、種々の改変をなすことができる。例えば、図10に示すように、第1実施形態の変形態様として、第2分割ノズル部材12に代えて、第1分割ノズル部材11における吹出口10cの内面を画成する面と、第3分割ノズル部材23の切欠凹部25の段差画成面25cとが面一をなし、第1分割ノズル部材11の上記吹出口画成面の第2側の端部が、上記段差画成面25cに当接していてもよい。
第2実施形態において、吹出口2cを挟んで両側の接合面30a,30bは必ずしも対称状でなくてもよい。例えば、図11に示すように、片側の接合面30bの第1当接面31bがX方向の内側に配置され、かつ第2当接面32bがX方向の外側に配置されていてもよい。
吹出口2cを挟んで両側の接合面30a,30bがW方向にずれていてもよい。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態の分割ノズル10,20についても継部材70にて連結してもよい。
本発明は、エッチング(表面粗化)に限られず、洗浄、成膜、表面改質(撥水化、親水化を含む)等の種々の表面処理に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ等の半導体装置の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 表面処理装置
2 吹出ノズル
2c 吹出口
3 外筺
3a 第1筺体
3b 第2筺体
3c 天板
4 処理空間
5 ガス均一化部
6 反応ガス供給源
6a 反応ガス供給路
6e 電極
6p プラズマ化空間
7 排気手段
7a 排気路
7c 吸込み口
7d 吸込み路
9 ガラス基板(被処理物)
10 第1分割ノズル
10c 間隙(吹出口における第1分割ノズル内の部分)
10d 間隙(吹出口の中央部分)
11 第1分割ノズル部材
12 第2分割ノズル部材
17 継部材収容凹部
20 第2分割ノズル
20c 間隙(吹出口における第2分割ノズル内の部分)
23 第3分割ノズル部材
24 第4分割ノズル部材
25 切欠凹部
25b 切欠凹部内面
25c 切欠凹部の段差画成面
27 継部材収容凹部
30 接合面
30a,30b 接合面
31 当接面
31a,31b 当接面
32 当接面
32a,32b 接合面
33 段差
33a,33b 段差
41,42 平板スペーサ
43 環状スペーサ
51 連結ボルト
53 環状スペーサ用連結ボルト
57 継部材連結ボルト
60 鍔
61 収容穴
62 回転体
70 継部材
70c 間隙
71 第1分割継部材
72 第2分割継部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスを巾方向に延びる吹出口から吹き出して、前記巾方向と直交する搬送方向に相対移動される被処理物に前記反応ガスを接触させる表面処理装置において、
前記吹出口を有して前記巾方向に延びる吹出ノズルを備え、
前記吹出ノズルが前記巾方向の第1側の第1分割ノズルと、前記巾方向の第2側の第2分割ノズルとに分割され、
前記第1、第2分割ノズルどうしの接合面が、前記巾方向に互いにずれた一対の当接面を有し、これら一対の当接面どうしの間に段差が形成され、
さらに、前記第1分割ノズル及び前記第2分割ノズルが、それぞれ前記吹出口を挟んで前記搬送方向の両側の一対の分割ノズル部材に分割されていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記第1分割ノズルの前記吹出口の内面を画成する面と、前記第2分割ノズルの前記段差を画成する面とが、互いに面一になっていることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記吹出口における前記第1分割ノズル内に設けられた部分と前記第2分割ノズル内に設けられた部分とが前記巾方向に一直線に連なり、前記第1、第2分割ノズルにおける前記吹出口よりも前記搬送方向の互いに同じ側に配置された分割ノズル部材どうしの接合面が、前記一対の当接面を含むことを特徴とする請求項1に記載の表面処置装置。
【請求項4】
前記吹出ノズルが、前記第1分割ノズルと前記第2分割ノズルとに跨ってこれら第1、第2分割ノズルを連結する継部材を更に備え、前記継部材が、前記吹出口を挟んで前記搬送方向の両側の一対の分割継部材に分割されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記第1分割ノズル又は前記第2分割ノズルにおける前記一対の分割ノズル部材どうしの間に環状のスペーサが挟まれ、且つ前記一対の分割ノズル部材どうしが、前記環状のスペーサ内を通る連結ボルトにて連結されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−69851(P2013−69851A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207160(P2011−207160)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】