説明

表面実装型圧電発振器

【課題】 小型化・低背化に対応させながらベースの底面に近接して形成された接続されていない配線パターン間で短絡することのないより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供する。
【解決手段】 圧電振動板と集積回路素子を有し、これらを収納する絶縁性のベース1と気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電発振器であって、前記ベース1の収納部10の底面には絶縁性の保持台10cと第1の配線パターン12a〜12fとが形成され、前記保持台の上面部には第2の配線パターン13a,13bが形成されるとともに、前記第2の配線パターンに対して少なくとも接続されていない第1の配線パターンが交差する保持台の上面部の端部領域には無電極部131a,131bを形成し、前記保持台の集積回路素子搭載側の側面部と交わる保持台の上面部の他の端部領域には前記第2の配線パターンを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性のベース上に圧電振動板と集積回路素子が実装された表面実装型圧電発振器に関するものであって、特に表面実装型圧電発振器のパッケージ構造を改善するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動板等の圧電振動子を用いた圧電発振器は、安定して精度の高い発振周波数を得ることができるため、電子機器等の基準周波数源として多種の分野で使用されている。表面実装型圧電発振器では、絶縁性のベースとしてセラミック多層基板を用い、当該ベースの収納部に発振回路用の集積回路素子を配置するとともに、当該集積回路素子の上方に水晶振動板を支持固定し、気密封止を行ったものである(例えば、下記する特許文献1参照)。このような構成は集積回路素子のカスタム化により比較的部品点数が少なく、シンプルな構成であり、低コスト化に寄与している。
【0003】
このような集積回路素子は、ベースに形成された配線パターンに対して、ワイヤボンディング工法を用いて接続するか、あるいは金属バンプ(Au等)を介したフェイスダウンボンディングの工法(以下「FCB」という)を用いて接続することで、圧電振動子や端子電極等と電気的に接続されている(例えば、下記する特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−158558号公報
【特許文献2】特開2004−356687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、電子機器の小型化がすすんでおり、この小型化にともない上記したような表面実装型圧電発振器も小型化が進められている。そのため、例えば、上記した特許文献1に示すような表面実装型圧電発振器では、ベースに集積回路素子を接合するためのベース上の配線パターンの形成位置の間隔を短くする必要がある。
【0005】
ところで、ベースの配線パターンの表面にダストや溶剤や酸化薄膜などが付着していると、配線パターンへのワイヤボンディングや金属バンプの接合力が低下する。このため、現在、集積回路素子と配線パターンとを接合する前に、配線パターンの表面を洗浄する方法が採用されている。この配線パターンを洗浄する手法として、近年、洗浄後の後工程(アルカリ除去)による二次汚染がないプラズマエッチングなどのドライエッチングによる洗浄方法が一般化されている。ここでいうプラズマエッチングによる手法では、加速されたアルゴンイオン、酸素イオン等を配線パターンの表面に物理的に衝突させて配線パターンの金属表面を削り、ダストや溶剤や酸化薄膜が付着していない配線パターンの金属面を露出させて配線パターンの表面を洗浄する。
【0006】
しかしながら、上記したベース上の配線パターンをプラズマエッチングにより洗浄する場合、電極屑が飛散し、この飛散した電極屑がベースの壁面など、ベースの底面に対して角度を有した面に再付着する。この電極屑の再付着に関して、アルゴンイオン、酸素イオンの照射源に対向した対向面(例えば、ベースの底面)に再付着することはないが、照射源に対向した対向面に対して角度を有した面(例えば、照射源に直交する面ベースの壁面)などでは、照射源から照射したイオンが衝突しない若しくはし難いため、飛散して再付着した電極屑が残存する。
【0007】
そのため、表面実装型圧電発振器の小型化に伴い、集積回路素子を接合するベース上の配線パターン形成位置の間隔を狭くした場合、ベースの底面に対して角度を有した面に再付着した電極屑により近接して形成されたお互いに接続されていない配線パターン同士が接続され、結果として近接して形成されたお互いに接続されていない配線パターン間の短絡を招く可能性があった。
【0008】
上記した隣接する配線パターン間の短絡を回避するために、例えば、上記した特許文献1に記載の表面実装型圧電発振器では、電極屑が再付着しないように、ベースの再付着する領域を、マスク部材で覆っていたが、表面実装型圧電発振器の小型化や低背化によりベースの再付着する領域が小さくなり、ベースの再付着する領域のみをマスク部材で覆うことは難しい。特に、上記した特許文献1に記載の発明では、パッケージの内部下方に集積回路素子が配され、この集積回路素子近傍の上方に水晶振動板が保持されているので、上記問題の悪影響を受けやすかった。
【0009】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、小型化・低背化に対応させながらベースの底面に近接して形成されたお互いに接続されてない配線パターン間で短絡することのないより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の特許請求項1に示すように、圧電振動板と集積回路素子を有し、これらを収納する絶縁性のベースと気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電発振器であって、前記ベースは上面側に側壁部と収納部、底面側に端子電極を有しており、前記収納部の底面には上面部と側面部を有する絶縁性の保持台と、前記集積回路素子と接続される第1の配線パターンとが形成され、前記保持台の上面部には前記圧電振動板と接続する第2の配線パターンが形成されるとともに、当該第2の配線パターンが前記第1の配線パターンの一部に接続されており、前記第2の配線パターンに対して少なくとも接続されていない第1の配線パターンが交差する保持台の上面部の端部領域には第2の配線パターンが形成されない無電極部を形成し、前記保持台の集積回路素子搭載側の側面部と交わる保持台の上面部の他の端部領域には前記第2の配線パターンを形成したことを特徴とする。
【0011】
上記構成により、前記第2の配線パターンに対して少なくとも接続されていない第1の配線パターンが交差する保持台の上面部の端部領域における第2の配線パターンは保持台の側面部から隔離した状態で形成されるので、お互いに接続されていない第2の配線パターンと第1の配線パターンには絶縁性の保持台の上面部の素地部分で阻まれ、保持台の側面部のみで近接配置されることがなくなる。また、前記保持台の集積回路素子搭載側の側面部と交わる保持台の上面部の他の端部領域では第2の配線パターンが端部領域まで形成されているので、第2の配線パターンを集積回路素子が搭載されたベースの収納部の方へ拡大することで第2の配線パターンの搭載面積を全体として縮小することがない。
【0012】
このため、収納部の底面に形成された第1の配線パターンとこれに近接し保持台の上面部に形成されたお互いに接続されていない第2の配線パターンとが保持台の側面部上で接続するのを回避することが可能となり、お互いに接続されていない第1の配線パターンと第2の配線パターンの接続による短絡を防止することが可能となる。保持台の側面部間の短絡を防止できるので保持台の低背化も実現できる。
【0013】
特に、本発明は、前記ベース上の前記配線パターンをプラズマエッチングにより洗浄する場合に好ましい構成である。すなわち、プラズマエッチングを用いた場合、電極屑が飛散し、この飛散した電極屑がベースの保持台の側面部など、ベースの底面に対して角度を有した面に再付着するが、本発明によれば、お互いに接続されていない第2の配線パターンと第1の配線パターンには絶縁性の保持台の上面部の素地部分で阻まれ、保持台の側面部のみで近接配置されることがないので、保持台の側面部上で接続するのを回避することが可能となる。なお、本発明は、上記したプラズマエッチングだけでなくドライエッチング法全般における同一の不具合を解消するのに好ましい。
【0014】
また、上記した従来例のようにマスク部材を用いて隣接する電極パッド間の短絡を回避していないので、本発明は、小型化された表面実装型圧電発振器に好適である。特にベースの収納部の底面に形成される第1の配線パターンは接続されていない第2の配線パターンの設計に制限されることがなくなり、設計自由度が増す。その結果、当該表面実装型圧電発振器を搭載する機器の多機能化(機能の追加)によって生じる当該表面実装型圧電発振器での配線パターンの増加にも対応することが可能となる。
【0015】
さらに、第2の配線パターンを集積回路素子が搭載されたベースの収納部の方へ拡大することで第2の配線パターンの搭載面積を全体として縮小することがないので、圧電振動板と第2の配線パタ−ンとの電気的な接続性が低下することなく、圧電振動板と保持台との機械的な接合強度も低下することがない。また、ベースの収納部の保持台から集積回路素子の搭載方向に対して大小に形成された様々な圧電振動板の搭載に対応することができ、当該方向への圧電振動板の搭載ずれにも対応することが可能となる。
【0016】
また、本発明の特許請求項2に示すように、上述の構成に加え、前記圧電振動板の一端部を前記ベースの収納部の底面から隙間を設けながら、前記圧電振動板の対向する他端部を前記ベースの保持台に接合して片持ち保持してなり、圧電振動板の下に集積回路素子を配置してなり、前記保持台側に向かって延出される第1の配線パターンには前記第2の配線パターンに接続される少なくとも2つの第1の配線パターンが含まれてなることを特徴とする。
【0017】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、前記圧電振動板の一端部を前記ベースの収納部の底面から隙間を設けながら、前記圧電振動板の対向する他端部を前記ベースの保持台に接合して片持ち保持してなり、圧電振動板の下に集積回路素子を配置してなり、前記保持台側に向かって延出される第1の配線パターンには前記第2の配線パターンに接続される少なくとも2つの第1の配線パターンが含まれていることで、お互いに接続された第1の配線パターンに対して第2の配線パターンは保持台の側面部から隔離した状態で形成する必要がなくなるので、端部領域まで形成することができ、第2の配線パターンの面積をより拡大することができる。つまり表面実装型圧電発振器の小型化に対応させながらも圧電振動板と第2の配線パタ−ンとの電気的な接続性をより向上させ、圧電振動板と保持台との機械的な接合強度もより向上させることができる。
【0018】
また、第2の配線パターンに接続される第1の配線パターンは第2の配線パターンの設計に制限されることがなくなるので、設計自由度が増すとともに、保持台に向かう第1の配線パターンの増加にも対応できる。つまりベースの収納部の底面の第1の配線パターンの配置密度も向上にも寄与し、当該表面実装型圧電発振器の小型化や多機能化(機能の追加)にも対応することが可能となる。
【0019】
さらに、ベースの収納部の保持台から集積回路素子の搭載方向に対して圧電振動板を片持ち搭載し、圧電振動板の下に集積回路素子を配置することで、ベースの収納部内での集積回路素子と圧電振動板のより高密度な実装が行え、表面実装型圧電発振器の小型化に対応させることができるだけでなく、ベースの収納部の面積に近接したより大きな圧電振動板を搭載することができる。特にこのようにより大きく形成された圧電振動板に対して励振電極も大きく形成することで、励振領域を広くし、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができるので、表面実装型圧電発振器の小型化を実現しながらもより電気的な特性のすぐれたものが得られる。
【0020】
また、上述の構成に加え、前記ベースの少なくとも4角に端子電極が形成され、前記保持台側に向かって延出される第1の配線パターンのうち前記端子電極に接続される第1の配線パターンに対して前記第2の配線パターンに接続される第1の配線パターンをベースの中央よりに配置してもよい。この場合、上述の作用効果に加えて、第1の配線パターンをより最短寸法にて第2の配線パターンや端子電極に対して延出することができ、ベース上の各配線パターンの設計も簡素化して形成することができるので、各配線パターンの距離が不要に延長されることによる容量形成にともなう電気的特性の調整の複雑化を招いたり、表面実装型圧電発振器の小型化を妨げることがより一層なくなる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明は、小型化・低背化に対応させながらベースの底面に近接して形成された接続されていない配線パターン間で短絡することがなく、配線パターンと圧電振動板との電気的機械的な接続領域を全体として縮小させることがないより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明による実施形態につき表面実装型水晶発振器を例にとり図面とともに説明する。図1は本発明の実施の形態を示す圧電振動板を搭載する前のベースの平面図、図2は図1の底面図、図3は図1のA−A線に沿った断面図、図4は図1のB−B線に沿った断面図、図5は図1の圧電振動板を搭載した後の平面図である。また図6は本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の製造工程のうち、洗浄工程を示した概略工程図、図7は本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の製造工程のうち、集積回路素子の接合工程を示した概略工程図、図8は本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の製造工程のうち、圧電振動板の接合工程を示した概略工程図である。
【0023】
表面実装型水晶発振器は、上部が開口した凹部を有するセラミックベース1(絶縁性のベース)と、当該セラミックベースの中に収納される集積回路素子2と、同じく当該セラミックベース中の上部に収納される圧電振動板3と、セラミックベースの開口部に接合される蓋(図示せず)とからなる。
【0024】
セラミックベース1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステンあるいはモリブデン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形の収納部10を有する構成である。収納部10は第1の収納部10a(下部収納部)と第2の収納部10b(上部収納部)からなり、それぞれ集積回路素子2と圧電振動板3が収納される。収納部周囲には堤部(側壁部)11が形成されており、堤部11の上面は平坦であり、当該堤部上に周状の金属層11a(封止用部材)が形成されている。当該金属層11aの上面も平坦になるよう形成されており、タングステンあるいはモリブデン、ニッケル、金の順で金属層を構成している。タングステンあるいはモリブデンは厚膜印刷技術を活用してメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0025】
セラミックベース側端部には上下方向に伸長する複数のキャスタレーションが形成されている。当該キャスタレーションは円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成である。なお、前記金属層11aはセラミックベースの角部の堤部を上下に貫通接続する図示しない導電ビアやキャスタレーションなどにより、セラミックベース底面側に形成された端子電極の一部に電気的に導出されている。当該端子電極をアース接続することにより、後述の金属製の蓋が金属層11a、導電ビアやキャスタレーションなどを介して接地され、表面実装型圧電発振器の電磁気的なシールド効果を得ることができる。なお、前述のとおり、当該導電ビアは周知のセラミック積層技術により形成することができる。
【0026】
セラミックベース1内部において、下方面には前述のとおり集積回路素子2を収納する第1の収納部10aと、第1の収納部の底面から上部に突出し、後述する圧電振動板の端部を保持する保持台10cと、前記第1の収納部を介して前記保持台と対向位置する枕部10dが形成されており、前記第1の収納部10aの上方には、第2の収納部10bが形成されている。
【0027】
前記第1の収納部10aの底面には、後述する集積回路素子2と接続される例えば6つの第1の配線パターン12a,12b,12c,12d,12e,12fが複数並んで形成されている。前記保持台10cの上面101cには、後述する圧電振動板3と接続される第2の配線パターン13a,13bが形成されている。このうち第2の配線パターン13aは保持台10cに形成された導電ビアVにより前記第1の配線パターン12bに接続されており、第2の配線パターン13bは保持台10cに形成された導電ビアVにより前記第1の配線パターン12cに接続されている。
【0028】
第2の配線パターン13a,13bは前記保持台10cのうち後述する集積回路素子2が搭載される側の側面部102cと第1の配線パターンが交差する保持台の上面部の端部領域には第2の配線パターンが形成されない無電極部131a,132a,131b,132bが形成され、前記保持台10cの集積回路素子2が搭載される側の側面部102cと交わる保持台の上面部の他の端部領域には前記第2の配線パターンが拡大して形成されている。なお、本実施形態の第2の配線パターン13a,13bでは、前記交差する第1の配線パターン12a,12b,12c,12dの全てに対して無電極部を形成しているが、各第2の配線パターン13a,13bに対して接続されていない第1の配線パターン12a,12dに対してのみ無電極部を形成してもよい。この場合第2の配線パターンの電極面積を縮小化させることがなくなる。
【0029】
第1の配線パターン12a,12d,12e,12fはキャスタレーションを介して引き出され、最終的に端子電極14a,14b,14c,14dへと導かれるように構成されている。このような構成のセラミックベースは周知のセラミック積層技術やメタライズ技術を用いて形成され、前記各配線パターンは前述の金属層11a形成と同様にタングステンあるいはモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。
【0030】
前記下部収納部に搭載される集積回路素子2は、圧電振動板3とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、その一面には接続端子(図示せず)が複数形成されている。当該集積回路素子2は、例えば金などの金属バンプCを介して、集積回路素子の複数の接続端子と前記セラミックベースに形成された複数の第1の配線パターン12a,12b,12c,12d,12e,12fとを例えばFCBにより接続される。
【0031】
前記集積回路素子2の上方には所定の間隔を持って圧電振動板3が搭載される。圧電振動板3は例えば矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面に対向して一対の矩形状励振電極31,32と、この励振電極を前記セラミックベースの保持台に形成された第2の配線パターン13a,13bと導通するための接続電極33,34と、励振電極を接続電極に導通させるための引出電極35,36が形成されている。
【0032】
なお、これらの電極は、例えば、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、クロムの上部電極層とから構成された積層薄膜、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、ニッケルの上部電極層とから構成された積層薄膜、あるいはクロムの下地電極層と、銀または金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。なお、クロムやニッケルの変わりにアルミの上部電極層、あるいは中間層が金の場合は銀の上部電極層を形成してもよい。
【0033】
圧電振動板3とセラミックベース1との接合は、例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電樹脂接着剤Sを用いている。図5に示すように、前記導電性樹脂接着剤Sは、前記第2の配線パターン13a,13bの上面に塗布されるとともに、前記導電性樹脂接着剤Sを前記圧電振動板3と前記保持台10cの間に介在させ硬化させることで、お互いを電気的機械的に接合している。以上により、前記圧電振動板3の一端部(自由端となる枕部10d側)をセラミックベース1の第1の収納部10aの底面から隙間を設けながら、前記圧電振動板3の対向する他端部を前記ベースの保持台10cに接合して、片持ち保持される。
【0034】
セラミックベース1を気密封止する蓋(図示せず)は、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材(封止材)が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、銀ろう層がセラミックベースの金属層と接合される構成となる。金属製の蓋の平面視外形はセラミックベースの当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0035】
収納部10に集積回路素子2と圧電振動板3が格納されたセラミックベース1を前記金属製の蓋にて被覆し、金属製の蓋の封止材とセラミックベースの封止用部材を溶融硬化させ、気密封止を行うことで表面実装型圧電発振器の完成となる。本実施の形態においては、封止用の金属リングを用いないシーム溶接による気密封止を行っており、前記金属製の蓋の長辺と短辺の稜部に沿ってシームローラを走行させることで、金属製の蓋に形成された銀ろう(封止材)とセラミックベース1の金属層11a(封止用部材)を溶接させ、気密封止が行われる。
【0036】
次に、上記した表面実装型水晶発振器の製造工程について、図6から図8とともに説明する。
【0037】
セラミックベース1の底面を構成する第1層積層部1a上に、保持台10cと枕部10dを成形するための第2積層部1bを積層し、さらに、第2積層部1bの上にキャップ5との接合領域を含む第3積層部1cを積層し、これら第1,2,3積層部1a,1b,1cを凹状に一体的に焼成して、図6に示す上方を開口とした箱状体のセラミックベース1を成形する。
【0038】
上記したように箱状体に成形されたセラミックベース1を、プラズマエッチングによるドライエッチングして、第1の配線パターン12a,12b,12c,12d,12e,12f、第2の配線パターン13a,13bに付着したダストや溶剤や酸化薄膜等を除去洗浄する(洗浄工程)。具体的に、この洗浄工程では、加速されたアルゴンイオンを、図6に示すように、セラミックベース1の開口から前記各配線パターン(一部のみ図示)の表面に対して物理的に衝突させて電極表面を削り、汚染されていない電極の金属面を露出させて前記各配線パターンを洗浄する。この洗浄により、金属である前記各配線パターンの電極表面が削られて各配線パターンの電極表面は活性化され、これに対してセラミックベース1自体は、ほとんど削られない。なお、本実施例のように、プラズマエッチングなどのドライエッチングを行なうことは、セラミックベース1の各配線パターンと集積回路素子2の接続端子や圧電振動板3との接合強度を高めるのに好ましい。また、上記洗浄工程では、図6に示すような保持台10cの側端部102cに、電極屑Kが飛散して付着し残存したとしても、上記無電極部により第1の配線パターンとこれと接続されていない第2の配線パターンとが保持台の側面部上で接続されるのを回避することが可能となる。結果として、お互いに接続されていない第1の配線パターンと第2の配線パターンの接続による短絡を防止することが可能となる。
【0039】
上記したように洗浄工程において第1の配線パターン12a,12b,12c,12d,12e,12fの電極表面を洗浄した後に、セラミックベース1に集積回路素子2を接合する(集積回路素子2の接合工程)。この集積回路素子2の接合工程の前に、集積回路素子2の裏面側の接続端子に金属バンプCを接合する(接続端子と金属バンプについては一部のみ図示)。そして、集積回路素子2に接合した金属バンプCを、セラミックベース1の底面に形成した第1の配線パターン12a,12b,12c,12d,12e,12f(一部のみ図示)に対応させて配し、図7に示すように、金属バンプCをFCB法により第1の配線パターン12a,12b,12c,12d,12e,12f(一部のみ図示)に接合して、集積回路素子2をセラミックベース1に接合する。なお、ここでいうFCB法等では、ボンディングツールにより集積回路素子2をセラミックベース1側に荷重しながら、セラミックベース1の第1の配線パターン12a,12b,12c,12d,12e,12f(一部のみ図示)と金属バンプCの表面とを超音波印加させて、セラミックベース1に集積回路素子2を接合する。また、セラミックベース1自体は幾分加熱されている場合もある。
【0040】
そして、集積回路素子2の接合工程の後に圧電振動板3をセラミックベース1の保持台10cの上面部101cに接合する(圧電振動板3の接合工程)。圧電振動板3とセラミックベース1との接合工程は、例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電樹脂接着剤Sを用いている。図8に示すように、前記導電性樹脂接着剤Sは、前記第2の配線パターン13a,13b(一部のみ図示)の上面に塗布されるとともに、前記導電性樹脂接着剤Sを前記圧電振動板3と前記保持台10cの間に介在させ硬化させることで、お互いを電気的機械的に接合している。
【0041】
上記したように、集積回路素子2および圧電振動板3をセラミックベース1上に接合した後に、セラミックベース1の開口を塞ぐように、セラミックベース1の第3積層部1c上に金属製の蓋を配する。金属製の蓋の封止材とセラミックベースの金属層11a封止用部材を溶融硬化させ、気密封止を行うことで表面実装型圧電発振器の完成となる。
【0042】
なお、本実施例では、洗浄工程においてアルゴンイオンを用いたプラズマエッチングによるエッチングを行なっているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、酸素イオンを用いたプラズマエッチングであってもよい。また、本実施例では、洗浄工程においてプラズマエッチングを用いているが、これは好適な例であり、他のドライエッチング工程を用いてよい。
【0043】
上記本発明の実施形態により、前記保持台10cの集積回路素子2の搭載される側の側面部102cや他の側面部と前記第2の配線パターン13a,13bに対して少なくとも接続されていない第1の配線パターン12a,12dを含み第1の配線パターン12a,12b,12c,12dが交差する保持台の上面部101cの端部領域における第2の配線パターン13a,13bは無電極部131a,132a,131b,132bの存在により、保持台の側面部102cや他の側面部から隔離した状態で形成される。前記保持台の集積回路素子2の搭載される側の側面部102cと交わる保持台の上面部101cの他の端部領域では第2の配線パターン13a,13bが端部領域まで形成されている。つまり、お互いに接続されていない第2の配線パターン13a,13bと第1の配線パターン12a,12d、および第2の配線パターン13a,13bと第1の配線パターン12b,12cには絶縁性の保持台の上面部101cの素地部分で阻まれ、保持台の側面部102cや他の側面部のみで近接配置されることがない。また、第2の配線パターン13a,13bを集積回路素子2が搭載されたベースの収納部10の方へ拡大することで第2の配線パターンの搭載面積を全体として縮小することがない。
【0044】
このため、収納部の底面に形成された第1の配線パターン12a,12b,12c,12dとこれに近接し保持台の上面部101cに形成された第2の配線パターンとが保持台の側面部102cや他の側面部の上面で接続するのを回避することが可能となり、お互いに接続されていない第1の配線パターンと第2の配線パターンの接続による短絡を防止することが可能となる。保持台の側面部間の短絡を防止できるので保持台10cの低背化も実現できる。
【0045】
特に、本発明の実施形態は、前記ベース上の前記各配線パターンをプラズマエッチングにより洗浄する例を示しており、この洗浄に好ましい構成である。すなわち、プラズマエッチングを用いた場合、電極屑が飛散し、この飛散した電極屑Kがベースの保持台の側面部102cなど、ベースの底面に対して角度を有した面に再付着するが、本発明によれば、お互いに接続されていない第2の配線パターンと第1の配線パターンには絶縁性の保持台の上面部の素地部分で阻まれ、保持台の側面部のみで近接配置されることがないので、保持台の側面部上で接続するのを回避することが可能となる。なお、本発明は、上記したプラズマエッチングだけでなくドライエッチング法全般における同一の不具合を解消するのに好ましい。
【0046】
また、本発明の実施形態では、小型化された表面実装型圧電発振器に好適である。特にベースの収納部10の底面に形成される第1の配線パターンはお互いに接続されていない第2の配線パターンの設計に制限されることがなくなり、設計自由度が増す。その結果、当該表面実装型圧電発振器を搭載する機器の多機能化(機能の追加)によって生じる当該表面実装型圧電発振器での配線パターンの増加にも対応することが可能となる。
【0047】
さらに、第2の配線パターン13a,13bを集積回路素子2が搭載されたベースの収納部10の方へ拡大することで第2の配線パターンの搭載面積を全体として縮小することがないので、圧電振動板3と第2の配線パタ−ン13a,13bとの電気的な接続性が低下することなく、圧電振動板3と保持台10cとの機械的な接合強度も低下することがない。また、ベースの収納部の保持台10cから集積回路素子2の搭載方向に対して大小に形成された様々な圧電振動板3の搭載に対応することができ、当該方向への圧電振動板3の搭載ずれにも対応することが可能となる。
【0048】
また、ベースの収納部の保持台10cから集積回路素子2の搭載方向に対して圧電振動板3を片持ち搭載し、圧電振動板3の下に集積回路素子2を配置することで、ベースの収納部10の内部での集積回路素子2と圧電振動板3のより高密度な実装が行え、表面実装型圧電発振器の小型化に対応させることができるだけでなく、ベースの収納部10の面積に近接したより大きな圧電振動板3を搭載することができる。特にこのようにより大きく形成された圧電振動板3に対して励振電極31,32も大きく形成することで、励振領域を広くし、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができるので、表面実装型圧電発振器の小型化を実現しながらもより電気的な特性のすぐれたものが得られる。
【0049】
また、本発明の実施形態では、前記ベース1の少なくとも4角に端子電極14a,14b,14c,14dが形成され、前記保持台10c側に向かって延出される第1の配線パターンのうち前記端子電極14a,14bに接続される第1の配線パターン12a,12dに対して前記第2の配線パターン13a,13bに接続される第1の配線パターン12b,12cをベース1の中央よりに配置している。このため、第1の配線パターン12b,12cをより最短寸法にて第2の配線パターン13a,13bに延出するだけでなく、第1の配線パターン12a,12d,12e,12fもより最短寸法にて端子電極14a,14b,14c,14dに対して延出することができるので、ベース上の各配線パターンの設計も簡素化して形成することができる。その結果、各配線パターンの距離が不要に延長されることによる容量形成にともなう電気的特性の調整の複雑化を招いたり、表面実装型圧電発振器の小型化を妨げることがより一層なくなるように構成されている。
【0050】
上述の実施形態の変形例について、図9、図10とともに説明する。図9、図10は、それぞれ本発明の実施形態の変形例を示す図である。なお、基本構成は上述の実施形態と同じであるので、同じ構成部分については同番号を用いるとともに、相違点のみを説明する。前記圧電振動板3の一端部を前記ベースの収納部10の底面から隙間を設けながら、前記圧電振動板の対向する他端部を前記ベースの保持台10cに接合して片持ち保持している。圧電振動板の両端部の下に集積回路素子2を配置してなり、前記保持台側に向かって延出される第1の配線パターン12a,12b,12c,12dには前記第2の配線パターン13c,13dに接続される少なくとも2つの第1の配線パターン12b,12cが含まれていることで、同電極となる第1の配線パターンに対して第2の配線パターンは保持台の側面部から隔離した状態で形成することなく、端部領域まで形成している。
【0051】
従って上記実施形態にくらべて第2の配線パターン13c,13dの面積を拡大することができ、表面実装型圧電発振器の小型化に対応させながらも圧電振動板3と第2の配線パタ−ン13a,13bとの電気的な接続性をより向上させ、圧電振動板3と保持台10cとの機械的な接合強度もより向上させることができる。
【0052】
また、第2の配線パターン13c,13dに接続される第1の配線パターン12b,12cは第2の配線パターンの設計に制限されることがなくなるので、設計自由度が増すとともに、保持台10cに向かう第1の配線パターンの増加にも対応できる。つまりベースの収納部10の底面の第1の配線パターンの配置密度も向上にも寄与し、当該表面実装型圧電発振器の小型化や多機能化(機能の追加)にも対応することが可能となる。
【0053】
さらに、ベースの収納部の保持台10cから集積回路素子2の搭載方向に対して圧電振動板3を片持ち搭載し、圧電振動板3の下に集積回路素子2を配置することで、ベースの収納部10の内部での集積回路素子2と圧電振動板3のより高密度な実装が行え、表面実装型圧電発振器の小型化に対応させることができるだけでなく、ベースの収納部10の面積に近接したより大きな圧電振動板3を搭載することができる。特にこのようにより大きく形成された圧電振動板3に対して励振電極31,32も大きく形成することで、励振領域を広くし、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができるので、表面実装型圧電発振器の小型化を実現しながらもより電気的な特性のすぐれたものが得られる。
【0054】
なお、上記した本実施例では、圧電振動板としてATカット水晶振動板を用いているが、これに限定されるものでなく、音叉型水晶振動板であってもよい。また、圧電振動板として水晶を材料としているが、これに限定されるものではなく、圧電セラミックスやLiNbO3等の圧電単結晶材料を用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動板が適用可能である。また、圧電振動板を片持ち保持するものを例にしているが、圧電振動板の両端を保持する構成であってもよい。
【0055】
また、本実施例では、圧電振動板3と集積回路素子2とを用いているが、これに限定されるものではなく、圧電振動板3の個数は任意に設定可能であり、さらに集積回路素子2に加えて他の回路部品を搭載してもよい。すなわち、用途にあわせてベースに搭載する部材を設定変更することができる。また、集積回路素子とセラミックベースとの電気的接続は、フリップチップボンディング工法に限らず、ワイヤボンディング工法などを採用してもよい。
【0056】
また、本実施例では、上記したシーム封止を用いた封止工程によるが、これに限定されることではなく、コバールリングを介してシーム封止したものでもよく、さらに、シーム封止に限らず、ビーム封止(例えば、レーザビーム、電子ビーム)やガラス封止、ろう材封止等であってもよい。
【0057】
なお、本発明は、その思想または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態を示す圧電振動板を搭載する前の平面図。
【図2】図1の底面図。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図。
【図4】図1のB−B線に沿った断面図。
【図5】図1の圧電振動板を搭載した後の平面図。
【図6】本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の製造工程のうち、洗浄工程を示した概略工程図。
【図7】本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の製造工程のうち、集積回路素子の接合工程を示した概略工程図。
【図8】本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の製造工程のうち、圧電振動板の接合工程を示した概略工程図。
【図9】本発明の実施形態の変形例を示す圧電振動板を搭載する前の平面図。
【図10】図9の圧電振動板を搭載した後の平面図。
【符号の説明】
【0059】
1 セラミックベース
2 集積回路素子
3 圧電振動板
S 導電性接合材
C 金属バンプ
V 導電ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動板と集積回路素子を有し、これらを収納する絶縁性のベースと気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電発振器であって、
前記ベースは上面側に側壁部と収納部、底面側に端子電極を有しており、
前記収納部の底面には上面部と側面部を有する絶縁性の保持台と、前記集積回路素子と接続される第1の配線パターンとが形成され、
前記保持台の上面部には前記圧電振動板と接続する第2の配線パターンが形成されるとともに、当該第2の配線パターンが前記第1の配線パターンの一部に接続されており、
前記第2の配線パターンに対して少なくとも接続されていない第1の配線パターンが交差する保持台の上面部の端部領域には第2の配線パターンが形成されない無電極部を形成し、
前記保持台の集積回路素子搭載側の側面部と交わる保持台の上面部の他の端部領域には前記第2の配線パターンを形成したことを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項2】
前記圧電振動板の一端部を前記ベースの収納部の底面から隙間を設けながら、前記圧電振動板の対向する他端部を前記ベースの保持台に接合して片持ち保持してなり、圧電振動板の下に集積回路素子を配置してなり、
前記保持台側に向かって延出される第1の配線パターンには前記第2の配線パターンに接続される少なくとも2つの第1の配線パターンが含まれてなることを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−177543(P2009−177543A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14348(P2008−14348)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】