説明

表面実装用の水晶発振器

【課題】確実に認識できる識別マークを実装端子に設けて生産性を高めた表面実装用の水晶発振器を提供する。
【解決手段】両主面に凹部を有する平面視矩形状とした容器本体の一方の凹部に水晶片を密閉封入して他方の凹部にICチップ3を収容し、前記他方の凹部の外底面となる開口端面の4角部に実装端子7を有し、前記実装端子7のいずれかには辺方向に沿った識別マークとしての突起9を設けた表面実装用の水晶発振器において、前記突起9を設けた実装端子7は前記容器本体の一端側の両角部に設け、前記突起9は同一方向とした一組の辺としていずれも前記開口端面の内周寄り又は外周寄りとし、前記突起9を設けた実装端子7は一端側の両角部間の中心線に対して対称とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はH構造型とした表面実装用の水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)を技術分野とし、特に表面実装発振器の方向性を認識して一致させる識別マークに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装発振器は小型・軽量であることから、例えば携帯電話に代表される携帯型の電子機器に周波数や時間の基準源として内蔵される。このようなものの一つに、例えば容器本体の両主面に凹部を有し、一方の凹部に水晶片を、他方の凹部にICチップを収容した表面実装発振器(H構造型)がある。
【0003】
(従来技術の一例、特許文献1参照)
第4図は一従来例を説明する表面実装発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は外底面図、同図(c)は水晶片の平面図である。
【0004】
表面実装発振器は両主面に凹部を有する断面H状として平面視矩形状とした容器本体1に水晶片2とICチップ3を収容し、少なくとも水晶片2を金属カバー4によって密閉封入してなる。容器本体1は積層セラミックからなり、両主面に凹部を形成する中央底壁及び上下枠壁を有する。容器本体1の一方の凹部となる上枠壁の上面(開口端面)には金属リング5を有し、内底面には水晶保持端子6を有する。
【0005】
容器本体1の他方の凹部となる下枠壁の下面(外底面)の4角部には例えば隣接した直交辺にまたがる鉤状とした実装端子7を有し、内底面には回路端子8を有する。実装端子7は通常では4角部での位置が標準化され、例えば左斜め下を起点として反時計回りに電源端子Vcc、出力端子Out、アース端子GND及び例えば電圧制御端子Vcの順に4角部に配置される。
【0006】
各実装端子7(Vcc、OUT、GND、Vc)は、これらと対応した内底面の回路端子8と図示しない配線路によって電気的に接続する。そして、例えば電圧制御端子7(Vc)には他の実装端子7(Vcc、OUT、GND)とは異なる突起9を例えば長辺方向に沿って設け、これを識別マークとして各実装端子7の位置及び方向性(長さ方向)を特定する。
【0007】
水晶片2は両主面に励振電極10aを有し、一端部両側に引出電極10bをそれぞれ反対面に折り返して延出する。引出電極10bの延出した一端部両側が一方の凹部の内底面に設けた水晶保持端子6に導電性接着剤11によって固着される。水晶保持端子6は図示しない配線路によって他方の凹部の回路端子8(水晶端子)に接続する。そして、一方の凹部の開口端面に設けられた金属リング5にシーム溶接によって金属カバー4を接合し、水晶片2を密閉封入する。
【0008】
ICチップ3は少なくとも図示しない発振回路を集積化し、回路形成面である一主面に図示しないIC端子を有する。そして、例えばバンプ12を用いた超音波熱圧着によって他方の凹部の回路端子8に固着し、電気的・機械的に接続する。通常では、特に回路形成面を保護する樹脂13(所謂アンダーフィル)が注入され、ここではICチップ3を覆って塗布される。
【0009】
このようなものでは、例えば表面実装発振器の発振特性の検査工程を含む製造工程中、識別マークとしての電圧制御端子7(Vc)の突起9を画像処理によって認識する。そして、表面実装発振器の長さ方向での方向性の正否を判定し、次工程に搬送する。この場合、表面実装発振器(容器本体1)は平面視矩形状なので、識別マークとしての突起9を有する電圧制御端子7(Vc)の位置が左斜め上か又は右斜め下かになる。そして、識別マークとしての電圧制御端子7(Vc)が左斜め上にある場合は「正」としてそのまま次工程に搬送する。また、左斜め下にある場合は「否」とし、これを反転して次工程に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−27469号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の表面実装発振器では、小型が進行して例えば2.0×1.6mm以下になると、容器本体1の他方の凹部を形成する枠幅も狭くなって実装端子7も小さくなる。したがって、識別マークとしての電圧制御端子7(Vc)に設けた突起9も小さくなる。そして、各実装端子7の下地電極を例えばマスクを用いて印刷によって形成する際の位置ずれ等によって、本発明の実施形態でも説明するように識別マークとしての突起9の認識を困難にする。
【0012】
この場合、識別マーク(突起9)が認識されなかった場合は、認識工程から除外され、例えば作業員の直接の目視等によって確認し、例えば正しい方向として次工程に送られる。また、例えば検査工程中で実装端子7の位置が反転したまま検査されると発振特性が測定できずに不良品として処理される。これらから、識別マークの不認識は生産性を悪化させる問題があった。
【0013】
(発明の目的)
本発明は確実に認識できる識別マークを実装端子に設けて生産性を高めた表面実装発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、両主面に凹部を有する平面視矩形状とした容器本体の一方の凹部に水晶片を密閉封入して他方の凹部にICチップを収容し、前記他方の凹部の外底面となる開口端面の4角部に実装端子を有し、前記実装端子のいずれかには辺方向に沿った識別マークとしての突起を設けた表面実装用の水晶発振器において、前記突起を設けた実装端子は前記容器本体の一端側の両角部に設け、前記突起は同一方向とした一組の辺としていずれも前記開口端面の内周寄り又は外周寄りとし、前記突起を設けた実装端子は一端側の両角部間の中心線に対して対称とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成であれば、例えば印刷による実装端子が一端部の両角部を結ぶ直線方向にずれて形成されたとしても、実装端子のうちのいずれか一方の識別マークを認識できる。したがって、表面実装発振器の認識マークを確実に認識できることから、生産性を高められる。
【0016】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、前記実装端子は前記外底面となる開口端面の4角部の隣接した直交辺に鉤状に形成される。これにより、実装端子の形状を明確にするとともに、表面実装発振器の平面外形が小さくなったときの実装面積を大きくして接合強度を高める。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を説明する表面実装発振器の外底面図である。
【図2】本発明の一実施形態の他例を説明する表面実装発振器の外底面図である。
【図3】本発明の一実施形態のさらに他例を説明する表面実装発振器の外底面図である。
【図4】従来例を説明する表面実装発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は外底面図、同図(c)は水晶片の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を第1図(表面実装発振器の外底面図)によって説明する。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0019】
表面実装発振器は前述同様に積層セラミックからなる両主面に凹部を有するH構造とした容器本体1を有し、容器本体1の一方の凹部に水晶片2を収容して金属カバー4によって密閉封入する。そして、外底面となる開口端面の4角部に鉤状の実装端子7を有する他方の凹部にICチップ3を収容し、アンダーフィルを設けてなる(前第4図参照)。
【0020】
この実施形態では、容器本体1の外底面に設けた4角部の鉤状とした実装端子7(Vcc、Out、GND、Vc)のうちの、長辺方向の一端側の両角部となる電圧制御端子7(Vc)及び電源端子7(Vcc)に識別マークとしての突起9を設ける。この例では、突起9は対向する一組の長辺方向に沿って形成され、それぞれ外周表面(開口端面)の内周寄りに形成する。
【0021】
これにより、突起9を設けた識別マークとしての実装端子7は一端側の両角部の中間となる中心線(即ち幅方向を二等分する中心線)に対して対称となる。そして、電圧制御端子及び電源端子7(Vc、Vcc)には突起9によって外周寄りに□状のセラミック生地が露出し、L字状とした金属膜(Au)による輪郭が形成される。
【0022】
これらの実装端子7(Vcc、Out、GND、Vc)は、従来例同様に、セラミックシートの状態で下地電極をW(タングステン)やMo(モリブテン)としマスクを用いた印刷によって形成される。そして、容器本体1を形成するこれ以外のセラミックシートを積層して焼成する。その後に、積層されたセラミックシートの表面に露出した下地電極上に例えば電界メッキによってNi及びAuが順次に形成される。
【0023】
このようなものでは、例えば表面実装発振器の完成後に検査工程にて、外底面の4角部の実装端子7(Vcc、Out、GND、Vc)に図示しない測定器からのプローブを当接して発振特性を検査する。ここでは、例えば表面実装発振器は一端側の電圧制御端子7(Vc)及び電源端子7(Vcc)を治工具の左側に位置したとき、各実装端子7(Vcc、Out、GND、Vc)に対応したプローブが当接されて正しく測定される。
【0024】
したがって、長方形とした表面実装発振器の長さ方向が逆になった場合(反転した場合)、即ち、表面実装発振器の他端側のアース端子7(GND)及び出力端子7(OUT)が治工具の左側に位置した場合は、発振特性は正しく検査できず、規格を満足しないとして不良品扱いになる。このことから、表面実装発振器を治工具に収容する前に、認識マークを確実に検出して実装端子7(Vcc、Out、GND、Vc)の位置及び方向性の正否を判定する必要がある。
【0025】
例えば、先ず、発振特性の検査工程前に、表面実装発振器が方向性検査台上に搬送され、長さ方向を一方向に整列される。この場合、表面実装発振器(容器本体1)は長方形なので、認識マーク(突起9)を設けた電圧制御端子7(Vc)及び電源端子7(Vcc)の一端側が図示しない方向性検査台上で左側に位置するか、右側に位置するかのいずれかになる。
【0026】
次に、画像処理のカメラが方向性検査台に整列した表面実装発振器の左側となる両角部の2カ所の実装端子7を認識する。この場合、例えば左側の2カ所の実装端子7が認識マーク(突起9)を設けた電圧制御端子7(Vc)及び電源端子7(Vcc)であったとする。そして、下地電極のマスクズレ等によって、例えば各実装端子7(Vcc、Out、GND、Vc)が長辺に対して直交する方向(例えば第1図の上辺方向)にズレを生じたとする「第1図(b)」。
【0027】
ここでは、前述のように容器本体1における外底面の対向する一組の長辺に沿って、開口端面の外周寄りに識別マークとしての突起9を電圧制御7(Vc)及び電源端子7(Vcc)に設ける。したがって、外底面における上辺側の電圧制御端子7(Vc)の識別マーク(突起9)による開口端面の□状のセラミック生地が小さくなって、L字状とした輪郭の認識が困難になる。したがって、画像処理によるコンピュータの認識結果では、電圧制御端子7(Vc)による識別マーカーは「無し」となる。
【0028】
これに対し、下辺側の電源端子7(Vcc)の識別マーク(突起9)による□状のセラミック生地は全てが露出するので、L字状とした輪郭の認識を容易にする。したがって、コンピュータの認識結果では電源端子7(Vcc)による認識マーカーは「有り」となる。この結果、電源端子7(Vcc)に設けた識別マークの認識から、方向性は正しいと判定される。そして、そのままの状態で発振特性の検査工程に移送する。
【0029】
次に、方向性検査台の左側の2カ所の実装端子7が通常形状(鍵状)のアース端子7(GND)及び出力端子7(OUT)であったとすると、いずれもL字状とした輪郭を認識しない。したがって、画像処理によるコンピュータは表面実装発振器の方向性が逆(反転)と判定する。これにより、表面実装発振器を反転して、発振特性の検査工程に移送する。
【0030】
これらのことから、本実施形態では、例えば印刷マスクに起因した実装端子7の位置ずれがあっても、長辺方向の一端側の両角部に設けた識別マークとなる電圧制御端子及び電源端子7(Vc、Vcc)の突起9によって、方向性を確実に認識できる。したがって、人手による確認工程や、検査工程での発振不良とする誤認を防止して生産性を高めることができる。
【0031】
(他の事項)
上記実施形態では、識別マークとしての電圧制御端子及び電源端子7(Vcc、Vc)の突起9はいずれも内周側に設けて外周側にL字状の輪郭を形成したが、これとは逆にいずれも突起9は外周側に設けて内周側にL字状の輪郭を形成してもよい(第2図)。また、突起9は長辺方向に設けたが短辺方向に設けても同様の効果を奏する(第3図)。そして、表面実装発振器はH構造型としたが、これには例えば水晶振動子の底面にICチップ3を収容した凹状の実装基板を接合した場合も含まれる(所謂接合型、不図示)。
【符号の説明】
【0032】
1 容器本体、2 水晶片、3 ICチップ、4 金属カバー、5 金属リング、6 水晶保持端子、7 実装端子、8 回路端子、9 突起、10 励振及び引出電極、11 導電性接着剤、12 バンプ、13 樹脂。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両主面に凹部を有する平面視矩形状とした容器本体の一方の凹部に水晶片を密閉封入して他方の凹部にICチップを収容し、前記他方の凹部の外底面となる開口端面の4角部に実装端子を有し、前記実装端子のいずれかには辺方向に沿った識別マークとしての突起を設けた表面実装用の水晶発振器において、前記突起を設けた実装端子は前記容器本体の一端側の両角部に設け、前記突起は同一方向とした一組の辺としていずれも前記開口端面の内周寄り又は外周寄りとし、前記突起を設けた実装端子は一端側の両角部間の中心線に対して対称としたことを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記実装端子は前記外底面となる開口端面の4角部の隣接した直交辺に鉤状に形成された表面実装用の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−268193(P2010−268193A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117528(P2009−117528)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】