説明

表面平滑性に優れた化粧板

【課題】表面平滑性に優れたジアリルフタレート系化粧板を提供する。
【解決手段】(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム50〜200重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物、当該樹脂組成物を含浸基材に含浸してなるプリプレグ、および当該プリプレグと化粧板基材とを一体成型してなるジアリルフタレート系化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジアリルフタレート系化粧板の製造分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジアリルフタレート系樹脂化粧板は、耐候性、自然な風合い、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性を有する熱硬化性樹脂化粧板として知られている。これまでジアリルフタレート系樹脂化粧板は、ジアリルフタレートプレポリマー90〜93重量%、ジアリルフタレートモノマー7〜10重量%に硬化剤、離型剤、重合調整剤、充填剤、紫外線吸収剤を含む樹脂溶解液あるいは、ジアリルフタレートプレポリマー30〜90重量%、不飽和ポリエステル10〜70重量%に硬化剤、離型剤、重合調整剤、充填剤、紫外線吸収剤を含む樹脂溶解液に印刷化粧紙を浸漬あるいは塗布乾燥した含浸塗布化粧紙を基材と熱圧成型して化粧板を得ている。
【0003】
ところで、かかる化粧板に関しては、パーティクルボードや中密度繊維板(MDF)あるいは無機質不燃板等、化粧板基材の表層に深い凹凸があった場合や、比較的大きな異物が存在した場合などでは、成形中、その部分にプレスの圧力がかからなかったり、成形後、その粗い表面状態が化粧板表面にそのまま現れるなど、成型不良が生じていた。
【特許文献1】特開昭49−99653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、表層に深い凹凸がある、あるいは大きな異物が存在する等、表面状態の粗い化粧板基材を使用しても、表面平滑性の高い化粧板を製造することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム50〜200重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物である。
【0006】
また、本発明は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、(4A)水酸化アルミニウム50〜200重量部、および(4B)表面処理剤0.05〜6.0重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ジアリルフタレート系化粧板の従来特性である優れた耐水性、耐候性、耐薬品性等を損なうことなく、表面平滑性に優れた化粧板が得られる。
また、成形の際、化粧板の最表層に本発明とは特性の異なるプリプレグを配置することで、他の表面特性(例えば光沢度)が更に付加された化粧板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
はじめに、本発明の化粧板用樹脂組成物の各構成成分について説明する。
(1)ジアリルフタレートプレポリマーとは、ジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマー、ジアリルテレフタレートプレポリマーの単独またはそれらの混合物である。また、下記ジアリルフタレートモノマー2種または3種の共重合体であってもよい。ジアリルフタレートプレポリマーの分子量は10000〜50000が適当である。
【0009】
一方、(2)ジアリルフタレートモノマーとは、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレートの単独またはこれら2種もしくは3種の混合物である。
【0010】
(3)不飽和ポリエステルとしては、通常の液体状もしくは固体状の不飽和ポリエステル樹脂を使用することができる。不飽和ポリエステルは多塩基性の不飽和酸と多価アルコールから脱水重縮合して得ることができる。この場合、不飽和酸の一部が飽和酸で置き替わっていてもよい。数平均分子量が3000〜50000の不飽和ポリエステルが好ましい。
例えば、酸成分としてマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、アジピン酸が挙げられる。一方、多価アルコール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、水素化ビスフェノールA等が挙げられる。
【0011】
また、(3)不飽和ポリエステルとして空気硬化型不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよい。例えば、上記酸成分に他の酸成分としてテトラヒドロフタル酸、3,6−エンドメチレンテトラフタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラフタル酸等の脂肪族環状不飽和酸を、上記アルコール成分に他のアルコール成分としてアリルグリシジルエーテルをそれぞれさらに共存させた混合物から脱水重縮合して製造されたポリエステル樹脂が挙げられる。
【0012】
(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウムは、分散性を高める等の目的で水酸化アルミニウム表面に表面処理剤が固定化された平均粒子径が0.5〜10.0μm(+44μm、0.05〜1.0%)の工業製品を好ましく使用することができる。
【0013】
表面処理されるべき水酸化アルミニウムの形態は特に限定されず、円柱状、針状、球状等、種々のものを使用することができる。
【0014】
また、表面処理剤についても例えばシランカップリング剤やチタンカップリング剤等、特に限定はされないが、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、分子内に2個または3個のアルコキシ基を有する有機珪素化合物が好ましい。例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン類、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、その他γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
水酸化アルミニウムの表面処理の具体的方法の一例としては、水酸化アルミニウムを表面処理剤の原液または溶液中でスラリー状として表面処理を行う湿式法や、撹拌中の水酸化アルミニウムに表面処理剤の原液または溶液を振りかけて均一に分散、混合して表面処理を行う乾式法がある。この場合、水酸化アルミニウム100重量部に対し、表面処理剤を0.1〜3.0重量部の割合で共存するよう混合するのが好ましい。
【0016】
例えば具体的には、昭和電工(株)製のハイジライトH−32ST(平均粒子径 約3μm)やハイジライトH−42STV(平均粒子径 約1μm)、日本軽金属(株)製のB703ST(平均粒子径 約2μm)等が好ましく挙げられる。
【0017】
(4)表面処理された水酸化アルミニウムの添加量は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、50〜200重量部であるが、好ましくは70〜160重量部が望ましい。
【0018】
ところで、水酸化アルミニウムの表面処理は、上述のように独立した前処理として行う以外に、いわゆるインテグラルブレンド法、即ち、化粧板用樹脂組成物を混合する際、(4A)水酸化アルミニウムと、(4B)表面処理剤を同時に共存させる手段でも行い得るが、この場合、(4A)水酸化アルミニウム100重量部に対し、(4B)表面処理剤を0.1〜3.0重量部の割合で添加するのが好ましい。
【0019】
上記インテグラルブレンド法を採用する場合の好ましい(4A)水酸化アルミニウムの添加量は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、70〜160重量部であり、従って、この場合の(4B)表面処理剤の好ましい添加量は0.07〜4.8重量部の範囲で適宜選択され得る。
【0020】
ところで、本発明の化粧板用樹脂組成物に、さらに酸化チタンを添加することで化粧板表面の隠蔽性を向上させることができ、また、本発明の化粧板用樹脂組成物に、さらに酸化アルミを添加することで化粧板表面のスクラッチ特性を向上させることができる。これらを並存させて使用してもよい。
【0021】
次に、本発明による化粧板用樹脂組成物が含浸基材全体に含浸されたプリプレグ(以下、「プリプレグA」という。)について説明する。
ここで、含浸基材としては印刷紙(印刷パターン紙)、クラフト紙、不織布、織布等が好ましく例示される。
【0022】
この化粧板用樹脂組成物を用いてプリプレグを製造するには、当該樹脂組成物が低粘度の液体である場合は当該含浸基材を当該樹脂組成物中へ浸してよい。一方、当該樹脂組成物が高粘度液体や固体である場合は、適当な溶剤、例えばアセトン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に本発明樹脂組成物を溶解させ樹脂液とし、そこへ前記含浸基材を浸した後、乾燥して溶媒を飛ばせばよい。含浸樹脂付着量は化粧板基材表面の凹凸状態にもよるが、100〜400g/mが好ましい。
【0023】
ところで、本発明の樹脂組成物は一般に硬化速度が遅く、それ単独では短時間に十分な硬化度が得られないため、通常、硬化剤が使用される。硬化剤としては、組成物中に存在する不飽和二重結合を重合させ得る化合物であれば特に限定されないが、例えばベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物系硬化剤を好ましく挙げることができる。
【0024】
硬化剤の添加のタイミングは、本発明の樹脂組成物の十分なポットライフを維持するためには、プリプレグ製造直前に当該本発明の樹脂組成物に対して添加するのが好ましい。
添加量としては、(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、1.0〜10.0重量部、例えば3.0〜5.0重量部であってよい。
【0025】
また、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、硬化剤以外にも必要に応じて多種の反応性モノマーや当該技術分野に通常用いられる添加剤、例えば、充填剤(微粉末シリカ等)、内部離型剤、難燃剤、重合調整剤、紫外線吸収剤、顔料等を添加することができる。
【0026】
次に、本発明で使用される表層用樹脂組成物が含浸基材全体に含浸されたプリプレグ(以下、「プリプレグB」という。)について説明する。
表層用樹脂組成物は化粧板の最表面層に一般に使用される樹脂組成物であれば特に限定されず、要求される表面特性に応じて種々選択できるが、特に表面光沢を向上させるためには、(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム0〜50重量部を添加してなる樹脂組成物であってよい。
なお、プリプレグの具体的製造法その他については上記本発明の化粧板用樹脂組成物を用いたプリプレグの製造法と同様である。従って、含浸基材、硬化剤、反応性モノマー、および当該技術分野に通常用いられる添加剤についても同様に使用できる。
特に、上述した酸化チタンあるいは酸化アルミの添加は当該表層用樹脂組成物に対して行うのがより効果的である。
含浸樹脂付着量は80〜250g/mが好ましい。
【0027】
次に、含浸基材の少なくとも表面側には表層用樹脂組成物が存在し、かつ、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧板用樹脂組成物が含浸基材の裏面側にさらに塗布されたプリプレグ(以下、「プリプレグC」という。)について説明する。
当該プリプレグの製造は、上記のとおり製造したプリプレグBの裏面に、更に本発明の化粧板用樹脂組成物を上塗りしてよいが、好ましくは、プリプレグBの裏面に付着した樹脂を除去し、そこへ改めて本発明の化粧板用樹脂組成物を塗布するのが生産コストの面から望ましい。塗布されるべき樹脂量は化粧板基材表面の凹凸状態にもよるが、30〜250g/mが好ましい。表面・裏面の総樹脂存在量は80〜400g/mが好ましい。
【0028】
次に、上述のプリプレグAと化粧板基材とを一体成型してなるジアリルフタレート系化粧板について説明する。
ここで、化粧板基材としては、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、無機質板及び樹脂が含浸され硬化されたクラフト紙等が好ましく例示される。
【0029】
化粧板基材の表面状態としては、通常はなめらかな表面の基材(例えば、凹凸が最大で50μm程度のもの)を用いるが、本発明では100μm〜200μm程度の凹凸が存在しても使用できる。なお、凹凸は表面粗さ形状測定機(例えば、株式会社東京精密製「サーフコム570A」)で測定してよい。
【0030】
プリプレグAと化粧板基材とを一体成型する方法としては積層熱圧成型法、すなわち、プリプレグAと、化粧板基材とを重ね合わせ、加熱加圧硬化するのが適当である。成型は例えばプレス成型機を用いて、時間1分〜15分、圧力10〜25kg/cm、温度120〜190℃で好ましく行うことができ、これにより樹脂組成物が硬化した化粧板が得られる。なお、ここでいう化粧板には多重に積層したいわゆる積層化粧板も含まれる。
【0031】
特に表面平滑性以外の他の表面特性(例えば光沢度)が更に付加された化粧板を製造するには、(a)プリプレグCの裏面と化粧板基材とを向かい合わせて一体成型する製法や、(b)プリプレグB、プリプレグA、および化粧板基材をこの並びで一体成型する製法がある。
一体成形の具体的方法については上述の積層熱圧成形法で行ってよい。
【実施例】
【0032】
次に実施例、比較例によって本発明を詳細に説明する。ここで、実施例、比較例の「部」は重量部を示す。また、各実施例・比較例において具体的記載のない構成成分については実施例1記載の成分と同一品を使用した。なお、以下使用する化粧板基材表面の凹凸は、いずれも「サーフコム570A」(株式会社東京精密製)による測定結果である。
「平滑性」については、肉眼で観察した場合に、基材由来の凹凸が表層に現れなければ○、表層に凹凸が確認できれば△、成型不良になれば×とした。また「密着性」については、JIS K5400の碁盤目テープ試験において100マスのうち、化粧板基材−含浸基材間の剥離が0マス(基材破壊は数えない)の場合○、1〜5マスの場合△、6マス以上の場合×とした。「光沢度」についてはJIS Z8741の鏡面光沢度測定方法に規定された入射角20度における光沢度が90以上の場合○、それ以外は×とした。
【0033】
[製造例1]
無水マレイン酸10モル、エチレングリコール3モル、プロピレングリコール6モル、水素化ビスフェノール1モルを反応容器に仕込み、ハイドロキノン0.5gの存在下、常圧下、窒素気流中にて反応温度180〜210℃の範囲を維持しつつ、目的物の数平均分子量が10000〜12000の範囲になるよう3時間程度反応させ、その結果、数平均分子量が約11000、かつ酸価が15mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。
以下の実施例、比較例ではかようにして作製された当該不飽和ポリエステルを使用した。
【0034】
[実施例1]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー(メチルエチルケトン50重量%溶液粘度(30℃)96.5cp、ヨウ素価56.7、ダイソー(株)製)80部、上記製造例1記載の不飽和ポリエステル20部、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤(ゼレックUN、デュポン社製)0.4部、ハイドロキノン(重合調整剤)0.03部、微粉末シリカ(カープレックス、塩野義製薬(株)製)4部をアセトンに溶解して表層用樹脂組成物を調製した。
【0035】
ジアリルオルソフタレートプレポリマー50部、不飽和ポリエステル50部、平均粒子径約3μmで、表面処理された水酸化アルミニウム80部(ハイジライトH−32ST、昭和電工(株)製)、ベンゾイルパーオキサイド4部、ハイドロキノン0.03部をアセトンに溶解して化粧板用樹脂組成物を調製した。
【0036】
80g/mの印刷パターン紙を上記表層用樹脂組成物に浸した直後に裏面の樹脂を掻き取り、さらに上記化粧板用樹脂組成物を裏面にコーティングして、乾燥して溶剤を飛ばす手法により、表層用樹脂70g、化粧板用樹脂80gが付着した230g/mのプリプレグを得た。
【0037】
表層に約100μmの凹凸のある3mmの無機質不燃板、ダイライト(大建工業(株)製)上に該プリプレグを載せ、130℃、12kg/cm、10分の熱圧成型で化粧板を得た。得られた化粧板はJIS
K6902、同K5400及びJASに規定されている耐水性、耐候性、耐薬品性等に合格し、基材とプリプレグとの密着性も良好で、残留溶剤による成型時のフクレもなく、なおかつ化粧板基材表面の凹凸の影響もなく平滑性が良好であり、光沢度も90以上で良好であった。
【0038】
[実施例2]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー90部、ジアリルオルソフタレートモノマー10部、水酸化アルミニウム(H−32ST)80部、ベンゾイルパーオキサイド4部、ハイドロキノン0.03部をアセトンに溶解して化粧板用樹脂液を調整した以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性が良好であり、光沢度も90以上で良好であった。
【0039】
[実施例3]
実施例1において、化粧板用樹脂組成物の水酸化アルミニウムの添加量を80部から150部に増量し、該樹脂付着量を80g/mから150g/mに変更し、化粧板基材を、表面に約200μmの凹凸のある3mmダイライトに変更した以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性が良好であり、光沢度も90以上で良好であった。
【0040】
[実施例4]
実施例1において、水酸化アルミニウム、H−32STの代わりに平均粒子径約1μmで、表面処理された水酸化アルミニウム80部(ハイジライトH−42STV、昭和電工(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性が良好であり、光沢度も90以上で良好であった。
【0041】
[実施例5]
実施例1において、水酸化アルミニウム、H−32ST80部の代わりに平均粒子径約3μmで、表面処理されていない水酸化アルミニウム80部(ハイジライトH−32、昭和電工(株)製)とビニルトリエトキシシラン1.0重量部を混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性が良好であり、光沢度も90以上で良好であった。
【0042】
[実施例6]
実施例1の表層用樹脂組成物を80g/mの印刷パターン紙に含浸して得られた180g/mの含浸紙と表面に約200μmの凹凸のある3mmダイライトの間に実施例1の化粧板用樹脂組成物を80g/mの白色チタン原紙に含浸して得られた230g/mの含浸紙を挟み、130℃、12kg/cm、10分の熱圧成型で化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性が良好であり、光沢度も90以上で良好であった。
【0043】
[実施例7]
実施例6において、化粧板用樹脂組成物を実施例2で用いた樹脂液に変更した以外は実施例6と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性が良好であり、光沢度も90以上で良好であった。
【0044】
[実施例8]
実施例1の化粧板用樹脂組成物を80g/mの印刷パターン紙に含浸して得られた230g/mの含浸紙を表面に約200μmの凹凸のある3mmダイライトの上に載せ、130℃、12kg/cm、10分の熱圧成型で化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性も良好であり、表面が艶消しタイプの化粧板を作製することができた。
【0045】
[実施例9]
実施例8において、化粧板用樹脂組成物を実施例2で用いた樹脂液に変更した以外は実施例8と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性も良好であり、表面が艶消しタイプの化粧板を作製することができた。
【0046】
[実施例10]
実施例8において、化粧板用樹脂組成物の水酸化アルミニウムの添加量を80部から150部に増量し、該樹脂付着量を150g/mから300g/mに変更し、化粧板基材を、表面に約300μmの凹凸のある3mmダイライトに変更した以外は実施例8と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性、平滑性も良好であり、表面が艶消しタイプの化粧板を作製することができた。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、化粧板用樹脂組成物の代わりに水酸化アルミニウムを添加していない樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は基材とプリプレグとの密着性が弱く、なおかつ基材表面の凹凸が化粧板表面にそのまま現れるか、その部分に圧力がかからないために平滑な面が得られなかった。さらには、プリプレグ中に含まれる残留溶剤が成型時に気化して発生する蒸気が外に逃げにくいため、フクレが発生することもあった。
【0048】
[比較例2]
実施例6において、化粧板用樹脂組成物の代わりに水酸化アルミニウムを添加していない樹脂を用いた以外は実施例6と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は基材とプリプレグとの密着性が弱く、なおかつ基材表層の凹凸が化粧板表面にそのまま現れるか、その部分に圧力がかからないために平滑な面が得られなかった。さらには、プリプレグ中に含まれる残留溶剤が成型時に気化して発生する蒸気が外に逃げにくいため、フクレが発生することもあった。
【0049】
[比較例3]
実施例1において、化粧板用樹脂組成物の水酸化アルミニウムの添加量を80部から30部に減量した以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性も良好であったが、化粧板基材表面の凹凸を抑えることができず、平滑性の低いものとなった。
【0050】
[比較例4]
実施例6において、化粧板用樹脂組成物の水酸化アルミニウムの添加量を80部から30部に減量した以外は実施例6と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性も良好であったが、化粧板基材表面の凹凸を抑えることができず、平滑性の低いものとなった。
【0051】
[比較例5]
実施例1において、水酸化アルミニウム、H−32STの代わりに平均粒子径約3μmで、表面処理されていない水酸化アルミニウム30部(ハイジライトH−32、昭和電工(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、密着性、成型性も良好であったが、樹脂液中の水酸化アルミニウムの分散性が悪いためか化粧板基材表面の凹凸を抑えることができず、平滑性の低いものとなった。
【0052】
上記実施例、比較例の組成物の配合および各測定結果を次に表1および表2にまとめる。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ジアリルフタレート系化粧板の製造業界において有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム50〜200重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物。
【請求項2】
(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、(4A)水酸化アルミニウム50〜200重量部、および(4B)表面処理剤0.05〜6.0重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物。
【請求項3】
(4B)表面処理剤がシランカップリング剤であり、かつ、(4A)水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.5〜10.0μm(+44μm、0.05〜1.0%)の範囲内である請求項1または2に記載の化粧板用樹脂組成物。
【請求項4】
シランカップリング剤が、アルコキシ基を有する、ビニルシラン、エポキシシランまたはアミノシランである請求項3記載の化粧板用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化粧板用樹脂組成物が含浸基材全体に含浸されたプリプレグ。
【請求項6】
含浸基材の少なくとも表面側には表層用樹脂組成物が存在し、かつ、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧板用樹脂組成物が含浸基材の裏面側にさらに塗布されたプリプレグ。
【請求項7】
表層用樹脂組成物が、(1)ジアリルフタレートプレポリマー10〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜90重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム0〜50重量部を添加してなる、請求項6記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項5記載のプリプレグと、化粧板基材とを一体成型してなるジアリルフタレート系化粧板。
【請求項9】
表層用樹脂組成物が含浸基材全体に含浸されたプリプレグ、請求項5記載のプリプレグ、および化粧板基材をこの並びで積層し、一体成形してなるジアリルフタレート系化粧板。
【請求項10】
請求項6または7記載のプリプレグの裏面側と化粧板基材とを向かい合わせて一体成形してなるジアリルフタレート系化粧板。

【公開番号】特開2007−154056(P2007−154056A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351789(P2005−351789)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】