説明

表面沈着物を除去するためのNF3の使用方法

本発明は、電子デバイスを製造するのに用いられるプロセスチャンバーの内部などの、表面から表面沈着物を除去するための改良された遠隔プラズマクリーニング方法に関する。本改良は、少なくとも約3000Kの高い中性温度の活性化ガスの使用、およびエッチング速度を向上させるためのNF3クリーニングガス混合物への酸素源の添加を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素源およびNF3を含むガス混合物を遠隔活性化させることによって生成された活性化ガス混合物を使用することによる表面沈着物の除去方法に関する。より具体的には、本発明は、酸素源およびNF3を含むガス混合物を遠隔活性化させることによって生成された活性化ガス混合物を使用することによる化学気相成長チャンバーの内部からの表面沈着物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体処理工業における化学気相成長(CVD)チャンバーおよびプラズマ化学気相成長(PECVD)チャンバーは、定期的なクリーニングを必要とする。ポピュラーなクリーニング方法には、その場プラズマクリーニングおよび遠隔チャンバープラズマクリーニングが含まれる。
【0003】
その場プラズマクリーニング法では、クリーニングガス混合物はCVD/PECVDプロセスチャンバー内でプラズマへ活性化され、その場で沈着物をきれいにする。その場プラズマクリーニング法には幾つかの欠陥がある。第1に、プラズマに直接暴露されないチャンバー部品はきれいにすることができない。第2に、クリーニング法には、イオン衝撃誘導反応および自発的な化学反応が含まれる。イオン衝撃スパッタリングはチャンバー部品の表面を浸食するので、高価で時間のかかる部品交換が必要とされる。
【0004】
その場プラズマクリーニングの欠点を理解して、遠隔チャンバープラズマクリーニング法がよりポピュラーになりつつある。遠隔チャンバープラズマクリーニング法では、クリーニングガス混合物は、CVD/PECVDプロセスチャンバー以外の別個のチャンバー中でプラズマによって活性化される。プラズマ中性生成物は次に、光源チャンバーからCVD/PECVDプロセスチャンバーの内部へ通る。移送通路は、例えば、短い連結チューブおよびCVD/PECVDプロセスチャンバーのシャワーヘッドからなってもよい。その場プラズマクリーニング法とは対照的に、遠隔チャンバープラズマクリーニング法は、自発的な化学反応だけを伴い、こうしてプロセスチャンバーでイオン衝撃によって引き起こされる浸食問題を回避する。
【0005】
マイクロ波遠隔源だけでなく容量結合および誘導結合高周波(RF)が遠隔チャンバープラズマクリーニング法のためのパワー源として開発されてきたが、業界は、プラズマがトロイダル配位を有し、そしてトランスフォーマーの二次側として働く誘導結合源連結トランスフォーマーへと急速に向かいつつある。より低い周波数RFパワーの使用は、容量結合に対して誘導結合を高める磁気コアの使用を可能にし、それによって遠隔プラズマ源チャンバー内部の寿命を制限する過度のイオン衝撃なしにプラズマへのエネルギーのより効率的な移行を可能にする。
【0006】
NF3、フルオロカーボン、SF6などは、プラズマクリーニング法においてクリーニングガスとして使用されてきた。これらの中でも、NF3は、その比較的弱い窒素−フッ素結合のために特に魅力的である。NF3は容易に解離し、かつ、温室効果ガス排出を発生させない。NF3をクリーニングガスとして効果的に使用する必要がある。
【0007】
【非特許文献1】B.バイ(B.Bai)、H.サウィン(H.Sawin)著、Journal of Vacuum Science & Technology A 22(5)(2004年)、2014ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面沈着物の除去方法であって、(a)酸素源およびNF3を含むガス混合物を、前記ガス混合物が少なくとも約3,000Kの中性温度に達するように十分なパワーを十分な時間にわたって用いて遠隔チャンバー中で活性化させて活性化ガス混合物を形成する工程と、その後(b)前記活性化ガス混合物を表面沈着物と接触させ、それによって前記表面沈着物の少なくとも一部を除去する工程とを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で除去される表面沈着物は、化学気相成長もしくはプラズマ化学気相成長または類似の方法によって一般に沈着されるそれらの物質を含む。かかる物質には、シリコン、ドープシリコン、窒化シリコン、タングステン、二酸化ケイ素、シリコンオキシ窒化物、炭化シリコン、SiBNと、FSG(フルオロケイ酸ガラス)、炭化シリコンならびにブラックダイヤモンド(Black Diamond)(アプライド・マテリアルズ(Applied Materials))、コーラル(Coral)(ノーベラス・システムズ(Novellus Systems))およびオーロラ(Aurora)(ASMインターナショナル(ASM International))をはじめとするSiCxxxまたはPECVD OSGなどの、低K材料と呼ばれる様々なシリコン酸素化合物とが含まれる。本発明における好ましい表面沈着物は窒化シリコンである。
【0010】
本発明の一実施形態は、電子デバイスを製造するのに用いられるプロセスチャンバーの内部からの表面沈着物の除去である。かかるプロセスチャンバーは、化学気相成長(CVD)チャンバーまたはプラズマ化学気相成長(PECVD)チャンバーであることができよう。
【0011】
本発明の他の実施形態には、金属からの表面沈着物の除去、プラズマエッチングチャンバーのクリーニングおよびフォトレジストの剥ぎ取りが含まれるが、それらに限定されない。
【0012】
本発明の方法は、クリーニングガス混合物が遠隔チャンバーで活性化される活性化工程を含む。活性化は、高周波(RF)エネルギー、直流(DC)エネルギー、レーザー照射およびマイクロ波エネルギーなどの、供給ガスの大部分の解離の達成を可能にする任意の手段によって行われてもよい。本発明の一実施形態は、プラズマがトロイダル配位を有し、そしてトランスフォーマーの二次側として働く誘導結合低周波数RF電源連結トランスフォーマーの使用である。より低い周波数RFパワーの使用は、容量結合に対して誘導結合を高める磁気コアの使用を可能にし、それによって遠隔プラズマ源チャンバー内部の寿命を制限する過度のイオン衝撃なしにプラズマへのエネルギーのより効率的な移行を可能にする。本発明に用いられる典型的なRFパワーは、1,000KHzより低い周波数を有する。本発明におけるパワー源の別の実施形態は、遠隔マイクロ波、誘導結合、または容量結合プラズマ源である。
【0013】
本発明の活性化は、少なくとも約3,000Kの中性温度を有する活性化ガス混合物を形成するのに十分なパワーを十分な時間にわたって用いる。生じたプラズマの中性温度は、パワーおよび遠隔チャンバーにおけるガス混合物の滞留時間に依存する。ある一定のパワーインプットおよび条件下では、中性温度は、滞留時間が長くなるにしたがい高くなるであろう。本発明においては、活性化ガス混合物の好ましい中性温度は約3,000Kより高い。適切な条件下では(パワー、ガス組成、ガス圧力およびガス滞留時間を考慮して)、少なくとも約6000Kの中性温度が達成されてもよい。
【0014】
活性化ガスは、プロセスチャンバーの外部にあるが、プロセスチャンバー近傍にある別個の遠隔チャンバー中で形成される。本発明では、遠隔チャンバーは、プラズマが生成されるチャンバーを意味し、プロセスチャンバーは、表面沈着物が付着されるチャンバーを意味する。遠隔チャンバーは、遠隔チャンバーからプロセスチャンバーへの活性化ガスの移動を可能にする任意の手段によってプロセスチャンバーに連結される。例えば、移送通路は、短い連結チューブおよびCVD/PECVDプロセスチャンバーのシャワーヘッドからなってもよい。遠隔チャンバーおよび遠隔チャンバーをプロセスチャンバーと連結するための手段は、活性化ガス混合物を含有できることが本分野で知られている材料で構築される。例えば、アルミニウムおよび陰極酸化アルミニウムがチャンバー構成材のために一般に使用される。Al23が表面再結合を減らすために内部表面上にコートされることもある。
【0015】
活性化されて活性化ガスを形成するガス混合物は、酸素源およびNF3を含む。本発明の「酸素源」は本明細書では、本発明における活性化工程で原子状酸素を発生させることができるガスを指す。ここで酸素源の例には、O2および窒素酸化物が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の窒素酸化物は本明細書では、窒素および酸素からなる分子を指す。窒素酸化物の例には、NO、N2O、NO2が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい酸素源は酸素ガスである。
【0016】
活性化されて活性化ガスを形成するガス混合物は、アルゴン、窒素およびヘリウムなどのキャリアガスをさらに含んでもよい。
【0017】
活性化工程中の遠隔チャンバーの全圧は、約0.1トル〜約20トルであってもよい。
【0018】
酸素源が窒化シリコンへのNF3のエッチング速度を劇的に上げ得ることが本発明で見いだされた。本発明の一実施形態では、下の実施例1に示されるように、少量の酸素ガス添加が4倍だけ窒化シリコンへのNF3/Arクリーニングガス混合物エッチング速度を上げることができる。
【0019】
下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、限定するためのものではない。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明に用いられる遠隔プラズマ源、輸送チューブ、プロセスチャンバーおよび排ガス装置の略図を示す。遠隔プラズマ源は、MKSインスツルメンツ、米国マサチューセッツ州アンドーバー(MKS Instruments,Andover,MA,USA)によって製造された市販トロイダル型MKSアストロン(MKS ASTRON)(登録商標)ex反応性ガス発生器装置である。供給ガス(例えば、酸素、NF3、アルゴン)を左から遠隔プラズマ源へ導入し、トロイダル放電を通過させ、そこでそれらは400KHz高周波パワーにより放電して活性化ガス混合物を形成した。酸素は99.999%純度でエアガス(Airgas)によって製造されている。NF3ガスは99.999%純度で本願特許出願人によって製造されている。アルゴンは5.0のグレードでエアガスによって製造されている。活性化ガス混合物は次に、アルミニウム水冷却熱交換器を通過してアルミニウム・プロセスチャンバーの熱負荷を低減した。表面沈着物被覆ウェハーをプロセスチャンバー中の温度調整された取付台上に置いた。中性温度を発光分光法(OES)によって測定し、その分光法ではC2およびN2のような二原子化学種の回転振動遷移バンドが中性温度をもたらすのに理論的に適合している。参照として本明細書に援用される、(非特許文献1)もまた参照されたい。活性化ガスによる表面沈着物のエッチング速度は、プロセスチャンバー中の干渉分光法装置によって測定する。N2ガスを、FTIR測定に適切な濃度に生成物を希釈するためおよびポンプ中での生成物のハングアップを減らすための両方のために吸尽ポンプの入口で加える。FTIRを用いてポンプ排ガス中の化学種の濃度を測定した。
【0021】
(実施例1)
本実施例は、NF3/Arシステムの窒化シリコン・エッチングへの酸素源添加の影響を実証した。結果をまた図2に示す。本実験では、供給ガスは、NF3流量が1333sccmであり、Ar流量が2667sccmである、NF3、Arおよび任意選択的にO2からなった。チャンバー圧力は2トルであった。供給ガスを、400KHz4.6KwのRFパワーによって3000Kより高い中性温度に活性化させた。活性化ガスは次にプロセスチャンバーに入り、温度を50℃に調整した取付台上で窒化シリコン表面沈着物をエッチした。供給ガス中に酸素源が全くなかった、すなわち供給ガス混合物が1333sccmのNF3および2667sccmのArからなったとき、エッチング速度は500Å/分にすぎなかった。図2に示されるように、100sccmのO2が供給ガス混合物に添加された、すなわち供給ガス混合物が100sccmのO2、1333sccmのNF3および2667sccmのArからなったとき、窒化シリコンのエッチング速度は500から1650Å/分に上がった。200sccmのO2が供給ガス混合物に添加された、すなわち供給ガス混合物が200sccmのO2、1333sccmのNF3および2667sccmのArからなったとき、エッチング速度はさらに2000Å/分に上がった。
【0022】
(実施例2)
本実施例はNF3/O2/Arシステムの二酸化ケイ素エッチング速度を示した。NF3流量を1333sccmに調整し、Ar流量は2667sccmであり、O2流量はそれぞれ、0、100、300、500、700、900sccmであった。酸素添加はNF3/Arシステムの二酸化ケイ素エッチング速度に影響をそれほど及ぼさないことが分かった。本実験では、チャンバー圧力は2トルであった。供給ガスを、400KHz4.6KwのRFパワーによって3000Kより高い中性温度に活性化させた。活性化ガスは次にプロセスチャンバーに入り、温度を100℃に調整した取付台上で二酸化ケイ素表面沈着物をエッチした。エッチング速度を図3に示した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本方法を実施するために有用な装置の略図である。
【図2】NF3+Ar供給ガス混合物へのO2添加での窒化シリコンへのエッチング速度に対する影響のプロットである。
【図3】NF3+Ar供給ガス混合物へのO2添加での二酸化ケイ素へのエッチング速度に対する影響のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面沈着物の除去方法であって、
(a)酸素源およびNF3を含むガス混合物を、前記ガス混合物が少なくとも約3,000Kの中性温度に達するように十分なパワーを十分な時間にわたって用いて遠隔チャンバー中で活性化させて活性化ガス混合物を形成する工程と、その後
(b)前記活性化ガス混合物を表面沈着物と接触させ、それによって前記表面沈着物の少なくとも一部を除去する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面沈着物が電子デバイスを製造するのに用いられるプロセスチャンバーの内部から除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素源が酸素ガスまたは窒素酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸素源が酸素ガスであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面沈着物がシリコン、ドープシリコン、窒化シリコン、タングステン、二酸化ケイ素、シリコンオキシ窒化物、炭化シリコンおよび低K材料と呼ばれる様々なシリコン酸素化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記表面沈着物が窒化シリコンであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パワーがRF源、DC源またはマイクロ波源によって生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パワーがRF源によって生成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遠隔チャンバー中の前記活性化ガス混合物がトロイダル配位を形成し、そして前記RFパワーが1,000KHzより低い周波数を有する誘導結合連結トランスフォーマーであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの磁気コアが前記誘導結合を高めるために用いられることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遠隔チャンバー中の圧力が0.1トル〜20トルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス混合物がキャリアガスをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記キャリアガスが窒素、アルゴンおよびヘリウムからなるガスの群から選択される少なくとも1種のガスであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記キャリアガスがアルゴン、ヘリウムまたはそれらの混合物であることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−503270(P2009−503270A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525158(P2008−525158)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/030099
【国際公開番号】WO2007/016631
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(500408935)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (17)
【Fターム(参考)】