説明

被印刷体処理機械および被印刷体処理機械における方法

【課題】導電性物質を備えた面領域が設けられた被印刷体を印刷技術によって実現する可能性を広げ、あるいは完全なものにする。
【解決手段】被印刷体処理機械10は、被印刷体44の形状自体を変化させるか、または印刷インキを塗布することで被印刷体44を変化させる少なくとも1つの処理ユニット18を有しており、被印刷体44は面領域を有し、面領域の上には導電性物質が設けられているか、または面領域の上へ被印刷体処理機械10の塗布ユニット20によって導電性物質が塗布される。被印刷体処理機械10はレーザ処理ユニット22を有しており、レーザ処理ユニット22のレーザの少なくとも1つの集光レーザビームを用いて、導電性物質を少なくとも部分的に変化させるかまたは除去することで、被印刷体44上に設けられた導電性物質が構造化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷体の形状自体を変化させるか、または表面へ印刷インキを塗布することで被印刷体を変化させる少なくとも1つの処理ユニットを備えた被印刷体処理機械であって、被印刷体が面領域を有し、面領域の上には導電性物質が設けられているか、または面領域の上へ被印刷体処理機械の塗布ユニットによって導電性物質が塗布される、被印刷体処理機械に関する。さらに本発明は、被印刷体処理機械において被印刷体の面領域を構造化するための方法であって、面領域の上には導電性物質が設けられているか、または面領域の上へ被印刷体処理機械の塗布ユニットによって導電性物質が塗布され、被印刷体処理機械の少なくとも1つの処理ユニットによって、被印刷体の形状自体が変化するか、または表面へ印刷インキが塗布されることで被印刷体が変化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、特に包装材料やラベルなどの多くの印刷製品には、物流の簡素化や犯罪行為防止の促進といったさまざまな理由により、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)タグ、トランスポンダ、スマートラベル、メモリ素子またはチップなどの電子回路の形態であるデータ媒体が非接触識別機能として備えられている。これとの関連で、少なくとも電子回路と読み込み装置または読み出し装置との非接触通信のために必要な、導電性物質からなるアンテナ構造をある印刷方法で印刷製品へ、厳密には被印刷体へ塗布する試みが行われている。
【0003】
RFIDラベルを印刷技術で製作するための方法、特に版(マスタとも呼ばれる)を用いる印刷方法で製作するための方法は、例えば特許文献1に記載されている。さらに、例えば特許文献2により、RFIDトランスポンダ、特にそのアンテナを被印刷体に塗布する枚葉紙印刷機が公知である。特に、アンテナが印刷される。RFIDトランスポンダの特性や特徴、例えば導体線路の形状などが、印刷製品全体の視覚的特性と同様に、印刷機において(インラインで)チェックされる。
【0004】
版を用いた印刷方法のような大量複製方法では、同一のコピーが製造されるのが理想であるが、それに対して、特定の用途向けには個別化された電子回路が望まれている。特許文献3では、導電線からなる印刷されたシーケンス状のメモリ素子が製作され、1つの態様として、導電線の機械的、熱的、または好ましくは電気的な断線部を生成することが提案されている。読み書き装置へ通電することでこのような断線プロセスを容易にするために、各導電線には狭窄部が設けられている。
【0005】
よく知られている印刷方法では、約30から100マイクロメートルの構造しか再現することができない。オフセット印刷における最小の構造サイズは、例えば20マイクロメートルである。その結果、直接印刷された発振回路における低周波しか実現することができない。しかし、通常のRFIDの用途にとっては、より高周波が必要とされている。
【特許文献1】国際公開第05/013189号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第102005026127号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005002150号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、導電性物質を備えた面領域が設けられた被印刷体を印刷技術によって実現する可能性を広げ、あるいは完全なものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の特徴を備えた被印刷体処理機械によって、および/または、請求項24に記載の被印刷体処理機械における方法によって達成される。本発明の有利な発展例は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明による被印刷体処理機械は、被印刷体の形状自体を変化させるか、または表面へ印刷インキを塗布することで被印刷体を変化させる少なくとも1つの処理ユニットを有している。そこでは、被印刷体が少なくとも1つの面領域を有し、面領域の上には導電性物質が設けられているか、または面領域の上へ被印刷体処理機械の塗布ユニットによって導電性物質が塗布される。本発明による被印刷体処理機械は、レーザの少なくとも1つの集光レーザビームを用いて、導電性物質を少なくとも部分的に変化させるかまたは除去することで、被印刷体上に設けられた導電性物質の構造化を行うためのレーザ処理ユニットをさらに有している。
【0009】
本発明は、印刷可能な電子回路または電子部品の構造化、特に高分子電子部品の構造化を可能にし、または、被印刷体処理機械におけるレーザによる(インラインでの)、特にレーザでの後処理による、印刷されたブランク(もしくは先駆体)から電子回路または電子部品への構造化を可能にする。印刷された導電性物質を部分的に変化させるかまたは除去するレーザによって、印刷された電子回路、電子部品、特に高分子電子部品、あるいはそのブランクは、例えばRFID用途のための微細構造化または個別化の目的で後処理されることになる。
【0010】
面領域は、直線状または湾曲した縁部を備えた構造化されていない幾何学形状を有していてよく、あるいは、例えば切り込み、部分領域への分割などの構造、または導電性物質を含んでいない含有物などをすでに有していてよい。面領域は、単純接続であってよい。導電性物質は、すでに電子回路となっていてよい。
【0011】
特定の実施態様、特にインクジェットプリントでは、印刷インキはインクであってもよい。導電性物質は、導電性の印刷インキであってよい。導電性物質は単一物質であるか、または複数の異なる物質からなる合成物であってよい。導電性物質は、特に、処理ユニットの作用後に被印刷体の上に設けられていてよい。部分的な改変または除去は、面領域の内側で、場所に依存して、または位置に依存して行われる。被印刷体は、特に、用紙、板紙、厚紙、または有機高分子膜であってよい。被印刷体処理機械は印刷機であってよい。レーザ光は、特に、赤外スペクトル領域の波長、好ましくは800nmから1600nmの間の波長を有していてよい。
【0012】
導電性物質を備えた1つ以上の面領域は、特に、印刷された包装材料の部分面またはラベルの部分面であってよい。
【0013】
本発明によれば、レーザによって、10マイクロメートル以下、特に5マイクロメートル以下、1から5マイクロメートルの間の構造サイズが実現可能であることが、特に有利である。それによって、従来の印刷技術を適用して可能となる構造よりもはるかに微細な構造が製作可能である。
【0014】
特に好ましい実施態様では、被印刷体処理機械において、レーザ処理ユニットの前記レーザが、被印刷体に対して相対的に位置決め可能である。特に、レーザの位置および/または導電性物質の面領域の位置が、位置検出ユニットによって検出可能であってよく、制御ユニットによって調節可能であってよい。言い換えれば、本発明による被印刷体処理機械が、レーザ処理ユニットのための見当制御部を有していることにより、1つ以上のレーザを用いて、印刷された導電性物質を、特に印刷された電子部品を、正確な見当でインライン処理することが可能となる。
【0015】
本発明による被印刷体処理機械により、被印刷体が、少なくとも1つの搬送装置によって、例えばシート状の被印刷体の場合には搬送ドラムによって、あるいはウェブ状の被印刷体の場合には搬送ローラによって、被印刷体処理機械を通り抜ける経路に沿って移動可能であってよい。レーザ処理ユニットが、被印刷体処理機械を通り抜ける経路に沿って処理ユニットより下流に配置されていてよい。
【0016】
第1の群の実施態様では、被印刷体処理機械のレーザ処理ユニットが、被印刷体処理機械を通り抜ける被印刷体の搬送方向に対して横方向へ移動可能な複数のレーザモジュールを有していてよい。
【0017】
第2の群の実施態様では、被印刷体処理機械のレーザ処理ユニットが複数のレーザを有していてよく、それらのビームは、横方向における利用幅全体にわたって被印刷体に当たる。若干の変更例では、レーザ処理ユニットが、電子回路のための最大幅の利用を可能にする配置を有していてよく、この最大幅はカラー印刷の最大幅とは異なっている。この群では、処理のための標準位置または目標位置の左右へとさらに広範囲にレーザが利用できる配置が同様にあって、それにより、利用されるべきレーザを選択することでその位置をずらすことができる。
【0018】
有利に改良された実施態様では、本発明によるレーザ処理ユニットが、少なくとも1つのレーザビームの焦点位置を調整するためのオートフォーカス機能を有していてよい。このようにして、被印刷体の上に設けられた導電性物質の深さ方向に対して、改変または除去を的確に行うことができる。特に、この方策によって、導電性物質の多層膜を的確に構造化することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明による被印刷体処理機械は、以下のような特徴を有することができる。すなわち、
レーザ処理ユニットが、個別に制御可能な複数のレーザを有していてよい。1つ以上のレーザが、ダイオードレーザ、ダイオードレーザバー、固体レーザ、またはファイバレーザであってよい。少なくとも1つのレーザが、シングルモードレーザまたはマルチモードレーザであってよい。
【0020】
導電性物質用の塗布ユニットが、印刷ユニットまたは塗工ユニットであってよく、それにより、特に導電性物質を被印刷体へ直接塗布することができる。あるいは、それに対して、導電性物質が特に被印刷体に固定された支持体の上に設けられている場合には、塗布ユニットが、ディスペンサ装置またはラベリング装置であってよい。言い換えれば、電子回路または電子部品の印刷、特に高分子電子部品の印刷は、レーザ処理も行われる被印刷体処理機械の内部で行うことができ、あるいは印刷は、製造過程の上流に位置する印刷機で行うことができ、それにより、ブランクが、レーザ処理が行われる被印刷体処理機械へと導入される。
【0021】
導電性物質が感熱性(導電性)高分子化合物であってよい。高分子化合物は有機物であってよい。導電性物質が印刷可能であってよい。別の表現をすると、この物質は、被印刷体へ塗布される前には、ペースト状、流体状、または液体状であってよい。あるいは、それに対して、導電性物質が、例えばポリエステルフィルムのような支持基板または電子チップの上に設けられていてよい。電子チップは、従来の方法で製作されていてよい。
【0022】
本発明による被印刷体処理機械の第1の種別は印刷機によって構成されるが、言い換えれば、被印刷体処理機械が印刷機であってよい。特に、印刷機が、枚葉紙印刷機、輪転印刷機、多色印刷機、オフセット印刷機、フレキソ印刷機、グラビア印刷機、または複合型印刷機であってよい。特別な実施態様では、印刷機が、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、ゼログラフィ、ドロップオンデマンドインクジェット、活版印刷の印刷方法の群からの少なくとも2つの異なる印刷方法の間で切換可能な少なくとも1つの印刷ユニットを有していてよい。印刷機は包装印刷に適しているか、あるいは最適化されていてよい。被印刷体処理機械、特に印刷機がラベル印刷機であってよい。ラベル印刷機が、縦目ウェブを処理するためのウェブ印刷機であってよい。
【0023】
本発明による被印刷体処理機械の第2の種別は、後処理機械(ポストプレス、印刷後処理機械、製本機械)によって構成される。言い換えれば、被印刷体処理機械が後処理機械であってよい。特に、後処理機械が、折り機、丁合い綴じ機、無線綴じ機、スレッドシーリング機、打抜き機、パイル形成機、または製函機(折り畳まれた箱を箱状にしてにかわ付けする機械)であってよい。
【0024】
被印刷体処理機械で実施される方法、特に本発明の被印刷体処理機械で実施される方法も、本発明の思想と関連している。被印刷体処理機械における本発明による方法は、被印刷体の面領域を構造化するために用いられるか、あるいはそれに適しており、面領域の上には導電性物質が設けられているか、または被印刷体処理機械の塗布ユニットによって面領域の上へ導電性物質が塗布される。本発明の方法では、被印刷体処理機械の少なくとも1つの処理ユニットによって、被印刷体の形状自体が変化するか、または表面へ印刷インキが塗布されることで被印刷体が変化することになる。被印刷体処理機械のレーザ処理ユニットのレーザの少なくとも1つの集光レーザビームを用いて、導電性物質を少なくとも部分的に変化させるかまたは除去することで、被印刷体上に設けられた導電性物質の構造化が行われる。
【0025】
被印刷体処理機械における本発明の方法では、6マイクロメートル以下の寸法を有する微細構造を生成することができる。本発明の方法により、RFIDトランスポンダ用のアンテナを構造化によって生成することができる。同じように、キャパシタンス、インダクタンス、トランジスタ、または他の電子回路素子を構成する構造も作り出すことができる。
【0026】
本方法の特別な実施態様では、レーザビームの焦点位置を調整することで、互いに重ね合わされた導電性物質の層で3次元の構造化が行われる。本発明による方法の有利な実施態様では、レーザの位置および/または導電性物質を備えた面領域の位置を、位置検出ユニットによって検出することができ、制御ユニットによって調節することができる。
【0027】
本発明による方法の特別な実施態様は、印刷された電子部品、電子回路、またはそのブランクについての個別化に関わるものである。レーザ処理ユニットが制御ユニットにより制御されて、被印刷体の上に導電性物質を備えた複数の面領域の各面領域に、それぞれ互いに異なる構造を生成し、それにより、被印刷体の上の各面領域の不可逆的および/またはそれ以上処理不可能な個別化が、個々の印刷見本について実現される。レーザ光により、電子回路の不可逆的および/またはそれ以上処理不可能な個別化が印刷製品上で行われる。このようにして、例えば、個別化されたRFIDトランスポンダやラベルを製作することができる。電子回路をパーソナル化することができる。例えば日付、部品番号、シリアルナンバー、ロットなどに関わる情報を付すことができる。
【0028】
本明細書で説明する、本発明による被印刷体処理機械の特徴、および被印刷体処理機械における本発明による方法の特徴は、それぞれ単独で互いに独立して実現することができ、あるいは組み合わせて実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明のさらなる利点や有利な実施形態および発展例について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、印刷機、厳密には枚葉紙印刷機の形態である本発明による被印刷体処理機械10の一実施形態を示している。印刷機10は、ここでは特に板紙である被印刷体の枚葉紙をためておくための給紙装置12と、複数の印刷ユニット14と、配紙装置16とを有している。4つの第1の印刷ユニット14は、処理ユニット18として用いられる。すなわち、包装材料用の(プロセスカラーCMYKの)4色刷りを実現することができる。
【0031】
これに続く4つの印刷ユニット14は、塗布ユニット20として用いられる。すなわち、これらの各印刷ユニット14により、導電性物質の層を塗布することができる。この塗布は、導電性物質で湿潤され、版胴28に搭載された版を起点として行うことができる。導電性物質の印刷画像は、転写胴26によって、圧胴24とともに形成されるニップ部において、圧胴24上を搬送される被印刷体に転移される。印刷機10により1回の印刷作業工程で包装材料の複数の利用部分(Nutzen)(枚葉紙1枚あたりの印刷製品)が枚葉紙に製作されるときには、各利用部分が、導電性物質を備えた少なくとも1つの面領域を有するようになっている。塗布ユニット18として機能する各印刷ユニット14には、レーザ処理ユニット22がニップ部よりも下流に設けられており、このレーザ処理ユニットのレーザ光が、圧胴24上をレーザ処理ユニット22のそばを通り過ぎて搬送されていく被印刷体枚葉紙に当たる。導電性物質の層が塗布された後で、面領域の内部位置に向けて集束されたレーザ光によって、部分的な改変または除去を行うことができる。面領域の部分領域を気化させることで、導電性物質の部分的な改変または除去を行うことができる。感熱性高分子化合物の形態である特定の導電性物質の場合、レーザ光の熱作用によって電気特性も変化させることができ、特に、露光された部分領域では高分子化合物を非導電性、すなわち絶縁体に変化させることができる。塗布ユニット20の後に続く別の塗布ユニット20では、さらに別の導電性物質の層を、同一の面領域に塗布することができ、ニップ部に続くレーザ処理ユニット22によって少なくとも部分的に変化させたり除去したりすることができる。このようにして、導電性物質の3次元多層構造を、ここで図1の具体例では4つの層を印刷製品に生成することができる。個々の塗布ユニット20では、それぞれ異なる導電性物質、または同一の導電性物質を被印刷体に転移することができる。
【0032】
包装材料またはラベルにおいて、通常の用途では、印刷された電子回路は、従来の方法で印刷インキで多色刷りされるべき面の一部だけを占めている。この理由により、レーザ処理ユニット22は複数のレーザを有し、個々のレーザビームは、導電性物質を備えた面領域の印刷された電子回路の配置に応じて、特に利用部分の配置に応じて、位置決め可能であるようになっている(これに関しては図2も参照)。
【0033】
各レーザ処理ユニット22には位置検出ユニット30が付属している。印刷済みの層の位置および/またはレーザ作用による処理結果の位置が検出される。位置検出ユニット30は、例えば、センサまたは検出器としてCCD(Charge−Coupled Device)アレイやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)アレイを有していてよい。少なくとも(印刷機速度に比べて)速度が遅い位置変化を再調節することができる制御システムが構成されている。すなわち、これらの測定データは制御ユニット32へと送られることになる。レーザ処理ユニット22の制御、特にレーザ処理ユニット22の位置決め制御は、導電性物質のさまざまな場所および/またはレーザ処理ユニット22の処理パターンの十分に正確な見当精度をもたらすために、制御ユニット32を起点として行われる。また、実施された処理ステップのチェックを行うこともできる。印刷機10において4つの第1の印刷ユニット14で前もって実施されたカラー印刷の見当の観点から、照合や場合により修正も行われる。
【0034】
図1に示した、塗布ユニット20で塗布された層の処理または後処理を行うレーザ処理ユニット22が各塗布ユニット20に付属している状況に代えて、別の実施形態では、1つ以上のレーザビームの焦点位置が多層膜の深さに対して変更可能となるように、レーザ処理ユニット22が設けられている。このようにして、導電性物質層の多層構造における各層を、その下の層や上の層へ影響を及ぼすことなく、個別に処理することができる。オートフォーカス機能によって、焦点位置が調整可能である。また、±20マイクロメートルの解像度が実現可能である。このような実施形態には、その短い焦点深度にために、マルチモードレーザが特別に適している。
【0035】
図2は、被印刷体枚葉紙を処理するための印刷機10の図1に示す実施形態における塗布ユニット20のレーザ処理ユニット22を示す概略平面図である。本実施形態では、レーザ処理ユニット22は、クロスビームに4つのレーザモジュール34を有している。レーザモジュールは、例えばスピンドルやリニアモータのような並進アクチュエータ36を用いて、個別かつ互いに独立して、駆動ユニット38により横方向40へ、つまり印刷機10中の被印刷体44の搬送方向42に対して垂直方向へ所定の範囲内で移動可能および位置決め可能である。すでに説明したように、被印刷体44上の印刷された電子部品の位置はセンサにより検出されるので、制御ユニット32によって、見当誤差を最小化するための、または回避するためのレーザビーム位置の制御が行われる。図2では、レーザ処理ユニット22のそばを通り過ぎて搬送方向42に移動する、圧胴26上の1枚の被印刷体44が示されている。導電性物質を備えた4つの面領域46が被印刷体44に印刷されており、これらの面領域は、レーザモジュール34から放出されるレーザ光によって処理されることになる。レーザモジュール34の位置は、例えば枚葉紙における利用部分の配置によって定められる、面領域46の位置に対してそのつど調節される。本実施形態では、各レーザモジュール34は、独立した光源としての個別に制御可能なダイオードレーザを備えたレーザダイオードバー48を有している。レーザダイオードバー48の個々のダイオードレーザの画素は、横方向40と実質的に平行に列をなして互いに密着して位置するように、被印刷体44の表面へ投射することができる。
【0036】
図3では、導電性物質を備えた面領域46について、本発明によるレーザ処理の前の様子を左側の部分図Aに、処理後の様子を右側の部分図Bに示している。本発明により、粗く印刷された構造を微細な構造にする後処理が可能である。例えば、発振回路にはインダクタンスが必要であり、それはメアンダ状に構成された導体線路の形状に従来の方法で印刷可能である。本発明による面の印刷は、印刷解像度および/または使用する印刷可能な導電性物質に対しては、かなりわずかな要求しか課さない。したがって、広い面領域46(部分図A)を被印刷体に印刷することが可能である。引き続き、この広い面領域46は、レーザビームによって、面領域46に切り込みが入れられることで構造化される(部分図B)。このような本発明の方法により、直接印刷するよりも微細な構造を備えた、メアンダ状に延びる導体線路を製作することができる。
【0037】
特に発振回路のキャパシタンスも、正確で個別な調整のために、レーザ処理によって調整可能である。一方では、キャパシタンスの電極の面積を、上述した本発明による方法によって、直接の印刷によって実現できるよりも、より正確な調整を行うことができる。他方では、複数の部分面を備えたコンデンサの電極を製作して、部分面を分離することで、キャパシタンスを正確な値に調整することも可能である。
【0038】
トランジスタまたはこれに類似する電子部品要素についても、同様のことを行うことができる。さらに、この場合には通常、互いに重なり合った層によって3次元性という側面がさらに付け加わる。接続部分の的確な分離、または個々のセルの破壊によって、回路のバージョン化またはパーソナル化が可能である。
【0039】
図4では、丁合い綴じ機52の形態である本発明による被印刷体処理機械の代替の実施形態が対象となっている。後処理機械である丁合い綴じ機52では、複数の印刷された折り丁が、多数のページをもつ印刷製品、例えばパンフレットや雑誌になるように、丁合いされ、綴じられ、断裁されて、積み重ねられるか、瓦状に重ねられた状態で排出される。折り丁は、複数の折り丁供給装置54から出発して、それぞれ間を開けて、それぞれの上に重ねるように、丁合いチェーン上に置かれる。丁合いチェーンによって、多数のページをなすように互いに折り重なった印刷製品が綴じステーションへ搬送され、そこで、個々のページが中綴じによって相互に結合される。丁合いチェーンから印刷製品がイジェクトブレード(Auswurfschwert)によって持ち上げられ、ベルト搬送部へと到達し、それによって印刷製品は縁部を断裁するために裁断装置58へと運ばれる。最後に、断裁された印刷製品はパイル形成ユニット60へ到達する。
【0040】
本発明によれば、丁合い綴じ機52は、被印刷体処理機械の本実施形態における処理ユニットである綴じステーション52と裁断装置58との間のベルト搬送部に、レーザ処理ユニット22を有している。丁合いされて綴じられた印刷製品の外側の枚葉紙の外面上にある導電性物質を備えた面領域46が、レーザ光により、本発明に基づいて微細に構造化される。このようにして、印刷製品の外面上の印刷されたバーコードや塗布されたRFIDトランスポンダと同じように、情報媒体が製作可能である。丁合い綴じ機52は、レーザ処理ユニット22の下流に位置する位置検出ユニット30をさらに有し、そこでは、印刷製品の処理結果の検出によってレーザ処理ユニット22の位置決め偏差を計量確認することが可能となっている。測定データは制御ユニット32で処理され、制御ユニットにより、レーザ処理ユニット22が調節制御されることで、見当の不正確さを低減または回避するために、レーザ処理ユニット22から放出されるレーザビームの位置が作用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】枚葉紙印刷機の形態である本発明による被印刷体処理機械の一実施形態を示す図である。
【図2】枚葉紙印刷機の図1に示した実施形態のレーザ処理ユニットを示す概略平面図である。
【図3】レーザによる処理の前後における導電性物質を備えた面領域を示す図である。
【図4】丁合い綴じ機の形態である本発明による被印刷体処理機械の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10、52 被印刷体処理機械
10 印刷機
14 印刷ユニット
18 処理ユニット
20 塗布ユニット
22 レーザ処理ユニット
30 位置検出ユニット
32 制御ユニット
34 レーザモジュール
40 横方向
42 搬送方向
44 被印刷体
46 面領域
48 レーザダイオードバー
52 丁合い綴じ機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体(44)の形状自体を変化させるか、または表面へ印刷インキを塗布することで前記被印刷体(44)を変化させる少なくとも1つの処理ユニット(18)を備えた被印刷体処理機械(10、52)であって、前記被印刷体(44)が面領域(46)を有し、該面領域の上には導電性物質が設けられているか、または前記面領域の上へ前記被印刷体処理機械(10、52)の塗布ユニット(20)によって導電性物質が塗布される、被印刷体処理機械において、
レーザの少なくとも1つの集光レーザビームを用いて、前記導電性物質を少なくとも部分的に変化させるかまたは除去することで、前記被印刷体(44)上に設けられた前記導電性物質の構造化を行うためのレーザ処理ユニット(22)を有することを特徴とする被印刷体処理機械。
【請求項2】
前記レーザ処理ユニット(22)の前記レーザが、前記被印刷体(44)に対して相対的に位置決め可能である、請求項1に記載の被印刷体処理機械。
【請求項3】
前記レーザの位置および/または前記導電性物質の前記面領域(46)の位置が、位置検出ユニット(30)によって検出可能であり、制御ユニット(32)によって調節可能である、請求項2に記載の被印刷体処理機械。
【請求項4】
前記被印刷体(44)が、少なくとも1つの搬送装置によって、前記被印刷体処理機械(10、52)を通り抜ける経路に沿って移動可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項5】
前記レーザ処理ユニット(22)が、前記被印刷体処理機械(10、52)を通り抜ける経路に沿って前記処理ユニット(18)より下流に配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項6】
前記レーザ処理ユニットが、前記被印刷体処理機械(10、52)を通り抜ける前記被印刷体(44)の搬送方向(42)に対して横方向(40)へ移動可能な複数のレーザモジュールを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項7】
前記レーザ処理ユニット(22)が複数のレーザを有し、該レーザのビームが、横方向(40)における利用幅全体にわたって前記被印刷体(44)に当たる、請求項1から5のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項8】
前記レーザ処理ユニット(22)が、少なくとも1つのレーザビームの焦点位置を調整するためのオートフォーカス機能を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項9】
前記レーザ処理ユニット(22)が、個別に制御可能な複数のレーザを有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項10】
1つ以上の前記レーザが、ダイオードレーザ、ダイオードレーザバー、固体レーザ、またはファイバレーザである、請求項1から9のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項11】
少なくとも1つの前記レーザが、シングルモードレーザまたはマルチモードレーザである、請求項1から10のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項12】
前記塗布ユニット(18)が、印刷ユニット(14)または塗工ユニットである、請求項1から11のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項13】
前記塗布ユニット(18)が、ディスペンサ装置またはラベリング装置である、請求項1から11のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項14】
前記導電性物質が感熱性高分子化合物である、請求項1から13のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項15】
前記導電性物質が印刷可能である、請求項1から14のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項16】
前記導電性物質が、支持基板または電子チップの上に設けられている、請求項1から15のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項17】
前記被印刷体処理機械(10、52)が印刷機である、請求項1から16のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項18】
前記印刷機が、枚葉紙印刷機、輪転印刷機、多色印刷機、オフセット印刷機、フレキソ印刷機、グラビア印刷機、または複合型印刷機である、請求項17に記載の被印刷体処理機械。
【請求項19】
前記印刷機が、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、ゼログラフィ、ドロップオンデマンドインクジェット、活版印刷の印刷方法の群からの少なくとも2つの異なる印刷方法の間で切換可能な少なくとも1つの印刷ユニットを有する、請求項17に記載の被印刷体処理機械。
【請求項20】
前記被印刷体処理機械(10、52)がラベル印刷機である、請求項1から16のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項21】
前記ラベル印刷機が、縦目ウェブを処理するためのウェブ印刷機である、請求項20に記載の被印刷体処理機械。
【請求項22】
前記被印刷体処理機械(10、52)が後処理機械である、請求項1から16のいずれか1項に記載の被印刷体処理機械。
【請求項23】
前記後処理機械が、折り機、丁合い綴じ機(52)、無線綴じ機、スレッドシーリング機、または製函機である、請求項22に記載の被印刷体処理機械。
【請求項24】
被印刷体処理機械(10、52)において被印刷体(44)の面領域(46)を構造化するための方法であって、前記面領域の上には導電性物質が設けられているか、または前記面領域の上へ前記被印刷体処理機械(10、52)の塗布ユニット(20)によって導電性物質が塗布され、前記被印刷体処理機械(10、52)の少なくとも1つの処理ユニット(18)によって、前記被印刷体(44)の形状自体が変化するか、または表面へ印刷インキが塗布されることで前記被印刷体が変化する方法において、
前記被印刷体処理機械(10、52)のレーザ処理ユニット(22)のレーザの少なくとも1つの集光レーザビームを用いて、前記導電性物質を少なくとも部分的に変化させるかまたは除去することで、前記被印刷体(44)上に設けられた前記導電性物質の構造化が行われることを特徴とする方法。
【請求項25】
6マイクロメートル以下の寸法を有する微細構造が生成される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
RFIDトランスポンダ用のアンテナが前記構造化によって生成される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
キャパシタンス、インダクタンス、またはトランジスタが前記構造化によって生成される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記レーザビームの焦点位置を調整することで、互いに重ね合わされた前記導電性物質の層で3次元の構造化が行われる、請求項24から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記レーザの位置および/または前記導電性物質を備えた前記面領域の位置が、位置検出ユニット(30)によって検出され、制御ユニット(32)によって調節される、請求項24から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記レーザ処理ユニット(22)が前記制御ユニットにより制御されて、前記被印刷体(44)上の前記導電性物質を備えた複数の前記面領域(46)の該各面領域(46)に、それぞれ互いに異なる構造を生成し、それにより、前記被印刷体(44)上の前記各面領域(46)の不可逆的および/またはそれ以上処理不可能な個別化が各印刷製品について実現される、請求項24から29のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−65168(P2009−65168A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229920(P2008−229920)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】