説明

複合型の車体底部ライニング

音響的に有効な車両用車体底部ライニング(A)であって、少なくとも1つの音響効果材料(a、a2..x)が埋め込まれた少なくとも1つの形態安定化構造(B)を含んでいる。音響効果領域に埋め込まれる材料の分布、厚さ、および種類は、局所的な音響条件を最適なやり方で変えうるように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴付け部分に記載の車両用車体底部ライニングに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体底部のライニングは、基本的には公知であって、車体へと取り付けられた車両用部品の保護や、車両の空力学的性能の改善のために使用されている。一般に、これらの車体底部ライニングは、長繊維によって補強された熱可塑性材料から製造され、構造部品として取り付けることができるように寸法付けられ、すなわち高度な自身の剛性および形態の安定性を備えている。この種のライニングが、音響的な効果を持たないことは言うまでもない。
【0003】
したがって、このような剛直な車体底面ライニングに音響的に有効である層、すなわち騒音の減衰、騒音の吸収、および騒音の絶縁の層を設けるべきであることが、過去に提案されている。残念ながら、これは、ライニング部品の全体の重さを不都合にも増加させる結果となり、さらには追加の固定点を必要とする。結果としてこれが、車両の組み立てコストおよび運転コストを不都合にも増加させることにつながる。このような理由で、不織のテキスタイル材料で製作された個々の領域が剛直なプラスチック構造に囲まれてなるホイールアーチ用シェルが、知られるようになっている。このようなホイールアーチ用シェルは、軽量でありかつ音響という点できわめて効果的である。しかしながら、その弾性特性および音響効果を生み出している不織テキスタイル材料の低レベルの耐久性(摩耗を受けやすい)ゆえ、すぐに摩耗するという望ましくない事例につながる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、軽量な車両用車体底部ライニングであって、公知のライニング部品の欠点を有しておらず、同時に、とくには良好な機械的特性および優れた音響的効果を長期にわたって可能にする車両用車体底部ライニングを生み出すことにある。とくには、排気系の領域、石に対する防御領域、あるいは音圧レベルの高い領域など、騒音の源であって場所特有のさまざまな音響特性を呈している個々の領域に最適に適合させた車体底部ライニングを生み出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を備える車体底部ライニングによって解決され、とくには少なくとも1つの形態安定化領域と少なくとも1つの音響効果領域とを呈している音響的に有効な車両用車体底部ライニングであって、音響効果領域が、開放気孔材料またはカーペット状材料(a、a2..x)を含むとともに、形態安定化領域が、熱可塑性材料、エラストマー材料、またはデュロプラスチック(duroplastic)材料を含んでおり、音響効果領域の材料が、形態安定化領域の材料に少なくとも部分的に埋め込まれており、あるいは形態安定化領域の材料へと一体化されている車体底部ライニングによって解決される。ここで、音響効果領域は、好ましくは、ライニング部品の全体の5%〜95%の間、好ましくは20%〜60%の間の面積率をカバーしている。本発明によれば、音響効果領域に埋め込まれる材料の分布、厚さ、および/または種類は、騒音の源または振動の領域である種々の局所領域に合わせて調節された音響効果を達成するという目的において、さまざまであることができる。ここで、音響効果材料の厚さが、形態安定化材料の厚さよりも大きくてもよい。これは、音響効果材料が、スペーサまたは固定部材としても機能でき、音響的および機械的有効性のレベルの向上を同時に提供できることを意味する。本発明による車体底部ライニングの複合構造によれば、局所的な条件に最適に適合されており効果的である構成を、音響効果領域に簡単に生成することができる。とくには、最適な音響および形態安定化の効果を生み出すために、最大限に幅広いさまざまな材料または材料混合物を使用することが可能である。
【0006】
形態安定化領域は、単一または複数層の材料構造を有しており、好ましくはプラスチック‐プラスチック、繊維‐繊維、またはプラスチック‐繊維の混合物(BiCo繊維も含む)で、好ましくは格子またはシートの形態に構成されている。当然ながら、骨格の様相に配置されたこれらの領域を、複数の層で作り上げることも可能であり、あるいは金属材料、とくにはアルミニウムから製造することが可能である。好ましい実施の形態においては、この領域が、固められ、すなわち圧密された単層のプラスチック(補強なしであっても、繊維で補強されていても、あるいは他の充填材を用いて補強されていてもよい)で構成されている。
【0007】
音響効果領域のために、とくには発泡体、繊維材料、圧縮を加えた繊維混合物、非圧縮の繊維混合物、ならびにこれらの材料のプラスチック格子または多層積層体を特徴とするあらゆる組み合わせなど、音響的に有効なあらゆる種類の材料を使用することができる。当然ながら、音響効果材料を、チャンバとして、またはシート吸収体あるいはプラスチックまたはアルミニウムの微細孔シートとして設計することも可能である。
【0008】
さらに、形態安定化材料へと埋め込まれる音響効果材料を、この形態安定化材料へと中間接合材料を使用して埋め込むことも可能である。基本原理として、音響効果材料を、材料の結合、嵌め込み、または接着プロセスによって埋め込むことが可能である。
【0009】
本発明のさらなる発展においては、車体底部ライニングを装着したときに生じる中間の空間の少なくとも一部分に、音響的に効果的な中間層を設けることができる。この中間層は、単一および/または複数の多孔性および/または孔のない吸収層、複数層からなるシート吸収体、またはチャンバ吸収体の形態をとることができ、あるいは他の任意の音響的に有効な構成を呈することができる。特別な実施の形態においては、少なくとも形態安定化領域が、水の排出または圧力の平衡化に機能する穴または孔を特徴とする。同時に、この種の開口は、外部の音場を中間層へと結合させるように機能する。当然ながら、中間層は、遮熱層(孔を有しており、あるいは有していない)をさらに備えてもよく、さらなる空気層を生成してもよい。
【0010】
当業者であれば、さらなる進歩的な段階を一切必要とすることなく、この本発明による車体底部ライニングの構造を、車両の内部の構成部品、とくにはエンジンルームのライニング、仕切りモジュール、荷物棚、天井ライニング・モジュール、またはトランクのライニングに使用することが可能である。
【0011】
以下の項で、典型的な実施の形態を参照しつつ、図面の助けによって本発明をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、取り付けられた状態の本発明による車体底部ライニングAを示している。この車体底部ライニングは、音響効果材料aおよびa2..xが埋め込まれてなる形態安定化構造Bを含んでいる。形態安定化構造Bは、形状3、4において追加の局所的な安定化の変化を呈することができる。この構造Bは、好ましくは熱可塑性ポリマー、とくにはポリプロピレンまたはポリアミドで製作される。この材料を、繊維または他の充填材で補強できることは、言うまでもない。他の実施の形態においては、形態安定化構造Bがエラストマー、とくにはEPDMで製作される。さらなる実施の形態においては、この形態安定化構造Bが、デュロプラスチック材料、とくには不飽和のポリエステルまたはポリウレタンで製作される。
【0013】
この例示の実施の形態においては、音響効果材料aが、音響効果材料aを埋め込むという目的のために相応の面積Aを備えて設けられた凹所に埋め込まれている。さらなる特徴として、音響効果材料を固定するために、接合中間材料cを同じ凹所へと取り入れることも可能である。他の実施の形態においては、形態安定化構造Bが、音響効果材料a2..xが取り入れられる開放領域A2..xを有している。この実施の形態においては、音響効果材料a2..xが、形態安定化構造よりも大きな厚さd’を有することができる。この音響効果材料aおよびa2..xは、発泡体、繊維材料、圧縮された繊維混合物(プラスチックの格子を有しており、あるいは有していない)、あるいは多層の積層体で製作することができる。ここで、音響効果領域A、A2..xは、好ましくはライニングの全体の面積Aの5%〜95%の間、好ましくは20%〜60%の間の面積の割合をカバーしている。
【0014】
使用される材料は、好ましくは、とくには不織の材料、シート、格子、織物テキスタイル、繊維層、またはこれらの組み合わせの形態である多層および/または単層の熱可塑性材料から製作される。1.0〜100デシテックス(dtex)の繊維重量を有する二成分繊維(BiCo繊維)が好都合である。使用される材料が、異なる繊維重量、とくには1〜10、11〜20、および21〜30dtexの重量を有する二成分繊維の混合物で作られることは、明らかである。
【0015】
さらなる実施の形態においては、中間層Kが、形態安定化構造Bと車両の車体底部5とに間に介装されている。この中間層Kは、車体底部ライニングAと車両の車体底部5との間の中間空間の全体を占めることができ、あるいはこの中間空間に厚さk’またはk’’のさらなる空気層が存在するような厚さkであってよい。中間層Kが、さらに遮熱層(孔を備えていても、備えていなくてもよい)を備えてもよいことは明らかである。
【0016】
さらなる実施の形態においては、形態安定化構造が、水を排出するように機能し、圧力の平衡を可能にするさらなる孔を有することができる。同時に、これらの孔は、外部の音場と中間層Kとの音響結合を可能にする。
【0017】
図2は、本発明による車体底部ライニングを切断した空間図を示している。本発明によれば、この車体底部ライニングAが、形態安定化構造Bおよび少なくとも1つの音響効果領域AまたはA2..xを有している。この目的のために、この形態安定化構造Bに音響効果材料a、a2..xが埋め込まれている。ここで、形態安定化構造は、格子状の形状を呈しており、個々の格子棒6の間の間隔、すなわち格子幅は、好ましくは0.5〜500mmの範囲内にある。この好ましい実施の形態においては、個々の格子棒6の幅は、0.5〜20mmの範囲内にある。これらの棒6の高さは、0.1〜10mmの範囲内でさまざまである。この形態安定化格子の生成にとくに適した材料は、熱可塑性材料、デュロプラスチック、ポリエステル共重合体、ガラス複合材料、プラスチックなどを含浸させたガラス層テキスタイル材料である。
【0018】
当然ながら、テキスタイル材料、層、不織材料、シート、またはメッシュの形態のさらなる形態安定化層7を、上側および/または下側に設けてもよい。これらの上側および/または下側の追加の形態安定化層7は、好ましくは、PP、PE、PA、PET、および/あるいは有機もしくは無機のデュロプラスチックなどの熱可塑性材料、ガラス繊維、もしくはこれらの材料の混合物または組み合わせを含んでいる。追加の層7の配置は、棒6の方向に対して一方向であっても、ずらされていてもよく、これらの層7の接続は、交差点または棒6との重なり合いの領域において行われる。これらの層7を、棒6の材料へと熱で溶着させることができ、同様に音響効果領域A、A2..xの音響効果材料a、a2..xへと熱で溶着させることができる。これらの追加の層7を熱で溶着させる結果として、局所的な含浸のプロセスが、音響効果材料の局所的な補強を伴って達成される。
【0019】
本発明のさらなる実施の形態においては、追加の層7が、有機および/または無機の材料で作られた単一の不織材料または多層の不織材料を含んでいる。これらの不織材料によれば、空気流に対する抵抗の程度を簡単なやり方で設定することができる。通気抵抗の値は、好ましくは、50〜5,000Ns/mの範囲内に設定される。これらの不織材料層の厚さは、好ましくは、0.05〜20mmの範囲内にある。これらの層の坪量(面積重量)は、好ましくは0.5〜3,000g/mである。
【0020】
当然ながら、これらの追加の層7が、単一のシートまたは多層のシートを含むことも可能である。この種のシートは、熱可塑性材料またはデュロプラスチックの種類のプラスチック材料、金属シート、および/またはこれらの材料の組み合わせを含むことができる。この種のシート層の坪量が、好ましくは0.05〜500g/mの範囲内にある一方で、これらの厚さは、0.02〜10mmの範囲内にある。微小な孔を有するシートを使用することも、当業者にとって明らかであり、そのようなシートは、好ましくは50〜5,000Ns/mの範囲内の通気抵抗を生み出す。
【0021】
これらの追加の層7は、好ましい実施の形態においては、材料の結合による接続8によって棒6へと固定される。本発明による車体底部ライニングAのさらなる好ましい実施の形態においては、形態安定化棒6が、構造の全体を貫いて延びてはおらず、コア領域において中断しており、すなわち中央において中断しており、したがってそのような中断9に、移動を許すように配置された開放気孔材料またはカーペット状材料(a、a2..x)を存在させることができ、このやり方で、棒6の振動運動をこの繊維材料を介して消散させることができる。
【0022】
本発明による車体底部ライニングのさらなる実施の形態は、当業者の通常の技術的能力の範囲内にある。すなわち、形態安定化構造Bおよび音響効果領域A、A2..xについて、例えば圧密されたプラスチック材料の形態または開放気孔の混合繊維材料の形態のポリプロピレンなど、同じ基本材料を使用することができる。当然ながら、音響効果材料は、溶着または結合、ホチキス止め、締め付け、フック掛け、あるいは射出成型法によって、形態安定化構造Bへと取り付けられる。同様に、音響効果材料を、形態安定化構造へとさまざまな深さまで埋め込むことができ、埋め込みの深さが、部分的により低い程度の圧密を示す。とくには、形態安定化領域のコア(中央)において、繊維が移動可能なままであるように、繊維を部分的に少なくした様相で埋め込むことができる。好ましくは不織の材料および/またはシートの全領域または少なくとも一部分が、形態安定化領域および音響効果領域へと材料によって結合している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】取り付けられた状態にある本発明の車体底部ライニングの断面の概略図を示している。
【図2】本発明の車体底部ライニングを切断した空間図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの形態安定化領域(B)と少なくとも1つの音響効果領域(A、A2..x)とを有している音響的に有効な車両用車体底部ライニング(A)であって、
音響効果領域(A、A2..x)が、開放気孔材料またはカーペット状材料(a、a2..x)を含んでおり、形態安定化領域(B)が、熱可塑性材料、エラストマー材料、またはデュロプラスチック材料を含んでおり、音響効果領域(A、A2..x)の材料が、形態安定化領域(B)の材料に、少なくとも途中までの貫入の程度まで埋め込まれていることを特徴とする車体底部ライニング(A)。
【請求項2】
開放気孔材料またはカーペット状材料(a、a2..x)が、50Nsm−3<R<5,000Nsm−3の通気抵抗Rを有していることを特徴とする請求項1に記載の車体底部ライニング(A)。
【請求項3】
形態安定化領域(B)に孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体底部ライニング(A)。
【請求項4】
種々の材料(a、a2..x)および/または種々の厚さの材料(a、a2..x)が埋め込まれている複数の音響効果領域(A、A2..x)を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車体底部ライニング(A)。
【請求項5】
音響効果領域(A、A2..x)が、車体底部ライニング(A)の全面積に対して5%〜95%の間、好ましくは20%〜60%の間の面積率を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車体底部ライニング(A)。
【請求項6】
音響効果領域(A、A2..x)に埋め込まれる材料の分布、厚さ、および種類が、騒音の源を呈している個々の領域へと最適に適合させた種々の音響効果を生み出すことができるように選択されていることを特徴とする請求項4に記載の車体底部ライニング(A)。
【請求項7】
少なくとも1つの追加の層7を下面および/または上面に有していることを特徴とする請求項1に記載の車体底部ライニング(A)。
【請求項8】
この追加の層7が、格子の層、不織材料の層、またはシート状の層であることを特徴とする請求項7に記載の車体底部ライニング(A)。
【請求項9】
この層が、50Nsm−3<R<5,000Nsm−3の通気抵抗Rを有していることを特徴とする請求項7に記載の車体底部ライニング(A)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−545568(P2008−545568A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511529(P2008−511529)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000307
【国際公開番号】WO2006/131016
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(502324354)リーター テクノロジーズ アー ゲー (11)
【氏名又は名称原語表記】RIETER TECHNOLOGIES A.G.
【Fターム(参考)】