説明

複合基板の製造方法および複合基板

【課題】結晶成長用基板に形成した半導体結晶層を転写先基板に転写する場合の犠牲層のエッチング速度を高める。
【解決手段】半導体結晶層形成基板の上に犠牲層および半導体結晶層を順に形成し、転写先基板に接することとなる前記半導体結晶層形成基板の第1表面と、前記第1表面に接することとなる前記転写先基板の第2表面と、が向かい合うように、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせ、前記半導体結晶層形成基板および前記転写先基板の全部または一部をエッチング液に浸漬して前記犠牲層をエッチングし、前記半導体結晶層を前記転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離する。ここで、前記転写先基板が、非可撓性基板と有機物層とを有し、前記有機物層の表面が、前記第2表面であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板の製造方法および複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaAs、InGaAs等のIII−V族化合物半導体は、高い電子移動度を有し、Ge、SiGe等のIV族半導体は、高い正孔移動度を有する。よって、III−V族化合物半導体でNチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)(以下単に「nMOSFET」という場合がある。)を構成し、IV族半導体でPチャネル型のMOSFET(以下単に「pMOSFET」という場合がある。)を構成すれば、高い性能を備えたCMOSFET(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)が実現できる。非特許文献1には、III−V族化合物半導体をチャネルとするNチャネル型MOSFETとGeをチャネルとするPチャネル型MOSFETが、単一基板に形成されたCMOSFET構造が開示されている。
【0003】
III−V族化合物半導体をチャネルとするNチャネル型MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field Effect Transistor)(以下単に「nMISFET」という場合がある。)と、IV族半導体をチャネルとするPチャネル型MISFET(以下単に「pMISFET」という場合がある。)とを、一つの基板上に形成するには、nMISFET用のIII−V族化合物半導体と、pMISFET用のIV族半導体を単一基板上に形成する技術が必要になる。また、LSI(Large Scale Integration)として製造することを考慮すれば、既存製造装置および既存工程の活用が可能なシリコン基板上にnMISFET用のIII−V族化合物半導体結晶層およびpMISFET用のIV族半導体結晶層を形成することが好ましい。
【0004】
単一基板(たとえばシリコン基板)上に、III−V族化合物半導体層およびIV族半導体結晶層というような異種材料を形成する技術として、結晶成長用基板に形成した半導体結晶層を転写先基板に転写する技術が知られている。たとえば非特許文献2には、GaAs基板上に犠牲層としてAlAs層を形成し、当該犠牲層(AlAs層)上に形成したGe層を、Si基板に転写する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Takagi, et al., SSE, vol. 51, pp. 526-536, 2007.
【非特許文献2】Y. Bai and E. A. Fitzgerald, ECS Transactions, 33 (6) 927-932 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2に記載の技術では、犠牲層であるAlAs層をエッチングにより除去し、転写対象の半導体結晶層であるGe層を、結晶成長用基板であるGaAs基板から分離する。しかし、犠牲層は、結晶成長用基板とGe層との間に挟まれて配置されており、結晶成長用基板とGe層の間隙における横方向エッチングにより除去されるため、犠牲層の層厚が薄い場合には、エッチング液が十分に供給されず、犠牲層の除去に長時間を要する問題がある。
【0007】
犠牲層を厚く形成すれば、エッチング液の供給が速やかになり、犠牲層除去の時間も短縮できるが、層厚が大きい犠牲層は、犠牲層上に形成する半導体結晶層の結晶性を低下させ、好ましくない。また、転写先基板への接着性を高く保つ観点から、半導体結晶層の平坦性を高く維持することが好ましいが、犠牲層の層厚が大きくなると、犠牲層表面の平坦性が低下し、犠牲層の影響を受ける半導体結晶層の平坦性も低下する。
【0008】
また、結晶成長用基板から転写先基板に転写された半導体結晶層は、さらに他の転写先基板に転写されることが想定されるが、結晶成長用基板から転写先基板への転写段階における転写先基板と半導体結晶層との接着層(または接着機構)は、転写先基板から次の転写先基板への転写段階における犠牲層(または脱着機構)となるので、各転写段階におけるエッチング液と接着層(犠牲層)の材料(または各転写段階における接着機構)は接着強度の大小関係が適切になるよう選択する必要がある。これら選択の自由度を増すためには、接着層(犠牲層)の物性(接着強度等)を動的に変化させ、制御できることが好ましい。
【0009】
本発明の目的は、結晶成長用基板に形成した半導体結晶層を転写先基板に転写する場合の犠牲層のエッチング速度を高める技術を提供することにある。また、各転写段階における接着層または犠牲層のまたは接着性を制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体結晶層形成基板の上に犠牲層および半導体結晶層を、前記犠牲層、前記半導体結晶層の順に形成するステップと、前記半導体結晶層形成基板に形成された層の表面であって転写先基板または前記転写先基板に形成された層に接することとなる第1表面と、前記転写先基板または前記転写先基板に形成された層の表面であって前記第1表面に接することとなる第2表面と、が向かい合うように、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップと、前記半導体結晶層形成基板および前記転写先基板の全部または一部をエッチング液に浸漬して前記犠牲層をエッチングし、前記半導体結晶層を前記転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、を有し、前記転写先基板が、非可撓性基板と有機物層とを有し、前記有機物層の表面が、前記第2表面である前記半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法を提供する。あるいは、本発明の第2の態様においては、半導体結晶層形成基板の上に犠牲層および半導体結晶層を、前記犠牲層、前記半導体結晶層の順に形成するステップと、前記半導体結晶層の上に有機物からなる接着層を形成するステップと、前記半導体結晶層形成基板に形成された層の表面であって転写先基板または前記転写先基板に形成された層に接することとなる第1表面である前記接着層と、前記転写先基板または前記転写先基板に形成された層の表面であって前記第1表面に接することとなる第2表面と、が向かい合うように、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップと、前記半導体結晶層形成基板および前記転写先基板の全部または一部をエッチング液に浸漬して前記犠牲層をエッチングし、前記半導体結晶層を前記転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、を有する前記半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法を提供する。
【0011】
前記半導体結晶層として、GeSi1−x(0<x≦1)からなるものが挙げられる。前記半導体結晶層の厚さは、0.1nm以上1μm未満であることが好ましい。前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記半導体結晶層の上に有機物からなる接着層を形成するステップをさらに有してもよく、この場合、前記接着層の表面が、前記第1表面であってもよい。前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記犠牲層の一部が露出するように少なくとも前記半導体結晶層をエッチングし、前記半導体結晶層を複数の分割体に分割するステップ、をさらに有してもよい。
【0012】
前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップの後に、前記転写先基板の前記半導体結晶層側と第2の転写先基板の表面側とが向かい合うように、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを貼り合わせるステップと、前記転写先基板と前記半導体結晶層との間に位置する層の物性、前記転写先基板と前記半導体結晶層との接着性を支配する界面の物性、前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との間に位置する層の物性、および、前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との接着性を支配する界面の物性、から選択された1以上の物性を変化させるステップと、前記半導体結晶層を前記第2の転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを分離するステップと、をさらに有してもよい。前記物性を変化させるステップとして、貼り合わされた前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを有機溶剤に浸漬し、前記転写先基板側にある有機物を膨潤させるステップ、または、前記転写先基板側にある有機物を熱若しくは紫外線により硬化させるステップが挙げられる。前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記半導体結晶層の一部を活性領域とする電子デバイスを前記半導体結晶層に形成するステップをさらに有してもよい。
【0013】
本発明の第3の態様においては、非可撓性基板と、単結晶の半導体結晶層と、前記非可撓性基板と前記半導体結晶層との間に位置する有機物層と、を有する複合基板を提供する。前記半導体結晶層として、GeSi1−x(0<x≦1)からなるものが挙げられる。前記半導体結晶層の厚さは、0.1nm以上1μm未満であることが好ましい。前記半導体結晶層として、単結晶Ge層が挙げられ、この場合、記単結晶Ge層のX線回折法による回折スペクトル半値幅として、40arcsec以下のものが挙げられる。前記単結晶Ge層には、前記単結晶Ge層の一部を活性領域とする電子デバイスが形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図2】実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図3】実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図4】実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図5】実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図6】実施形態2の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図7】実施形態2の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図8】実施形態2の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図9】実施形態3の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図10】実施形態3の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図11】実施形態3の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図12】実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図13】実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した平面図である。
【図14】実施形態4における溝110のパターンの変更例を示した平面図である。
【図15】実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図16】実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図17】実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図18】実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図19】実施形態5の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図20】実施形態5の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図21】実施形態5の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図22】実施形態6の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図23】実施形態6の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図24】実施形態6の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図25】実施形態6の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。
【図26】GaAs基板上のAlAs結晶層およびGe結晶層の断面を観察したSEM写真である。
【図27】GaAs基板上のAlAs結晶層およびGe結晶層の断面を観察したSEM写真である。
【図28】GaAs基板上のAlAs結晶層およびGe結晶層の(004)面におけるX線ロッキングカーブ測定の結果を示したグラフである。
【図29】AlAs結晶層およびGe結晶層を形成したGaAs基板を49%HF溶液に浸漬し、室温で5時間経過した後の様子を示した写真である。
【図30】プラスチック基板に接着されているGe結晶層(左側の写真)と、Ge結晶層を分離した後のGaAs基板(右側の写真)を示す。
【図31】実施例1の半導体基板の製造過程における断面を示す。
【図32】実施例1の半導体基板の製造過程における断面を示す。
【図33】パターニングされたGe結晶層が、ポリイミド膜を介してシリコン基板上に転写された後の状態を観察した光学顕微鏡写真である。
【図34】図33のGe結晶層をホール素子に適用した例を示す。
【図35】実施例2の半導体基板の製造過程における断面を示す。
【図36】実施例2の半導体基板の製造過程における断面を示す。
【図37】実施例2の半導体基板の製造過程における断面を示す。
【図38】実施例2の半導体基板の製造過程における断面を示す。
【図39】ガラス基板上に転写した後の、Ge結晶層に形成した素子302の一つであるPチャネル型MOSFETのIDS−V特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
図1〜図5は、実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。本実施形態1の製造方法は、まず、図1に示すように、半導体結晶層形成基板102の上に犠牲層104および半導体結晶層106を、犠牲層104、半導体結晶層106の順に形成する。
【0016】
半導体結晶層形成基板102は、高品位な半導体結晶層106を形成するための基板である。好ましい半導体結晶層形成基板102の材料は、半導体結晶層106の材料、形成方法等に依存する。一般に、半導体結晶層形成基板102は、形成しようとする半導体結晶層106と格子整合または擬格子整合する材料からなることが望ましい。たとえば、半導体結晶層106としてGaAs層をエピタキシャル成長法により形成する場合、半導体結晶層形成基板102は、GaAs単結晶基板が好ましく、InP、サファイア、Ge、SiCの単結晶基板が選択可能である。半導体結晶層形成基板102がGaAs単結晶基板である場合、半導体結晶層106が形成される面方位として(100)面または(111)面が挙げられる。
【0017】
犠牲層104は、半導体結晶層形成基板102と半導体結晶層106とを分離するための層である。犠牲層104がエッチングにより除去されることで、半導体結晶層形成基板102と半導体結晶層106とが分離する。犠牲層104のエッチングに際し、半導体結晶層形成基板102および半導体結晶層106が残る必要があるため、犠牲層104のエッチング速度は、半導体結晶層形成基板102および半導体結晶層106のエッチング速度より大きい、好ましくは数倍以上大きい必要がある。半導体結晶層形成基板102としてGaAs単結晶基板が、半導体結晶層106としてGaAs層が選択される場合、犠牲層104はAlAs層が好ましく、InAlAs層、InGaP層、InAlP層、InGaAlP層、AlSb層が選択できる。犠牲層104の厚さが大きくなると、半導体結晶層106の結晶性が低下する傾向にあるから、犠牲層104の厚さは、犠牲層としての機能が確保できる限り薄いことが好ましい。犠牲層104の厚さは、0.1nm〜10μmの範囲で選択できる。
【0018】
犠牲層104は、エピタキシャル成長法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法またはALD(Atomic Layer Deposition)法により形成することができる。エピタキシャル成長法には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法またはMBE(Molecular Beam Epitaxy)法を利用することができる。犠牲層104をMOCVD法で形成する場合、ソースガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMIn(トリメチルインジウム)、AsH(アルシン)、PH(ホスフィン)等を用いることができる。キャリアガスには水素を用いることができる。ソースガスの複数の水素原子基の一部を塩素原子または炭化水素基で置換した化合物を用いることもできる。反応温度は、300℃から900℃の範囲で、好ましくは400〜800℃の範囲内で適宜選択することができる。ソースガス供給量や反応時間を適宜選択することで犠牲層104の厚さを制御することができる。
【0019】
半導体結晶層106は、後に説明する転写先基板に転写される転写対象層である。半導体結晶層106は、半導体デバイスの活性層等に利用される。半導体結晶層106が半導体結晶層形成基板102上にエピタキシャル成長法等により形成されることで、半導体結晶層106の結晶性が高品位に実現される一方、半導体結晶層106が転写先基板に転写されることで、基板との格子整合等を考慮すること無く、半導体結晶層106を任意の基板上に形成することが可能になる。
【0020】
半導体結晶層106として、III−V族化合物半導体からなる結晶層、IV族半導体からなる結晶層もしくはII−VI族化合物半導体からなる結晶層、または、これら結晶層を複数積層した積層体が挙げられる。III−V族化合物半導体として、GaAs、InGa1−xAs(0<x<1)、InPまたはGaSbが挙げられる。IV族半導体として、GeまたはGeSi1−x(0<x<1)が挙げられる。II−VI族化合物半導体として、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSeまたはCdTe等が挙げられる。IV族半導体がGeSi1−xである場合、GeSi1−xのGe組成比xは、0.9以上であることが好ましい。Ge組成比xを0.9以上とすることにより、Geに近い半導体特性を得ることができる。半導体結晶層106として、上記の結晶層または積層体を用いることにより、半導体結晶層106を高移動度な電界効果トランジスタ、特に高移動度な相補型電界効果トランジスタの活性層に用いることが可能になる。
【0021】
半導体結晶層106の厚さは、0.1nm〜500μmの範囲で適宜選択することができる。半導体結晶層106の厚さは、0.1nm以上1μm未満であることが好ましい。半導体結晶層106を1μm未満とすることにより、たとえば極薄ボディMISFET等の高性能トランジスタの製造に適した複合基板に用いることができる。
【0022】
半導体結晶層106は、エピタキシャル成長法、ALD法により形成することができる。エピタキシャル成長法には、MOCVD法、MBE法を利用することができる。半導体結晶層106がIII−V族化合物半導体からなり、MOCVD法で形成する場合、ソースガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMIn(トリメチルインジウム)、AsH(アルシン)、PH(ホスフィン)等を用いることができる。半導体結晶層106がIV族化合物半導体からなり、MOCVD法で形成する場合、ソースガスとして、GeH(ゲルマン)、SiH(シラン)またはSi(ジシラン)等を用いることができる。キャリアガスには水素を用いることができる。ソースガスの複数の水素原子基の一部を塩素原子または炭化水素基で置換した化合物を用いることもできる。反応温度は、300℃から900℃の範囲で、好ましくは400〜800℃の範囲内で適宜選択することができる。ソースガス供給量や反応時間を適宜選択することで半導体結晶層106の厚さを制御することができる。
【0023】
図2に示すように、転写先基板120の表面側と半導体結晶層形成基板102の半導体結晶層106側とを向かい合わせ、図3に示すように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。
【0024】
転写先基板120は、非可撓性基板126と有機物層128とを有する。非可撓性基板126は、半導体結晶層106が転写される先の基板である。非可撓性基板126は、半導体結晶層106を活性層として利用する電子デバイスが最終的に配置されるターゲット基板であってもよく、半導体結晶層106がターゲット基板に転写されるまでの中間状態における、仮置き基板であってもよい。非可撓性基板126は、有機物または無機物の何れからなるものでもよい。非可撓性基板126として、シリコン基板、SOI基板、ガラス基板、サファイア基板、SiC基板、AlN基板を例示することができる。他に、非可撓性基板126は、セラミックス基板、プラスティック基板等の絶縁体基板、金属等の導電体基板であっても良い。非可撓性基板126にシリコン基板またはSOI基板を用いる場合、既存のシリコンプロセスで用いられる製造装置が利用でき、既知のシリコンプロセスにおける知見を利用して、研究開発および製造の効率を高めることができる。非可撓性基板126は、容易には曲がらない硬い基板であるため、転写する半導体結晶層106が機械的振動等から保護され、半導体結晶層106の結晶品質を高く保つことができる。
【0025】
有機物層128は、半導体結晶層106と非可撓性基板126との接着性を高める接着層として機能させることができる。また、半導体結晶層106の表面に凹凸があっても、ある程度の凹凸は有機物層128に吸収され、非可撓性基板126と良好に接合される。有機物層128として、ポリイミド膜またはレジスト膜を例示することができる。この場合、有機物層128はスピンコート法等の塗布法により形成することができる。有機物層128の厚さは、0.1nm〜100μmの範囲とすることができる。
【0026】
半導体結晶層形成基板102上の半導体結晶層106の表面は、半導体結晶層形成基板102に形成された層の表面であって転写先基板120または転写先基板120に形成された層に接することとなる「第1表面112」の一例である。また、転写先基板120の有機物層128の表面は、転写先基板120または転写先基板120に形成された層の表面であって第1表面112に接することとなる「第2表面122」の一例である。貼り合わせにおいて、第1表面112である半導体結晶層106の表面と、第2表面122である、有機物層128の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。
【0027】
次に、図4に示すように、半導体結晶層形成基板102および転写先基板120の全部または一部(好ましくは全部)をエッチング液に浸漬して犠牲層104をエッチングする。犠牲層104のエッチングにより、図5に示すように、半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを分離する。
【0028】
なお、犠牲層104は、選択的にエッチングすることができる。ここで「選択的にエッチングする」とは、犠牲層104と同様にエッチング液に晒される他の部材、たとえば半導体結晶層106も犠牲層104と同様にエッチングされるものの、犠牲層104のエッチング速度が他の部材のエッチング速度より高くなるようエッチング液の材料その他の条件を選択し、実質的に犠牲層104だけを「選択的に」エッチングすることをいう。犠牲層104がAlAs層である場合、エッチング液142として、HCl、HF、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、アンモニア、水酸化ナトリウムの水溶液または水を例示することができる。エッチング中の温度は、10〜90℃の範囲で制御することが好ましい。エッチング時間は、1分〜200時間の範囲で適宜制御することができる。
【0029】
なお、エッチング液に超音波を印加しつつ犠牲層104をエッチングすることができる。超音波の印加により、エッチング速度を増すことができる。また、エッチング処理中に紫外線を照射したり、エッチング液を撹拌したりしてもよい。
【0030】
以上のようにして、犠牲層104がエッチングにより除去されると、図5に示すように、半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とが分離する。これにより、半導体結晶層106が転写先基板120に転写され、転写先基板120上に半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
【0031】
上記した実施形態1の複合基板の製造方法では、非可撓性基板126上に有機物層128を有する転写先基板120に半導体結晶層106が転写できる。
【0032】
(実施形態2)
図6〜図8は、実施形態2の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。実施形態2では、実施形態1の方法で製造した、非可撓性基板126上に有機物層128を有する転写先基板120の上に半導体結晶層106を転写した複合基板を用い、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板150に転写し、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板の製造方法について説明する。
【0033】
図6に示すように、接着層170を有する第2の転写先基板150と半導体結晶層106を有する転写先基板120とを貼り合わせる。貼り合わせは、転写先基板120の半導体結晶層106と第2の転写先基板150の接着層170とが向かい合うように行う。
【0034】
第2の転写先基板150は、半導体結晶層106が転写される先の基板である。第2の転写先基板150は、最終的なターゲット基板であってもよく、仮置き基板であってもよい。第2の転写先基板150は、有機物または無機物の何れからなるものでもよい。第2の転写先基板150として、シリコン基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、ガラス基板、サファイア基板、SiC基板、AlN基板を例示することができる。他に、第2の転写先基板150は、セラミックス基板、プラスティック基板等の絶縁体基板、金属等の導電体基板であっても良い。第2の転写先基板150にシリコン基板またはSOI基板を用いる場合、既存のシリコンプロセスで用いられる製造装置が利用でき、既知のシリコンプロセスにおける知見を利用して、研究開発および製造の効率を高めることができる。第2の転写先基板150が、シリコン基板等、容易には曲がらない硬い基板である場合、転写する半導体結晶層106が機械的振動等から保護され、半導体結晶層106の結晶品質を高く保つことができる。
【0035】
接着層170は、半導体結晶層106と第2の転写先基板150との接着性を高める層であり、有機物または無機物の何れからなるものであっても良い。なお、接着層170は、必須ではない。接着層170が有機物である場合、半導体結晶層106の表面に凹凸があっても、ある程度の凹凸は接着層170に吸収され、第2の転写先基板150と良好に接合される。一方接着層170が無機物である場合、後の工程に数百℃程度の高温工程があっても、安定的に取り扱うことが可能になる。接着層170が無機物である場合、後に作成されるデバイスの絶縁層等に流用して、プロセスを簡略化することが可能になる。
【0036】
接着層170が有機物である場合、接着層170として、ポリイミド膜またはレジスト膜を例示することができる。この場合、接着層170はスピンコート法等の塗布法により形成することができる。接着層170が無機物である場合、接着層170として、Al、AlN、Ta、ZrO、HfO、SiO(例えばSiO)、SiN(例えばSi)およびSiOのうちの少なくとも1からなる層、またはこれらの中から選ばれた少なくとも2層の積層を例示することができる。この場合、接着層170は、ALD法、熱酸化法、蒸着法、CVD法、スパッタ法により形成することができる。接着層170の厚さは、0.1nm〜100μmの範囲とすることができる。
【0037】
図7に示すように、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を支配する有機物層128の物性を変化させる。有機物層128の物性変化は、たとえば有機溶剤により有機物層128を膨潤させることにより行う。有機物層128を膨潤させることで、転写先基板120(非可撓性基板126)と半導体結晶層106との接着性が低下する。
【0038】
以上のようにして、転写先基板120(非可撓性基板126)と半導体結晶層106との接着力が低下すると、図8に示すように、半導体結晶層106を第2の転写先基板150側に残した状態で、転写先基板120(非可撓性基板126)と第2の転写先基板150とを分離できる。これにより、半導体結晶層106が第2の転写先基板150に転写され、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
【0039】
上記した実施形態2の複合基板の製造方法によれば、転写先基板120と第2の転写先基板150とを張り合わせた後に、転写先基板120(非可撓性基板126)と半導体結晶層106との接着性を低下する物性変化を発生させるため、転写段階に応じた接着力の制御が可能となり、複数段階に渡る転写工程を安定的に実施できるようになる。
【0040】
なお、上記した実施形態では、転写先基板120(非可撓性基板126)と半導体結晶層106との間に接着層である有機物層128を有する場合を説明したが、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を支配する界面の物性を変化させることもできる。界面物性の変化は、たとえば、転写先基板120が有機物である場合、有機溶剤による転写先基板120の膨潤等を例示することができる。また、実施形態2では転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を低下させるよう物性を変化させたが、半導体結晶層106と第2の転写先基板150との接着性を支配する界面、つまり半導体結晶層106と第2の転写先基板150と接合界面の物性を、接着性が高くなるように変化させても良い。半導体結晶層106と第2の転写先基板150との間に接着層を有する場合には、当該接着層の物性を変化させてもよい。物性の変化は、界面における接着性の変化であっても良い。
【0041】
接着性を増加させる物性変化の例として、界面の活性化、接着性を低下させる物性変化の例として、有機物の有機溶剤による膨潤、有機物の熱または紫外線による硬化等を例示することができる。
【0042】
(実施形態3)
図9〜図11は、実施形態3の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。本実施形態3では、半導体結晶層106と転写先基板120との間に接着層160を形成する場合の例を説明する。実施形態3の製造方法は、多くの場合に実施形態1の製造方法と共通するので、主に異なる部分について説明し、共通する部分の説明は省略する。
【0043】
図9に示すように、半導体結晶層形成基板102に犠牲層104および半導体結晶層106を形成した後、さらに接着層160を形成する。接着層160は、半導体結晶層106と転写先基板120との接着性を高める層であり、有機物からなる。接着層160が有機物であるため、半導体結晶層106の表面に凹凸があっても、ある程度の凹凸は接着層160に吸収され、転写先基板120と良好に接合されるので、半導体結晶層106に要求される表面平坦性のレベルは低くて良い。
【0044】
接着層160として、ポリイミド膜またはレジスト膜を例示することができる。この場合、接着層160はスピンコート法等の塗布法により形成することができる。接着層160の厚さは、0.1nm〜100μmの範囲とすることができる。転写先基板120は、実施形態1で説明した非可撓性基板126と同様の基板であることが好ましい。本実施形態3では、転写先基板120として非可撓性基板を用いた場合であっても、接着層160として有機物からなる層を用いるので、実施形態1と同様に、半導体結晶層形成基板102と転写先基板120とを良好に接着することができる。
【0045】
図10に示すように、転写先基板120の表面側と半導体結晶層形成基板102の半導体結晶層106側とを向かい合わせ、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。ここで、接着層160の表面は、半導体結晶層形成基板102に形成された層の表面であって転写先基板120または転写先基板120に形成された層に接することとなる「第1表面112」の一例である。転写先基板120の表面は、転写先基板120または転写先基板120に形成された層の表面であって第1表面112に接することとなる「第2表面122」の一例である。貼り合わせにおいて、第1表面112である接着層160の表面と、第2表面122である、転写先基板120の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。貼り合わせについては、実施形態1と同様である。
【0046】
その後、犠牲層104をエッチングし、図11に示すように、接着層160および半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを分離する。分離については、実施形態1と同様である。これにより、接着層160および半導体結晶層106が転写先基板120に転写され、転写先基板120上に接着層160および半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
【0047】
上記した実施形態3の複合基板の製造方法によれば、接着層160を有するので、転写先基板120と半導体結晶層106との接着がより確実になる。また、有機物である接着層160により半導体結晶層106表面の凹凸が吸収されるので、半導体結晶層106に要求される平坦性の水準が低くなる。
【0048】
なお、実施形態3の複合基板を用いて、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板150に転写できることは、実施形態2と同様である。この場合、接着層160は、半導体結晶層106を第2の転写先基板150に転写する際の犠牲層に用いることができる。
【0049】
また、半導体結晶層形成基板102上に犠牲層104および半導体結晶層106を形成した後、半導体結晶層形成基板102と転写先基板120とを貼り合わせる前に、半導体結晶層106の一部を活性領域とする電子デバイスを、半導体結晶層106に形成してもよい。この場合、半導体結晶層106は、そこに電子デバイスを有した状態で転写されることとなる。半導体結晶層106は、転写の度に表裏が逆転するので、当該方法を用いれば、半導体結晶層106の表裏両面に電子デバイスを作成することができる。
【0050】
(実施形態4)
図12〜図18は、実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図または平面図である。本実施形態4の製造方法は、まず、実施形態1の図1に示すように、半導体結晶層形成基板102の上に犠牲層104および半導体結晶層106を、犠牲層104、半導体結晶層106の順に形成する。半導体結晶層形成基板102、犠牲層104および半導体結晶層106については、実施形態1において説明したものと同様である。
【0051】
次に、図12に示すように、犠牲層104の一部を露出するように半導体結晶層106をエッチングし、半導体結晶層106を複数の分割体108に分割する。このエッチングにより分割体108と隣接する分割体108との間に溝110が形成される。ここで、「犠牲層104の一部を露出するように」とは、溝110が形成されるエッチング領域において、犠牲層104が実質的に露出していると言える以下のような場合を含む。すなわち、溝110の底部において犠牲層104が完全にエッチングされ、溝110の底部に半導体結晶層形成基板102が露出され、犠牲層104の断面が溝110の側面の一部として露出されるような場合、溝110が形成される領域において犠牲層104の途中までエッチングされ、溝110の底面に犠牲層104が露出されるような場合、溝110の底部の一部に半導体結晶層106が残存し、溝110の底部において犠牲層104が一部露出しているような場合、あるいは、溝110の底部全体に極薄い半導体結晶層106が残存するものの、残存する半導体結晶層106の厚さはエッチング液が浸透する程度に薄く、実質的に犠牲層104が露出していると言える場合、を含む。
【0052】
溝110を形成するエッチングには、ドライ方式またはウェット方式の何れのエッチング方式も採用できる。ドライエッチングの場合、エッチングガスには、SF、CH4−x(x=1〜4の整数)等のハロゲンガスが利用できる。ウェットエッチングの場合、エッチング液として、HCl、HF、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、アンモニア、水酸化ナトリウムの水溶液が利用できる。エッチングのマスクには、エッチング選択比を有する適当な有機物または無機物が利用でき、マスクをパターニングすることにより、溝110のパターンを任意に形成できる。なお、溝110を形成するエッチングにおいて、半導体結晶層形成基板102をエッチングストッパに利用することが可能であるが、半導体結晶層形成基板102を再利用することを考慮すれば、犠牲層104の表面または途中でエッチングを停止することが望ましい。
【0053】
溝110を形成することにより、犠牲層104のエッチングにおいて、エッチング液が溝110から供給され、溝110を多く形成することで、犠牲層104のエッチングが必要な距離を短くし、犠牲層104の除去に必要な時間を短縮できる。図13は、半導体結晶層形成基板102を上方から見た平面図であり、溝110のパターンを示す。図13に示す溝110のパターンは、複数の直線状の溝110を平行に配列したストライプである。隣接する溝110との間隔は、犠牲層104の除去に必要な時間を短縮する観点から、半導体結晶層106(分割体108)に必要な大きさの条件を満たす限り、狭いことが望ましい。溝110の幅は、平行に配列された隣の溝110までの距離に対し、0.00001〜1倍の範囲内とすることが好ましい。なお、溝110のパターンは、図14に示すように、2つのストライプを直角に交わるよう重ねた格子縞とすることもできる。犠牲層104の除去に必要な時間を短縮する観点から、むしろ図14に示すような格子縞とする方が好ましい。溝110のパターンを格子縞とする場合、2つのストライプの交差角度を直角にする必然性はなく、0度および180度を除く任意の角度で交差させることができる。また、格子縞は部分的な格子縞としてもよい。溝110の平面パターンは、さらに、任意の形状であってもよい。つまり溝110によって分離される半導体結晶層106の平面形状は、短冊状、4角形、方形等に限られず、任意の形状であってもよい。
【0054】
次に、図15に示すように、転写先基板120の表面側と半導体結晶層形成基板102の半導体結晶層106側とを向かい合わせ、図16に示すように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。当該貼り合わせにより、溝110の内壁と有機物層128の表面とによって空洞140が形成される。
【0055】
転写先基板120は、非可撓性基板126と有機物層128とを有する。非可撓性基板126および有機物層128については、実施形態1の場合と同じである。
【0056】
半導体結晶層形成基板102上の、溝110以外の部分の半導体結晶層106の表面は、半導体結晶層形成基板102に形成された層の表面であって転写先基板120または転写先基板120に形成された層に接することとなる「第1表面112」の一例である。また、有機物層128の表面は、転写先基板120または転写先基板120に形成された層の表面であって第1表面112に接することとなる「第2表面122」の一例である。貼り合わせにおいて、第1表面112である半導体結晶層106の表面と、第2表面122である、有機物層128の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。
【0057】
次に、図17に示すように、空洞140にエッチング液142を供給する。空洞140にエッチング液142を供給する方法として、毛細管現象によりエッチング液142を空洞140内に供給する方法、空洞140の一端をエッチング液142に浸漬し、他端からエッチング液142を吸引することで強制的にエッチング液142を空洞140内に供給する方法、空洞140の一端が開放され他端が閉塞されている場合に、転写先基板120および半導体結晶層形成基板102を減圧状態に置き、空洞140の開放されている一端をエッチング液142に浸漬した後、転写先基板120および半導体結晶層形成基板102を大気圧状態にすることで、強制的にエッチング液142を空洞140内に供給する方法、を挙げることができる。
【0058】
なお、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる前に、溝110の内部を親水化してもよい。溝110の内部を親水化することで、エッチング液の空洞140内への供給がスムーズになる。溝110の内部を親水化する方法として、溝110の内部をHClガスで暴露する方法、溝110の内部に親水化イオン(たとえば水素イオン)をイオン注入する方法等を例示することができる。
【0059】
空洞140に供給されたエッチング液142により、犠牲層104がエッチングされる。犠牲層104のエッチングは、選択的であることが好ましい。選択的の意義は前記したとおりである。犠牲層104がAlAs層である場合、エッチング液142として、HCl、HF、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、アンモニア、水酸化ナトリウムの水溶液または水を例示することができる。エッチング中の温度は、10〜90℃の範囲で制御することが好ましい。エッチング時間は、1分〜200時間の範囲で適宜制御することができる。
【0060】
なお、犠牲層104をエッチングする間、エッチング液142で満たされた空洞140内に超音波を印加しつつ犠牲層104をエッチングすることができる。超音波の印加により、エッチング速度を増すことができる。また、エッチング処理中に紫外線を照射したり、エッチング液を撹拌したりしてもよい。
【0061】
以上のようにして、犠牲層104がエッチングにより除去されると、図18に示すように、半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とが分離する。これにより、半導体結晶層106が転写先基板120に転写され、転写先基板120上に半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
【0062】
上記した実施形態4の複合基板の製造方法によれば、非可撓性基板126上に有機物層128を有する転写先基板120に半導体結晶層106が転写できる。また、実施形態4の複合基板の製造方法では、溝110を形成するので、空洞140が形成され、犠牲層104のエッチングの際に、空洞140を経由してエッチング液が供給される。よって、転写先基板120が非可撓性基板126を有するものであっても、犠牲層104が迅速にエッチングされ除去される。このため、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを速やかに分離することができ、製造のスループットを向上することができる。
【0063】
(実施形態5)
図19〜図21は、実施形態5の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。実施形態5では、実施形態4の方法で製造した、転写先基板120上に半導体結晶層106を有する複合基板を用い、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板150に転写し、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板の製造方法について説明する。
【0064】
図19に示すように、接着層170を有する第2の転写先基板150と半導体結晶層106を有する転写先基板120とを貼り合わせる。貼り合わせは、転写先基板120の半導体結晶層106と第2の転写先基板150の接着層170とが向かい合うように行う。第2の転写先基板150および接着層170は、実施形態2と同様である。
【0065】
図20に示すように、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を支配する有機物層128の物性を変化させる。有機物層128の物性変化は、たとえば有機溶剤により有機物層128を膨潤させることにより行う。有機物層128を膨潤させることで、転写先基板120(非可撓性基板126)と半導体結晶層106との接着性が低下する。
【0066】
以上のようにして、転写先基板120(非可撓性基板126)と半導体結晶層106との接着力が低下すると、図21に示すように、半導体結晶層106を第2の転写先基板150側に残した状態で、転写先基板120(非可撓性基板126)と第2の転写先基板150とを分離できる。これにより、半導体結晶層106が第2の転写先基板150に転写され、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
【0067】
上記した実施形態5の複合基板の製造方法によれば、転写先基板120と第2の転写先基板150とを張り合わせた後に、転写先基板120(非可撓性基板126)と半導体結晶層106との接着性を低下する物性変化を発生させるため、転写段階に応じた接着力の制御が可能となり、複数段階に渡る転写工程を安定的に実施できるようになる。
【0068】
なお、半導体結晶層106と第2の転写先基板150との接着性を支配する界面、つまり半導体結晶層106と第2の転写先基板150と接合界面の物性を、接着性が高くなるように変化させても良いこと、半導体結晶層106と第2の転写先基板150との間に接着層を有する場合には、当該接着層の物性を変化させてもよいこと、物性の変化は、界面における接着性の変化の他、エッチング耐性を変化させるものであっても良いこと、につていは、実施形態2と同様である。
【0069】
(実施形態6)
図22〜図25は、実施形態6の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。本実施形態6では、半導体結晶層106と転写先基板120との間に有機物からなる接着層160を形成する場合の例を説明する。実施形態6の製造方法は、多くの場合に実施形態4の製造方法と共通するので、主に異なる部分について説明し、共通する部分の説明は省略する。
【0070】
図22に示すように、半導体結晶層形成基板102に犠牲層104および半導体結晶層106を形成した後、さらに接着層160を形成する。接着層160は、半導体結晶層106と転写先基板120との接着性を高める層であり、有機物からなる。接着層160が有機物であるため、半導体結晶層106の表面に凹凸があっても、ある程度の凹凸は接着層160に吸収され、転写先基板120と良好に接合される。接着層160として、ポリイミド膜またはレジスト膜を例示することができる。接着層160はスピンコート法等の塗布法により形成することができる。接着層160の厚さは、0.1nm〜100μmの範囲とすることができる。
【0071】
図23に示すように、犠牲層104の一部を露出するように接着層160および半導体結晶層106をエッチングし、半導体結晶層106を複数の分割体108に分割する。このエッチングにより分割体108と隣接する分割体108との間に溝110が形成される。溝110の形成については、実施形態4と同様である。
【0072】
図24に示すように、転写先基板120の表面側と半導体結晶層形成基板102の半導体結晶層106側とを向かい合わせ、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。ここで、溝110以外の部分の接着層160の表面は、半導体結晶層形成基板102に形成された層の表面であって転写先基板120または転写先基板120に形成された層に接することとなる「第1表面112」の一例である。転写先基板120の表面は、転写先基板120または転写先基板120に形成された層の表面であって第1表面112に接することとなる「第2表面122」の一例である。貼り合わせにおいて、第1表面112である接着層160の表面と、第2表面122である、転写先基板120の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。貼り合わせについては、実施形態4と同様である。なお、転写先基板120は、実施形態4の場合と異なり、有機物層128は必要でない。実施形態6においては、任意の転写先基板120を用いることができる。
【0073】
その後、犠牲層104をエッチングし、図25に示すように、接着層160および半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを分離する。分離については、実施形態4と同様である。これにより、接着層160および半導体結晶層106が転写先基板120に転写され、転写先基板120上に接着層160および半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
【0074】
上記した実施形態6の複合基板の製造方法によれば、有機物からなる接着層160を有するので、転写先基板120と半導体結晶層106との接着がより確実になるとともに、接着層160により半導体結晶層106表面の凹凸が吸収される。これにより、半導体結晶層106に要求される平坦性の水準を低くすることができる。
【0075】
なお、実施形態6の複合基板を用いて、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板150に転写できることは、実施形態5と同様である。この場合、接着層160は、半導体結晶層106を第2の転写先基板150に転写する際の犠牲層に用いることができる。
【0076】
また、半導体結晶層形成基板102上に犠牲層104および半導体結晶層106を形成した後、半導体結晶層形成基板102と転写先基板120とを貼り合わせる前に、半導体結晶層106の一部を活性領域とする電子デバイスを、半導体結晶層106に形成してもよいことは、実施形態3と同様である。
【0077】
(参考例)
半導体結晶層形成基板102としてGaAs基板を用い、当該GaAs基板の上に、AlAs結晶層およびGe結晶層を、低圧CVD法によるエピタキシャル結晶成長法を用いて形成した。AlAs結晶層は、犠牲層104に対応し、Ge結晶層は半導体結晶層106に対応する。GaAs基板の大きさは、10mm×10mmとし、AlAs結晶層およびGe結晶層は、GaAs基板の全面に形成した。AlAs結晶層およびGe結晶層の厚さは、各々150nmおよび4.8μmとした。
【0078】
図26および図27は、上記の通り作製したGaAs基板上のAlAs結晶層およびGe結晶層の断面を観察したSEM写真であり、図27は、AlAs結晶層の部分を拡大して観察したSEM写真である。図28は、当該GaAs基板上のAlAs結晶層およびGe結晶層の(004)面におけるX線ロッキングカーブ測定の結果を示したグラフである。図28において、AlAs結晶層、Ge結晶層およびGaAs基板に由来する明瞭なピークが読み取れる。Ge結晶層に由来するピークの半値幅は25.0 (arc sec.)であり、Ge結晶層の結晶品質が非常に高いことが分かる。
【0079】
図29は、AlAs結晶層およびGe結晶層を形成したGaAs基板を49%HF溶液に浸漬し、室温で5時間経過した後の様子を示した写真である。49%HF溶液によりAlAs結晶層が溶解され、Ge結晶層がGaAs基板から剥離した。剥離したGe結晶層はHF溶液面に浮いていることが分かる。すなわち、10mm×10mm程度のダイサイズの大きさを有するGe結晶層であっても、150nm厚さのAlAs結晶層を犠牲層104として用いることにより、49%HF溶液により綺麗に剥離することが可能であり、エピタキシャルリフトオフ法(ELO法)の有用性が確認できた。なお、剥離したGe結晶層は壊れやすいので、Ge結晶層を他の基板に転写する場合には、Ge結晶層を転写基板に接着した後にエピタキシャルリフトオフ法を適用することが好ましい。ただし、図29のように、HF溶液にGe結晶層を浮揚させ、浮揚したGe結晶層を掬いとって他の基板に転写する結晶層形成法を排除するものではない。
【0080】
GaAs基板の上にAlAs結晶層およびGe結晶層を形成した後、Ge結晶層側にフレキシブルなプラスチック基板(転写先基板120)を接着し、プラスチック基板を接着した後のプラスチック基板/Ge結晶層/AlAs結晶層/GaAs基板を、49%HF溶液に浸漬した。浸漬した状態を室温にて5時間維持し、AlAs結晶層を溶解させ、プラスチック基板/Ge結晶層と、GaAs基板とを分離した。
【0081】
図30は、プラスチック基板に接着されているGe結晶層(左側の写真)と、Ge結晶層を分離した後のGaAs基板(右側の写真)を示す。上記した方法(エピタキシャルリフトオフ法:ELO法)を用いて、10mm×10mm程度のダイサイズの大きさを有する良質なGe結晶層が、プラスチック基板上に形成できることが分かった。なお、結晶性の犠牲層(ここではAlAs結晶層)のエッチング液(ここではHF溶液)に不溶である限り、基板材料に限定はない。よって、任意の基板上に結晶性が良好なGe結晶層が形成できるといえる。
【0082】
(実施例1)
本実施例1では、100μm×100μmより小さいデバイスサイズのGe結晶層をELO法により形成する例を説明する。まず、図31に示すように、半導体結晶層形成基板102の上に、犠牲層104および半導体結晶層106を順次エピタキシャル結晶成長法により形成し、半導体結晶層106を、50μm×50μmの大きさにパターニングした。半導体結晶層形成基板102としてGaAs基板を用い、犠牲層104としてAlAs結晶層を用いた。AlAs結晶層の厚さは150nmとした。半導体結晶層106としてGe結晶層を適用した。Ge結晶層のパターニングには反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いた。続けて純水に晒すことによりAlAs結晶層をパターニングした。
【0083】
非可撓性基板126としてシリコン基板を用い、有機物層128としてシリコン基板上にポリイミド膜をスピンコート法により形成した。ポリイミド膜は、接着層としても機能する。パターニングしたGe結晶層(半導体結晶層106)とポリイミド膜(有機物層128)とが接するようにGaAs基板(半導体結晶層形成基板102)とシリコン基板(転写先基板120)とを貼り合わせ、図32に示すように、49%HF溶液によってAlAs結晶層(犠牲層104)を溶解し、Ge結晶層とGaAs基板とを分離した。なお、49%HF溶液によるAlAs結晶層の溶解(Ge結晶層とGaAs基板との分離)は10分以下で達成された。10分以下のエッチング時間は、十分に実用的な水準であると思われる。
【0084】
図33は、パターニングされたGe結晶層が、ポリイミド膜を介してシリコン基板上に転写された後の状態を観察した光学顕微鏡写真である。図33のGe結晶層は、50μm×50μmの大きさのデバイス領域を有し、当該デバイス領域の4隅が、他のGe結晶層領域と接する平面形状を呈している。すなわち、図33の4隅のような括れた部分においても、Ge結晶層が破壊されることなく、精密なパターン形状を維持したまま転写できることが分かる。ELO法を用いれば、Ge結晶層をパターニングした後であっても、当該パターンを維持した状態で、転写先基板120上にGe結晶層が転写できる。
【0085】
ところで、転写したGe結晶層は、ホール素子等の半導体デバイスに加工できる。図34は、図33のGe結晶層をホール素子に適用した例を示す。Ge結晶層は、50μm×50μmの大きさのデバイス領域402を有し、デバイス領域402の4隅には電極領域404を形成する。デバイス領域402と電極領域404は狭い線幅の接続部406で接続される。互いに対角の位置の関係にある2つの電極対のうち一方の電極対の各電極408に電流を流し、他方の電極対の各電極410に生じる電圧を計測して磁場Bの強さが測定できる。
【0086】
(実施例2)
本実施例2では、Ge結晶層にデバイスを形成した後、ELO法を用いてGe結晶層をガラス基板上に転写する例を説明する。図35に示すように、半導体結晶層形成基板102であるGaAs基板の上に、犠牲層104であるAlAs結晶層および半導体結晶層106であるGe結晶層をエピタキシャル結晶成長法により形成した。Ge結晶層に、Pチャネル型MOSFET、ダイオード、抵抗等の素子302を形成し、接着層304を介して転写用のシリコン基板306を貼り合せた。なお、シリコン基板306は転写用の中間基板である。
【0087】
図36に示すように、HF溶液によりAlAs層(犠牲層104)を溶解し、Ge結晶層とGaAs基板とを分離した。ベース基板310としてガラス基板を適用し、図37に示すように、ガラス基板(ベース基板310)とGe結晶層(半導体結晶層106)とをファンデルワールス力を利用して接着した。さらに、図38に示すように、接着層304を溶解または剥離し、Ge結晶層から転写用のシリコン基板306を分離した。このようにして、ターゲット基板であるベース基板310に、中間基板であるシリコン基板306を経由して、デバイスを形成したGe結晶層を転写により形成した。
【0088】
図39は、ガラス基板上に転写した後の、Ge結晶層に形成した素子302の一つであるPチャネル型MOSFETのIDS−V特性を示す。Pチャネル型MOSFETのゲート長は4μmである。図39においてVDSが−1Vの場合と−50mVの場合を示している。図39が示すように、ソースドレイン間電流のオンオフ比は2桁以上であり、ELO法を適用した後であっても素子が破壊されず、正常に動作していることがわかる。
【0089】
上記した実施形態および実施例では、主に製造方法について説明したが、本発明は、上記製造方法により製造された複合基板としても把握できる。すなわち、本発明は、有機物からなる可撓性基板(転写先基板120)と、可撓性基板に接して配置された単結晶の半導体結晶層106と、を有する複合基板として把握できる。または、非可撓性基板126と、単結晶の半導体結晶層106と、非可撓性基板126と半導体結晶層106との間に位置する有機物層128と、を有する複合基板として把握できる。そして、半導体結晶層106が単結晶Ge層である場合、単結晶Ge層のX線回折法による回折スペクトル半値幅は、40arcsec以下であることを特徴とするものであってもよい。そして、単結晶Ge層には、単結晶Ge層の一部を活性領域とする電子デバイスが形成されていてもよい。電子デバイスとしてホール素子を例示することができる。
【0090】
上記した実施の形態および実施例では、半導体結晶層106が最終的に転写される基板について特に言及していないが、当該基板をシリコンウェハ等の半導体基板、SOI基板または絶縁体基板上に半導体層が形成されたものとし、当該半導体基板、SOI層または半導体層に予めトランジスタ等電子デバイスが形成されていてもよい。つまり、すでに電子デバイスが形成された基板上に、上記した方法を用いて半導体結晶層106を転写により形成できる。これにより、材料組成等が大きく異なる半導体デバイスをモノリシックに形成することができるようになる。特に、半導体結晶層106に電子デバイスを予め形成した後に、前記したような予め電子デバイスが形成された基板上に転写により半導体結晶層106を形成すると、製造プロセスが大きく異なる異種材料からなる電子デバイスを容易にモノリシックに形成することができるようになる。
【符号の説明】
【0091】
102…半導体結晶層形成基板、104…犠牲層、106…半導体結晶層、108…分割体、110…溝、112…第1表面、120…転写先基板、122…第2表面、126…非可撓性基板、128…有機物層、140…空洞、142…エッチング液、150…第2の転写先基板、160…接着層、170…接着層、302…素子、304…接着層、306…転写用のシリコン基板、310…ベース基板、402…デバイス領域、404…電極領域、406…接続部、408…電極、410…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体結晶層形成基板の上に犠牲層および半導体結晶層を、前記犠牲層、前記半導体結晶層の順に形成するステップと、
前記半導体結晶層形成基板に形成された層の表面であって転写先基板または前記転写先基板に形成された層に接することとなる第1表面と、前記転写先基板または前記転写先基板に形成された層の表面であって前記第1表面に接することとなる第2表面と、が向かい合うように、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップと、
前記半導体結晶層形成基板および前記転写先基板の全部または一部をエッチング液に浸漬して前記犠牲層をエッチングし、前記半導体結晶層を前記転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、
を有し、
前記転写先基板が、非可撓性基板と有機物層とを有し、前記有機物層の表面が、前記第2表面である
前記半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法。
【請求項2】
半導体結晶層形成基板の上に犠牲層および半導体結晶層を、前記犠牲層、前記半導体結晶層の順に形成するステップと、
前記半導体結晶層の上に有機物からなる接着層を形成するステップと、
前記半導体結晶層形成基板に形成された層の表面であって転写先基板または前記転写先基板に形成された層に接することとなる第1表面である前記接着層と、前記転写先基板または前記転写先基板に形成された層の表面であって前記第1表面に接することとなる第2表面と、が向かい合うように、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップと、
前記半導体結晶層形成基板および前記転写先基板の全部または一部をエッチング液に浸漬して前記犠牲層をエッチングし、前記半導体結晶層を前記転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、
を有する前記半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法。
【請求項3】
前記半導体結晶層が、GeSi1−x(0<x≦1)からなる
請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記半導体結晶層の厚さが、0.1nm以上1μm未満である
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記犠牲層の一部が露出するように少なくとも前記半導体結晶層をエッチングし、前記半導体結晶層を複数の分割体に分割するステップ、をさらに有する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップの後に、前記転写先基板の前記半導体結晶層側と第2の転写先基板の表面側とが向かい合うように、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを貼り合わせるステップと、
前記転写先基板と前記半導体結晶層との間に位置する層の物性、
前記転写先基板と前記半導体結晶層との接着性を支配する界面の物性、
前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との間に位置する層の物性、および、
前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との接着性を支配する界面の物性、から選択された1以上の物性を変化させるステップと、
前記半導体結晶層を前記第2の転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを分離するステップと、
をさらに有する請求項1から請求項5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記物性を変化させるステップが、貼り合わされた前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを有機溶剤に浸漬し、前記転写先基板側にある有機物を膨潤させるステップ、または、前記転写先基板側にある有機物を熱若しくは紫外線により硬化させるステップである
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記半導体結晶層の一部を活性領域とする電子デバイスを前記半導体結晶層に形成するステップをさらに有する
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
非可撓性基板と、
単結晶の半導体結晶層と、
前記非可撓性基板と前記半導体結晶層との間に位置する有機物層と、
を有する複合基板。
【請求項10】
前記半導体結晶層が、GeSi1−x(0<x≦1)からなる
請求項9に記載の複合基板。
【請求項11】
前記半導体結晶層の厚さが、0.1nm以上1μm未満である
請求項9または請求項10に記載の複合基板。
【請求項12】
前記半導体結晶層が、単結晶Ge層であり、
前記単結晶Ge層のX線回折法による回折スペクトル半値幅が、40arcsec以下である
請求項10または請求項11に記載の複合基板。
【請求項13】
前記単結晶Ge層には、前記単結晶Ge層の一部を活性領域とする電子デバイスが形成されている
請求項12に記載の複合基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図28】
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【図31】
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【図32】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図26】
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【図27】
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【図29】
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【図30】
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【図33】
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【公開番号】特開2013−80896(P2013−80896A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126621(P2012−126621)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】