説明

複合弁

【課題】2系統のガス供給路が設けられる機器の該ガス供給路に設けられる複合弁1として、コストの低減化と省スペース化とを図るとともに、設置作業の労力を軽減し、かつ、安全性を向上できるようにする。
【解決手段】本体部2内に、一端がガス流入口3に接続されかつ他端が第1ガス流出口4に接続された第1ガス流路8と、一端が第1ガス流路8の中間部に接続されかつ他端が第2ガス流出口5に接続された第2ガス流路9とを設け、第1ガス流路8におけるガス流入口3と第2ガス流路9の接続部との間に、第1開閉弁11を設け、第1ガス流路8における第1ガス流出口4と第2ガス流路9の接続部との間に、第2開閉弁12と第1圧力調整弁15とを設け、第2ガス流路9に、第3開閉弁13と第2圧力調整弁16とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にガス流路が設けられた本体部と、上記ガス流路の開閉を行う開閉弁と、上記ガス流路に設けられた圧力調整弁とを備えた複合弁に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボイラーやバーナー等の燃焼機器にガスを供給する場合、そのガス供給路には、ノーマルクローズ方式の電磁弁等で構成された2つの開閉弁(安全遮断弁とも呼ばれる)と、ガバナや均圧弁等といった1つの圧力調整弁とが直列に配設される。開閉弁は、安全上の観点から2つ設けられる。そして、これら3つの弁を設置する作業の簡略化等のために、3つの弁を複合弁としてユニット化したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−158754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスが供給される機器によっては、2系統のガス供給路が設けられる場合がある。例えば燃焼機器において、機器を暖機するための暖機用(又は種火用)のガス供給路と、通常燃焼用のガス供給路とが設けられる場合がある。これら2系統のガス供給路は、1つのガス供給路の途中から互いに分岐したものであり、それらの下流端は、機器における互いに異なる箇所に接続される。このような場合、上記各ガス供給路(分岐後)に上記複合弁をそれぞれ設置することになる。
【0005】
しかし、上記各ガス供給路に上記複合弁をそれぞれ設置する場合には、合計6つの弁を使用することになり、コストアップを招くとともに、大きな設置スペースが必要になる。また、複合弁と配管との接続箇所が合計4箇所あるとともに、複合弁よりも上流側の配管が分岐配管となるため、配管自体のコストや接続作業の手間がかかるとともに、複合弁と配管との接続箇所が多くなる分だけ、ガス漏洩の可能性が増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2系統のガス供給路が設けられる機器の該ガス供給路に設けられる複合弁として、コストの低減化と省スペース化とを図るとともに、設置作業の労力を軽減し、かつ、安全性を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、内部にガス流路が設けられた本体部と、上記ガス流路の開閉を行う開閉弁と、上記ガス流路に設けられた圧力調整弁とを備えた複合弁を対象として、上記ガス流路は、一端が、上記本体部の表面に設けられたガス流入口に接続されかつ他端が、上記本体部の表面に設けられた第1ガス流出口に接続された第1ガス流路と、一端が、上記第1ガス流路の中間部に接続されかつ他端が、上記本体部の表面に設けられた第2ガス流出口に接続された第2ガス流路とで構成され、上記開閉弁は、上記第1ガス流路における上記ガス流入口と上記第2ガス流路の接続部との間に設けられた第1開閉弁と、上記第1ガス流路における上記第1ガス流出口と上記第2ガス流路の接続部との間に設けられた第2開閉弁と、上記第2ガス流路に設けられた第3開閉弁とで構成され、上記圧力調整弁は、上記第1ガス流路における上記第1ガス流出口と上記第2ガス流路の接続部との間に設けられた第1圧力調整弁と、上記第2ガス流路に設けられた第2圧力調整弁とで構成されている、という構成とした。
【0008】
上記の構成により、第1ガス流路が、2系統のガス供給路のうちの一方のガス供給路の一部を構成し、第1ガス流路の一部及び第2ガス流路が他方のガス供給路の一部を構成する。そして、第1開閉弁が、2系統のガス供給路の共用の開閉弁となり、弁の数は合計5つとなる。これにより、1つの開閉弁の分だけコストを低減することができるともに、複合弁を小型化することができる。また、開閉弁を、ノーマルクローズ方式の電磁弁で構成して両方のガス供給路にガスを同時に供給する場合には、3つの開閉弁に通電すればよいので、4つの開閉弁に通電する場合に比べて消費電力を削減することが可能になる。さらに、ガス流入口は1つで済み、そのガス流入口には、1つの配管を接続するだけでよく、分岐管も不要になる。これにより、配管コストを低減することができるとともに、複合弁と配管との接続箇所が少なくなる。この結果、複合弁の設置作業の労力を軽減することができるとともに、ガス漏洩の可能性も低くなり、安全性を向上させることができる。
【0009】
上記複合弁において、上記本体部は、略直方体形状をなしており、上記本体部の1つの面である第1面に、上記第1及び第2圧力調整弁の構成要素の一部が突出して設けられ、上記本体部における上記第1面に隣接する面の1つである第2面に、上記ガス流入口を有する流入突出部が突出形成されているとともに、上記第3開閉弁の構成要素の一部が突出して設けられ、上記本体部における上記第2面と対向する面である第3面に、上記第1ガス流出口を有する第1流出突出部が突出して設けられているとともに、上記第2ガス流出口を有する第2流出突出部が突出形成され、上記本体部における、上記第1面、上記第2面及び上記第3面に隣接する面である第4面に、上記第1及び第2開閉弁の構成要素の一部が突出して設けられている、ことが好ましい。
【0010】
このことにより、本体部の第1面には、第1及び第2圧力調整弁の構成要素の一部が突出し、第2面には、流入突出部と第3開閉弁の構成要素の一部とが突出し、第3面には、第1及び第2流出突出部が突出し、第4面には、第1及び第2開閉弁の構成要素の一部が突出しているので、本体部の第1ないし第4面に突出部分がバランス良く位置して、複合弁全体としてコンパクトになる。
【0011】
上記のように突出部分を配置する場合、上記第1面は、上記本体部の厚み方向一方側の面であり、上記第2面は、上記本体部の幅方向一方側の面であり、上記第3面は、上記本体部の幅方向他方側の面であり、上記第4面は、上記本体部の長さ方向一方側の面であり、上記第1及び第2圧力調整弁の構成要素の一部が、上記第1面において上記本体部の長さ方向に並んで設けられているとともに、上記第1圧力調整弁の構成要素の一部が上記第2圧力調整弁の構成要素の一部よりも上記第4面に近い側に位置し、上記流入突出部及び上記第3開閉弁の構成要素の一部が、上記第2面において上記本体部の長さ方向に並んで設けられているとともに、上記流入突出部が上記第3開閉弁の構成要素の一部よりも上記第4面に近い側に位置し、上記第1及び第2流出突出部が、上記第3面において上記本体部の長さ方向に並んで設けられているとともに、上記第1流出突出部が上記第2流出突出部よりも上記第4面に近い側に位置し、上記第1及び第2開閉弁が、上記第4面において上記本体部の幅方向に並んで設けられているとともに、上記第1開閉弁が上記第2開閉弁よりも上記第2面に近い側に位置している、ことが好ましい。
【0012】
こうすることで、本体部内の第1及び第2ガス流路の経路を単純にすることができる。この結果、本体部の大きさを極力小さくすることができ、延いては、複合弁全体をより一層コンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の複合弁によると、2系統のガス供給路が設けられる機器の該ガス供給路に設けられる複合弁として、コストの低減化と省スペース化とを図ることができるとともに、設置作業の労力を軽減することができ、しかも、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る複合弁の外観を示す、本体部の第1面側から見た図である。
【図2】上記複合弁の外観を示す、本体部の第2面側から見た図である。
【図3】上記複合弁の外観を示す、本体部の第3面側から見た図である。
【図4】ガス流路と開閉弁及び圧力調整弁との関係を示す、本体部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る複合弁1の外観を示す。この複合弁1は、2系統のガス供給路が設けられる機器の該ガス供給路に設けられるものである。このような機器としては、例えば、機器を暖機するための暖機用(又は種火用)のガス供給路と、通常燃焼用のガス供給路とが設けられる燃焼機器や、固体酸化物形の燃料電池ユニットが挙げられる。この燃料電池ユニット内には、燃料電池スタックと、燃料電池スタックを所定温度以上に加熱するバーナーとが設けられており、燃料電池ユニットへのガス供給路として、燃料電池スタックへの反応用のガス供給路と、バーナーへの燃焼用のガス供給路とが必要になる。
【0017】
本実施形態では、上記燃料電池ユニットのガス供給路に設けられるものとする。燃料電池スタック及びバーナーへ供給されるガスは、メタンガスを含む都市ガスであり、燃料電池スタックは、メタンガスと酸素とから二酸化炭素及び水を生成するとともに、電気を発生する。
【0018】
上記複合弁1は、内部にガス流路(後述の第1及び第2ガス流路8,9)が設けられた本体部2と、上記ガス流路の開閉を行う開閉弁(後述の第1〜第3開閉弁11〜13)と、上記ガス流路に設けられた圧力調整弁(後述の第1及び第2圧力調整弁15,16)とを備えている。
【0019】
上記本体部2は、所定の長さ、所定の幅及び所定の厚みを有する略直方体形状をなしている。図1〜図3に示すA方向が、本体部2の長さ方向に相当し、図1に示すB方向が、本体部2の幅方向に相当し、図2及び図3に示すC方向が、本体部2の厚み方向に相当する。本体部2の6つの外面のうち厚み方向一方側(図1の手前側、図2及び図3の上側)の面を第1面2aといい、幅方向一方側(図1の左側、図2の手前側、図3の奥側)の面を第2面2bといい、幅方向他方側(図1の右側、図2の奥側、図3の手前側)の面を第3面2cといい、長さ方向一方側(図1の上側、図2の左側、図3の右側)の面を第4面2dといい、長さ方向他方側(図1の下側、図2の右側、図3の左側)の面を第5面2eといい、厚み方向他方側(図1の奥側、図2及び図3の下側)を第6面2fという。
【0020】
図4に示すように、上記ガス流路は、一端が、本体部2の表面に設けられたガス流入口3に接続されかつ他端が、本体部2の表面に設けられた第1ガス流出口4に接続された第1ガス流路8と、一端が、この第1ガス流路8の中間部(第2面2b側の部分)に接続されかつ他端が、本体部2の表面に設けられた第2ガス流出口5に接続された第2ガス流路9とで構成されている。尚、図4は、基本的には図2のIV−IV線に沿って切断した断面図であるが、上記ガス流路と上記開閉弁及び上記圧力調整弁との関係を分かり易くするために、上記ガス流路の周辺のみしか示しておらず、また、上記圧力調整弁の向きは正確ではない(後述の如く、第1及び第2圧力調整弁15,16のカバー部材55は、本体部2の第1面2aに設けられる)。
【0021】
上記ガス流入口3は、本体部2の第2面2bにおける第4面2d側の部分に突出形成された流入突出部2gに設けられている。この流入突出部2g(ガス流入口3)は、ガス源側から延びる上流側配管(図示せず)と接続される。また、上記第1ガス流出口4は、本体部2の第3面2cに突出形成された第1流出突出部2hに設けられ、上記第2ガス流出口5は、本体部2の第3面2cに突出形成された第2流出突出部2iに設けられている。上記第1及び第2流出突出部2h,2iは、本体部2の第3面2cにおいて本体部2の長さ方向に並んで設けられており、第1流出突出部2hが第2流出突出部2iよりも第4面2dに近い側に位置する。第1流出突出部2h(第1ガス流出口4)は、上記燃料電池ユニットの燃料電池スタックへガスを供給する第1下流側配管(図示せず)と接続され、第2流出突出部2i(第2ガス流出口5)は、上記燃料電池ユニットのバーナーへガスを供給する第2下流側配管(図示せず)と接続される。
【0022】
上記第1ガス流路8は、本体部2内の第4面2d側の部分にて本体部2の幅方向に延びている。つまり、第1ガス流路8は、ガス流入口3から本体部2内の第4面2d側の部分を通って第1ガス流出口4まで延びている。また、上記第2ガス流路9の上流側部分は、本体部2内の第2面2b側の部分にて本体部2の長さ方向に延び、第2ガス流路9の下流側部分は、本体部2内の第5面2e側の部分にて本体部2の幅方向に延びている。つまり、第2ガス流路9は、第1ガス流路8に接続された上記一端から、本体部2内の第2面2b側の部分を通って第5面2eの近傍まで延びた後、第4面2d側へ折れ曲がって、本体部2内の第5面2e側の部分を通って第2ガス流出口5まで延びている。
【0023】
上記開閉弁は、第1ガス流路8におけるガス流入口3と第2ガス流路9の接続部との間に設けられた第1開閉弁11と、第1ガス流路8における第1ガス流出口4と第2ガス流路9の接続部との間に設けられた第2開閉弁12と、第2ガス流路9(本実施形態では、第2ガス流路9の上流側部分)に設けられた第3開閉弁13とで構成されている。
【0024】
第1〜第3開閉弁11〜13は、ノーマルクローズ方式の電磁弁で構成されている。これら第1〜第3開閉弁11〜13の構成は同じであるので、以下、第1開閉弁11について詳細に説明し、第2及び第3開閉弁12,13については、第1開閉弁11と同じ部分に同じ符号を付してその説明は省略する。
【0025】
第1開閉弁11は、第1ガス流路8に設けられた弁座21に当接するゴム製の弁体31を有している。この弁体31は、本体部2の長さ方向(第3開閉弁13の場合は、本体部2の幅方向)に延びる可動鉄心32の本体部2内側の端部に取付固定されている。この可動鉄心32は、本体部2の内側から外側にまで延びている。本体部2の外側における可動鉄心32の周囲には、ソレノイド部33が設けられている。このソレノイド部33には、両端部にフランジ34aを有する中空円筒状のコイルボビン34が設けられ、このコイルボビン34の外周面における両フランジ34a間に、銅線からなるコイル35が巻かれている。このコイル35の外周側は、樹脂材36により覆われている。コイルボビン34の内周側には、ガイドパイプ37を介して上記可動鉄心32が、その軸方向に移動可能に嵌合されている。コイルボビン34は、2枚の板材を重ね合わせてなる固定部材38を介して本体部2の第4面2d(第3開閉弁13の場合は、本体部2の第2面2b)に固定されている。このように、第1開閉弁11の構成要素の一部である上記ソレノイド部33は、本体部2の第4面2d(第3開閉弁13の場合は、本体部2の第2面2b)に突出して設けられていることになる。
【0026】
上記弁体31のソレノイド部33側の面は、金属製の板材39で覆われており、この板材39と固定部材38との間における可動鉄心32の周囲には、圧縮コイルスプリング40が配設されている。この圧縮コイルスプリング40は、弁体31を弁座21の側へ付勢する。これにより、コイル35に通電されていないときには、弁体31が弁座21に接触して、弁座21の中心部に設けられた開口22を閉塞し、こうして第1ガス流路8が閉状態となる。一方、コイル35に通電したときには、弁体31が圧縮コイルスプリング40の付勢力に抗して弁座21から離れるように、可動鉄心32が移動する。こうして第1ガス流路8が開状態となる。
【0027】
上記圧力調整弁は、第1ガス流路8における第1ガス流出口4と第2ガス流路9の接続部との間に設けられた第1圧力調整弁15と、第2ガス流路9(本実施形態では、第2ガス流路9の下流側部分)に設けられた第2圧力調整弁16とで構成されている。本実施形態では、第1ガス流路8における第1ガス流出口4と第2ガス流路9の接続部との間において、第2開閉弁12が第1圧力調整弁15よりも下流側に位置する。また、第2ガス流路9において第3開閉弁13が第2圧力調整弁16よりも上流側に位置する。
【0028】
上記第1圧力調整弁15は、本実施形態では、第1ガス流路8における該第1圧力調整弁15よりも下流側のガス圧力を所定圧に調整するガバナである。第1圧力調整弁15は、第1ガス流路8に設けられた弁座25に当接する弁体51を有している。この弁体51は、本体部2の厚み方向に延びる軸部材52の本体部2内側の端部に取付固定されている。軸部材52の本体部2外側の端部には、2枚の板材53が軸部材52の軸心に対して垂直に固定されている。これら2枚の板材53の外周縁部の間には、略リング状の第1ダイヤフラム54の内周縁部が挟持されて支持されている。この第1ダイヤフラム54の外周縁部は、本体部2の第1面2a(後述の凹状部2jの周縁部)と、板材53及び第1ダイヤフラム54を覆うように第1面2aに固定された筒状のカバー部材55との間に挟持されている。尚、図4では、カバー部材55が、、第1及び第2開閉弁11,12のソレノイド部33が設けられている面(つまり第4面2d)に固定されているように描いているが、実際は、第1面2aに固定されている。
【0029】
上記軸部材52の長さ方向中間部には、略リング状の第2ダイヤフラム56の内周縁部が固定され、この第2ダイヤフラム56の外周縁部は、本体部2の第1面2aに形成された凹部部2jの底面と、この凹状部2jの底面に固定された固定部材57との間に挟持されて支持されている。第1及び第2ダイヤフラム54,56は、軸部材52がその軸心方向の本体部2内側へ移動したとき、該軸部材52を元の位置へ復帰させるように付勢する。
【0030】
上記カバー部材55は、本体部2の第1面2aに突出して設けられている。このカバー部材55は、第1面2a側の大径部55aと、第1面2aとは反対側の小径部55bとを有している。小径部55bの内側には、圧縮コイルスプリング58が配設されている。この圧縮コイルスプリング58は、小径部55bの内側における大径部55aとは反対側の端部に螺合した状態で配設された調整ネジ59と、上記板材53との間に配設されていて、板材53を調整ネジ59とは反対側に押圧する。この押圧により、弁体51が弁座25から離れるように、軸部材52と共に移動する。このとき、第1及び第2ダイヤフラム54,56の付勢力によって、弁体51が弁座25に当接する側に移動しようとするが、圧縮コイルスプリング58による押圧力が、第1及び第2ダイヤフラム54,56の付勢力よりも僅かに強く、このため、第1ガス流路8にガスが流れていない状態では、弁体51が、弁座25の中心部に設けられた開口26を開いた状態にしている。尚、調整ネジ59は、小径部55bの内側へのねじ込み量によって圧縮コイルスプリング58の圧縮量を調整して上記押圧力を調整するためのものである。
【0031】
上記カバー部材55及び上記凹状部2jで囲まれた空間は、板材53及び第1ダイヤフラム54によって、第1空間61と第2空間62とに区画される。第1空間61は、第1連通孔63を介して、大気圧と連通している。一方、第2空間62は、本体部2内に設けられた第2連通孔64を介して、第1ガス流路8における第1圧力調整弁15よりも下流側部分と連通している。このため、第2空間62の圧力は、第1ガス流路8における第1圧力調整弁15よりも下流側部分のガス圧と同じになる。そして、上記開口26が開いた状態では、ガスが第1圧力調整弁15よりも下流側に流れるため、第2空間62の圧力が第1空間61の圧力(厳密には、圧縮コイルスプリング58による押圧力に相当する圧力も加えた圧力)よりも大きくなり、弁体51が弁座25の側へ移動して開口26を閉じる。開口26が閉じた状態になると、やがて第2空間62の圧力が第1空間61の圧力よりも低くなり、開口26が開く。したがって、第1ガス流路8における第1圧力調整弁15よりも下流側部分が所定圧に調整される。
【0032】
上記第2圧力調整弁16は、本実施形態では、均圧弁である。この第2圧力調整弁16(均圧弁)の構成は、第1圧力調整弁15(ガバナ)と略同じであるので、第1圧力調整弁15とは異なる部分を中心に説明する。尚、第2圧力調整弁16において、第1圧力調整弁15と同様の構成要素には、同じ符号を付している。
【0033】
第2圧力調整弁16は、圧縮コイルスプリング58(第2圧力調整弁16では、第1圧縮コイルスプリング58という)に加えて、第2圧縮コイルスプリング67を有している。この第2圧縮コイルスプリング67は、弁体51と、弁座25の中心部に設けられた開口26と対向する流路壁部との間に配設されていて、弁体51を弁座25に当接する側に押圧する。第1及び第2圧縮コイルスプリング58,67による押圧力のバランスにより、第2ガス流路9にガスが流れていない状態では、弁体51が開口25を閉じている。
【0034】
第2圧力調整弁16のその他の構成は第1圧力調整弁15と同様であるが、第2圧力調整弁16における第1空間61に導入されるガス圧は、第1圧力調整弁15と異なっている。すなわち、第1空間61は、第1連通孔63及び第1連通孔63に接続される不図示の配管を介して、上記バーナーへの燃焼用空気供給路と連通している。バーナーへガスを供給する際、燃焼用空気供給路を介して燃焼用空気が供給される。第1空間61は、この燃焼用空気の圧力と同じになる。このため、開口26が閉じられていると、第1空間61の圧力が第2空間62の圧力よりも大きくなり、開口26が開く。開口26が開いた状態になると、やがて第2空間62の圧力が第1空間61の圧力よりも高くなり、開口26が閉じられる。したがって、第2ガス流路9における第2圧力調整弁16よりも下流側部分が、燃焼用空気供給路の圧力と略同じに調整される。この結果、バーナーへ供給される燃焼用空気に対するガスの体積比が略1となり、バーナーにおいて適切な燃焼がなされることになる。
【0035】
ここで、上記燃料電池ユニットの燃料電池スタックは、所定温度よりも低い温度では機能しないので、最初に第1及び第3開閉弁11,13のコイル35に通電して(第2開閉弁12のコイル35には通電しない)、上記ガス源からのガスを、上記上流側配管、第1ガス流路8におけるガス流入口3と第2ガス流路9の接続部との間及び第2ガス流路9並びに上記第2下流側配管を介して、上記バーナーへ供給する。このとき、燃焼用空気が燃焼用空気供給路を介してバーナーへ供給される。そして、第2圧力調整弁16によって、第2ガス流路9における第2圧力調整弁16よりも下流側部分が、燃焼用空気供給路の圧力と略同じに調整されて、こうして圧力が調整されたガスが上記バーナーへ供給され、該バーナーにより燃料電池スタックが加熱される。燃料電池スタックが所定温度以上になると、第1開閉弁11のコイル35への通電を継続したまま、第3開閉弁13のコイル35への通電を停止しかつ第2開閉弁12のコイル35への通電を開始する。これにより、上記ガス源からのガスを、上記上流側配管、第1ガス流路8及び上記第1下流側配管を介して、燃料電池スタックへ供給する。こうして、燃料電池スタックにて電気が発生する。尚、燃料電池スタックが所定温度以上になった後は、第1〜第3開閉弁11〜13全てのコイル35に通電して、ガスを燃料電池スタック及びバーナーへ同時に供給するようにしてもよい。
【0036】
本実施形態では、本体部2の第1面2aに、第1及び第2圧力調整弁15,16の構成要素の一部であるカバー部材55が突出して設けられ、本体部2における第1面2aに隣接する面の1つである第2面2bに、流入突出部2gが突出形成されているとともに、第3開閉弁13の構成要素の一部であるソレノイド部33が突出して設けられ、本体部2における第2面2bと対向する面である第3面2cに、第1及び第2流出突出部2h,2iが突出形成され、本体部2における、第1面2a、第2面2b及び第3面2cに隣接する面であって流入突出部2gに近い側の面である第4面2dに、第1及び第2開閉弁11,12の構成要素の一部であるソレノイド部30が突出して設けられている。
【0037】
また、第1及び第2圧力調整弁15,16のカバー部材55が、本体部2の第1面2aにおいて本体部2の長さ方向に並んで設けられているとともに、第1圧力調整弁15のカバー部材55が第2圧力調整弁16のカバー部材55よりも第4面2dに近い側(流入突出部2g及び第1流出突出部2hに近い側)に位置する。
【0038】
さらに、第1及び第2開閉弁11,12のソレノイド部33が、本体部2の第4面2dにおいて本体部2の幅方向に並んで設けられているとともに、第1開閉弁11のソレノイド部33が第2開閉弁12のソレノイド部33よりも第2面2bに近い側(流入突出部2gに近い側)に位置する。また、流入突出部2g及び第3開閉弁13のソレノイド部33が、本体部2の第2面2bにおいて本体部2の長さ方向に並んで設けられているとともに、流入突出部2gが第3開閉弁13のソレノイド部33よりも第4面2dに近い側に位置する。
【0039】
したがって、本実施形態では、第1ガス流路8が、上記上流側配管及び上記第1下流側配管と共に、2系統のガス供給路のうちの一方のガス供給路(燃料電池スタックへの反応用のガス供給路)を構成し、第1ガス流路8におけるガス流入口3と第2ガス流路9の接続部との間の部分及び第2ガス流路9が、上記上流側配管及び上記第2下流側配管と共に、他方のガス供給路(バーナーへの燃焼用のガス供給路)を構成する。そして、第1ガス流路8におけるガス流入口3と第2ガス流路9の接続部との間に、第1開閉弁11が設けられ、第1ガス流路8における第1ガス流出口4と第2ガス流路9の接続部との間に、第2開閉弁12と第1圧力調整弁15とが設けられ、第2ガス流路9に、第3開閉弁13と第2圧力調整弁16とが設けられているので、第1開閉弁11が、2系統のガス供給路の共用の開閉弁となり、弁の数は合計5つとなる。すなわち、各ガス供給路には、2つの開閉弁が設けられるところを、上記他方のガス供給路の1つの開閉弁を、上記一方のガス供給路のものと共用にしたので、1つの開閉弁の分だけコストを低減することができるともに、複合弁1を小型化することができる。また、ガスを燃料電池スタック及びバーナーへ同時に供給する場合には、3つの開閉弁11〜13のコイル35に通電すればよいので、4つの開閉弁のコイルに通電する場合に比べて消費電力を削減することができる。さらに、ガス流入口3は1つで済み、そのガス流入口3を有する流入突出部2gには、ガス源側から延びる1つの配管を接続するだけでよく、分岐管も不要になる。これにより、配管コストを低減することができるとともに、複合弁1と配管との接続箇所が少なくなる。この結果、複合弁1の設置作業の労力を軽減することができるとともに、ガス漏洩の可能性も低くなり、安全性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、本体部2の第1面2aに、第1及び第2圧力調整弁15,16のカバー部材55が突出し、第2面2bには、流入突出部2gと第3開閉弁13のソレノイド部33とが突出し、第3面2cには、第1及び第2流出突出部2h,2iが突出し、第4面2dには、第1及び第2開閉弁11,12のソレノイド部33が突出しているので、本体部2の第1ないし第4面2a〜2dに突出部分がバランス良く位置して、複合弁1全体としてコンパクトにすることが可能になる。
【0041】
特に、第1及び第2圧力調整弁15,16のカバー部材55が、本体部2の第1面2aにおいて本体部2の長さ方向に並んで設けられているとともに、第1圧力調整弁15のカバー部材55が第2圧力調整弁16のカバー部材55よりも第4面2dに近い側に位置し、第1及び第2開閉弁11,12のソレノイド部33が、本体部2の第4面2dにおいて本体部2の幅方向に並んで設けられているとともに、第1開閉弁11のソレノイド部33が第2開閉弁12のソレノイド部33よりも第2面2bに近い側に位置し、第1及び第2流出突出部2h,2iが、本体部2の第3面において本体部2の長さ方向に並んで設けられているとともに、第1流出突出部2hが第2流出突出部2iよりも第4面2dに近い側に位置し、流入突出部2g及び第3開閉弁13のソレノイド部33が、本体部2の第2面2bにおいて本体部2の長さ方向に並んで設けられているとともに、流入突出部2gが第3開閉弁13のソレノイド部33よりも第4面2dに近い側に位置するので、本体部2内の第1及び第2ガス流路8,9の経路を単純にすることができる。この結果、本体部2の大きさを極力小さくすることができ、延いては、複合弁1全体をより一層コンパクトにすることができる。
【0042】
また、第3開閉弁13が、第2ガス流路9において、第2圧力調整弁16よりも上流側に設けられることで、第3開閉弁13を、第2ガス流路9の上流側部分(本体部2内の第2面2b側の部分にて本体部2の長さ方向に延びる部分)に設けて、第3開閉弁13のソレノイド部33を、第2ガス流路9の上流側部分に近い第2面2bに容易に設けることができるようになる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、第3開閉弁13を、第2ガス流路9における第2圧力調整弁16よりも上流側に設けたが、第3開閉弁13を、第2ガス流路9における第2圧力調整弁16よりも下流側に設けることも可能である。但し、この場合、第2圧力調整弁16のカバー部材55を本体部2の第1面2aに設けかつ第3開閉弁13のソレノイド部33を第2面2bに設けようとすると、第2ガス流路9の経路がかなり複雑になり、これに伴い複合弁1の本体部長さ方向の長さが大きくなるので、上記実施形態のように、第3開閉弁13を、第2ガス流路9における第2圧力調整弁16よりも上流側に設ける方が好ましい。
【0045】
また、上記実施形態では、第2開閉弁12を、第1ガス流路8における第1ガス流出口4と第2ガス流路8の接続部との間であって第1圧力調整弁15よりも下流側に設けたが、第2開閉弁12を、第1ガス流路8における第1ガス流出口4と第2ガス流路9の接続部との間であって第1圧力調整弁15よりも上流側に設けてもよい。但し、上記実施形態のように第2開閉弁12を第1圧力調整弁15よりも下流側に設けた方が、第1ガス流路8の経路が複雑にならなくて済む。
【0046】
さらに、本体部2の外面に、突出部分となる、第1及び第2圧力調整弁15,16のカバー部材55や、第1〜第3開閉弁11〜13のソレノイド部33をどのように設けてもよいが、複合弁1全体をコンパクトにする観点から、上記実施形態のような配置にすることが好ましい。
【0047】
さらにまた、上記実施形態では、第1圧力調整弁15をガバナとし、第2圧力調整弁16を均圧弁としたが、第1及び第2圧力調整弁15,16は、ガス供給先の機器に応じて、ガバナ又は均圧弁とすればよい。
【0048】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、2系統のガス供給路が設けられる機器の該ガス供給路に設けられる複合弁に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 複合弁
2 本体部
2a 第1面
2b 第2面
2c 第3面
2d 第4面
2g 流入突出部
2h 第1流出突出部
2i 第2流出突出部
3 ガス流入口
4 第1ガス流出口
5 第2ガス流出口
8 第1ガス流路
9 第2ガス流路
11 第1開閉弁
12 第2開閉弁
13 第3開閉弁
15 第1圧力調整弁
16 第2圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス流路が設けられた本体部と、上記ガス流路の開閉を行う開閉弁と、上記ガス流路に設けられた圧力調整弁とを備えた複合弁であって、
上記ガス流路は、一端が、上記本体部の表面に設けられたガス流入口に接続されかつ他端が、上記本体部の表面に設けられた第1ガス流出口に接続された第1ガス流路と、一端が、上記第1ガス流路の中間部に接続されかつ他端が、上記本体部の表面に設けられた第2ガス流出口に接続された第2ガス流路とで構成され、
上記開閉弁は、上記第1ガス流路における上記ガス流入口と上記第2ガス流路の接続部との間に設けられた第1開閉弁と、上記第1ガス流路における上記第1ガス流出口と上記第2ガス流路の接続部との間に設けられた第2開閉弁と、上記第2ガス流路に設けられた第3開閉弁とで構成され、
上記圧力調整弁は、上記第1ガス流路における上記第1ガス流出口と上記第2ガス流路の接続部との間に設けられた第1圧力調整弁と、上記第2ガス流路に設けられた第2圧力調整弁とで構成されていることを特徴とする複合弁。
【請求項2】
請求項1記載の複合弁において、
上記本体部は、略直方体形状をなしており、
上記本体部の1つの面である第1面に、上記第1及び第2圧力調整弁の構成要素の一部が突出して設けられ、
上記本体部における上記第1面に隣接する面の1つである第2面に、上記ガス流入口を有する流入突出部が突出形成されているとともに、上記第3開閉弁の構成要素の一部が突出して設けられ、
上記本体部における上記第2面と対向する面である第3面に、上記第1ガス流出口を有する第1流出突出部が突出して設けられているとともに、上記第2ガス流出口を有する第2流出突出部が突出形成され、
上記本体部における、上記第1面、上記第2面及び上記第3面に隣接する面である第4面に、上記第1及び第2開閉弁の構成要素の一部が突出して設けられていることを特徴とする複合弁。
【請求項3】
請求項2記載の複合弁において、
上記第1面は、上記本体部の厚み方向一方側の面であり、
上記第2面は、上記本体部の幅方向一方側の面であり、
上記第3面は、上記本体部の幅方向他方側の面であり、
上記第4面は、上記本体部の長さ方向一方側の面であり、
上記第1及び第2圧力調整弁の構成要素の一部が、上記第1面において上記本体部の長さ方向に並んで設けられているとともに、上記第1圧力調整弁の構成要素の一部が上記第2圧力調整弁の構成要素の一部よりも上記第4面に近い側に位置し、
上記流入突出部及び上記第3開閉弁の構成要素の一部が、上記第2面において上記本体部の長さ方向に並んで設けられているとともに、上記流入突出部が上記第3開閉弁の構成要素の一部よりも上記第4面に近い側に位置し、
上記第1及び第2流出突出部が、上記第3面において上記本体部の長さ方向に並んで設けられているとともに、上記第1流出突出部が上記第2流出突出部よりも上記第4面に近い側に位置し、
上記第1及び第2開閉弁が、上記第4面において上記本体部の幅方向に並んで設けられているとともに、上記第1開閉弁が上記第2開閉弁よりも上記第2面に近い側に位置していることを特徴とする複合弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−247053(P2012−247053A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121904(P2011−121904)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000118534)伊藤工機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】