視覚障害者追跡システム及び視覚障害者検出方法
【解決手段】道路の対向位置にそれぞれカメラ2a,2bを設置して、その道路を渡る視覚障害者の追跡を行う。各カメラ2a,2bの視野は、互いに道路の対向側を監視し、かつ、道路の真中で重複した状態に設定されており、各カメラ2a,2bの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、輝度の高い線分の検出を行い、前記線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなし、当該視覚障害者の特徴情報に基づいて当該視覚障害者を追跡し、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡す。
【効果】道路をこちらに向かって渡って来る視覚障害者が白杖を持っていれば、それを正面から確実に検出できる。その視覚障害者の色、大きさなどの特徴情報を捉えて、当該視覚障害者を追跡することができる。当該視覚障害者が道路の半ばを越えてくると、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことにより、当該他のカメラは、白杖を検出できなくても、その特徴に基づいて当該視覚障害者を背後から、横断完了まで追跡し続けることができる。
【効果】道路をこちらに向かって渡って来る視覚障害者が白杖を持っていれば、それを正面から確実に検出できる。その視覚障害者の色、大きさなどの特徴情報を捉えて、当該視覚障害者を追跡することができる。当該視覚障害者が道路の半ばを越えてくると、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことにより、当該他のカメラは、白杖を検出できなくても、その特徴に基づいて当該視覚障害者を背後から、横断完了まで追跡し続けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路脇の支柱に取り付けたカメラを用いて、画像処理により視覚障害者を検出して追跡するシステム及び視覚障害者の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者の歩行支援方法には、いろいろな方法があるが、1つの方法として、ペンダント型小型発信器を所持させて、この小型発信器のボタンを押せば、青信号の時間が延長されたり、青信号であることを示す音が流れたりするようなシステムが開発されている。
また、視覚障害者の存在を検出するために、視覚障害者の持つ白杖を画像処理によって検出する方法が提案されている。この方法は、カメラから取得した静止画データのエッジとなっている画素を検出し、その画素が連結された領域の特徴に基づいて、白杖を検出する方法である。
【特許文献1】特開2003-168110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記の小型発信器を所持させる方法は、出かけるときに小型発信器の携帯を忘れる場合がある。また、小型発信器を持っていても、そのボタンを押すという面倒な操作が必要になる。
画像のエッジを検出する方法では、視覚障害者の自動検出が出来るが、白杖が人の影に隠れた場合、当該視覚障害者を見失ってしまう。視覚障害者を見失うと、当該視覚障害者が道路を渡り終えるまで所定のフォローが出来なくなるので、視覚障害者を見失わないような安全な支援システムが望まれている。
【0004】
また、画像のエッジを検出するので、画像の中に含まれているノイズが強調されてしまい、白杖を確実に検出することが難しくなる。
そこで、本発明は、道路を渡っている視覚障害者を見失うことのない安全な視覚障害者追跡システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、画像処理を工夫することにより、白杖を確実に検出することのできる視覚障害者検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の視覚障害者追跡システムは、道路の対向位置にそれぞれカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の追跡を行う視覚障害者追跡システムであって、各カメラの視野は、互いに道路の対向側を監視し、かつ、道路の真中で重複した状態に設定されており、各カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、輝度の高い線分の検出を行い、前記線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなし、当該視覚障害者の特徴情報に基づいて当該視覚障害者を追跡し、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すシステムである。
【0006】
このシステム構成であれば、道路の対向位置にそれぞれカメラを設置し、互いに道路の対向側を監視しているので、道路をこちらに向かって渡って来る視覚障害者が白杖を持っていれば、それを正面から確実に検出できる。そして、その視覚障害者の特徴情報を把握して、当該視覚障害者を追跡することができる。当該視覚障害者が道路の半ばを越えてくると、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことにより、当該他のカメラは、白杖を検出できなくても、その特徴に基づいて当該視覚障害者を背後から、横断完了まで追跡し続けることができる。
【0007】
前記カメラは、横断歩道の歩行者灯器の柱に設置すれば、既存の設備を流用できるので、コスト面で有利となる。
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、前記特徴情報を抽出するための領域として、前記輝度の高い線分を含む当該視覚障害者の存在領域を検出し、この検出された当該視覚障害者の存在領域において前記特徴情報を抽出することが好ましい。
【0008】
当該視覚障害者の特徴情報は、当該視覚障害者を前から及び背後から追跡できる情報であることが好ましい。例えば服の色合いと背の高さである。
前記カメラの画像処理部は、検出された視覚障害者の進行方向を検出し、当該進行方向が手前向きである場合に、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことが好ましい。進行方向が向こう向きである場合には、その視覚障害者は道路を渡り終えてしまうので、他のカメラの視野に入ることがないからである。
【0009】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、青信号時間を延長したり、車両ドライバーに注意を促すために、表示板に表示をさせたり、車載装置へ通知したりすることが好ましい。
また、本発明の視覚障害者検出方法は、道路にカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の検出を行う方法であって、前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、MIN-MAX処理を用いて輝度の高い線分の検出を行い、前記輝度の高い線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなして、当該視覚障害者を検出することを特徴とする。
【0010】
MIN-MAX処理を用いることによって、白杖の特徴である高い輝度と細長い形状を容易にかつ確実に検出することができる。また、このMIN-MAX処理は、外部環境の変化に強いという利点がある。
前記カメラの画像処理部は、人の脚の間を誤検出しないために、当該カメラに写った画像の中で、鉛直方向から一定の角度範囲を除外して輝度の高い線分を検出することが好ましい。
【0011】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、線分の長さの範囲を設定し、長さがこの範囲に入る輝度の高い線分を検出することが好ましい。
また、前記カメラの画像処理部は、視野を画面分割し、分割された画面ごとに輝度の高い線分を検出することが好ましい。こうすれば、カメラから分割された各画面までの実距離に基づいて、検出するための輝度閾値を画面ごとに最適な値に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(1)システム構成
図1は、本発明の視覚障害者追跡システムにおけるカメラ2a,2bの設置状態を示す図である。
カメラ2a,2bは既設の歩行者灯器の信号柱4に設置されている。信号柱4は、横断歩道の対向位置に設置されているので、カメラ2a,2bも横断歩道を長手方向の両側から見下ろすように配置されることになる。
【0013】
手前のカメラ2aの視野は、対面の横断待ち位置と横断歩道の対面寄りの領域に配置し、他方のカメラ2bの視野は、手前の横断待ち位置と横断歩道の手前寄りの領域に配置する。
このようにカメラ2aの視野を対面寄りの領域に配置したことにより、横断歩道を歩いて来る人を正面から写すことができ、白杖を持つ歩行者の検出が容易になる。横断歩道を歩いて来る人が道路の半ばを越えると、他のカメラ2bに制御を渡し、その人の背後から監視するという形態になる。
【0014】
図2は、カメラ2a,2b(以下総称するときは「カメラ2」という)と横断歩道との座標系を説明するための図である。地面に垂直な方向をz、横断歩道に沿った方向をy、yとzに直交する方向をxにとっている。信号柱4に取り付けられたカメラ2の高さをhとする。カメラ2の設置角度をθとする。
カメラ2の視野に写った画面を、y方向に分割している。分割された道路上の領域(分割領域という)を、S1,S2,・・・などで表す。このように横断歩道の画面を分割するのは、分割領域S1,S2,・・・のカメラ2からの距離に基づいて、白杖を検出するための輝度閾値を画面ごとに最適な値に設定するためである。
【0015】
図3は、カメラ2の画像信号を処理する画像処理部3のブロック構成図である。画像処理部3は、カメラ2の筐体に内蔵したタイプでもよいし、カメラ2と別筐体としてもよい。
画像処理部3は、カメラ2ごとに設置され、画像処理部3同士は有線又は無線の通信回線を通してつながっている。しかし、この構成に限られるものではなく、2つのカメラ2a,2bからケーブルを引き込んで共通の画像処理部3で処理するようにしてもよい。
【0016】
画像処理部3は、撮像部31、A/D変換部32、画像メモリ33、演算部34、および通信部35を具備している。撮像部31は、カメラ2から映像信号を取り込む。A/D変換部32は、映像信号をディジタル信号に変換する。画像メモリ33はディジタル変換した画像データを保存する。演算部34は本発明の視覚障害者検出処理や視覚障害者追跡処理を含む画像処理を実行する。通信部35は、画像処理部3同士の通信や、信号機制御システムや道路表示板、車載装置(ナビゲーション装置)等との通信を行う。
【0017】
画像処理部3が行う処理の概要は、次のとおりである。
(a)地点A(図1参照)で横断待ちの白杖携帯歩行者をカメラ2aで検出する。(b)当該歩行者の移動Bをカメラ2aで追跡する。当該歩行者の位置、歩行速度、形状などの特徴をカメラ2aからカメラ2bに通知する。(c)当該歩行者が横断歩道の後半Cに移ると、カメラ2bがカメラ2aから得た歩行者の情報に基づいて当該歩行者を引き続き追跡する。追跡中は歩行者信号の「青」を延長する。(d)カメラ2bが横断完了Dを確認する。
【0018】
画像処理部3が行う以上の(a)〜(d)の処理手順を、以下、フローチャート(図4)を用いて詳細に説明する。
画像処理部3は、カメラ2a,2bの画像信号を取り込む(ステップS1)。取り込み周期は、所定の時間、例えば0.1秒ごとである。
画像処理部3は、視野内の分割領域S1,S2,・・・内で次の処理を行う(ステップS2)。
【0019】
まず、MIN処理を行う(ステップS3)。このMIN処理は、カメラ2から取り込んだ画像信号に基づいて、ある画素に注目し、その注目画素の輝度を、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が低い(暗い)画素の輝度の値で置き換える処理である。この処理を全ての画素について行う。
図5を参照して具体的に説明すると、注目画素とその周辺の8つの画素を参照する。注目画素の輝度は35であり、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が低い(暗い)画素の輝度の値は10である。そこで注目画素の輝度を10に置き換える。
【0020】
以上のMIN処理を各分割領域S1,S2,・・・について実施する。実施回数は、例えばカメラ2から所定距離よりも遠くにある分割領域では1回実施する、近い分割領域では2回実施する、などである。これは、近い分割領域では画像が大きく、輝度の高い部分の幅も太いからである。
この処理により、輝度の高い図形は、その輪郭が後退して面積が小さくなる。処理の回数を重ねる程、図形は痩せていく。特に、面積の小さな図形、例えば点や細い線は消滅する。
【0021】
次に、MAX処理を行う(ステップS4)。このMAX処理は、カメラ2から取り込んだ画像信号に基づいて、ある画素に注目し、その注目画素の輝度を、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が高い(明るい)画素の輝度の値で置き換える処理である。
図6を参照して具体的に説明すると、注目画素とその周辺の8つの画素を参照する。注目画素の輝度は5であり、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が高い(明るい)画素の輝度の値は40である。そこで注目画素の輝度を40に置き換える。
【0022】
以上のMAX処理を各分割領域S1,S2,・・・について実施する。実施回数は、例えばカメラ2から所定距離よりも遠くにある分割領域では1回実施する、近い分割領域では2回実施する、などである。
このMAX処理により、輝度の高い図形は、その輪郭が膨張して面積が大きくなる。処理の回数を重ねる程、図形は太っていく。
【0023】
したがって、前記MIN処理の後で、このMAX処理を、前記MIN処理と同じ回数行うことにより、痩せて行った図形は、元の大きさに戻る。しかし、前記MIN処理で消滅した点や細い線は復活しない。
その結果、視覚障害者の持っている白杖のような細長い物体が消えた画像が得られる。
次に、画像処理部3は、線分検出処理を行う(ステップS5)。
【0024】
これはまず、前記MIN処理とMAX処理を行った画像と、処理前の元の画像との差分を計算する処理である。これにより、輝度の高い細長い物体だけの画像が得られる。
画像処理部3は、この差分画像に基づいて、画像内のノイズを取り除くため、閾値を適用する。数式で説明すると、つぎのようになる。
画素座標(x,y)における、元の画像の輝度をI1(x,y)、MIN処理及びMAX処理を行った画像の輝度をI2(x,y)とすると、差分S(x,y)は、
S(x,y)=I1(x,y)−I2(x,y)
となる。二値化した輝度B(x,y)は、
B(x,y)=0,if|S(x,y)|<閾値
B(x,y)=1,if|S(x,y)|≧閾値
となる。
【0025】
前記閾値は、分割領域S1,S2,・・・ごとに最適な値に設定する。例えばカメラ2から遠くにある分割領域では、画面が比較的暗いので低い閾値を設定し、カメラ2から近くにある分割領域では、画面が比較的明るいので高い閾値を設定する。また、その時刻の外界の明るさによっても閾値を変更する。例えば、晴れていれば高い閾値を設定し、曇や雨であれば、近い閾値を設定する。
【0026】
そして、この閾値適用後の二値化画像において、白杖のような細長い物体を検出する。このためには、細長い物体が延びている角度範囲が所定の角度範囲に入っているかどうか、物体の長さが適正な範囲に入っているか、をチェックする。
図7は、閾値適用後の二値化画面における角度範囲の説明図である。横軸はx、縦軸は鉛直方向zにとっている。しかし、実際にカメラ2a,2bに写った画面はx-z面に対応しているわけではない。これは、図2を見れば判るように、カメラ2は高い位置から道路を見下ろしていているからである。そこで、カメラ2に写った画面の座標と、実際の三次元座標との変換式を、カメラ2の高さhや、カメラ2の見下ろす角度θなどをパラメータとして画像処理部3のコンピュータのプログラムに組み込んでおく必要がある(特開平4ー20189号公報、特開平6ー35443号公報など参照)。ただし、画面上の二次元座標を三次元座標に変換するには、三次元空間での座標の数を1つ減らす必要がある。これには、三次元空間での座標のわかっている物、例えば、道路上の目印を基準位置として利用すればよい。
【0027】
検出された細長い物体が杖だとしたら、その頂部は、ほぼ手の高さである。手の高さを一定値z0とする。高さz0の位置で細長い物体のx座標を特定する。これをx0とする。そして、点(x0,z0)を始点とし、鉛直方向から角度±aの範囲内は、両脚の隙間を誤検知するおそれがあるとして、白杖検出角度範囲より除外する。また、計算量を削減するためと、白杖を高く振り回すことは稀だろうとの予測に基づき、白杖の検出角度範囲に上限±bを設定する。したがって、角度-bから-aの範囲及び角度aからbの範囲が白杖の検出範囲になる。角度aは具体的には、約10度とし、角度bは具体的には、約30度とする。
【0028】
この角度検出範囲において、点(x0,z0)を始点とし、傾きφを1度ごとに変化させた直線を設定する。
図8は、設定された直線を示す。この直線上に、前記閾値適用後の二値化結果が1となる画素が、あらかじめ設定した、これ以上短ければ杖でないと判断するための閾値以上、連続して存在するとき、白杖であると検出する。
前記「これ以上短ければ杖でないと判断するための閾値」は、もちろん、分割領域S1,S2,・・・ごとに異なる。カメラ2から遠くにある分割領域ほど小さな値になり、カメラ2から近くにある分割領域では同じ物体でも大きく写るので、大きな値になる。
【0029】
また、連続して存在する上限値もあらかじめ設定しておき、これ以上連続する場合は、杖よりも長い他の物体と判断して、検出対象から除外する。この閾値もカメラからの距離に応じて異なった値に設定する。
以上で白杖携帯者が検出できたので、次にこの白杖携帯者を追跡する。
追跡をする理由は、白杖携帯者が横断歩道を半分以上渡って当該カメラ2の視野から外れたときに、対向するカメラ2に白杖携帯者の情報を渡してやる必要があるからである。対向するカメラ2は、白杖携帯者を背中から見ていることになり、常時、白杖を検出することはできない。したがって、白杖携帯者の特徴をとらえて、その情報を、対向するカメラ2に渡すのである。
【0030】
まず、人の存在領域を検出し、進行方向を判定し及び歩行速度を算出する。
人の存在領域は、時間差分法により前後時間の画像の差異により、移動物体の範囲を検出する(佐伯規夫、鈴木健志、岩田清「画像認識による侵入者検出方式」、[online]、1999年、[平成16年4月26日検索]、インターネット<http://www.fujitsugeneral.co.jp/japanese/techj/1999-01/pdf/05rgazou.pdf>)。この移動物体の範囲の縦及び横のサイズが一定範囲内のとき、歩行者の存在領域としてとらえることができる(ステップS6)。さらに、図9に示すように、この存在領域内に白杖を含むとき、白杖携帯者の存在領域として考えることができる(ステップS7)。
【0031】
次に、白杖携帯者の特徴を検出する(ステップS8)。特徴として、服の色合いと背の高さを検出する。服の色合いは、白杖携帯者の存在領域内のRGB成分又はHSV成分の構成比率を算出して特定する。背の高さは、白杖携帯者の存在領域の上端部分を頭部と考えて地面からの高さを算出する。なお、特徴として、これらの要素に限定されるものではなく、他に服の模様のエッジ情報に基づいて、のっぺら、縦縞、横縞、ざらざらなどの要素を採用してもよい。
【0032】
次に、進行方向及び歩行速度を算出するために、この白杖携帯者の存在領域の下端位置を足元としてとらえる。そして、下記の算出式により、白杖携帯者の実際の横断歩道上での位置を算出する。
図10及び図2を参照して、カメラ2の光軸と路面との角度をθ、カメラ2の設置高さをh、レンズの焦点距離をf、カメラ2の画面上の座標を(p,q)とする。
【0033】
白杖携帯者の足元の座標A(x,y,0)は、
x=hp/(fsinθ−qcosθ)
y=h(qsinθ+fcosθ)/(fsinθ−qcosθ)
のように求まる。
このように検出した白杖携帯者の位置を、時間前後の画像において比較し、一定距離内に入るかどうかを調べる(ステップS9)。前記「一定距離」は通常の人間の歩く速度を基準にして設定しておく。
【0034】
一定距離内に入り、かつ白杖携帯者の特徴が共通しているものを同一白杖携帯者とみなして追跡する。
そして、白杖携帯者の進行方向と速度を算出する。進行方向は、足元位置の移動ベクトルのy成分が正か負かに基づいて判定する。移動速度は、足元位置の移動距離とその時間より算出する。
【0035】
そして、この白杖携帯者の追跡が出来れば、その特徴を更新する(ステップS10)。
もし、白杖携帯者の位置が、前記一定距離内に入らない場合、白杖携帯者が新たに出現したと考え、その白杖携帯者を新規登録する(ステップS11)。このとき、当該白杖携帯者の進行方向と速度、白杖携帯者の特徴は、一から検出しなおすので初期化する。
また、今回入力した画像で、人の存在領域に白杖が検出できなかった場合、つまりステップS7で"No"であった場合は、前回の検出処理で白杖携帯者が検出されており、かつ足元の位置が、前回と今回の画像において一定距離内に入るならば、これらを同一の白杖携帯者とみなして、白杖携帯者の登録情報を更新する(ステップS13)。
【0036】
以上のようにして、同一の白杖携帯者を追跡することができ、かつその登録情報を更新することができる。
連続して一定回数以上、登録情報の更新があるかどうか調べ(ステップS14)、登録情報の更新がない場合、その白杖携帯者は、カメラ2の視野から外れたと判断して、白杖携帯者の進行方向を調べる(ステップS15)。白杖携帯者の進行方向が他のカメラ2の視野から遠ざかる方向である場合、横断歩道を渡り終えたと判断し、この登録情報を除去する(ステップS16)。白杖携帯者の進行方向が他のカメラ2の視野へ向かっている場合、他のカメラ2へその白杖携帯者へ登録情報を送信する(ステップS18)。
【0037】
ステップS14で登録情報の更新がある場合、白杖携帯者が自カメラ2の視野を歩行中と判断し、歩行者信号の「青」を延長するか、及び/又は情報掲示板に視覚障害者が歩行している旨を表示する(ステップS17)。また、ナビゲーション装置などの車載装置に送信してドライバに注意を促す。そして、他のカメラ2へその白杖携帯者へ特徴情報を送信する(ステップS18)。
【0038】
図11は、カメラ2a,2b間で受け渡しする白杖携帯者の特徴情報のデータフォーマットである。特徴情報には、カメラ番号、白杖携帯者検出数n、検出m人目の位置座標x,y、進行方向、歩行速度、身長、色合いの各情報が含まれている。ただし、m≦nとする。
他のカメラ2は、この白杖携帯者の特徴情報を受信すれば、本フローチャート(図4)を適用して、当該白杖携帯者の検出、追跡及び登録情報の更新処理を行う。
【0039】
このようにして、白杖を持った視覚障害者を確実に検出することができ、道路を渡っている視覚障害者を見失うことなく、追跡することができる。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】視覚障害者追跡システムにおける、横断歩道上のカメラ2a,2bの設置状態を示す図である。
【図2】カメラ2と横断歩道との座標系を説明するための図である。
【図3】カメラ2の画像信号を処理する画像処理部3のブロック構成図である。
【図4】画像処理部3が行う視覚障害者の検出と追跡の手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】画面上でのMIN処理を説明するための画素構成図である。
【図6】画面上でのMAX処理を説明するための画素構成図である。
【図7】白杖を検出するための角度範囲の説明図である。
【図8】白杖に相当する線分を含む画素構成図である。
【図9】白杖携帯者の特徴を検出するための、当該白杖携帯者の存在領域を示す図である。
【図10】白杖携帯者の実際の横断歩道上での位置を示す図である。
【図11】カメラ2a,2b間で受渡しする白杖携帯者の特徴データフォーマットを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
2,2a,2b カメラ
3 画像処理部
4 信号柱
31 撮像部
32 A/D変換部
33 画像メモリ
34 演算部
35 通信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路脇の支柱に取り付けたカメラを用いて、画像処理により視覚障害者を検出して追跡するシステム及び視覚障害者の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者の歩行支援方法には、いろいろな方法があるが、1つの方法として、ペンダント型小型発信器を所持させて、この小型発信器のボタンを押せば、青信号の時間が延長されたり、青信号であることを示す音が流れたりするようなシステムが開発されている。
また、視覚障害者の存在を検出するために、視覚障害者の持つ白杖を画像処理によって検出する方法が提案されている。この方法は、カメラから取得した静止画データのエッジとなっている画素を検出し、その画素が連結された領域の特徴に基づいて、白杖を検出する方法である。
【特許文献1】特開2003-168110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記の小型発信器を所持させる方法は、出かけるときに小型発信器の携帯を忘れる場合がある。また、小型発信器を持っていても、そのボタンを押すという面倒な操作が必要になる。
画像のエッジを検出する方法では、視覚障害者の自動検出が出来るが、白杖が人の影に隠れた場合、当該視覚障害者を見失ってしまう。視覚障害者を見失うと、当該視覚障害者が道路を渡り終えるまで所定のフォローが出来なくなるので、視覚障害者を見失わないような安全な支援システムが望まれている。
【0004】
また、画像のエッジを検出するので、画像の中に含まれているノイズが強調されてしまい、白杖を確実に検出することが難しくなる。
そこで、本発明は、道路を渡っている視覚障害者を見失うことのない安全な視覚障害者追跡システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、画像処理を工夫することにより、白杖を確実に検出することのできる視覚障害者検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の視覚障害者追跡システムは、道路の対向位置にそれぞれカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の追跡を行う視覚障害者追跡システムであって、各カメラの視野は、互いに道路の対向側を監視し、かつ、道路の真中で重複した状態に設定されており、各カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、輝度の高い線分の検出を行い、前記線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなし、当該視覚障害者の特徴情報に基づいて当該視覚障害者を追跡し、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すシステムである。
【0006】
このシステム構成であれば、道路の対向位置にそれぞれカメラを設置し、互いに道路の対向側を監視しているので、道路をこちらに向かって渡って来る視覚障害者が白杖を持っていれば、それを正面から確実に検出できる。そして、その視覚障害者の特徴情報を把握して、当該視覚障害者を追跡することができる。当該視覚障害者が道路の半ばを越えてくると、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことにより、当該他のカメラは、白杖を検出できなくても、その特徴に基づいて当該視覚障害者を背後から、横断完了まで追跡し続けることができる。
【0007】
前記カメラは、横断歩道の歩行者灯器の柱に設置すれば、既存の設備を流用できるので、コスト面で有利となる。
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、前記特徴情報を抽出するための領域として、前記輝度の高い線分を含む当該視覚障害者の存在領域を検出し、この検出された当該視覚障害者の存在領域において前記特徴情報を抽出することが好ましい。
【0008】
当該視覚障害者の特徴情報は、当該視覚障害者を前から及び背後から追跡できる情報であることが好ましい。例えば服の色合いと背の高さである。
前記カメラの画像処理部は、検出された視覚障害者の進行方向を検出し、当該進行方向が手前向きである場合に、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことが好ましい。進行方向が向こう向きである場合には、その視覚障害者は道路を渡り終えてしまうので、他のカメラの視野に入ることがないからである。
【0009】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、青信号時間を延長したり、車両ドライバーに注意を促すために、表示板に表示をさせたり、車載装置へ通知したりすることが好ましい。
また、本発明の視覚障害者検出方法は、道路にカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の検出を行う方法であって、前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、MIN-MAX処理を用いて輝度の高い線分の検出を行い、前記輝度の高い線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなして、当該視覚障害者を検出することを特徴とする。
【0010】
MIN-MAX処理を用いることによって、白杖の特徴である高い輝度と細長い形状を容易にかつ確実に検出することができる。また、このMIN-MAX処理は、外部環境の変化に強いという利点がある。
前記カメラの画像処理部は、人の脚の間を誤検出しないために、当該カメラに写った画像の中で、鉛直方向から一定の角度範囲を除外して輝度の高い線分を検出することが好ましい。
【0011】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、線分の長さの範囲を設定し、長さがこの範囲に入る輝度の高い線分を検出することが好ましい。
また、前記カメラの画像処理部は、視野を画面分割し、分割された画面ごとに輝度の高い線分を検出することが好ましい。こうすれば、カメラから分割された各画面までの実距離に基づいて、検出するための輝度閾値を画面ごとに最適な値に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(1)システム構成
図1は、本発明の視覚障害者追跡システムにおけるカメラ2a,2bの設置状態を示す図である。
カメラ2a,2bは既設の歩行者灯器の信号柱4に設置されている。信号柱4は、横断歩道の対向位置に設置されているので、カメラ2a,2bも横断歩道を長手方向の両側から見下ろすように配置されることになる。
【0013】
手前のカメラ2aの視野は、対面の横断待ち位置と横断歩道の対面寄りの領域に配置し、他方のカメラ2bの視野は、手前の横断待ち位置と横断歩道の手前寄りの領域に配置する。
このようにカメラ2aの視野を対面寄りの領域に配置したことにより、横断歩道を歩いて来る人を正面から写すことができ、白杖を持つ歩行者の検出が容易になる。横断歩道を歩いて来る人が道路の半ばを越えると、他のカメラ2bに制御を渡し、その人の背後から監視するという形態になる。
【0014】
図2は、カメラ2a,2b(以下総称するときは「カメラ2」という)と横断歩道との座標系を説明するための図である。地面に垂直な方向をz、横断歩道に沿った方向をy、yとzに直交する方向をxにとっている。信号柱4に取り付けられたカメラ2の高さをhとする。カメラ2の設置角度をθとする。
カメラ2の視野に写った画面を、y方向に分割している。分割された道路上の領域(分割領域という)を、S1,S2,・・・などで表す。このように横断歩道の画面を分割するのは、分割領域S1,S2,・・・のカメラ2からの距離に基づいて、白杖を検出するための輝度閾値を画面ごとに最適な値に設定するためである。
【0015】
図3は、カメラ2の画像信号を処理する画像処理部3のブロック構成図である。画像処理部3は、カメラ2の筐体に内蔵したタイプでもよいし、カメラ2と別筐体としてもよい。
画像処理部3は、カメラ2ごとに設置され、画像処理部3同士は有線又は無線の通信回線を通してつながっている。しかし、この構成に限られるものではなく、2つのカメラ2a,2bからケーブルを引き込んで共通の画像処理部3で処理するようにしてもよい。
【0016】
画像処理部3は、撮像部31、A/D変換部32、画像メモリ33、演算部34、および通信部35を具備している。撮像部31は、カメラ2から映像信号を取り込む。A/D変換部32は、映像信号をディジタル信号に変換する。画像メモリ33はディジタル変換した画像データを保存する。演算部34は本発明の視覚障害者検出処理や視覚障害者追跡処理を含む画像処理を実行する。通信部35は、画像処理部3同士の通信や、信号機制御システムや道路表示板、車載装置(ナビゲーション装置)等との通信を行う。
【0017】
画像処理部3が行う処理の概要は、次のとおりである。
(a)地点A(図1参照)で横断待ちの白杖携帯歩行者をカメラ2aで検出する。(b)当該歩行者の移動Bをカメラ2aで追跡する。当該歩行者の位置、歩行速度、形状などの特徴をカメラ2aからカメラ2bに通知する。(c)当該歩行者が横断歩道の後半Cに移ると、カメラ2bがカメラ2aから得た歩行者の情報に基づいて当該歩行者を引き続き追跡する。追跡中は歩行者信号の「青」を延長する。(d)カメラ2bが横断完了Dを確認する。
【0018】
画像処理部3が行う以上の(a)〜(d)の処理手順を、以下、フローチャート(図4)を用いて詳細に説明する。
画像処理部3は、カメラ2a,2bの画像信号を取り込む(ステップS1)。取り込み周期は、所定の時間、例えば0.1秒ごとである。
画像処理部3は、視野内の分割領域S1,S2,・・・内で次の処理を行う(ステップS2)。
【0019】
まず、MIN処理を行う(ステップS3)。このMIN処理は、カメラ2から取り込んだ画像信号に基づいて、ある画素に注目し、その注目画素の輝度を、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が低い(暗い)画素の輝度の値で置き換える処理である。この処理を全ての画素について行う。
図5を参照して具体的に説明すると、注目画素とその周辺の8つの画素を参照する。注目画素の輝度は35であり、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が低い(暗い)画素の輝度の値は10である。そこで注目画素の輝度を10に置き換える。
【0020】
以上のMIN処理を各分割領域S1,S2,・・・について実施する。実施回数は、例えばカメラ2から所定距離よりも遠くにある分割領域では1回実施する、近い分割領域では2回実施する、などである。これは、近い分割領域では画像が大きく、輝度の高い部分の幅も太いからである。
この処理により、輝度の高い図形は、その輪郭が後退して面積が小さくなる。処理の回数を重ねる程、図形は痩せていく。特に、面積の小さな図形、例えば点や細い線は消滅する。
【0021】
次に、MAX処理を行う(ステップS4)。このMAX処理は、カメラ2から取り込んだ画像信号に基づいて、ある画素に注目し、その注目画素の輝度を、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が高い(明るい)画素の輝度の値で置き換える処理である。
図6を参照して具体的に説明すると、注目画素とその周辺の8つの画素を参照する。注目画素の輝度は5であり、その注目画素とその周辺画素のなかで最も輝度が高い(明るい)画素の輝度の値は40である。そこで注目画素の輝度を40に置き換える。
【0022】
以上のMAX処理を各分割領域S1,S2,・・・について実施する。実施回数は、例えばカメラ2から所定距離よりも遠くにある分割領域では1回実施する、近い分割領域では2回実施する、などである。
このMAX処理により、輝度の高い図形は、その輪郭が膨張して面積が大きくなる。処理の回数を重ねる程、図形は太っていく。
【0023】
したがって、前記MIN処理の後で、このMAX処理を、前記MIN処理と同じ回数行うことにより、痩せて行った図形は、元の大きさに戻る。しかし、前記MIN処理で消滅した点や細い線は復活しない。
その結果、視覚障害者の持っている白杖のような細長い物体が消えた画像が得られる。
次に、画像処理部3は、線分検出処理を行う(ステップS5)。
【0024】
これはまず、前記MIN処理とMAX処理を行った画像と、処理前の元の画像との差分を計算する処理である。これにより、輝度の高い細長い物体だけの画像が得られる。
画像処理部3は、この差分画像に基づいて、画像内のノイズを取り除くため、閾値を適用する。数式で説明すると、つぎのようになる。
画素座標(x,y)における、元の画像の輝度をI1(x,y)、MIN処理及びMAX処理を行った画像の輝度をI2(x,y)とすると、差分S(x,y)は、
S(x,y)=I1(x,y)−I2(x,y)
となる。二値化した輝度B(x,y)は、
B(x,y)=0,if|S(x,y)|<閾値
B(x,y)=1,if|S(x,y)|≧閾値
となる。
【0025】
前記閾値は、分割領域S1,S2,・・・ごとに最適な値に設定する。例えばカメラ2から遠くにある分割領域では、画面が比較的暗いので低い閾値を設定し、カメラ2から近くにある分割領域では、画面が比較的明るいので高い閾値を設定する。また、その時刻の外界の明るさによっても閾値を変更する。例えば、晴れていれば高い閾値を設定し、曇や雨であれば、近い閾値を設定する。
【0026】
そして、この閾値適用後の二値化画像において、白杖のような細長い物体を検出する。このためには、細長い物体が延びている角度範囲が所定の角度範囲に入っているかどうか、物体の長さが適正な範囲に入っているか、をチェックする。
図7は、閾値適用後の二値化画面における角度範囲の説明図である。横軸はx、縦軸は鉛直方向zにとっている。しかし、実際にカメラ2a,2bに写った画面はx-z面に対応しているわけではない。これは、図2を見れば判るように、カメラ2は高い位置から道路を見下ろしていているからである。そこで、カメラ2に写った画面の座標と、実際の三次元座標との変換式を、カメラ2の高さhや、カメラ2の見下ろす角度θなどをパラメータとして画像処理部3のコンピュータのプログラムに組み込んでおく必要がある(特開平4ー20189号公報、特開平6ー35443号公報など参照)。ただし、画面上の二次元座標を三次元座標に変換するには、三次元空間での座標の数を1つ減らす必要がある。これには、三次元空間での座標のわかっている物、例えば、道路上の目印を基準位置として利用すればよい。
【0027】
検出された細長い物体が杖だとしたら、その頂部は、ほぼ手の高さである。手の高さを一定値z0とする。高さz0の位置で細長い物体のx座標を特定する。これをx0とする。そして、点(x0,z0)を始点とし、鉛直方向から角度±aの範囲内は、両脚の隙間を誤検知するおそれがあるとして、白杖検出角度範囲より除外する。また、計算量を削減するためと、白杖を高く振り回すことは稀だろうとの予測に基づき、白杖の検出角度範囲に上限±bを設定する。したがって、角度-bから-aの範囲及び角度aからbの範囲が白杖の検出範囲になる。角度aは具体的には、約10度とし、角度bは具体的には、約30度とする。
【0028】
この角度検出範囲において、点(x0,z0)を始点とし、傾きφを1度ごとに変化させた直線を設定する。
図8は、設定された直線を示す。この直線上に、前記閾値適用後の二値化結果が1となる画素が、あらかじめ設定した、これ以上短ければ杖でないと判断するための閾値以上、連続して存在するとき、白杖であると検出する。
前記「これ以上短ければ杖でないと判断するための閾値」は、もちろん、分割領域S1,S2,・・・ごとに異なる。カメラ2から遠くにある分割領域ほど小さな値になり、カメラ2から近くにある分割領域では同じ物体でも大きく写るので、大きな値になる。
【0029】
また、連続して存在する上限値もあらかじめ設定しておき、これ以上連続する場合は、杖よりも長い他の物体と判断して、検出対象から除外する。この閾値もカメラからの距離に応じて異なった値に設定する。
以上で白杖携帯者が検出できたので、次にこの白杖携帯者を追跡する。
追跡をする理由は、白杖携帯者が横断歩道を半分以上渡って当該カメラ2の視野から外れたときに、対向するカメラ2に白杖携帯者の情報を渡してやる必要があるからである。対向するカメラ2は、白杖携帯者を背中から見ていることになり、常時、白杖を検出することはできない。したがって、白杖携帯者の特徴をとらえて、その情報を、対向するカメラ2に渡すのである。
【0030】
まず、人の存在領域を検出し、進行方向を判定し及び歩行速度を算出する。
人の存在領域は、時間差分法により前後時間の画像の差異により、移動物体の範囲を検出する(佐伯規夫、鈴木健志、岩田清「画像認識による侵入者検出方式」、[online]、1999年、[平成16年4月26日検索]、インターネット<http://www.fujitsugeneral.co.jp/japanese/techj/1999-01/pdf/05rgazou.pdf>)。この移動物体の範囲の縦及び横のサイズが一定範囲内のとき、歩行者の存在領域としてとらえることができる(ステップS6)。さらに、図9に示すように、この存在領域内に白杖を含むとき、白杖携帯者の存在領域として考えることができる(ステップS7)。
【0031】
次に、白杖携帯者の特徴を検出する(ステップS8)。特徴として、服の色合いと背の高さを検出する。服の色合いは、白杖携帯者の存在領域内のRGB成分又はHSV成分の構成比率を算出して特定する。背の高さは、白杖携帯者の存在領域の上端部分を頭部と考えて地面からの高さを算出する。なお、特徴として、これらの要素に限定されるものではなく、他に服の模様のエッジ情報に基づいて、のっぺら、縦縞、横縞、ざらざらなどの要素を採用してもよい。
【0032】
次に、進行方向及び歩行速度を算出するために、この白杖携帯者の存在領域の下端位置を足元としてとらえる。そして、下記の算出式により、白杖携帯者の実際の横断歩道上での位置を算出する。
図10及び図2を参照して、カメラ2の光軸と路面との角度をθ、カメラ2の設置高さをh、レンズの焦点距離をf、カメラ2の画面上の座標を(p,q)とする。
【0033】
白杖携帯者の足元の座標A(x,y,0)は、
x=hp/(fsinθ−qcosθ)
y=h(qsinθ+fcosθ)/(fsinθ−qcosθ)
のように求まる。
このように検出した白杖携帯者の位置を、時間前後の画像において比較し、一定距離内に入るかどうかを調べる(ステップS9)。前記「一定距離」は通常の人間の歩く速度を基準にして設定しておく。
【0034】
一定距離内に入り、かつ白杖携帯者の特徴が共通しているものを同一白杖携帯者とみなして追跡する。
そして、白杖携帯者の進行方向と速度を算出する。進行方向は、足元位置の移動ベクトルのy成分が正か負かに基づいて判定する。移動速度は、足元位置の移動距離とその時間より算出する。
【0035】
そして、この白杖携帯者の追跡が出来れば、その特徴を更新する(ステップS10)。
もし、白杖携帯者の位置が、前記一定距離内に入らない場合、白杖携帯者が新たに出現したと考え、その白杖携帯者を新規登録する(ステップS11)。このとき、当該白杖携帯者の進行方向と速度、白杖携帯者の特徴は、一から検出しなおすので初期化する。
また、今回入力した画像で、人の存在領域に白杖が検出できなかった場合、つまりステップS7で"No"であった場合は、前回の検出処理で白杖携帯者が検出されており、かつ足元の位置が、前回と今回の画像において一定距離内に入るならば、これらを同一の白杖携帯者とみなして、白杖携帯者の登録情報を更新する(ステップS13)。
【0036】
以上のようにして、同一の白杖携帯者を追跡することができ、かつその登録情報を更新することができる。
連続して一定回数以上、登録情報の更新があるかどうか調べ(ステップS14)、登録情報の更新がない場合、その白杖携帯者は、カメラ2の視野から外れたと判断して、白杖携帯者の進行方向を調べる(ステップS15)。白杖携帯者の進行方向が他のカメラ2の視野から遠ざかる方向である場合、横断歩道を渡り終えたと判断し、この登録情報を除去する(ステップS16)。白杖携帯者の進行方向が他のカメラ2の視野へ向かっている場合、他のカメラ2へその白杖携帯者へ登録情報を送信する(ステップS18)。
【0037】
ステップS14で登録情報の更新がある場合、白杖携帯者が自カメラ2の視野を歩行中と判断し、歩行者信号の「青」を延長するか、及び/又は情報掲示板に視覚障害者が歩行している旨を表示する(ステップS17)。また、ナビゲーション装置などの車載装置に送信してドライバに注意を促す。そして、他のカメラ2へその白杖携帯者へ特徴情報を送信する(ステップS18)。
【0038】
図11は、カメラ2a,2b間で受け渡しする白杖携帯者の特徴情報のデータフォーマットである。特徴情報には、カメラ番号、白杖携帯者検出数n、検出m人目の位置座標x,y、進行方向、歩行速度、身長、色合いの各情報が含まれている。ただし、m≦nとする。
他のカメラ2は、この白杖携帯者の特徴情報を受信すれば、本フローチャート(図4)を適用して、当該白杖携帯者の検出、追跡及び登録情報の更新処理を行う。
【0039】
このようにして、白杖を持った視覚障害者を確実に検出することができ、道路を渡っている視覚障害者を見失うことなく、追跡することができる。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】視覚障害者追跡システムにおける、横断歩道上のカメラ2a,2bの設置状態を示す図である。
【図2】カメラ2と横断歩道との座標系を説明するための図である。
【図3】カメラ2の画像信号を処理する画像処理部3のブロック構成図である。
【図4】画像処理部3が行う視覚障害者の検出と追跡の手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】画面上でのMIN処理を説明するための画素構成図である。
【図6】画面上でのMAX処理を説明するための画素構成図である。
【図7】白杖を検出するための角度範囲の説明図である。
【図8】白杖に相当する線分を含む画素構成図である。
【図9】白杖携帯者の特徴を検出するための、当該白杖携帯者の存在領域を示す図である。
【図10】白杖携帯者の実際の横断歩道上での位置を示す図である。
【図11】カメラ2a,2b間で受渡しする白杖携帯者の特徴データフォーマットを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
2,2a,2b カメラ
3 画像処理部
4 信号柱
31 撮像部
32 A/D変換部
33 画像メモリ
34 演算部
35 通信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の対向位置にそれぞれカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の追跡を行う視覚障害者追跡システムであって、
各カメラの視野は、互いに道路の対向側を監視し、かつ、道路の真中で重複した状態に設定されており、
各カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、輝度の高い線分の検出を行い、前記線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなし、当該視覚障害者の特徴情報に基づいて当該視覚障害者を追跡し、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことを特徴とする視覚障害者追跡システム。
【請求項2】
前記カメラは、歩行者灯器の柱に設置されている請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項3】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、前記輝度の高い線分を含む当該視覚障害者の存在領域を検出し、この検出された当該視覚障害者の存在領域において前記特徴情報を抽出するものである請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項4】
当該視覚障害者の特徴情報は、服の色合いと背の高さである請求項1又は請求項3記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項5】
前記カメラの画像処理部は、検出された視覚障害者の進行方向を検出し、当該進行方向が手前向きである場合に、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すものである請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項6】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、青信号時間を延長する信号を送出する請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項7】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、表示板に表示をさせる信号を送出する請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項8】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、車載装置への信号を送出する請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項9】
道路にカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の検出を行う視覚障害者検出方法であって、
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、MIN-MAX処理を用いて輝度の高い線分の検出を行い、前記輝度の高い線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなして、当該視覚障害者を検出することを特徴とする視覚障害者検出方法。
【請求項10】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、鉛直方向から一定の角度範囲を除外して、輝度の高い線分を検出する請求項9記載の視覚障害者検出方法。
【請求項11】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、線分の長さの範囲を設定し、長さがこの範囲に入る輝度の高い線分を検出する請求項9記載の視覚障害者検出方法。
【請求項12】
前記カメラの画像処理部は、視野を画面分割し、分割された画面ごとに輝度の高い線分を検出するものである請求項9記載の視覚障害者検出方法。
【請求項1】
道路の対向位置にそれぞれカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の追跡を行う視覚障害者追跡システムであって、
各カメラの視野は、互いに道路の対向側を監視し、かつ、道路の真中で重複した状態に設定されており、
各カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、輝度の高い線分の検出を行い、前記線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなし、当該視覚障害者の特徴情報に基づいて当該視覚障害者を追跡し、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すことを特徴とする視覚障害者追跡システム。
【請求項2】
前記カメラは、歩行者灯器の柱に設置されている請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項3】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、前記輝度の高い線分を含む当該視覚障害者の存在領域を検出し、この検出された当該視覚障害者の存在領域において前記特徴情報を抽出するものである請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項4】
当該視覚障害者の特徴情報は、服の色合いと背の高さである請求項1又は請求項3記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項5】
前記カメラの画像処理部は、検出された視覚障害者の進行方向を検出し、当該進行方向が手前向きである場合に、その追跡している視覚障害者の特徴情報を他のカメラの画像処理部に渡すものである請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項6】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、青信号時間を延長する信号を送出する請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項7】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、表示板に表示をさせる信号を送出する請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項8】
前記カメラの画像処理部は、視覚障害者の追跡中、車載装置への信号を送出する請求項1記載の視覚障害者追跡システム。
【請求項9】
道路にカメラを設置して、その道路を渡る視覚障害者の検出を行う視覚障害者検出方法であって、
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、MIN-MAX処理を用いて輝度の高い線分の検出を行い、前記輝度の高い線分が検出された場合に視覚障害者の白杖とみなして、当該視覚障害者を検出することを特徴とする視覚障害者検出方法。
【請求項10】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、鉛直方向から一定の角度範囲を除外して、輝度の高い線分を検出する請求項9記載の視覚障害者検出方法。
【請求項11】
前記カメラの画像処理部は、当該カメラに写った画像の中で、線分の長さの範囲を設定し、長さがこの範囲に入る輝度の高い線分を検出する請求項9記載の視覚障害者検出方法。
【請求項12】
前記カメラの画像処理部は、視野を画面分割し、分割された画面ごとに輝度の高い線分を検出するものである請求項9記載の視覚障害者検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2005−332071(P2005−332071A)
【公開日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−148031(P2004−148031)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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