説明

角度調整テーブル装置

【課題】角度調整テーブル装置のテーブルの回転角度と駆動側の直線駆動量の関係を最適化して、該関係が線形的に変化する角度調整テーブル装置を提供する。
【解決手段】ベース1上に回転自在に設けたテーブル4を所定の回転方向に位置決めする位置決め機構を備えたテーブル装置において、位置決め機構は、テーブルの回転半径方向と直交して延出した直線駆動手段7と、直線駆動手段による直線運動を円運動に変換しテーブルに伝達する連結部とを具備し、連結部は、直線駆動手段に固定されるブラケット11に第1の連結点12aで旋回可能に連結された第1の直線案内14aと、円運動するテーブル4と第2の連結点12bで旋回可能に連結された第2の直線案内14bと、第1及び第2の直線案内に摺動可能に架け渡され、直線駆動手段と反対側を旋回中心とする連結アーム20を有し、直線駆動手段による直線駆動によってテーブルが所定の回転方向に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を所定角度に調整して位置決めする角度調整テーブル装置に関し、特に、直線駆動手段による直線運動を所定角度範囲の円運動に変換することにより、対象物を回転方向に調整して位置決めする角度調整テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の角度調整テーブル装置として、角度調整テーブル装置の高さを抑えバックラッシュを少なくするために、ボールねじの駆動による直線方向の動きを、所定角度範囲における円運動に変換し、テーブルを回転方向に位置決めする角度調整テーブル装置が知られている。
このような角度調整テーブル装置は、対象物(例えば、半導体ウェハ等の検査対象物)をセットすることが可能なテーブルと、このテーブルを所定角度範囲で回転させて所定の回転方向に位置決めすることが可能な位置決め機構とを備えている。なお、テーブルは、ベース上に回転自在に設けられている。
【0003】
位置決め機構は、テーブルから半径方向に延出したアーム部と、このアーム部を横断する方向に延出した、ねじ軸を有する送りねじとしてのボールねじと、ホールねじのねじ軸を回転させるためのモータと、ボールねじによる直線運動を所定角度範囲における円運動に変換してテーブルに伝達するための連結部とを備えている。
また、位置決め機構の連結部は、ボールねじのねじ軸に直交する方向に設けられた連結部用リニアガイドと、アーム部と連結部用リニアガイドとを連結する連結点とを備えている。このような構成によって、ボールねじの駆動量に応じた位置決め機構の直線駆動を連結部によって伝達することでテーブルが回転変位する(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
ここで、特許文献1に開示されている連結部機構を簡略図で表わすと、図8(a)に示すように、駆動側(ボールねじ)の直線移動量Ysが、直線案内(図中□印参照)を経て回転案内(図中○印参照)によってテーブルのθ°の回転角度変位に変換されている。
これを図8(b)の模式図で表わし、駆動側とテーブルの連結点からテーブルの回転中心までの距離`をrとする(図中△印参照)。この場合、駆動側の直線駆動量Ysの理論値をYs=(r)sinθで求めることができる。以下、このような連結部機構をサイン型連結部機構と称する。
【0005】
また、特許文献2に開示されている連結部機構を簡略図で表わすと、図9(a)に示すように、駆動側(ボールねじ)の直線駆動量Ytが、回転案内(図中○印参照)を経て直線案内(図中□印参照)によってテーブルのθ°の回転角度変位に変換されている。
これを図9(b)の模式図で表わすと、駆動側とテーブルの連結点はテーブルの半径rにアームfを加えた、駆動側の直線駆動経路上に存在する(図中△印参照)。そして、駆動側の直線移動量Ytの理論値をYt=(r+f)tanθで求めることができる。以下、このような連結部機構をタンジェント型連結部機構と称する。
【0006】
上記サイン型連結部機構とタンジェント型連結部機構において、テーブルの回転角度(単位回転角度量)θと、駆動側の直線駆動量Ys,Ytおよび、テーブルの回転角度0°の駆動側の直線駆動量Ys,Ytと、回転角度45°の駆動側の直線駆動量Ys,Ytを直線で結んだ線形値に対する各回転角度に対する実際の直線駆動量Ys,Ytの誤差es,etの理論値を図10の表に示す。
なお、この場合、テーブルの半径rは50mm、テーブルの回転角度θは0°〜50°、アームfの長さは10mmを想定した。
これらの値をテーブルの回転角度θと駆動側の直線駆動量Yの関係でグラフ化すると(図5のYtおよびYs参照)、サイン型連結部機構では、テーブルの回転角度θが増加するにつれて、単位回転角度量に必要な駆動側の直線駆動量が少なくなり、また、タンジェント型連結部機構では、テーブルの回転角度θが増加するにつれて、単位回転角度量に必要な駆動側の直線駆動量が多くなる。
【0007】
また、上記値をテーブルの回転角度θと非線形誤差eの関係でグラフ化すると(図6のesおよびet参照)、サイン型連結部機構では、テーブルの回転角度θが0°〜45°の間の角度にあるとき、非線形誤差eがプラス側に偏向する誤差が生じ、タンジェント型連結部機構では、テーブルの回転角度θが0°〜45°の間の角度にあるとき、非線形誤差eが大きくマイナス側に偏向する誤差が生じる。
このような非線形誤差がプラス側あるいはマイナス側に偏向することによって、テーブルの回転角度θの単位変化量の変化に対して駆動側の直線駆動量Yが不均一な関係になる。
そこで、従来技術において、例えばテーブルの回転角度θを0°〜45°まで5°ステップの均一な間隔で変化させる場合、テーブルの回転角度ステップに対して駆動側の直線駆動量Yの変化量を均等にすることができなかったため、駆動側には、テーブルの各回転角度θに応じた駆動側の直線駆動量Yを関連づけたり、テーブルの回転角度θを検出してフィードバックしたりするなどの複雑な制御が必要であった。
また、このような複雑な制御を避けると、使用できる回転角度範囲θが制限を受け、狭い角度範囲内しか使用できなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2005−221044号公報
【特許文献2】特開2002−341076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、角度調整テーブル装置のテーブルの回転角度と駆動側の直線駆動量の関係が線形的に変化する角度調整テーブル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明が成した技術的手段は、ベース上に回転自在に設けられたテーブルと、このテーブルを所定角度範囲で回転させて所定の回転方向に位置決めすることが可能な位置決め機構とを備えたテーブル装置において、位置決め機構は、テーブルの回転半径方向と直交する方向に延出した直線駆動手段と、該直線駆動手段による直線運動を所定角度範囲における円運動に変換してテーブルに伝達するための連結部とを具備し、連結部は、前記直線駆動手段に固定されて直線運動をするブラケットと第1の連結点によって旋回可能に連結された第1の直線案内と、円運動するテーブルと第2の連結点によって旋回可能に連結された第2の直線案内と、該第1の直線案内および第2の直線案内に摺動可能に架け渡されるとともに、テーブルを挟んで直線駆動手段と反対側に旋回中心を有する連結アームとを有し、直線駆動手段によるブラケットの直線駆動によって連結アームが円弧運動して、テーブルが所定の回転方向に位置決めされることを特徴とする角度調整テーブル装置としたことである。
この場合において、連結アームの旋回中心はベースと旋回自在に支持されていても良い。あるいは、連結アームの旋回中心を中心とし、連結アームを摺動案内する円弧ガイドをベース上に備え、連結アームは、円弧ガイドにそって移動可能であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、角度調整テーブル装置のテーブルの回転角度と駆動側の直線駆動量の関係が線形的に変化する角度調整テーブル装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る角度調整テーブル装置について、添付図面に基づいて説明する。
例えば、本実施形態の角度調整テーブル装置は、図1(a)および図1(b)に示すように、図示しない対象物(例えば、半導体ウェハ等の検査対象物)をセットすることが可能なテーブル4と、このテーブル4を所定角度範囲で回転させて所定の回転方向に位置決めすることが可能な位置決め機構とを備えている。
【0013】
テーブル4は、略円板状に形成され、ベース1上に凸設されたテーブル回転台2のテーブル回転軸受3によって、回転中心4cを軸に回転自在に支持されている。
【0014】
位置決め機構は、テーブルの半径方向と直交する方向に延出した直線駆動手段と、該直線駆動手段による直線運動を所定角度範囲における円運動に変換してテーブルに伝達するための連結部とを備えている。
直線駆動手段は、本実施形態では、ねじ軸を有する送りねじとしてのボールねじ7を採用している。
ボールねじ7は、その先端側がベース1に固定されたねじ回転支持部9によって回転可能に支持され、その基端側がベース1に固定されたねじモータ側回転支持部8によって回転可能に支持される。さらに、ボールねじ7は、ねじ軸を回転させるための駆動源としてのモータ5に接続されている。
【0015】
そのボールねじ7は、ねじ軸の外周面に形成された螺旋状ボール溝(図示しない)と、このボール溝に対向して螺旋状ボール溝が内周面に形成されたボールナットと、ねじ軸及びボールナットの双方のボール溝により形成される螺旋状転動空間に転動自在に配置された複数のボール(図示しない)とを備えている。
この場合において、モータ5によりねじ軸を回転させると、このときの回転運動が複数のボールに伝達され、これら複数のボールが螺旋状転動空間に沿って循環することにより、ボールナットをねじ軸に沿って往復駆動させることができる。
【0016】
ボールナットは、スライダ10に固定されており、このスライダ10は、ボールねじ用リニアガイド6により直進安定性が確保されている。この場合、ボールねじ用リニアガイド6は、スライダ10に固定されたベアリング6bと、このベアリング6bが摺動可能且つボールねじ7のねじ軸に沿って平行に延出したガイドレール6rと、ベアリング6bとガイドレール6rとに設けられたボール溝(図示しない)により形成される転動空間に転動自在に配置された複数のボール(図示しない)とを備えており、このガイドレール6rは、ベース1に固定されている。この構成によれば、スライダ10がガイドレール6rに沿って移動することにより、ボールナットは、スライダ10を介してボールねじ用リニアガイドで案内されつつ往復駆動される。
【0017】
連結部は、前記ボールナットに固定されて直線運動をするスライダ10に取り付けられたブラケット11と第1の連結点12aによって旋回可能に連結されている第1の直線案内(ベアリング)14aと、円運動するテーブル4と第2の連結点12bによって旋回可能に連結されている第2の直線案内(ベアリング)14bと、該第1の直線案内14aおよび第2の直線案内14bに摺動可能に架け渡されるとともに、テーブル4を挟んで送りねじと反対側に旋回中心を有する連結アーム20とを有している。
【0018】
第1の直線案内14aは、ブラケット11から下向きに凸設して設けられた円柱状の第1の連結点12aと軸受13aを介して旋回可能に連結されており、下面には、後述する連結アーム20の連結部用ガイドレール20rが摺動可能に組み合わされる凹部を備えている。
第2の直線案内14bは、テーブル4の外周部4aから下向きに凸設して設けられた円柱状の第2の連結点12bと軸受13bを介して旋回可能に連結されており、下面には、後述する連結アーム20の連結部用ガイドレール20rが摺動可能に組み合わされる凹部を備えている。
【0019】
連結アーム20は、旋回中心15からテーブル4を超えてボールねじ7にかけて水平に配された板状体であり、その構成は、長円形型の外周形状を有する中心部分20cとその中心部分20cの外周から同軸上に水平に延出している基端側アーム20bと先端側アーム20aとから成る。
長円形の中心部分20cには、テーブル4を回転自在に支持するテーブル回転台2が貫通する穴20hを有している。該穴20hは、連結アーム20の揺動中において、連結アーム20とテーブル回転台2とが接触することを回避可能な大きさに設けられており、本実施形態では中心部分20cの長円形型の外周形状よりも縮小された長円形型の形状を成している。
【0020】
基端側アーム20bは、中心部分20cにおけるボールねじ7と反対側の周面から水平にかつ直状に延出され、その端部には、下向きに凸設して設けられた円柱状の旋回中心15を有する。その旋回中心15は、ベース1から凸設された旋回中心支持台16aに連結アーム旋回軸受16を介して旋回自在に軸支されている。
先端側アーム20aは、中心部分20cにおけるボールねじ7と対向する側の周面から水平かつ直状に延出され、前記基端側アーム20bと同軸上に配される。さらに、先端側アーム20aの上面には、該先端側アーム20aに沿って連結部用ガイドレール20rが形成されている。その連結部用ガイドレール20rは、前記第1の直線案内14aおよび第2の直線案内14bに摺動可能に掛け渡されている。
上記構成により、連結アーム20は旋回中心15を旋回軸として旋回し、連結アーム20の先端側アーム20aとともに、前記第1の直線案内14aおよび第2の直線案内14bが旋回中心15を旋回軸として旋回する。
【0021】
なお、本実施形態では、連結アーム20の中心部分20cは長円形型の外周を有するとともに長円形型の穴20hを有する形状としたが、連結アーム20の揺動中において、連結アーム20とテーブル回転台2とが接触することを回避可能な限りにおいて、他の形状であっても良い。例えば、長円形型の片側のないU字形状をしていてもよい。
また、本実施形態では、中心部分20cの外周から先端側アーム20aと基端側アーム20bとが同軸上に配される構成としたが、前記第1の直線案内14aおよび第2の直線案内14bが旋回中心15を旋回軸として旋回可能な限りにおいて、他の構成であっても良い。例えば、先端側アーム20aと基端側アーム20bは直状に形成されず、曲線状に形成され、先端側アーム20aの上面には、直状の連結部用ガイドレール20rが形成されていても良い。
【0022】
上記構成による角度調整テーブル装置によれば、モータ5を駆動してボールねじ7のねじ軸を回転させると、ねじ軸の回転運動は複数のボールに伝達され、これら複数のボールが螺旋状転動空間に沿って循環することにより、ボールナットをねじ軸に沿って往復駆動させる。このとき、図2に示すように、ボールナットの往復駆動は、スライダ10、ブラケット11を介して第1の連結点12aを直線移動させる。
このとき、第1の連結点12aと連結されている第1の直線案内14aが直線移動して、第1の直線案内14aと連結部用ガイドレール20rによって摺動可能に組み合わされている連結アーム20を所定方向に移動させる。
【0023】
この場合において、連結アーム20は、旋回中心15が軸支されているため、旋回中心15を中心として旋回させられ(図2中矢印B参照)、第1の直線案内14aは、連結アーム20の旋回に合わせて回転する。
さらに、連結アーム20は、第1の直線案内14aと第2の直線案内14bに架け渡されているので、連結アーム20の旋回に伴って、第2の直線案内14bおよび、第2の直線案内14bに連結された第2の連結点12bがテーブル4の回転中心4cを中心として円弧状に旋回する(図2中矢印C参照)。
【0024】
このとき、第2の連結点12bはテーブル4の外周部4aから延出しているので、第2の連結点12bの円弧状の旋回によって、テーブル4がテーブルの回転中心4cを中心として所定の回転方向に回転する(図2中矢印C参照)。
そして、所定のタイミングでモータ5の駆動を停止すると、連結アーム部20が所定の揺動(旋回)角度で位置決めされ、それに伴ってテーブル4が所定の回転方向に位置決めされる。この結果、テーブル4上にセットされた対象物を所定の回転方向に位置決めすることができる。
【0025】
このようにテーブル4が回転している間、連結アーム20は円弧(旋回)運動となるため、連結アーム20はブラケット11の直線駆動に沿った移動のみならずこれと直交する方向にもわずかに変位する。
しかし、この変位分は、連結アーム20の先端側アーム20a上に備えられた連結部用ガイドレール20rが前記第1の直線案内14aおよび第2の直線案内14bと摺動変位することにより吸収される。これにより、アーム20やテーブル4等に無理な力が加わること無く、比較的大きな旋回角度を得ることが可能となる。
【0026】
上記構成の角度調整テーブル装置は、テーブル4の回転角度が0°の状態(連結アームの旋回中心15とテーブル4の回転中心4cと第2の連結点12bおよび第1の連結点12aが一直線に並んだ状態)において、連結アーム20の旋回中心15の軸心からテーブル4の回転中心までの距離をc、テーブルの回転中心4cから第2の連結点12bの軸心までの距離をr、第2の連結点12bの軸心から第1の連結点12aの軸心までの距離をf(図1乃至図3のc,r,f参照)とし、テーブル4がθ°回転した場合の連結アーム20の旋回角度をαとすれば、それらの連結部機構の関係は、図3の模式図で表わすことができる。
そして、駆動側の直線駆動量Yhは、Yh=(c+r+f)tanαで表わされるとともに、連結アームの旋回角度αは、α=tan−1(((r)sinθ)/(c+(r)cosθ))で求めることができる。
【0027】
この場合における、テーブルの回転角度(単位回転角度量)θと、駆動側の直線駆動量Yhおよび、テーブルの回転角度0°の駆動側の直線駆動量Yhと、回転角度45°の駆動側の直線駆動量Yhを直線で結んだ線形値に対する各回転角度に対する実際の直線駆動量Yhの誤差ehの理論値を図4の表に示す。
なお、この場合、テーブルの半径rは50mm、テーブルの回転角度θは0°〜50°、連結アーム20の旋回中心15の軸心からテーブル4の回転中心までの距離cを96mm、第2の連結点12bの軸心から第1の連結点12aの軸心までの距離fを10mmと想定した。
【0028】
図4の表から、本実施形態による角度調整テーブル装置の各角度間における駆動側の直線駆動量は4.66又は4.67であることが判る。
さらに、本実施形態による角度調整テーブル装置の線形値との誤差ehの精度は小数点以下4桁で表れており、この精度は、従来の角度調整テーブル装置(サイン型連結部機構およびタンジェント型連結部機構)の表(図10参照)の線形値との誤差es,etの精度と比べて、飛躍的な精度向上を果たしていることが判る。
さらに、サイン型連結部機構の線形値とのブレesの最大値(Max)と最小値(Min)との差1.49、およびタンジェント型連結部機構の線形値とのブレetの最大値(Max)と最小値(Min)との差5.36に対して、本実施形態による連結部機構の線形値とのブレeの最大値(Max)と最小値(Min)との差は0.0142である。
【0029】
これらの値をテーブルの回転角度θと駆動側の直線駆動量Yの関係でグラフ化すると(図5のYh参照)、テーブルの回転角度θが増加量と、単位回転角度量に必要な駆動側の直線駆動量との関係は、終始にわたり、線形の関係を維持している特徴を有することが証明される。
また、上記値をテーブルの回転角度θと非線形誤差eの関係でグラフ化すると(図6のeh参照)、テーブルの回転角度θが0°〜45°の間のどの角度においても、非線形誤差eが限りなくゼロを維持していることが証明される。
【0030】
このように、本実施形態における角度調整テーブル装置は、上記特徴を有しているので、テーブルの回転角度θの変化量に対して、駆動側の直線駆動量Yhの変化量は、終始均一な変化量を維持することができる。例えば、上記の表4の例によれば、テーブルの回転角度θを0°〜45°まで5°ステップの均一な間隔で変化させる場合には、駆動側の直線駆動量Yは0.66乃至0.67cmずつ、ほぼ均一な間隔で変化させるだけで良い。
【0031】
テーブルの回転角度の変化量と駆動側の直線駆動の変化量の双方ともが線形に変化することから、直線駆動量Yとテーブルの回転角度θの関係が非常に単純な関係となり、テーブルの回転角度を所望の角度に合わせ易く、角度調整テーブル装置の操作が容易となった。
さらに、従来の角度調整テーブル装置のように、テーブルの各回転角度θに応じた駆動側の直線駆動量Yを関連づけたり、テーブルの回転角度θを検出してフィードバックしたりするなどの複雑な制御を必要とせず、比較的簡単な制御で足りるので、角度調整テーブル装置の製作コストを低廉に抑えることが可能となった。
【0032】
また、本実施形態では、連結アーム20はテーブル4を挟んでボールねじ7と反対側に旋回中心15を有し、その旋回中心15がベース1から凸設された旋回中心支持台16aに連結アーム旋回軸受16を介して旋回自在に支持されているが、本実施形態による角度調整テーブル装置の変形例として、連結アーム20の旋回中心15が支持されない形状であっても良い。
【0033】
連結アーム20は、例えば図7(a)に示すように、テーブル4のボールねじ7側の近傍からボールねじ7にかけて水平に配された板状体であり、連結アーム20の上面には、該連結アーム20に沿って連結部用ガイドレール20rが形成されている。その連結部用ガイドレール20rは、前記第1の直線案内14aおよび第2の直線案内14bに摺動可能に掛け渡されている。なお、連結アーム20は少なくともボールネジ7とテーブル4の外周部4aとにわたる長さを有すればよい。また、第1の直線案内14aおよび第2の直線案内14bの形状については前述の本実施形態と同様である。
【0034】
さらに、連結アーム20のテーブル4側は連結アーム20の旋回中心15を中心とした湾曲形状を備えた円弧ガイドによって支持される(図7(b)参照)。
円弧ガイドは、ベース1から凸設して設けられる円弧ガイドレール19aと、連結アーム20の下面であって前記第2の直線案内14bの下方にあたる位置に設けられたスライダ19bとで構成される。
これにより、第2の直線案内14bに連結される第2の連結点12bと連結アーム20の下面のスライダ19bと円弧ガイドレール19aとが垂線上に直列配置される。なお、角度調整テーブル装置のその他の構成については、上述の本実施形態で説明した構成と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0035】
上記構成により、連結アーム20は旋回中心15を旋回軸として旋回し、連結アーム20の先端側アーム20aとともに、前記ガイドレール20rが旋回中心15を旋回軸として旋回可能となる。
そして、モータ5を駆動することにより、第1の連結点12aが直線駆動させられると、スライダ14aとガイドレール20rを介して連結アーム20が円弧ガイドレール19aにガイドされて回転中心15を中心として揺動(旋回)させられることにより、ガイドレール20r上を摺動可能なスライダ14bと揺動可能に連結されたテーブル4を所定の回転方向に回転(旋回)させることができる。
また、本変形例の構成によれば、連結アーム20が回転中心15から延出していないので、角度調整テーブルの幅を抑えることができ、省スペースの要求に応えることができる。
なお、本変形例による円弧ガイドは、上述した本実施形態による角度調整テーブル装置の先端側アーム20aの下方に備えて円弧ガイドによって案内されていても良い。その他の作用効果については、上述の本実施形態で説明した作用効果と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0036】
また、上述した本実施形態および本実施形態の変形例において、直線駆動手段は、ねじ軸を有する送りねじとしてのボールねじ7を採用したが、直線駆動が可能な限りにおいてこれに限定されるものではなく、他の直線駆動手段を採用しても良い。例えば、リニアモーターによる直線駆動手段が採用されていても良い。
また、第1の直線案内及び第2の直線案内と連結アームとを摺動可能にする構成についても上述の例に限定されるものではない。直線駆動手段とともに用いられるリニアガイド6についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は本発明による角度調整テーブル装置の平面図であり、(b)は(a)の矢印A方向から角度調整テーブル装置を見た図である。
【図2】本発明による角度調整テーブル装置のテーブルを回転させた状態を示す平面図である。
【図3】本発明による角度調整テーブル装置の連結部機構の模式図である。
【図4】本発明による角度調整テーブル装置のテーブルの角度θと駆動側の直線駆動量Yと線形値とのブレeの理論値の表である。
【図5】図4の理論値および図10におけるテーブルの回転角度と理論値の直線駆動量との関係を示すグラフである。
【図6】図4の理論値および図10におけるテーブルの回転角度と直線駆動量の線形値のブレの関係を示すグラフである。
【図7】(a)は本発明の角度調整テーブル装置の変形例を示す平面図であり、(b)は(a)の矢印A方向から角度調整テーブル装置を見た図である。
【図8】従来の角度調整テーブル装置のサイン型連結部機構の模式図である。
【図9】従来の角度調整テーブル装置のタンジェント型連結部機構の模式図である。
【図10】従来の角度調整テーブル装置のテーブルの角度θと駆動側の直線駆動量Ys,Ytと線形値とのブレes,etの理論値の表である。
【符号の説明】
【0038】
1 ベース
4 テーブル
7 送りねじ
12a 第1の連結点
12b 第2の連結点
14a 第1の直線案内
14b 第2の直線案内
15 旋回中心
20 連結アーム
20r 連結部用リニアガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に回転自在に設けられたテーブルと、このテーブルを所定角度範囲で回転させて所定の回転方向に位置決めすることが可能な位置決め機構とを備えたテーブル装置において、
位置決め機構は、テーブルの回転半径方向と直交する方向に延出した直線駆動手段と、該直線駆動手段による直線運動を所定角度範囲における円運動に変換してテーブルに伝達するための連結部とを具備し、
連結部は、
前記直線駆動手段に固定されて直線運動をするブラケットと第1の連結点によって旋回可能に連結された第1の直線案内と、
円運動するテーブルと第2の連結点によって旋回可能に連結された第2の直線案内と、
該第1の直線案内および第2の直線案内に摺動可能に架け渡されるとともに、テーブルを挟んで直線駆動手段と反対側に旋回中心を有する連結アームとを有し、
直線駆動手段によるブラケットの直線駆動によって連結アームが円弧運動して、テーブルが所定の回転方向に位置決めされることを特徴とする角度調整テーブル装置。
【請求項2】
連結アームの旋回中心はベースに旋回自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の角度調整テーブル装置。
【請求項3】
連結アームの旋回中心を中心とし、連結アームを摺動案内する円弧ガイドをベース上に備え、
連結アームは、円弧ガイドにそって移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の角度調整テーブル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−51551(P2008−51551A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225693(P2006−225693)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】