説明

触媒CVD装置、膜の形成方法及び太陽電池の製造方法

【課題】触媒線の長寿命化を可能とする触媒CVD装置、膜の形成方法及び太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】触媒CVD装置100において、制御部は、成膜時の前後の所定の時間において、触媒線13の温度を待機温度に制御する。待機温度は、成膜時における触媒線13の温度より低く、かつ、室温より高い所定の温度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被成膜基材上に成膜を行う触媒CVD装置、膜の形成方法及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、太陽電池などの各種半導体デバイスなどを製造する際に、基材上に所定の堆積膜を形成する方法として、CVD法(化学気相成長法)が従来から知られている。このようなCVD法の一種として、近年、触媒化学気相成長(Catalytic Chemical Vapor Deposition)を利用した触媒CVD法が検討されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
触媒CVD法においては、加熱したタングステンやモリブデンなどからなる触媒線を用いて反応室内に供給される原料ガスを分解し、基材ホルダーに保持された基材上に堆積膜を形成させる。触媒CVD法は、プラズマCVD法のようなプラズマ放電が利用されないため、基材表面や堆積膜表面に与える悪影響が少ない成膜方法として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−327995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の触媒CVD装置では触媒線が切れやすく、頻繁に触媒線を交換する必要があるため、量産性が低下するという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、触媒線の長寿命化を可能とする触媒CVD装置、膜の形成方法及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴に係る触媒CVD装置は、反応室内に設置され加熱した触媒線に原料ガスを供給し、生成された分解種を反応室内において被成膜基材上に堆積させて成膜を行う触媒CVD装置であって、被成膜基材上への成膜時に、触媒線の温度が原料ガスの分解温度になるように制御可能であり、成膜時の前後の各所定の時間に、触媒線の温度が成膜時における触媒線の温度より低く、かつ、室温より高い所定の温度になるように制御可能な制御部を有することを要旨とする。
【0008】
本発明の特徴に係る触媒CVD装置は、成膜時の前後の各所定の時間において、触媒線の温度を成膜時の温度より低く、かつ、室温より高い所定の温度に維持可能である。従って、本発明によれば、触媒線の収縮と膨張を緩和することができるので、触媒線の長寿命化を図ることができる。
【0009】
また、本発明の特徴に係る触媒CVD装置は、反応室内に設置され加熱した触媒線に原料ガスを供給し、生成された分解種を反応室内において被成膜基材上に堆積させて成膜を行う触媒CVD装置であって、触媒線に通電する電源を備え、被成膜基材上への成膜時に、触媒線の温度が原料ガスの分解温度になるように触媒線に通電制御し、成膜時の前後の各所定の時間に、触媒線の温度が成膜時における触媒線の温度より低く、かつ、室温より高い所定の温度になるように触媒線に通電制御する制御部を有することを要旨とする。
【0010】
このような触媒CVD装置によれば、定常運転時は触媒線に連続通電されており、通電の開始と停止の切換えがなされないように制御することが可能であるので、通電の開始と停止の切換えの繰り返しによって触媒線に生じる収縮と膨張を緩和することができる。その結果、触媒線の長寿命化を図ることができる。
【0011】
本発明の特徴に係る触媒CVD装置において、成膜時の前後の各所定の時間において、触媒線は連続通電により温度制御されていてもよい。
【0012】
本発明の特徴に係る触媒CVD装置において、成膜時の前後の各所定の時間に、触媒線の温度は、原料ガスの分解温度より低い温度に制御されていてもよい。
【0013】
本発明の特徴に係る触媒CVD装置において、所定の温度は、触媒線の少なくとも一部に延性−脆性遷移が発生する温度より高い温度であってもよい。この場合、触媒線に延性−脆性遷移が繰り返し発生することを防止できるので、触媒線の長寿命化を図ることができる。
【0014】
本発明の特徴に係る触媒CVD装置において、所定の温度は、被成膜基材上に所定の膜が形成されている場合、被成膜基材の温度を、所定の膜の膜質が変化する温度よりも低く維持できる温度であってもよい。この場合には、被成膜基材上に形成された非晶質半導体膜や微結晶半導体膜などの膜の膜質が非成膜時に変化することを抑制できる。
【0015】
本発明の特徴に係る膜の形成方法は、上述した本発明に係る触媒CVD装置のいずれかを用いて、被成膜基材上に膜を形成する工程を有することを要旨とする。
【0016】
本発明の特徴に係る太陽電池の製造方法は、上述した本発明に係る触媒CVD装置のいずれかを用いて、被成膜基材上に膜を形成する工程を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、触媒線の長寿命化を可能とする触媒CVD装置を提供することができる。また、この触媒CVD装置を用いることにより、量産性の向上した膜の形成方法及び太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る触媒CVD装置100の構成を示す概略図である。
【図2】実施例に係る成膜フローを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明の実施形態に係る触媒CVD装置を用いた膜の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0020】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
[触媒線への通電と触媒線の寿命の関係]
従来の触媒CVD装置では触媒線が切れやすいため、頻繁に触媒線を交換する必要があり、膜の量産性が低下するという問題があった。
【0022】
そこで、本発明者達は、触媒線が切れやすい原因について鋭意検討を行った。その結果、成膜終了後に触媒線への通電を停止し、成膜開始時に再度触媒線への通電を開始していたところに問題があることが判明した。
【0023】
具体的には、成膜終了後に触媒線への通電が停止された際、触媒線の温度は、触媒線の熱容量が小さいことに起因して、成膜時の温度(例えば、1600℃〜2000℃)から室温程度まで数秒間で下降するので、触媒線は急激に収縮する。また、触媒線への通電が開始された際、触媒線の温度は、室温程度から成膜時の温度まで数秒間で上昇するので、触媒線は急激に膨張する。このような収縮と膨張が通電の停止と開始の切り替えのたびに繰り返されることによって、触媒線の寿命が短くなることが判明した。
【0024】
本発明は、触媒線への通電制御を工夫することによって、触媒線の長寿命化を図らんとするものである。以下、触媒線の通電制御に主眼を置いて説明する。
【0025】
[触媒CVD装置の構成]
以下において、実施形態に係る触媒CVD装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、触媒CVD装置100の構成を示す概略図である。
【0026】
図1に示すように、触媒CVD装置100は、仕込み室1、反応室10及び取出し室(不図示)を有する。基材トレー200に保持された基材300を、仕込み室1から反応室10へ移動し、基材300上に堆積膜を形成することができる。
【0027】
なお、仕込み室1、反応室10及び取出し室は、定常運転状態において、成膜時以外は約1×10−4Pa以下の圧力に排気されている。
【0028】
(1)仕込み室の構成
仕込み室1は、基材トレー200を収容する真空容器であり、真空状態に排気可能に構成されている。仕込み室1は、ランプヒータやシースヒータなどの加熱機構2を備える。
【0029】
加熱機構2は、基材トレー200に保持された基材300を加熱する。これにより、基材トレー200及び基材300に吸着した水分は除去される。
【0030】
また、仕込み室1は、図示しない搬入装置及び搬出装置を備える。搬入装置は、基材トレー200を仕込み室1内に搬入する。搬出装置は、仕込み室1において準備が整った基材トレー200を反応室10へ搬出する。
【0031】
(2)反応室の構成
反応室10は、基材トレー200を収容する真空容器である。反応室10は、ガス供給管11、ガス排出管12、複数の触媒線13、取付け部14及び電源15を備える。
【0032】
ガス供給管11は、反応室10内に原料ガス(例えば、SiHとHの混合気やSiHなど)を供給するための流路である。
【0033】
ガス排出管12は、反応室10内から原料ガスを排出するための流路である。
【0034】
触媒線13は、加熱されることによって、反応室10内に供給される原料ガスを分解する。触媒線13の両端は、取付け部14に取付けられており、反応室10の底面に対して垂直に配置されている。触媒線13は、通電によって、原料ガスを分解することができる温度(以下、「分解温度」という。例えば、1600℃〜2000℃)に昇温される。原料ガスは、触媒線13によって分解され、分解種が基材300に到達することによって、基材300上に堆積膜(例えば、半導体膜やSiN膜など)が成膜される。
【0035】
触媒線13の材料としては、Ta,Mo,W線などを用いることができる。また、触媒線13は、表面に異種層を有していてもよい。この一例として、表面にホウ化物層が形成されたタンタル線が挙げられる。また、触媒線11としては、直径が0.3mm〜2.0mm、好ましくは0.5mm〜1.0mmのものが用いられる。
【0036】
電源15は、取付け部14を介して、触媒線13に通電する。電源15としては、定電流電源、定電圧電源、又は、定電流制御と定電力制御の両方が可能な定電流/定電圧電源を用いることができる。
【0037】
本実施形態において、電源15の制御は、定電流制御と定電力制御のいずれであってもよく、電流値或いは電力値を設定することによって、触媒線13の温度が制御される。すなわち、触媒線13の温度が予め定められた温度となるような電流が触媒線13に流れるように、電源15の電流値或いは電力値は制御される。
【0038】
また、反応室10は、図示しない搬入装置及び搬出装置を備える。これにより基材トレー200は、反応室10内に搬入され、又、反応室10から搬出される。
【0039】
(3)制御部の構成
触媒CVD装置100は、図示しない制御部を有する。
【0040】
制御部は、触媒CVD装置100の定常的な連続運転時において、触媒線13に常時連続的に通電する。
【0041】
具体的には、反応室10で基材300上に成膜が行われる時間帯(以下、「成膜時」という。)において、制御部は、触媒線13の温度を、原料ガスの分解温度に昇温可能な電流を通電する。また、反応室10で基材300上に成膜が行われない時間帯(以下、「非成膜時」という。)において、制御部は、触媒線13の温度を、成膜時における触媒線13の温度より低く、かつ、室温より高い温度に制御可能な電流を通電する。このように、触媒線13には、基材トレー200が反応室10内に収容されていないときにも連続通電される。従って、触媒線13は、成膜時から非成膜時に渡って、常時連続通電されている。
【0042】
また、非成膜時における触媒線13の温度(以下、「待機温度」という。)は、成膜時における触媒線13の温度より低い温度であり、原料ガスの分解温度より低い温度であることが好ましい。これによって、触媒線13が常時高温に加熱されることを抑制できるので、触媒線13の伸びを少なくすることができる。その結果、触媒線13の長寿命化を図ることができる。
【0043】
また、待機温度は、触媒線13への通電を停止したときの温度(室温程度)より高い温度であり、触媒線13の延性−脆性遷移温度より高い温度であることが好ましい。
【0044】
ここで、延性−脆性遷移とは、触媒線の温度が低下した場合に、温度低下に伴って触媒線を構成する材料が著しく脆くなる現象である。また、延性−脆性遷移温度とは、触媒線又はその一部に延性−脆性遷移が発生する温度である。例えば、触媒線の材料として良く知られているタングステン(W)の延性−脆性遷移温度は300℃であり、300℃未満の温度になると極めて脆くなる。従って、Wを触媒線に用いる場合には、待機温度を延性−脆性遷移温度である300℃より高い温度とすることにより、触媒線を長寿命化できる。
【0045】
なお、触媒線13が、積層構造を有する場合の延性−脆性遷移温度は明確ではないが、例えば、表面にホウ化タンタル層を有するタンタルを用いた触媒線では、500℃を越える温度に待機温度をすることによって長寿命化が図られることが実験的に確認されている。従って、表面にホウ化タンタル層を有するタンタルの場合には、延性−脆性遷移温度は約500℃であると考えられる。
【0046】
また、成膜時における触媒線13の温度は、原料ガスを分解することができる温度(すなわち、分解温度)であれば適宜選択でき、また、変化させてもよい。同様に、待機温度は、成膜時における触媒線13の温度よりも低く、かつ、室温より高い温度において適宜選択でき、また、変化させることもできる。
【0047】
[触媒CVD装置を用いた膜形成方法]
次に、触媒CVD装置100を用いた膜の形成方法の一例として、半導体膜の形成方法について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
(1)仕込み室1
まず、第1主面と、第1主面の反対側に設けられた第2主面とを有する基材300を準備する。本実施形態において、基材300は、ガラスなどの基板であるものとする。
【0049】
次に、基材300を基材トレー200に保持する。
【0050】
次に、基材300が保持された基材トレー200を、大気圧にされた仕込み室1内に搬入する。
【0051】
次に、排気系からの排気によって、仕込み室1内を所定の圧力(例えば、1×10−4Pa以下)に排気するとともに、加熱機構2によって、基材300及び基材トレー200を約150℃〜200℃に加熱する。これにより、基材300及び基材トレー200に吸着した水分を除去する。
【0052】
(2)非晶質Si膜の形成
次に、基材300が保持された基材トレー200を、仕込み室1から反応室10に搬入する。このとき、反応室10に配置された触媒線13は、連続通電によって予め待機温度に加熱されている。
【0053】
次に、ガス供給管11から反応室10内に、原料ガスとしてSiH4及びHの混合ガスを供給するとともに、反応室10内の圧力を所定値(例えば、約0.5Pa〜10Pa)に調整する。
【0054】
次に、触媒線13に流れる電流を大きくすることにより、原料ガスの分解温度まで触媒線13を昇温させる。これによって、原料ガスは触媒線13によって分解され、分解種が基材300の第1主面上に到達する。このようにして、基材300上に非晶質Si膜が形成される。
【0055】
次に、触媒線13に流れる電流を小さくすると同時に原料ガスの供給を停止する。これにより、触媒線13は、連続通電によって待機温度まで降温される。
【0056】
次に、ガス排出管12からの排気によって、反応室10内の圧力が約1×10−4Pa以下になった後、基材300が保持された基材トレー200を取出し室へ搬出し、大気中に取出す。
【0057】
なお、本実施形態では、触媒線13に流れる電流を小さくすると同時に原料ガスの供給を停止するが、電流を小さくした後に原料ガスの供給を停止してもよいし、原料ガスの供給を停止した後に電流を小さくしてもよい。
【0058】
次に、新たに準備された基材300が保持された基材トレー200を仕込み室1から反応室10内に搬入する。このとき、触媒線13は、連続通電によって待機温度に維持されている。
【0059】
次に、ガス供給管11から反応室10内に、上述の原料ガスを供給することにより、反応室10内の圧力を所定値(例えば、約0.5Pa〜10Pa)に調整する。
【0060】
次に、触媒線13に流れる電流を大きくすることにより、原料ガスの分解温度まで触媒線13を昇温させる。これによって、原料ガスは触媒線13によって分解され、分解種が基材300上に到達する。
【0061】
以上のように基材300上への膜の形成を連続して行う場合、本実施形態において、触媒線13の温度は、基材300への成膜時の前後において、成膜時における触媒線13の温度より低く、かつ、室温より高い温度である待機温度に制御される。
【0062】
[作用及び効果]
本実施形態に係る触媒CVD装置100において、制御部は、成膜時の前後の所定の時間において、触媒線13の温度を待機温度に制御する。待機温度は、成膜時における触媒線13の温度より低く、かつ、室温より高い所定の温度である。
【0063】
従って、電源15による通電の開始と停止が繰り返される場合に比べて、触媒線13に生じる収縮と膨張を緩和することができる。そのため、触媒線13の長寿命化を図ることができる。
【0064】
また、待機温度は、成膜時における触媒線13の温度より低い。従って、常時高温に維持されることによって、触媒線13が延びた状態に維持されることを抑制できる。
【0065】
また、触媒線13は常時分解温度にはされないので、基材300が過熱されることを抑制できる。その結果、基材300上に形成される膜質が劣化することを抑制できる。
【0066】
また、待機温度は、触媒線13の延性−脆性遷移温度より高いことが好ましい。この場合には、触媒線13に延性−脆性遷移が生じることを抑制できるので、触媒線13の長寿命化を図ることができる。
【0067】
また、待機温度は、基材300の温度を、基材300上に形成された非晶質半導体膜や微結晶半導体膜などの膜の膜質が変化する温度より低く維持できる温度であることが好ましい。この場合、非晶質半導体膜や微結晶半導体膜などの膜が基材300上に形成された場合においても、膜質が変化することを抑制できる。
【0068】
また、成膜時の前後の所定の時間において触媒線13に連続通電することにより、ヒータなど別の加熱機構を用いることなく触媒線13を所定の温度に制御することができる。この結果、装置コストの低減を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る膜の形成方法では、上述の触媒CVD装置100が用いられるので、触媒線13の交換頻度を少なくすることができる。その結果、膜の量産性を向上することができる。
【0070】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0071】
例えば、上述した実施形態では、本発明を適用した膜の形成方法の一例として、非晶質Si膜の形成方法について説明したが、これに限られるものではない。本発明は、非晶質Si膜以外の半導体膜やSiN膜などの半導体膜以外の膜の形成方法にも適用可能である。さらに、本発明は、半導体膜及び半導体以外の膜の少なくとも一方を備える太陽電池などの半導体デバイスの製造方法にも適用可能である。
【0072】
また、上述した実施形態では、触媒CVD装置100は、一の反応室10のみを備える構成としたが、これに限られるものではない。触媒CVD装置100は、複数の反応室を備えていてもよい。これによって、同種膜或いは異種膜を基材300上に重ねて形成することができる。なお、基材300上に形成された膜上にさらに膜を形成する場合、待機温度は、基材300の温度を基材300上に形成された膜質が変化する温度より低く維持できる温度であることが好ましい。例えば、基材300上に非晶質半導体膜や微結晶半導体膜が形成されている場合には、基材300の温度を約300℃以下に維持できる温度に待機温度を制御することによって、水素の脱離などによる膜質の変化を抑制することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明に係る触媒CVD法の実施例について具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
【0074】
[実施例]
まず、表面がホウ化されたタンタル線を触媒線として反応室内に配置した。
【0075】
次に、図2に示すフローに従って、触媒線の昇温と降温を繰り返し行った。
【0076】
具体的には、まず、反応室内を事前に真空排気する工程において、触媒線の温度を待機温度(500℃〜700℃)に保持した。
【0077】
次に、反応室内に原料ガスを供給する工程から反応室内から原料ガスを真空排気する工程途中まで、触媒線の温度を分解温度(1600℃〜2000℃)に保持した。
【0078】
次に、原料ガスを真空排気する工程途中から、触媒線に連続通電することによって、触媒線の温度を待機温度に保持した。
【0079】
そして、以上の工程を、触媒線が切れるまで繰り返し行った。
【0080】
[比較例]
比較例では、反応室内を事前に真空排気する工程、及び原料ガスを真空排気する工程途中から触媒線に通電しなかった。その他は実施例と同様に行った。
【0081】
[結果]
実施例では、比較例に比べて、触媒線の寿命を2倍以上に向上することができた。このような結果に至ったのは、実施例において触媒線に連続通電したため、触媒線の膨張と収縮を緩和することができたためである。
【符号の説明】
【0082】
1…仕込み室
2…加熱機構
10…反応室
11…ガス供給管
12…ガス排出管
13…触媒線
14…取付け部
15…電源
100…触媒CVD装置
200…基材トレー
300…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室内に設置され加熱した触媒線に原料ガスを供給し、生成された分解種を前記反応室内において被成膜基材上に堆積させて成膜を行う触媒CVD装置であって、
前記被成膜基材上への成膜時に、前記触媒線の温度が前記原料ガスの分解温度になるように制御可能であり、前記成膜時の前後の各所定の時間に、前記触媒線の温度が前記成膜時における前記触媒線の温度より低く、かつ、室温より高い所定の温度になるように制御可能な制御部を有する
ことを特徴とする触媒CVD装置。
【請求項2】
反応室内に設置され加熱した触媒線に原料ガスを供給し、生成された分解種を前記反応室内において被成膜基材上に堆積させて成膜を行う触媒CVD装置であって、
前記触媒線に通電する電源を備え、
前記被成膜基材上への成膜時に、前記触媒線の温度が前記原料ガスの分解温度になるように前記触媒線に通電制御し、前記成膜時の前後の各所定の時間に、前記触媒線の温度が前記成膜時における前記触媒線の温度より低く、かつ、室温より高い所定の温度になるように前記触媒線に通電制御する制御部を有する
ことを特徴とする触媒CVD装置。
【請求項3】
前記成膜時の前後の各所定の時間において、前記触媒線は連続通電により温度制御されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒CVD装置。
【請求項4】
前記成膜時の前後の各所定の時間に、前記触媒線の温度は、前記分解温度より低い温度に制御される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒CVD装置。
【請求項5】
前記所定の温度は、前記触媒線の少なくとも一部に延性−脆性遷移が発生する温度より高い温度である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の触媒CVD装置。
【請求項6】
前記所定の温度は、前記被成膜基材上に所定の膜が形成されている場合、前記被成膜基材の温度を、前記所定の膜の膜質が変化する温度よりも低く維持できる温度である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒CVD装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の触媒CVD装置を用いて、被成膜基材上に膜を形成する工程を有する
ことを特徴とする膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の触媒CVD装置を用いて、被成膜基材上に膜を形成する工程を有する
ことを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−82198(P2011−82198A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230598(P2009−230598)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】