説明

認証システム、認証方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】携帯端末ディスプレイを認証用光信号源として用い、低コストで実用性に優れた認証を可能にする。
【解決手段】端末100は、記憶手段101に保持されたIDを、色相差光信号生成手段102が色相差光信号に変換し、この信号をカラーディスプレイ103より画面出力する。認証装置200は、カラーディスプレイ103の画面を撮像したイメージセンサ201の入力情報から、色相差光信号検出手段202により色相差光信号を検出してIDを受信し、認証処理手段203が受信されたIDに対する認証結果に応じた処理を実施する。
IDをワンタイムパスワードとして生成すること、認証処理手段が生成する文字列であるチャレンジIDを使用することも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーディスプレイによって発信され、イメージセンサにより受信される色相差光信号を認証に用いる認証システム、および認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物理的な鍵に変わる電子的な認証方式として、非接触ICカード/RFID(Radio Frequency Identification)タグなどを用いたシステムが、オフィスや自動車のドアの電子鍵として広く利用されている。さらに、赤外線信号を電子鍵として用いるシステムや特定の波長を有する光を電子鍵として用いるシステムが提案されている。
【0003】
このような電子/光学的な認証システムをユーザの所有する携帯端末を用いて実現するシステムもある。RFIDタグを携帯端末に具備した認証/決済システムが既に実用化されている。
【0004】
また、携帯端末に具備される赤外線ポートを利用した赤外線信号による認証を行うシステムや携帯端末ディスプレイのバックライトを用いて生成する光信号を用いる決済システムがある(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。これら赤外線信号やバックライトの点滅信号は送信側が受信部と近接した状態においてロバストに伝達できるものであり、これらのシステムでは信号受信部に端末を近接させて認証を行う。
【非特許文献1】松下伸行、日原大輔、後輝行、吉村真一、暦本純一、「ID Cam:シーンとIDを同時に取得可能なスマートカメラ」、情報処理学会論文誌、vol.43、No.12、pp.3664-3674、Dec.2002
【非特許文献2】青木恒、「カメラで読みとる赤外線タグとその応用」、インタラクティブシステムとソフトウェアVIII,pp.131-136、近代科学社、2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯電話などの広く普及した携帯端末と、監視などの目的で設置されているカメラ(イメージセンサ)を用いた認証が実現できれば、極めて低コストに認証システムが構築できる。
【0006】
赤外線ポート、RFIDなどによる近距離無線通信を用いずに携帯端末を用いて電子的な認証を行う場合、携帯電話のディスプレイの輝度差点滅により生成した信号を認証IDとして利用することが考えられる。しかしながら、携帯端末に一般に具備されるLCD(Liquid Crystal Display)は、点滅応答周波数が低く、これにより発信される低周波輝度差点滅を、イメージセンサを用いて受信し、ロバストに検出することが難しい。また、スループットも著しく低い。この結果、ディスプレイ輝度差点滅を認証ID伝達に用いる認証システムは、認証ID伝達誤りが頻発する、信号送信手段(ディスプレイ)と受信手段を近接させなければ認証処理ができない、認証ID情報量が長いと認証IDの伝達に長い時間を要する、等の利便性上問題がある。
【0007】
本発明の目的は、このような携帯端末ディスプレイを認証用光信号源として用いる認証システム、認証方法の諸課題を改善し、低コストで実用性に優れた携帯端末利用型の認証システム、認証方法、プログラム、および記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の諸課題を解決するために、本発明は、カラーディスプレイを光源として光信号を発信し、この光信号をイメージセンサによって比較的離れた距離からロバストに受信可能な色相差光信号を用いる。この色相差光信号を利用可能とするために、本発明は、少なくとも、記憶手段、色相差光信号生成手段、カラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサ、色相差光信号検出手段、認証処理手段を具備する認証装置を利用する。
【0009】
認証処理手順は、まず、端末の記憶手段に保持されたIDを、色相差光信号受信手段により色相差光信号に変換し、カラーディスプレイより画面出力する。認証装置ではカラーディスプレイの画面を撮像したイメージセンサの入力情報から、色相差光信号検出手段により色相差光信号を検出するとともにIDを受信し、認証処理手段により受信IDに対する認証結果に応じた処理を実施する。
【0010】
さらに、本発明では、色相差光信号IDが第3者に傍受され悪用されることを防ぐために、カラーディスプレイにより送信する光信号IDにより端末内各種制御手段によって動的に変更可能である点を利用しワンタイムパスワード方式を利用する。
【0011】
この場合、本発明では、ワンタイムパスワード生成手段、色相差光信号生成手段、カラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサ、色相差光信号検出手段、認証処理手段を具備する認証装置を使用する。そして、ワンタイムパスワード生成手段により生成されたIDを、色相差光信号受信手段により色相差光信号に変換し、カラーディスプレイより画面出力し、カラーディスプレイの画面を撮像したイメージセンサの入力情報から、色相差光信号検出手段により色相差光信号を検出するとともにIDを受信し、認証処理手段により受信IDに対する認証結果に応じた処理を実施する。
【0012】
もしくは、本発明は、通信手段、記憶手段、ワンタイムパスワード生成手段、色相差光信号生成手段、カラーディスプレイを具備する端末と、通信手段、イメージセンサ、色相差光信号検出手段、認証処理手段を具備する認証装置を使用する。そして、端末において、ワンタイムパスワード生成手段は、携帯電話回線などのネットワーク通信手段を介して認証手段がランダムに生成する文字列であるチャレンジIDを取得し、チャレンジIDと記憶手段に保持された認証IDを一定の手順で演算することにより得られる文字列であるレスポンスIDを生成し、前記生成されたレスポンスIDを、色相差光信号受信手段により色相差光信号に変換し、カラーディスプレイより画面出力する。認証装置は、カラーディスプレイの画面を撮像したイメージセンサの入力情報から、色相差光信号検出手段により色相差光信号を検出するとともにIDを受信し、認証処理手段により受信IDに対する認証結果に応じた処理を実施する。
【0013】
さらに、本発明では、カラーディスプレイと所定の無線通信手段を有し、かつ、外部からインストールされるソフトウェアを実行可能な携帯端末を、本システムの構成要素として容易に利用できるようにするために、前記ワンタイムパスワード生成手段および色相差光信号生成手段が、端末上で動作し、かつ、所定のサーバより任意のタイミングでダウンロード及び更新可能なソフトウェア構成とする。
【0014】
以上のことから、本発明は、以下の認証システム、認証方法、プログラムおよび記録媒体を特徴とする。
【0015】
(システムの発明)
(1)記憶手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証システムであって、
前記端末は、前記記憶手段に保持されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力する手段を設け、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施する手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
(2)ワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証システムであって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により生成されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力する手段を設け、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施する手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
(3)通信手段と記憶手段とワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、通信手段とイメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証システムであって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により前記通信手段を介して前記認証装置側の認証処理手段が生成する文字列であるチャレンジIDを取得し、このチャレンジIDと前記記憶手段に保持された認証IDを一定の手順で演算することにより得られる文字列であるレスポンスIDを生成し、このレスポンスIDを前記色相差光信号受信手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力する手段を設け、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により色相差光信号を検出するとともに前記レスポンスIDを受信し、前記認証処理手段により前記レスポンスIDに対する認証結果に応じた処理を実施する手段を設けたことを特徴とする。
【0018】
(4)前記ワンタイムパスワード生成手段および色相差光信号生成手段は、前記端末上で動作し、かつ、所定のサーバより任意のタイミングでダウンロード及び更新可能なソフトウェア構成としたことを特徴とする。
【0019】
(方法の発明)
(5)記憶手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証方法であって、
前記端末は、前記記憶手段に保持されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力するステップを有し、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施するステップを有することを特徴とする。
【0020】
(6)ワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証方法であって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により生成されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力するステップを有し、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施するステップを有することを特徴とする。
【0021】
(7)通信手段と記憶手段とワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、通信手段とイメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証方法であって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により前記通信手段を介して前記認証装置側の認証処理手段が生成する文字列であるチャレンジIDを取得し、このチャレンジIDと前記記憶手段に保持された認証IDを一定の手順で演算することにより得られる文字列であるレスポンスIDを生成し、このレスポンスIDを前記色相差光信号受信手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力するステップを有し、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により色相差光信号を検出するとともに前記レスポンスIDを受信し、前記認証処理手段により前記レスポンスIDに対する認証結果に応じた処理を実施するステップを有することを特徴とする。
【0022】
(8)前記ワンタイムパスワード生成手段および色相差光信号生成手段は、前記端末上で動作し、かつ、所定のサーバより任意のタイミングでダウンロード及び更新可能なソフトウェアを有することを特徴とする。
【0023】
(プログラムの発明)
(9)上記の(1)〜(8)のいずれか1項に記載の認証システムまたは認証方法における手段またはステップをコンピュータで実行可能に構成したことを特徴とする。
【0024】
(記録媒体の発明)
(10)上記の(1)〜(8)のいずれか1項に記載の認証システムまたは認証方法における手段またはステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを、該コンピュータが読み取り可能に記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の認証システムおよび認証方法によれば、カラーディスプレイを有するあらゆる携帯端末へ必要なソフトウェアをインストールするのみで該システムの端末として利用できる。また、認証装置も監視などの目的で既に具備されているイメージセンサを利用し、他の手段をソフトウェアで実装することで安価にシステム全体を構築できる。
【0026】
さらに、本発明は、色相差光信号を用いることで、従来のディスプレイを用いた輝度差光信号の性能に起因する諸課題を改善し、より利便性に優れたシステムを構成できるようにする。すなわち、認証IDの伝達誤り率、伝達時間、信号送信手段(ディスプレイ)と受信手段間の距離的な制約を改善する。結果、信号受信側である認証装置から数メートル離れた位置から信号を発信し、開錠など所定の認証処理を実行できる。
【0027】
しかも、電波に比べ指向性の高い光信号を認証IDの近距離伝送に用いることで、電波利用型の認証方式より高い安全性を実現する。つまり、電波による方式の場合にユーザ周囲に存在する他者が該電波の受信装置を用いてこれを傍受することが可能であるが、本発明では、利用者が目的とする認証装置のイメージセンサに向けて光信号を発信する際、これをユーザ周囲の他の方向に位置する他者に傍受されることはない。
【0028】
また、カラーディスプレイを用いて送信する色相差光信号IDは、携帯端末上にソフトウェアとして実装される各手段により動的に変更可能である。したがって、本発明では、色相差光信号IDが他者に傍受され悪用されることを防ぐためにワンタイムパスワード方式を実現できる。また、ワンタイムパスワード生成手段が、所定の通信回線よりダウンロード可能なソフトウェアプログラムとして実装されるため、万一、ワンタイムパスワード生成のためのアルゴリズムそのものが他者に知られる事態が発生しても、即座にアルゴリズムを更新したバージョンを再インストールすることで秘匿性を維持できる。
【0029】
また、本発明では、無線通信機能を持つ携帯電話を端末として利用することができ、これらの通信手段を利用し、ネットワーク経由で該端末へチャレンジIDを送信し、より秘匿性の高いチャレンジ&レスポンス式のワンタイムパスワード方式を実現することができる。通常、チャレンジ&レスポンス式のワンタイムパスワード方式の実施には、IrDAやBluetoothなどの近距離双方向無線通信手段が用いられる。本発明では、通信手段として、携帯電話回線を用いたネットワーク通信手段のみを具備する端末において、チャレンジIDの取得(ダウンリンク)にネットワーク通信を用い、レスポンスIDの送信(アップリンク)に近距離かつ指向性の通信方式である光信号を用いることで、より安全性に優れたチャレンジ&レスポンス式のワンタイムパスワード方式を実現する。
【0030】
また、本発明が利用する光信号は可視光であり、信号が発信されたことを利用者が視覚的に容易に把握できる。この特性は、従来の非可視な無線通信を利用した電子鍵を用いる際の処理状況が良く把握できないことに起因する不安感を解消することに寄与する。すなわち、本発明によれば、赤外線やRFID、Bluetoothなどの近距離無線通信手段を具備しない携帯端末と、監視などの目的で設置されるカメラ(カラーイメージセンサ)を活用して低コストに実用性および利便性に優れた認証システムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(1)データ送受信装置
本発明の認証システムが利用する色相差光信号を用いたデータ送受信装置について説明する。
【0032】
図6に概略構成を示すように、送信側は、送信キュー10と、色点滅信号送信手段11と、ディスプレイ等の色表示手段12とを有する。一方、受信側は、カメラ等のイメージセンサ手段20と、色点滅信号受信手段21とを有する。
【0033】
色点滅信号送信手段11は、送信側の上位手段から送信キュー10に入力される送信データを色点滅信号に変換し、色表示手段12を用いて所定の色点滅周波数f(Hz)で色点滅信号を発信する。
【0034】
色点滅信号受信手段21は、色表示手段12をf(Hz)以上のフレームレートで撮像するイメージセンサ手段20から連続して入力される画像フレームを処理し、信号受信領域を検出するとともに、データ値を受信して、これらの値を受信側の上位手段に出力する。以下、送受信処理例を具体的に説明する。
【0035】
(送受信処理例1)
図6及び図7を参照しながら色点滅信号送信手段の送受信処理例を説明する。図7は色点滅信号送信手段の実行する工程を示したフローチャートである。
【0036】
色点滅信号送信手段11は、データ値を演算処理して色相差に変換し、これを送信する。ここでは、色相差をN+1階調に用いる場合、色相差値一つでN進数のデータ値一つを送信できる。
【0037】
図7において、Nは(色相差の階調)−1を、fは色点滅周波数(Hz)を、hは色相の初期値を、lは明度の規定値を、sは彩度の規定値を表す。図8、図9及び図13においても同様とする。
【0038】
色点滅信号送信手段11には、送信キュー10に送信データが入力され送信処理が開始されるまでに、色表示手段12に色相H=h、明度L=l、彩度S=sの色を表示しておくとともに、変数chに現在表示されている色の色相Hを入力しておく(s201)。
【0039】
送信キュー10に送信データが存在する場合、データ値の送信処理に進む(s202)。尚、任意の送信データは送信キュー10おいてN進数列として管理される。すなわち、一つのデータ値は0以上N未満の整数値nとなる。
【0040】
送信処理では、先ず、送信キュー10からデータ値nを取得し、送信キュー10を更新する(s203)。
【0041】
次に、データ値nを色相差dhに変換する(s204)。ここで、dh=(n+1)×2π/(N+1)である。この結果、次の表示色は、色相H=ch+dh、明度L、彩度Sの色に決定される(s205)。尚、色相Hは0以上2π未満の値となるので、もし、ch+dh>2πであれば、H=ch+dh−2πとなる。
【0042】
そして、決定された表示色(色相H、明度L、彩度Sの色)を色表示手段12に表示する(s206)。
【0043】
点滅周波数がfHzである場合、ここで(1000/f)msec間静止し、前記表示色を提示し続ける(S207)。
【0044】
その後、現在の表示色の色相Hを変数chに代入しs202のステップに戻る(s208)。尚、s207における静止時間はs207以外のステップが0msecで完了すると仮定する場合、(1000/f)msecとなるが、s207以外のステップでt msecの処理時間を要するならば、(1000/f)t msecである。
【0045】
s202において送信キューに送信データが無ければ、データ送信完了となる(s209)。
【0046】
次に、図6、図8及び図9を参照しながら色点滅信号受信手段の送受信処理例を説明する。図8は色点滅信号受信手段の実行する工程を示したフローチャートである。図9は図8記載のs303の工程を示したフローチャートである。ここでは、N進数のデータ値を一つずつ受信する場合で説明する。
【0047】
開始の信号を受けると(s300)、色点滅信号受信手段21は、イメージセンサ手段20より連続して画像フレームI(i)を取得する(s301)。ここで、図8に示された工程では、画像フレームの取得周期(=フレームレート)が、送信側の色表示手段12の点滅周波数に等しいものとしている。
【0048】
色点滅信号受信手段21は、最新の画像フレームI(i)が取得される時点で、一つ前の画像フレームI(i−l)を保持している。図8に示された工程では、最新の画像フレームI(i)の取得イベント(s301)おきに実施される。
【0049】
画像フレームI(i)が取得されると、画像フレームI(i−l)、I(i)の全ての画素について、色相差dh(x,y)[x,yは、それぞれ0≦x<WIDTH,0≦y<HEIGHTの整数である。尚、WIDTHは画像フレームの横軸画素数を、HEIGHTは画像フレームの縦軸画素数を表す(図13においても同様)。]を算出する(S302)。ここで、色相差を算出する際、彩度が低い画素、すなわち、ほとんど無色な画素は、色点滅信号を撮像したものとはみなせない。したがって、比較される両画素の色の彩度がともに既定値より大きい場合にのみ色相差を算出し、そうでなければ、色相差を0とすることができる。
【0050】
次に、各画素について算出された色相差dh(x,y)をデータ値a(x,y)に変換する。但し、色相差がデータ値に変換できない値ならば、a(x,y)には−1(データ無し)を代入する(S303)。
【0051】
具体的には、図9に示すように、−1≦n<Nの整数nについて、色相((n+1)×2π/(N+1))−R及び色相((n+1)×2π/(N+1))+Rが色平面上でなす狭角に、算出された色相差dh(x,y)が入るかどうかを検出する(S400)。尚、Rとは、色相(値)に許容する誤差である。
【0052】
図10及び図11は、それぞれ、色相((n+1)×2π/(N+1))−R及び色相((n+1)×2π/(N+1))+Rが色平面上でなす狭角、及び、これに色相差dh(x,y)が入る場合(図10)、入らない場合(図11)を示している。尚、上記説明および図においては、Rを一定値としているが、色相((n+1)×2π/(N+1))の値により許容誤差Rの値を変えることも可能である。一般に、光源の発色性能やイメージセンサ手段20の色感度には特性があり、この特性を考慮する形で、許容誤差Rを可変にすること(例えば、イメージセンサ手段12の色感度が強い赤色近辺で許容誤差Rを小さくすること)は、色点滅信号の検出精度向上に寄与すると考えられる。
【0053】
ここで、色相((n+1)×2π/(n+1))−Rおよび色相((n+1)×2π/(N+1))+Rが色平面上でなす狭角にdh(x,y)が入れば、a(x,y)と決定する(s401)。
【0054】
−1≦n<Nの全ての整数nについて、色相((n+1)×2π/(n+1)−R及び色相((n+1)×2π/(n+1))+Rが色平面上でなす狭角にdh(x,y)が入らないならば、該当するデータ値がないので、a(x,y)=−1とする(s402)。
【0055】
すなわち、図9に示す工程によって、N=2の場合に、色平面上において色相差dh(x,y)がデータ値0、データ値1、及びデータ無し(−1)に変換される範囲を示すと図12のようになる。尚、図12において、該当データ値なしの場合もdh(x,y)はデータ無し(−1)に変換される。
【0056】
全ての画素についてa(x,y)が算出された後、信号成分E(n)を抽出する(s304)。信号成分E(n)とは、a(x,y)=n(nは、0≦n<Nの整数)である画素座標の連結成分で、画素数が最大のものである。尚、図8に示した工程では、受信データ値が取りうる値である0≦n<Nの全ての整数nについてE(n)を検出するようになっているが、実際には、ループ1、ループ2内の処理においてa(x,y)を算出した際に、a(x,y)の要素として出現した値についてのみ行えばよい。
【0057】
信号成分E(n)が検出された際には、E(n)に含まれる画素数が既定値TAより多いかどうかを検出する(s305)。既定値TAは信号成分を信号受信領域として決定するための画素数の閾値を表す。TAの値を0以上の値で設定することは、信号成分がTA以上のまとまったサイズの画素集合として検出される場合のみ有意な信号とみなすという条件を加えるになる。これによって局所的に偶然に生じた色相差をデータ信号として誤検出してしまう可能性が低減される。尚、TA=0とすれば、信号成分が検出された時点で、それが信号受信領域と決定される。
【0058】
E(n)に含まれる画素数が既定値TAより多い場合、色点滅信号受信手段21は、E(n)を信号受信領域とし、nを受信データ値として、受信側上位手段に出力する(s306)。尚、信号受信領域については、該領域の座標集合に代えて、該領域を囲む矩形領域の情報を出力することや、前記矩形の重心座標を出力することができる。
【0059】
一方、0≦n<Nの全ての整数nについてE(n)が検出されなかったか、検出されてもその画素数がTA以下であった場合には、画像フレームI(i)に取得によって受信されたデータは無いとみなす(s307)。この後、画像フレームナンバーi=i+1として、次画像フレームに対する処理に移行する。
【0060】
(送受信処理例2)
送受信処理例1で説明した送受信処理は、データ値を一つずつ受信する場合である。この例は、データ送受信装置の基本的な動作となる。しかし、低速な色点滅による信号を受信できるようにするためには、一定回数以上連続してデータ値が受信されることによって受信されたデータ値列を有効な受信データとして受理する仕組みが必要である。すなわち、既定回数以上連続して、一定の割合以上で色相が変化する画素を検出することで、低速な色点滅信号を有意なデータ信号として識別し受信することが可能になる。
【0061】
以下には、送受信処理例1を基本とし、一定回数以上連続してデータ値が受信されることによって、受信されたデータ値列を有効な受信データとして受理するように修正した処理について説明する。
【0062】
送信側の色点滅信号送信手段11の動作アルゴリズムは、図7を参照して説明したものと同様である。但し、連続信号長をKとするとき、送信キュー10に入力される送信データは、N進数のデータ値K個から構成されるデータ値列である。若しくは、送信データはKの倍数個のデータ値から構成されるデータ値列である。
【0063】
図13に、この場合における色点滅信号受信手段21の動作アルゴリズムの一例を示す。色点滅信号受信手段21は、イメージセンサ手段20から連続して画像フレームI(i)を取得する。ここでも、画像フレームの取得周期(=フレームレート)は、送信側の色表示手段12の点滅周波数に等しいものとしている。また、連続信号長はKであり、データ値がK回連続して受信されることによって、受信されたデータ値列を有効な受信データとして判断している。
【0064】
色点滅信号受信手段21は、前処理として、各画素において何回連続してデータ値を受信したかを保持するための配列c(x,y)の全ての値を0とする(s801)。以降の処理、s802,s803,s804,s813は、それぞれ図8を参照して説明したs301,s302,s303,s308と同様である。
【0065】
ループ1、ループ2内では、s804によってa(x,y)の値が決定された後、a(x,y)!=−1(データ無し)かどうかを確認する(S805)。
【0066】
そして、a(x,y)!=−1である場合、すなわち、座標(x,y)の画素においてデータ値を含む色点滅信号が受信されたとみなされる場合には、d(x,y,c(x,y))に、受信されたデータ値a(x,y)を代入し保持しておく(S806)。
【0067】
配列dは、各画素座標において、連続して受信されたデータ値を保持しておくための配列である。次に、c(x,y)=c(x,y)+1とする(S807)。
【0068】
一方、a(x,y)!=−1でない場合、すなわち、座標(x,y)の画素においてデータ値を含む色点滅信号が受信されなかった場合には、c(x,y)=0とする(S808)。
【0069】
全ての画素について、a(x,y)、c(x,y)、並びにd(x,y,c(x,y))が算出された後に、連続信号成分CEを検出する(s809)。尚、連続信号成分CEは、c(x,y)=Kであって、d(x,y,0)、d(x,y,1),…,d(x,y,K−1)が全て一致する画素座標(x,y)の連結成分で、画素数が最大のものである。すなわち、s809では、K個のデータ値からなるデータ値列を同時に受信した画素の連結成分で最大のものを連続信号成分として抽出する。
【0070】
s809で、連続信号成分CEが検出された場合、連続信号成分CEの画素数がTAより多いかどうかを検出する(s810)。ここでの、TAとは連続信号成分CEを信号受信領域として決定するための画素数の閾値である。すなわち、TAを0以上の値を設定することは、連続信号成分がTA以上のまとまったサイズの画素集合として検出される場合のみ有意な信号とみなすという条件を加えることになる。これによって局所的に、偶然に“連続して”生じた色相差をデータ信号として誤検出してしまう可能性が低減される。尚、TA=0とすれば、連続信号成分が検出された時点で、それが信号受信領域と決定される。
【0071】
連続信号成分CEの画素数がTAより多い場合、CEを信号受信領域とし、CE中の任意の画素座標(x,y)を選択して、a(x,y,0)、d(x,y,1),…,d(x,y,K−1)を受信データ値列として、上位手段に出力する(s810)。そして、再び、配列c(x,y)の全ての値を0とし(s812)、s813へ進む。尚、信号受信領域については、該領域の座標集合に代えて、該領域を囲む矩形領域の情報を出力することや、前記矩形の重心座標を出力することができる。
【0072】
一方、連続信号成分CEの画素数がTA以下であった場合には、単に、配列c(x,y)の全ての値を0とし(s812)、s813へ進む。また、s809において、連続信号成分CEが検出されなかった場合にも、s813へ進む。
【0073】
この後、画像フレームナンバーi=i+1として(s813)、次画像フレームに対する処理に移行する。
【0074】
(送受信処理例3)
送受信処理例2の受信システムでは、受信側は連続信号長Kの倍数個のデータ値からなるデータ値列を受信できるが、送受信処理例1と送受信処理例2で示した処理方法を組み合わせることで、連続信号長K以上である任意の長さのデータ値からなるデータ値列を受信することができるようになる。
【0075】
この場合も、送信側の色点滅信号送信手段11の動作アルゴリズムは、図7の説明と同様である。但し、連続信号長をKとするとき、送信キュー10に入力される送信データは、K個以上のN進数のデータ値から構成されるデータ値列である。
【0076】
受信側の色点滅信号受信手段21は、先ず、図13を参照しながら説明したアルゴリズムに基づき動作する。そして、有意な連続信号成分が検出され(s810)、信号受信領域並びに受信データ値列を出力した(s811)時点以降、該信号受信領域に含まれる画素座標については図8を参照して説明した動作アルゴリズムを適用し、逐次受信データ値を上位手段に出力する。但し、該信号受信領域に含まれる画素座標において受信データが無く(s307)、データ値の受信が途切れた場合には、即座に、図13を参照して説明した動作アルゴリズムヘ遷移する。以降、有意な連続信号成分が検出されるごとに上述の動作を行う。
【0077】
また、上述までのデータ信号送信方法及びデータ信号受信方法は、上述した送受信処理例以外にもさまざまな実装が可能である。
【0078】
また、上述までの送受信処理例では、シングルタスク処理系のプログラムとして実装する場合を想定しているが、マルチタスク処理、並列処理が可能な系では、該処理系に適応した実装を行ってよい。例えば、図7及び図13を参照して説明した動作アルゴリズムでループ1、ループ2によって行っている各画素座標における処理は、並列処理が可能な系においては、各画素座標に対して同時に並列して処理するよう実装してよい。
【0079】
また、上述した送受信処理例では、色点滅信号受信手段21に接続されるカメラの画像フレームの取得周期(=フレームレート)は、送信側の色表示手段12の点滅周波数に等しいものとしている。フレームレートが送信側の色表示手段12の点滅周波数よりも高い場合には、この点を考慮した動作アルゴリズムを用いることができる。
【0080】
例えば、図7、図13を用いて説明した動作アルゴリズムに基づく工程が利用できる。図7及び図13の動作アルゴリズムにおいて、最新に取得された画像フレームI(i)の各画素についての色相差の算出対象となる画像フレームI(i−1)に以下の条件を満たす画像フレームを用いる。すなわち、画像フレームI(i)が撮像された時点をTとして、T−1000/f≦t<Tである時点tに撮像された画像フレームを全て画像フレームI(i−1)とみなす。さらに、これら複数の画像フレームI(i−1)と画像フレームI(i)間で各画素の色を比較しながら、データ値を受信したとみなされる画素座標(x,y)とデータ値a(x,y)を算出する。
【0081】
(2)実施形態
本発明の認証システムは、前記の色相差光信号を発信する端末と、該色相差光信号を受信し認証結果に応じて所定の処理を行う認証装置によって構成される。
【0082】
前記端末は、前述の色相差光信号を発信可能な光源デバイスを具備する。光源デバイスとして、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイなどのカラーディスプレイを用いることが可能である。したがって、カラーディスプレイを有する携帯電話、PDA(Personal Data Assistant)、Laptop−PC、TVその他の携帯型情報機器にソフトウェアとして本システムの実施に必要な手段を加えたものが該端末として利用できる。
【0083】
認証装置は、少なくともイメージセンサを備えた情報デバイスである。イメージセンサからの入力情報を処理し、所定の認証処理を行う各手段はハードウェアとして実装しても良いし、PCなどの計算機を用いて該計算機上で動作するソフトウェアとして実装してもよい。
【0084】
上述した色相差光信号を用いた認証システムにおける端末及び認証装置の構成とその動作を、以下の実施形態で詳細に説明する。
【0085】
(実施形態1)
本実施形態におけるシステム構成を図1に示す。端末100は、少なくとも、記憶手段101、色相差光信号生成手段102、カラーディスプレイ103、これらを連携動作させるコントローラー104、ユーザ入力を受け付ける入力デバイス105を具備する。一方、認証装置200は、イメージセンサ201、色相差光信号検出手段202、認証処理手段203、これらを連携動作させるコントローラー204を具備する。
【0086】
端末100内の記憶手段101には、事前に所定の手順により、認証のためのIDが記憶され、該IDを同時に認証装置200の記憶手段においても保持される。
【0087】
ユーザは、認証処理を行う際、端末のカラーディスプレイ103を、認証装置200のイメージセンサ201に撮像されるように保持し、端末100に具備された所定のトリガー操作をする。このトリガー操作とは、所定のボタンを押す、もしくは、色相差光信号生成手段102が追加されたアプリケーションとして実装されている場合、該アプリケーションを起動するといった操作に該当する。
【0088】
トリガーが操作されると、色相差光信号生成手段102が、端末100内の記憶手段101に保持されたIDを上述の手順によって色相差光信号に変換し、カラーディスプレイ103より出力する。
【0089】
認証装置200では、イメージセンサ201の入力情報を色相差光信号検出手段202が逐次、上述の手順によって色相差光信号を検出しており、色相差光信号が検出された時点で検出されたIDを認証処理手段203に送る。IDを受信した認証処理手段203は、認証装置200の記憶手段に保持されるIDと受信されるIDを比較し、一致した場合に、開錠、ログイン、除法開示などの所定の認証処理を実施する。
【0090】
(実施形態2)
実施形態1のシステム構成では色相差光信号IDが第3者に傍受され悪用される恐れがある。カラーディスプレイ103から送信する色相差光信号IDは、携帯端末上のソフトウェアで動的に変更可能である。したがって、前記問題を回避するためにワンタイムパスワード方式を適用することが可能である。
【0091】
ワンタイムパスワード方式を適用した本実施形態の認証システムの構成例を図2に示す。
【0092】
本実施形態では、端末100は図1の構成に加えて、ワンタイムパスワード生成手段106と時計107を具備する。一方、認証装置200は、記憶手段205、時計206を追加した構成とされる。
【0093】
端末100側では、ユーザによるトリガー操作により、ワンタイムパスワード生成手段106により生成されたワンタイムパスワードIDを、色相差光信号生成手段102が上述の手順によって色相差光信号に変換し、カラーディスプレイ103より出力する。
【0094】
認証装置200側では、イメージセンサ201の入力情報から色相差光信号検出手段202が上述の手順によって色相差光信号によるワンタイムパスワードIDを検出すると、これを認証処理手段203に送る。認証処理手段203は、該ワンタイムパスワードIDを所定の演算により認証し、その結果に応じて開錠、ログイン、除法開示などの所定の認証処理を実施する。
【0095】
端末100側は、ワンタイムパスワード生成手段106から認証装置200側の認証処理手段203へ送信されるワンタイムパスワードの生成認証手順としては、例えば、「特許文献:特開2002−259344号公報」に記載の手法を利用することができる。
【0096】
システムはワンタイムパスワード生成認証方法に依存して、端末、認証装置間で同期した時計107と206、パスワード生成認証に必要な秘密情報を保持する記憶手段101と205を利用する。
【0097】
以下には、ワンタイムパスワード方式を適用した本実施形態の認証システムの具体例を図3を用いて説明する。以下の例は、チャレンジ&レスポンス方式のワンタイムパスワードを適用する際のものである。
【0098】
図3において、端末100は、図2の構成に加えて、通信手段108を具備する。認証装置200は、端末100とデータ通信可能な通信手段207を具備する。
【0099】
端末100側では、ユーザによるトリガー操作により、ワンタイムパスワード生成手段106が、携帯電話回線などのネットワークを利用する通信手段108を介して認証装置200側の認証処理手段203がランダムに生成する文字列であるチャレンジIDを取得する。そして、チャレンジIDと記憶手段101に保持された認証IDを一定の手順で演算することにより得られる文字列であるレスポンスIDを生成する。次に、前記生成されたレスポンスIDを、上述の手順によって色相差光信号生成手段102が色相差光信号に変換し、カラーディスプレイ103より出力する。
【0100】
認証装置200側では、イメージセンサ201の入力情報から、色相差光信号検出手段202により上述の手順によって色相差光信号を検出するとともにIDを受信し、認証処理手段203が受信されたレスポンスIDを所定の手順の演算により認証し、その結果に応じて開錠、ログイン、除法開示などの所定の認証処理を実施する。
【0101】
上述の一連の動作におけるワンタイムパスワード生成認証の手法としては、インターネットにおいてサーバアクセスなどの制御に適用されている各種方式を本システムへも適用可能である。インターネット上では端末とサーバ間のパスワード送信はIPパケットによりなされるが、本システムでは、端末側カラーディスプレイ103より発信される色相差光信号として、イメージセンサ201を介してサーバすなわち認証装置200に受信されることが、主たる特徴となる。
【0102】
なお、上述の例においては、認証時、端末はカラーディスプレイより認証に必要なワンタイムパスワードID(レスポンスID)のみを伝達する例を示したが、予め、ユーザごとに固定のユーザIDなどを端末と認証装置で共有しておき、前記送信される色相差光信号がワンタイムパスワードID(レスポンスID)に加えてユーザIDなどの情報を伝達するように実装されても良い。
【0103】
(実施形態3)
上述した実施形態のシステム構成において、端末100として、カラーディスプレイ103を有し、Java(登録商標)などで記述されたアプリケーションプログラムが動作可能な携帯電話などを利用できる。
【0104】
例えば、実施形態1の例では、端末100側の色相差光信号生成手段102をアプリケーションプログラムとして実装できる。該アプリケーションプログラムは、インストール時に所定の認証IDが付随され、これを端末内記憶手段101の該アプリケーションプログラムが管理する領域に保持する。同時に、該認証IDは、認証装置200の記憶手段205にも登録される。あるいは、携帯電話など通信手段を具備する端末と、通信手段を具備する認証装置を用いる場合であれば、端末にインストールされた該アプリケーションプログラムの初期設定時に、ユーザが任意の認証IDを入力し、その時点で通信手段を介して、認証装置の記憶手段に該認証IDが登録される仕組みであってよい。
【0105】
認証装置200側においても、これをPCなどに実装する場合、色相差光信号検出手段202、認証処理手段203はアプリケーションプログラムとして実装できる。
【0106】
実施形態2の例では、端末100側の色相差光信号生成手段102およびワンタイムパスワード生成手段106がアプリケーションプログラムとして実装できる。さらに、認証装置200側においても、色相差光信号検出手段202、認証処理手段203を更新可能なアプリケーションプログラムとして実装できる。
【0107】
RFIDや特殊光線による電子鍵や、専門のワンタイムパスワード生成デバイスなど特別なハードウェアデバイスを用いる認証システムでは、パスワード認証方式を変更することは容易ではない。しかし、携帯電話とそのカラーディスプレイを信号源として用いる本発明のシステムでは、万が一、ワンタイムパスワード生成のためのアルゴリズムそのものが第3者に知られる事態が発生したとしても、即座にパスワード生成認証アルゴリズムを更新したアプリケーションプログラムを再インストールすることで安全性を維持できる。また、ワンタイムパスワード生成認証モジュールの主体的に更新していくことが可能であり、永続的に最新のアルゴリズムに基づいた最高水準の秘匿性能を維持できる。
【0108】
なお、本発明は、図1〜図5等に示したシステム、方法の一部又は全部の処理機能をプログラムとして構成してコンピュータを用いて実現すること、あるいは図1〜図5等で示した処理手順をプログラムとして構成してコンピュータに実行させることができる。また、コンピュータでその各部の処理機能を実現するためのプログラム、あるいはコンピュータにその処理手順を実行させるためのプログラムを、そのコンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、MO、ROM、メモリカード、CD、DVD、リムーバブルディスクなどに記録して、保存したり、提供したりすることが可能であり、また、インターネットのような通信ネットワークを介して配布したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の認証システムは、予めイメージセンサを具備するドアフォンシステムやTV電話システムと、カラーディスプレイを有する汎用的な携帯端末にソフトウェアを導入するだけで低コストに構築できる。
【0110】
図4は、本発明の認証システムをドアの開錠のための認証システムとして用いる際の構成例である。ドア301に設置されたイメージセンサ302とネットワークに接続されたPC303により認証装置を構成している。認証装置は、いわゆるドアフォンシステムに用いる情報機器であってもよい。ユーザは、所定のサーバ304から、自身の携帯電話305へ所定のプログラムをダウンロードしてインストールしておく。そして、ドア301に具備されるイメージセンサ302に対して携帯電話305のカラーディスプレイより色相差光信号である鍵IDを送信する。端末および認証装置の動作は上述の実施形態で説明した通りである。
【0111】
図5は、TV電話などの目的に用いるイメージセンサを具備したPCのOSにログインする際に、色相差光信号を用いる認証システムの例である。認証装置は、PC401上にソフトウェアとして各種手段を実装し、イメージセンサ402との組み合わせることにより構成される。ユーザは、所定のサーバ403から、自身の携帯電話404へ所定のプログラムをダウンロードしてインストールしておく。そして、PC401のイメージセンサ402に対して携帯電話404のカラーディスプレイより色相差光信号を送信する。この際の色相差光信号は、上述の動作例における認証のためのID、ワンタイムパスワードID,レスポンスIDに加えて、ユーザ固有のユーザIDを伝達する。このように、認証時に、送信される色相差光信号は、その応用に応じて上述の実施形態で述べた認証用の各種ID以外の情報を伝達するよう実装してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の認証システムの構成例(その1)。
【図2】本発明の認証システムの構成例(その2)。
【図3】本発明の認証システムの構成例(その3)。
【図4】本発明の認証システムによる開錠システムの構成例。
【図5】本発明の認証システムによるPCログインシステムの構成例。
【図6】本発明における色点滅信号(色相差光信号)伝達方式の概略図。
【図7】図6における色点滅信号送信手段の実行する工程を示したフローチャート。
【図8】図6における色点滅信号受信手段の実行する工程を示したフローチャート。
【図9】図8におけるs303の工程を示したフローチャート。
【図10】色相が色平面上でなす狭角、及び、これに色相差dh(x,y)が入る場合を示す図。
【図11】色相が色平面上でなす狭角、及び、これに色相差dh(x,y)が入らない場合を示す図。
【図12】色相差dh(x,y)とデータ値の色平面上での関係を示す説明図。
【図13】色点滅信号受信手段の実行する工程を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0113】
100 端末
200 認証装置
101 記憶手段
102 色相差光信号生成手段
103 カラーディスプレイ
104 コントローラー
105 入力デバイス
106 ワンタイムパスワード生成手段
107 時計
108 通信手段
201 イメージセンサ
202 色相差光信号検出手段
203 認証処理手段
204 コントローラー
205 記憶手段
206 時計
207 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証システムであって、
前記端末は、前記記憶手段に保持されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力する手段を設け、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施する手段を設けた、
ことを特徴とする認証システム。
【請求項2】
ワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証システムであって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により生成されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力する手段を設け、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施する手段を設けた、
ことを特徴とする認証システム。
【請求項3】
通信手段と記憶手段とワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、通信手段とイメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証システムであって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により前記通信手段を介して前記認証装置側の認証処理手段が生成する文字列であるチャレンジIDを取得し、このチャレンジIDと前記記憶手段に保持された認証IDを一定の手順で演算することにより得られる文字列であるレスポンスIDを生成し、このレスポンスIDを前記色相差光信号受信手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力する手段を設け、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により色相差光信号を検出するとともに前記レスポンスIDを受信し、前記認証処理手段により前記レスポンスIDに対する認証結果に応じた処理を実施する手段を設けた、
ことを特徴とする認証システム。
【請求項4】
前記ワンタイムパスワード生成手段および色相差光信号生成手段は、前記端末上で動作し、かつ、所定のサーバより任意のタイミングでダウンロード及び更新可能なソフトウェア構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項5】
記憶手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証方法であって、
前記端末は、前記記憶手段に保持されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力するステップを有し、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施するステップを有する、
ことを特徴とする認証方法。
【請求項6】
ワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、イメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証方法であって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により生成されたIDを、前記色相差光信号生成手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力するステップを有し、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により前記色相差光信号を検出して前記IDを受信し、前記認証処理手段により前記IDに対する認証結果に応じた処理を実施するステップを有する、
ことを特徴とする認証方法。
【請求項7】
通信手段と記憶手段とワンタイムパスワード生成手段と色相差光信号生成手段とカラーディスプレイを具備する端末と、通信手段とイメージセンサと色相差光信号検出手段と認証処理手段を具備する認証装置とから構成される色相差光信号による認証方法であって、
前記端末は、前記ワンタイムパスワード生成手段により前記通信手段を介して前記認証装置側の認証処理手段が生成する文字列であるチャレンジIDを取得し、このチャレンジIDと前記記憶手段に保持された認証IDを一定の手順で演算することにより得られる文字列であるレスポンスIDを生成し、このレスポンスIDを前記色相差光信号受信手段により色相差光信号に変換し、この信号を前記カラーディスプレイより画面出力するステップを有し、
前記認証装置は、前記カラーディスプレイの画面を撮像した前記イメージセンサの入力情報から、前記色相差光信号検出手段により色相差光信号を検出するとともに前記レスポンスIDを受信し、前記認証処理手段により前記レスポンスIDに対する認証結果に応じた処理を実施するステップを有する、
ことを特徴とする認証方法。
【請求項8】
前記ワンタイムパスワード生成手段および色相差光信号生成手段は、前記端末上で動作し、かつ、所定のサーバより任意のタイミングでダウンロード及び更新可能なソフトウェアを有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の認証方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の認証システムまたは認証方法における手段またはステップをコンピュータで実行可能に構成したことを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の認証システムまたは認証方法における手段またはステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを、該コンピュータが読み取り可能に記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−72778(P2006−72778A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256395(P2004−256395)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月4日 社団法人情報処理学会発行の「情報処理学会シンポジウムシリーズ Vol.2004,No.5 インタラクション2004論文集」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】