説明

誘導受電回路

【課題】本発明は、簡単な回路構成で、低電圧の電気二重層コンデンサを対象にして充放電することができる誘導受電回路を提供することを目的とする。
【解決手段】高周波電流を流す誘導線路17に対向して配置され誘導線路17より起電力が誘起される受電コイル30と、受電コイル30とともに誘導線路17の周波数に共振する共振回路31を形成する共振コンデンサ32と、共振回路31から出力される電流を整流する整流回路33と、定格電圧が低電圧(例えば、15V)の電気二重層コンデンサ46と、この電気二重層コンデンサ46と共振回路31との間での充放電を行う共振電源回路47を備え、整流回路33により整流された電流を消費電力が変動する負荷へ給電し、共振電源回路47は、放電動作時に、共振回路31を共振要素として使用し、誘導線路17の周波数で自己発振して電気二重層コンデンサ46より共振回路31へ給電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリや電気二重層コンデンサを備えた無接触給電設備の誘導受電回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無接触給電設備の誘導受電回路のなかで、バッテリや電気二重層コンデンサを備えた誘導受電回路の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている誘導受電回路は、移動体に搭載され、移動体の移動経路に沿って敷設された、高周波電流を流す誘導線路から無接触で受電して、移動体の負荷(例えば、走行用のドライバおよびモータ)へ供給すると共に、蓄電池を充放電する回路であり、前記誘導線路に近接して配置される受電コイルと、受電コイルに並列接続されている共振コンデンサと、共振コンデンサに並列接続されている整流器と、整流器が出力した電流を所定電圧に制御し前記負荷へ供給する定電圧回路と、定電圧回路に並列接続された蓄電池とを備えている。
【0004】
この構成により、誘導線路に電流を流すと、誘導線路の周囲に発生した磁束により受電コイルに誘導起電力が発生し、この誘導起電力を受けて受電コイルおよび共振コンデンサが交流の定電流を出力し、この定電流を整流器が整流し、整流された定電流を定電圧回路が所定の電圧に整圧して負荷へ給電すると共に、蓄電池を充電している。
蓄電池は、負荷が大きくなった場合、又は誘導線路の電流もしくは電圧が減少した場合に、充電された電力を放電し、モータを最適に駆動する。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている誘導受電回路には、蓄電池の充電/放電を制御する手段が設けられていないため、蓄電池が充電不足なとき、負荷が大きくなった場合でも蓄電池は常に充電され続ける。つまり、場合によっては負荷への給電が十分に行えない恐れがある。また、蓄電池は、負荷への給電が十分な場合であっても放電する場合があり、放電による電力供給が必要となったときに充電不足のため、負荷へ十分な給電を行えない恐れもある。
そこで、このような恐れを解消するための誘導受電回路が、特許文献2に開示されている。
【0006】
特許文献2には、蓄電池の充電/放電を制御する手段が設けられている。すなわち、走行用のモータやドライバが接続される誘導受電回路の出力端子の電圧(出力端子電圧)を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された出力端子電圧が第1基準電圧値以上であるか否か、またはこの第1基準電圧値よりも低い値の第2基準電圧値以下であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により判定された端子電圧が前記第1基準電圧値以上である場合には、前記蓄電池を充電する充電手段と、前記判定手段により判定された端子電圧が前記第2基準電圧値以下である場合には、前記蓄電池に充電された電力を放電する放電手段が備えられている。
【0007】
この蓄電池の充電/放電を制御する手段の構成により、前記検出手段により検出された出力端子電圧が第1基準電圧値 以上であると判定手段が判定した場合、充電手段は蓄電池を充電すると共に、誘導起電力を直接移動体の負荷へ給電し、また前記出力端子電圧が第2基準電圧値以下であると判定手段が判定した場合、放電手段は蓄電池に充電された電力を放電することにより、蓄電池の放電による電力を移動体の負荷へ給電している。
【0008】
これにより、移動体の負荷へ給電する電力が小さいときに蓄電池への充電を行うことにより、負荷の駆動に影響を与えずに充電を行うことができ、また負荷が大きい場合は蓄電池を放電することにより、負荷へ適切な電力を給電することができる。また、誘導線路だけで移動体の負荷最大電力をまかなう必要がないため、誘導線路に流れる電流を小さくでき、システムの小型化および低コスト化を図ることができる。
【0009】
また誘導受電回路の定格電圧(出力端子電圧)は、例えばDC300Vであり、蓄電池の定格電圧(特許文献2ではDC48V)とかけ離れているために、前記充電/放電を制御する手段は、蓄電池へ充電電圧および電流を制御して充電している。すなわち、DC300VをDC48Vに降圧して充電している。そして、放電の際には、蓄電池の電圧を適切な直流電圧(250〜300V)に昇圧して負荷へ給電する昇圧回路を備えている。
また特許文献2には、蓄電池を電気二重層コンデンサに代えた場合についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−328508号公報
【特許文献2】特開2005−94862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2に開示されている蓄電池の充電/放電を制御する手段は、誘導受電回路の定格電圧と蓄電池の定格電圧との電圧比がかけ離れていることを解消する直流の降圧回路(上記充電回路)と昇圧回路を別々に備える必要があるために回路構成が複雑になり、コストが高くなるという問題があった。また直流の昇圧回路を構成する機器は寸法が大きく、移動体の設置には不向きな大きさであり、移動体ではこのようなスペースを確保することは困難であった。
【0012】
また上記特許文献1に開示されている蓄電池は、誘導受電回路の定格電圧と蓄電池の定格電圧との電圧比が大きくかけ離れているために、直列接続された複数の蓄電池からなる蓄電池群であると理解される。また特許文献2に開示されている蓄電池も、定格電圧がDC12Vの4個の蓄電池を直列に接続した蓄電池群であると理解される。
【0013】
現在、蓄電池に代えて、メンテナンスフリーの電気二重層コンデンサが多く使用されるようになってきている。この電気二重層コンデンサは定格電圧が1セル当たり3V程度と低く、特許文献1と特許文献2の構成では、複数の電気二重層コンデンサを直列に接続して使用することになる。このように複数の電気二重層コンデンサを直列に接続して使用する場合、各電気二重層コンデンサの放電特性のバラツキにより、放電後には各電気二重層コンデンサの電圧にバラツキが生じ、充電の際に定格通りに充電できなくなることから、各電気二重層コンデンサにそれぞれ並列に抵抗を接続して均等放電回路を形成し、放電後の各電気二重層コンデンサの電圧のバラツキを解消している。このような均等放電回路は、電力を消費するために無いほうがよく、定格電圧が低い電気二重層コンデンサは、できるだけ直列する数を少なくして使用したほうが好ましい。
【0014】
そこで本発明は、簡単な回路構成で、バッテリまたは電気二重層コンデンサを対象として充放電することができ、コストを低減でき、省スペースを実現できる誘導受電回路を提供することを目的としたものである。また他に、本発明は、定格電圧が低い電気二重層コンデンサを対象としても安価な構成で充放電を実現できる誘導受電回路を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、移動体の移動経路に沿って敷設された高周波電流を流す誘導線路に対向して配置され前記誘導線路より起電力が誘起される受電コイルと、前記受電コイルとともに前記誘導線路の周波数に共振する共振回路を形成する共振コンデンサと、前記共振回路から出力される電流を整流する整流回路を備え、前記整流回路により整流された電流を消費電力が変動する負荷へ給電する前記移動体の誘導受電回路であって、バッテリあるいは電気二重層コンデンサと、前記共振回路と前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサとの間に接続され、バッテリあるいは電気二重層コンデンサの充放電を行う共振電源回路とを備え、前記共振電源回路は、放電動作時に、前記共振回路を共振要素として使用し、前記誘導線路の周波数で自己発振して前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサより前記共振回路へ給電することを特徴とするものである。
【0016】
上記構成によれば、共振電源回路は、放電動作時に、共振回路を共振要素として使用して誘導線路の周波数で自己発振し、バッテリあるいは電気二重層コンデンサより、共振回路へ給電する。
このように、従来のように、バッテリあるいは電気二重層コンデンサと、直流回路(整流器と負荷との間に構成される回路)との間で充放電を行うのではなく、バッテリあるいは電気二重層コンデンサと、交流回路(共振回路)との間で充放電を行うことを特徴としており、放電動作時に、共振回路を共振要素として使用して、誘導線路の周波数で自己発振する回路構成とすることにより、共振電源回路の回路構成を簡単とすることが可能となっている。
【0017】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記共振電源回路は、前記受電コイルの両端に接続された一次コイルとセンタータップ付き二次コイルを有する絶縁トランスと、一端が、前記センタータップ付き二次コイルのセンタータップに接続され、他端が、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの正極に接続されたDCチョークと、前記センタータップ付き二次コイルの一端と前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極との間に接続され、トランジスタにより形成された第1放電スイッチング素子と、前記センタータップ付き二次コイルの他端と前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極との間に接続され、トランジスタにより形成された第2放電スイッチング素子と、カソードが、前記二次コイルの他端および前記第1放電スイッチング素子を形成するトランジスタのべースに接続され、アノードが、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極に接続された第1ツェナーダイオードと、カソードが、前記二次コイルの一端および前記第2放電スイッチング素子を形成するトランジスタのべースに接続され、アノードが、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極に接続された第2ツェナーダイオードを有し、前記二次コイルの他端から前記第1ツェナーダイオードに電流が流れることにより前記第1スイッチング素子を形成するトランジスタは駆動され、前記二次コイルの一端から前記第2ツェナーダイオードに電流が流れることにより前記第2スイッチング素子を形成するトランジスタは駆動される構成としたことを特徴とするものである。
【0018】
上記構成によれば、まず二次コイルの他端から第2トランジスタへ電流が流れるとすると、同時に第1ツェナーダイオードに電流が流れ、第1ツェナーダイオードのツェナー電圧が第1放電スイッチング素子を形成する第1トランジスタのベースに印加され、第1トランジスタが駆動され、よって二次コイルの一端からこの第1トランジスタに電流が流れて、二次コイルに流れる電流の向きは逆になる。すると、第1ツェナーダイオードのツェナー電圧が0となり、また第2ツェナーダイオードに電流が流れて、第2ツェナーダイオードのツェナー電圧が第2スイッチング素子を形成する第2トランジスタのベースに印加され、この第2トランジスタが駆動され、二次コイルの他端からこの第2トランジスタに電流が流れて二次コイルに流れる電流の向きは逆になる。このように第1トランジスタと第2トランジスタが交互にオンし、その毎に二次コイルに流れる電流の向きは逆になる。これに伴い、一次コイルに交互に逆向きの電圧が誘起され、受電コイルと共振コンデンサからなる回路が共振回路を形成する所定周波数のときに最も電流が良く流れることから、上記第1トランジスタと第2トランジスタは、前記共振回路の所定周波数で駆動される。すなわち、誘導線路の所定周波数で2つの放電スイッチング素子が自己発振し、二次コイルのセンタータップから一端と他端に交互に電流が流れ、バッテリあるいは電気二重層コンデンサの両端電圧が2倍に昇圧されて一次コイルに電圧が印加されることによって、受電コイルへ電流が流れ、すなわちバッテリあるいは電気二重層コンデンサが放電され、共振回路、定電圧回路を介して負荷へ給電される。
したがって、トランジスタ(スイッチング素子)を駆動するスイッチングコントローラが不要となる。
【0019】
また請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明であって、前記整流回路の出力端に接続され前記負荷へ給電する出力コンデンサと、前記出力コンデンサの両端電圧を制御する出力スイッチング素子と、前記出力コンデンサの両端電圧を検出する出力電圧検出器と、前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧に基づいて、前記出力スイッチング素子を駆動し、前記出力コンデンサの両端電圧を予め設定された電圧に制御する給電コントローラを備え、前記第1ツェナーダイオードおよび第2ツェナーダイオードの両端にそれぞれ放電阻止スイッチを設け、前記給電コントローラは、前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧が予め設定された下限設定値未満となると、前記出力スイッチング素子による前記出力コンデンサの両端電圧制御を停止し、前記放電阻止スイッチを開動作し、放電動作を行うことを特徴とするものである。
【0020】
上記構成によれば、負荷が定格負荷以上となり誘導線路から供給される電力が不足し、あるいは誘導線路から電力を受取ることができなくなり、出力コンデンサの両端電圧が下限設定値未満となると、出力スイッチング素子による出力コンデンサの両端電圧制御が停止され、前記放電阻止スイッチが開動作されることにより、第1放電スイッチング素子および第2放電スイッチング素子が駆動され、放電される。
【0021】
また請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明であって、前記絶縁トランスは、センタータップ付き三次コイルを有し、前記共振電源回路は、アノードが、前記センタータップ付き三次コイルの一端に接続された第1ダイオードと、アノードが、前記センタータップ付き三次コイルの他端に接続され、カソードが、前記第1ダイオードのカソードに接続された第2ダイオードと、一端が、前記DCチョークの一端に接続され、他端が、前記第1ダイオードおよび第2ダイオードのカソードに接続された充電スイッチング素子とを有し、前記給電コントローラは、前記充電スイッチング素子を閉動作することにより、充電動作を行うことを特徴とするものである。
【0022】
上記構成によれば、受電コイルの両端電圧は、絶縁トランスの一次コイルに印加されており、充電スイッチング素子が閉動作されると、2つの第1ダイオードと第2ダイオードの作用により誘導線路の交流電圧に同期して180゜毎に三次コイルのセンタータップから三次コイルの一端と他端より交互にDCチョークへ交流電流が流れ、1/2に分圧され、DCチョークにより交流分が平滑されて、バッテリあるいは電気二重層コンデンサは充電される。
【0023】
また請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明であって、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの両端電圧を検出する充電電圧検出器を備え、前記給電コントローラは、前記移動体の運転が開始されて前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧が負荷定格電圧となるまでの間、または前記充電電圧検出器により前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの両端電圧が下限電圧未満となったことが検出されたとき、または前記充電スイッチング素子が閉動作されたとき、前記放電阻止スイッチを閉動作し、放電動作を阻止することを特徴とするものである。
【0024】
上記構成によれば、3つの条件のとき、すなわち移動体の運転が開始されて前記出力電圧検出器により検出される出力コンデンサの両端電圧が負荷定格電圧となるまでのイニシャライズの間、または充電電圧検出器により検出されるバッテリあるいは電気二重層コンデンサの両端電圧が下限電圧未満となって放電ができないとき、または充電スイッチング素子が閉動作され充電が実行されているときに、放電阻止スイッチを閉動作され、第1放電スイッチング素子および第2放電スイッチング素子を形成するトランジスタのベースが接地されることにより、第1放電スイッチング素子および第2放電スイッチング素子はオフされ、放電が阻止される。
【0025】
また請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の発明であって、前記共振電源回路は、前記絶縁トランスの前記一次コイルとセンタータップ付き二次コイルの巻線比により放電動作時に昇圧し、前記絶縁トランスの前記一次コイルとセンタータップ付き三次コイルの巻線比により充電動作時に降圧することを特徴とするものである。
【0026】
上記構成によれば、絶縁トランスという簡単な機器で、充放電時に、昇圧・降圧が実現され、定格電圧が低い電気二重層コンデンサを対象としても安価な構成で充放電を実現できる誘導受電回路を提供できる。
【0027】
また請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の発明であって、前記絶縁トランスの一次コイルを、飽和電圧を前記共振回路の定格の共振電圧に設定した可飽和リアクトルにより形成し、前記絶縁トランスの二次コイルの巻数を、二次コイルに誘起される電圧が、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの充電時の定格電圧未満に降圧するように設定したことを特徴とするものである。
【0028】
上記構成によれば、絶縁トランスの一次コイルは、共振回路の両端に接続されており、この共振回路の定格の共振電圧に飽和電圧を設定した可飽和リアクトルにより形成されていることにより、共振回路の共振電圧は、定格の共振電圧に抑えられ、誘導線路から供給される電力(受電コイルの電圧・電流で決定される電力)が制限される。また二次コイルに誘起される電圧が、バッテリあるいは電気二重層コンデンサの充電時の定格電圧未満に抑えられることにより、充電を中止制御する必要がなくなる。
【0029】
また請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明であって、前記第1ツェナーダイオードおよび第2ツェナーダイオードの両端にそれぞれ放電阻止スイッチを設け、前記整流回路の出力端に接続され前記負荷へ給電する出力コンデンサと、前記出力コンデンサの両端電圧を検出する出力電圧検出器と、前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧が予め設定された下限設定値未満となると、前記放電阻止スイッチを開動作し、放電動作を行う給電コントローラを備えたことを特徴とするものである。
【0030】
上記構成によれば、負荷が定格負荷以上となり誘導線路から供給される電力が不足し、あるいは誘導線路から電力を受取ることができなくなり、出力コンデンサの両端電圧が下限設定値未満となると、放電阻止スイッチが開動作されることにより、第1放電スイッチング素子および第2放電スイッチング素子が駆動され、放電される。
【0031】
また請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明であって、前記共振電源回路は、前記第1放電スイッチング素子および前記第2放電スイッチング素子を形成するトランジスタの各エミッタにそれぞれカソードが接続され、各コレクタにそれぞれアソードが接続されたダイオードからなるサージキラーを有し、前記DCチョークを一次コイルとし、この一次コイルに対向する二次コイルを有する昇圧トランスと、アノードが前記昇圧トランスの二次コイルに接続され、カソードが前記出力コンデンサに接続されたダイオードを備え、前記昇圧トランスは、前記給電コントローラにより放電動作が停止されたときに前記一次コイルに発生するエネルギーを、前記ダイオードを介して前記出力コンデンサへ出力する機能を有していることを特徴とするものである。
【0032】
上記構成によれば、放電が停止されると、DCチョークである一次コイルに発生するエネルギーは行き先が無くなり、一次コイルの両端電圧は上昇するが、この電圧は、二次コイルに印加されてダイオードを介して、出力コンデンサに出力されることにより逃がされ、エネルギーが有効に使用されるとともに、サージキラーに高電圧が印加されることによるストレスが解消される。
【発明の効果】
【0033】
本発明の誘導受電回路は、従来のように、バッテリあるいは電気二重層コンデンサと、直流回路(整流器と負荷との間に構成される回路)との間で充放電を行うのではなく、バッテリあるいは電気二重層コンデンサと、交流回路(共振回路)との間で充放電を行うことを特徴としており、共振電源回路(充放電回路)を、放電動作時に、共振回路を共振要素として使用して誘導線路の周波数で自己発振する回路構成とすることにより、従来のDC/DCコンバータを必要とせずに、定格電圧が低電圧のバッテリあるいは電気二重層コンデンサを対象として低電圧で充放電できる共振電源回路(充放電回路)を安価に提供でき、また省スペースを実現でき、さらに電力が不足すると、バッテリあるいは電気二重層コンデンサが放電されて不足する電力が補償されることにより、誘導線路は定格負荷以上の負荷に対応する必要がなくなるので、供給電力を抑えることができ、誘導線路に電力を供給する電源装置を安価なものに構成できる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における誘導受電回路を備えた物品搬送設備の要部構成図である。
【図2】同物品搬送設備の誘導受電回路の構成図である。
【図3】同物品搬送設備の誘導受電回路の回路図である。
【図4】同物品搬送設備の誘導受電回路の給電コントローラのブロック図である。
【図5】同物品搬送設備の誘導受電回路の特性図である。
【図6】本発明の実施の形態2における同物品搬送設備の誘導受電回路の回路図である。
【図7】同物品搬送設備の誘導受電回路の給電コントローラのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態における誘導受電回路について、図面を参照しながら説明する。
『実施の形態1』
図1は、本発明の実施の形態1における誘導受電回路を搬送台車に備えた物品搬送設備の要部構成図である。
図1において、11はフロア12に設置された一対の走行レールであり、13はこの走行レール11に案内されて自走し、物品Rを搬送する4輪の搬送台車(移動体の一例)である。
前記走行レール11により、搬送台車13の搬送経路(移動経路の一例)14が構成され、この搬送経路14に沿って複数のステーション(物品受け手段)15が配置されており、搬送台車13は、搬送経路14に沿って走行し、搬送経路14に沿って配置されたステーション15間に渡って物品Rを搬送する搬送車を構成している。
また各ステーション15にはそれぞれ、各搬送台車13との間で物品Rの移載、すなわち搬入、搬出を行う移載用コンベヤ装置(たとえば、ローラコンベヤやチェンコンベヤ)16が設けられている。
また走行レール11の外方側面に走行方向に沿って上下一対の誘導線路17が敷設されており、誘導線路17には高周波電源装置18(図2)により所定周波数(例えば、10kHz)の高周波電流(交流電流)が供給されている。
【0036】
前記搬送台車13は、車体21と、この車体21上に設置され、物品Rを移載し載置する移載・載置用コンベヤ装置(たとえば、ローラコンベヤやチェンコンベヤ)22と、車体21の下部に取付けられ、車体21を一方の走行レール11に対して支持する2台の旋回式従動車輪装置23と、車体21の下部に取付けられ、車体21を他方の走行レール11に対して支持するとともに走行レール11の曲がり形状に追従可能でかつ旋回式従動車輪装置23に対して遠近移動自在(スライド自在)とした2台の旋回・スライド式車輪装置24と、これら旋回・スライド式車輪装置24のうちの一方に連結された走行用モータ(消費電力が変動する負荷の一例)25と、ステーション15と間の信号授受に使用される光伝送装置26Aを備えている。前記走行用モータ25の駆動により搬送台車13は走行される。
また各ステーション15毎にそれぞれ、搬送台車13の光伝送装置26Aとの間で信号の授受を行う光伝送装置26Bが設けられている。
【0037】
また各搬送台車13にはそれぞれ、一方の旋回式従動車輪装置23の外方に、この誘導線路17により起電力が誘起され、走行用モータ25等へ給電するためのピックアップユニット28が設置され、また誘導受電回路29(図2および図3)が設置されている。
前記ピックアップユニット28は、断面形状がE字状のフェライト(フェライトコア)(図示せず)と、フェライトに渡って巻かれ、10KHzほどの一定周波数の交番磁界中に置かれて誘導起電力を発生する受電コイル30(図2)から形成されている。
前記誘導受電回路29に、消費電力が変動する負荷として、上記走行用モータ25を駆動するインバータ39(図2)と上記移載・載置用コンベヤ装置22を駆動するインバータ40(図2)が接続されている。
【0038】
「誘導受電回路29」
上記誘導受電回路29は、図2に示すように、
前記受電コイル30と、
受電コイル30に並列に接続され受電コイル30とともに誘導線路17の周波数に共振する(並列)共振回路31を形成する共振コンデンサ32と、
この共振コンデンサ32に並列に接続され、共振回路から出力される電流を整流する(全波)整流回路33と、
整流回路33により整流された定電流を所定の電圧に整圧して、前記インバータ39およびインバータ40へ給電する定電圧回路34と、
定格電圧が低電圧(例えば、15V)の電気二重層コンデンサ46と、
この電気二重層コンデンサ46と共振回路31との間での充放電を行う共振電源回路(充放電回路)47(詳細は後述する)
を備えている。
【0039】
前記定電圧回路34は、図3に示すように、
整流回路33のプラス側出力端子に一端が接続されたDCチョーク34Aと、
DCチョーク34Aの他端と整流回路33のマイナス側出力端子間に接続された出力制御用(NPN)トランジスタ(出力スイッチング素子の一例)35と、
DCチョーク34Aの他端にアノードが接続されたダイオード36と、
このダイオード36のカソードと整流回路33のマイナス側出力端子間に接続された、すなわち整流回路33の出力端に接続された出力コンデンサ37と、
出力コンデンサ37の両端電圧Vpを検出する出力電圧検出器38と、
給電コントローラ66(詳細は後述する)と
を備えており、出力コンデンサ37の両端に、前記インバータ39とインバータ40が接続されている。
【0040】
また上記共振電源回路47は、図3に示すように、
受電コイル30の両端に接続された一次コイル41、センタータップ付き二次コイル42、およびセンタータップが電気二重層コンデンサ46のマイナス側端子(負極)が接続されたセンタータップ付き三次コイル43からなる絶縁トランス44と、
一端が、センタータップ付き二次コイル42のセンタータップ42aに接続され、他端が、電気二重層コンデンサ46のプラス側端子(正極)に接続されたDCチョーク45と、
コレクタが、センタータップ付き二次コイル42の一端42bに接続され、エミッタが、電気二重層コンデンサ46のマイナス側端子に接続された第1(NPN)トランジスタ(第1放電スイッチング素子の一例)51と、
コレクタが、センタータップ付き二次コイル42の他端42cに接続され、エミッタが、電気二重層コンデンサ46のマイナス側端子に接続された第2(NPN)トランジスタ(第2放電スイッチング素子の一例)52と、
一端が、センタータップ付き二次コイル42の他端42cに接続された第1抵抗53と、
カソードが、第1抵抗53の他端および第1トランジスタ51のベースに接続され、アノードが、電気二重層コンデンサ46のマイナス側端子に接続された第1ツェナーダイオード54と、
この第1ツェナーダイオード54の両端に接続され、第1トランジスタ51のベースを電気二重層コンデンサ46のマイナス側端子に接続可能な放電阻止リレイRY2(後述する)のb接点(放電阻止リレイが励磁されると開動作する接点;放電阻止スイッチの一例)RY2−xと、
一端が、センタータップ付き二次コイル42の一端42bに接続された第2抵抗55と、
カソードが、第2抵抗55の他端および第2トランジスタ52のベースに接続され、アノードが、電気二重層コンデンサ46のマイナス側端子に接続された第2ツェナーダイオード56と、
この第2ツェナーダイオード56の両端に接続され、第2トランジスタ52のベースを電気二重層コンデンサ46のマイナス側端子に接続可能な放電阻止リレイRY2のb接点RY2−y(放電阻止スイッチの一例)と、
アノードが、センタータップ付き三次コイル43の一端43bに接続された第1ダイオード61と、
アノードが、センタータップ付き三次コイル43の他端43cに接続され、カソードが、第1ダイオード61のカソードに接続された第2ダイオード62と、
一端が、DCチョーク45の一端に一端が接続され、他端が、第1ダイオード61および第2ダイオード62のカソードに接続された充電リレイRY1(後述する)のa接点(充電リレイが励磁されると閉動作する接点;充電スイッチング素子の一例)RY1−xと
電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcを検出する充電電圧検出器64と、
第1トランジスタ51および第2トランジスタ52の各エミッタにそれぞれカソードが接続され、各コレクタにそれぞれアソードが接続された、ダイオードからなるサージキラー51A,52Aと
を備えている。
【0041】
上記放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが閉動作しているとき、第1トランジスタ51および第2トランジスタ52のベースは接地され、べース−エミッタ間電圧は、ゼロ電圧となり、トランジスタ51,52には電流が流れない(後述する放電が阻止される)。また充電リレイRY1のa接点RY1−xが閉動作しているとき、充電が実行される。
【0042】
このように、誘導受電回路29は、予備の電力を蓄電する電気二重層コンデンサ46をと、この電気二重層コンデンサ46の充放電を制御する共振電源回路47を備え、共振電源回路47の放電回路48を構成する素子として、上記絶縁トランス44(センタータップ付き二次コイル42)、第1トランジスタ51、第2トランジスタ52、第1抵抗53、第1ツェナーダイオード54、第2抵抗55、第2ツェナーダイオード56、および放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yを備え、共振電源回路47の充電回路49を構成する素子として、上記絶縁トランス44(センタータップ付き三次コイル43)、第1ダイオード61、第2ダイオード62、および充電リレイRY1のa接点RY1−xを備えている(充放電回路の動作については後述する)。
【0043】
「給電コントローラ66」
上記給電コントローラ66には、出力電圧検出器38により検出される出力コンデンサ37の両端電圧Vpと、充電電圧検出器64により検出される電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが入力されており、給電コントローラ66は、出力制御用トランジスタ35をパルス幅制御する(駆動する)ことにより、出力コンデンサ37の両端電圧(出力電圧)Vpを制御し、また放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yを制御し、さらに充電リレイRY1のa接点RY1−xを制御している。
【0044】
給電コントローラ66の構成について、図4の給電コントローラ66のブロック図を参照しながら詳細に説明する。
搬送台車13には、搬送台車13の動作(作業)を統括して制御する運転コントローラ70(図4)が設けられており、給電コントローラ66は、この運転コントローラ70から搬送台車13が運転を開始したことを知らせる運転信号と、充電を許可する充電許可信号を入力しており、運転信号の入力により動作する(励磁される)運転リレイRYAを備えている。前記充電許可信号は、搬送台車13が停止し且つ物品Rを移載していないとき、または走行時に減速しているとき、または低速で走行しているときに出力される。すなわち、運転コントローラ70は、負荷である移載・載置用コンベヤ装置22と走行用モータ25が電力を大きく消費していないときに、充電許可信号を出力する。
【0045】
また充電電圧検出器64により検出される電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが定格電圧の15V以上かどうかを判断する第1比較器71と、予め設定された下限値の12V以上かどうかを判断する第2比較器72を備えている。前記下限値は、この電圧値より電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが低下すると、電気二重層コンデンサ46の充電時間が大幅に増加するために、この電圧以下となることを防ぐ目的で設定されている。
【0046】
また出力電圧検出器38により検出される出力コンデンサ37の両端電圧Vpが、インバータ39,40の定格電圧(負荷の定格電圧の一例)の300V以上かどうかを判断する第3比較器73と、定格電圧より低く、予め設定された下限値(後述する)より高く、放電を停止する電圧である255V以上かどうかを判断する第4比較器74と、インバータ39,40が動作可能な最低電圧である、予め設定された下限値である250V以上かどうかを判断する第5比較器75を備えている。
【0047】
前記充電RY1は、第1比較器71の出力信号がOFF(すなわち、電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが定格電圧の15V未満である)、かつ運転リレイRYAのa接点がON(すなわち、搬送台車13は運転中である)、かつ充電許可信号を入力していること、かつ放電阻止リレイRY2(後述する)のb接点(放電中に開動作する接点)RY1−zがON(放電中ではない)を条件に動作する(励磁される)。この充電RY1が励磁されると、充電スイッチング素子である上記a接点RY1−xが閉動作(ON)し、電気二重層コンデンサ46への充電が実行される(詳細は後述する)。
【0048】
また運転リレイRYAのa接点がON(すなわち、搬送台車13は運転中である)となると1パルスのみを出力するパルス発生器76が設けられ、このパルス発生器76の1パルスでセットされ(すなわち、搬送台車13の運転開始でセットされ)、第3比較器73がON(すなわち、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが300V以上である)でリセットされる第1RSフリップフロップ77が設けられている。この第1RSフリップフロップ77は、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが0Vである運転開始から定格電圧300Vまで上昇するイニシャライズ時にその出力信号がONされる。
【0049】
また第5比較器75がOFF(すなわち、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V未満である)でセットされ、第1RSフリップフロップ77の出力信号がON(すなわち、イニシャライズ時である)、または第2比較器72の出力信号がOFF(すなわち、電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが下限値の12V未満である)、または第4比較器74がON(すなわち、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが255V以上である)、または充電RY1のa接点がON(すなわち、充電中である)のときにリセットされる第2RSフリップフロップ78が設けられている。この第2RSフリップフロップ78の出力信号がONとなると、放電阻止リレイRY2は動作する(励磁される)。放電阻止リレイRY2が励磁されると、上記放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが開動作し、2つの放電スイッチング素子である第1トランジスタ51と第2トランジスタ52が動作して電気二重層コンデンサ46から放電が実行される(詳細は後述する)。
【0050】
また出力電圧検出器38により検出される出力コンデンサ37の両端電圧Vpをフィードバックしながら、出力制御用トランジスタ35をパルス幅制御し、出力コンデンサ37の両端電圧Vpを定格電圧の300Vに制御するパルス幅制御器79が設けられている。またパルス幅制御器79は、運転リレイRYAのa接点がON(すなわち、搬送台車13は運転中である)、かつ放電リレイRY2のa接点がOFF(すなわち、放電中ではない)の条件でパルス幅制御を行っており、運転リレイRYAのa接点がOFF(すなわち、搬送台車13は運転中でない)、または放電リレイRY2のa接点がON(すなわち、放電中である)ときには、出力制御用トランジスタ35を動作させずに、開状態を維持する(すなわち、出力コンデンサ37の両端電圧Vpの制御は行わない)。
【0051】
また上記絶縁トランス44の一次コイル41と二次コイル42の巻線比、すなわち巻数Nと巻数Nは、負荷が定格負荷のときの受電コイル30の両端電圧VSAC、および電気二重層コンデンサ46の放電時の定格電圧VSDCより、下記の式を満たすように求められる。
SAC×(N/N)×1/2×0.9(結合率等)=VSDC
上記式の“1/2”は、センタータップ付き二次コイル42の両端電圧は、二次コイル42のセンタータップ42aと一端42bとの間、センタータップ42aと他端42cとの間で、1/2に分圧されていることによる。
例えば、物理的に限定される、一次コイル41の巻数Nを60ターン、受電コイル30の両端電圧VSACを320V、電気二重層コンデンサ46の放電時の定格電圧VSDCを15Vとすると、二次コイル42の巻数Nとして、6ターンが求められる。二次コイル42の巻数Nを6ターンとすると、放電時に絶縁トランス44の一次コイル41へ誘起される電圧は、333Vとなり、昇圧される。
【0052】
また絶縁トランス44の一次コイル41と三次コイル43の巻線比、すなわち巻数Nと巻数Nは、負荷が定格負荷のときの受電コイル30の両端電圧VSAC、および電気二重層コンデンサ46への充電時の印加電圧VCDCより、下記の式を満たすように求められる。
SAC×(N/N)×1/2(上述の通り)×0.9(結合率等)=VCDC
例えば、物理的に限定される、一次コイル41の巻数Nを60ターン、受電コイル30の両端電圧VSACを320V、電気二重層コンデンサ46への充電時の印加電圧VCDCを18Vとすると、三次コイル43の巻数Nとして、8ターンが求められる。三次コイル43の巻数Nを8ターンとすると、充電時には電気二重層コンデンサ46へは19Vが印加され、降圧される。
【0053】
以下、上記実施の形態1における作用を説明する。
搬送台車13は、誘導受電回路29によりインバータ39へ給電し、インバータ39を制御して走行用モータ25を駆動して旋回・スライド式車輪装置24を駆動し、走行レール11上を走行してステーション15間を移動し、ステーション15に到着すると、搬送台車13は、光伝送装置26A,26Bを介してステーション15側と物品Rの移載情報を交換し、インバータ40を制御して移載・載置用コンベヤ装置22を駆動し、ステーション15では移載用コンベヤ装置16を駆動して物品Rの移載を実行する。
誘導受電回路29の作用は以下の通りである。
【0054】
誘導線路17に発生する磁束により、受電コイル30に誘導起電力が発生し、この受電コイル30と共振コンデンサ32とから形成される(並列)共振回路31より交流の一定電流が整流回路33、DCチョーク34A、ダイオード36を介して出力コンデンサ37へ供給され、インバータ39,40と走行用モータ25と移載・載置用コンベヤ装置22からなる負荷へ給電される。このとき、前記並列共振回路から出力される電流は一定電流であることから、前記負荷の負荷電力により、並列共振回路の両端電圧は決定されるが、前記負荷電力が大きくなると、受電コイル30と共振コンデンサ32に流れる電流は大きくなる。この電流は誘導線路17から非接触で供給される。
【0055】
また負荷により変動する出力コンデンサ37の両端電圧Vp、すなわち出力電圧は、給電コントローラ66によって出力制御用トランジスタ35がパルス幅制御でON−OFF駆動されることにより一定電圧に維持され、並列共振回路の電圧の上昇は抑えられる。よって、この電圧の上昇により受電コイル30と共振コンデンサ32に流れる電流が大きくなることが回避され、誘導線路17から供給される電力(受電コイル30の電圧・電流で決定される電力)が制限される。これにより、他の搬送台車(移動体)13が誘導線路17から給電されなくなることが回避される。
【0056】
[電気二重層コンデンサ46の充電]
電気二重層コンデンサ46は、次のように充電される。
誘導線路17から受電コイル30に誘起される電圧は、絶縁トランス44の一次コイル41に印加されており、電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが定格電圧の15V未満で、かつ搬送台車13は運転中で、かつ充電許可信号が入力されて充電RY1が励磁され、給電コントローラ66において充電リレイRY1のa接点RY1−xが閉動作(ON)されると、ダイオード61,62の作用によって誘導線路17の交流電圧に同期して180゜毎に三次コイル43のセンタータップ43aから一端と他端より交互にDCチョーク45へ交流電流が流れ、1/2に分圧され、続いてDCチョーク45により交流分が平滑されて、電気二重層コンデンサ46は充電される。そして、電気二重層コンデンサ46の充電電圧が、定格電圧の15Vまで上昇すると、または充電許可信号がOFFとなると(すなわち、搬送台車13が高速走行を開始する等、充電の条件が整わなくなると)、または搬送台車13の運転が終了すると、給電コントローラ66において充電RY1は無励磁とされ、充電リレイRY1のa接点RY1−xが開動作(OFF)され、充電は停止される。
【0057】
[電気二重層コンデンサ46の放電]
電気二重層コンデンサ46は、次のように放電される。
前記負荷が定格負荷以上となると、あるいは誘導線路17からの給電がなくなると、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが低下し、これに伴い受電コイル30の両端電圧は低下し、よって一次コイル41の両端電圧は低下し、電気二重層コンデンサ46により二次コイル42を介して一次コイル41に印加される電圧のほうが高くなる。
【0058】
そして、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V未満まで低下すると、上記イニシャライズ時ではない、または電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが下限値の12V未満ではない、または出力コンデンサ37の両端電圧Vpが255V以上ではない、または充電中ではないとの条件により、給電コントローラ66において放電阻止リレイRY2が動作し(励磁され)、放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが開動作し、2つの放電スイッチング素子である第1トランジスタ51と第2トランジスタ52のベースには、ツェナーダイオード54,56のツェナー電圧が印加可能な状態とされる。この状態では、第1トランジスタ51、第2トランジスタ52ともにオフの状態にある。
【0059】
電気二重層コンデンサ46よりDCチョーク45に供給された直流電流は、部品の定格が同じでも、トランジスタ51,52の特性のバラツキ、抵抗53,55の抵抗値誤差などで電流の流れやすさに差が出る。ここで、二次コイル42の他端42cから第1ツェナーダイオード54に電流が流れて、第1トランジスタ51のベース電圧が、0.7Vとなり、第1トランジスタ51が先にオン(導通)状態となるものとする。
【0060】
すると、DCチョーク45へ供給された直流電流は二次コイル42のセンタータップ42aから一端42b、第1トランジスタ51と流れ、同時に第1トランジスタ51によって第2抵抗55を介して第2トランジスタ52のベース電圧が接地される(ほぼ0Vとなる)ので、第2トランジスタ52は完全にオフ(非導通)状態となり、二次コイル42の一端42cの電圧は上昇する。
そうすると一次コイルに接続されている共振回路31が作動することにより、二次コイル42の一端42cの電圧は前記上昇の後に下降に転じ、やがて接地電位となる(ほぼ0Vとなる)。第1抵抗53がこの接地電位を第1トランジスタ51のベースに伝えると、第1トランジスタ51はオフ(非導通)状態となり、今度は二次コイル42の一端42bの電圧が上昇する。この上昇した電圧によって第2抵抗55を介して第2ツェナーダイオード56に電流が流れると、第2トランジスタ52のベース電圧が0.7Vを超過して、第2トランジスタ52がオン(導通)状態となる。
【0061】
すると、DCチョーク45へ供給された直流電流は二次コイル42のセンタータップ42aから他端42c、第2トランジスタ52と流れ、同時に第2トランジスタ52によって第1抵抗53を介して第1トランジスタ51のベース電圧が接地される(ほぼ0Vとなる)ので、第1トランジスタ52は完全にオフ(非導通)状態となり、二次コイル42の一端42bの電圧は上昇する。
そうすると一次コイルに接続されている共振回路31が作動することにより、二次コイル42の一端42bの電圧は前記上昇の後に下降に転じ、やがて接地電位となる(ほぼ0Vとなる)。第2抵抗55がこの接地電位を第2トランジスタ52のベースに伝えると、第2トランジスタ52がオフ(非導通)状態となり、今度は二次コイル42の他端42cの電圧が上昇する。この上昇した電圧によって第1抵抗53を介して第1ツェナーダイオード54に電流が流れると、第1トランジスタ51のベース電圧が0.7Vを超過して、第1トランジスタ51がオン(導通)状態となる。
以上の動作を繰り返すことにより発振する。
【0062】
このように、第1トランジスタ51と第2トランジスタ52が交互にオンし、その毎に二次コイル42のセンタータップ42aから一端42bと他端42cへ交互に逆向きの電流が流れ、すなわち放電され、一次コイル41と二次コイル42の巻線比N/Nの2倍の電気二重層コンデンサ46の電圧が一次コイル41へ誘起される。このとき、一次コイル41から流れる電流は、受電コイル30と共振コンデンサ32からなる共振回路31の共振周波数(例えば、14kHz)のときに最も良く流れることから、第1トランジスタ51と第2トランジスタ52は、前記共振周波数で交互に180゜ずれてスイッチングされる。すなわち、上記共振回路31の共振周波数で自己発振し、この共振周波数の交流電流が受電コイル30に供給される。すなわち、共振電源回路47は、放電動作時に、共振回路31を共振要素として誘導線路17の周波数で自己発振して電気二重層コンデンサ46より共振回路31へ給電する。よって、第1トランジスタ51と第2トランジスタ52を駆動する制御回路が不要となる。
【0063】
このような放電により、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが255V以上にまで回復すると、放電阻止リレイRY2が無励磁となり、放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが閉動作し、2つの放電スイッチング素子である第1トランジスタ51と第2トランジスタ52のベース−エミッタ間電圧はゼロとなり、第1トランジスタ51と第2トランジスタ52に電流は流れなくなり、放電が停止される。
そして、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V未満まで再度低下すると放電が実行され、255V以上にまで回復すると放電が停止される。
上述した誘導受電回路29の作用による出力コンデンサ37の両端電圧Vpと電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcの特性を図5に示す。
【0064】
図5に示すように、搬送台車13の運転が開始され、運転リレイRYAが動作すると(ONとなると)、イニシャライズ時の動作により誘導線路17から給電されて出力コンデンサ37の両端電圧Vpは定格電圧300Vまで上昇され、走行、物品Rの移載などの作業が実行される。このとき、出力制御用トランジスタ35が制御されて出力コンデンサ37の両端電圧Vpは定格電圧300Vに維持される。
【0065】
そして、搬送台車13の負荷が少なくなり、充電条件が整うと、充電リレイRY1が動作されて、上記電気二重層コンデンサ46の充電動作が実行され、電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが15Vまで上昇すると、充電動作は終了される。このとき、誘導線路17から供給される電力が電気二重層コンデンサ46に振り向けられることにより出力コンデンサ37の両端電圧Vpは少し低下する。
【0066】
そして、何らかの原因で誘導線路17からの給電が停止し、あるいは負荷が大幅に増加して、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V未満まで低下すると、上記放電動作が実行され、255V以上にまで回復すると放電が停止される。再度、250V未満まで低下すると、上記放電動作が実行され、255V以上にまで回復すると放電が停止される。なお、電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが低下し、12V未満となると、放電は停止される。
【0067】
そして、誘導線路17からの給電が回復し、あるいは負荷が減少して、255V以上に出力コンデンサ37の両端電圧Vpが回復していくと、出力制御用トランジスタ35が制御されて出力コンデンサ37の両端電圧Vpは定格電圧300Vに維持される。
【0068】
以上のように本実施の形態1は、従来のように、電気二重層コンデンサ46と直流回路(整流器と負荷との間に構成される回路,本実施の形態では、定電圧回路34)との間で充放電を行うのではなく、電気二重層コンデンサ46と交流回路(本実施の形態では、共振回路31)との間で充放電を行うことを特徴としており、共振電源回路(充放電回路)47を、放電動作時に、共振回路31を共振要素として使用して誘導線路17の周波数で自己発振する回路構成とすることにより、従来のDC/DCコンバータを必要とせずに、定格電圧が低電圧の電気二重層コンデンサ46を対象として低電圧で充放電できる充放電回路(共振電源回路47)を安価に提供でき、また省スペースを実現できる。さらに出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V(下限設定値)未満まで低下すると、電気二重層コンデンサ46が放電されて不足する電力が補償されることにより、誘導線路17は定格負荷以上の負荷に対応する必要がなくなるので、供給電力を抑えることができ、誘導線路17に電力を供給する電源装置を安価なものに構成できる。
【0069】
また本実施の形態1によれば、放電動作時に、トランジスタ51,52のスイッチングタイミングがずれて同時にスイッチングするタイミングが発生しても、トランジスタ51,52に接続されるコンデンサがなく、二次コイル42しか接続されていないために、循環電流が流れることは殆どなく、またトランジスタ51,52のスイッチングの際に発生するノイズ電流が流れることはなく、エネルギーロスを軽減でき、効率を向上させることができる。
【0070】
また本実施の形態1によれば、放電動作時に、トランジスタ51,52は、自己発振されることにより、トランジスタ51,52を駆動する制御回路を不要とすることができる。
【0071】
『実施の形態2』
本発明における実施の形態2における誘導受電回路について説明する。なお、上記実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図6は、本発明の実施の形態2における誘導受電回路の回路図であり、実施の形態1とは下記の点で回路を変更している。
【0072】
(1)絶縁トランス44に代えて、受電コイル30の両端に接続された、可飽和リアクトルである一次コイル(巻線)81、およびセンタータップ付き二次コイル(巻線)82からなる(可飽和)絶縁トランス83を設ける。これに伴い、充電回路49を削除し、定電圧回路34の出力制御用(NPN)トランジスタ35を削除する。
上記可飽和絶縁トランス83の一次コイル81は可飽和リアクトルであり、受電コイル30と共振コンデンサ32からなる(並列)共振回路31の両端に接続されていることから、共振回路31の共振電圧は、一次コイル81の飽和電圧以下に制御される。
一次コイル81の飽和電圧を、共振回路31の定格の共振電圧となるように、一次コイル81の巻数Nを設定する。これにより、実施の形態1の出力制御用(NPN)トランジスタ35および給電コントローラ66による定電圧制御が不要となる。
また一次コイル81が飽和しているときに、センタータップ付き二次コイル82に誘起される電圧の1/2の電圧で、電気二重層コンデンサ46に印加される電圧を、電気二重層コンデンサ46の充電時の定格電圧(最高電圧)未満で、略充電時の定格電圧とするように、センタータップ付き二次コイル82の巻数Nを設定する。二次コイル82の巻数Nは、一次コイル81の飽和電圧VSA、および電気二重層コンデンサの充電時の定格電圧VIDCより、下記の式を満たすように求められる。
SA×(N/N)×1/2×0.9(結合率等)<VIDC
このように、電気二重層コンデンサ46に印加される電圧を、電気二重層コンデンサ46の充電時の定格電圧(最高電圧)未満とすることにより、充電を中止制御する必要がなくなり、実施の形態1の充電回路49が不要となる。
以上のように、一次コイル81の巻数Nを、共振回路31の定格の共振電圧により設定し、この一次コイル81の巻数Nに対するセンタータップ付き二次コイル82の巻数Nを、電気二重層コンデンサ46の充電時の定格電圧未満となるように設定している。
なお、公知の如く、負荷を抵抗とした場合、(並列)共振回路31から流れ出る電流は一定となり、二次コイル82に流れる電流は、この一定電流の巻数倍(N/N)となることから、電気二重層コンデンサ46の許容充電電流に応じてセンタータップ付き二次コイル82の巻数Nを設定し、巻数Nに応じて電気二重層コンデンサ46を何個、直列接続するか(最高電圧)を決めることもできる。
【0073】
(2)新たに、カソードが、定電圧回路34のダイオード36のカソード(出力コンデンサ37)に接続されたダイオード85を設け、さらにDCチョーク45に代えて、一端が、センタータップ付き二次コイル82のセンタータップ82aに接続され、他端が、電気二重層コンデンサ46のプラス側端子(正極)に接続された、DCチョークとして使用する一次コイル(巻線)86と、一端が、センタータップ付き二次コイル82のセンタータップ82aに接続され、他端が、ダイオード85のアノードに接続された二次コイル(巻線)87からなる昇圧トランス88を設ける。
昇圧トランス88の一次コイル86は、電気二重層コンデンサ46の充放電時の電流を流すことができ、交流分を平滑可能とするインダクタンス(L)分を有する巻線数が設定され、一次コイル86と二次コイル87の巻線比は、電気二重層コンデンサ46からの放電が終了したときに、一次コイル86に流れようとする電流により一次コイル86に発生する電圧によって、二次コイル87に誘起される電圧が、インバータ39,40の定格電圧(負荷の定格電圧の一例)より大きくなるように設定される。これにより、電気二重層コンデンサ46からの放電が終了したときに一次コイル86に発生するエネルギーは、ダイオード87を介して出力コンデンサ37へ出力されて有効に使用され、また二次コイル82を介してサージキラー51A,52Aへ高電圧が印加されることが回避される。
なお、上記可飽和絶縁トランス83と昇圧トランス88への変更により、新たな共振電源回路47’が形成されている。
【0074】
(3)給電コントローラ66に代えて、給電コントローラ89を設ける。
給電コントローラ89には、図6および図7に示すように、出力電圧検出器38により検出される出力コンデンサ37の両端電圧Vpと、充電電圧検出器64により検出される電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが入力され、さらに図7に示すように、運転コントローラ70から搬送台車13が運転を開始したことを知らせる運転信号が入力されており、放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yを制御している。
図7に示すように、充電電圧検出器64により検出される電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが放電許可電圧(例えば、18V;電気二重層コンデンサ46の最大充電電圧をDC22Vとしている)以上かどうかを判断する第1比較器91と、出力電圧検出器38により検出される出力コンデンサ37の両端電圧Vpが、下限設定値の250V以上かどうかを判断する第2比較器92とを備えている。
放電阻止リレイRY2は、上記運転信号がON(運転中)、および第1比較器91の出力信号がON(電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが放電許可電圧以上)、および第2比較器92の出力信号がONではない(出力コンデンサ37の両端電圧Vpが下限設定値未満)となると、動作する(励磁される)。放電阻止リレイRY2が励磁されると、実施の形態1と同様に、放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが開動作し、2つの放電スイッチング素子である第1トランジスタ51と第2トランジスタ52が動作して電気二重層コンデンサ46から放電が実行される。
【0075】
以下、上記実施の形態2における作用を説明する。
誘導線路17に発生する磁束により、受電コイル30に誘導起電力が発生し、この受電コイル30と共振コンデンサ32とから形成される(並列)共振回路31より交流の一定電流が整流回路33、DCチョーク34A、ダイオード36を介して出力コンデンサ37へ供給され、インバータ39,40と走行用モータ25と移載・載置用コンベヤ装置22からなる負荷へ給電される。このとき、(可飽和)絶縁トランス83の一次コイル81は可飽和リアクトルであることにより、(並列)共振回路31の共振電圧は定格の共振電圧以下に抑えられ、よって誘導線路17から供給される電力(受電コイル30の電圧・電流で決定される電力)が制限される。これにより、他の搬送台車(移動体)13が誘導線路17から給電されなくなることが回避される。
【0076】
[電気二重層コンデンサ46の充電]
電気二重層コンデンサ46は、次のように充電される。
電気二重層コンデンサ46の放電が実行されるとき以外は、充電可能とされている。
誘導線路17から受電コイル30に誘起される電圧は、(可飽和)絶縁トランス83の一次コイル81に印加されており、電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが定格電圧未満であれば、誘導線路17の交流電圧に同期して180゜毎に二次コイル82のセンタータップ82aから一端と他端より交互に昇圧トランス88のDCチョークである一次コイル(巻線)86へ交流電流が流れ、1/2に分圧され、続いて一次コイル86により交流分が平滑されて、電気二重層コンデンサ46は充電される。なお、電気二重層コンデンサ46の充電電圧は、充電時の定格電圧未満に抑えられる。
【0077】
[電気二重層コンデンサ46の放電]
電気二重層コンデンサ46は、次のように放電される。
前記負荷が定格負荷以上となると、あるいは誘導線路17からの給電がなくなると、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが低下し、これに伴い受電コイル30の両端電圧は低下し、よって一次コイル81の両端電圧は低下し、電気二重層コンデンサ46により二次コイル82を介して一次コイル81に印加される電圧のほうが高くなる。
【0078】
そして、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V未満まで低下すると、電気二重層コンデンサ46の両端電圧Vcが下限値(許容放電電圧)の18V未満ではないとの条件により、給電コントローラ89において放電阻止リレイRY2が動作し(励磁され)、放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが開動作し、2つの放電スイッチング素子である第1トランジスタ51と第2トランジスタ52のベースには、ツェナーダイオード54,56のツェナー電圧が印加可能な状態とされる。この状態では、第1トランジスタ51、第2トランジスタ52ともにオフの状態にある。
以後の放電動作は、実施の形態1で説明した放電動作と同じであり、説明を省略する。共振電源回路47は、放電動作時に、共振回路31を共振要素として誘導線路17の周波数で自己発振して電気二重層コンデンサ46より共振回路31へ給電する。
【0079】
このような放電により、出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V以上にまで回復すると、放電阻止リレイRY2が無励磁となり、放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが閉動作し、2つの放電スイッチング素子である第1トランジスタ51と第2トランジスタ52のベース−エミッタ間電圧はゼロとなり、第1トランジスタ51と第2トランジスタ52に電流は流れなくなり、放電が停止される。
放電が停止されると、DCチョークである一次コイル(巻線)86に発生するエネルギーは行き先が無くなり、一次コイル(巻線)86の両端電圧は上昇するが、この電圧は、二次コイル87に印加されてダイオード85を介して、出力コンデンサ37に出力されることにより逃がされ、エネルギーが有効に使用されるとともに、センタータップ付き二次コイル82を介してサージキラー51A,52Aに高電圧が印加されることが回避される。
【0080】
以上のように本実施の形態2は、実施の形態1と同様に、従来のように、電気二重層コンデンサ46と直流回路(整流器と負荷との間に構成される回路)との間で充放電を行うのではなく、電気二重層コンデンサ46と交流回路(本実施の形態では、共振回路31)との間で充放電を行うことを特徴としており、共振電源回路(充放電回路)47’を、放電動作時に、共振回路31を共振要素として使用して誘導線路17の周波数で自己発振する回路構成とすることにより、従来のDC/DCコンバータを必要とせずに、定格電圧が低電圧の電気二重層コンデンサ46を対象として低電圧で充放電できる充放電回路(共振電源回路47’)を安価に提供でき、また省スペースを実現できる。さらに出力コンデンサ37の両端電圧Vpが250V(下限設定値)未満まで低下すると、放電阻止リレイRY2のb接点RY2−x,−yが開動作されることにより、2つの放電スイッチング素子である第1トランジスタ51と第2トランジスタ52が駆動され、電気二重層コンデンサ46が放電されて不足する電力が補償されることにより、誘導線路17は定格負荷以上の負荷に対応する必要がなくなるので、供給電力を抑えることができ、誘導線路17に電力を供給する電源装置を安価なものに構成できる。
【0081】
また本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、放電動作時に、トランジスタ51,52のスイッチングタイミングがずれて同時にスイッチングするタイミングが発生しても、トランジスタ51,52に接続されるコンデンサがなく、センタータップ付き二次コイル82しか接続されていないために、循環電流が流れることは殆どなく、またトランジスタ51,52のスイッチングの際に発生するノイズ電流が流れることはなく、エネルギーロスを軽減でき、効率を向上させることができる。
【0082】
また本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、放電動作時に、トランジスタ51,52は、自己発振されることにより、トランジスタ51,52を駆動する制御回路を不要とすることができる。
【0083】
また本実施の形態2によれば、(可飽和)絶縁トランス83の一次コイル81は、共振回路31の両端に接続されており、この共振回路31の定格の共振電圧に飽和電圧を設定した可飽和リアクトルにより形成されていることにより、共振回路31の共振電圧は、定格の共振電圧に抑えられ、誘導線路17から供給される電力(受電コイル30の電圧・電流で決定される電力)を制限することができ、またセンタータップ付き二次コイル82に誘起される1/2の電圧が、電気二重層コンデンサ46の充電時の定格電圧未満に抑えられることにより、充電を中止制御する必要をなくすことができる。
【0084】
また本実施の形態2によれば、放電が停止されると、DCチョークである一次コイル86に発生するエネルギーは行き先が無くなり、一次コイル86の両端電圧は上昇するが、この電圧は、二次コイル87に印加されてダイオード85を介して、出力コンデンサ37に出力されることにより逃がされ、エネルギーが有効に使用されるとともに、サージキラー51A,52Aに高電圧が印加されることによるストレスを解消できる。
【0085】
なお、本実施の形態1および2では、充放電対象を電気二重層コンデンサ46としているが、バッテリでもよい。
また本実施の形態1では、移動体の一例を搬送台車13としているが、搬送台車13に限ることはなく、例えば自動倉庫で使用するスタッカークレーンであってもよい。スタッカークレーンの場合、物品Rを昇降するキャレッジ(荷台)を備えていることから、運転コントローラ70は、上記充電許可信号を、上記スタッカークレーンが停止し且つ物品Rを移載していないとき、または走行時に減速しているとき、または低速で走行しているときに加えて、キャレッジで物品Rを下降しているときに出力する。
また本実施の形態1および2では、スイッチング素子としてトランジスタ51,52を使用しているが、単なるスイッチであってもよい。このとき、放電時に第1スイッチング素子と第2スイッチング素子を、一次コイル41に前記所定周波数で交流電流が流れるように、交互にスイッチングするスイッチングコントローラが必要となる。
【符号の説明】
【0086】
17 誘導線路
18 高周波電源装置
28 ピックアップユニット
29 誘導受電回路
30 受電コイル
31 共振回路
32 共振コンデンサ
33 整流回路
34 定電圧回路
37 出力コンデンサ
38 出力電圧検出器
41,81 一次コイル
42,82 センタータップ付き二次コイル
43 センタータップ付き三次コイル
44,83 絶縁トランス
45 DCチョーク
46 電気二重層コンデンサ
47,47’ 共振電源回路
51 第1トランジスタ
52 第2トランジスタ
54 第1ツェナーダイオード
56 第2ツェナーダイオード
61 第1ダイオード
62 第2ダイオード
64 充電電圧検出器
66,89 給電コントローラ
86 一次コイル
87 二次コイル
88 昇圧トランス
RY1 充電リレイ
RY1−x a接点
RY2 放電阻止リレイ
RY2−x b接点
RY2−y b接点
RYA 運転リレイ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動経路に沿って敷設された高周波電流を流す誘導線路に対向して配置され前記誘導線路より起電力が誘起される受電コイルと、前記受電コイルとともに前記誘導線路の周波数に共振する共振回路を形成する共振コンデンサと、前記共振回路から出力される電流を整流する整流回路を備え、前記整流回路により整流された電流を消費電力が変動する負荷へ給電する前記移動体の誘導受電回路であって、
バッテリあるいは電気二重層コンデンサと、
前記共振回路と前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサとの間に接続され、バッテリあるいは電気二重層コンデンサの充放電を行う共振電源回路と
を備え、
前記共振電源回路は、放電動作時に、前記共振回路を共振要素として使用し、前記誘導線路の周波数で自己発振して前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサより前記共振回路へ給電すること
を備えたことを特徴とする誘導受電回路。
【請求項2】
前記共振電源回路は、
前記受電コイルの両端に接続された一次コイルとセンタータップ付き二次コイルを有する絶縁トランスと、
一端が、前記センタータップ付き二次コイルのセンタータップに接続され、他端が、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの正極に接続されたDCチョークと、
前記センタータップ付き二次コイルの一端と前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極との間に接続され、トランジスタにより形成された第1放電スイッチング素子と、
前記センタータップ付き二次コイルの他端と前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極との間に接続され、トランジスタにより形成された第2放電スイッチング素子と、
カソードが、前記二次コイルの他端および前記第1放電スイッチング素子を形成するトランジスタのべースに接続され、アノードが、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極に接続された第1ツェナーダイオードと、
カソードが、前記二次コイルの一端および前記第2放電スイッチング素子を形成するトランジスタのべースに接続され、アノードが、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの負極に接続された第2ツェナーダイオード
を有し、
前記二次コイルの他端から前記第1ツェナーダイオードに電流が流れることにより前記第1スイッチング素子を形成するトランジスタは駆動され、前記二次コイルの一端から前記第2ツェナーダイオードに電流が流れることにより前記第2スイッチング素子を形成するトランジスタは駆動される構成としたこと
を特徴とする請求項1に記載の誘導受電回路。
【請求項3】
前記整流回路の出力端に接続され前記負荷へ給電する出力コンデンサと、
前記出力コンデンサの両端電圧を制御する出力スイッチング素子と、
前記出力コンデンサの両端電圧を検出する出力電圧検出器と、
前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧に基づいて、前記出力スイッチング素子を駆動し、前記出力コンデンサの両端電圧を予め設定された電圧に制御する給電コントローラ
を備え、
前記第1ツェナーダイオードおよび第2ツェナーダイオードの両端にそれぞれ放電阻止スイッチを設け、
前記給電コントローラは、前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧が予め設定された下限設定値未満となると、前記出力スイッチング素子による前記出力コンデンサの両端電圧制御を停止し、前記放電阻止スイッチを開動作し、放電動作を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の誘導受電回路。
【請求項4】
前記絶縁トランスは、センタータップ付き三次コイルを有し、
前記共振電源回路は、
アノードが、前記センタータップ付き三次コイルの一端に接続された第1ダイオードと、
アノードが、前記センタータップ付き三次コイルの他端に接続され、カソードが、前記第1ダイオードのカソードに接続された第2ダイオードと、
一端が、前記DCチョークの一端に接続され、他端が、前記第1ダイオードおよび第2ダイオードのカソードに接続された充電スイッチング素子と
を有し、
前記給電コントローラは、前記充電スイッチング素子を閉動作することにより、充電動作を行うこと
を特徴とする請求項3に記載の誘導受電回路。
【請求項5】
前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの両端電圧を検出する充電電圧検出器を備え、
前記給電コントローラは、前記移動体の運転が開始されて前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧が負荷定格電圧となるまでの間、または前記充電電圧検出器により前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの両端電圧が下限電圧未満となったことが検出されたとき、または前記充電スイッチング素子が閉動作されたとき、前記放電阻止スイッチを閉動作し、放電動作を阻止すること
を特徴とする請求項4に記載の誘導受電回路。
【請求項6】
前記共振電源回路は、前記絶縁トランスの前記一次コイルとセンタータップ付き二次コイルの巻線比により放電動作時に昇圧し、前記絶縁トランスの前記一次コイルとセンタータップ付き三次コイルの巻線比により充電動作時に降圧すること
を特徴とする請求項4または請求項5に記載の誘導受電回路。
【請求項7】
前記絶縁トランスの一次コイルを、飽和電圧を前記共振回路の定格の共振電圧に設定した可飽和リアクトルにより形成し、
前記絶縁トランスの二次コイルの巻数を、二次コイルに誘起される電圧が、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの充電時の定格電圧未満に降圧するように設定したこと
を特徴とする請求項2に記載の誘導受電回路。
【請求項8】
前記第1ツェナーダイオードおよび第2ツェナーダイオードの両端にそれぞれ放電阻止スイッチを設け、
前記整流回路の出力端に接続され前記負荷へ給電する出力コンデンサと、
前記出力コンデンサの両端電圧を検出する出力電圧検出器と、
前記出力電圧検出器により検出される前記出力コンデンサの両端電圧が予め設定された下限設定値未満となると、前記放電阻止スイッチを開動作し、放電動作を行う給電コントローラ
を備えたこと
を特徴とする請求項7に記載の誘導受電回路。
【請求項9】
前記共振電源回路は、前記第1放電スイッチング素子および前記第2放電スイッチング素子を形成するトランジスタの各エミッタにそれぞれカソードが接続され、各コレクタにそれぞれアソードが接続されたダイオードからなるサージキラーを有し、
前記DCチョークを一次コイルとし、この一次コイルに対向する二次コイルを有する昇圧トランスと、
アノードが前記昇圧トランスの二次コイルに接続され、カソードが前記出力コンデンサに接続されたダイオード
を備え、
前記昇圧トランスは、前記給電コントローラにより放電動作が停止されたときに前記一次コイルに発生するエネルギーを、前記ダイオードを介して前記出力コンデンサへ出力する機能を有していること
を特徴とする請求項8に記載の誘導受電回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−95471(P2012−95471A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241579(P2010−241579)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【出願人】(592007601)株式会社コンテック (19)
【Fターム(参考)】