説明

誘導電動機、及び誘導電動機に用いられる回転子

【課題】回転子及び誘導電動機本体の大型化を招くことなく、固定子及び回転子並びに誘導電動機本体を効果的に冷却できる誘導電動機およびその誘導電動機に用いられる回転子を提供する。
【解決手段】誘導電動機1を、回転子4に、回転軸2と一体的に回転する回転子コア41と、回転子コア41の回転軸2の軸方向における両端部側にそれぞれ対向配置された一対のエンドリング42と、エンドリング42の内径と回転子コア41の外径との間でエンドリング42の端面から回転子コア41とは反対側を向けて突出させて設けられた複数の羽根部43とを設け、少なくとも1つの羽根部43を、エンドリング42の端面からの任意の突出高さが同一となり、この同一の突出高さ位置における延在方向が回転軸2の直径方向とは異なる方向に延在させて設けるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電動機(モータ)及び誘導電動機に用いられる回転子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導電動機はさまざまな産業機械の原動機として多く用いられている。誘導電動機は基本的な構成要素として、固定子と回転子と、この回転子と固定子とを収納した筐体を有している。この誘導電動機、特にかご型誘導電動機に用いられる回転子は、回転軸と、回転軸の周りに複数の鉄心を積層して回転軸が回転する回転子コアと、回転軸の軸方向における両端部側にそれぞれ対向配置された一対のエンドリングと、回転子コアとエンドリングとを導通するように設けられた導体バーを備えている。上記のような回転子は、固定子に備えられた固定子巻線に電流が流れることで固定子と回転子の間の磁気的なギャップに磁界が発生し、この発生した磁界によって回転子の導体バーに電磁力が発生するため、回転子コアが引きずられ、回転するように構成されている。このような固定子巻線に電流を流して磁界を発生させる場合、固定子巻線と導体バーは、電流が流されることにより、抵抗損失などの損失分だけ発熱する。そのため、この固定子巻線に発生する熱の温度上昇の影響によって固定子本体はもちろん、周囲に配置された回転子や誘導電動機本体への損傷、破損等の虞が考えられた。
【0003】
そこで固定子本体や誘導電動機内部、また回転子に発生する熱の放熱性を向上させるための工夫として、例えば特許文献1に示されるような回転子では、エンドリングの内径側の回転軸方向厚み寸法に対して外径側の回転軸方向厚み寸法が小さくなるように、エンドリングの端面に、凹曲面を形成するような回転子ファンを設けた構成とされている。また、特許文献2には、エンドリングの回転軸方向の端面より外側に突出させている回転子コアの端面に接合された放熱フィンを備えた回転子が開示されている。また、特許文献3には、回転子コアとエンドリングとを導通させるように設けられた導体バーを、回転子コアの直径方向と平行となるようにエンドリングの端面より複数本突出させた構成の回転子が開示されている。このような種々の工夫により、従来の誘導電動機では、回転子の放熱面積を増やし放熱性を向上させるとともに、誘導電動機内部の空気を撹拌して冷却性の向上を図るようになされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−170693号公報
【特許文献2】特開平6−245447号公報
【特許文献3】特開2000−60045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが近年の傾向として、従来使用されている誘導電動機のサイズを変更せずに、誘導電動機内部の冷却効果をさらに高め、回転子の熱の放熱性を向上させることが求められている。しかし、特許文献1に示されるような回転子ファンは、エンドリングの内周側から外周側にかけて回転軸方向の厚み寸法を小さくするようにエンドリングの端面に凹曲面を形成するため、回転子ファンを製作する場合の手間やコストがかかる。また、特許文献1乃至3に記載の回転子では、回転軸の軸方向における両端部側に回転子ファン又は放熱フィン等が備えられているため、回転子が大型化してしまう場合があり、誘導電動機本体の大型化を招いてしまうこととなっていた。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題に着目してなされたものであって、回転子及び誘導電動機本体の大型化を招くことなく、固定子及び回転子、また誘導電動機本体を従来よりもさらに効果的に冷却できる誘導電動機およびその誘導電動機に用いられる回転子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、回転軸と、回転軸に固定された回転子と、回転子と磁気的空隙を介して配置された固定子と、回転軸を回転可能に支持し、前記回転子及び前記固定子を収容した筐体とを具備する誘導電動機であって、回転子が、回転軸と一体的に回転する回転子コアと、回転子コアの回転軸の軸方向における両端部側にそれぞれ対向配置された一対のエンドリングと、エンドリングの内径と前記回転子コアの外径との間で、エンドリングの端面から回転子コアとは反対側を向けて突出させて設けられた複数の羽根部とを具備するものとして、複数の羽根部のうち少なくとも1つの羽根部を、エンドリングの端面からの突出させた任意の突出高さが同一となり、この同一の突出高さ位置における延在方向が回転軸の直径方向とは異なる方向に延在させて設けていることを特徴としている。
【0008】
ここで述べる「任意の突出高さ位置」とは、回転子に配置されたエンドリングの端面より突出している適宜の高さ位置を意味する。また、「羽根部の延在方向」とは、エンドリングの内径側から回転子コアの外径側に向かって又はその逆に亘って存在している羽根部の方向を指すものであって、本発明においてはその複数の羽根部のうち少なくとも1つの羽根部は、エンドリングの端面からの同一の突出高さ位置における延在方向が前記回転軸の直径方向とは異なる方向に延びて存在して設けられていればよいものとする。この「羽根部が回転軸の直径方向とは異なる方向に延在する」構成となるためには、羽根部が回転子コアの外径側に向かう方向に沿って湾曲形状をしているものや、直線的な形状、屈曲形状、またその延在方向に向かって、全体又は一部の羽根部が湾曲形状や部分的円弧形状となるように構成されていることが好ましい。「湾曲形状」や「部分的円弧形状」の羽根における「延在方向」とは、その形状における周方向を指しており、また「直線的な形状」の羽根においては、その名の通り、回転軸の直径方向とは異なる方向に伸びているものであれば良い。この湾曲形状、部分的円弧形状等の構成を備えているという条件を満たせば、羽根部は1つ以上であれば複数形成しても構わない。そして、羽根の素材には、アルミや銅等から選択される導電性を有した適宜の材料を用いることができる。さらに、本発明において回転軸は、一方向又は正逆何れの方向にも回転可能なものを適用することができる。
【0009】
このように構成した本発明の誘導電動機であれば、従来の誘導電動機と同様に、回転軸の軸方向における両端部側にそれぞれエンドリングを対向配置しているので、回転子コアをより強固に固定することが出来る。そのうえ、エンドリングに設けられた複数の羽根部のうち、少なくとも1つの羽根部をエンドリングの端面からの任意の同一高さ位置における延在方向が回転軸の直径方向とは異なる方向に延在させていることで、回転子が回転した際に、従来よりも回転子の羽根部の表面積を増やすことが出来る構成とすることができる。すなわち、回転子の羽根部の表面積が増えれば、それだけ冷却効果を向上できる。また本発明の回転子を備えた誘導電動機では、羽根部の表面積を従来よりも増やすことができる構成となるので、誘導電動機内部の空気流の撹拌を促すことができ、回転子の熱の放熱性および回転子に対向して配置された固定子における冷却効果を高めることができる。
【0010】
また本発明の誘導電動機では、回転軸の軸方向における両端部側にそれぞれ対向配置された一対のエンドリングと複数の羽根部を一体的に形成することができる。
【0011】
このように構成すると、回転子が回転子コアを強固に固定するエンドリングを備えており、かつ複数の羽根部がエンドリングと一体的に形成されるため、このエンドリングが回転子と一体的に回転することにより、複数の羽根部が空気流を撹拌することによる羽根部の冷却効果及びエンドリングの冷却効果を高めることが出来る。尚、「エンドリングと羽根部とを一体的に形成」した構成とは、「エンドリングと羽根部とを一体形成」したものであっても、又は「エンドリングと羽根部とを剛結して一体ものとして取り扱えるように形成」しても良い。
【0012】
また本発明の誘導電動機では、回転子に設けられる複数の羽根部を、何れも回転軸の中心軸の周囲に中心軸に対して等しい角度関係で配置することができる。
【0013】
このような構成では、複数の羽根部が直径方向とは異なる方向に延在するように中心軸に対して均等に配置されていることにより、羽根部と羽根部との間を空気流が通過する際、すべての羽根部に対して空気流の攪拌を均等に行うことができるので、誘導電動機内部の空気流の攪拌を効率よく行うことができる。
【0014】
また筐体には、回転軸の長手方向に対応した一方側に吸気部を設けるとともに他方側に排気部を設け、回転子コアの少なくとも吸気部側のエンドリングに複数の羽根部を突出させることができる。
【0015】
このような構成であれば、少なくとも外気を取り込む吸気部側のエンドリングに複数の羽根部が突出していることにより、吸気部側および排気部側の双方に羽根部を設ける必要がなくなるため、回転子の大型化を防ぐことができる。
【0016】
さらに、複数の羽根部は、吸気部側及び排気部側のエンドリングの両方にそれぞれ形成しても良い。
【0017】
このように構成すると、外気を取り入れる吸気部側及び内部の空気を外部へ排出する排気部側におけるエンドリングに各々の羽根部が設けられており、その各々の羽根部が空気流の撹拌を行うため、片側のみに羽根部を設ける構成よりも空気流の撹拌を促進させることができるので、誘導電動機内部の冷却効果を高めることが出来る構成とすることができる。
【0018】
或いは、本発明に係る回転子は上述した誘導電動機に適用されるものであって、複数の羽根部のうち少なくとも1つの羽根部を、エンドリングの端面からの任意の突出高さが同一であり、且つこの同一の突出高さ位置における延在方向が回転軸の直径方向とは異なる方向に延在させて設けていることを特徴とするものである。
【0019】
このように構成すると、本発明の誘導電動機について上述した通り回転子の羽根部の表面積を従来の構成よりも増やすことが出来る構成とすることが容易となる。従って、本発明の回転子を備えた誘導電動機は、従来よりも固定子や誘導電動機内部の冷却効果及び回転子の熱の放熱性を高めることができるので、誘導電動機内部の空気流の撹拌をより促すことができ、その他、上述した各誘導電動機において得られる作用効果を全て得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る誘導電動機によれば、複数の羽根部のうち少なくとも1つの羽根部を、エンドリングの端面からの任意の突出高さが同一であり、且つこの同一の突出高さ位置における延在方向が回転軸の直径方向とは異なるように設ける結果として、回転子に設けられた複数の羽根部の表面積が従来よりも増やすことができる構成とすることができる。したがって、本発明の誘導電動機及びこの誘導電動機に適用される回転子では、誘導電動機内部の空気流の撹拌を促すことができるため、回転子自体の放熱性を高められ、ひいては回転子に対向して配置された固定子における冷却効果をも高めることができる。その結果、固定子巻線に発生する熱による二次銅損を低減することで誘導電動機自体の効率を上げるので、商品としての品質向上に大きく貢献することになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る誘導電動機の一部を破断した概略図。
【図2】同誘導電動機における空気流の流れを加えて示す図1対応図。
【図3】同回転子の概略を示す側面図。
【図4】同回転子の概略を示す正面図。
【図5】同誘導電動機に適用される回転子の概略的な斜視図。
【図6】本発明の別の実施形態に係る誘導電動機の一部を破断した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
まず誘導電動機は堅牢で安価なために、産業機械の原動機として最も多く使われており、汎用モータの代名詞として称されている。誘導電動機の分類としては大きく2つに分けられ、小容量機であり家庭電化品に多く用いられる単相モータと、特別な大容量機に用いられる良好な起動特性が要求される三相かご型誘導モータや巻線型誘導モータ等が知られている。現在用いられている誘導電動機の大部分は、三相のかご型誘導モータであり、本発明の実施形態である回転子及びそれを備えた誘導電動機もこの分類に属する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る誘導電動機1の一部を破断して内部が見えるように示した概略図である。ここで、同図を用いてこの誘導電動機1の概略を説明する。
この誘導電動機1は、回転軸2と、固定子3と回転子4と、筐体5を備えている。
【0025】
次に誘導電動機1の主な構造について、図1を参照して説明する。
誘導電動機1に用いられる固定子3は、複数の鉄心を積層した固定子コア31及びこの固定子コア31に巻きつけられた固定子巻線32を備えている。固定子コア31は例えば珪素鋼板等の複数の鉄心を積層した構成としており、固定子3は回転子4と磁気的空隙を介して誘導電動機1内部に備えられる構成としている。筐体5は、図1に示すように軸受け6を介し回転軸2を回転可能に支持し、また固定子3と回転子4を収納している。軸受け6はベアリング等の軸受けを使用する。本実施形態の筐体5は、外部の気体を誘導電動機1内部に吸気・排気するための吸気口51と排気口52を備えている。
【0026】
回転子4は、回転軸2に沿って一方向に長尺な形状であり、回転子コア41と、回転子コア41の回転軸2の軸方向における両端部側にそれぞれ対向配置された一対のエンドリング42と、エンドリング42の内径と回転子コア41の外径との間で、エンドリング42の端面から回転子コア41とは反対側を向けて突出させて設けられた複数の羽根43とを具備している。ここで本実施形態においては、回転子4の一対のエンドリング42に設けられた羽根43において、筐体5の吸気口51側の羽根431と排気口52側の羽根432とを備える構成としている。なお、回転子コア41は、例えば珪素鋼板等の複数の鉄心を回転軸2の軸方向に積層した構成をしている。
【0027】
ここで、回転磁界の発生原理について説明する。まず三相の誘導電動機1においては、固定子3内部に巻かれた3組の固定子巻線32を各々の位相差が120°となるように間隔をおいて配置する。この固定子巻線32に120°ごとに位相差のあるパルス電流を供給すると、固定子巻線32内部の磁界はあたかも永久磁石が存在するかのような磁界が発生し、磁束が流れることになる。これが固定子巻線32による回転磁界発生の原理である。この回転磁界によって、固定子3と磁気的空隙を介して対向するように設けられた回転子4を構成している回転子コア41に対し、誘導電流を発生させる。この回転子コア41には、アルミや銅等で生成された導体バー44が回転軸2の長手方向に沿って備えられており、この導体バー44は、回転子コア41とエンドリング42とを導通するように設けられている。そして、回転子コア41に対し発生した誘導電流によって、回転子コア41に設けられた導体バー44が励磁し、この導体バー44は、固定子3に発生する回転磁界に追従するような磁界を回転子4に対して発生させる。したがって、固定子3に発生する回転磁界と、導体バー44によって回転子4に対し発生する磁界によって、回転子4が回転をすることになる。
【0028】
次に図2を用いて、誘導電動機1における空気流の攪拌の流れを説明する。まず、誘導電動機1の筐体5に設けられた吸気口51より外気を取り込む。吸気口51から取り入れた空気流は、回転子4における吸気口51側のエンドリング42に設けられた複数の羽根43に流れ込む。その後、回転子4が回転することによって吸気口51側のエンドリング42周りの空気を複数の羽根43によって撹拌を起こし、外部より流入した空気は回転子4側から固定子3側へと流れ込む。そして、この空気流によって固定子3に設けられた固定子巻線32が冷却された後、筐体5の吸気口51側とは反対側に設けられた排気口52側に空気流が流れ込む。そして、回転子4の排気口52側のエンドリング42に備えられた複数の羽根43によって空気流が攪拌し、その空気流が筐体5の排気口52へと流れ込み、排気口52より誘導電動機1外部へと排気される。
【0029】
この実施形態の誘導電動機1に基づく回転子4は、上述した複数の羽根43のうち少なくとも吸気口51側の1つの羽根431のエンドリング42の端面からの任意の突出高さが同一であり、且つこの同一の突出高さ位置における延在方向が、回転軸2の直径方向(回転軸2の中心軸から回転子コア41の外周側に向かって延びる方向)とは異なる方向に延びて存在するように構成されている。本実施形態では一例として、図3に示すような湾曲形状であって吸気口51側の羽根431が反時計回りとなるような羽根43を備えた回転子4を適用している。
【0030】
ここで上述の「延在方向」とは、エンドリング42の内径側から回転子コア41の外径側に向かって延びている羽根43の方向を指すものであって、その複数の羽根43のうち少なくとも1つの羽根431は、エンドリング42の端面から突出させた任意の突出高さが同一となり、この同一の突出高さ位置の延在方向が回転軸2の直径方向とは異なる方向に延びるように設けられていればよいものとする。この「回転軸2の直径方向とは異なる方向に延びる」となるように構成するには、羽根43が回転子コア41の外径側に向かう方向に沿って湾曲形状をしているものや、直線的な形状、屈曲形状、またその長手方向に向かって、全体又は部分的に羽根43が湾曲形状や部分的円弧形状となるように構成されていることが好ましい。そして、羽根43の素材には、アルミや銅等から選択される導電性を有した適宜の材料を用いることができる。また複数の羽根43のうち吸気口51側(又は排気口52側)の少なくとも1つの羽根431(又は羽根432)が、回転軸2の直径方向とは異なる方向に延びるように湾曲形状等の構成を備えているという条件を満たせば、羽根431(又は羽根432)は複数形成しても構わない。
【0031】
上述の通り図1乃至図5に示した構成の回転子4を備えた誘導電動機1であれば、回転子4が回転する場合、回転子4に複数の羽根43のうち少なくとも1つの羽根431が、エンドリング42の端面から突出させた任意の突出高さが同一となり、この同一の突出高さ位置の長手方向が回転軸2の直径方向とは異なる方向に延びるように設けているので、回転子4周りの空気に遠心力が働きかつ撹拌することにより、図2中に示すような空気流の流れを生じさせることができる。その結果、回転子4と対向して備えられた固定子3側に空気流が循環して固定子巻線32を冷却し、さらに誘導電動機1内部の空気流の撹拌を効率よく行うことができるため、よい冷却効果を得ることができる。
【0032】
さらに本実施形態の誘導電動機1は、回転子4が回転子コア41を強固に固定するエンドリング42を備えており、かつ複数の羽根43がエンドリング42と一体的に形成されているため、複数の羽根43が空気流を撹拌することによる羽根43の冷却効果及びエンドリング42の冷却効果を高めることが出来る構成とすることができる。
【0033】
また、図3に示したように回転子4に設けられた複数の羽根43は、何れも回転軸2の中心軸の周囲にその中心軸に対して等しい角度関係で配置されている。このような構成をとることで、羽根431と羽根431との間を空気流が通過する際、すべての羽根43に対してバランスよく空気流の撹拌を同様に行うことができるので、誘導電動機1内部の空気流の攪拌を効率よく行うことができる。この結果により、すべての羽根43において空気流の撹拌を全体として略均一に行うことができるため、温度上昇が均一化されることになり、誘導電動機1内部の空気流の撹拌及び、回転子4周りの空気流の撹拌を従来よりも効率よく行うことができる構成とすることができる。
【0034】
このように構成しているので、外気を取り入れる吸気口51側及び内部の空気を外部へ排出する排気口52側におけるエンドリング42に各々の羽根43が設けられており、その各々の羽根43が空気流の撹拌を行うため、片側のみに羽根43を設ける構成よりも空気流の撹拌を促進させることができるので、誘導電動機1内部の冷却効果を高めることが出来る構成とすることができる。
【0035】
また、本発明の別の実施形態に係る誘導電動機1’とその回転子4を図6に示す。先に挙げた実施形態と同一部分については図面上で同一の符号を付している。同図に記載された誘導電動機1’の筐体5’において、回転子4及び固定子3を備えた空間(以下、空間Aとする)と、その空間よりも外側であって吸気口51’及び排気口52’が設けられた空間(以下、空間Bとする)とを隔てるように仕切部7を設ける構成としている。この実施形態では、誘導電動機1の筐体5’に設けられた吸気口51’から外気を取り入れ、その空気は空間Aを通ることなく空間Bのみを流れ込み、筐体5’の排気口52’より再び外部へ排出される。したがって、回転子4及び固定子3の空間内の空気の循環は、密閉された空間B内での空気の循環のみを行う。
【0036】
この結果、仕切部7によって仕切られた筐体5’内部の空間B内の冷却は、吸気口51’より取り入れた外気によって行われるため、効率よい冷却効果が得られる構成とすることができる。また、回転子4及び固定子3周辺の空気の循環は、回転子4に備えられた複数の羽根43のうち吸気口51’側の1つの羽根431(又は排気口52側の1つの羽根432)を、回転子4に設けられたエンドリング42の端面より突出した任意の突出高さが同一であり、且つその同一の突出高さ位置の長手方向が回転軸2の直径方向とは異なる方向に伸びるように設けているので、この固定子3及び回転子4とを備えた密閉された空間B内における空気の循環を効率よく行うことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。例えば、上述した各実施形態では、筐体5(5’)の吸気口51(51’)側と排気口52(52’)側の両側に対応して回転子4の両端部にそれぞれ羽根43を突出させて設けた構成について説明したが、本発明においては、回転子4の吸気口51(51’)側にのみ羽根43を設ける構成とすることも可能である。この場合、吸気口51(51’)側のみに羽根431を突出させている構成とすることが可能であり、その場合は排気口52(52’)側には羽根432が不要で回転子4の大型化が防止される。また、上記各実施形態では、全ての羽根43が、回転子4に設けられたエンドリング42の端面より突出した任意の突出高さが同一であり、且つその同一の突出高さ位置の延在方向が回転軸2の直径方向とは異なる方向に伸びている構成について説明したが、本発明による効果は少なくとも1つの羽根431(又は羽根432)について斯かる構成とすることで得ることができる。また、本発明に係る回転子4が適用される誘導電動機1は、上述したような三相誘導電動機型に限らず、単相誘導電動機等にも適用することができる。その他、回転子4及び誘導電動機1の各部の構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…誘導電動機
2…回転軸
3…固定子
4…回転子
5…筐体
6…軸受け
7…仕切部
31…固定子コア
32…固定子巻線
41…回転子コア
42…エンドリング
43…複数の羽根(本発明の「複数の羽根部」に相当)
44…導体バー
51…吸気口(本発明の「吸気部」に相当)
52…排気口(本発明の「排気部」に相当)
431…吸気口側の1つの羽根
432…排気口側の1つの羽根
A…回転子及び固定子を備えた空間
B…空間Aよりも外側(筐体5側)である吸気口及び排気口を備えた空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
当該回転軸に固定された回転子と、
前記回転子と空隙を介して配置された固定子と、
前記回転軸を回転可能に支持し、前記回転子及び前記固定子を収容した筐体と、
を具備する誘導電動機において、
前記回転子が、前記回転軸と一体的に回転する回転子コアと、前記回転子コアの前記回転軸の軸方向における両端部側にそれぞれ対向配置された一対のエンドリングと、前記エンドリングの内径と前記回転子コアの外径との間で、当該エンドリングの端面から前記回転子コアとは反対側を向けて突出させて設けられた複数の羽根部とを具備し、
前記複数の羽根部のうち少なくとも1つの羽根部を、前記エンドリングの端面から突出させた任意の突出高さが同一となり、且つ当該同一の突出高さ位置における延在方向が前記回転軸の直径方向とは異なる方向となるように設けていることを特徴とする誘導電動機。
【請求項2】
前記複数の羽根部は、前記エンドリングと一体的に形成されたものである請求項1に記載の誘導電動機。
【請求項3】
前記複数の羽根部は、何れも前記回転軸の中心軸の周囲に当該中心軸に対して等しい角度関係で配置されていることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の誘導電動機。
【請求項4】
前記筐体が、前記回転軸の長手方向に対応した一方側に吸気部を備え他方側に排気部を備えており、前記回転子の少なくとも前記吸気部側の前記エンドリングに前記複数の羽根部を突出させていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の誘導電動機。
【請求項5】
前記複数の羽根部を、前記吸気部側及び前記排気部側の前記エンドリングの両方にそれぞれ形成している請求項4に記載の誘導電動機。
【請求項6】
回転軸と、
当該回転軸に固定された回転子と、
前記回転子と磁気的空隙を介して配置された固定子と、
前記回転軸を回転可能に支持し、前記回転子及び前記固定子を収容した筐体と、
を具備する誘導電動機に適用される前記回転子であって、
前記回転軸と一体的に回転する回転子コアと、前記回転子コアにおけるコアの積層方向両端部にそれぞれ対向配置された一対のエンドリングと、前記エンドリングの内径と前記回転子コアの外径との間で、当該エンドリングの端面から前記回転子コアとは反対側を向けて突出させて設けられた複数の羽根部とを具備し、
前記複数の羽根部のうち少なくとも1つの羽根部を、前記エンドリングの端面からの任意の突出高さが同一であり、且つ当該同一の突出高さ位置における延在方向が前記回転軸の直径方向とは異なる方向となるように設けていることを特徴とする回転子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200087(P2012−200087A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62906(P2011−62906)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】