説明

調理済包装食品体の保存加熱装置

【課題】時間,場所,使用者の制約がなく、水を注ぐだけで複数の調理済包装食品体を簡単且つ短時間で一度にまとめて加熱して複数の温かい食品を得る調理済包装食品体の保存加熱装置を提供する。
【解決手段】保存加熱装置1は、内部が収納空間3になっている収納容器4と、収納空間に設置され、複数の調理済包装米飯体2を並べて位置決め保持し、隣り合う調理済包装米飯体同士の間に水蒸気の通る間隙dを確保可能にする保持手段5と、収納空間の底部空間に配置され、水で濡れたときに水を吸収して発熱する発熱体7とを有する。加熱使用時に水を注ぐと、発熱体が発熱して水が水蒸気になり、水蒸気が調理済包装食品体の全表面に接触して調理済包装米飯体を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理済食品が包装された調理済包装食品体を収納して保存するとともに加熱使用時にこれを加熱して摂取可能にする調理済包装食品体の保存加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レトルト食品と呼ばれる各種の調理済包装食品体(たとえば、調理済米飯やカレーなどを包装した食品体)が市販されている。これらの食品体は、家庭で使用される場合が多いが、ピクニックなどレジャーで使用されたり、地震,台風,津波などの災害発生時に使用される場合もある。
たとえば、特許文献1(特開2000−107038号公報)には、熱源を備えた再加熱調理食品が提案され、特許文献2(特開2005−229998号公報)には、食品構造体およびその包装袋が提案されている。
特許文献1に記載の再加熱調理食品は、発熱体を内蔵して加熱処理を容易にするとともに非常食として使用可能である。他方、特許文献2に記載の技術は、災害時において手間をかけないで衛生的に食することができる非常食などに好適な食品構造体である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−107038号公報
【特許文献2】特開2005−229998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,特許文献2に記載の各従来技術は、食品を1個ずつ加熱したり、1個ずつ水分を吸収させて復元しなければならないので、複数の人間が食品を摂取できるまで手間と時間が掛かっていた。特に、災害発生時には、短時間のうちに多数の食品を提供する必要があるが、これらの技術ではその実現が困難であった。
また、特許文献2に記載の食品構造体は水を加えて復元させているが、美味しくて温かい食品を得ることのできる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、いつでもどこでも誰でも、水を注ぐだけで複数の調理済包装食品体を簡単に且つ短時間で一度にまとめて加熱して複数の温かい食品を得ることができる持ち運び容易な調理済包装食品体の保存加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる調理済包装食品体の保存加熱装置は、調理済包装食品体を収納して保存するとともに加熱使用時にこれを加熱して摂取可能にする保存加熱装置であって、内部が収納空間になっている収納容器と、前記収納空間に設置され、複数の前記調理済包装食品体を並べて位置決め保持するとともに隣り合う前記調理済包装食品体同士の間に水蒸気の通る間隙を確保可能にしている保持手段と、前記収納空間の底部空間に配置され、水で濡れたときにこの水を吸収して発熱する発熱体とを備え、加熱使用時に、前記収納容器の前記収納空間に前記水を注ぐことにより、前記発熱体が発熱して前記水が前記水蒸気になり、この水蒸気が前記調理済包装食品体の全表面に接触してこの調理済包装食品体を加熱するようにしている。
前記保存加熱装置は、前記発熱体を覆って前記収納空間内の空気から遮断する発熱体カバーと、前記収納容器内に設けられ、前記保持手段に保持された状態の前記複数の調理済包装食品体の全体と前記発熱体カバーに覆われた前記発熱体の全体とを覆って前記収納空間を密閉空間にするアルミニウム蒸着袋とをさらに備え、加熱使用時に、このアルミニウム蒸着袋内に前記水を注ぐことにより、前記発熱体が発熱して前記水が水蒸気になり、この水蒸気が前記アルミニウム蒸着袋内に充満して前記調理済包装食品体を加熱するように構成するのが好ましい。
前記発熱体カバーはオブラートであり、このオブラートにより前記発熱体は個別にまたは全体的に包まれているのが好ましい。
前記収納容器と前記アルミニウム蒸着袋には水注ぎ口が形成され、この水注ぎ口は、非加熱使用時には閉じているが、加熱使用時には開けて前記水を前記アルミニウム蒸着袋の内部に注ぐとともに、発生した前記水蒸気を排出することができるのが好ましい。
水の入った容器が、前記収納容器の内部もしくは外部に付属されているか、または、前記収納容器の内部で且つ前記アルミニウム蒸着袋の外部に収納されているのが好ましい。
好ましくは、前記調理済包装食品体は、調理済の米飯が包装袋で包装し密封された状態で収納されている調理済包装米飯体であり、前記米飯は、洗米後に約200MPaないし約400MPaで約10分間水に浸漬したのち含有水分が約64%になるように水切りし、前記包装袋で包装して包装米とし、その後、この包装米を約115℃で約30分間蒸煮して、前記調理済包装米飯体になっている。
たとえば、前記保存加熱装置は、不慮の災害用の備蓄品や救援物資としてまたはレジャー用品として用いられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調理済包装食品体の保存加熱装置は、上述のように構成したので、いつでもどこでも誰でも、水を注ぐだけで複数の調理済包装食品体を簡単に且つ短時間で一度にまとめて加熱して複数の温かい食品を得ることができるとともに持ち運びも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかる調理済包装食品体の保存加熱装置は、内部が収納空間になっている収納容器の内部に保持手段を設置している。この保持手段は、複数の調理済包装食品体を並べて位置決め保持するとともに、隣り合う調理済包装食品体同士の間に水蒸気の通る間隙を確保可能にしている。収納空間の底部空間には発熱体を配置しており、この発熱体は、水で濡れたときにこの水を吸収して発熱する機能を有している。
この保存加熱装置を加熱使用するときには、収納容器の収納空間内に水を注ぐことにより、発熱体が発熱して水が水蒸気になり、この水蒸気が調理済包装食品体の全表面に接触して調理済包装食品体を加熱する。
このような保存加熱装置によれば、水を注ぐだけで、複数の調理済包装食品体を簡単に且つ短時間で一度にまとめて加熱して複数の温かい食品を得るとともに持ち運びを容易にするという目的を実現している。
【0009】
本発明の保存加熱装置は、ピクニックやキャンプなどのレジャー用品として使用することができる。すなわち、この保存加熱装置を車に載せて行けば、目的地で複数の調理済包装食品体を簡単に且つ短時間にまとめて加熱して複数の温かい食品を得ることができる。
他方、本発明の保存加熱装置を地震,台風,津波などの不慮の災害用の備蓄品や救援物資として使用すると、その特徴が十分に発揮される。この場合には、保存加熱装置を加熱使用する場所に水がない可能性があるので、水の入った容器が、収納容器の内部もしくは外部に付属されている必要がある。
このようにすれば、災害発生時に、電気,ガス,水道などのライフラインが遮断された場合でも、保存加熱装置自体で自己完結しているので、容器から水を注ぐだけで、複数の調理済包装食品体を簡単に且つ短時間で一度にまとめて加熱して、美味しくて温かい複数の食品を得ることができる。この場合には、調理済包装食品体を長期間(たとえば、5年間)安全に且つ美味しい状態で保存する必要がある。
調理済包装食品体における調理済食品は、温めて摂取するもの、たとえば調理済の米飯の他に、調理済のカレー,肉料理,スープなどであってもよく、さらに、缶詰や缶コーヒーなどであってもよい。
【実施例】
【0010】
以下、本発明にかかる一実施例を、図1ないし図8を参照して説明する。
図1は、調理済包装食品体の保存加熱装置の正面断面図、図2は図1の側面断面図、図3は調理済包装米飯体の斜視図、図4は本実施例の変形例を示す部分断面図、図5,図6は、それぞれ保存加熱装置を加熱使用するときの状態を示す側面断面図である。
【0011】
図1ないし図6に示すように、本発明にかかる調理済包装食品体の保存加熱装置1は、調理済包装食品体2を収納して保存するとともに、加熱使用時(すなわち、保存加熱装置1に保存されている調理済包装食品体2を加熱して食品を摂取したいとき)に、調理済包装食品体2を加熱して摂取可能状態にする。
保存加熱装置1は、内部が収納空間3になっている収納容器4と、収納空間3に設置され、複数の調理済包装食品体2を並べて位置決め保持するとともに、隣り合う調理済包装食品体2同士の間に水蒸気の通る間隙dを確保可能にする保持手段5と、収納空間3の底部空間に配置され、水6で濡れたときにこの水6を吸収して発熱する発熱体7とを備えている。
【0012】
保存加熱装置1は、その加熱使用時に、収納容器4の収納空間3に水6を注ぐことにより、発熱体7が発熱して水6が水蒸気8になる。この水蒸気8が、収納空間3内の調理済包装食品体2の全表面に接触して調理済包装食品体2を加熱する。
このようにして、保存加熱装置1は、時間,場所,使用者の制約がなく、水6を収納空間3に注ぐだけで複数の調理済包装食品体2を簡単に且つ短時間で一度にまとめて加熱して複数の温かい食品を得ることができる。また、保存加熱装置1は、収納容器4内に複数の調理済包装食品体2や発熱体7などが一括収納されてコンパクトなので、持ち運びが容易である。
保存加熱装置1の加熱使用時には熱源を別途準備する必要がないので、保存加熱装置1は、地震,台風,津波などの不慮の災害に備えるための備蓄品や救援物資として、または、ピクニックやキャンプなどで車に載せて持って行くレジャー用品として用いられる。
【0013】
保存加熱装置1をレジャー用品として使用する場合、この保存加熱装置1を加熱使用する目的地で水が入手できれば、水を別途準備する必要はない。
ところが、水が入手できない場合や、災害用の備蓄品として保存加熱装置1を貯蔵していた場合には、水6も一緒に貯蔵しておく必要がある。特に、大きな震災などが発生した場合には、電気,ガスの他に水も入手できない恐れがあるからである。
これらの場合の対策としては、水6の入った容器(たとえば、PETボトル)9を、収納容器4の内部または外部に付属しておくのが好ましい。このようにすれば、保存加熱装置1を加熱使用する場所で水がない場合でも、容器9から水6を収納空間3に注ぐことができるので、保存加熱装置1自体でその機能が自己完結していることになる。
【0014】
本実施例の保存加熱装置1は、発熱体7を覆って収納空間3内の空気から遮断する発熱体カバー10と、収納容器4内に設けられたアルミニウム蒸着袋11とをさらに備えている。
アルミニウム蒸着袋11は、収納容器4とは別部品で、密封性,耐熱性,防水性を有しており、また、紫外線を遮蔽する機能も有している。アルミニウム蒸着袋11は、保持手段5に保持された状態の複数の調理済包装食品体2の全体と、発熱体カバー10に覆われた発熱体7の全体とを覆って、収納空間3を密閉空間にしている。
そして、保存加熱装置1の加熱使用時には、アルミニウム蒸着袋11内に水6を注ぐ。すると、発熱体7が発熱して水6が水蒸気8になり、この水蒸気がアルミニウム蒸着袋11内に充満して調理済包装食品体2を加熱する。
【0015】
密封性,耐熱性,防水性を有するアルミニウム蒸着袋11を設けたので、収納空間3を密閉空間にすることができ、注入された水6が外部に洩れ出ることはなく、また、アルミニウム蒸着袋11が熱で変形したり破損する恐れはない。アルミニウム蒸着袋11が紫外線を遮蔽する機能を発揮するので、紫外線による調理済包装食品体2の劣化を防止することができる。
アルミニウム蒸着袋11が収納容器4とは別部品である場合を示したが、アルミニウム蒸着袋11を収納容器4の内面全体に接着する場合であってもよい。または、アルミニウム蒸着袋11を省略して、その代わりに収納容器4自体が密封性,耐熱性,防水性を有してその内部に収納空間3を形成してもよい。このようにすれば、アルミニウム蒸着袋11を省略できるので構成が簡略化する。
【0016】
本実施例では、調理済包装食品体として調理済包装米飯体2を例にとっており、調理済食品としての調理済の米飯20が、ポリプロピレンなど合成樹脂により形成された包装袋21で包装し密封された状態で収納されている(図3)。
米飯20は、すでに調理済で水分を多く含んでいるので、保存期間が長期間(たとえば、1年ないし5年)に及ぶと、米飯20中の水分が蒸発し包装袋21を通過して収納空間3内に徐々にもれ出る。
そのため、発熱体7は、収納空間3内の湿った空気に接触し続けると、水分を吸収して次第に劣化する。そこで、発熱体カバー10が、発熱体7を覆って収納空間3内の空気から遮断しているので、発熱体7は劣化せずに長期間その機能を維持する。
【0017】
発熱体7は、たとえば粉体状アルミニウムを主剤とし、この主剤より重量比で少ない生石灰を起熱剤としており、高い吸湿性を有している。なお、発熱体7は、複数に分離されて収納空間3の内部に配置されている場合を示しているが、発熱体7を、厚みが薄くて収納空間3の底部空間全体に広がる一枚物の発熱体としてもよい。
発熱体7は、水で濡らすと膨張するので、調理済包装米飯体2の下端部34と収納空間3の底部との間(すなわち、発熱体7の収納スペース)の高さ寸法hとしては、発熱体7の膨張代を見込んで、発熱体7の厚み寸法の約2倍程度すなわち約3cmないし約10cmが好ましい。
【0018】
上述のように、調理済包装米飯体2の表面からは、徐々に水分が染み出て収納空間3内の空気の湿度を上昇させている。そのため、アルミニウム蒸着袋11がないと、収納空間3内の水分は、密閉性のない収納容器4の外部に出て行くので、調理済包装米飯体2から水分が染み出る現象が促進される。
これに対して、本実施例では、アルミニウム蒸着袋11を設けて収納空間3を密閉空間にしたので、収納空間3内の空気の湿度が飽和すると、調理済包装米飯体2からはそれ以上の水分は染み出さない。その結果、調理済包装米飯体2から水分が染み出すことを防止して、調理済包装米飯体2を長期間良好な状態で保存することができる。
アルミニウム蒸着袋11が密閉構造であり、加熱使用時にはアルミニウム蒸着袋11内に水6が注がれるので、収納容器4には密封性,耐熱性および防水性はそれほど要求されない。その結果、収納容器4には、紙製や合成樹脂製の段ボール箱を使用することもできる。
なお、アルミニウム蒸着袋11がない場合には、収納容器4自体には密封性,耐熱性,防水性が要求される。この場合の収納容器4の材質としては、ポリプロピレンなど合成樹脂製の段ボール箱であれば、密封性,耐熱性,防水性に加えて強度や保温性も優れているので好ましい。
調理済包装米飯体2や発熱体7が長持ちするので、保存加熱装置1を災害用の備蓄品や救援物資として用いることができる。
【0019】
水の入った容器6が、収納容器4の内部で且つアルミニウム蒸着袋11の外部に収納されており、そのために収納容器4は、容器9が収納された付属部33を有している。付属部33のケーシングは、収納容器4の一部を構成している。アルミニウム蒸着袋11で囲まれた収納空間3と付属部33とは、仕切板32で仕切られている。
こうして付属部33に水6を収納しておけば、災害発生時に万一、電気,ガス,水道などのライフラインが遮断された場合であっても、保存加熱装置1自体でその機能が自己完結しているので、容器9内の水6を使って調理済包装米飯体2を加熱することができる。
付属部33には、水6の入った容器9のほかに、水6を水注ぎ口22から注ぐときに用いる漏斗35と、調理済包装米飯体2と少なくとも同数のスプーン(または、箸)36と、非常食となる複数の梅干し37とが収納されている。なお、付属部33を省略した場合であってもよい。
【0020】
発熱体カバー10はアルミニウム蒸着フィルムであってもよいが、本実施例の発熱体カバー10にはオブラート(でんぷんなどで作った薄い膜状物質)10が使用されている。
ところで、調理済包装米飯体2では、包装袋21で包装されている米飯20に含まれている水分の一部が、徐々に蒸発(たとえば、約0.5%/年の割合で蒸発)して包装袋21を通り抜けて収納空間3内に発散する現象がある。その結果、もし仮にオブラートなど発熱体カバー10がなくて発熱体7の全体が収納空間3内に直接露出していると、発熱体7がその周囲の湿気を吸収して徐々に劣化してしまう。
そこで、オブラート10で、各発熱体7を個別にまたは全体的に(本実施例では、個別に)包んでいる。オブラート10は、多量の水がかかると溶けて破れる性質がある。そのため、オブラート10に水が注がれると、オブラート10が破れて除去され、発熱体7が収納空間3内に自動的に露出することになる。その結果、水6を注ぐ前に発熱体カバーを取外すといった面倒な作業が不要になり、保存加熱装置1の使い勝手がよくなる。
なお、オブラート10で包まれた発熱体7の劣化をさらに良好に防止するために、収納空間3の内部には一つまたは複数の乾燥剤38が同封されている。この乾燥剤38としては、食品の容器などに同封されている市販の乾燥剤であってもよいが、本実施例では、発熱体7の高い吸湿性に着目して、乾燥剤38は、この発熱体7と同じ組成を有し、且つオブラート10で包まれずに露出して高い吸湿機能を発揮可能になっている。
この乾燥剤38が、調理済包装米飯体2から発散された収納空間3内の湿気を吸収して、発熱体7の劣化を防ぐ機能を発揮する。
【0021】
収納容器4とアルミニウム蒸着袋11の上部には、水注ぎ口22が形成されている。水注ぎ口22は、非加熱使用時には閉じているが、加熱使用時には開けて水6をアルミニウム蒸着袋11の内部に注ぐとともに、発生した水蒸気8を上方に排出させるためのものである。
そのために、水注ぎ口22には取外し可能なキャップ23が取付けられ、キャップ23を締めるとアルミニウム蒸着袋11内の収納空間3が密閉される。水注ぎ口22を設けたので、容器9から水6をアルミニウム蒸着袋11の内部に容易に注ぎこむことができる。
【0022】
保持手段5は、複数の調理済包装米飯体2を並べて位置決め保持するとともに、隣り合う調理済包装米飯体2同士の間に水蒸気の通る間隙dを確保可能にする。
保持手段5は、アルミニウム蒸着袋11を介して収納容器4の底板24上に配置された複数(ここでは、二つ)の下部支持部材25と、下部支持部材25同士を連結する複数(ここでは、三つ)の下部補強材26と、調理済包装米飯体2の上部に配置された複数(ここでは、二つ)の上部支持部材27と、上部支持部材27同士を連結して位置決めする複数(ここでは、三つ)の上部補強材28とを有している。
複数の下部支持部材25は、互いに平行で且つ底板24に沿って延びて配置されている。各下部補強材26は、下部支持部材25に対して直角に配置されている。複数の下部支持部材25と複数の下部補強材26は、全体が組合わされた構成になって、調理済包装米飯体2の下部を保持している。
【0023】
下部支持部材25の上端縁部には、所定のピッチPで並んだ複数の溝29が形成されている。調理済包装米飯体2の外周縁部12を溝29に係合させれば、隣り合う調理済包装米飯体2同士の間に水蒸気の通る間隙d(好ましくは、d=約0.5cmないし約1cm)を確保可能にする。
アルミニウム蒸着袋11内に水6を注いだときに、保持手段5が水の流れの邪魔にならないようにするために、下部支持部材25と下部補強材26には水の通路が形成されている。
すなわち、本実施例では、下部支持部材25と下部補強材26の下端縁部に複数の切欠き30が形成されている。これにより、アルミニウム蒸着袋11内に水6を注いだときに、水6は、切欠き30を通過してアルミニウム蒸着袋11内の底部全体に広がるとともに発熱体7を十分に濡らして、発熱体7が水を吸収して発熱することができる。
【0024】
複数の上部支持部材27は、互いに平行に配置されるとともに下部支持部材25に対しても平行になっている。複数の上部補強材28が、上部支持部材27に対して直角に配置されている。複数の上部補強材27と複数の上部補強材28は、全体が組合わされた構成になって、調理済包装米飯体2の上部側を保持している。
上部支持部材27の下端縁部には、所定のピッチPで複数の溝31が並んで形成されている。この溝31には、調理済包装米飯体2の包装袋21の外周縁部12が係合可能になっている。上方に位置する複数の溝31は、下方に位置する複数の溝29に対応してその直上に配置されている。
下部の溝29と上部の溝31に、調理済包装米飯体2の下部と上部の各外周縁部12をそれぞれ係合させながら、複数の調理済包装米飯体2を並べれば、複数の調理済包装米飯体2は、水蒸気の通る間隙dを維持した状態で保持手段5により位置決め保持される。
【0025】
図4に示す変形例では、調理済包装米飯体2同士の間に水蒸気の通る間隙dを確保可能にするために、調理済包装米飯体2の底板13aと蓋板13bの一方または両方(ここでは、底板13a)の外面に、複数の突起14を突出形成している。
複数の調理済包装米飯体2を並べて配置したときに、調理済包装米飯体2の底板13aに形成された突起14が、隣の調理済包装米飯体2の蓋板13bに当接するので、隣り合う調理済包装米飯体2同士の間に水蒸気の通る間隙dを確保可能にすることができる。その結果、保持手段5に溝29,31(図1)を形成しなくても複数の調理済包装米飯体2を並べて配置することができ、保持手段5の構成が簡略化する。
【0026】
図7は、調理済包装米飯体2における米飯20の経過年月と糊化度との関係を示すグラフであり、図7中の横軸,縦軸はそれぞれ経過年月,糊化度を示している。
「糊化度」は、調理済の米飯20などのような澱粉の美味しさの指標の一つで、糊化度が高いほど味が良いことを示している。たとえば、炊きたてのご飯の糊化度は95%ないし100%であるが、その後このご飯を放置すると、2,3日で糊化度はたとえば50%以下まで急激に低下して味が落ちていく。
従来の調理済包装米飯体は、一般的な調理方法で炊いた米飯を単に包装紙で包装しているので、短期間(たとえば1ヶ月,2ヶ月)の保存で糊化度が低下して味が悪くなっていた。
【0027】
これに対して、本実施例(変形例を含む)にかかる米飯20は、洗米後に、約200MPaないし約400MPaで約10分間水に浸漬(すなわち、高圧処理)した後、含有水分が約64%になるように水切りし、包装袋21で包装して包装米とし、その後、この包装米を約115℃で約30分間蒸煮して、調理済包装米飯体2にしたものである。
このように、米飯20は、その調理工程のうち、洗米後に水に浸漬する工程で高圧処理を行なっている。この高圧処理工程を含む上述の調理の手順で調理された米飯20は、図7のグラフに示すように、その糊化度は、年月が経過すると次第に低下しているが、調理時から5年経過時でも、糊化度が90%を維持していることが分かる。
高圧処理された調理済包装米飯体2を使用すれば、米飯20が、長期間(たとえば、少なくとも5年)に亘って糊化度を高く維持する。したがって、食品を少なくとも5年間保存できることが条件(資格)の一つとなる災害用の備蓄品や救援物資として、保存加熱装置1を使用することができ、しかも、調理済包装米飯体2を、保存期間中(少なくとも5年間)に亘って美味しさを維持しながら保存することができる。
本実施例の調理済包装米飯体2は、高圧処理されているので、長期間(たとえば、5年間)美味しい状態のままで保存することができ、災害用の備蓄品や救援物資として適用可能である。
【0028】
米飯20の含有水分を約64%としたのは、第1の理由として、調理済包装米飯体2において包装袋21で包装されている米飯20に含まれている水分が、上述のように約0.5%/年の割合で徐々に蒸発して包装袋21を通り抜けて出てしまう現象があることであり、第2の理由として、米飯20の含有水分としては約62%前後が最も美味しいことであり、これら二つの理由の現象は本願発明者により確認されている。
二つの理由に加えて、長期間(たとえば、5年間)保存する必要性を考慮して、米飯20の含有水分を、予め多めの64%にしておけば、米飯20に含まれている水分が上述のよう次第に蒸発しても、たとえば5年保存後の米飯20の含有水分は、62%前後になると考えられる。
よって、米飯20を含有水分が約64%になるように調理しておけば、長期保存した後でも、硬くなくて程よい軟らかさの美味しいご飯を得ることができ、長期間の保存が可能になる。
通常、家庭や業務などでご飯を炊くときの温度は100℃ないし105℃であるが、本実施例では、包装米の蒸煮温度を115℃にしている。その結果、米飯20の殺菌を十分に行なうことができ、且つ糊化度を上げてご飯の味を向上させることができる。
【0029】
保存加熱装置1を加熱使用する場合には、図5に示すように、まず初めに、キャップ23を取外して水注ぎ口22を開く。次いで、水注ぎ口22に漏斗35を差し込んで、容器9に入った水6を水注ぎ口22からアルミニウム蒸着袋11の内部に注ぎ込む。
すると、水6は、収納空間3内を流れ落ちてアルミニウム蒸着袋11の底面上に溜まる。アルミニウム蒸着袋11は防水性、密閉性を有しており、水6がアルミニウム蒸着袋11の外部に漏れ出ることはないので、収納容器4が防水性のない段ボールであっても問題は生じない。
発熱体7を包んでいるオブラート10が水6で濡れると、オブラート10が溶けて破れ、発熱体7の表面が露出して水6により濡れる。すると、発熱体7は、この水6を吸収して急激に発熱し、その後も水6で濡らし続けると約15分程度は発熱作用を継続する。
なお、乾燥剤38も、発熱体7と同じ組成を有し且つ露出しているので、水6を吸収して発熱し、補助的な熱源としての機能を発揮する。
【0030】
すると、図6に示すように、アルミニウム蒸着袋11の底部空間に溜まっていた水6は、急激に加熱され沸騰して水蒸気8になり、この水蒸気8が、たちまち収納空間3に充満して調理済包装米飯体2の全表面に接触する。その結果、水蒸気8の通る間隙dを介して並んで配置されている調理済包装米飯体2の周囲が水蒸気8に囲まれて、この水蒸気8により調理済包装米飯体2が加熱される。
調理済包装米飯体2同士は、密着せずに水蒸気の通る少なくとも間隙dだけ離れているので、水蒸気8が収納空間3に充満した場合にこの間隙dにも侵入して、全ての調理済包装米飯体2の各外周面全体が水蒸気8に接触する。
その結果、各調理済包装米飯体2の周囲全体が外側から均一に加熱されるので、包装袋21を介してその内部の米飯20に水蒸気8の熱が急速に且つ均一に伝わって、米飯20が加熱されてムラのないほかほかの温かいご飯になる。
【0031】
このとき、収納空間3の圧力が上昇し過ぎないように、余分な水蒸気8は水注ぎ口22から外部に排出されるので、アルミニウム蒸着袋11の内部圧力の上昇による破裂の恐れはない。
発熱体7は、水6を吸収すると膨らんでその容積が大きくなるが、収納空間3の底部と調理済包装米飯体2の下端部34との間の高さ寸法hに余裕をとっているので、発熱体7により調理済包装米飯体2が持ち上がってその配列状態が崩れる恐れはない。また、乾燥剤38も、発熱体7と同じ成分なので、水6を吸収すると膨らんでその容積が大きくなる。
発熱体7と乾燥剤38に含まれる生石灰は、水と反応して発熱した後は消石灰になるので、これを土壌改良剤としてリサイクルでき環境への負担が少ない。
【0032】
図8は、収納空間3内と調理済包装米飯体2内の各温度変化を示すグラフであり、図8の横軸,縦軸は、それぞれ時間,温度を示している。図8中の符号「◆」,「■」,「▲」で示す各曲線T1,T2,T3は、それぞれ、収納空間3内の上部温度,収納空間3内の下部温度,調理済包装米飯体2の米飯20内の温度を示している。
図8の曲線T1,T2に示すように、発熱体7の発熱により発生する水蒸気8により、収納空間3内の上部温度と下部温度は、急激に上昇したのち徐々に下がっていく。
これに対して、調理済包装米飯体2の米飯20内の温度(曲線T3)は、周囲の水蒸気8により加熱されて熱伝導により徐々に上昇し、約15分経過すると約70℃まで加熱される。米飯20は、一般的に約70℃まで加熱されれば糊化度が上昇してほかほかの美味しいご飯になる。
米飯20の温度(曲線T3)は、約15分経過後もさらなる熱伝導により徐々に上昇し、約25分経過すると約77℃まで上昇するので、米飯20は、さらに糊化度が上昇してあつあつの美味しいご飯になる。
したがって、図8から分かるように、水蒸気8が発生して加熱が始まったときから少なくとも約15分そのまま待てば、温かくて美味しいご飯が出来上がる。
【0033】
このように、保存加熱装置1によれば、水6を収納空間3に注ぐという簡単な作業だけで、複数の調理済包装米飯体2を短時間(少なくとも15分間)で一度にまとめて加熱して美味しくて温かいご飯を得ることができる。
また、収納容器4内には、熱源として小型のガスコンロやガスボンベなどのような重い物は収納されておらず、その代わりに軽量の発熱体7が収納されているので、保存加熱装置1は、軽くて持ち運びが容易である。また、発熱体7の非加熱使用時には、これをオブラート10で包んで密封しているので、発熱体7が発熱する恐れはなく安全である。
収納容器4のサイズや形状を大きくして、発熱体7の数や量を大きくすれば、より多くの調理済包装食品体を収納することができる。
【0034】
加熱使用時には、ガスや電気などを使用せず水6を水注ぎ口22から注ぐだけでよいので、操作が簡単で安全であり、誰でも(たとえ、老人や子供であっても)加熱使用することができる。
したがって、電気,ガス,水道などが遮断された災害発生直後のような混乱した状況下でも、誰でも簡単に且つ安全に操作して、ほかほかの温かくて美味しいご飯を、短時間のうちに一度に多数提供することができる。
保存加熱装置1によれば、災害等の発生した現場ですぐに温かいご飯の炊き出しが手際よくできるので、多数の米飯20を簡単に且つ短時間で供給して、災害発生現場の人々を助け且つ勇気づけることができる。
特に、災害発生直後の混乱状態にあっても、救援隊が到着するまでの緊急時(たとえば、災害発生から24時間以内)に、こうした温かいご飯があれば被災地での活動の活力源になる。
この場合には、保存加熱装置1は、水の入った容器9を備えていれば、ライフラインの状況に影響されないので好ましい。
【0035】
保存加熱装置1は、加熱使用する現場で新たに炊飯する訳ではなく、調理済の米飯20を温めるだけなので、気圧の低い場所(たとえば、高い山)でも芯の残らない美味しいご飯ができる。
水注ぎ口22から供給される水6は、発熱体7などを濡らすとともに水蒸気8を発生させるのに用いられるのであり、食品に直接触れたり人間が摂取する訳ではないので、水6自体に高度な清潔さは要求されない。したがって、たとえば保存加熱装置1をレジャー用品として使用する場合には、川や海の水を使用することも可能である。
【0036】
上述のように、本発明の保存加熱装置1によれば、時間,場所,使用者の制約がなく、いつでもどこでも誰でも、水6を収納空間3に注ぐだけで、複数の調理済包装食品体2を簡単に且つ短時間で一度にまとめて加熱して、複数の温かい食品を得ることができ、また、保存加熱装置1の持ち運びも容易である。
【0037】
以上、本発明の実施例(変形例を含む)を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の調理済包装食品体の保存加熱装置は、不慮の災害用の備蓄品や救援物資として、また、レジャー用品として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1ないし図8は本発明の一実施例を示す図で、図1は、調理済包装食品体の保存加熱装置の正面断面図である。
【図2】図1の側面断面図である。
【図3】調理済包装米飯体の斜視図である。
【図4】本実施例の変形例を示す部分断面図である。
【図5】保存加熱装置を加熱使用するときの状態を示す側面断面図である。
【図6】保存加熱装置を加熱使用するときの状態を示す側面断面図である。
【図7】調理済包装米飯体における米飯の経過年月と糊化度の関係を示すグラフである。
【図8】収納空間内と調理済包装米飯体内の各温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
1 保持加熱装置
2 調理済包装米飯体(調理済包装食品体)
3 収納空間
4 収納容器
5 保持手段
6 水
7 発熱体
8 水蒸気
10 オブラート(発熱体カバー)
11 アルミニウム蒸着袋
20 調理済の米飯(調理済食品)
21 包装袋
d 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理済包装食品体を収納して保存するとともに加熱使用時にこれを加熱して摂取可能にする保存加熱装置であって、
内部が収納空間になっている収納容器と、
前記収納空間に設置され、複数の前記調理済包装食品体を並べて位置決め保持するとともに隣り合う前記調理済包装食品体同士の間に水蒸気の通る間隙を確保可能にしている保持手段と、
前記収納空間の底部空間に配置され、水で濡れたときにこの水を吸収して発熱する発熱体とを備え、
加熱使用時に、前記収納容器の前記収納空間に前記水を注ぐことにより、前記発熱体が発熱して前記水が前記水蒸気になり、この水蒸気が前記調理済包装食品体の全表面に接触してこの調理済包装食品体を加熱するようにしたことを特徴とする調理済包装食品体の保存加熱装置。
【請求項2】
前記保存加熱装置は、
前記発熱体を覆って前記収納空間内の空気から遮断する発熱体カバーと、
前記収納容器内に設けられ、前記保持手段に保持された状態の前記複数の調理済包装食品体の全体と前記発熱体カバーに覆われた前記発熱体の全体とを覆って前記収納空間を密閉空間にするアルミニウム蒸着袋とをさらに備え、
加熱使用時に、このアルミニウム蒸着袋内に前記水を注ぐことにより、前記発熱体が発熱して前記水が水蒸気になり、この水蒸気が前記アルミニウム蒸着袋内に充満して前記調理済包装食品体を加熱するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の調理済包装食品体の保存加熱装置。
【請求項3】
前記発熱体カバーはオブラートであり、このオブラートにより前記発熱体は個別にまたは全体的に包まれていることを特徴とする請求項2に記載の調理済包装食品体の保存加熱装置。
【請求項4】
前記調理済包装食品体は、調理済の米飯が包装袋で包装し密封された状態で収納されている調理済包装米飯体であり、
前記米飯は、洗米後に約200MPaないし約400MPaで約10分間水に浸漬したのち含有水分が約64%になるように水切りし、前記包装袋で包装して包装米とし、その後、この包装米を約115℃で約30分間蒸煮して前記調理済包装米飯体になったものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの項に記載の調理済包装食品体の保存加熱装置。
【請求項5】
前記保存加熱装置は、不慮の災害用の備蓄品や救援物資としてまたはレジャー用品として用いられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの項に記載の調理済包装食品体の保存加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−290743(P2008−290743A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137667(P2007−137667)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(591222289)中山環境エンジ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】