赤外線撮像装置
【課題】画素毎のバンプが増加してもフリップチップボンディングを適切に行うことができる赤外線撮像装置を提供する。
【解決手段】複数の画素が配列した赤外線イメージセンサ100と、赤外線イメージセンサ100から信号を読み出す読み出し回路300と、赤外線イメージセンサ100と読み出し回路300との間に設けられた中継部材200と、が設けられている。複数の画素の各々には、互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層106、110と、複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプ159と、複数の吸収層毎に設けられた出力バンプ157、158と、が設けられている。出力バンプは、読み出し回路に設けられた入力バンプ302、303に接続され、バイアスバンプは、読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプ304に、中継部材に設けられた中継配線207を介して接続されている。
【解決手段】複数の画素が配列した赤外線イメージセンサ100と、赤外線イメージセンサ100から信号を読み出す読み出し回路300と、赤外線イメージセンサ100と読み出し回路300との間に設けられた中継部材200と、が設けられている。複数の画素の各々には、互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層106、110と、複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプ159と、複数の吸収層毎に設けられた出力バンプ157、158と、が設けられている。出力バンプは、読み出し回路に設けられた入力バンプ302、303に接続され、バイアスバンプは、読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプ304に、中継部材に設けられた中継配線207を介して接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線撮像装置には、赤外線イメージセンサ、読み出し回路及び光学系等が備えられている。赤外線イメージセンサには、赤外線の入射量に応じた電気信号を発生する画素が2次元状に配列した画素アレイが設けられている。画素には、例えば量子井戸型赤外線センサ(QWIP:quantum well infrared photodetector)が用いられている。また、画素毎に2種類の吸収層が設けられた2波長の赤外線が検出可能な赤外線イメージセンサもある。
【0003】
但し、2波長の赤外線が検出可能な赤外線イメージセンサでは、画素毎に、バイアス用のバンプ及び吸収層毎のバンプが必要とされる。つまり、画素毎に3個のバンプが必要される。このため、単波長の赤外線が検出可能な赤外線イメージセンサと比較して、バンプの密度が高く、赤外線イメージセンサと読み出し回路とをフリップチップボンディングにより大きな加重が必要とされ、接続不良が生じやすい。この傾向は、特に、画素数を多くするほど顕著になる。
【0004】
更に、赤外線イメージセンサは主に化合物半導体を用いて構成されているのに対し、読み出し回路の基板にシリコンが用いられている。赤外線イメージセンサは低温で動作するため、動作時にはこれらの熱膨張率の相違により、バンプに大きな熱ストレスが作用する。このため、大きなバンプを用いることが好ましいが、バンプが大きくなるほど、画素内でのバンプ間の最短距離が短くなり、短絡が生じやすくなる。
【0005】
そこで、画素同士を分離する分離溝内にバイアス用の配線を設け、この配線を画素アレイの外部まで引き回し、そこから読み出し回路に接続する構成が提案されている。この構成によれば、画素毎に必要とされるバンプの数は2個となる。
【0006】
しかしながら、この構造では、バイアス用の配線の領域を確保するために、分離溝の幅を広げる必要がある。この結果、バイアス用の配線が存在しない場合と比較して、有効画素面積を一定とすると、画素アレイが大きくなってしまい、画素ピッチを一定とすると、有効画素面積が小さくなってしまう。前者であれば、赤外線イメージセンサの微細化が困難になり、後者であれば、感度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Infrared Physics & Technology 50 (2007) 217-226
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、画素毎のバンプが増加してもフリップチップボンディングを適切に行うことができる赤外線撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
赤外線撮像装置には、複数の画素が配列した赤外線イメージセンサと、前記赤外線イメージセンサから信号を読み出す読み出し回路と、前記赤外線イメージセンサと前記読み出し回路との間に設けられた中継部材と、が設けられている。前記複数の画素の各々には、互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層と、前記複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプと、前記複数の吸収層毎に設けられた出力バンプと、が設けられている。前記出力バンプは、前記読み出し回路に設けられた入力バンプに接続され、前記バイアスバンプは、前記読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプに、前記中継部材に設けられた中継配線を介して接続されている。
【発明の効果】
【0010】
上記の赤外線撮像装置によれば、中継部材が赤外線イメージセンサと読み出し回路との間に設けられているため、画素毎のバンプが増加してもフリップチップボンディングを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】赤外線イメージセンサに設けられたバンプを示す図である。
【図2】実施形態に係る赤外線撮像装置の構造を示す断面図である。
【図3】吸収層の構造を示す断面図である。
【図4】バンプ間の最短距離を示す図である。
【図5】フィルファクタを示す図である。
【図6A】赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6B】図6Aに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6C】図6Bに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6D】図6Cに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6E】図6Dに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図7】中継部材を製造する方法を示す断面図である。
【図8A】赤外線撮像装置を製造する方法を示す断面図である。
【図8B】図8Aに引き続き、赤外線撮像装置を製造する方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、実施形態に係る赤外線撮像装置の赤外線イメージセンサに設けられたバンプを示す図であり、図2は、実施形態に係る赤外線撮像装置の構造を示す断面図である。図2は、図1中のI−I線に沿った断面を示している。
【0013】
図1に示すように、赤外線イメージセンサ100には、複数の画素180が2次元状に配列した画素アレイ181が設けられている。また、画素アレイ181の外側に中継部182が設けられている。各画素180に、2個の出力バンプ157及び158、並びに1個のバイアスバンプ159が設けられている。各画素180には、コンタクトホール121及び122も形成されている。
【0014】
図2に示すように、基板101上にi−GaAs層102がバッファ層として形成されている。基板101は、例えば、表面のミラー指数が(100)の絶縁性GaAs基板である。i−GaAs層102の厚さは、例えば1μm程度である。また、i−GaAs層102上にn−GaAs層103が下部電極層として形成され、n−GaAs層103上にn−InGaP層104がエッチングストッパとして形成され、n−InGaP層104上にn−GaAs層105が形成されている。n−GaAs層103、n−InGaP層104、及びn−GaAs層105の厚さは、例えば、それぞれ、0.5μm程度、20nm程度、50nm程度である。n−GaAs層103、n−InGaP層104、及びn−GaAs層105の不純物濃度は、例えば、いずれも、1×1018cm-3程度である。そして、n−GaAs層105上に吸収層106が形成されている。吸収層106としては、例えば多重量子井戸(MQW:multiple quantum well)層が形成されている。なお、バッファ層としてAlGaAs層が形成されていてもよい。
【0015】
吸収層106上にn−GaAs層107がバイアス電極層として形成され、n−GaAs層107上にn−InGaP層108がエッチングストッパとして形成され、n−InGaP層108上にn−GaAs層109が形成されている。n−GaAs層107、n−InGaP層108、及びn−GaAs層109の厚さは、例えば、それぞれ、0.5μm程度、20nm程度、50nm程度である。n−GaAs層107、n−InGaP層108、及びn−GaAs層109の不純物濃度は、例えば、いずれも、1×1018cm-3程度である。そして、n−GaAs層109上に吸収層110が形成されている。吸収層110としては、例えばMQW層が形成されている。
【0016】
吸収層110上にn−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113が上側電極層として形成されている。n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113の総厚は、例えば0.5μm程度であり、n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113の不純物濃度は、例えば、いずれも、1×1018cm-3程度である。また、n−AlGaAs層112のAl組成は、例えば0.3程度である。
【0017】
層103〜113に、画素180同士の境界に沿って平面視で縦横に延びる分離溝151が形成されている。コンタクトホール121は層108〜113に形成され、コンタクトホール122は層104〜113に形成されている。n−GaAs層107のコンタクトホール121から露出した部分上にバイアス電極133が形成されている。n−GaAs層103のコンタクトホール122から露出した部分上に下部電極132が形成されている。下部電極132及びバイアス電極133は、例えばオーミック電極である。更に、層103〜113に、画素アレイ181と中継部182とを分離する溝115が形成されている。
【0018】
また、画素アレイ181では、n−GaAs層113に複数の段差が形成されており、回折格子(光カップラ)114が層111〜113を含んでいる。画素180毎に、回折格子114の一部に上部電極131が形成されている。上部電極131は、例えばn−AlGaAs層112の表面に接するようにして形成されている。そして、回折格子114及び上部電極131を覆うようにして反射金属膜134が形成されている。なお、中継部182では、n−GaAs層113が除去されている。
【0019】
分離溝151、溝115、及びコンタクトホール121〜122の底面及び側面、反射金属膜134、及び中継部182内のn−AlGaAs層112を覆うパッシベーション膜135が形成されている。パッシベーション膜135には、反射金属膜134、下部電極132、及びバイアス電極133を露出する開口部が形成されている。下部電極132には、パッシベーション膜135の開口部を介して反射金属膜134の上方まで延びる下部配線137が接続されている。バイアス電極133には、パッシベーション膜135の開口部を介して反射金属膜134の上方まで延びるバイアス配線138が接続されている。反射金属膜134には、パッシベーション膜135の開口部内に形成された上部配線136が接続されている。
【0020】
下部配線137及びバイアス配線138を覆うパッシベーション膜152がパッシベーション膜135上に形成されている。パッシベーション膜152には、上部配線136を露出する開口部、下部配線137の一部を露出する開口部、及びバイアス配線138の一部を露出するが形成されており、これら開口部内に、それぞれ、下地膜153、下地膜154、及び下地膜155が形成されている。そして、下地膜153上に出力バンプ157が形成され、下地膜154上に出力バンプ158が形成され、下地膜155上にバイアスバンプ159が形成されている。
【0021】
吸収層106には、図3(a)に示すように、互いに交互に積層された複数のi−AlGaAs層141及びn−GaAs層142が含まれている。最下部及び最上部には、i−AlGaAs層141が位置しており、n−GaAs層142の数は、例えば20である。例えば、i−AlGaAs層141のAl組成は0.25程度であり、その厚さは50nm程度であり、n−GaAs層142の不純物濃度は2×1017cm-3程度であり、その厚さは5nm程度である。i−AlGaAs層141は障壁層として機能し、n−GaAs層142は量子井戸層として機能する。
【0022】
一方、吸収層110には、図3(b)に示すように、互いに交互に積層された複数のi−AlGaAs層143及びn−GaInAs層144が含まれている。最下部及び最上部には、i−AlGaAs層143が位置しており、n−GaInAs層144の数は、例えば20である。例えば、i−AlGaAs層143のAl組成は0.3程度であり、その厚さは30nm程度であり、n−GaInAs層144のIn組成は0.2程度であり、その不純物濃度は5×1018cm-3程度であり、その厚さは3nm程度である。
【0023】
このように、吸収層106及び110の構造が相違するため、これらは互いに異なる波長の赤外線を吸収する。
【0024】
中継部182では、パッシベーション膜135上に中継配線139が形成されている。中継配線139はパッシベーション膜152により覆われている。但し、パッシベーション膜152に2個の開口部が形成されており、これら開口部内に、それぞれ、下地膜156a及び下地膜156bが形成されている。そして、下地膜156a上に低バンプ160aが形成され、下地膜156b上に高バンプ160bが形成されている。低バンプ160aが第1のバンプに含まれ、高バンプ160bが第2のバンプに含まれる。
【0025】
例えば、基板101の表面を基準としたバイアスバンプ159の表面の高さ、及び低バンプ160aの表面の高さは互いに同等である。また、例えば、基板101の表面を基準とした出力バンプ157の表面の高さ、出力バンプ158の表面の高さ、及び高バンプ160bの表面の高さは互いに同等である。そして、基板101の表面を基準としたバイアスバンプ159の表面の高さ、及び低バンプ160aの表面の高さは、出力バンプ157の表面の高さ、出力バンプ158の表面の高さ、及び高バンプ160bの表面の高さよりも低くなっている。また、平面視でのバイアスバンプ159及び低バンプ160aのサイズは互いに同等であり、平面視での出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bのサイズは互いに同等である。
【0026】
本実施形態には、図2に示すように、読み出し回路300が設けられている。読み出し回路300には、吸収層110により生成された光電流が入力される入力バンプ302、及び吸収層106により生成された光電流が入力される入力バンプ303が、各画素180に対応するようにして設けられている。読み出し回路300には、更に、赤外線イメージセンサ100にバイアスを供給するバイアス供給バンプ304も設けられている。読み出し回路300ドライバ等の素子を含む基部301の表面を基準とした入力バンプ302、入力バンプ303、及びバイアス供給バンプ304の各表面の高さは、互いに同等である。
【0027】
本実施形態では、更に、赤外線イメージセンサ100と読み出し回路300との間に、中継部材200が設けられている。中継部材200にi−GaAs層204が含まれている。i−GaAs層204に、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160b並びに入力バンプ302、入力バンプ303、及びバイアス供給バンプ304が入り込むことが可能な複数の貫通孔205aが形成されている。i−GaAs層204の赤外線イメージセンサ100側の面及び貫通孔205aの内面がパッシベーション膜206により覆われている。パッシベーション膜206上に、読み出し回路300のバイアス供給バンプ304から供給されたバイアスをバイアスバンプ159に伝達する中継配線207が形成されている。中継配線207はパッシベーション膜208により覆われている。パッシベーション膜208には、中継配線207のバイアスバンプ159と対向する部分を露出する開口部が形成されており、この開口部内に下地膜209が形成されている。パッシベーション膜208には、更に、中継配線207の低バンプ160aと対向する部分を露出する開口部も形成されており、この開口部内に下地膜212が形成されている。そして、下地膜209上にバンプ210が形成され、下地膜212上に中継バンプ211が形成されている。高バンプ160b及びバイアス供給バンプ304が入り込むことが可能な貫通孔205aが第2の貫通孔に含まれる。また、パッシベーション膜206及び208のうち、このような貫通孔205aの内側面を覆う部分が第2の絶縁膜に含まれる。
【0028】
そして、中継部材200及び赤外線イメージセンサ100がフリップチップボンディングにより一体化されている。つまり、バイアスバンプ159とバンプ210とが接続され、低バンプ160aと中継バンプ211とが接続されている。また、貫通孔205a内に出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bが入り込んでいる。
【0029】
更に、中継部材200を間に介在させて、読み出し回路300及び赤外線イメージセンサ100がフリップチップボンディングにより一体化されている。つまり、入力バンプ302、入力バンプ303、及びバイアス供給バンプ304も貫通孔205a内に入り込み、貫通孔205a内で、出力バンプ157と入力バンプ302とが接続され、出力バンプ158と入力バンプ303とが接続され、高バンプ160bとバイアス供給バンプ304とが接続されている。
【0030】
このように構成された赤外線撮像装置では、読み出し回路300のバイアス供給バンプ304から、高バンプ160b、中継配線139、低バンプ160a、中継配線207、バンプ210、バイアスバンプ159、及びバイアス配線138を介して、バイアス電極層として機能するn−GaAs層107にバイアスが印加される。また、吸収層106により生成された光電流は、下部配線137、出力バンプ158、及び入力バンプ303を介して読み出し回路300に読み出され、吸収層110により生成された光電流は、上部配線136、出力バンプ157、及び入力バンプ302を介して読み出し回路300に読み出される。従って、2種類の波長の赤外線の検出に伴う撮像が可能である。
【0031】
更に、本実施形態では、読み出し回路300に接続される1画素当たりのバンプの数は2個である。このため、バンプ数の増加に伴うフリップチップボンディング時の接続不良の増加を回避することができる。更に、出力バンプ157と入力バンプ302との接続、出力バンプ158と入力バンプ303との接続、及び高バンプ160bとバイアス供給バンプ304との接続が貫通孔205a内で行われているため、フリップチップボンディング時にこれらに変形が生じたとしても、バンプ同士の短絡は極めて生じにくい。
【0032】
また、中継部材200に主に赤外線イメージセンサ100と同様の材料が用いられている。その一方で、読み出し回路300には、例えばシリコン基板等が用いられている。つまり、赤外線イメージセンサ100の熱膨張率と中継部材200の熱膨張率との差が、赤外線イメージセンサ100の熱膨張率と読み出し回路300の熱膨張率との差以下である。このため、バイアスバンプ159の平面視でのサイズを出力バンプ157及び158ほど大きくせずとも、中継部材200と赤外線イメージセンサ100とのフリップチップボンディングを適切に行うことが可能である。従って、中継部材200を用いずに読み出し回路に1画素当たり3個のバンプが直接接続される従来技術と比較して、バイアスバンプ159を小型化し、その分だけ出力バンプ157及び158を大型化して耐久性を向上することが可能である。この結果、読み出し回路300と赤外線イメージセンサ100とのフリップチップボンディングをより適切に行うことが可能となる。
【0033】
更に、図4(a)に示すように、出力バンプ157及び158が、平面形状が正方形状の画素180の対角線に沿って配置されているため、図4(b)に示す読み出し回路に1画素当たり3個のバンプ401が直接接続される従来技術(例えば、非特許文献1)と比較して、読み出し回路に直接接続されるバンプ間の最短距離Lminを長く確保することができる。従って、この点でも、バンプ同士の短絡を抑制することが可能である。
【0034】
また、画素同士を分離する分離溝内にバイアス用の配線を設けた構造と比較して、有効画素面積が一定であれば、画素アレイを微細化することができ、画素ピッチが一定であれば、有効画素面積を大きくすることができる。例えば、本実施形態であれば、図5(a)に示すように、画素411のピッチが30μm、構造物の間隔、つまり分離溝412の幅が2μmの場合、画素411の形状は、一辺の長さが28μmの正方形となる。一方、画素411のピッチが30μmであっても、分離溝412内にバイアス用の配線413が存在すると(比較例)、配線413の分だけ分離溝412の幅を広げる必要がある。例えば、図5(b)に示すように、配線413の幅が2μmであり、構造物の間隔、つまり配線413と画素411との間隔が2μmであると、分離溝412の幅は6μmとなり、画素411の形状は、長辺の長さが28μm、短辺の長さが24μmの長方形となる。従って、下記表1に示すように、本実施形態の方が高いフィルファクタが得られる。
【0035】
【表1】
【0036】
次に、赤外線イメージセンサ100を製造する方法について説明する。図6A〜図6Eは、赤外線イメージセンサ100を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0037】
先ず、図6A(a)に示すように、基板101上に、i−GaAs層102、n−GaAs層103、n−InGaP層104、n−GaAs層105、及び吸収層106を結晶成長法により形成する。次いで、吸収層106上に、n−GaAs層107、n−InGaP層108、n−GaAs層109、及び吸収層110を結晶成長法により形成する。その後、吸収層110上に、n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113を結晶成長法により形成する。結晶成長法としては、例えば、分子線エピタキシー(MBE:molecular beam epitaxy)法及び有機金属化学気相堆積(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)法等が挙げられる。
【0038】
続いて、n−GaAs層113の表面に、ウェットエッチングにより深さが0.1μm程度の位置合わせ用マーカーを形成し、これを用いて位置合わせを行う。次いで、n−GaAs層113のパターニングを行い、図6B(b)に示すように、n−GaAs層113に段差を形成する。このパターニングでは、例えば、n−AlGaAs層112をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行う。この結果、n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113を含む回折格子114が形成される。
【0039】
その後、層113〜110のパターニングを行い、図6B(c)に示すように、層113〜110に、画素アレイ181と中継部182とを分離する溝115を形成する。
【0040】
続いて、層113〜108のパターニングを行い、図6B(d)に示すように、層113〜108に、後にバイアス電極133を形成するコンタクトホール121を形成する。このパターニングでは、例えば、n−InGaP層108をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行い、その後に、n−InGaP層108の露出している部分をウェットエッチングする。コンタクトホール121の形成と並行して、後に下部電極132を形成するコンタクトホール122の層113〜108の深さの部分を形成する。
【0041】
次いで、層107〜104のパターニングを行い、図6C(e)に示すように、コンタクトホール122の層107〜104の深さの部分を形成する。このパターニングでは、例えば、n−InGaP層104をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行い、その後に、n−InGaP層104の露出している部分をウェットエッチングする。
【0042】
続いて、図6C(f)に示すように、例えばリフトオフ法により、n−AlGaAs層112上に上部電極131を形成し、n−GaAs層107上にバイアス電極133を形成し、n−GaAs層103上に下部電極132を形成する。このとき、AuGe膜を蒸着し、その後にAu膜を蒸着する。上部電極131、下部電極132、及びバイアス電極133はオーミック電極である。
【0043】
次いで、図6C(g)に示すように、例えばリフトオフ法により、回折格子114上に反射金属膜134を形成する。このとき、Ti膜をスパッタ蒸着し、その後にAu膜をスパッタ蒸着する。
【0044】
その後、図6D(h)に示すように、全面にパッシベーション膜135を形成する。パッシベーション膜135としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。続いて、パッシベーション膜135に、上部電極131を露出する開口部、下部電極132を露出する開口部、及びバイアス電極133を露出する開口部を形成する。これら開口部は、例えばドライエッチングにより形成する。
【0045】
次いで、図6D(i)に示すように、上部電極131と接続される上部配線136、下部電極132と接続される下部配線137、及びバイアス電極133と接続されるバイアス配線138を形成する。上部配線136、下部配線137、及びバイアス配線138の形成では、例えば、Ti膜をスパッタ蒸着し、その後にAu膜をスパッタ蒸着し、これらをイオンミリング法等によりパターニングする。上部配線136、下部配線137、及びバイアス配線138の形成と並行して、中継部182内でパッシベーション膜135上に中継配線139を形成する。
【0046】
その後、層112〜103のパターニングを行い、図6D(j)に示すように、画素180同士を分離する分離溝151を形成する。
【0047】
続いて、図6E(k)に示すように、全面にパッシベーション膜152を形成する。パッシベーション膜152としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。次いで、パッシベーション膜152に、上部配線136の少なくとも一部を露出する開口部、下部配線137の一部を露出する開口部、及びバイアス配線138の一部を露出する開口部を形成する。このとき、中継部182内では、中継配線139の一部を露出する2個の開口部をパッシベーション膜152に形成する。
【0048】
その後、図6F(l)に示すように、例えばリフトオフ法により、パッシベーション膜152の開口部を介して、上部配線136に接続される下地膜153及び出力バンプ157、下部配線137に接続される下地膜154及び出力バンプ158、バイアス配線138に接続される下地膜155及びバイアスバンプ159、中継配線139に接続される下地膜156a及び低バンプ160a、並びに中継配線139に接続される下地膜156b及び高バンプ160bを形成する。下地膜153、154、155、156a、及び156bの形成では、Ti膜を蒸着し、その後にPt膜を蒸着する。バンプ157、158、159、160a、及び160bの形成では、In膜を蒸着する。
【0049】
このようにして、赤外線イメージセンサ100を製造することができる。
【0050】
次に、中継部材200を製造する方法について説明する。図7は、中継部材200を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0051】
先ず、図7(a)に示すように、基板201上に、i−GaAs層202、i−GaInP層203、及びi−GaAs層204を結晶成長法により形成する。結晶成長法としては、例えば、MBE法及びMOCVD法等が挙げられる。基板201は、例えば、基板101と同様に、絶縁性GaAs基板である。i−GaAs層204の厚さは、中継部材200と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングしたときに、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bがi−GaInP層203まで到達しない厚さとする。
【0052】
次いで、i−GaAs層204のパターニングを行い、図7(b)に示すように、i−GaAs層204に、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bが入り込むことが可能な複数の開口部205を形成する。このパターニングでは、例えば、i−GaInP層203をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行う。
【0053】
その後、図7(c)に示すように、全面にパッシベーション膜206を形成する。パッシベーション膜206としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。続いて、パッシベーション膜206上に中継配線207を形成する。中継配線207の形成では、例えば、Ti膜をスパッタ蒸着し、その後にAu膜をスパッタ蒸着し、これらをイオンミリング法等によりパターニングする。
【0054】
次いで、図7(d)に示すように、全面にパッシベーション膜208を形成する。パッシベーション膜208としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。その後、パッシベーション膜208に、中継配線207のバイアスバンプ159と対向する部分を露出する開口部、及び低バンプ160aと対向する部分を露出する開口部を形成する。これら開口部は、例えばドライエッチングにより形成する。続いて、例えばリフトオフ法により、パッシベーション膜208の開口部を介して、画素アレイ181に対向する領域では、中継配線207に接続される下地膜209及びバンプ210を形成し、中継部182に対向する領域では、中継配線207に接続される下地膜212及び中継バンプ211を形成する。
【0055】
このようにして、中継部材200を製造することができる。この中継部材200と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングした後に、基板201、i−GaAs層202、及びi−GaInP層203を除去し、パッシベーション膜206及び208の一部並びにi−GaAs層204の一部を除去すると、中継部材200の状態が図2に示すものとなる。
【0056】
次に、赤外線イメージセンサ100及び中継部材200を用いて赤外線撮像装置を製造する方法について説明する。図8A〜図8Bは、赤外線撮像装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0057】
先ず、図8A(a)に示すように、中継部材200と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングする。このとき、画素アレイ181において、バイアスバンプ159とバンプ210とを接続し、中継部182において、低バンプ160aと中継バンプ211とを接続する。また、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bを開口部205内に入り込ませる。
【0058】
次いで、図8A(b)に示すように、例えば、i−GaInP層203をエッチングストッパとして用いたウェットエッチングを行い、中継部材200から基板201及びi−GaAs層202を除去する。
【0059】
その後、図8B(c)に示すように、i−GaInP層203をウェットエッチングにより除去する。更に、i−GaAs層204の開口部205の底部に残存するパッシベーション膜206及び208をドライエッチングにより除去し、貫通孔205aを形成する。
【0060】
続いて、図8B(d)に示すように、中継部材200を間に介在させて、読み出し回路300と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングする。このとき、画素アレイ181において、貫通孔205a内で、出力バンプ157と入力バンプ302とを接続し、出力バンプ158と入力バンプ303とを接続する。また、中継部182において、貫通孔205a内で、高バンプ160bとバイアス供給バンプ304とを接続する。
【0061】
このようにして、赤外線撮像装置を製造することができる。
【0062】
なお、赤外線イメージセンサに含まれる各層の材料は特に限定されない。例えば、吸収層として、量子ドット、量子細線又は量子箱等を含む半導体層等が用いられてもよい。また、赤外線を吸収可能な禁制帯幅を有するバルク半導体材料(HgCdTe及びInSb等)を含む半導体層が用いられてもよく、半導体超格子材料(InAs/GaSb超格子)を含む半導体層が用いられてもよい。また、MQW層に、InGaAs層とInAlAs層との組み合わせ、InGaAs層とInP層との組み合わせ、又はSi層とSiGe層との組み合わせ等が用いられていてもよい。また、赤外線イメージセンサ及び中継部材がInP系材料を用いて構成されていてもよい。
【0063】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0064】
(付記1)
複数の画素が配列した赤外線イメージセンサと、
前記赤外線イメージセンサから信号を読み出す読み出し回路と、
前記赤外線イメージセンサと前記読み出し回路との間に設けられた中継部材と、
を有し、
前記複数の画素の各々は、
互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層と、
前記複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプと、
前記複数の吸収層毎に設けられた出力バンプと、
を有し、
前記出力バンプは、前記読み出し回路に設けられた入力バンプに接続され、
前記バイアスバンプは、前記読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプに、前記中継部材に設けられた中継配線を介して接続されていることを特徴とする赤外線撮像装置。
【0065】
(付記2)
前記中継部材には、前記出力バンプ及び前記入力バンプがその内部で接触する貫通孔が形成されていることを特徴とする付記1に記載の赤外線撮像装置。
【0066】
(付記3)
前記中継部材は、前記貫通孔の側面を覆う絶縁膜を有することを特徴とする付記2に記載の赤外線撮像装置。
【0067】
(付記4)
前記出力バンプは、前記バイアスバンプよりも大きいことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0068】
(付記5)
前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記中継部材の熱膨張率との差は、前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記読み出し回路の熱膨張率との差以下であることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0069】
(付記6)
前記中継部材と前記赤外線イメージセンサとがフリップチップボンディングされ、
前記読み出し回路と前記赤外線イメージセンサとが、前記中継部材を間に介在させてフリップチップボンディングされていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0070】
(付記7)
前記赤外線イメージセンサは、
前記複数の画素を含む画素アレイと、
前記画素アレイの外側に設けられ、第2の中継配線を備えた中継部と、
を有し、
前記第2の中継配線を介して、前記バイアス供給バンプと前記中継部材の前記中継配線とが接続されていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0071】
(付記8)
前記赤外線イメージセンサは、
前記第2の中継配線に接続された第1のバンプと、
前記第2の中継配線及び前記バイアス供給バンプに接続された第2のバンプと、
を有し、
前記中継部材は、前記中継配線及び前記第1のバンプに接続された中継バンプを有することを特徴とする付記7に記載の赤外線撮像装置。
【0072】
(付記9)
前記中継部材には、前記第2のバンプ及び前記バイアス供給バンプがその内部で接触する第2の貫通孔が形成されていることを特徴とする付記8に記載の赤外線撮像装置。
【0073】
(付記10)
前記中継部材は、前記第2の貫通孔の側面を覆う第2の絶縁膜を有することを特徴とする付記9に記載の赤外線撮像装置。
【符号の説明】
【0074】
100:赤外線イメージセンサ
157、158:出力バンプ
159:バイアスバンプ
160a:低バンプ
160b:高バンプ
180:画素
181:画素アレイ
182:中継部
200:中継部材
205a:貫通孔
210:バンプ
211:中継バンプ
300:読み出し回路
302、303:入力バンプ
304:バイアス供給バンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線撮像装置には、赤外線イメージセンサ、読み出し回路及び光学系等が備えられている。赤外線イメージセンサには、赤外線の入射量に応じた電気信号を発生する画素が2次元状に配列した画素アレイが設けられている。画素には、例えば量子井戸型赤外線センサ(QWIP:quantum well infrared photodetector)が用いられている。また、画素毎に2種類の吸収層が設けられた2波長の赤外線が検出可能な赤外線イメージセンサもある。
【0003】
但し、2波長の赤外線が検出可能な赤外線イメージセンサでは、画素毎に、バイアス用のバンプ及び吸収層毎のバンプが必要とされる。つまり、画素毎に3個のバンプが必要される。このため、単波長の赤外線が検出可能な赤外線イメージセンサと比較して、バンプの密度が高く、赤外線イメージセンサと読み出し回路とをフリップチップボンディングにより大きな加重が必要とされ、接続不良が生じやすい。この傾向は、特に、画素数を多くするほど顕著になる。
【0004】
更に、赤外線イメージセンサは主に化合物半導体を用いて構成されているのに対し、読み出し回路の基板にシリコンが用いられている。赤外線イメージセンサは低温で動作するため、動作時にはこれらの熱膨張率の相違により、バンプに大きな熱ストレスが作用する。このため、大きなバンプを用いることが好ましいが、バンプが大きくなるほど、画素内でのバンプ間の最短距離が短くなり、短絡が生じやすくなる。
【0005】
そこで、画素同士を分離する分離溝内にバイアス用の配線を設け、この配線を画素アレイの外部まで引き回し、そこから読み出し回路に接続する構成が提案されている。この構成によれば、画素毎に必要とされるバンプの数は2個となる。
【0006】
しかしながら、この構造では、バイアス用の配線の領域を確保するために、分離溝の幅を広げる必要がある。この結果、バイアス用の配線が存在しない場合と比較して、有効画素面積を一定とすると、画素アレイが大きくなってしまい、画素ピッチを一定とすると、有効画素面積が小さくなってしまう。前者であれば、赤外線イメージセンサの微細化が困難になり、後者であれば、感度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Infrared Physics & Technology 50 (2007) 217-226
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、画素毎のバンプが増加してもフリップチップボンディングを適切に行うことができる赤外線撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
赤外線撮像装置には、複数の画素が配列した赤外線イメージセンサと、前記赤外線イメージセンサから信号を読み出す読み出し回路と、前記赤外線イメージセンサと前記読み出し回路との間に設けられた中継部材と、が設けられている。前記複数の画素の各々には、互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層と、前記複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプと、前記複数の吸収層毎に設けられた出力バンプと、が設けられている。前記出力バンプは、前記読み出し回路に設けられた入力バンプに接続され、前記バイアスバンプは、前記読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプに、前記中継部材に設けられた中継配線を介して接続されている。
【発明の効果】
【0010】
上記の赤外線撮像装置によれば、中継部材が赤外線イメージセンサと読み出し回路との間に設けられているため、画素毎のバンプが増加してもフリップチップボンディングを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】赤外線イメージセンサに設けられたバンプを示す図である。
【図2】実施形態に係る赤外線撮像装置の構造を示す断面図である。
【図3】吸収層の構造を示す断面図である。
【図4】バンプ間の最短距離を示す図である。
【図5】フィルファクタを示す図である。
【図6A】赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6B】図6Aに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6C】図6Bに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6D】図6Cに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図6E】図6Dに引き続き、赤外線イメージセンサを製造する方法を示す断面図である。
【図7】中継部材を製造する方法を示す断面図である。
【図8A】赤外線撮像装置を製造する方法を示す断面図である。
【図8B】図8Aに引き続き、赤外線撮像装置を製造する方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、実施形態に係る赤外線撮像装置の赤外線イメージセンサに設けられたバンプを示す図であり、図2は、実施形態に係る赤外線撮像装置の構造を示す断面図である。図2は、図1中のI−I線に沿った断面を示している。
【0013】
図1に示すように、赤外線イメージセンサ100には、複数の画素180が2次元状に配列した画素アレイ181が設けられている。また、画素アレイ181の外側に中継部182が設けられている。各画素180に、2個の出力バンプ157及び158、並びに1個のバイアスバンプ159が設けられている。各画素180には、コンタクトホール121及び122も形成されている。
【0014】
図2に示すように、基板101上にi−GaAs層102がバッファ層として形成されている。基板101は、例えば、表面のミラー指数が(100)の絶縁性GaAs基板である。i−GaAs層102の厚さは、例えば1μm程度である。また、i−GaAs層102上にn−GaAs層103が下部電極層として形成され、n−GaAs層103上にn−InGaP層104がエッチングストッパとして形成され、n−InGaP層104上にn−GaAs層105が形成されている。n−GaAs層103、n−InGaP層104、及びn−GaAs層105の厚さは、例えば、それぞれ、0.5μm程度、20nm程度、50nm程度である。n−GaAs層103、n−InGaP層104、及びn−GaAs層105の不純物濃度は、例えば、いずれも、1×1018cm-3程度である。そして、n−GaAs層105上に吸収層106が形成されている。吸収層106としては、例えば多重量子井戸(MQW:multiple quantum well)層が形成されている。なお、バッファ層としてAlGaAs層が形成されていてもよい。
【0015】
吸収層106上にn−GaAs層107がバイアス電極層として形成され、n−GaAs層107上にn−InGaP層108がエッチングストッパとして形成され、n−InGaP層108上にn−GaAs層109が形成されている。n−GaAs層107、n−InGaP層108、及びn−GaAs層109の厚さは、例えば、それぞれ、0.5μm程度、20nm程度、50nm程度である。n−GaAs層107、n−InGaP層108、及びn−GaAs層109の不純物濃度は、例えば、いずれも、1×1018cm-3程度である。そして、n−GaAs層109上に吸収層110が形成されている。吸収層110としては、例えばMQW層が形成されている。
【0016】
吸収層110上にn−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113が上側電極層として形成されている。n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113の総厚は、例えば0.5μm程度であり、n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113の不純物濃度は、例えば、いずれも、1×1018cm-3程度である。また、n−AlGaAs層112のAl組成は、例えば0.3程度である。
【0017】
層103〜113に、画素180同士の境界に沿って平面視で縦横に延びる分離溝151が形成されている。コンタクトホール121は層108〜113に形成され、コンタクトホール122は層104〜113に形成されている。n−GaAs層107のコンタクトホール121から露出した部分上にバイアス電極133が形成されている。n−GaAs層103のコンタクトホール122から露出した部分上に下部電極132が形成されている。下部電極132及びバイアス電極133は、例えばオーミック電極である。更に、層103〜113に、画素アレイ181と中継部182とを分離する溝115が形成されている。
【0018】
また、画素アレイ181では、n−GaAs層113に複数の段差が形成されており、回折格子(光カップラ)114が層111〜113を含んでいる。画素180毎に、回折格子114の一部に上部電極131が形成されている。上部電極131は、例えばn−AlGaAs層112の表面に接するようにして形成されている。そして、回折格子114及び上部電極131を覆うようにして反射金属膜134が形成されている。なお、中継部182では、n−GaAs層113が除去されている。
【0019】
分離溝151、溝115、及びコンタクトホール121〜122の底面及び側面、反射金属膜134、及び中継部182内のn−AlGaAs層112を覆うパッシベーション膜135が形成されている。パッシベーション膜135には、反射金属膜134、下部電極132、及びバイアス電極133を露出する開口部が形成されている。下部電極132には、パッシベーション膜135の開口部を介して反射金属膜134の上方まで延びる下部配線137が接続されている。バイアス電極133には、パッシベーション膜135の開口部を介して反射金属膜134の上方まで延びるバイアス配線138が接続されている。反射金属膜134には、パッシベーション膜135の開口部内に形成された上部配線136が接続されている。
【0020】
下部配線137及びバイアス配線138を覆うパッシベーション膜152がパッシベーション膜135上に形成されている。パッシベーション膜152には、上部配線136を露出する開口部、下部配線137の一部を露出する開口部、及びバイアス配線138の一部を露出するが形成されており、これら開口部内に、それぞれ、下地膜153、下地膜154、及び下地膜155が形成されている。そして、下地膜153上に出力バンプ157が形成され、下地膜154上に出力バンプ158が形成され、下地膜155上にバイアスバンプ159が形成されている。
【0021】
吸収層106には、図3(a)に示すように、互いに交互に積層された複数のi−AlGaAs層141及びn−GaAs層142が含まれている。最下部及び最上部には、i−AlGaAs層141が位置しており、n−GaAs層142の数は、例えば20である。例えば、i−AlGaAs層141のAl組成は0.25程度であり、その厚さは50nm程度であり、n−GaAs層142の不純物濃度は2×1017cm-3程度であり、その厚さは5nm程度である。i−AlGaAs層141は障壁層として機能し、n−GaAs層142は量子井戸層として機能する。
【0022】
一方、吸収層110には、図3(b)に示すように、互いに交互に積層された複数のi−AlGaAs層143及びn−GaInAs層144が含まれている。最下部及び最上部には、i−AlGaAs層143が位置しており、n−GaInAs層144の数は、例えば20である。例えば、i−AlGaAs層143のAl組成は0.3程度であり、その厚さは30nm程度であり、n−GaInAs層144のIn組成は0.2程度であり、その不純物濃度は5×1018cm-3程度であり、その厚さは3nm程度である。
【0023】
このように、吸収層106及び110の構造が相違するため、これらは互いに異なる波長の赤外線を吸収する。
【0024】
中継部182では、パッシベーション膜135上に中継配線139が形成されている。中継配線139はパッシベーション膜152により覆われている。但し、パッシベーション膜152に2個の開口部が形成されており、これら開口部内に、それぞれ、下地膜156a及び下地膜156bが形成されている。そして、下地膜156a上に低バンプ160aが形成され、下地膜156b上に高バンプ160bが形成されている。低バンプ160aが第1のバンプに含まれ、高バンプ160bが第2のバンプに含まれる。
【0025】
例えば、基板101の表面を基準としたバイアスバンプ159の表面の高さ、及び低バンプ160aの表面の高さは互いに同等である。また、例えば、基板101の表面を基準とした出力バンプ157の表面の高さ、出力バンプ158の表面の高さ、及び高バンプ160bの表面の高さは互いに同等である。そして、基板101の表面を基準としたバイアスバンプ159の表面の高さ、及び低バンプ160aの表面の高さは、出力バンプ157の表面の高さ、出力バンプ158の表面の高さ、及び高バンプ160bの表面の高さよりも低くなっている。また、平面視でのバイアスバンプ159及び低バンプ160aのサイズは互いに同等であり、平面視での出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bのサイズは互いに同等である。
【0026】
本実施形態には、図2に示すように、読み出し回路300が設けられている。読み出し回路300には、吸収層110により生成された光電流が入力される入力バンプ302、及び吸収層106により生成された光電流が入力される入力バンプ303が、各画素180に対応するようにして設けられている。読み出し回路300には、更に、赤外線イメージセンサ100にバイアスを供給するバイアス供給バンプ304も設けられている。読み出し回路300ドライバ等の素子を含む基部301の表面を基準とした入力バンプ302、入力バンプ303、及びバイアス供給バンプ304の各表面の高さは、互いに同等である。
【0027】
本実施形態では、更に、赤外線イメージセンサ100と読み出し回路300との間に、中継部材200が設けられている。中継部材200にi−GaAs層204が含まれている。i−GaAs層204に、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160b並びに入力バンプ302、入力バンプ303、及びバイアス供給バンプ304が入り込むことが可能な複数の貫通孔205aが形成されている。i−GaAs層204の赤外線イメージセンサ100側の面及び貫通孔205aの内面がパッシベーション膜206により覆われている。パッシベーション膜206上に、読み出し回路300のバイアス供給バンプ304から供給されたバイアスをバイアスバンプ159に伝達する中継配線207が形成されている。中継配線207はパッシベーション膜208により覆われている。パッシベーション膜208には、中継配線207のバイアスバンプ159と対向する部分を露出する開口部が形成されており、この開口部内に下地膜209が形成されている。パッシベーション膜208には、更に、中継配線207の低バンプ160aと対向する部分を露出する開口部も形成されており、この開口部内に下地膜212が形成されている。そして、下地膜209上にバンプ210が形成され、下地膜212上に中継バンプ211が形成されている。高バンプ160b及びバイアス供給バンプ304が入り込むことが可能な貫通孔205aが第2の貫通孔に含まれる。また、パッシベーション膜206及び208のうち、このような貫通孔205aの内側面を覆う部分が第2の絶縁膜に含まれる。
【0028】
そして、中継部材200及び赤外線イメージセンサ100がフリップチップボンディングにより一体化されている。つまり、バイアスバンプ159とバンプ210とが接続され、低バンプ160aと中継バンプ211とが接続されている。また、貫通孔205a内に出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bが入り込んでいる。
【0029】
更に、中継部材200を間に介在させて、読み出し回路300及び赤外線イメージセンサ100がフリップチップボンディングにより一体化されている。つまり、入力バンプ302、入力バンプ303、及びバイアス供給バンプ304も貫通孔205a内に入り込み、貫通孔205a内で、出力バンプ157と入力バンプ302とが接続され、出力バンプ158と入力バンプ303とが接続され、高バンプ160bとバイアス供給バンプ304とが接続されている。
【0030】
このように構成された赤外線撮像装置では、読み出し回路300のバイアス供給バンプ304から、高バンプ160b、中継配線139、低バンプ160a、中継配線207、バンプ210、バイアスバンプ159、及びバイアス配線138を介して、バイアス電極層として機能するn−GaAs層107にバイアスが印加される。また、吸収層106により生成された光電流は、下部配線137、出力バンプ158、及び入力バンプ303を介して読み出し回路300に読み出され、吸収層110により生成された光電流は、上部配線136、出力バンプ157、及び入力バンプ302を介して読み出し回路300に読み出される。従って、2種類の波長の赤外線の検出に伴う撮像が可能である。
【0031】
更に、本実施形態では、読み出し回路300に接続される1画素当たりのバンプの数は2個である。このため、バンプ数の増加に伴うフリップチップボンディング時の接続不良の増加を回避することができる。更に、出力バンプ157と入力バンプ302との接続、出力バンプ158と入力バンプ303との接続、及び高バンプ160bとバイアス供給バンプ304との接続が貫通孔205a内で行われているため、フリップチップボンディング時にこれらに変形が生じたとしても、バンプ同士の短絡は極めて生じにくい。
【0032】
また、中継部材200に主に赤外線イメージセンサ100と同様の材料が用いられている。その一方で、読み出し回路300には、例えばシリコン基板等が用いられている。つまり、赤外線イメージセンサ100の熱膨張率と中継部材200の熱膨張率との差が、赤外線イメージセンサ100の熱膨張率と読み出し回路300の熱膨張率との差以下である。このため、バイアスバンプ159の平面視でのサイズを出力バンプ157及び158ほど大きくせずとも、中継部材200と赤外線イメージセンサ100とのフリップチップボンディングを適切に行うことが可能である。従って、中継部材200を用いずに読み出し回路に1画素当たり3個のバンプが直接接続される従来技術と比較して、バイアスバンプ159を小型化し、その分だけ出力バンプ157及び158を大型化して耐久性を向上することが可能である。この結果、読み出し回路300と赤外線イメージセンサ100とのフリップチップボンディングをより適切に行うことが可能となる。
【0033】
更に、図4(a)に示すように、出力バンプ157及び158が、平面形状が正方形状の画素180の対角線に沿って配置されているため、図4(b)に示す読み出し回路に1画素当たり3個のバンプ401が直接接続される従来技術(例えば、非特許文献1)と比較して、読み出し回路に直接接続されるバンプ間の最短距離Lminを長く確保することができる。従って、この点でも、バンプ同士の短絡を抑制することが可能である。
【0034】
また、画素同士を分離する分離溝内にバイアス用の配線を設けた構造と比較して、有効画素面積が一定であれば、画素アレイを微細化することができ、画素ピッチが一定であれば、有効画素面積を大きくすることができる。例えば、本実施形態であれば、図5(a)に示すように、画素411のピッチが30μm、構造物の間隔、つまり分離溝412の幅が2μmの場合、画素411の形状は、一辺の長さが28μmの正方形となる。一方、画素411のピッチが30μmであっても、分離溝412内にバイアス用の配線413が存在すると(比較例)、配線413の分だけ分離溝412の幅を広げる必要がある。例えば、図5(b)に示すように、配線413の幅が2μmであり、構造物の間隔、つまり配線413と画素411との間隔が2μmであると、分離溝412の幅は6μmとなり、画素411の形状は、長辺の長さが28μm、短辺の長さが24μmの長方形となる。従って、下記表1に示すように、本実施形態の方が高いフィルファクタが得られる。
【0035】
【表1】
【0036】
次に、赤外線イメージセンサ100を製造する方法について説明する。図6A〜図6Eは、赤外線イメージセンサ100を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0037】
先ず、図6A(a)に示すように、基板101上に、i−GaAs層102、n−GaAs層103、n−InGaP層104、n−GaAs層105、及び吸収層106を結晶成長法により形成する。次いで、吸収層106上に、n−GaAs層107、n−InGaP層108、n−GaAs層109、及び吸収層110を結晶成長法により形成する。その後、吸収層110上に、n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113を結晶成長法により形成する。結晶成長法としては、例えば、分子線エピタキシー(MBE:molecular beam epitaxy)法及び有機金属化学気相堆積(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)法等が挙げられる。
【0038】
続いて、n−GaAs層113の表面に、ウェットエッチングにより深さが0.1μm程度の位置合わせ用マーカーを形成し、これを用いて位置合わせを行う。次いで、n−GaAs層113のパターニングを行い、図6B(b)に示すように、n−GaAs層113に段差を形成する。このパターニングでは、例えば、n−AlGaAs層112をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行う。この結果、n−GaAs層111、n−AlGaAs層112、及びn−GaAs層113を含む回折格子114が形成される。
【0039】
その後、層113〜110のパターニングを行い、図6B(c)に示すように、層113〜110に、画素アレイ181と中継部182とを分離する溝115を形成する。
【0040】
続いて、層113〜108のパターニングを行い、図6B(d)に示すように、層113〜108に、後にバイアス電極133を形成するコンタクトホール121を形成する。このパターニングでは、例えば、n−InGaP層108をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行い、その後に、n−InGaP層108の露出している部分をウェットエッチングする。コンタクトホール121の形成と並行して、後に下部電極132を形成するコンタクトホール122の層113〜108の深さの部分を形成する。
【0041】
次いで、層107〜104のパターニングを行い、図6C(e)に示すように、コンタクトホール122の層107〜104の深さの部分を形成する。このパターニングでは、例えば、n−InGaP層104をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行い、その後に、n−InGaP層104の露出している部分をウェットエッチングする。
【0042】
続いて、図6C(f)に示すように、例えばリフトオフ法により、n−AlGaAs層112上に上部電極131を形成し、n−GaAs層107上にバイアス電極133を形成し、n−GaAs層103上に下部電極132を形成する。このとき、AuGe膜を蒸着し、その後にAu膜を蒸着する。上部電極131、下部電極132、及びバイアス電極133はオーミック電極である。
【0043】
次いで、図6C(g)に示すように、例えばリフトオフ法により、回折格子114上に反射金属膜134を形成する。このとき、Ti膜をスパッタ蒸着し、その後にAu膜をスパッタ蒸着する。
【0044】
その後、図6D(h)に示すように、全面にパッシベーション膜135を形成する。パッシベーション膜135としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。続いて、パッシベーション膜135に、上部電極131を露出する開口部、下部電極132を露出する開口部、及びバイアス電極133を露出する開口部を形成する。これら開口部は、例えばドライエッチングにより形成する。
【0045】
次いで、図6D(i)に示すように、上部電極131と接続される上部配線136、下部電極132と接続される下部配線137、及びバイアス電極133と接続されるバイアス配線138を形成する。上部配線136、下部配線137、及びバイアス配線138の形成では、例えば、Ti膜をスパッタ蒸着し、その後にAu膜をスパッタ蒸着し、これらをイオンミリング法等によりパターニングする。上部配線136、下部配線137、及びバイアス配線138の形成と並行して、中継部182内でパッシベーション膜135上に中継配線139を形成する。
【0046】
その後、層112〜103のパターニングを行い、図6D(j)に示すように、画素180同士を分離する分離溝151を形成する。
【0047】
続いて、図6E(k)に示すように、全面にパッシベーション膜152を形成する。パッシベーション膜152としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。次いで、パッシベーション膜152に、上部配線136の少なくとも一部を露出する開口部、下部配線137の一部を露出する開口部、及びバイアス配線138の一部を露出する開口部を形成する。このとき、中継部182内では、中継配線139の一部を露出する2個の開口部をパッシベーション膜152に形成する。
【0048】
その後、図6F(l)に示すように、例えばリフトオフ法により、パッシベーション膜152の開口部を介して、上部配線136に接続される下地膜153及び出力バンプ157、下部配線137に接続される下地膜154及び出力バンプ158、バイアス配線138に接続される下地膜155及びバイアスバンプ159、中継配線139に接続される下地膜156a及び低バンプ160a、並びに中継配線139に接続される下地膜156b及び高バンプ160bを形成する。下地膜153、154、155、156a、及び156bの形成では、Ti膜を蒸着し、その後にPt膜を蒸着する。バンプ157、158、159、160a、及び160bの形成では、In膜を蒸着する。
【0049】
このようにして、赤外線イメージセンサ100を製造することができる。
【0050】
次に、中継部材200を製造する方法について説明する。図7は、中継部材200を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0051】
先ず、図7(a)に示すように、基板201上に、i−GaAs層202、i−GaInP層203、及びi−GaAs層204を結晶成長法により形成する。結晶成長法としては、例えば、MBE法及びMOCVD法等が挙げられる。基板201は、例えば、基板101と同様に、絶縁性GaAs基板である。i−GaAs層204の厚さは、中継部材200と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングしたときに、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bがi−GaInP層203まで到達しない厚さとする。
【0052】
次いで、i−GaAs層204のパターニングを行い、図7(b)に示すように、i−GaAs層204に、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bが入り込むことが可能な複数の開口部205を形成する。このパターニングでは、例えば、i−GaInP層203をエッチングストッパとして用いた選択性ドライエッチングを行う。
【0053】
その後、図7(c)に示すように、全面にパッシベーション膜206を形成する。パッシベーション膜206としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。続いて、パッシベーション膜206上に中継配線207を形成する。中継配線207の形成では、例えば、Ti膜をスパッタ蒸着し、その後にAu膜をスパッタ蒸着し、これらをイオンミリング法等によりパターニングする。
【0054】
次いで、図7(d)に示すように、全面にパッシベーション膜208を形成する。パッシベーション膜208としては、例えばシリコン窒化膜をプラズマCVD法により形成する。その後、パッシベーション膜208に、中継配線207のバイアスバンプ159と対向する部分を露出する開口部、及び低バンプ160aと対向する部分を露出する開口部を形成する。これら開口部は、例えばドライエッチングにより形成する。続いて、例えばリフトオフ法により、パッシベーション膜208の開口部を介して、画素アレイ181に対向する領域では、中継配線207に接続される下地膜209及びバンプ210を形成し、中継部182に対向する領域では、中継配線207に接続される下地膜212及び中継バンプ211を形成する。
【0055】
このようにして、中継部材200を製造することができる。この中継部材200と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングした後に、基板201、i−GaAs層202、及びi−GaInP層203を除去し、パッシベーション膜206及び208の一部並びにi−GaAs層204の一部を除去すると、中継部材200の状態が図2に示すものとなる。
【0056】
次に、赤外線イメージセンサ100及び中継部材200を用いて赤外線撮像装置を製造する方法について説明する。図8A〜図8Bは、赤外線撮像装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0057】
先ず、図8A(a)に示すように、中継部材200と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングする。このとき、画素アレイ181において、バイアスバンプ159とバンプ210とを接続し、中継部182において、低バンプ160aと中継バンプ211とを接続する。また、出力バンプ157、出力バンプ158、及び高バンプ160bを開口部205内に入り込ませる。
【0058】
次いで、図8A(b)に示すように、例えば、i−GaInP層203をエッチングストッパとして用いたウェットエッチングを行い、中継部材200から基板201及びi−GaAs層202を除去する。
【0059】
その後、図8B(c)に示すように、i−GaInP層203をウェットエッチングにより除去する。更に、i−GaAs層204の開口部205の底部に残存するパッシベーション膜206及び208をドライエッチングにより除去し、貫通孔205aを形成する。
【0060】
続いて、図8B(d)に示すように、中継部材200を間に介在させて、読み出し回路300と赤外線イメージセンサ100とをフリップチップボンディングする。このとき、画素アレイ181において、貫通孔205a内で、出力バンプ157と入力バンプ302とを接続し、出力バンプ158と入力バンプ303とを接続する。また、中継部182において、貫通孔205a内で、高バンプ160bとバイアス供給バンプ304とを接続する。
【0061】
このようにして、赤外線撮像装置を製造することができる。
【0062】
なお、赤外線イメージセンサに含まれる各層の材料は特に限定されない。例えば、吸収層として、量子ドット、量子細線又は量子箱等を含む半導体層等が用いられてもよい。また、赤外線を吸収可能な禁制帯幅を有するバルク半導体材料(HgCdTe及びInSb等)を含む半導体層が用いられてもよく、半導体超格子材料(InAs/GaSb超格子)を含む半導体層が用いられてもよい。また、MQW層に、InGaAs層とInAlAs層との組み合わせ、InGaAs層とInP層との組み合わせ、又はSi層とSiGe層との組み合わせ等が用いられていてもよい。また、赤外線イメージセンサ及び中継部材がInP系材料を用いて構成されていてもよい。
【0063】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0064】
(付記1)
複数の画素が配列した赤外線イメージセンサと、
前記赤外線イメージセンサから信号を読み出す読み出し回路と、
前記赤外線イメージセンサと前記読み出し回路との間に設けられた中継部材と、
を有し、
前記複数の画素の各々は、
互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層と、
前記複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプと、
前記複数の吸収層毎に設けられた出力バンプと、
を有し、
前記出力バンプは、前記読み出し回路に設けられた入力バンプに接続され、
前記バイアスバンプは、前記読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプに、前記中継部材に設けられた中継配線を介して接続されていることを特徴とする赤外線撮像装置。
【0065】
(付記2)
前記中継部材には、前記出力バンプ及び前記入力バンプがその内部で接触する貫通孔が形成されていることを特徴とする付記1に記載の赤外線撮像装置。
【0066】
(付記3)
前記中継部材は、前記貫通孔の側面を覆う絶縁膜を有することを特徴とする付記2に記載の赤外線撮像装置。
【0067】
(付記4)
前記出力バンプは、前記バイアスバンプよりも大きいことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0068】
(付記5)
前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記中継部材の熱膨張率との差は、前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記読み出し回路の熱膨張率との差以下であることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0069】
(付記6)
前記中継部材と前記赤外線イメージセンサとがフリップチップボンディングされ、
前記読み出し回路と前記赤外線イメージセンサとが、前記中継部材を間に介在させてフリップチップボンディングされていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0070】
(付記7)
前記赤外線イメージセンサは、
前記複数の画素を含む画素アレイと、
前記画素アレイの外側に設けられ、第2の中継配線を備えた中継部と、
を有し、
前記第2の中継配線を介して、前記バイアス供給バンプと前記中継部材の前記中継配線とが接続されていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【0071】
(付記8)
前記赤外線イメージセンサは、
前記第2の中継配線に接続された第1のバンプと、
前記第2の中継配線及び前記バイアス供給バンプに接続された第2のバンプと、
を有し、
前記中継部材は、前記中継配線及び前記第1のバンプに接続された中継バンプを有することを特徴とする付記7に記載の赤外線撮像装置。
【0072】
(付記9)
前記中継部材には、前記第2のバンプ及び前記バイアス供給バンプがその内部で接触する第2の貫通孔が形成されていることを特徴とする付記8に記載の赤外線撮像装置。
【0073】
(付記10)
前記中継部材は、前記第2の貫通孔の側面を覆う第2の絶縁膜を有することを特徴とする付記9に記載の赤外線撮像装置。
【符号の説明】
【0074】
100:赤外線イメージセンサ
157、158:出力バンプ
159:バイアスバンプ
160a:低バンプ
160b:高バンプ
180:画素
181:画素アレイ
182:中継部
200:中継部材
205a:貫通孔
210:バンプ
211:中継バンプ
300:読み出し回路
302、303:入力バンプ
304:バイアス供給バンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配列した赤外線イメージセンサと、
前記赤外線イメージセンサから信号を読み出す読み出し回路と、
前記赤外線イメージセンサと前記読み出し回路との間に設けられた中継部材と、
を有し、
前記複数の画素の各々は、
互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層と、
前記複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプと、
前記複数の吸収層毎に設けられた出力バンプと、
を有し、
前記出力バンプは、前記読み出し回路に設けられた入力バンプに接続され、
前記バイアスバンプは、前記読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプに、前記中継部材に設けられた中継配線を介して接続されていることを特徴とする赤外線撮像装置。
【請求項2】
前記中継部材には、前記出力バンプ及び前記入力バンプがその内部で接触する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項3】
前記中継部材は、前記貫通孔の側面を覆う絶縁膜を有することを特徴とする請求項2に記載の赤外線撮像装置。
【請求項4】
前記出力バンプは、前記バイアスバンプよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項5】
前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記中継部材の熱膨張率との差は、前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記読み出し回路の熱膨張率との差以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項1】
複数の画素が配列した赤外線イメージセンサと、
前記赤外線イメージセンサから信号を読み出す読み出し回路と、
前記赤外線イメージセンサと前記読み出し回路との間に設けられた中継部材と、
を有し、
前記複数の画素の各々は、
互いに相違する波長の赤外線を吸収する複数の吸収層と、
前記複数の吸収層にバイアスを印加するバイアスバンプと、
前記複数の吸収層毎に設けられた出力バンプと、
を有し、
前記出力バンプは、前記読み出し回路に設けられた入力バンプに接続され、
前記バイアスバンプは、前記読み出し回路に設けられたバイアス供給バンプに、前記中継部材に設けられた中継配線を介して接続されていることを特徴とする赤外線撮像装置。
【請求項2】
前記中継部材には、前記出力バンプ及び前記入力バンプがその内部で接触する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項3】
前記中継部材は、前記貫通孔の側面を覆う絶縁膜を有することを特徴とする請求項2に記載の赤外線撮像装置。
【請求項4】
前記出力バンプは、前記バイアスバンプよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項5】
前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記中継部材の熱膨張率との差は、前記赤外線イメージセンサの熱膨張率と前記読み出し回路の熱膨張率との差以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【公開番号】特開2012−129247(P2012−129247A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277168(P2010−277168)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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