説明

走行制御装置

【課題】自車走行路の制限速度を的確に推定する。
【解決手段】フロントカメラ4およびリアカメラ5による撮像画像情報を画像処理し、走行車線の幅員、走行車線の左右の区画線の線種、左側の歩道と車道外側線部間(路肩)の幅員、中央帯の幅員などを検出する。これら情報とナビゲーション装置2からの道路種別情報とから自車走行路の“道路の区分”を予測し、この“道路の区分”に対して予め規定されている設計速度を推定する(ステップS1〜S5)。さらに、ナビゲーション装置2から道路勾配および道路曲線半径情報を獲得し、自車走行路の道路勾配および道路曲線半径に対して予め規定されている設計速度を推定する(ステップS6、S7)。そして、“道路の区分”および道路勾配、道路曲線半径に基づき推定した設計速度から自車走行路の設計速度を推定し、これを自車走行路の推定制限速度とする(ステップS8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を、設定車速で自動走行させるのに好適な走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設定速度で車両を自動走行させる走行制御装置を搭載した車両が提案されている。
また、このような走行制御装置を搭載した車両において、周囲車両の走行状態に基づき自動走行させるようにした走行制御装置も提案されている。すなわちこの走行制御装置では、同じように走行制御装置を搭載している自動走行中の周囲車両から、その走行制御装置における設定速度を獲得し、獲得した周囲車両の設定速度を、自車両の設定速度として設定する。つまり、周囲車両の設定速度は走行路に設定された制限速度を満足しているものとみなして周囲車両の設定速度を自車両の設定速度としている。
【0003】
また、自動走行中の周囲車両の設定速度を獲得することができない場合には、地図データ入力器内の地図データに記憶されている道路情報としての属性データ(一般道や高速道路等の道路種別データ)に基づいて、走行中の道路に設定されている制限速度を自車両の設定速度として設定する。そして、自車両が設定速度で走行するように走行制御を行うことによって、制限速度を守って自車両を走行させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−075303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、上述のように、属性データ(一般道や高速道路等の道路種別データ)に基づいて、自車両の自動走行制御における設定速度として設定する構成としたため、必ずしも適切な制限速度を認識していることにはならない。実際の制限速度は、道路形状によって決まる部分もあるので、道路形状の情報がないと的確な制限速度を推定できない。
そこで、この発明は上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、自車走行路の制限速度を的確に推定することの可能な走行制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る走行制御装置は、ナビゲーション装置によって獲得した自車走行路の道路種別を表す道路種別情報と自車走行路を撮像した画像を処理して得た、幅員、路肩幅の情報を有する自車走行路の道路形状情報とで、道路種別をさらに分類して予め規定された設計速度を参照することで自車走行路の制限速度を推定し、推定した制限速度を報知する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る走行制御装置によれば、自車走行路の道路種別情報と、道路形状とから、予め規定された設計速度とに基づき自車走行路の制限速度を推定し、推定した制限速度を報知することによって、自車走行路の適切な制限速度を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】各種センサの配置位置を説明する説明図である。
【図3】制限速度推定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】道路勾配に基づく設計速度の推定手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】道路勾配の特定方法を説明する説明図である。
【図6】道路曲線半径に基づく設計速度の推定手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】カーブ曲線半径値の特定方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(構成)
図1は、本発明の走行制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、走行制御装置1は、ナビゲーション装置2と、カメラコントローラ3と、フロントカメラ4と、リアカメラ5と、ソナーセンサ6と、制限速度推定部7と、車速センサ8と、を備える。
【0010】
ナビゲーション装置2は、自車位置周辺の地図情報および経路情報を提示するものであり、GPS受信機11と、データベース12と、ナビゲーション処理部13と、表示器14と、警報発生装置15と、を備える。このナビゲーション装置2は、公知のナビゲーション装置と同等の機能を有する。
GPS受信機11は、例えば4つ以上のGPS衛星から到着する電波の時間差によって、自車両の位置(緯度、経度、高度)と進行方向とを計算する。
【0011】
データベース12は、ナビゲーション用の、道路情報を含む地図情報を保持するものである。道路種別、道路曲線半径、道路勾配などの道路構造に関する情報や、制限速度情報、リンクID情報などを含めた道路地図情報を記憶している。なお、リンクID情報には道路種別を含む道路情報データが付随して設けられている。なお、道路種別とは国道であるか、県道であるか、高速道路であるかなどの道路の種別を表す情報である。
【0012】
ナビゲーション処理部13は、現在位置表示および経路誘導に必要な各種の処理を行う。また、ナビゲーション処理部13は、車速センサから求まる移動距離、ジャイロから求まる車両の旋回角度、加速度センサから求まる車両の傾斜角度、及び高さ変化量など、図示しない各種センサからの検出情報並びにGPS受信機11から求まる車両の進行方向に基づいて、車両の走行位置(現在位置)を演算する。この演算された現在位置とデータベース12から読込んだ道路地図情報とを比較することにより現在位置を特定し、表示器14に道路地図情報とともに現在位置マークとして表示する。また、ナビゲーション処理部13は、経路誘導や制限車速情報の表示器14への表示なども行う。
【0013】
フロントカメラ4は、図2に示すように車両前方を撮像可能な位置に配置され、例えばバックミラーの裏側などに配置される。フロントカメラ4は、自車走行路全体の区画線、中央帯の幅員や路肩の幅員、対向車線を含む道路全体を撮像する。
リアカメラ5は、車両後退時に用いられる車両後方を撮像するリヤビューカメラで構成され、自車走行路全体の区画線、中央帯の幅員や路肩の幅員などを撮像する。
【0014】
カメラコントローラ3は、フロントカメラ4およびリアカメラ5による撮像画像情報を画像処理し、走行車線の幅員、自車走行行路全体の区画線の線幅および並び順、左側の歩道と車道外側線部間(路肩)の幅員、中央帯の幅員などを検出し、検出結果を検出情報として制限速度推定部7に出力する。また、制限速度推定部7を介してソナーセンサ6からの検出情報を獲得し、ソナーセンサ6の検出情報も利用して前記各情報を検出する。例えば、周囲を塀に囲まれた細い道路において左右に塀を検出したとき、歩道と車道との境界に設けられたガードレールを検出したとき、歩道沿いの壁などを検出したとき、中央帯に設けられた柵を検出したときなどには、これらの検出位置情報も利用して、歩道と車道との境界位置の特定、或いは中央帯と車線との境界位置の特定などを行う。
【0015】
ソナーセンサ6は、例えば、車両前後左右の4隅や、中央部などに複数設けられ、自車両の周辺に存在する物体までの距離を検出し、検出した距離を制限速度推定部7に出力する。
制限速度推定部7は、カメラコントローラ3からの各種検出情報およびソナーセンサ6の検出情報、ナビゲーション処理部13からの現在位置情報やデータベース12の各種情報などをもとに制限速度推定処理を行う。この制限速度推定処理は、自車両が現在走行中の道路の制限速度を推定する処理である。制限速度推定部7は、制限速度推定処理で推定した推定制限速度を表示器14に表示する。また、車速センサ8で検出した自車速が推定制限速度を上回るときには警報発生装置15を作動させてドライバに警告する。
【0016】
(制限速度推定処理の具体的な手順)
次に、図3のフローチャートを用いて、制限速度推定部7で実行される制限速度の推定を行う制限速度推定処理の処理手順を説明する。
制限速度推定部7では、まずステップS1で、ナビゲーション処理部13から自車両の現在位置情報およびリンクID情報を獲得する。そして、これら自車両の現在位置情報およびリンクID情報に基づき、自車両が走行中の道路(以下、自車走行路ともいう)について、道路構造令で規定される“道路の区分”における“種別”を特定する。また特定した種別から大まかな道路等級を特定する。
【0017】
この“道路の区分における種別”は、高速自動車国道、自動車専用道路、一般国道、都道府県道、市町村道などといった道路種別に応じて第一種〜第四種に分類される。前記各種道路は、高速自動車国道および自動車専用道路とその他の道路とに分類され、かつ地方部と都市部とに分類される。
“道路の区分における種別”の特定は、データベース12の情報をもとに行う。すなわち、データベース12から、自車両の現在位置における道路のリンクの識別子であるリンクIDを獲得し、このリンクIDに付随した道路情報データから、この道路種別データに含まれる道路種別の情報を獲得する。
【0018】
このようにして獲得した道路種別の情報と、自車両の現在位置情報とから、“道路の区分における種別”を特定する。すなわち、まず、自車両の現在位置情報から、現在走行中の道路の存在する地域が、都市部(市街地を形成している地域又は市街地を形成する見込みの多い地域)であるか地方部(都市部以外の地域)であるかを判定する。都市部であるか地方部であるかは、例えばデータベース12に位置情報と対応付けて登録しておき、市街地であるか地方部であるかを表す情報が付加された現在位置情報を獲得するようにすればよい。
【0019】
そして、現在位置情報から、現在位置が市街地であるか地方部であるかを特定し、これと、獲得した道路種別の情報とに基づき、道路構造令で定められている表1に示す「“道路の区分における種別”の規定」から、“道路の区分における種別”を特定する。さらに、特定した“道路の区分における種別”に基づき、表2〜表5から“道路の区分における種別”をさらに区分した“道路の区分における級”(以下、“道路等級”ともいう。)を推定する。例えば、“道路の区分における種別”で、第一種の道路であると特定された場合には、表2を参照し、“道路の区分における種別”が高速道路以外の道路であれば、“道路等級”は第二級〜第四級のいずれかであると推定することができる。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
次にステップS2に移行し、走行路の車線数と走行車線の幅員とから、“道路等級”を絞り込む。
走行車線の幅員は、カメラコントローラ3において撮像画像を画像処理して得た走行車線の幅員を用いる。
また、前記走行路の車線数は、カメラコントローラ3から自車走行路全体の区画線の線幅およびその並び順を獲得し、これをもとに推定する。
【0026】
具体的には、まず、自車走行路全体の区画線の線幅およびその並び順から、走行中の道路が往復4車線道路か、往復2車線道路か、往復1車線道路かを判断する。
ここで、中央線や、車線境界線、車道外側線の線幅は、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」において規定されている。つまり、中央線は0.15m以上、0.2m未満、車線境界線は、0.1m以上〜0.15m未満、車道外側線は0.1m以上〜0.15m未満と規定されている。
【0027】
したがって、カメラコントローラ3からの自車走行路全体の区画線の線幅およびその並び順をもとに往復何車線道路かを推定することができる。例えば、中央線があり、車線境界線のある交互通行道路であれば往復4車線道路であると推測することができる。中央線があり、車線境界線のない交互通行道路であれば往復2車線道路であると推測することができる。中央線のない交互通行道路であれば往復1車線道路であると推測することができる。
【0028】
また、車線の幅員は、“道路の区分”(種別および級)に応じて、道路構造令で表6に示すように、定められている。
したがって、“道路の区分における種別”と、車線の幅員とに基づき、表6から“道路等級”と普通道路であるか小型道路であるかを表す普通道路/小型道路の別を推定することができる。
【0029】
まず、カメラコントローラ3から獲得した走行車線の幅員と、ステップS1で特定した“道路の区分における種別”とに基づき、表6に示す「車線の幅員の規定」から、“道路等級(普通道路/小型道路の別)”を推定する。そして、表6から推定した“道路等級(普通道路/小型道路の別)”と、ステップS1で推定したリンクID情報に基づき推定される“道路等級”との両方に含まれる“道路等級”を、車線の幅員による“道路等級”の絞り込み結果とする。
【0030】
さらに、特定した走行車線の数から、“道路等級”を絞り込む。
ここで、車線数は、“道路の区分(種別および級)”に応じて、道路構造令の第五条の2で定められている。具体的には、第一種第一級、第二種、第三種第一級の道路の走行車線数は往復2車線より多い車線数、第三種第五級または第四種第四級の道路の走行車線数は1車線、上記以外の“道路の区分”に含まれる道路の走行車線数は2車線と定められている。
【0031】
したがって、走行車線数が往復2車線道路よりも多い場合には、道路構造令の第五条の2より、“道路の区分”は、第一種第一級、第二種、第三種第一級のいずれかであると推定することができ、走行車線数が1車線の場合には、第三種第五級または第四種第四級であると推定することができ、走行車線数が往復2車線道路である場合には、第一種第二級〜第一種第四級、第三種第二級〜第三種第四級、第四種第一級〜第四種第三級のいずれかであると推定することができる。
そして、車線の幅員による“道路等級”の絞り込み結果と、走行車線から推定した“道路等級”の両方に含まれる“道路等級”を、ステップS2での絞り込み結果とする。
【0032】
【表6】

【0033】
次にステップS3に移行し、カメラコントローラ3において画像処理した結果得た歩道と車道外側線部間(路肩)の幅員に基づき、“道路等級”(第一〜第四級別)を絞り込む。
ここで、車道の左側に設ける路肩の幅員は、“道路の区分”に応じて、道路構造令で表7及び表8に示すように定められている。
したがって、歩道と外側線部間(路肩)の幅員と、“道路の区分における種別”と、表7または表8から“道路等級”を推定することができる。
具体的には、まず、車線を往復の方向別に分離する道路であるか否かを判断する。この判断は、カメラコントローラ3で画像処理を行い、例えば中央帯の柵があるかどうかを判断し、柵があるときに往復分離道路であると判断する。
【0034】
そして、“道路の区分における種別”が第一種であり且つ往復分離道路であるときには、表7を参照し、そうでないときには表8を参照して、“道路等級”を推定する。なお、表7および表8において、それぞれ左欄に記載の数値を参照する(右側は、例外の場合の数値を表しているため)。
そして、路肩の幅員から推定した“道路等級”と、ステップS2で絞り込んだ“道路等級”との両方に含まれる“道路等級”を、路肩の幅員による“道路等級”の絞り込み結果とする。
【0035】
【表7】

【0036】
【表8】

【0037】
次にステップS4に移行し、中央帯の幅員に基づき“道路等級”(第一級〜第四級別)を絞り込む。
ここで、中央帯の幅員は、“道路の区分”に応じて、道路構造令で表9に示すように定められている。
したがって、カメラコントローラ3において撮像情報を画像処理して得た中央帯の幅員と、ステップS1で特定した“道路の区分における種別”とに基づき、表9から“道路等級”を推定することができる。なお、表9において、左側の数値を参照する(右側の数値は例外の場合を表すため)。
そして、中央帯の幅員から推定した“道路等級”と、ステップS3で絞り込んだ“道路等級”との両方に含まれる“道路等級”を中央帯の幅員による“道路等級”の絞り込み結果とする。
【0038】
【表9】

【0039】
次にステップS5に移行し、ステップS1〜ステップS4で絞り込んで得られた“道路の区分”に基づき、設計速度を推定する。
ここで、道路の設計速度は、“道路の区分(種別および級)”に応じて、道路構造令で表10に示すように定められている。
したがって、絞り込んだ“道路の区分”に基づき、表10から設計速度を推定することができる。なお、表10において、左側の数値を参照する(右側の数値は例外の場合を表すため)。
【0040】
例えば、表10では、“道路の区分”が第四種第一級の場合、設計速度(単位 一時間につきキロメートル)の規定値は「60」と定められている。したがって、絞り込んだ“道路の区分”が第四種第一級(普通道路)の場合には、設計速度は「60」と推定することができる。
なお、表10において、推定した“道路の区分”に対応する設計速度として複数の設計速度が設定されている場合には、設定されている複数の設計速度のうち最小のものを走行中の道路の設計速度として獲得する。
【0041】
また、推定した“道路の区分”が、第三種第四級である場合には、第三種第四級の設計速度と第三種第五級の設計速度とを、走行中の道路の設計速度として推定する。つまり、“50、40、30または20”とし、最終的に“20”を走行中の道路の設計速度として獲得する。そして、このようにして獲得した設計速度を、走行中の道路における推定制限速度とする。
【0042】
【表10】

【0043】
次にステップS6に移行し、自車走行路における道路勾配をもとに走行中の道路の、道路構造令に基づく設計速度を推定する。この推定手順は後述する。
次にステップS7に移行し、自車走行路における道路曲線半径をもとに、走行中の道路の、道路構造令に基づく設計速度を推定する。この推定手順は後述する。
次にステップS8に移行し、走行中の道路における推定制限速度を推定する。
【0044】
具体的には、道路勾配に基づき推定した設計速度と道路曲線半径に基づき推定した設計速度との両方が存在する場合には、これらのうちいずれか小さい方を選択し、これを走行中の道路の推定制限速度とする。一方、道路勾配に基づき推定した設計速度および道路曲線半径に基づき推定した設計速度のうちいずれか一方のみが存在する場合には推定した設計速度を走行中の道路の推定制限速度とする。また、道路勾配に基づき推定した設計速度および道路曲線半径に基づき推定した設計速度のいずれも存在しない場合には、ステップS5の処理で得た、推定した“道路の区分(種別および級)”に応じた設計速度を走行中の道路の推定制限速度とする。
【0045】
以上の処理により走行中の道路の推定制限速度が推定される。
そしてステップS9に移行し、推定した推定制限速度を表示器14に表示する。
次いで、ステップS10に移行し、車速センサ8から獲得した自車速と推定制限速度とを比較し、自車速が推定制限速度を上回るときにはステップS11に移行して警報発生装置15を作動させ、ドライバに警告する。一方、ステップS10で自車速が推定制限速度以下である場合には警報を発することなくそのまま処理を終了する。
【0046】
なお、ステップS1からステップS4では、リンクID情報、走行車線の幅員、自車走行路の車線数、路肩の幅員、中央帯幅員のそれぞれに基づき、“道路等級”の絞り込みを行っている。しかしながら、上述のように複数の要素を考慮して“道路等級”の絞り込みを行っているため、“道路の区分(種別および級)”を一つに絞り込むことができれば必ずしも全ての要素を用いて絞り込みを行う必要はない。例えば、一つに絞り込むことができた時点で絞り込みを終了するようにしてもよい。
【0047】
また、路肩の幅員が1m以上の場合には、表7から“道路の区分”は、“第一種”、“第二種”、“第三種第一級(普通道路)”と推定することができる。そして、前述のように、車線数が“2”より多いときには、“道路の区分”は、“第一種第一級”、“第二種”、“第三種第一級”と規定されている。よって、これらから路肩の幅員が1m以上のときには、車線数は2より多いと推定することができる。
したがって、この情報も用いて“道路の区分”の絞り込みを行うようにしてもよい。
【0048】
次に、前記ステップS6における道路勾配に基づく設計速度の推定手順を、図4のフローチャートに基づいて説明する
まず、ステップS11で、道路勾配が変化しているポイント(以下、勾配変化ポイントという)を検出する。
具体的には、データベース12に格納されている道路勾配の情報を獲得し、これに基づき、自車両前方所定範囲以内、例えば、250〔m〕以内の範囲で勾配変化ポイントが存在するかを判断する。勾配変化ポイントの検出方法は、道路勾配の変化量が予め設定した閾値よりも大きいときに、勾配変化ポイントであると判断する。前記勾配変化ポイントであると判断する閾値は、“道路の区分における種別”に応じて設定される。つまり、この閾値は、道路構造令に基づき設計速度を推定するにあたり、道路勾配を考慮すべきか否かを判定するための閾値であって、例えば、“道路の区分”が第一種から第三種の道路では2度以上の値に設定され、第四種道路では5度以上の値に設定される。
【0049】
次にステップS12に移行し、勾配変化ポイントが検出されなければそのまま処理を終了する。すなわち、道路勾配に基づく、走行中の道路の設計速度の推定は行わない。
一方、ステップS11で勾配変化ポイントが検出されたときにはステップS12からステップS13に移行し、仮の勾配エリアの切り出しを行う。具体的には、図5(a)、(b)に示すように、勾配変化ポイントのうち最も自車両に近い勾配変化ポイントn1を選択し、この勾配変化ポイントn1の1つ前のノードn0から数えて10ノード(n10)までの間の計10点のノードからなるエリアを仮の勾配エリアとして切り出す。
【0050】
次にステップS14に移行しSub勾配エリアの切り出しを行う。この切り出しは、ステップS13で切り出した仮の勾配エリア内に、勾配が生じている勾配エリアが複数存在するときにのみ行う。具体的には、図5に示すように、勾配変化ポイント毎に、勾配変化ポイントとなるノードを起点として勾配が終了するノードまでからなるエリアをSub勾配エリアとして切り出す。
【0051】
図5(a)は、道路勾配が、登りの6%勾配から登りの10%勾配に変化する場合を表したものである。なお縦軸は標高を表す。
図5(a)の場合には勾配変化ポイントは2つ(n1,n7)として検出され、仮の勾配エリアの起点のノードをn0とし、終点のノードをn10としたとき、1つ目の登りの勾配変化ポイントであるノードn1を起点として登り勾配が終了するノードn4までのエリアがSub勾配エリアa1として切り出され、2つ目の登りの勾配変化ポイントであるノードn7からn9までのエリアがSub勾配エリアa2として切り出される。
【0052】
また、図5(b)は、道路勾配が登りの6%勾配から下りの10%勾配に変化する場合を表したものである。
図5(b)の場合には勾配変化ポイントは2つとして検出され、1つ目の登りの勾配変化ポイントであるノードn1を起点として登り勾配が終了するノードn4までのエリアがSub勾配エリアa1′として切り出され、2つ目の下りの勾配変化ポイントであるノードn7からn9までのエリアがSub勾配エリアa2′として切り出される。
次にステップS15に移行し、道路勾配に基づく設計速度の推定を行うか否かを判断する。
【0053】
具体的には、まず、Total勾配エリアを演算する。仮の勾配エリア内に勾配変化ポイントが複数ある場合には、ステップS14で切り出したSub勾配エリアの距離の和をTotal勾配エリアとする。
例えば図5(a)の場合、Sub勾配エリアa1は、ノードn1からn4の範囲であるため、Sub勾配エリアの距離は、“ノード間距離×3”で表される。例えばナビゲーション装置から通知されるノード間距離node=25〔m〕であるときには、Sub勾配エリアa1の距離は“ノード間距離node=25×3”=75〔m〕となる。また、Sub勾配エリアa2の距離は“ノード間距離node=25×2”=50〔m〕となる。
したがって、Total勾配エリアは、“75〔m〕+50〔m〕=125〔m〕となる。
【0054】
一方、仮の勾配エリア内に勾配変化ポイントが1つしかない場合には、勾配変化ポイントのノードから、勾配が終了するノードまでの間の距離をTotal勾配エリアとする。
例えば、ノードn4で勾配が終了している場合には、勾配変化ポイントn1からノードn4間の距離、すなわち、“ノード間距離node=25×3”をTotal勾配エリアとする。また、例えば、仮の勾配エリアにおいて勾配がずっと継続している場合には、勾配変化ポイントのノードn1から仮の勾配エリア端のノードn10までの間の距離をTotal勾配エリアとする。
【0055】
次に、平坦エリアを算出する。
この平坦エリアは、道路勾配の変化が所定値以下であるエリアをいう。前記所定値は、後述の表11から“道路の区分における種別”に基づき特定される値であって、例えば“道路の区分における種別”が第一種〜第三種の場合には前記所定値は2度とし、第四種の場合には前記所定値は5度とする。
そして、道路勾配の変化が所定値以下となるエリアのノード間距離を演算し、これらの和を平坦エリアとする。例えば、図5(a)に示すように、ノードn0およびノードn1間、ノードn4およびノードn7間、ノードn9およびノードn10間は、それぞれ道路勾配の変化は零であるため、これらノード間の距離の和、すなわち、“25×1+25×3+25×1”が平坦エリアとなる。
【0056】
そして、このようにして求めた、Total勾配エリアと平坦エリアとを比較する。Total勾配エリア≧平坦エリアであるときには、仮の勾配エリアとして切り出したエリアは勾配エリアであると判断し、ステップS16に移行する。一方、Total勾配エリア≧平坦エリアでないときには、仮の勾配エリアとして切り出したエリアは勾配エリアではないと判断し、そのまま処理を終了する。
【0057】
ステップS16では、道路勾配に基づく設計速度の推定を行う。
具体的には、まず、勾配エリア(すなわち仮の勾配エリア)の道路勾配を推定する。
勾配エリア内に複数のSub勾配エリアが存在する場合には、Sub勾配エリアのうち勾配が最も大きいSub勾配エリアの勾配を、勾配エリアの道路勾配とする。例えば図5(a)の場合には、Sub勾配エリアa1の勾配は登り“6%”、Sub勾配エリアa2の勾配は登り“10%”であるため、Sub勾配エリアa2の勾配“10%”を、この勾配エリアの道路勾配とする。
図5(b)の場合には、Sub勾配エリアa1′の勾配は登り“6%”、Sub勾配エリアa2′の勾配は下り“10%”であるため、Sub勾配エリアa2′の勾配“10%”を、この勾配エリアの道路勾配とする。なお、道路勾配が整数でない場合には小数点以下を切り上げる。
【0058】
一方、勾配エリア内に複数のSub勾配エリアが存在しないとき、すなわち、勾配エリア内に勾配変化ポイントが1つしか存在しない場合には、この勾配変化ポイントを起点とする勾配エリアの道路勾配を、勾配エリアの道路勾配とする。
このようにして勾配エリアの道路勾配を推定したならば、推定した勾配エリアの道路勾配に基づき走行中の道路の設計速度を推定する。
ここで、道路の勾配は、“道路の区分における種別”に応じて、道路構造令で表11に示すように、定められている。
【0059】
そこで、ステップS1〜ステップS4で絞り込んで得た“道路の区分”における“道路の区分における種別”と普通道路/小型道路の別と、推定した勾配エリアの道路勾配とに基づき、表11に設定されている設計速度のうち、縦断勾配の左側の欄の勾配値が推定した勾配エリアの道路勾配と対応するものを特定する。そして、特定した道路勾配と対応する設計速度を、勾配エリアにおける設計速度とする。なお、勾配エリアの道路勾配として推定した値が整数でない場合には、小数点以下を切り上げる。
また、推定した勾配エリアにおける道路勾配が、表11に設定されている縦断勾配よりも小さいときには、道路勾配に基づく設計速度の推定は行わない。
以上により、走行中の道路における道路勾配に基づく設計速度の推定が終了する。
【0060】
【表11】

【0061】
次にステップS7における、走行中の道路の道路曲線半径に基づく設計速度の推定手順を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS21で、カーブ補正エリアを検出する。
具体的には、データベース12に格納されている道路曲線半径を獲得し、この道路曲線半径に基づき、自車両前方の所定範囲(例えば250mの範囲)内に存在するカーブ補正エリアを検出する。すなわち、自車両前方の所定範囲内にR500以下のカーブが存在するか否かを判断する。そして、該当するカーブがなければそのまま処理を終了する。一方、該当するカーブがあればステップS22に移行し、図7に示すように、R500以下のカーブの開始地点から終了地点までをカーブ補正エリアとして切り出す。
【0062】
次いでステップS23に移行し、カーブ補正エリアを構成する各ノードの道路曲線半径のうち、道路曲線半径の最小値をカーブ補正エリアにおけるカーブ曲線半径値とする。図7の場合には、道路曲線半径の最小値は150mであるため、カーブ曲線半径値は150mとなる。
次いで、ステップS24に移行し、カーブ曲線半径値に基づく走行路の設計速度の推定を行うか否かを判定する。具体的には、ステップS23で特定したカーブ曲線半径値と閾値とを比較する。前記閾値は、前記ステップS1〜ステップS4により得られた“道路の区分(種別および級)”に基づく設計速度と、道路構造令で定められた表12に示す道路の曲線半径から特定される。
【0063】
ここで、道路の曲線半径は、設計速度に応じて道路構造令で表12に示すように定められている。
例えば、“道路の区分(種別及び級)”が第一種第三級である場合には設計速度は80〔km/h〕となり、表12から、設計速度が80〔km/h〕の場合の曲線半径は、280〔m〕以上と定められている。
【0064】
前記閾値は、ステップS5で推定される、自車走行路の“道路の区分”に基づく設計速度に対応する曲線半径に設定される。つまり、設計速度が80〔km/h〕の場合には、閾値は280〔m〕と設定される。
そして、表12から、設計速度80〔km/h〕である場合には、曲線半径は280〔m〕以上でなければならないため、カーブ曲線半径値が曲線半径280mよりも小さいときには、カーブ曲線半径値に基づく走行路の設計速度の推定を行う必要があると判断する。
【0065】
そして、ステップS25に移行し、表12から、カーブ曲線半径値(道路曲線半径)に対応する設計速度を推定する。なお、表12において、曲線半径として左側の数値を参照する(右側の数値は例外の場合を表すため)。
一方、ステップS24で、カーブ曲線半径値が閾値以上であるときにはカーブ曲線半径値に基づく走行路の設計速度の推定を行う必要はないとしてそのまま処理を終了する。
以上により、走行中の道路におけるカーブ曲線半径値に基づく設計速度の推定が終了する。
【0066】
【表12】

【0067】
(動作)
カメラコントローラ3では、フロントカメラ4やリアカメラ5による撮像画像情報やソナーセンサ6の検出情報をもとに、走行車線の幅員、自車走行路全体の区画線の線幅およびその並び順、左側の歩道と車道外側線部間(路肩)の幅員、中央帯の幅員などを検出する。
制限速度推定部7では、カメラコントローラ3からの各種検出情報やナビゲーション装置2からの現在位置情報やナビゲーション装置2のデータベース12で保持する各種情報などをもとに図3の制限速度推定処理を行って自車走行路の制限速度を推定する。
【0068】
例えば、今、地方一般道路を走行しており、撮像画像情報から獲得した自車走行路は、走行車線の幅員が3m、自車走行路の車線数が往復4車線道路、路肩幅が0.75m、中央帯の幅員が1.75mであるものとする。
制限速度推定部7では、ナビゲーション装置2から自車両の現在位置情報およびリンクID情報を獲得する(ステップS1)。
【0069】
この場合、リンクID情報として一般道路であることが通知され、また、自車両の現在位置情報から地方部であることが特定される。そのため、前記表1から“道路の区分における種別”は“第三種”であることが特定され、また、表4から、“道路等級”は“第一級〜第四級”のいずれかであると推定される。
このとき、現在位置情報から都市部であることが特定された場合には“道路の区分における種別”は“第四種”として推定され、“道路等級”は、表5から“第一級”または“第二級”として推定される。
【0070】
次に、“道路等級”の絞り込みを行う。
まず、カメラコントローラ3からの自車走行路全体の区画線の線幅やその並び順から、走行中の道路が往復4車線道路か、往復2車線道路か、往復1車線道路かを判断する。そして、まず走行車線の幅員に基づき前記表6から“道路等級”を推定する(ステップS2)。この場合、“道路の区分における種別”は“第三種”であり、道路の幅員は3mである。よって、表6から、“道路等級”は“第三種第一級(小型道路)”または“第三種第三級(普通道路)”であると推定することができる。
【0071】
そして、自車走行路の車線数が往復4車線道路である場合には、“第一種第一級”、“第二種”、“第三種第一級”のいずれかと規定されているため、自車走行路の“道路の区分”は“第三種第一級(小型道路)”に絞り込まれる。一方、自車走行路の車線数が往復二車線道路である場合には、“第一種第二級〜第四級”、“第三種第二級〜第四級”、“第四種第一級〜第三級”と規定されているため、自車走行路の“道路の区分”は“第三種第三級(普通道路)”に絞り込まれる。
【0072】
次に、カメラコントローラ3で検出した路肩幅に基づき“道路の区分における級”を推定する(ステップS3)。路肩幅が0.75mである場合、“道路の区分における種別”が“第三種”の場合、表7から、“道路等級”は、“第一級(小型道路)”または“第二級〜第四級の普通道路)と推定されるが、ステップS2の処理で自車走行路の車線数が往復4車線道路である場合には“第三種第一級(小型道路)”と絞り込まれているため、路肩幅からも、“道路等級”は“第三種第一級(小型道路)”に絞り込まれる。
【0073】
次に、ステップS4に移行し、中央帯の幅員に基づいて、表9から、“道路等級”を推定する。この場合、“道路の区分における種別”は“第三種”であり、中央帯の幅員は1.75mであるため、表9から、“道路等級”は、“第三種”の“第一級〜第四級”のいずれかであると推定される。よって、ステップS3での絞り込みの結果から“道路の区分”は、“第三種第一級”に絞り込まれる。
【0074】
このように、ナビゲーション装置2からのリンクID情報、カメラコントローラ3からの自車走行路全体の区分線の線幅およびその並び順、走行車線の幅員、路肩幅、中央帯幅員とから、“道路の区分”は“第三種第一級(小型道路)”と推定される。
よって、推定した“道路の区分”、すなわち“第三種第一級(小型道路)”から推定される、自車走行路の設計速度は、前記表10から“80km/h”となる。
【0075】
また、例えば、地方部の高速道路を走行しており、走行車線の幅員が3.5m、路肩幅が1.25m、中央帯の幅員は4.5mであるものとする。
この場合、ナビゲーション装置2から自車両の現在位置情報およびリンクID情報として“高速道路”である旨が通知され、また自車両の現在位置情報から地方部であることが特定される。そのため、前記表1から“道路の区分における種別”は“第一種”であることが特定され、表2から、“道路等級”は、第一級〜第四級のいずれかであると推定される。
【0076】
また、走行車線の幅員が3.5mであるため、前記表6から、自車走行路の“道路等級”は、“第一級”、“第二級”、“第三級(普通道路)”と推定される。
さらに車線数が、往復2車線道路よりも多い場合には、“道路の区分”は、第一種第一級、第二種、第三種第一級のいずれかであると推定される。
したがって、この時点で、“道路の区分”は、第一種第一級“に絞り込まれる。
【0077】
次に、“道路の区分における種別”は“第一種”、路肩幅は1.25mであるため、前記表8から、“道路の区分”は、“第一種第一級(小型道路)”に絞り込まれる。
さらに、中央帯の幅員が4.5mであるため、前記表9から“道路等級”は、“第一種第一級”として推定される。よって、最終的に“道路の区分”は“第一種第一級(小型道路)”と推定される。
そのため、前記表10から、自車走行路の設計速度は、“120km/h”と推定される。
【0078】
このようにして、“道路の区分”に基づき自車走行路の設計速度を推定したならば(ステップS5)、走行中の道路における道路勾配および道路曲線半径に基づき走行中の道路の設計速度を推定する(ステップS6、ステップS7)。
ここで、ナビゲーション装置2からの道路勾配情報に基づき、自車両前方所定範囲以内に勾配変化ポイントがないと判断される場合には、道路勾配に基づく設計速度の推定は行わない。また、道路曲線半径情報に基づき、自車両前方所定範囲以内にカーブ補正エリアがないと判断される場合には、道路曲線半径に基づく設計速度の推定は行わない。
したがって、前記表10から特定した設計速度が、自車走行路の推定制限速度となる。
【0079】
一方、自車両前方所定範囲内に勾配変化ポイントがあり、勾配変化ポイントを基準に切り出した仮の勾配エリアが、勾配エリアであると判断されるときには、勾配エリアの勾配値を特定する。そして、特定した勾配エリアの勾配値と、自車走行路の“道路区分における種別”、推定した“道路の区分”における普通道路/小型道路の別に基づき、前記表11から、これらに対応する設計速度を特定する。そして、表11から特定した道路勾配に応じた設計速度を、自車走行路の推定減速度として特定する。
【0080】
例えば、前述のように地方一般道路を走行しており、走行車線の幅員が3m、自車走行路の車線数が往復4車線道路、路肩幅が0.75m、中央帯の幅員が1.75mであって、“道路の区分”は、“第三種第一級(小型道路)”と推定され、設計速度は“80km/h”と推定されたものとする。
しかしながら、道路勾配が例えば、10%である場合、“第三種第一級(小型道路)”の道路の場合には、表11において設計速度は“40km/h”として規定されているため、道路勾配のある自車走行路の設計速度は“40km/h”と推定する。
【0081】
また、前述のように、地方部の高速道路を走行しており、走行車線の幅員が3.5m、路肩幅が1.25m、中央帯の幅員は4.5mであって、“道路の区分”は、“第一種第一級(小型道路)”と推定されたものとする。
例えば、道路勾配が6%である場合には、“第一種第一級(小型道路)”の設計速度は、前記表11から“120km/h”または“100km/h”と特定されるため、道路勾配のある自車走行路の設計速度は“120km/h”または“100km/h”と推定される。
【0082】
そして、自車両前方所定範囲以内にカーブ補正エリアがないと判断される場合には、表11から特定した道路勾配のある自車走行路の設計速度を推定制限速度として特定する。
一方、さらに自車両前方所定範囲以内にカーブ補正エリアがあり、カーブ曲線半径値が閾値よりも小さい場合には、ステップS5で表10から推定した、“道路の区分”に対応する設計速度に対応する曲線半径を表12から獲得し、これを閾値とする。そして、この閾値と、カーブ曲線半径値とを比較し、カーブ曲線半径値が閾値よりも小さいときには、カーブ曲線半径値に対応する設計速度を表12から獲得し、これをカーブ曲線半径値に基づく設計速度とする。そして、道路勾配がない場合には、このカーブ曲線半径値に基づく設計速度を、推定制限速度として特定する。
【0083】
すなわち、カーブ曲線半径値が、例えば、100mである場合には、表12から、設計速度は“50km/h”と推定する。また、カーブ曲線半径値が460mである場合には、表12から設計速度は“100km/h”と推定する。
そして、カーブ曲線半径値から推定した設計速度と、道路勾配から推定した設計速度のうち、いずれか小さい方を、自車走行路の推定制限速度とする。
【0084】
つまり、“道路の区分”に応じた設計速度を推定した場合であっても、道路勾配エリアであると判断される場合およびカーブ補正エリアであると判断される場合には、道路勾配エリアの道路勾配から推定した設計速度とカーブ補正エリアのカーブ曲線半径値から推定した設計速度とのうちの小さい方を、自車走行路の推定制限速度とする。
そして、このようにして推定した推定制限速度を表示器14に表示するとともに、自車速と推定制限速度とを比較する。自車速が推定制限速度以下であるときには警報を発しないが、自車速が推定制限速度を上回るときには警報発生装置15により警報を発生させ(ステップS10、S11)、ドライバに対して注意を促す。一方、自車速が推定制限速度以下であるときには警報を発しない。
【0085】
このように、道路構造に基づき、道路構造令から特定される設計速度を推定し、推定した設計速度に基づき推定制限速度を演算している。そのため、走行中の道路における制限速度に関する情報を、ナビゲーション装置2や、道路脇の標識などから獲得することができない場合であっても、走行中の道路に設定された制限速度に変わる情報として推定制限速度を得ることができる。
【0086】
また、この推定制限速度は、周囲車両などに基づき設定した値ではなく、道路構造から道路構造令にしたがって推定した値であるため、より走行安全性の高い推定制限速度を得ることができる。
また、自車速と推定制限速度とを比較し、自車速が推定制限速度を上回るときには、警報を発してドライバに警告する。そのため、道路構造に適した推定制限速度で走行するように仕向けることができる。
【0087】
また、このように、道路構造に適した推定制限速度を得ることができるため、例えば、設定された設定速度を目標速度として自動走行する自動走行制御装置により自動走行を行う場合などに、例えば、ナビゲーション装置2や、道路標識などから道路に設定されている制限速度を得ることができない場合であっても、推定した推定制限速度を利用することによって、道路構造に適した速度で自動走行することができる。
【0088】
なお、上記実施の形態において、フロントカメラ4およびリアカメラ5が撮像装置に対応し、カメラコントローラ3が処理装置に対応し、図3のステップS1の処理が道路形状情報獲得部に対応し、ステップS2〜ステップS8の処理が制限速度推定部に対応し、ステップS9〜ステップS11の処理が報知部に対応し、ステップS9の処理が表示部に対応し、ステップS10およびS11の処理が警報発生部に対応し、車速センサ8が自車速検出部に対応している。
【0089】
(効果)
(1)道路種別情報と道路形状情報に基づき道路の設計速度を推定し、推定した設計速度を推定制限速度としたため、正確性の高い適切な推定制限速度を得ることができる。
(2)自車走行路の中央帯の幅員情報も加味して設計速度を設定するのでより正確性の高い制限速度を予測することができる。
(3)道路勾配情報および道路曲線情報も考慮して自車走行路の設計速度を推定しているため、より高精度に設計速度を推定することができる。そのため、より適切な推定制限速度を得ることができる。
(4)推定制限速度を、表示器に表示するとともに、自車速が推定制限速度を上回るときには警報を発するため、運転者に注意を促すことができる。
【0090】
(変形例)
本実施形態の制限速度推定部7では、常に制限速度推定部7で制限速度を推定するようにしているが、例えば、ナビゲーション装置2に制限速度情報が記憶されている道路を走行中、或いは、道路脇の道路標識などをフロントカメラ4で撮像した撮像画像を画像処理することにより制限速度情報を獲得することができる場合など、制限速度情報を獲得することができる場合には獲得した制限速度を用い、ナビゲーション装置2や撮像画像などから制限速度情報を獲得することのできない道路を走行中に限り、制限速度推定部7で推定制限速度の推定を行うように構成することも可能である。
【0091】
また、本実施形態では、予め規定された設計速度として、道路構造令で定められた道路の設計速度を適用し、これに基づき推定制限速度を推定するようにした場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、推定誤差などを考慮して道路構造令で定められた道路の設計速度に基づき、設計速度を予め規定しておくことも可能であり、任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 走行制御装置
2 ナビゲーション装置
3 カメラコントローラ
4 フロントカメラ
5 リアカメラ
6 ソナーセンサ
7 制限速度推定部
11 GPS受信機
12 データベース
13 ナビゲーション処理部
14 表示器
15 警報発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路種別を表す道路種別情報を有するナビゲーション装置と、自車走行路を撮像可能な撮像装置と、その撮像された画像を処理することで少なくとも自車走行路の幅員、路肩幅の情報を有する道路形状情報を生成可能な処理装置と、を備えた走行制御装置であって、
前記ナビゲーション装置から前記道路種別情報を獲得する道路種別情報獲得部と、
前記処理装置の処理結果から前記道路形状情報を獲得する道路形状情報獲得部と、
自車走行路の制限速度を推定する制限速度推定部と、
当該制限速度推定部により推定された前記制限速度を報知する報知部と、を備え、
前記制限速度推定部は、前記道路種別情報獲得部で獲得した道路種別情報と前記道路形状情報獲得部で獲得した道路形状情報とから、前記道路種別をさらに分類して予め規定された設計速度を参照することで自車走行路の制限速度を推定することを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記制限速度推定部は、前記ナビゲーション装置が中央帯幅員情報を有すること、または前記処理装置が中央帯幅員情報を生成することで、前記道路種別情報または前記道路形状情報の少なくとも一方から前記中央帯幅員情報を獲得し、前記中央帯幅員情報も加味して予め規定された設計速度に基づき自車走行路の制限速度を推定することを特徴とする請求項1記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記ナビゲーション装置は、前記道路形状情報として自車走行路の道路勾配情報および道路曲線情報を有し、
前記制限速度推定部は、
前記ナビゲーション装置からの前記道路勾配情報と前記道路曲線情報とをさらに加味して予め規定された設計速度に基づき、自車走行路の制限速度を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
自車速を検出する自車速検出部を有し、
前記報知部は、前記推定制限速度を表示器に表示する表示部と、前記自車速が前記推定制限速度を上回るとき警報を発する警報発生部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19680(P2013−19680A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150755(P2011−150755)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】