説明

超薄膜誘電体、および、有機電界効果トランジスタでの超薄膜誘電体の使用

本発明は、基板、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、および有機半導体材料を含む有機電界効果トランジスタに関するものである。このとき、誘電体層(ゲート誘電体)が、ゲート電極と半導体材料との間に配置されている。上記誘電体層は、アンカー基、リンカー基、頭部基、および脂肪族基を含んだ有機化合物の自己組織化単分子層からなる。アンカー基、リンカー基、頭部基、および脂肪族基は、この順にて互いに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
高品質な、極度に薄い誘電体層は、複数の適用分野において非常に関心の高いものである。特に、電源電圧が低い状態で駆動する、フレキシブル基板上の安価な電子装置を実現するためには、トランジスタ、キャパシタなどの形成にこのような層を用いる必要がある。
【0002】
有機電界効果トランジスタは、多岐にわたって用いられている。例えば、有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス画面の画素制御素子に適している。アクティブマトリックス画面は、通常、アモルファスシリコン層または多結晶シリコン層に基づいた電界効果トランジスタによって形成される。アモルファスシリコン層または多結晶シリコン層に基づいた高品質なトランジスタを形成するためには、通常250℃以上の温度が必要であり、当該温度では、剛性でありかつ脆性であるガラス基板または水晶基板を用いる必要がある。有機半導体に基づいたトランジスタを形成する時の温度は、相対的に低い(通常200℃よりも低い)。したがって、有機トランジスタは、ガラス基板または水晶基板を超える著しい利点を有する、安価であり、柔軟性があり、透明であり、非脆性であるポリマ−薄膜を用いて、アクティブマトリックス画面を製造することを可能にする。
【0003】
さらに、有機電界効果トランジスタは、例えば品物や商品の自動ラベル付けおよび識別に用いられる、非常に安価な集積回路の形成に用いられる。これらのいわゆる中継器(transponders)は、通常、単結晶シリコンに基づいた集積回路を用いて形成される。この構造技術および接続技術には、著しく費用がかかる。有機トランジスタに基づいて中継器を形成することによって費用をかなり低減できるとともに、中継器技術の世界的規模での進歩が助長され得る。ここで、有機電界効果トランジスタに基づいた製品が市場に効果的に導入されるには、当該トランジスタができる限り低い電源電圧で駆動する必要がある。したがって、電源電圧は、約2V〜5Vよりも高くてはならない。
【0004】
従来技術の有機電界効果トランジスタの構造を、図1に概略的に示す。トランジスタのチャネル中の電荷担体密度を確実に調整するために必要な最小のゲートソース電圧は、ここでは、ゲート誘電体の厚さと線形の関係にある。つまり、ゲート誘電体が厚ければ厚いほど、必要なゲートソース電圧は高くなる。したがって、電気的絶縁が十分によく、さらに有機半導体層の分子の配向(orientation)が最適であって、その結果、半導体の中での電荷担体の移動性を高くすることができる、できる限り薄いゲート誘電体を開発する必要がある。このようなゲート誘電体として、特に、ゲート電極上に電気的に絶縁性の分子からなる自己組織化単分子層(SAM)を形成している分子が適している。
【0005】
ドイツ特許出願DE 103 28 810およびDE 103 28 811は、T−SAMs(Top−Linked Self Assembled Mono Layers)と呼ばれる分子の形成および使用について記載している。上記T−SAMsは、絶縁体層として機能し、例えば有機電界効果トランジスタに用いられる。特に、上記特許出願に記載された分子構造は、天然のシリコン酸化物層を備えたシリコン基板上に、単分子層を形成することに適している。
【0006】
ガラス基板またはフレキシブルポリマ−基板(同様に天然の酸化物層を形成することにより、DE 103 28 810およびDE 103 28 811に記載された化合物の分子からなる単分子層の形成に適した基板)上に集積回路を形成することに適している他のゲート材料(例えば、アルミニウム、チタン)を用いた場合、上記特許出願に記載された、ペンタセン、テトラセン、およびオリゴチオフェンと連結したT−SAM絶縁体層を備えた有機電界効果トランジスタの電気特性は、ゲート材料としてシリコンを使用した場合よりも悪い。DE 10 2004 009 600.7は、電界効果トランジスタに用いるためのSAMについても記載している。
【0007】
本発明の目的は、有機半導体に基づいた電界効果トランジスタに用いる単分子の誘電体として機能し得る、新しい種類の化合物を提供することにある。本発明の他の目的は、特性が改善された誘電体層を備える有機電界効果トランジスタを提供することである。また、本発明の他の目的は、電界効果トランジスタの形成に用いられる材料を提示することである。
【0008】
これらの目的を、独立請求項1、20、21、29の構成に基づいて達成する。
【0009】
したがって、独立請求項1の構成は、基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、有機半導体材料とを備えた電界効果トランジスタである。ここで、ゲート電極上には、誘電体層(ゲート誘電体)が配置されている。当該誘電体層は、脂肪族基(aliphatic orientating group)、頭部基(head group)、リンカー基、および、アンカー基を有する化合物の自己組織化単分子層から形成されている。上記脂肪族基、頭部基、リンカー基、およびアンカー基は、この順序にて互いに結合されている。
【0010】
本発明の材料は、金属ゲート/T−SAM/半導体/金属接触部という構造、または金属ゲート/T−SAM/金属接触部/半導体という構造を備えた有機電界効果トランジスタの電気特性が、記載したT−SAM分子(例えば、化学式CO(CH18SiClにて示される、18フェノキシオクタデシルトリクロロシラン)から分子構造が変化することによって悪化するという問題を、解決する。従来技術のT−SAMの構造を、図2aに示す。
【0011】
本発明のT−SAM層の本質的な構造素子は、頭部基に結合された脂肪族基である。
【0012】
上記脂肪族基として、特に、一般式−(CH)n−にて示される比較的短いアルカン鎖が適している。ここで、nは、2〜10の整数である。特にnが偶数の場合に、当該アルカン鎖が適している。脂肪族基を、2価のヘテロ原子(例えば、OまたはS)と置換することができる。脂肪族基は、直接、または架橋原子(bridge atom)を介して、頭部基に結合される。
【0013】
頭部基として、一方では分子の配向を規定し、他方では相互作用(例えば、双極子間相互作用、CT相互作用、ππ相互作用)またはファン・デル・ワース力によって自己組織化層を安定させる、全ての基を用いることができる。
【0014】
原則的に、上記頭部基としては、自己組織化単分子層の隣り合う分子とππ相互作用を形成することによって上記自己組織化単分子層を安定させることができる、全ての芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物が適している。
【0015】
特に、本発明に適した頭部基として、1つおよび2つの環系(ring system)を有する、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物が挙げられる。なぜなら、これらの化合物の空間的広がりが、高密度の単分子層の所要面積に最もよく適しているからである。特に適した基として、例えば、フェニル、チオフェン、フラン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾールおよびピリジンが挙げられる。ここで、さらに、このような分子構造ユニットのオリゴマ−ができる限り線形的(linearly)に互いに結合されている場合は、当該オリゴマ−も用いることができ、その結果、表面上の実装密度を上げることができる。リンカー基への結合は、架橋原子(例えば、OまたはS)を介して、または直接行うことができる。ここで、合成のしやすさに応じて、好ましい変形例が規定される。
【0016】
リンカー基は、一般式−(CH)m−にて示されるn−アルカン鎖を含んでいることが好ましい。ここで好ましくは、mは、2〜26である。mが偶数であることが、特に好ましい。n−アルキル鎖を、2価のヘテロ原子(例えば、OまたはS)と置換してもよい。したがって、一般式[(−CH−CH−X)z]にて示される直鎖(このとき、XはOまたはSであり、Zは2〜10の数である)であってもよい。本願発明によれば、アルカン鎖またはポリ(チオ)エーテル鎖が、不飽和結合を含んでいてもよいし、置換基を有していてもよい。
【0017】
上記アンカー基を、電極材料に応じて変化させてもよい。また、当該アンカー基とゲート電極の表面との間で相互作用が生じるように、上記アンカー基を選択する必要がある。例えば、アンカー基は、電極がSi、Al、Ti、TaN、TiNまたはWNを含んでいる場合には、R−SiCl、R−SiCl−Alkyl、R−SiCl(Alkyl)、R−Si(OR、R−Si(ORalkyl、またはR−SiOR(alkyl)からなる群から選択されたラジカル(radical)を有していてもよいし、アンカー基に結合された天然の酸化物層または目的に応じて生成された酸化物層を備えた、上記金属または当該金属の合金からなる層を備えていてもよい。
【0018】
上記電極がヒドロキシ基(例えば、アンカー基と直接結合している、構造Al−OOHまたはTiOOH)を含む層を備えている場合、例えば、上記アンカー基は、R−SiCl、R−SiCl−alkyl、R−SiCl(alkyl)、R−Si(OR、R−Si(ORalkyl、または、R−SiOR(alkyl)からなる群から選択されたラジカルを有していてもよい。
【0019】
上記電極が、上記アンカー基と直接結合したSi−H基を有する層を備えている場合、上記アンカー基を、例えばR−CHOまたはR−CH=CHからなる群から選択できる。当該アンカー基は、光(hν)の作用によって基板に結合されている。
【0020】
上記電極が金によって形成されているか、または、上記電極がアンカー基に結合された金からなる層を備えている場合、当該アンカー基は、R−SH、R−SAc、R−S−S−R1、または、R−S0Hであり得る。
【0021】
上記例では、Rは、上記リンカー基であり、R1は、例えばヘテロ原子とも置換できるアルキル基である。
【0022】
上記誘電体層の厚さは、自己組織化単分子層を形成している本発明の分子の長さに対応している。特に好ましい形態では、上記誘電体層の厚さは、略1〜略10nm、好ましくは略2〜略5nmである。基本的にゲート電極の材料としては、自己組織化単分子層と向かい合う層を含んだ、本発明の化合物のアンカー基と相互作用を行う全ての材料が適している。
【0023】
ゲート電極に適した材料は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、タンタルタングステン(TaW)、窒化タングステン(WN)、炭窒化タングステン(WCN)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化ストロンチウムルテニウム(SrRuO)、または、これらの層および/または材料を組み合わせたものである。上記ゲート電極は、珪素(Si)、窒化チタン珪素(TiNSi)、酸窒化珪素(SiON)、酸化珪素(SiO)、炭化珪素(SiC)、または炭窒化珪素(SiCN)からなる層を備えていることが好ましい。
【0024】
ソース電極およびドレイン電極の材料は、当該構成の機能に影響を与えない。原則的に、全ての導電性の金属、該金属を組み合わせたもの(formulations)、またはポリマ−が適している。例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、タンタルタングステン(TaW)、窒化タングステン(WN)、炭窒化タングステン(WCN)、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化ストロンチウムルテニウム(strontium ruthenium oxide)、白金、パラジウム、ヒ化ガリウムなどが挙げられる。さらに、ソース電極および/またはドレイン電極は、Si、TiNSi、SiON、SiO、SiC、またはSiCNからなる層を備えていてもよい。ポリマ−接触材料として、例えば、PEDOT:PSS(Baytron(登録商標))またはポリアニリンが適している。
【0025】
有機半導体に基づく半導体材料は、一実施形態では、「低分子(small molecules)」からなる群から選択される。
【0026】
用語「低分子」は、ポリマ−以外の全ての有機半導体材料を意図する。
【0027】
好ましい一実施形態では、有機半導体は、ペンタセン、テトラセン、オリゴチオフェン、フタロシアニン、およびメロシアニンからなる「低分子」群の中から選択される。
【0028】
さらに、層中の空間的な配向、および誘電体上の層の最適な配置が重要である全ての有機半導体分子を、用いることができる。
【0029】
電界効果トランジスタの電源電圧は、特に、ゲート電極上に配置された誘電体層(ゲート誘電体)の厚さに応じて決まる。したがって、本発明の電界効果トランジスタは、5Volt未満であり、特に3Volt未満(つまり、1〜3Volt)の電源電圧によって駆動され得る。
【0030】
本発明の電界効果トランジスタは、特に、電子装置をいわゆる「低費用」領域で使用することに適しているとともに、とりわけ電源電圧が低い有機電界効果トランジスタに適している。
【0031】
本発明の一観点は、電界効果トランジスタを製造するための製造方法を提供する。
【0032】
本発明の方法では、無機材料または有機材料に基づく基板が設けられる。そして、当該基板上に、ゲート電極が堆積される。次に、ゲート電極を本発明の化合物と結合させて、ゲート電極上に配置された、本発明の化合物の自己組織化単分子層が設けられる。上記したように、ゲート電極の表面は、本発明の化合物のアンカー基が当該ゲート電極の表面と相互作用を行うという特性を有している。次に、このようにして得られた本発明の化合物の自己組織化単分子層は、他の製造工程にかけられ得る。つまり、本発明の方法では、次の工程として、ソース電極およびドレイン電極の堆積およびパタ−ン形成に続いて、半導体材料が堆積される。
【0033】
本発明の一実施形態では、ゲート電極を設けた基板を本発明の有機化合物を含んだ溶液に浸すことによって、当該有機化合物を該ゲート電極の材料と結合させることができる。
【0034】
溶媒として、特に、極性の非プロトン性溶媒(例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、またはシクロヘキサン)が適している。
【0035】
有機化合物の自己組織化単分子層の密度および堆積時間は、基板を浸す有機化合物の溶液の濃度に依存している。有機化合物の溶液の濃度が約10−4〜0、1mol%である場合は、特に密度の高い層の形成に適している。基板(所定の第1電極を備えた基板)を準備しておいた溶液に浸すことによって、SAMが堆積される。基板を有機化合物の溶液に浸した後、続いて、純粋なプロセス溶媒を用いた洗浄工程を行うことができる。その後、当該基板を揮発性の高い溶媒(例えば、アセトンまたはジクロロメタン)を用いて洗浄してもよく、最後に、当該基板を乾燥させてもよい。この乾燥を、例えば、炉中または加熱板(Hot−Plate)上で保護ガスの存在下で行うことができる。
【0036】
さらに、ゲート電極上に有機化合物を蒸着させることによって、当該有機化合物を該ゲート電極と結合させてもよい。
【0037】
ここで、有機化合物の堆積を、密閉式反応装置中において加熱しながら行ってもよい。所定のゲート電極を備えた基板を取り付けた後で当該反応装置の内部を真空にし、当該内部に不活性気体(例えば、アルゴンまたは窒素)を供給して酸素の残りを除去する。続いて、原則的に有機ラジカルに依存した作動圧力および作動温度を設定する。圧力は約10−6〜400mbarであり、温度は略80〜200℃であることが、特に好ましい。理想的なプロセス条件は、有機化合物の揮発性に応じて決まる。被覆時間は、通常、プロセス条件に応じて、3分〜24時間である。
【0038】
本発明について、図面に基づいて以下に詳述する。
【0039】
図1は、従来技術にかかる電界効果トランジスタの構造を示す図である。
【0040】
図2aは、電界効果トランジスタに自己組織化単分子層を形成するために用いられる、従来技術の化合物を示す図である。
【0041】
図2bは、電界効果トランジスタに自己組織化単分子層を形成するために用いられる、本発明の化合物を概略的に示す図である。
【0042】
図3は、本発明の電界効果トランジスタの電圧特性曲線を示す図である。
【0043】
図4は、本発明の電界効果トランジスタの過渡特性曲線(on-state characteristic curves)を示す図である。
【0044】
図1に示した電界効果トランジスタの構造については、すでに冒頭部に記載した。
【0045】
本発明の化合物(図2b)と従来技術の化合物(図2a)とを比較すると、本発明の化合物が他の構造要素(つまり、脂肪族基)を有していることが分かる。
【0046】
有機電界効果トランジスタの電気特性を改善するための上記脂肪族基の作用形態(mode of action)は、SiO表面でのオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の作用形態と同様である。この作用形態は、例えば、D.J.Gundlach他、Organic Field Effect Transistors-Proceedings of SPIE、(Vol.4466、(2001)、5464)、および、K.Klauk他、J. Appl. Phys.(92、(2002)、5259〜5263)に記載されている。
【0047】
ここで、自己組織化単分子層の脂肪族の「表面」の存在が有機半導体(ペンタセン、セクシチオフェン)の成長に影響を与えて、その結果、得られる有機半導体の結晶ドメイン(crystalline domains)がより大きくなるとともに、より高い分子の配向性(order)を有するように見える。層構造中の配向性が高くなるにつれて、通常、電荷担体の移動性が上がり、サブスレッショルド係数(sub-threshold slope)が改善され、閾値電圧が下がる。
【0048】
本発明の材料を用いることは、上記脂肪族基が、SiO上のOTSの機能を行うことを意味する。ここで、絶縁特性は、残りの分子(つまり、アンカー基、リンカー基、および、頭部基によって)によって確定される。当該材料に関して有利であるのは、これら全ての所望の特性を設定するために、単一の分子を堆積させるだけでよいという点である。本発明の材料の一般的な構造によれば、当該材料を合成するための個々の構成の選択には、高い柔軟性がある。これにより、本発明の材料の数は、特許出願DE 103 28 810およびDE 103 28 811に記載された化合物よりも著しく多くなり、しかも、当該材料の機能は改善されている。本発明の材料は、特に、有機電界効果トランジスタの製造、および当該トランジスタに基づいた、金属のゲート電極を備えた集積回路の製造に適している。脂肪族基を用いることによって、有機電界効果トランジスタの電気特性が改善されるとともに、集積回路を形成するために、有機電界効果トランジスタを完全に集積することが可能になる。
【0049】
本発明の電界効果トランジスタの電子特性について、図3および図4に示す。有機電界効果トランジスタは、18−(4−ヘキシル−フェノキシオクタデシル)トリクロロシランをシリコンゲート電極上に堆積することによって、得られた。18−(4−ヘキシルフェノキシオクタデシル)トリクロロシランの自己組織化単分子層の厚さは、約2.8nmである。ソースおよび/またはドレイン接触部は金によって形成されており、半導体材料はペンタセンであった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来技術にかかる電界効果トランジスタの構造を示す図である。
【図2A】電界効果トランジスタに自己組織化単分子層を形成するために用いられる、従来技術にかかる化合物を示す図である。
【図2B】電界効果トランジスタに自己組織化単分子層を形成するために用いられる、本発明の化合物を概略的に示す図である。
【図3】本発明の電界効果トランジスタの電圧特性曲線を示す図である。
【図4】本発明の電界効果トランジスタの過渡特性曲線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、有機半導体材料とを備え、
上記ゲート電極と上記有機半導体材料との間には、誘電体層(ゲート誘電体)が配置され、
上記誘電体層は、アンカー基と、リンカー基と、頭部基と、脂肪族基とを有する有機化合物の自己組織化単分子層を含み、
上記アンカー基、上記リンカー基、上記頭部基、および上記脂肪族基は、上記の順序にて互いに結合されている、有機電界効果トランジスタ。
【請求項2】
上記脂肪族基は、一般式−(CH)n−にて示される短いn−アルカン鎖からなる群から選択されており、nは2〜10の整数である、請求項1に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項3】
nは2〜10の偶数である、請求項2に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項4】
頭部基は、一方では自己組織化単分子層を構成する分子の配向を規定し、他方では自己組織化単分子層を、相互作用(例えば、双極子間相互作用、CT相互作用、ππ相互作用)またはファン・デル・ワース力によって安定させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項5】
上記頭部基は、芳香族化合物およびヘテロ芳香族化合物からなる群から選択されている、請求項4に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項6】
上記頭部基は、フェニル基、チオフェン基、フラン基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、およびピリジン基からなる群から選択されている、請求項5に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項7】
上記頭部基は、次の単量体:フェニル基、チオフェン基、フラン基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、および、ピリジン基、のオリゴマ−である、請求項6に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項8】
上記リンカー基は、一般式−(CH)m−にて示されるn−アルカン鎖からなる群から選択されており、mは好ましくは2〜26の数である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項9】
mは2〜26の偶数である、請求項8に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項10】
上記リンカー基は、OおよびSからなら群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいる、請求項8に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項11】
上記リンカー基の化学式は[(−CH−CH−X)z]であり、XはOまたはSであり、zは2〜10の整数である、請求項10に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項12】
上記アンカー基は、R−SiCl、R−SiCl−alkyl、R−SiCl(alkyl)、R−Si(OR、R−Si(ORalkyl、R−SiOR(alkyl)、R−CHO(hν)、R−CH=CH(hν)、R−SH、R−SAc、R−S−S−R1、またはR−SOHからなる群から選択されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項13】
上記誘電体層の厚さが、2〜略10nm、好ましくは略2〜略5nmである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項14】
上記ゲート電極の表面に金属酸化物層が設けられている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項15】
上記ゲート電極は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、珪素(Si)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、タンタルタングステン(TaW)、窒化タングステン(WN)、炭窒化タングステン(WCN)、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化ストロンチウムルテニウム、または上記材料を組み合わせたもの、からなる群から選択されており、 珪素、窒化チタン珪素、酸窒化珪素、酸化珪素、炭化珪素、または炭窒化珪素からなるもう1つの層が設けられている場合がある、請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項16】
上記ソース電極およびドレイン電極は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、タンタルタングステン(TaW)、窒化タングステン(WN)、炭窒化タングステン(WCN)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化ストロンチウムルテニウム(SrRuO)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ヒ化ガリウム、または、これらの材料を組み合わせたもの、からなる群から互いに自由に選択されており、
珪素(Si)、窒化チタン珪素(TiNSi)、酸窒化珪素(SiON)、酸化珪素(SiO)、炭化珪素(SiC)、または炭窒化珪素(SiCN)からなるもう1つの層が設けられている場合がある、請求項1〜15のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項17】
上記有機半導体材料は、低分子からなる群から選択されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項18】
上記半導体材料は、ペンタセン、テトラセン、オリゴチオフェン、フタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択されている、請求項17に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項19】
5Volt未満、好ましくは3Volt未満の電源電圧によって駆動される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項20】
基板を設ける工程と、
ゲート電極を堆積する工程と、
上記ゲート電極を、アンカー基と、リンカー基と、頭部基と、脂肪族基とを有する化合物に結合させることによって、上記ゲート電極の上に有機化合物の自己組織化単分子層を設ける工程と、
有機半導体材料を堆積する工程と、
ソース電極およびドレイン電極を堆積し、必要であれば該ソース電極およびドレイン電極をパタ−ン形成する工程とを含む、有機電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項21】
基板を設ける工程と、
ゲート電極を堆積する工程と、
上記ゲート電極を、アンカー基と、リンカー基と、頭部基と、脂肪族基とを有する化合物に結合させることによって、上記ゲート電極の上に有機化合物の自己組織化単分子層を設ける工程と、
ソース電極およびドレイン電極を堆積し、必要であれば該ソース電極およびドレイン電極をパタ−ン形成する工程と、
有機半導体材料を堆積する工程とを含む、有機電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項22】
上記ゲート電極を化合物に結合させる工程では、上記化合物は溶媒の中にある、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
上記溶媒は、非プロトン性の極性溶媒である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン、およびシクロヘキサンからなる群から選択されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記有機化合物の濃度は、略10−4〜略0、1mol%である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項26】
上記ゲート電極に化合物を結合させる工程では、上記化合物はゲート電極上に蒸着される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項27】
上記有機化合物をゲート電極上に蒸着させる時の圧力は、略10−6〜400mbarである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記有機化合物をゲート電極上に蒸着させる時の温度は、略80〜略200℃である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
有機電界効果トランジスタの製造における、請求項1〜19の何れか1項に記載の有機化合物の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−536748(P2007−536748A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511852(P2007−511852)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000847
【国際公開番号】WO2005/109538
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506211850)キモンダ アクチエンゲゼルシャフト (110)
【Fターム(参考)】