説明

超音波画像化装置

【課題】広指向角,狭指向角の送信超音波のいずれにおいても効率的な画像の生成を可能とする超音波画像化装置を提供する。
【解決手段】超音波画像化装置が,複数の第1の圧電素子から送信される超音波の合成波が,所定の仮想送信点から発信される超音波と対応するように,前記複数の第1の圧電素子それぞれの発信タイミングを制御する発信制御部と,前記複数の第1の圧電素子から送信され,検査対象物で反射され,複数の第2の圧電素子で受信される超音波エコーに対応する,電気信号を検出する信号検出回路と,前記電気信号に基づき,前記検査対象物に対応する画像を生成する生成部と,を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,超音波を用いて検査対象物を画像化する超音波画像化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば,医用等で使用されている超音波画像化装置では,微小圧電素子を2次元または3次元的に走査することで,ペンシルビーム(狭指向角の超音波ビーム)を生成し,画像を生成する。ここで,3次元の画像を生成するには,3次元空間において,例えば,数百から数千回もの膨大な回数の走査が必要となる。
【0003】
一方,マトリックス状に配置された圧電素子から広指向角の超音波を発信し,受信エコー信号を開口合成処理することで画像を生成する方式が開発されている。一つの圧電素子を発信点として超音波を発信し,残りの圧電素子で受信する。発信点を変更し数十回程度発受信することで,立体画像を生成できる。
【0004】
ここで,圧電素子から広指向角の超音波を発信する場合,超音波画像の解像度向上に限界がある。開口合成処理においては,超音波の発受信指向角が広いほど解像度が向上する。指向角をより広くするためには,圧電素子の小型化が必要となる。しかし,圧電素子を小型化すると,感度が低下し,却って,超音波画像の解像度が低下する可能性がある。
【0005】
そのために,複数の圧電素子からの超音波の発信タイミングを制御することで,1点の仮想点音源から超音波を発信させる超音波画像化装置が提案されている(特許文献1参照)。圧電素子を小型化しても感度が低下しないことから,解像度の向上が図られる。
【0006】
しかしながら,この超音波画像化装置を用いて,狭指向角の超音波ビームを生成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−28589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,広指向角,狭指向角の送信超音波のいずれにおいても効率的な画像の生成を可能とする超音波画像化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る超音波画像化装置は,複数の圧電素子を有する超音波トランスデューサと,前記複数の圧電素子から選択される複数の第1の圧電素子から送信される超音波の合成波が,所定の仮想送信点から発信される超音波と対応するように,前記複数の第1の圧電素子それぞれの発信タイミングを制御する発信制御部と,前記複数の第1の圧電素子から送信され,検査対象物によって反射されて,前記複数の圧電素子から選択される複数の第2の圧電素子で受信される超音波エコーに対応する,電気信号を検出する信号検出回路と,前記所定の仮想送信点から,前記検査対象物を含む空間を区分する複数の空間メッシュそれぞれまで,超音波が伝搬する送信伝播時間を表す送信時間テーブルを記憶する第1の記憶部と,前記複数の空間メッシュそれぞれから前記複数の第2の圧電素子まで,超音波が伝搬する受信伝播時間を表す受信時間テーブルを記憶する第2の記憶部と,前記複数の第1の圧電素子から前記仮想送信点に超音波が伝搬するオフセット時間を記憶する第3の記憶部と,前記送信伝搬時間と,前記受信伝搬時間と,前記オフセット時間と,を加算して,超音波の総伝搬時間を算出する算出部と, 前記電気信号と前記総伝搬時間とに基づき,前記検査対象物に対応する画像を生成する生成部と,を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,広指向角,狭指向角の送信超音波のいずれにおいても効率的な画像の生成を可能とする超音波画像化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係わる超音波画像化装置100を表す構成図である。
【図2A】収束点PFiを表す模式図である。
【図2B】仮想点音源PYiを表す模式図である。
【図3】複数の仮想発信点Piの例を示す模式図である。
【図4】画像合成処理のプロセスを示す模式図である。
【図5】検査対象物20aを表す模式図である。
【図6】異常領域の検出の手順の一例を表す模式図である。
【図7】X方向での,底面深さ分布D(x),判定テーブルTh(x),強度分布P(x),判定画像データJ(x)の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係わる超音波画像化装置100を表す構成図である。
【0013】
超音波画像化装置100は,超音波トランスデューサ110,発信切替回路121,発信部122,発信制御部123,受信切替回路131,増幅器132,A/D変換器133,信号処理部140,表示部150,判定部160を有する。超音波画像化装置100は,検査対象物20に超音波を発信し,検査対象物20の表面22および内部で反射される超音波を受信することで,画像化範囲30内(検査対象物20の表面22および内部(欠陥21等))を可視化する。具体的には,画像化範囲30が画像化メッシュ31を単位として可視化される。この結果,検査対象物20内部の欠陥21が検出される。
【0014】
検査対象物20は,音響伝播媒体40中に配置される。音響伝播媒体40は,超音波トランスデューサ110と検査対象物20の間での効率的な超音波の伝搬のために,これらの間に配置される。音響伝播媒体40として,液体媒体(水,油等),固体媒体(樹脂等)を用いることができる。
【0015】
画像化範囲30は,超音波画像化装置100により可視化される空間の範囲を表す。画像化メッシュ31(ix,iy,iz)は,例えば,立方体状,直方体状の形状を有し,画像化範囲30を異なる方向(例えば,X,Y,Z方向)それぞれに区分する複数の領域である。画像化メッシュ31(ix,iy,iz)は,これらの方向それぞれに対応する添え字ix,iy,izによって互いを識別できる。ここで,ix=1〜Nx,iy=1〜Ny,iz=1〜Nzであり,数Nx,Ny,Nzはそれぞれ,X,Y,Z方向での画像化範囲30の区分数である。画像化メッシュ31は,検査対象物20を含む空間を区分する複数の空間メッシュに対応する。
【0016】
超音波トランスデューサ110には,複数の圧電素子111が,マトリックス状,または1列に配置されている。この例では,圧電素子111がX−Y方向にマトリクス状に配置される。但し,圧電素子111の配置の方向がX−Y方向でなくても差し支えない。
【0017】
圧電素子111は,検査対象物20に対して超音波を発信すると共に,検査対象物20内の欠陥21等で反射された超音波エコー(反射波)を受信する。圧電素子111は,圧電材料を有し,電気信号を超音波に変換することで超音波を発信する。また,圧電素子111は,超音波を電気信号に変換することで超音波を受信する。同一の圧電素子111を送信,受信の双方に用いることができる。
【0018】
発信切替回路121は,発信に用いる圧電素子111を選択する。ここでは16個の圧電素子111が発信圧電素子グループ112として選択されている。発信切替回路121は,「複数の異なる仮想送信点それぞれに対応して,第1の圧電素子を選択する送信選択部」として機能する。
【0019】
発信部122は,発信切替回路121で選択された発信圧電素子グループ112に属する圧電素子111から超音波を発信させる。発信部122は,単一パルス信号,連続パルス信号等を圧電素子111に印加することで,超音波を発信させる。
【0020】
発信制御部123は,発信部122から出力される電気信号の位相(超音波の発信タイミング)を制御する。即ち,発信切替回路121で選択された所定個数の発信圧電素子グループ112内の圧電素子111の発信タイミングが制御される。この結果。超音波トランスデューサ110から発信される超音波の合成波が1点の仮想発信点Pi(収束点PFi,仮想点音源PYi)から発信される超音波と対応するようになる。即ち,発信制御部123は,「複数の圧電素子から選択される複数の第1の圧電素子から送信される超音波の合成波が,所定の仮想送信点から発信される超音波と対応するように,前記複数の第1の圧電素子それぞれの発信タイミングを制御する発信制御部」に対応する。なお,この詳細は後述する。
【0021】
受信切替回路131は,受信に用いる圧電素子111を選択する。ここでは16個の圧電素子111が受信圧電素子グループ113として選択されている。受信切替回路131は,「複数の異なる仮想送信点それぞれに対応して,前記第2の圧電素子を選択する受信選択部」として機能する。
【0022】
発信圧電素子グループ112内の圧電素子111から送信された超音波は,音響伝播媒体40を介して検査対象物20の表面22で屈折した後,検査対象物20内を伝播し,欠陥21で反射される。欠陥21で反射された超音波エコーは,検査対象物20の表面22で再度屈折し,音響伝播媒体40を介して,受信圧電素子グループ113内の圧電素子111で受信される。受信圧電素子グループ113内の圧電素子111は,受信した超音波エコーに対応する電気信号(超音波エコー信号)を出力する。
【0023】
増幅器132は,受信圧電素子グループ113に属する圧電素子111からの超音波エコー信号を増幅する。
A/D変換器133は,増幅器132で増幅された超音波エコー信号をA/D(アナログ−デジタル)変換する。A/D変換器133が超音波エコー信号をサンプリングすることで,後述のサンプリングデータが生成される。A/D変換器133は,「複数の第1の圧電素子から送信され,検査対象物によって反射されて,前記複数の圧電素子から選択される複数の第2の圧電素子で受信される超音波エコーに対応する,電気信号を検出する信号検出回路」に対応する。
【0024】
信号処理部140は,A/D変換された超音波エコー信号を開口合成処理することで,検査対象物20の表面22や欠陥21の画像を含む画像データIを生成する。生成された画像データIは,表示部150および判定部160に送信される。なお,開口合成処理の詳細は後述する。
【0025】
信号処理部140は,次のように機能する。
・前記所定の仮想送信点から,前記検査対象物を含む空間を区分する複数の空間メッシュそれぞれまで,超音波が伝搬する送信伝播時間を表す送信時間テーブルを記憶する第1の記憶部
・前記複数の空間メッシュそれぞれから前記複数の第2の圧電素子まで,超音波が伝搬する受信伝播時間を表す受信時間テーブルを記憶する第2の記憶部
・複数の第1の圧電素子から前記仮想送信点に超音波が伝搬するオフセット時間を記憶する第3の記憶部
・前記送信伝搬時間と,前記受信伝搬時間と,前記オフセット時間と,を加算して,超音波の総伝搬時間を算出する算出部
・電気信号と前記総伝搬時間とに基づき,前記検査対象物に対応する画像を生成する生成部
【0026】
さらに,この生成部は,次のように機能する。
・複数の第1の圧電素子での送信から超音波エコーのサンプリングデータの検出までの時間差を検出する時間差検出部
・時間差と前記総伝搬時間とに基づき,前記超音波エコーのサンプリングデータに対応する空間メッシュを判定する判定部
・前記判定される空間メッシュにサンプリングデータに対応する値を割り付ける割り付け部
・空間メッシュに割り付けられた値を加算して,画像データを生成する画像生成部
【0027】
表示部150は,画像データIを用いて画像を表示する装置,例えば,CRT,液晶ディスプレイである。
【0028】
判定部160は,信号処理部140から出力される画像データIを用いて,検査対象物20内の異常領域を検出する。判定部160は,次のものとして機能する。
・画像データの深さ方向の強度分布に基づき,検査対象の底面または境界面の深さの分布を計測する深さ計測部
・深さと超音波の減衰特性との関係を表す減衰テーブルを記憶する第4の記憶部
・減衰テーブルと深さの分布に基づき,画像データの強度(超音波の強度)を判定するための閾値を有する判定テーブルを生成する生成部
・画像データの強度分布を導出する導出部,
・画像データの強度分布と,前記判定テーブルに基づき,前記画像データの強度が判定値より大きい領域を検出する検出部
なお,この詳細は後述する。
【0029】
(仮想発信点Piの詳細)
以下,仮想発信点Pi(収束点PFi,仮想点音源PYi)の詳細を説明する。発信圧電素子グループ112の圧電素子111から発信される超音波の合成波が1の点Piから発信される超音波と対応するときに,この点Piを仮想発信点Piと呼ぶことにする。仮想発信点Piには,収束点PFi,仮想点音源PYiの2通りが考えられる。図2A,図2Bはそれぞれ,収束点PFi,仮想点音源PYiを表す模式図である。
【0030】
収束点PFiは,超音波トランスデューサ110の前方(検査対象物20の側)に配置され,発信圧電素子グループ112に属する圧電素子111から発信される超音波の合成波が収束する点である。即ち,合成波が1の収束点に収束する収束波であり,この収束点が仮想送信点Piに対応する。収束点PFiを通過した超音波はそのまま音響伝搬媒体40内を伝搬する。このとき,超音波トランスデューサ110から発信した超音波の合成波は,収束点PFiから発信された超音波と実質的に同様のものとして取り扱うことが可能となる。
【0031】
仮想点音源PYiは,超音波トランスデューサ110の後方(検査対象物20の反対側)に配置される。発信圧電素子グループ112に属する圧電素子111から発信される超音波の合成波が1の点PYiから発信される超音波と対応するとき,この点PYiが仮想点音源PYiとなる。即ち,合成波が仮想的な1の発散点(仮想点音源PYi)から発散する発散波であり,この発散点が仮想送信点Piに対応する。このとき,超音波トランスデューサ110から発信した超音波の合成波は,仮想点音源PYiから発信された超音波と実質的に同様のものとして取り扱うことが可能となる。
【0032】
このように,超音波トランスデューサ110から発信された超音波の合成波を仮想発信点Pi(収束点PFi,仮想点音源PYi)からの超音波と対応させることができる。このようにするために,発信圧電素子グループ112に属する圧電素子111それぞれの発信タイミングが制御される。ここで,圧電素子111(k)として,添え字kにより圧電素子111それぞれを識別することとする。
【0033】
収束点PFiで時刻t0に超音波を発信するためには,時刻t0より前の時刻(t0−Δt1(k))に圧電素子111(k)それぞれで超音波を発信する。このとき,圧電素子111(k)それぞれから収束点PFiまでの距離Li(k)に応じて,圧電素子111(k)それぞれでの発信の進み時間Δt1(k)が制御される。
Δt1(k)=Li(k)/v ……式(1)
v:音響伝搬媒体40内での超音波の伝搬速度
【0034】
一方,仮想点音源PYiで時刻t0に超音波を発信するためには,時刻t0より後の時刻(t0+Δt2(k))に圧電素子111(k)それぞれで超音波を発信する。このとき,圧電素子111(k)それぞれから仮想点音源PYiまでの距離Li(k)に応じて,圧電素子111(k)それぞれでの発信の遅れ時間Δt2(k)が制御される。
Δt2(k)=Li(k)/v ……式(2)
v:音響伝搬媒体40内での超音波の伝搬速度
【0035】
以上のように,圧電素子111(k)それぞれでの超音波の発信タイミングをずらすことで,仮想発信点Piから発信された超音波と対応する合成波を生成できる。この場合,理想的には,この合成波は仮想発信点Piを中心とする球面波の一部となる。但し,この合成波が完全な球面波で無くても差し支えない。既述のように,検査対象物20の画像は,画像化メッシュ31を単位として生成される(画像化メッシュ31程度の分解能)。従って,画像化メッシュ31程度での波面のばらつきは許容される。仮想発信点Pi自体も,完全な点である必要は無く,ある程度(例えば,画像化メッシュ31程度)の拡がり(領域)が許容される。
【0036】
ここで,複数の仮想発信点Piを用いて,検査対象物20の画像を生成することが好ましい。このようにすることで,画像の分解能を向上することができる。
【0037】
図3は,複数の仮想発信点Piの例を示す模式図である。仮想発信点Pi(仮想点音源PYi)が超音波トランスデューサ110と平行な平面S(X−Y平面)上に配置されている。ここでは,仮想発信点Piが配置される面Sは超音波トランスデューサ110の後方(検査対象物20の反対側)に位置する。これに対して,仮想発信点Piが配置される面Sを超音波トランスデューサ110の前方(検査対象物20の側)としても良い。また,仮想発信点Piが配置される面Sを曲面としても良い。
【0038】
ここで,仮想発信点Piと超音波トランスデューサ110との距離を変化させることを考える。図2A,図2Bに示されるように,仮想発信点Piと超音波トランスデューサ110との距離を小さくすると,検査対象物20に広指向角の超音波を照射することができる。特に,仮想発信点Piを仮想点音源PYiとすると,仮想発信点Piと検査対象物20の距離が大きくなり,検査対象物20のより広範囲に超音波を照射し,可視化することが容易となる。
【0039】
一方,仮想発信点Piと超音波トランスデューサ110との距離を大きくすると,検査対象物20に狭指向角の超音波を照射することができる。特に,仮想発信点Piを収束点PFiとし,収束点PFiを検査対象物20の近傍,あるいはその内部とすることで,特定の箇所を高分解能で可視化することが容易となる。
【0040】
以上のように,仮想発信点Piと超音波トランスデューサ110との距離を適宜に変化することで,検査対象物20に照射する超音波の指向性の広狭を調節できる。その結果,検査対象物20全体あるいはその一部を効率的に可視化することができる。
【0041】
ここで,仮想発信点Piに対応して,発信切替回路121によって選択される圧電素子111(発信圧電素子グループ112)を変化させることが考えられる。例えば,図3での仮想発信点Piに対応して,仮想発信点Piに近い発信圧電素子グループ112(i)を選択することが考えられる。このように,仮想発信点Piに近い発信圧電素子グループ112(i)を選択することで,比較的少数の圧電素子111を効果的に用いて,仮想発信点Piを生成することが可能となる。この例では,発信圧電素子グループ112(i)の一部に重なりがある。発信圧電素子グループ112(i)に重なりが無くても差し支えない。
【0042】
ここで,仮想発信点Piに対応して発信圧電素子グループ112を変更しないことも可能である。例えば,全ての圧電素子111を用いて,異なる仮想発信点Piを生成し,発信超音波の方向を変化させても良い。多くの圧電素子111を用いることで,仮想発信点Piからの高精度かつ強力な超音波の発信が可能となる。この場合,発信切替回路121は不要となる。
【0043】
以上の発信圧電素子グループ112に関する議論は,受信圧電素子グループ113にもある程度当てはまる。即ち,仮想発信点Piに対応して,受信切替回路131によって選択される圧電素子111(発信圧電素子グループ113)を変化させることが考えられる。仮想発信点Piに対応して,受信圧電素子グループ113(i)を選択することで,比較的少数の圧電素子111を効果的に用いて,超音波を受信することが可能となる。一方,仮想発信点Piに対応して受信圧電素子グループ113を変更しないことも可能である。例えば,全ての圧電素子111を用いて,超音波エコーを受信しても良い。多くの圧電素子111を用いることで,検査対象物20からの超音波の高精度な受信が可能となる。この場合,受信切替回路131は不要となる。
【0044】
既述のように,図1では,発信切替回路121により,発信圧電素子グループ112の計16個の圧電素子111が選択されている。この場合,発信部122からは,16点のパルス状または連続波の電圧信号が出力される。ここで,発信部122から発信された電圧信号の発信タイミングは,発信制御部123により制御される。その結果,発信圧電素子グループ112のそれぞれの発信超音波の合成波が仮想発信点Piから発信される超音波の波面に対応するようになる。
【0045】
ここで,発信部122から出力されるパルス状または連続波の電圧信号は,総て同一形状(同一電圧)として差し支えない。発信点Pから発信される超音波の波面を球面波に近づけるためには(方向依存性を小さくする),仮想発信点Piと圧電素子111(k)の距離L(k)に応じて,圧電素子111(k)での超音波の発信強度を異ならせることが好ましい。しかし,圧電素子111(k)での発信強度を異ならせても,方向依存性が大きく変わる訳では無いので,圧電素子111(k)それぞれからの超音波の発信強度を同一としても差し支えない。
【0046】
このようにして発信された超音波は,仮想発信点Piから発信された拡散波Wiとして伝播し,検査対象物20の表面22上で屈折した後に検査対象物20内を伝播する。さらに,この超音波は,欠陥21で反射されて,超音波トランスデューサ110内の圧電素子111で受信される。すなわち,受信切替回路131で選択された受信圧電素子グループ113内の圧電素子111で受信した超音波エコーが,16回路の増幅器132にて同時に増幅され,さらに,16回路のA/D変換器133にてデイジタル信号に同時に変換された後に信号処理部140に取り込まれる。
【0047】
以上の処理プロセスを繰り返し行う。すなわち,発信部122による出力電圧信号の発信タイミング変更による仮想発信点Piの位置変更を,発信切替回路121による選択切替えの度に繰り返す。これにより,多数の仮想発信点Piから超音波Wiが発信されて,欠陥21で反射され,その反射された超音波エコーのディジタル信号が信号処理部140で収集される。
【0048】
(開口合成処理の詳細)
以下,信号処理部140による開口合成処理の詳細を説明する。
信号処理部140では,ディジタル収集された超音波エコーを開口合成することで,画像化範囲30内の超音波画像を生成する。即ち,画像化範囲30内の画像化メッシュ31に,ディジタル収集された超音波エコーのデータが割り付けられる。
【0049】
ここで,仮想送信点Piから仮想的に発信された超音波Wiが,欠陥21で反射され,超音波エコーWjとして受信圧電素子グループ113内の圧電素子111(j)で受信されることを考える。
【0050】
図4は,画像合成処理のプロセスを示す模式図である。信号処理部140は,送信時間テーブル群Tおよび受信時間テーブル群Rを記憶する。
送信時間テーブル群Tは,仮想送信点Piおよび全ての画像化メッシュ31(ix,iy,iz)に対応する送信超音波伝搬時間ti(ix,iy,iz)を表す送信時間テーブルTiを含む。受信時間テーブル群Rは,全ての画像化メッシュ31(ix,iy,iz)で反射されて圧電素子111(j)で受信するまでの受信超音波伝搬時間rj(ix,iy,iz)を表す受信時間テーブルRjを含む。
【0051】
送信超音波伝播時間ti(ix,iy,iz)は,仮想送信点Piから画像化範囲30内の画像化メッシュ31(ix,iy,iz)への超音波伝播時間を表す。受信超音波伝播時間rj(ix,iy,iz)は,画像化範囲30内の画像化メッシュ31(ix,iy,iz)から圧電素子111(j)までの超音波伝播時間を表す。
【0052】
送信超音波伝播時間ti,受信超音波伝播時間rjはそれぞれ,大ざっぱにいえば,仮想送信点Piから画像化メッシュ31(ix,iy,iz)までの距離L1(ix,iy,iz),画像化メッシュ31(ix,iy,iz)から圧電素子111(j)までの距離L2(ix,iy,iz,j)により規定される。これらの距離L1,L2を超音波の速度で割ることで,送信超音波伝播時間ti,受信超音波伝播時間rjを概算できる。
【0053】
既述のように,超音波は検査対象物20の表面22で屈折する。このため,送信超音波伝播時間ti,受信超音波伝播時間rjを正確に求めるためには,検査対象物20の外形を求めておく必要がある。検査対象物20の外形が判っていれば,スネルの法則を考慮し,送信超音波伝播時間ti,受信超音波伝播時間rjを算出できる。この算出には,種々のシミュレーションを利用することができる。
【0054】
なお,検査対象物20の外形が判っていない場合には,超音波画像化装置100自体による検査対象物20の外形の画像化結果を用いて,検査対象物20の外形を求めることも可能である。
【0055】
図4中の画像合成の処理プロセスは,仮想送信点Piからの超音波が圧電素子111(j)で受信された受信波形データDij(t)を処理した場合を示している。
(1)総伝搬時間tijの算出
超音波トランスデューサ110から発信された超音波が圧電素子111(j)で受信されるまでの時間(総伝搬時間)tijを算出する。
送信超音波伝播時間ti,受信超音波伝播時間rj,オフセット時間T0iを加算することで,総伝搬時間tijが算出される。
tij=ti+rj+T0i ……式(3)
【0056】
オフセット時間T0iは,超音波トランスデューサ110(発信圧電素子グループ112)から発信された超音波が仮想送信点Piに至るまでの超音波伝送時間である。既述のように,発信圧電素子グループ112に属する圧電素子111(k)の発信タイミングは一般に一致しない。発信圧電素子グループ112に属する圧電素子111(k)から代表点(代表圧電素子)を定め,この代表の圧電素子111を基準として,オフセット時間T0iを規定すれば良い。受信波形データDij(t)の時刻の基準点Oと対応するように,代表点(代表圧電素子)が定められる。
【0057】
オフセット時間T0iの絶対値は,既述の進み時間Δt1(k),遅れ時間Δt2(k)と対応する。仮想発信点Piが収束点PFiの場合,オフセット時間T0iは正の値を有する。これに対して,仮想発信点Piが仮想点音源PYiの場合,オフセット時間T0iは負の値を有する。
【0058】
以上のように,全ての画像化メッシュ31(ix,iy,iz)について,総伝搬時間tijを算出できる。
【0059】
ここで,総伝搬時間tijを算出する画像化メッシュ31(ix,iy,iz)の範囲を制限することができる。
図4中の送信時間テーブルTi,受信時間テーブルRjでは,画像化(開口合成)の有効領域として,送信領域Lti,受信領域Lrjが設定されている。この有効領域に,総伝搬時間tijの算出範囲(開口合成処理の範囲)が制限される。算出範囲を制限することで,処理の高速化および高精度化が図られる。
【0060】
送信領域Ltiは,仮想送信点Piの位置,および仮想送信点Piから送信される超音波のプロファイル(指向性)に応じて設定される。仮想送信点Piから送信される超音波はある程度の指向性を有することから,仮想送信点Piに応じて,画像化範囲30での超音波の強度分布が規定される。仮想送信点Piからの超音波の強度が弱い画像化メッシュ31からの超音波エコーWjは事実上無視して差し支えない。むしろ無視した方が後述の受信波形データDij(t)割り付けの精度が高まる。
【0061】
受信領域Lrjは,受信用の圧電素子111(j)の位置および受信プロファイル(指向性)に応じて設定される。圧電素子111(j)は,正面方向からの超音波の受信感度が高く,斜め方向からの超音波の受信感度が低い傾向にある。このため,受信用の圧電素子111(j)との関係で受信感度が低い方向に位置する画像化メッシュ31からの超音波エコーWjは事実上無視して差し支えない。むしろ無視した方が後述の受信波形データDij(t)割り付けの精度が高まる。なお,受信の指向性の広狭は,圧電素子111のサイズと対応する。圧電素子111のサイズが大きければ,広指向性となり,サイズが小さければ,狭指向性となる。
【0062】
以上から,画像合成の処理プロセスでは,送信領域Ltiと,受信領域Lrjの重複部Oijのみに画像合成処理を制限し,制限領域以外の画像合成プロセスをバイパスすることができる。この結果,画像合成処理の負荷を低減し,高速化を図るとともに,余計な画像合成ノイズを低減することで高精度化することができる。
【0063】
(2)受信波形データDij(t)のサンプリングデータの遅れ時間の検出
受信波形データDij(t)上のサンプリングデータA1…Anを検出する。また,超音波の発信からこれらのサンプリングデータAnまでの遅れ時間tnを検出する。これらのサンプリングデータAnは,画像化メッシュ31(ix,iy,iz)のいずれかから反射された超音波エコーWjに対応する。既述のように,サンプリングデータAnは,A/D変換器133によって生成され,受信波形データDij(t)(超音波エコー)を例えば,所定時間間隔でサンプリングして得られる。
【0064】
(3)画像化メッシュ31へのデータの割り付け
総伝搬時間tijに基づき,画像化メッシュ31(ix,iy,iz)に対して受信波形データDij(t)を割り付けることができる。
【0065】
即ち,遅れ時間tnと対応する総伝搬時間tijを求めることで,このサンプリングデータAnがどの画像化メッシュ31(ix,iy,iz)に対応するかが検出される。検出された画像化メッシュ31(ix,iy,iz)に対して,値を割り当てる。例えば,次の式のようにサンプリングデータの値Anを付与する。
I(ix,iy,iz)=I(ix,iy,iz)+An ……式(4)
【0066】
ここで,画像データI(ix,iy,iz)は,画像化メッシュ31(ix,iy,iz)からの超音波エコーWjの強度の積算値を表す。即ち,画像データIは,3次元での超音波エコーWjの強度分布を表す。
【0067】
ここで,一般には,遅れ時間tnと対応する総伝搬時間tij(画像化メッシュ31(ix,iy,iz))が複数存在する。この場合,1つのサンプリングデータAnに対応する値を複数の画像化メッシュ31(ix,iy,iz)に分配する。例えば,これら複数の画像化メッシュ31の個数mで除した量An/mをそれぞれの画像化メッシュ31に配分する(I=I+An/m)。この分配はノイズの原因となる。但し,多数のデータを重ね合わせることで,ノイズ成分を事実上キャンセルすることが可能である。
【0068】
既述のように,総伝搬時間tijを算出する画像化メッシュ31が範囲Oijに制限することができる。このことから,複数の画像化メッシュ31への無用な値の分配が制限され,余計な画像合成ノイズが低減される。
【0069】
この(2),(3)のプロセスを仮想送信点Piと圧電素子111(j)について繰り返すことで,検査対象物20全体の3次元画像を生成できる(開口合成処理)。
【0070】
(4)画像の表示
表示部150上の輝度をこの画像データIに対応して変化することで,表示部150上に検査対象物20の表面22や欠陥21の画像を表示できる。
【0071】
(異常領域の検出)
以下,判定部160による異常領域の検出につき説明する。
ここでは,厚さDの分布を有した検査対象物20a中の異常領域Hpを検出するプロセスを説明する。図5は,検査対象物20aを表す模式図である。画像化範囲30aは,検査対象物20aの底面部または境界部を含むように設定される。
【0072】
図6は異常領域の検出の手順の一例を表す模式図である。この模式図は,底面深さ分布D(ix,iy),深さ減衰特性G(D),判定テーブルTh(ix,iy),強度分布(ix,iy),判定画像データJ(ix,iy)を含む。図7は,底面深さ分布D(ix,iy),深さ減衰特性G(D),判定テーブルTh(ix,iy),強度分布P(ix,iy),判定画像データJ(ix,iy)それぞれに対応するグラフD(x),Th(x),P(x),J(x)を表す図である。これらのグラフは,底面深さ分布D(ix,iy)等でのx軸方向(図6のx1−x2)での変化を表す。
【0073】
(1)検査対象物20aの底面部または境界部の深さdの計測
画像化範囲30において,深さ方向の画像データIのピーク位置を検出することで,検査対象物20の底面部または境界部の深さDを計測できる(図6(A)および図7(A)参照)。具体的には,画像データI(ix,iy,iz)での添え字ix,iyを一定として,添え字izを変化させて,画像データIが極大となるizを求める。
【0074】
図5では,画像化範囲30aには,検査対象物20aの底面のみが含まれる(上面は含まれない)。この場合,画像データI(ix,iy,iz)での深さ方向での最大のピークが検査対象物20aの底面に対応すると考えられる。
【0075】
これに対して,画像化範囲30aに検査対象物20aの上面と底面の双方が含まれる場合,上面と底面それぞれに対応するピークが出現する(画像データIの極大点izが複数存在する)。この場合,画像データIのピーク値およびそのときのiz(深さ)に基づき,底面部に対応するピークを検出できる。一般に,検査対象物20aの表面および底面からの超音波エコーが大きいことから,大きな2つのピークの内の深い方が底面部に対応するピークである。
【0076】
このようにして,(ix,iy)について,検査対象物20の底面部の深さD,即ち,深さ分布D(D(ix,iy),D(x))を計測できる。
【0077】
(2)判定テーブルThの生成
底面深さ分布D(ix,iy)と一般化された深さ減衰特性G(D)(図6(B))から深さに応じて判定テーブルTh(ix,iy)が生成される(図6(C),図7(B))。
【0078】
判定テーブルTh(ix,iy)は,異常領域の有無を判定するための,基準強度Thの分布を表す。後述のように,強度分布P(ix,iy)での強度Pが判定テーブルTh(ix,iy)での基準強度Thより大きいと,異常領域と判定される。
【0079】
深さ減衰特性G(D)は,深さDと超音波の減衰量Gとの関係を表す。深さDが大きくなると,超音波の減衰量G(D)が大きくなり,超音波のエコーの強度が小さくなる。このため,深さ減衰特性G(D)に底面深さ分布D(ix,iy)に代入することで,減衰量分布G(ix,iy)を求めることができる。この減衰量分布G(ix,iy)に基づいて,判定テーブルTh(ix,iy)が生成される。
【0080】
(3)強度分布P(ix,iy)の計測
画像化範囲30aにおいて,深さ方向のデータのピークレベルを検出することにより,底面部または境界部での反射強度を計測し,その結果から強度分布P(ix,iy)が生成される(図6(D),図7(B))。
【0081】
強度分布P(ix,iy)は,深さD(Dに対応するiz)において画像化メッシュ31(ix,iy,iz)に割り付けられた値I(ix,iy,iz)を用いることができる。
【0082】
(4)異常領域Hpの検出
この強度分布P(ix,iy)を判定テーブルTh(ix,iy)と比較することで判定画像J(ix,iy)を表示し,その結果から異常領域Hpを検出できる。図7に示すように,X3,X4の範囲で,強度P(ix,iy)が判定値Th(ix,iy)より大きいことから,この範囲が異常領域Hpであると判定できる。
【0083】
検査対象物20a内に超音波の減衰が少ない領域が存在する場合,この領域を通過する超音波が検査対象物20aの底面部または境界部したときの反射強度が大きくなる。即ち,この超音波の減衰が少ない領域が異常領域Hpに対応する。
【0084】
この異常領域Hpの境界で超音波が反射されれば,この境界に対応して受信波形データDij(t)のピークが出現し,異常領域Hpが検出される。しかし,異常領域Hpの境界での超音波の反射強度が小さければ,受信波形データDij(t)のピークを用いて異常領域Hpの検出することは困難である。
【0085】
これに対して,本実施形態では,異常領域Hpの境界からの反射が弱い場合(あるいは明確な境界を有しない場合)でも,検査対象物20aの底面等からの反射強度に基づいて異常領域Hp(超音波の減衰が少ない領域)を検出できる。
【0086】
判定画像J(ix,iy)は,強度分布P(ix,iy)において,強度Pが判定値Thより小さい範囲を「0」としたものを利用することができる。
【0087】
以上述べたように,本実施形態によれば,超音波トランスデューサ110内の複数の圧電素子111の送信タイミングを制御することで,送信超音波の拡散や収束を電子的に制御しつつ送信ビームを走査できる。走査の結果として受信した多数の超音波エコーデータから3次元画像化を行うために,事前計算した送信時間テーブルTと受信時間テーブルRに収納した超音波伝播時間を使用する。更に,超音波の送受信指向性を送信時間テーブルT,受信時間テーブルRに反映することで,高速,高精度で3次元画像を合成・表示する3次元超音波画像を実現できる。
【0088】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態では,圧電素子111をマトリックス状に配置している。これに対して,圧電素子111を線状(一列)に配置することも可能である。例えば,検査対象物20が奥行き方向(Y方向)に薄いような場合が考えられる。このような場合,圧電素子111をX方向に線状に配置し,X−Z方向での平面的な画像を生成できれば足りる。このとき,仮想送信点PiをX方向に線状に配置し,開口合成することで,X−Z方向での平面的な画像を生成できる。
【符号の説明】
【0089】
100…超音波画像化装置,110…超音波トランスデューサ,111…圧電素子,112…発信圧電素子グループ,113…受信圧電素子グループ,121…発信切替回路,122…発信部,123…発信制御部,131…受信切替回路,132…増幅器,133…A/D変換器,140…信号処理部,150…表示部,160…判定部,20…検査対象物,21…欠陥,30…画像化範囲,31…画像化メッシュ,40…音響伝播媒体,Pi…仮想送信点,PFi…収束点,PYi…仮想点音源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電素子を有する超音波トランスデューサと,
前記複数の圧電素子から選択される複数の第1の圧電素子から送信される超音波の合成波が,所定の仮想送信点から発信される超音波と対応するように,前記複数の第1の圧電素子それぞれの発信タイミングを制御する発信制御部と,
前記複数の第1の圧電素子から送信され,検査対象物によって反射されて,前記複数の圧電素子から選択される複数の第2の圧電素子で受信される超音波エコーに対応する,電気信号を検出する信号検出回路と,
前記所定の仮想送信点から,前記検査対象物を含む空間を区分する複数の空間メッシュそれぞれまで,超音波が伝搬する送信伝播時間を表す送信時間テーブルを記憶する第1の記憶部と,
前記複数の空間メッシュそれぞれから前記複数の第2の圧電素子まで,超音波が伝搬する受信伝播時間を表す受信時間テーブルを記憶する第2の記憶部と,
前記複数の第1の圧電素子から前記仮想送信点に超音波が伝搬するオフセット時間を記憶する第3の記憶部と,
前記送信伝搬時間と,前記受信伝搬時間と,前記オフセット時間と,を加算して,超音波の総伝搬時間を算出する算出部と,
前記電気信号と前記総伝搬時間とに基づき,前記検査対象物に対応する画像を生成する生成部と,
を具備する超音波画像化装置。
【請求項2】
前記合成波が1の収束点に収束する収束波であり,この収束点が前記仮想送信点に対応する
請求項1記載の超音波画像化装置。
【請求項3】
前記合成波が仮想的な1の発散点から発散する発散波であり,この発散点が前記仮想送信点に対応する
請求項1記載の超音波画像化装置。
【請求項4】
前記発信制御部が,前記合成波が複数の異なる仮想送信点から発信される超音波と対応するように,前記複数の第1の圧電素子それぞれの発信タイミングを複数回制御し,
前記信号検出部が,前記複数の異なる仮想送信点それぞれに対応する複数の電気信号を検出し,
前記生成部が,前記複数の電気信号に基づき,前記検査対象物に対応する画像を生成する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波画像化装置。
【請求項5】
前記複数の異なる仮想送信点が,所定の仮想面上にマトリックス状に配置される
請求項4記載の超音波画像化装置。
【請求項6】
前記複数の異なる仮想送信点それぞれに対応して,前記第1の圧電素子を選択する送信選択部
をさらに具備する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波画像化装置。
【請求項7】
前記複数の異なる仮想送信点それぞれに対応して,前記第2の圧電素子を選択する受信選択部
をさらに具備する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超音波画像化装置。
【請求項8】
前記算出部が,前記複数の空間メッシュの一部のみに対応する送信伝播時間に対応する総伝搬時間を算出する
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波画像化装置。
【請求項9】
前記算出部が,前記複数の空間メッシュの一部のみに対応する受信伝播時間に対応する総伝搬時間を算出する
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超音波画像化装置。
【請求項10】
前記信号検出回路が検出した電気信号が前記超音波エコーのサンプリングデータであり,
前記生成部が,
前記複数の第1の圧電素子での送信から前記サンプリングデータの検出までの時間差を検出する時間差検出部と,
前記時間差と前記総伝搬時間とに基づき,前記サンプリングデータに対応する空間メッシュを判定する判定部と,
前記判定される空間メッシュにサンプリングデータに対応する値を割り付ける割り付け部と,
前記空間メッシュに割り付けられた値を加算して,画像データを生成する画像生成部と,を有する
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の超音波画像化装置。
【請求項11】
前記画像データの深さ方向の強度分布に基づき,前記検査対象の底面または境界面の深さの分布を計測する深さ計測部と,
前記深さと超音波の減衰特性との関係を表す減衰テーブルを記憶する第4の記憶部と,
前記減衰テーブルと前記深さの分布に基づき,前記画像データの強度を判定するための閾値を有する判定テーブルを生成する生成部と,
前記画像データの強度分布を導出する導出部と,
前記画像データの強度分布と,前記判定テーブルに基づき,前記画像データの強度が判定値より大きい領域を検出する検出部と,
をさらに具備する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の超音波画像化装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−227503(P2010−227503A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81459(P2009−81459)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】