説明

足部安全機構及びそれを備えた2足歩行ロボット並びにその制御構造

【課題】既存の2足歩行ロボット等の足底に容易に取付けることができ、歩行時には通常の足底として使用することができると共に、緊急時には支持多角形を拡大して広い姿勢安定領域を確保でき、転倒を防止して各部の動作を緊急停止することができる信頼性に優れる足部安全機構を提供することを目的とする。
【解決手段】歩行ロボットの足底に配設される基部と、基部に回動自在又は伸縮自在に配設され転倒防止動作時に基部の外方に突出するアーム部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行時には通常の足底として使用でき、緊急時に足底の支持多角形(仮想接地面積)を拡大して転倒を防止する足部安全機構及びそれを備えた2足歩行ロボット並びにその制御構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の生活環境で活動する人間形ロボット、いわゆるヒューマノイドロボットの研究、開発がさかんに行われている。ヒューマノイドロボットは、工業生産だけでなく、家事、高齢者介護等、人間の生活を快適にする目的で使用される場合が多く、人間のために作られた環境において不特定の使用者と密着して作業するため、それに適した形態と機能を持つ必要がある。また、特別な使用訓練を必要とせず安全で柔軟なインターフェースを備えることも要求され、極めて多くの研究課題がある。特に、移動手段として人間と同様に2足を有し、2足歩行を行う2足歩行ロボットは、多くの研究機関や企業で鋭意研究され開発されている。
本出願人が出願した(特許文献1)には「ベース部と、右足部及び左足部と、ベース部と右足部及び左足部の各々に配設された複数の受動ジョイントと、ベース部に配設された受動ジョイントと右足部に配設された受動ジョイントとの間、及び、ベース部に配設された受動ジョイントと左足部に配設された受動ジョイントとの間に各々配設されたパラレルリンク機構部と、を備えた2足歩行ロボットの下半身モジュール」が開示されている。
また、同じく本出願人が出願した(特許文献2)には「足部において目標ゼロモーメントポイントを設定し、設定した目標ゼロモーメントポイントに応じて腰部のモーメント補償軌道を算出する2足歩行ロボット装置の歩行パターンを作成する歩行パターン作成装置」が開示されている。
【特許文献1】特開2003−291080号公報
【特許文献2】特開2004−82223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(特許文献1)に記載の2足歩行ロボットの下半身モジュールは、脚部をパラレルリンク機構で構成することにより、脚部が大きな負荷に耐えることができ、重量物の搬送が可能で実用性に優れると共に、重量の大きい上半身を搭載又は組み込むことができ設計の自由度に優れるものであり、(特許文献2)に記載の歩行パターン作成装置を備えることにより、安定した2足歩行を行わせる歩行パターンを作成することができ、歩行動作の安定性に優れるという作用、効果を有していたが、2足動歩行を行うロボットである以上、本質的に静的安定領域が狭く、また2足動歩行であるため歩行中に突然停止することができず、大規模な転倒外力の作用や電源電圧の低下など何らかの理由または不具合で緊急停止すべき時にも、転倒を回避しながら緊急停止することができないという課題を有していた。
人間搭乗型でない通常の人間型2足歩行ロボットに関しては、異常時にはロボット本体を破損することなく安全に転倒し、その後、起き上がる制御装置の研究例があるが、人間が搭乗する場合には、搭乗者の安全性の面から転倒そのものが許されないため、転倒を回避して安全に緊急停止する安全装置の開発が要求されていた.
【0004】
本発明は上記要求に応えるもので、既存の2足歩行ロボット等の足底に容易に取付けることができ、歩行時には通常の足底として使用することができると共に、緊急時には支持多角形を拡大して広い姿勢安定領域を確保でき、転倒を防止して緊急停止することができる信頼性に優れる足部安全機構の提供、及びそれを備え緊急時に早期に姿勢安定状態を確保することができ、特に人間搭乗型としての安全性、実用性に優れる2足歩行ロボットの提供、並びにその制御構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の足部安全機構及びそれを備えた2足歩行ロボットは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の足部安全機構は、歩行ロボットの足底に配設される基部と、前記基部に回動自在又は伸縮自在に配設され転倒防止動作時に前記基部の外方に突出するアーム部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)歩行ロボットの足底に配設される基部に回動自在又は伸縮自在に配設され転倒防止動作時に基部の外方に突出するアーム部を有することにより、傾斜センサやバッテリ電圧監視器、緊急停止スイッチ等で大規模な転倒外力の作用や電源電圧の低下など何らかの理由または不具合で緊急停止すべき異常を検出した時に、アーム部を基部の外方に突出させ、足底の支持多角形(仮想接地面積)を拡大することができ、歩行ロボットの姿勢安定領域を拡大することができ、転倒を回避することができる。
(2)基部に回動自在又は伸縮自在に配設されたアーム部が、転倒防止動作時のみに基部の外方に突出するので、歩行時にアーム部が邪魔になることがなく、通常の足底として機能することができ、実用性、汎用性に優れる。
(3)アーム部が基部に配設されているので、足部安全機構を一体的に取り扱うことができ、同程度の大きさの歩行ロボットなら既存のすべての歩行ロボットの脚部の足底に容易に取付けを行うことができ、組み立て作業性と汎用性に優れる。
【0006】
ここで、基部の外形は歩行ロボットの脚部の足底の大きさに合わせて十分な支持面積が確保できるように略矩形状や略六角形、略八角形等の多角形状或いは略円形状、略楕円形状等に形成する。基部の材質にはアルミニウム合金が好適に用いられる。軽量で高い強度と剛性が得られるからである。また、基部の要所にリブを設けた場合、基部の強度を増強して小型化や薄肉化を図ることができる。
基部には、床や路面等の接地面からの反力を検出しZMP(ゼロモーメントポイント)の位置を測定するための6軸力覚センサが配設され、歩行ロボットの脚部の足底に取付けられる。
【0007】
アーム部は水平面内或いは垂直面内で回動自在に配設するか、略水平方向に伸縮自在に配設する。アーム部を回動させる機構としては、モータやアーム部を基部の外方へ付勢するコイルばね等のばねが好適に用いられる。特にばねを用いた場合、駆動のための動力源が不要で機構を小型軽量化することができ実用性、省エネルギー性に優れる。アーム部を伸縮させる機構としては、コイルばねや竹の子ばねなどの固体ばねや、空気や窒素ガス等の気体を作動流体とする流体ばねなどにより、アーム部を伸縮方向に付勢するものが好適に用いられる。
足部安全機構は、歩行ロボットの複数の足部の足底に配設されるので、隣接する足部に配設された足部安全機構のアーム部が、互いに干渉しない範囲でアーム部の長さや配設位置、突出方向を設定する必要がある。アーム部が互いに干渉しない範囲で、基部の各辺と平行方向や基部の中心部から放射状等に突出するように配設することができる。また、アーム部の長さは、通常歩行時に基部の内側に収まり、転倒防止動作時に他のアーム部や基部に干渉しない範囲でできるだけ長くすることが好ましい。これにより、転倒防止動作時の足底の支持多角形(仮想接地面積)を最大限に拡大することができ、歩行ロボットの十分な姿勢安定領域を確保することができる。また、アーム部の数も足底の形状や大きさ等に応じて適宜、選択することができる。
【0008】
歩行ロボットの異常は、傾斜センサで歩行ロボット自身の傾きを検出したり、ZMPの位置を検出したり、バッテリ電圧監視器で電源電圧の低下を検出したりして、判定することができる。また、外部からの緊急停止スイッチの操作などにより、転倒防止動作を行うこともできる。特に、簡易傾斜センサ、バッテリ電圧監視器、緊急停止スイッチなどをロボット本体の制御システムと独立に搭載した場合、ロボット本体の制御システムが何らかの理由によりダウンした際にも、確実に動作して転倒を防止できる安全装置として有効に利用できる.
歩行ロボットの状態が異常であると判断した時には、アーム部を基部(足部)の外方に突出させて転倒を防止すると共に、各駆動部にブレーキをかける等して歩行ロボットの動作を停止させる。
この足部安全機構は既存の歩行ロボットの足部に容易に取付けることができ、2足歩行ロボットに対し特に有用であるが、4足や6足等の多脚の歩行ロボットに対して側部側に取付けることにより横転防止も可能である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の足部安全機構であって、前記基部が、前記アーム部の一端部を水平面内で回動自在に保持する回動支持部と、前記回動支持部に配設され前記アーム部を回動させる回動駆動部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)基部が、アーム部の一端部を水平面内で回動自在に保持する回動支持部と、回動支持部に配設されアーム部を回動させる回動駆動部を有するので、転倒防止動作時に回動駆動部によって各々のアーム部を回動支持部を支点として回動させることができ、足底の支持多角形を拡大して転倒を回避することができる。
(2)アーム部の回動方向が水平面内であることにより、アームの可動域に小石等の異物が存在していても、それらを跳ね除けることができ、確実にアーム部の回動動作を行うことができ、動作の確実性、安定性に優れる。
【0010】
ここで、回動駆動部としてはモータやねじりコイルばね等が好適に用いられる。ねじりコイルばねを使用する場合は、回動支持部にねじりコイルばねを配設し、アーム部の一端部側の内側部を常に基部の外方に付勢すると共に、アーム部の他端部側をロック機構によりロックする。これにより、転倒防止動作時にロック機構が解除されると同時に、自動的にねじりコイルばねの復元力によって、アーム部を基部の外方に突出させるように回動させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の足部安全機構であって、歩行時に前記アーム部を固定し転倒防止動作時に前記アーム部の固定を解除するロック機構を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)歩行時にアーム部を固定し、転倒防止動作時にアーム部の固定を解除するロック機構を有することにより、歩行時は通常の大きさの足部として使用でき,異常時には速やかにアーム部を突出させて姿勢安定領域を拡大することができる。
【0012】
ここで、ロック機構は、アーム部を回動又は伸縮させる駆動部の動力のON/OFFを切り替える電気的なものでもよいし、アーム部又はアーム部を駆動する回動機構や伸縮機構の動作を機械的にロックするものでもよい。
アーム部の伸縮(摺動)を機械的にロックする場合のロック機構としては、例えばアーム部を摩擦力やピン嵌合等により、直接固定する方法以外に、アーム部を伸縮(摺動)させるばね部材が流体ばねである場合は、ピン嵌合や電磁バルブ等により作動流体が流れるオリフィスの開閉を行う方法が好適に用いられる。
アーム部の回動を機械的にロックする場合のロック機構としては、例えばアーム部の先端(自由端)側や長手方向の中央部等の外側面にストッパー部を当接させて、アーム部が基部の外方に移動するのを防止するものが好適に用いられる。電磁式ソレノイド等のアクチュエータでストッパー部を回動又は摺動させることにより、ロックを解除することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の足部安全機構であって、前記ロック機構が、前記アーム部の外側面に当接するストッパー部と、前記ストッパー部を垂直面内で回動させるアクチュエータと、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)ロック機構が、アーム部の外側面に当接するストッパー部を有するので、通常歩行時に、アーム部が回動して基部の外方に突出するのを防止でき、アーム部に負荷がかかって破損するのを防止できる。
(2)ロック機構が、ストッパー部を垂直面内で回動させるアクチュエータを有するので、転倒防止動作時にはアクチュエータによってストッパー部を回動させるだけで即座にロックを解除することができ、アーム部を基部の外方に突出させて確実に歩行ロボットの転倒を防止できる。
【0014】
ここで、アクチュエータとしては、ロータリーソレノイドや電動モータ等が好適に用いられる。ロータリーソレノイドは小型軽量で省スペース性に優れると共に、高速動作が可能で実用性、信頼性に優れる。
【0015】
本発明の請求項5に記載の2足歩行ロボットは、左右の足部と、前記左右の足部の足底にそれぞれ配設された請求項1乃至4の内いずれか1項の足部安全機構と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)左右の足部の足底にそれぞれ足部安全機構が配設されているので、接地した左右いずれか一方、若しくは両方の足部の足部安全機構により、転倒防止動作時に足底の支持多角形を拡大することができ、2足歩行ロボットの姿勢安定領域を拡大して、転倒を回避することができる。
【0016】
ここで、2足歩行ロボットは、脚部にシリアルリンク機構部又はパラレルリンク機構部を有する。パラレルリンク機構部はベース部に配設された受動ジョイントと左右の足部にそれぞれ配設された受動ジョイントとの間に各々配設される。各々のパラレルリンク機構部を2本のリンクを1組としてV字形状に配設し、それを3組配設したスチュワートプラットフォームにより構成した場合、安定性及び剛性に優れると共に、動作制御を簡便化することができる。
リンクとしては、モータを用いた送り螺子機構を有するものや、油圧、水圧、空気圧シリンダや直動型アクチュエータ等を用いた直動リンクや、2以上の棒状部材を駆動関節により連結したもの等種々のものが用いられる。なお、直動リンクを用いた場合、各々の直動リンクはその軸方向へ伸縮するため互いに干渉することがなく装置の小型化が可能であり好ましい。
受動ジョイントとしては、ユニバーサルジョイント、ボールジョイント、又は2軸の軸継手、或いはこれらと1軸或いは2軸の軸継手の組合せ等を各々適宜ベース側や左右の足部に配置して用いられる。なお、ユニバーサルジョイントを用いた場合、ボールジョイントに比べ可動範囲が広くなるため好ましい。
【0017】
本発明の請求項6に記載の2足歩行ロボットの制御構造は、左右の足部と、前記左右の足部の足底にそれぞれ配設された足部安全機構と、を有し、前記足部安全機構が、転倒防止動作時に足部の外方に突出するアーム部と、歩行時に前記アーム部を固定し前記転倒防止動作時に前記アーム部の固定を解除するロック機構と、を備え、前記左右の足部を上下動させて歩行する2足歩行ロボットの制御構造であって、通常歩行時は前記ロック機構により前記アーム部を固定し、転倒防止動作時は前記ロック機構による前記アーム部の固定を解除して前記アーム部を足部の外方に突出させ、前記足底の支持多角形を拡大する構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)通常は、足部安全機構のロック機構によりアーム部が固定されているので、2足歩行ロボットの歩行時に、足部安全機構を備えた足部を通常の大きさの足部として使用することができ、両足部のアーム部が歩行の妨げとなることがなく、従来と同様にZMP制御を行って安定した歩行を行うことができる。
(2)異常を検出し転倒防止動作を行う際には、ロック機構によるアーム部の固定を解除して速やかにアーム部を足部の外方に突出させ、足底の支持多角形を拡大して広い姿勢安定領域を確保でき、2足歩行ロボットの転倒を防止して各部の動作を緊急停止させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の足部安全機構及びそれを備えた2足歩行ロボットによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)傾斜センサやバッテリ電圧監視器等で歩行ロボットの異常を検出した時に、歩行ロボットの足底の基部に回動自在又は伸縮自在に配設されたアーム部を基部の外方に突出させることができ、足底の支持多角形を拡大させて歩行ロボットの姿勢安定領域を拡大することができ、転倒を回避することができる信頼性に優れた足部安全機構を提供することができる。
(2)転倒防止動作時にのみアーム部を基部の外方に突出させることができるので、アーム部が歩行の邪魔になることがなく、通常の足底として機能することができる実用性、汎用性に優れた足部安全機構を提供することができる。
(3)足部安全機構が基部に一体化されていることにより、既存の歩行ロボットの脚部の足底に容易に取付けを行うことができ、緊急時に歩行ロボットの転倒を防止できる組立て作業性、取扱い性、生産性に優れた足部安全機構を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)回動支持部によりアーム部の一端部が水平面内で回動自在に保持されているので、転倒防止動作時に回動駆動部によって各々のアーム部を回動支持部を支点として回動させることができ、足底の支持多角形を拡大して転倒を回避することができる信頼性に優れた足部安全機構を提供することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)歩行時にアーム部を固定し、転倒防止動作時にアーム部の固定を解除するロック機構を有するので、歩行時にアーム部が誤動作するのを確実に防止して通常の大きさの足部として使用できると共に、異常時には速やかに動作して足底の支持多角形を拡大し広い姿安定領域を確保することができる信頼性、実用性に優れた足部安全機構を提供することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)ロック機構が、アーム部の外側面に当接するストッパー部を有するので、通常歩行時に、アーム部が回動して基部の外方に突出するのを防止でき、アーム部が破損するのを確実に防止できる信頼性に優れた足部安全機構を提供することができる。
(2)ロック機構が、ストッパー部を垂直面内で回動させるアクチュエータを有するので、転倒防止動作時にアクチュエータによって即座にストッパー部を回動させてロックを解除することができ、アーム部を基部の外方に突出させて確実に歩行ロボットの転倒を防止できる動作安定性に優れた足部安全機構を提供することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)左右の足部の足底にそれぞれ足部安全機構が配設されているので、接地した左右いずれか一方、若しくは両方の足部の足部安全機構により、転倒防止動作時に足底の支持多角形を拡大することができ、2足歩行ロボットの姿勢安定領域を拡大して、転倒を回避することができる信頼性、安全性に優れた2足歩行ロボットを提供することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)通常は、ロック機構でアーム部を固定することにより、両足部のアーム部の干渉を防止し、足部安全機構を備えた足部を通常の大きさの足部として使用することができ、従来と同様にZMP制御を行って、2足歩行ロボットの安定した歩行を行うことができる汎用性、実用性に優れた2足歩行ロボットの制御構造を提供することができる。
(2)緊急停止すべき異常を検出した際には、ロック機構によるアーム部の固定を解除して速やかにアーム部を足部の外方に突出させ、足底の支持多角形を拡大して広い姿勢安定領域を確保でき、2足歩行ロボットの転倒防止動作を行うことができる汎用性、実用性に優れた2足歩行ロボットの制御構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における足部安全機構及びそれを備えた2足歩行ロボットについて、図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態1における足部安全機構を備えた2足歩行ロボットを示す斜視図である。
図1中、10は本発明の実施の形態1における足部安全機構1を備えた2足歩行ロボット、11は2足歩行ロボット10のベース部、12a、12bは略三角形状に形成され足底に足部安全機構1が配設された2足歩行ロボット10の左右の足部、13は2本の直動リンク13a、13bを1組としてV字形状に配設された2足歩行ロボット10のパラレルリンク機構部、14はベース部11の左右にそれぞれ3箇所ずつ互いに対称に配設され3組のパラレルリンク機構部13の上端と連結された2自由度を有するベース部受動ジョイント、15は左右の足部12a、12bにそれぞれ3箇所ずつ互いに対称に配設され3組のパラレルリンク機構部13の下端と連結された3自由度を有する足部受動ジョイントである。
【0025】
次に、本発明の実施の形態1における足部安全機構の詳細について、以下図面を用いて説明する。
図2は本発明の実施の形態1における足部安全機構を示す斜視図であり、図3は足部安全機構の動作状態を示す斜視図である。
図2及び図3中、1は本発明の実施の形態1における足部安全機構、2はアルミニウム合金等の金属製で外形が略矩形状等の多角形や円形に形成された足部安全機構1の基部、2aは略有底円筒状等に形成され床や路面等の接地面からの反力を検出しZMPの位置を測定するための6軸力覚センサ(図示せず)が収容される基部2の力覚センサ収容部、2bは力覚センサ収容部2aの底面に穿設され6軸力覚センサの位置決めを行うための位置決めピンが挿通される2箇所の位置決め孔、2cは力覚センサ収容部2aの底面に穿設され6軸力覚センサをねじ止めにより固定する固定ボルトが挿通される4箇所のボルト挿通孔、2dは基部2の底面、2eは基部2の四隅に配設され後述するアーム部3の一端部を回動自在に保持する基部2の回動支持部、3は回動支持部2eに保持されたアーム部固定軸3aにより回動自在に支持されたアーム部、4はアーム部3のアーム部固定軸3aに配設され一端が基部2に突設されたばね固定部2fに当接し他端がアーム部3の内側面3bに当接してアーム部3を基部2の外方に付勢するねじりコイルばねを用いた回動駆動部、5は基部2の三辺の略中央に配設され歩行時にアーム部3を固定し転倒防止動作時にアーム部3の固定を解除するロック機構、5aは略L字型に形成されロック機構5の背面に固定されてロック機構5を基板2に固定するマウント部、5bはロータリーソレノイドを用いたロック機構5のアクチュエータ、6は略S字型に形成され歩行時にアーム部3の外側面3cに当接してアーム部3を固定し転倒防止動作時にアクチュエータ5bにより垂直面内で回動されてアーム部3の固定を解除するストッパー部、6aはストッパー部6に配設されアーム部3との摩擦を低減するボールプランジャである。
【0026】
基部2に6軸力覚センサが収容される力覚センサ収容部2aを有し、力覚センサ収容部2aの底面に6軸力覚センサの位置決めを行うための位置決めピンが挿通される2箇所の位置決め孔2b及び6軸力覚センサをねじ止めにより固定する固定ボルトが挿通される4箇所のボルト挿通孔2cが穿設されているので、容易に力覚センサ収容部2aに6軸力覚センサを位置決めし、固定することができる。これにより、6軸力覚センサを介して既存の2足歩行ロボット10等の足部12a、12b(図1参照)に足部安全機構1を取付けることができ、床や路面等の接地面からの反力を検出しZMPの位置を測定することができる。
基部2及び力覚センサ収容部2aの形状を変更するだけで、種々の形状の2足歩行ロボット10等の足部12a、12bに足部安全機構1を取付けることができ、汎用性に優れる。また、位置決め孔2b及びボルト挿通孔2cの数や位置についても、6軸力覚センサの位置決めピン及び固定雌ねじ部の数や位置に応じて適宜、選択することができる。尚、基部2には足部12a、12bの形状に合わせて力覚センサ収容部2aの周囲にリブを配設した。これにより、基部2の強度を確保して足部安全機構1の小型化、軽量化を図っている。
【0027】
次に、アーム部及びロック機構の詳細について説明する。
図4はアーム部を示す斜視図であり、図5はロック機構を示す斜視図である。
図4中、3dはアーム部3のアーム部固定軸3aの上下に配設された軸受である。
アーム部3を回動させるための回動駆動部4としてねじりコイルばねを用いることで、アーム部固定軸3aに容易に組み込むことができ、全体を小型化できる。ねじりコイルばねは、ねじり角度が大きく、短い応答時間で動作可能なばね定数を有するものを選択した。アーム部3の変位を大きくとることができ、緊急時に迅速にアーム部3を拡大させるためである。
また、アーム部3のアーム部固定軸3aに軸受3dを配設することで、アーム部3の回動動作時の摩擦抵抗を低減させた。これにより、アーム部3の回動動作の安定性、応答性に優れる。
本実施の形態では、アーム部3を上下に分割して形成し、軸受3dや回動駆動部4が配設されたアーム部固定軸3aを上下から挟むようにして固定したが、これに限定されるものではなく、アーム部3を削り出し等により一体に形成し、軸受3dや回動駆動部4を配設した上でアーム部固定軸3aを挿通固定してもよい。
アーム部3は動作時に少しでも大きな支持多角形が得られるように、基板2内に収納できる範囲内で最大限の長さに配置した(図2)。本実施の形態では、足部12a、12bの内側に配置されるアーム部3の長さが短く、足部12a、12bの外側に配置されるアーム部3の長さが長くなっている(図3)が、アーム部3の長さはこれに限定されるものではない。基部2の形状、足部12a、12bの間隔、アーム部3の取り付け位置や突出方向等に応じて、転倒防止動作時に互いに干渉しない範囲で適宜、選択できる。
【0028】
図5において、ロック機構5がマウント部5aを有するので、容易に基部2に固定することができる。ストッパー部6にはアーム部3と接触する部分にボールプランジャ6aを配設した(図2参照)。これにより、アーム部3とストッパー部6との間の摩擦を低減させることができ、アクチュエータ5bによりストッパー部6を回動させた際に、ストッパー部6が滑らかにアーム部3の外側面3c上を移動することができ、動作の安定性に優れる。
ロック機構5のアクチュエータ5bを駆動し、ストッパー部6を垂直面内で回動させることにより、アーム部3の自由端側が開放される。その結果、回動駆動部4であるねじりコイルばねの復元力により、アーム部3がアーム部固定軸3aを支点として基部2の外方に突出するように回動する。4つのアーム部3が基部2の四隅から突出することで足底の支持多角形を拡大することができ、ZMPの存在範囲が広がることで転倒を未然に防ぐことができる(図3参照)。
【0029】
尚、図3に示したように、基部2の長辺に沿って足部12a、12bの外側に配設される2つのアーム部3は中央から前後方向に開くように配設した。これにより、1つのロック機構5で長辺部の2つのアーム部3の固定を解除することができるので、合計3つのロック機構5で4つのアーム部3の固定を解除できることになり、足部安全機構1を軽量化することができると共に、アーム部3の設置スペースを確保でき、アーム部3の長大化を図ることができる。
また、図5に示すようにストッパー部6はアクチュエータ5bの回動中心に対して点対称な略S字型に形成し、両端部にボールプランジャ6aを配設した。これにより、前述のように1つのロック機構5で2つのアーム部3の固定を行うことができると共に、転倒防止動作時に2つのアーム部3の固定の解除を同じタイミングで行うことができ、動作安定性に優れる。尚、2つのアーム部3の固定を同時に行うストッパー部6の形状は、本実施の形態に限定されるものではなく、点対称の形状であればよい。また、本実施の形態では4箇所全てのストッパー部6の形状を同一としたが、1つのアーム部3しか固定しないストッパー部6については、先端がアーム部3の外側面3cに当接する形状であればどのような形状でも構わない。尚、全てのストッパー部6を同一の形状にした場合、アクチュエータ5bによるストッパー部6の回動角度を同一に設定することで、容易に全てのアーム部3の固定の解除を同じタイミングで行うことができ取扱い性に優れる。
【0030】
本実施の形態では、図3に示したように2足歩行ロボット10の足部12a、12bに取り付けた各々の足部安全機構1のアーム部3の内、足部12a、12bの内側に配置される各2つのアーム部3については、回動角度を略90度程度とし、アーム部3が互いに干渉することがないように突出方向を設定した。尚、足部安全機構1のアーム部3の突出方向はこれに限定されるものではなく、左右の足部12a、12bの間隔やアーム部3の長さ等に応じて、互いに干渉しない範囲で適宜、選択することができる。
この転倒防止動作は2足歩行ロボット10などの歩行ロボットが姿勢の異常を検出した時に行う。例えば、傾斜センサで2足歩行ロボット10自身の傾きを検出したり、ZMPの位置を検出したり、バッテリ電圧監視器で電源電圧の低下を検出したり、緊急停止スイッチの入力を検出したりして、判定することができる。特に緊急停止スイッチや簡易傾斜センサ、バッテリ電圧監視器などを歩行ロボット本体の制御システムと独立に搭載した場合、歩行ロボット本体の制御システムが何らかの理由によりダウンした際にも確実に動作して転倒を防止できる安全装置として有効に利用できる.
また、本実施の形態では、回動駆動部4としてねじりコイルばねを用いたが、モータを用いてもよい。正逆回転可能なモータを用いれば、アーム部3を逆方向に回動させて初期状態に自動復帰させることができる。ロック機構5のアクチュエータ5bについても、正逆回転可能なもの又は多段階の回動角度を設定できるものを用いれば、初期状態に復帰したアーム部3をストッパー部6で固定することができ、復帰動作を完全に自動化することができる。
【0031】
次に、2足歩行ロボットのベース部受動ジョイント及び足部受動ジョイントの詳細について説明する。
図6はベース部受動ジョイントの要部斜視図であり、図7は足部受動ジョイントの要部斜視図である。
図6中、16aはベース部2の下部に固定されたコ字形状のベース部上部継手、16bはベース部上部継手16aの立設された対向辺に架設された上部継手軸、16cは直動リンク13a,13bの上端部に固定されたコ字形状のベース部下部継手、16dはベース部下部継手16cの立設された対向辺に架設されベース部下部継手16cを回動自在に軸支する下部継手軸、16eは上部継手軸16bと下部継手軸16dを直交させて連結する連結回動部である。
図7中、17aは直動リンク13aの下端部に連結されたコ字形状の第1の足部上部継手、17bは直動リンク13bの下端部に連結されたコ字形状の第2の足部上部継手、17cは第1の足部上部継手17aと第2の足部上部継手17bの立設された対向辺に架設され第1の足部上部継手17aと第2の足部上部継手17bを連結し各々回動自在に軸支する上部継手軸、17dは後述の基部を介して足部12a,12bに連結されたコ字形状の足部下部継手、17eは足部下部継手17dの立設された対向辺に架設された下部継手軸、17fは上部継手軸17cと下部継手軸17eを直交させて連結する連結回動部、18は足部12a,12b上に固定された継手固定部、18aは基部18に対して足部下部継手17dを回動自在に軸支する継手回動軸である。
【0032】
図6に示すように、ベース部下部継手16cは、ベース部上部継手16aに対して、上部継手軸16bと下部継手軸16dの軸周方向に回動する。これにより、ベース部受動ジョイント14は、直動リンク13a,13bの長手方向に直交する上部継手軸16bと下部継手軸16dの軸周方向に2自由度を有するので、直動リンク13の伸縮に追従してこれを妨げることなく円滑に従動する。
また、図7に示すように、第1の足部上部継手17a及び第2の足部下部継手17bは、足部下部継手17dに対して、上部継手軸17cと下部継手軸17eの軸周方向に回動する。また、足部下部継手17dは、継手固定部18に対して、継手回動軸18aの軸周方向に回動する。これにより、足部受動ジョイント15は、直動リンク13a,13bの長手方向に直交する上部継手軸17cと下部継手軸17eの軸周方向に2自由度を有すると共に、直動リンク13a,13bの軸方向の継手回動軸18aの軸周方向に1自由度を有するので、直動リンク13a,13bの伸縮に追従してこれを妨げることなく円滑に従動する。
【0033】
2足歩行ロボット10は、各々のパラレルリンク機構部13が、2本の直動リンク13a、13bを1組としてV字形状に配設され、それが3組配設されたスチュワートプラットフォームにより構成されていることにより、安定性及び剛性に優れると共に、動作制御を簡便化することができる。また、パラレルリンク機構部13のリンクとして直動リンク13a、13bを用い、受動ジョイントとしてベース部受動ジョイント14及び足部受動ジョイント15を用いたことにより、各々の直動リンク13a、13bがその軸方向へ伸縮するため互いに干渉することがなく、小型化が可能である。
ベース部受動ジョイント14、足部受動ジョイント15は図6及び図7に示したものの他、それぞれユニバーサルジョイント、ボールジョイント、又は2軸の軸継手、或いはこれらと1軸或いは2軸の軸継手を組合せたもの等を用いることができる。なお、ユニバーサルジョイントを用いた場合、ボールジョイントに比べ可動範囲が広くなるため好ましい。
なお、左右の脚部に用いられる各々のパラレルリンク機構部13は、ベース部11の両側に互いに対称に配設し、パラレルリンク機構部13に用いられる直動リンク13a、13bも、それぞれ左右の脚部で同様に対称に配設した。
【0034】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における足部安全機構を備えた2足歩行ロボットの制御構造について説明する。
まず、通常の歩行時においては、図2に示したように、各々のアーム部3はロック機構5のストッパー部6によりロックされ、基部2の各辺に沿うように基部2の内側に収容されている。これにより、歩行時にアーム部3が2足歩行ロボット10の他の部位に干渉したり、負荷がかかったりする等して破損することはない。
2足歩行ロボット10は、歩行時に傾斜センサ、バッテリ電圧監視器、緊急停止スイッチ(すべて図示せず)等により、その状態を監視する。2足歩行ロボット10の緊急停止制御部(図示せず)が傾斜センサ等により状態の異常を検出し、転倒防止動作を行う必要があると判断すると、ロック機構5のアクチュエータ5bが駆動される。アクチュエータ5bによりストッパー部6が垂直面内で回動すると、アーム部3の自由端側が開放され、ねじりコイルばね4の復元力により、アーム部3がアーム部固定軸3aを支点として基部2の外方に突出するように回動する。
図3に示したように、4つのアーム部3が基部2の四隅から突出することで足底の支持多角形を拡大することができ、基部2に加えてアーム部3で足底を支持して転倒を防止する。尚、図1に示したように足部安全機構1は左右の足部12a、12bの足底に左右対称に取り付けることにより、アーム部3の干渉を防止している。
【0035】
以上のように実施の形態1における足部安全機構によれば、以下の作用を有する。
(1)歩行ロボットの足底に配設される基部2に回動自在に配設され転倒防止動作時に基部2の外方に突出するアーム部3を有することにより、傾斜センサ等で歩行ロボットの姿勢の異常を検出した時に、アーム部3を基部2の外方に突出させ、足底の支持多角形(仮想接地面積)を拡大することができ、歩行ロボットの姿勢安定領域を拡大することができ、転倒を回避することができる。
(2)基部2に回動自在に配設されたアーム部3が、転倒防止動作時のみに基部2の外方に突出するので、歩行時にアーム部3が邪魔になることがなく、通常の足底として機能することができ、実用性、汎用性に優れる。
(3)アーム部3が基部2に配設されているので、足部安全機構1を一体的に取り扱うことができ、既存の歩行ロボットの脚部の足底に容易に取付けを行うことができ、組み立て作業性に優れる。
(4)基部2が、アーム部3のアーム部固定軸3aを水平面内で回動自在に保持する回動支持部2eと、回動支持部2eに配設されアーム部3を回動させるねじりコイルばねを用いた回動駆動部4を有するので、転倒防止動作時に回動駆動部4によって各々のアーム部3をアーム部固定軸3aを支点として回動させることができ、足底の支持多角形を拡大して転倒を回避することができる。
(5)アーム部3の回動方向が水平面内であることにより、アーム部3の可動域に小石等の異物が存在していても、それらを跳ね除けることができ、確実にアーム部3の回動動作を行うことができ、動作の確実性に優れる。
(6)歩行時にアーム部3を固定し、転倒防止動作時にアーム部3の固定を解除するロック機構5を有することにより、歩行時にアーム部3が誤動作するのを防止でき、信頼性を向上させることができる。
(7)ロック機構5が、アーム部3の外側面3cに当接するストッパー部6を有するので、通常歩行時に、アーム部3が回動して基部2の外方に突出するのを確実に防止でき、歩行時は通常の大きさの足部として使用でき、異常時には速やかにアーム部3を回動させて足底の支持多角形を拡大し、姿勢安定領域を拡大することができる。
(8)ロック機構5が、ストッパー部6を垂直面内で回動させるアクチュエータ5bを有するので、転倒防止動作時にはアクチュエータ5bによってストッパー部6を回動させるだけで即座にロックを解除することができ、アーム部3を基部2の外方に突出させて確実に歩行ロボットの転倒を防止できる。
【0036】
実施の形態1における足部安全機構を備えた2足歩行ロボットによれば、以下の作用を有する。
(1)左右の足部12a,12bの足底にそれぞれ足部安全機構1が配設されているので、接地した左右いずれか一方、若しくは両方の足部12a,12bの足部安全機構1により、転倒防止動作時に足底の支持多角形を拡大することができ、2足歩行ロボット10の姿勢安定領域を拡大して、転倒を回避することができる。
【0037】
実施の形態1における2足歩行ロボットの制御構造によれば、以下の作用を有する。
(1)通常は、足部安全機構1のロック機構5によりアーム部3が固定されているので、2足歩行ロボット10の歩行時に、足部安全機構1を備えた足部12a、12bを通常の大きさの足部12a、12bとして使用することができ、アーム部3が歩行動作の妨げとなることがなく、従来と同様にZMP制御を行って安定した歩行を行うことができる。
(2)異常を検出し転倒防止動作を行う際には、ロック機構5によるアーム部3の固定を解除して速やかにアーム部3を足部12a、12bの外方に突出させ、足底の支持多角形を拡大して広い姿勢安定領域を確保でき、2足歩行ロボット10の転倒を防止して各部の動作を緊急停止させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、既存の2足歩行ロボット等の足底に容易に取付けることができ、歩行時には通常の足底として使用することができると共に、緊急時には支持多角形を拡大して足底の安定性を確保でき、転倒を防止することができる信頼性に優れる足部安全機構の提供、及びそれを備え緊急時に早期に姿勢安定状態を確保して緊急停止することができ、特に人間搭乗型としての安全性、実用性に優れる2足歩行ロボットの提供、並びにその制御構造の提供を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における足部安全機構を備えた2足歩行ロボットを示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における足部安全機構を示す斜視図
【図3】足部安全機構の動作状態を示す斜視図
【図4】アーム部を示す斜視図
【図5】ロック機構を示す斜視図
【図6】ベース部受動ジョイントの要部斜視図
【図7】足部受動ジョイントの要部斜視図
【符号の説明】
【0040】
1 足部安全機構
2 基部
2a 力覚センサ収容部
2b 位置決め孔
2c ボルト挿通孔
2d 底面
2e 回動支持部
2f ばね固定部
3 アーム部
3a アーム部固定軸
3b 内側面
4 ねじりコイルばね
5 ロック機構
5a マウント部
5b ロータリーソレノイド
6 ストッパー部
6a ボールプランジャ
10 2足歩行ロボット
11 ベース部
12a、12b 足部
13 パラレルリンク機構部
13a、13b 直動リンク
14 ベース部受動ジョイント
15 足部受動ジョイント
16a ベース部上部継手
16b 上部継手軸
16c ベース部下部継手
16d 下部継手軸
16e 連結回動部
17a 第1の足部上部継手
17b 第2の足部上部継手
17c 上部継手軸
17d 足部下部継手
17e 下部継手軸
17f 連結回動部
18 継手固定部
18a 継手回動軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行ロボットの足底に配設される基部と、前記基部に回動自在又は伸縮自在に配設され転倒防止動作時に前記基部の外方に突出するアーム部と、を備えたことを特徴とする足部安全機構。
【請求項2】
前記基部が、前記アーム部の一端部を水平面内で回動自在に保持する回動支持部と、前記回動支持部に配設され前記アーム部を回動させる回動駆動部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の足部安全機構。
【請求項3】
歩行時に前記アーム部を固定し転倒防止動作時に前記アーム部の固定を解除するロック機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の足部安全機構。
【請求項4】
前記ロック機構が、前記アーム部の外側面に当接するストッパー部と、前記ストッパー部を垂直面内で回動させるアクチュエータと、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の足部安全機構。
【請求項5】
左右の足部と、前記左右の足部の足底にそれぞれ配設された請求項1乃至4の内いずれか1項の足部安全機構と、を備えたことを特徴とする2足歩行ロボット。
【請求項6】
左右の足部と、前記左右の足部の足底にそれぞれ配設された足部安全機構と、を有し、前記足部安全機構が、転倒防止動作時に足部の外方に突出するアーム部と、歩行時に前記アーム部を固定し前記転倒防止動作時に前記アーム部の固定を解除するロック機構と、を備え、前記左右の足部を上下動させて歩行する2足歩行ロボットの制御構造であって、通常歩行時は前記ロック機構により前記アーム部を固定し、転倒防止動作時は前記ロック機構による前記アーム部の固定を解除して前記アーム部を足部の外方に突出させ、前記足底の支持多角形を拡大することを特徴とする2足歩行ロボットの制御構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−75940(P2007−75940A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266064(P2005−266064)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(302022599)
【出願人】(500539561)株式会社テムザック (19)
【Fターム(参考)】