説明

車両のパワートレイン配設構造

【課題】パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストの車室内への熱害防止との両立を図り、かつ、走行風を利用してキャタリストを効率的に冷却でき、さらに空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能な車両のパワートレイン配設構造を提供する。
【解決手段】車室2とエンジンルーム1とを仕切るダッシュパネルが設けられ、ダッシュパネル3に設けられた凹部内パワートレイン20が設けられ、パワートレイン20は、縦置きエンジン21と、その後方に接続されたトランスミッション22とから成り、エンジン21の前方にはエンジン21から延びる排気管が配設され、排気管にはキャタリスト31が接続され、キャタリスト31に走行風を導く走行風ガイド手段38,40が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられたような車両のパワートレイン配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両のパワートレイン配設構造としては、図6、図7、図8に示す構造がある。
すなわち、エンジンルーム81と車室82とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル83を設け、このダッシュロアパネル83の後端部にはフロアパネル84を接続すると共に、このフロアパネル84には車室内方へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部85が形成されている。
【0003】
上述のエンジンルーム81内およびトンネル部85の車外側には、エンジン86とトランスミッション87とから成るパワートレイン88を配設するが、ヨー慣性モーメントを低減して走行安全性を向上させる目的で、上記ダッシュロアパネル83の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部83aを形成し、エンジン86の後部を、この凹部83a内に設けている。
また、上記凹部83aを設けることにより、エンジン86を後退配置して、エンジンルーム81のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0004】
この車両の駆動方式は前部機関後輪駆動タイプに構成されていて、縦置きに配置した上記パワートレイン88により、図示しない後輪を駆動するように構成している。
さらに、エンジン86の排気系には、排気ガスを浄化するキャタリスト89を設けるが、図6、図7、図8に示すこの従来構造においては、該キャタリスト89がフロントシート90(図8参照)の下方におけるトンネル部85の上方膨出部85aの車外側に設けられている。
【0005】
このキャタリスト89は排気温により早期に活性化する必要があるので、可及的エンジン86に近い上述のフロアパネル84の下部に設けられているため、次のような問題点があった。
つまり、フロア下方へのキャタリスト89の配置により、フロントシート90に着座する乗員のヒップポイントが必然的に上方位置になり、空力抵抗の関係上、ルーフ91の位置は下方に下げることが望ましいが、キャタリスト89が存在するので、ルーフ91の位置を下げることが不可能となる。
【0006】
また、キャタリスト89は反応時に発熱するので、乗員に熱害が及ぶ問題点があり、この熱害を防止するため、図7のキャタリスト89とトンネル部85の上方膨出部85aとの間にインシュレータなどを介設すると、さらにヒップポイントが上がる問題点があった。
なお、図中、92は前輪、93はラジエータ、94はサスクロス(詳しくはサスペンションクロスメンバ)、95はフロントサイドフレーム、96はバンパレイン、97はカウル部、98はボンネット、99はフロントウインドガラスである。
【0007】
一方、特許文献1には、ダッシュロアパネルの凹部にエンジンの後側一部を配設する一方、排気管を一旦エンジンの前方に取り回し、このエンジンの前方において車幅方向に延びるようにキャタリストを配設した構造が開示されているが、走行風を利用してキャタリストを効率的に冷却するという技術思想は開示されていない。
【0008】
また、特許文献2には、ダッシュロアパネルの凹部にレシプロエンジンの後側一部を配設し、エンジン側方の排気マニホルド直下において、キャタリストを略上下方向に向けて配設した構造が開示されているが、走行風を利用してキャタリストを効率的に冷却するという技術思想は開示されていない。
【0009】
さらに、特許文献3にも、上記特許文献2と同様に、ダッシュロアパネルの凹部にレシプロエンジンの後部一部を配設し、エンジン側方の排気マニホルド直下において、キャタリストを略上下方向に向けて配設した構造が開示されているが、走行風を利用してキャタリストを効率的に冷却するという技術思想は開示されていない。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−28911号公報
【特許文献3】特開2005−29057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、ダッシュパネルの凹部にパワートレインを設け、該パワートレインを縦置きエンジンとその後方に接続したトランスミッションとで構成し、縦置きエンジンの前方には該エンジンから延びる排気管を配設すると共に、該排気管にキャタリストを接続し、このキャタリストに走行風を導く走行風ガイド手段を設けることで、パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストの車室内への熱害防止との両立を図ることができ、走行風を利用してキャタリストを効率的に冷却することができ、また空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能な車両のパワートレイン配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車両のパワートレイン配設構造は、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレインは、縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前方には該エンジンから延びる排気管が配設されると共に、上記排気管にはキャタリストが接続され、該キャタリストに走行風を導く走行風ガイド手段が設けられたものである。
上記構成によれば、ダッシュパネルの凹部内にパワートレインを設けるので、パワートレインの後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0012】
しかも、エンジン前方の排気管にキャタリストを接続し、走行風ガイド手段にて該キャタリストに走行風を導くので、キャタリストの車室内への熱害防止を図ることができる。
つまり、パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストの車室内への熱害防止との両立を図ることができ、しかも、走行風を利用して上記キャタリストを効率的に冷却することができる。
さらに、上記キャタリストはフロア下方に存在しないので、ヒップポイントが上がることはなく、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストと上記エンジンとの間には、該エンジンを冷却するために熱交換器が配設されたものである。
上記構成によれば、キャタリストの熱がエンジンに悪影響を及ぼすのを、熱交換器にて防止することができる。つまり、キャタリストの熱でエンジンが加熱されると、エンジン性能が低下するので、これら両者(キャタリストとエンジン)間に、冷却作用兼、遮蔽作用を奏する熱交換器を配設したものである。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストは、上記熱交換器の車幅方向中心位置に対して車幅方向でオフセットして配設されたものである。
上記構成によれば、キャタリストを熱交換器に対して車幅方向でオフセットさせたので、走行風は熱交換器にも導かれ、キャタリストにより熱交換器の冷却に悪影響を与えることがなく、キャタリストの冷却と熱交換器の冷却とを両立させることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記熱交換器には冷却ファンが設けられ、該冷却ファンの少なくとも一部と上記キャタリストとが正面視でオーバラップするように配設されたものである。
上記構成によれば、冷却ファンの吹込み風によりキャタリストを確実に冷却することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、車両の停止を検出する車両停止検出手段と、上記車両停止検出手段の信号に従って、上記冷却ファンを上記キャタリストに配風するように回転させる冷却ファン制御手段と、を備えたものである。
上記構成によれば、車両の停止時には、冷却ファンを逆回転させて、この冷却ファンの起風によりキャタリストを冷却することができる。つまり、車両の停止時には、走行風の導入が望めないので、上記冷却ファンを逆回転させることで、キャタリストの冷却を図るものである。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記エンジンの冷却水温を検出する水温検出手段を設け、上記車両停止検出手段により車両の停止が検出され、かつ上記水温検出手段による所定低温検出時に上記冷却ファンをキャタリストに配風するように回転させるものである。
上記構成によれば、エンジン冷却水によるエンジンの冷却を阻害することなく、キャタリストの冷却が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ダッシュパネルの凹部にパワートレインを設け、該パワートレインを縦置きエンジンとその後方に接続したトランスミッションとで構成し、縦置きエンジンの前方には該エンジンから延びる排気管を配設すると共に、該排気管にキャタリストを接続し、このキャタリストに走行風を導く走行風ガイド手段を設けたので、パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストの車室内への熱害防止との両立を図ることができ、走行風を利用してキャタリストを効率的に冷却することができ、また空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストの車室内への熱害防止の両立を図り、走行風を利用してキャタリストを効率的に冷却することができるという目的を、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレインは、縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前方には該エンジンから延びる排気管が配設されると共に、上記排気管にはキャタリストが接続され、該キャタリストに走行風を導く走行風ガイド手段が設けられるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のパワートレイン配設構造を示し、側面図で示す図1、平面図で示す図2、正面図で示す図3において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。
【0021】
上述のダッシュロアパネル3の下部後端部には、図1に示すようにフロアパネル4を、一体または一体的に接続すると共に、このフロアパネル4には車室内方
へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部5を形成している。このトンネル部5は車体剛性の中心となるもので、トンネル開口部の前部はエンジンルーム1と連通している。
【0022】
図2に示すように、上述のフロアパネル4の左右両サイドには、車両の前後方向に延びるサイドシル6,6を接合固定している。
このサイドシル6は、サイドシルインナ7とサイドシルアウタ8とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0023】
また、図2に示すように、上述のダッシュロアパネル3の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部3aを形成する一方、図1に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端部には、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル9を接合固定し、このダッシュアッパパネル9の上部にはカウルパネル10を取付けて、車幅方向に延びるカウル閉断面11を備えたカウル部12を構成している。
【0024】
さらに、上述の車室2の前方には、フロントウインドガラス13が設けられ、このフロントウインドガラス13の上部はルーフ14前部のフロントヘッダで支持され、フロントウインドガラス13の左右両側部は、左右のフロントピラー15,15(図3参照)で支持され、フロントウインドガラス13の下部は、上述のカウルパネル10で支持されている。
【0025】
図2に示すように、ダッシュロアパネル3の前部からエンジンルーム1の左右両サイドを車両の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム16,16を設け、これら左右の各フロントサイドフレーム16,16の前端相互間には、バンパレイン17を車幅方向に向けて取付けている。
ここで、上述のフロントサイドフレーム16は、フロントサイドフレームインナとフロントサイドフレームアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0026】
また、図1に示すように、エンジンルーム1の上面部には、ボンネット18が開閉可能に設置されており、このボンネット18前端部下方には、走行風取入用の開口部を備えたフロントグリル19が配設されている。
【0027】
図1、図2に示すように、エンジンルーム1内およびトンネル部5の車外側には、図示しない後輪を駆動するパワートレイン20が設けられており、前部機関後輪駆動(いわゆるFR)タイプの車両を構成している。
上述のパワートレイン20は、縦置きエンジン21と、その後方に接続されたトランスミッション22とを備え、上記エンジン21の後部を上記凹部3a内に配設することにより、重量物としてのエンジン21乃至パワートレイン20の後退レイアウトを達成して、ヨー慣性モーメントの低減を図って、走行安全性を確保すると共に、エンジンルーム1のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図るように構成している。
【0028】
ここで、上述のエンジン21は、フロントサイドハウジング23,フロントロータハウジング24、インタミディエイトサイドハウジング25、リヤロータハウジング26、リヤサイドハウジング27を備えたロータリエンジンで構成され、各ロータハウジング24,26内を回転するロータの回転力を、エキセントリックシャフトに伝達して出力するものである。
【0029】
図2に示すように、トランスミッション22にはプロペラシャフト28が接続されていて、トランスミッション22の出力を該プロペラシャフト28を介して、図示しないリヤディファレンシャル装置に伝達し、このリヤディファレンシャル装置の差動出力を、リヤアクスルシャフトを介して左右の後輪に伝達すべく構成している。
また、上述のリヤディファレンシャル装置のワインドアップ振動を抑制すると共に、パワートレイン20からのロール方向の動きを許容する目的で、トランスミッション22のミッションケースと、リヤディファレンシャル装置のデフケースとの間には、車両の前後方向に延びるパワープラントフレーム29(いわゆるPPF)が取付けられており、このパワープラントフレーム29および上述のプロペラシャフト28は図2に示すように、トンネル部5内に配設されている。
【0030】
図2に示すように、エンジン21の前方には該エンジン21における各ロータハウジング24,26の排気ポートから延びる排気管30が配設されると共に、この排気管30には排気ガス浄化用のキャタリスト31が車幅方向に向くように接続されており、このキャタリスト31の下流部には、U字状に折曲げられて車幅方向に延びる側方延長部32aと、その側端部からエンジン21の側方下部を通ってトンネル部5内に導入される後方延長部32bとを備えたエキゾーストパイプ32が接続されている。
【0031】
しかも、図1、図2に示すように、上述のキャタリスト31とエンジン21との間には、該エンジン21を冷却するための熱交換器としてのラジエータ35が配設されている。このラジエータ35は、その後部に冷却ファン36を備え、これらラジエータ35および冷却ファン36がラジエータユニットとして一体化されると共に、図1に示すように、前高後低状に傾斜して配設されている。
換言すれば、上述のエンジン21の前方にラジエータ35および冷却ファン36を配設し、このラジエータ35のさらに前方に上述のキャタリスト31を配設したものである。
【0032】
さらに、図1に示すように、該キャタリスト31およびラジエータ35に、フロントグリル19の開口部から走行風を導く走行風ガイド手段が設けられている。
この走行風ガイド手段は、図1に示すように、シュラウドアッパ37とラジエータ35のアッパタンク上部との間を前後方向に接続するアッパカバー38と、フロントグリル19の下部とサスクロス39(詳しくは、サスペンションクロスメンバ)の下部との間を前後方向に接続するアンダカバー40と、から構成されている。
【0033】
上述のアッパカバー38とアンダカバー40とから成る走行風ガイド手段により、図1に矢印aで示すように、走行風をキャタリスト31およびラジエータ35に導くように構成すると共に、アンダカバー40の後部は多孔状またはメッシュ状の開口形状に形成され、キャタリスト31冷却後の走行風の一部を矢印bで示すように車外へ導出するように構成している。
【0034】
また、図2、図3に示すように、上述のキャタリスト31は、ラジエータ35の車幅方向中心位置に対して車幅方向でオフセットして配設されると共に、図3に正面図で示すように、冷却ファン36の少なくとも一部と上記キャタリスト31とが正面視でオーバラップするように配設されており、冷却ファン36の吸引力により走行風を吸引して、キャタリスト31を冷却するように構成している。
上述のキャタリスト31の配設高さ位置は、図3の構成に代えて、図4の構成を採用してもよい。図3の構成では冷却ファン36の一部とキャタリスト31の一部とが正面視でオーバラップし、図4の構成ではキャタリスト31の全体が冷却ファン36と正面視でオーバラップするものである。
【0035】
ここで、上述のサスクロス39は、図3に示すように、フロントサイドフレーム16の下部に取付けられており、このサスクロス39にはサスペンションアームとしてのアッパアーム41およびロアアーム42がそれぞれ揺動可能に支持されている。なお、図中、43は前輪である。
【0036】
上記構成において、エンジン21の始動直後には、エンジン冷却水がラジエータ35に供給されると共に、上記冷却ファン36が作動状態となり、冷却風(吸引力による吸引方向への起風)がラジエータ35に供給されることで、エンジン冷却水の熱交換が行なわれる。
そして、このラジエータ35における熱交換によって発生した熱の一部がキャタリスト31に供給され、このキャタリスト31が加熱されて、その活性化が促進される。
【0037】
また、車両の走行時には、フロントグリル19の開口部からエンジンルーム1内に導入された走行風がアッパカバー38によりラジエータ35の設置部側に案内されると共に、上記冷却ファン36の吸引力に応じて上記走行風がラジエータ35の設置部に供給されることにより、エンジン冷却水の熱交換が積極的に行なわれる。
さらに、上記フロントグリル9の下方部からエンジンルーム1内に導入された走行風が、図1に矢印で示すようにアンダカバー40によってキャタリスト31の設置部に案内され、このキャタリスト31の温度が過度に上昇しないように冷却されると共に、キャタリスト31の反応熱がエンジン21に及ぶのを、ラジエータ35で遮蔽することができる。
【0038】
このように、図1〜図4で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造は、車室2とエンジンルーム1とを仕切るダッシュロアパネル3が設けられ、上記ダッシュロアパネル3に設けられた凹部3a内に車輪(後輪参照)を駆動するパワートレイン20が設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレイン20は、縦置きエンジン21と、その後方に接続されたトランスミッション22とから成り、上記エンジン21の前方には該エンジン21から延びる排気管30が配設されると共に、上記排気管30にはキャタリスト31が接続され、該キャタリスト31に走行風を導く走行風ガイド手段(アッパカバー38,アンダカバー40参照)が設けられたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、ダッシュロアパネル3の凹部3a内にパワートレイン20を設けるので、パワートレイン20の後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0039】
しかも、エンジン21前方の排気管30にキャタリスト31を接続し、走行風ガイド手段(アッパカバー38,アンダカバー40参照)にて該キャタリスト31に走行風を導くので、キャタリスト31の車室2内への熱害防止を図ることができる。
つまり、パワートレイン20の後方シフト配置と、キャタリスト31の車室2内への熱害防止との両立を図ることができ、しかも、走行風を利用して上記キャタリスト31を効率的に冷却することができる。
さらに、上記キャタリスト31はフロア下方に存在しないので、ヒップポイントが上がることはなく、空力性能向上に対応してルーフ14(つまり車高)を下げることも可能となる。
【0040】
また、上記キャタリスト31と上記エンジン21との間には、該エンジン21を冷却するために熱交換器(ラジエータ35参照)が配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、キャタリスト31の熱がエンジン21に悪影響を及ぼすのを、熱交換器(ラジエータ35参照)にて防止することができる。つまり、キャタリスト31の熱でエンジン21が加熱されると、エンジン性能が低下するので、これら両者(キャタリスト31とエンジン21)間に、冷却作用兼、遮蔽作用を奏する熱交換器(ラジエータ35参照)を配設したものである。
【0041】
さらに、上記キャタリスト31は、上記熱交換器(ラジエータ35参照)の車幅方向中心位置に対して車幅方向でオフセットして配設されたものである(図2、図3参照)。
この構成によれば、キャタリスト31を熱交換器(ラジエータ35参照)に対して車幅方向でオフセットさせたので、走行風は熱交換器(ラジエータ35)にも導かれ、キャタリスト31により熱交換器(ラジエータ35)の冷却に悪影響を与えることがなく、キャタリスト31の冷却と熱交換器(ラジエータ35参照)の冷却とを両立させることができる。
【0042】
加えて、上記熱交換器(ラジエータ35参照)には冷却ファン36が設けられ、該冷却ファン36の少なくとも一部と上記キャタリスト31とが正面視でオーバラップするように配設されたものである(図3または図4参照)。
この構成によれば、冷却ファン36の吹込み風によりキャタリスト31を確実に冷却して、熱害を防止することができる。
【実施例2】
【0043】
図5は車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示す系統図である。
この実施例においては、車両の停止を検出する車両停止検出手段としての車速センサ51と、エンジン21の冷却水温を検出する水温検出手段としての水温センサ52と、上述の車速センサ51により車両の停止が検出され、かつ水温センサ52によりエンジン冷却水温が所定低温であることが検出された時、冷却ファン36を通常の回転方向に対して逆回転させてキャタリスト31に配風させるように回転制御する冷却ファン制御手段としてのCPU50と、を設けている。
【0044】
上記CPU50は、車速センサ51および水温センサ52からの入力信号に基づいて、ROM53に格納されたプログラムに従って、冷却ファン36を回転制御し、またRAM54は車両停止に相当する車速データやエンジン冷却水の所定低温データなどの必要なデータを記憶する。
【0045】
このため、水温センサ52でエンジン冷却水の水温が所定低温であり、かつ車速センサ51により車両の停止が検出されると、CPU50は冷却ファン36を逆回転させて、この起風を図5に矢印cで示すように、キャタリスト31に配風するので、走行風の導入が望めない車両停止時において、上記キャタリスト31を冷却して、該キャタリスト31の過熱を防止することができる。
【0046】
このように、図5で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造は、車両の停止を検出する車両停止検出手段(車速センサ51参照)と、上記車両停止検出手段の信号に従って、上記冷却ファン36を上記キャタリスト31に配風するように回転させる冷却ファン制御手段(CPU50参照)と、を備えたものである(図5参照)。
この構成によれば、車両の停止時には、冷却ファン36を逆回転させて、この冷却ファン36の起風によりキャタリスト31を冷却することができる。つまり、車両の停止時には、走行風の導入が望めないので、上記冷却ファン36を逆回転させることで、キャタリスト31の冷却を図るものである。
【0047】
また、上記エンジン21の冷却水温を検出する水温検出手段(水温センサ52参照)を設け、上記車両停止検出手段(車速センサ51参照)により車両の停止が検出され、かつ上記水温検出手段(水温センサ52参照)による所定低温検出時に上記冷却ファン36をキャタリスト31に配風するように回転させるものである(図5参照)。
この構成によれば、エンジン冷却水によるエンジンの冷却を阻害することなく、キャタリスト31の冷却が可能となる。
【0048】
なお、図5で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例と同一であるから、図5において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0049】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
走行風ガイド手段は、アッパカバー38およびアンダカバー40に対応し、
熱交換器は、ラジエータ35に対応し、
車両停止検出手段は、車速センサ51に対応し、
冷却ファン制御手段は、CPU50に対応し、
水温検出手段は、水温センサ52に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1の要部の正面図
【図4】キャタリスト配置高さ位置の他の実施例を示す正面図
【図5】車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示す系統図
【図6】従来の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図7】図6の要部の平面図
【図8】図6の要部の正面図
【符号の説明】
【0051】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
3a…凹部
20…パワートレイン
21…エンジン
22…トランスミッション
30…排気管
31…キャタリスト
35…ラジエータ(熱交換器)
36…冷却ファン
38…アッパカバー(走行風ガイド手段)
40…アンダカバー(走行風ガイド手段)
50…CPU(冷却ファン制御手段)
51…車速センサ(車両停止検出手段)
52…水温センサ(水温検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、
上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた
車両のパワートレイン配設構造であって、
上記パワートレインは、縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、
上記エンジンの前方には該エンジンから延びる排気管が配設されると共に、
上記排気管にはキャタリストが接続され、該キャタリストに走行風を導く走行風ガイド手段が設けられた
車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
上記キャタリストと上記エンジンとの間には、該エンジンを冷却するために熱交換器が配設された
請求項1記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記キャタリストは、上記熱交換器の車幅方向中心位置に対して車幅方向でオフセットして配設された
請求項2記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記熱交換器には冷却ファンが設けられ、
該冷却ファンの少なくとも一部と上記キャタリストとが正面視でオーバラップするように配設された
請求項2または3記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
車両の停止を検出する車両停止検出手段と、
上記車両停止検出手段の信号に従って、上記冷却ファンを上記キャタリストに配風するように回転させる冷却ファン制御手段と、を備えた
請求項4記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記エンジンの冷却水温を検出する水温検出手段を設け、
上記車両停止検出手段により車両の停止が検出され、かつ上記水温検出手段による所定低温検出時に上記冷却ファンをキャタリストに配風するように回転させる
請求項5記載の車両のパワートレイン配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−220611(P2009−220611A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64225(P2008−64225)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】