説明

車両の制御装置

【課題】ニュートラル制御を行う車両の制御装置において、ニュートラル制御解除時のショックの発生及びショックばらつきを防止する。
【解決手段】ニュートラル制御中は、エンジンの回転速度を前進走行レンジにおいて通常設定されるDレンジ目標アイドル回転速度よりも低いニュートラル目標アイドル回転速度に制御する。ニュートラル制御の実行条件が不成立となるとニュートラル制御を終了し(S21,S22)、該ニュートラル制御の終了からクラッチの締結が完了するまでの間の所定時間、エンジンの回転速度を前記Dレンジ目標アイドル回転速度と前記ニュートラル目標アイドル回転速度との間の第N→D移行時目標アイドル回転速度に制御し(S23,S24)、該所定時間経過後は、前記Dレンジ目標アイドル回転速度に制御する(S25)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前進走行レンジで所定の条件が成立することによりフォワードクラッチを略ニュートラル状態とするニュートラル制御を行う車両の制御装置に関し、特に、ニュートラル制御の解除時における制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ニュートラル制御に移行する際にオイルポンプの出力を変更することでエンジンの負荷を調整し、オイルポンプの出力に応じてエンジンのアイドル回転速度を制御する車両の出力制御装置が記載されている。この装置では、ニュートラル制御時のアイドル回転速度を低下または安定させることによって燃費をより向上させることを企図している。
【特許文献1】特開2004−124974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ニュートラル制御が解除されると、略ニュートラル状態となっていたクラッチを締結させることになるが、上記従来の技術では、ニュートラル制御の解除時のエンジン回転速度については何ら考慮されていない。
【0004】
このため、ニュートラル制御が解除後のクラッチ締結時におけるエンジン回転速度が変動して、ショックが発生してしまうおそれがある。また、ショックばらつきによってドライバー等に不快感を与えるおそれもある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題に着目してなされたものであり、その目的は、ニュートラル制御による燃費向上を図りつつ、ニュートラル制御を解除する際のショックの発生及びショックばらつきを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明(第1発明)は、エンジン及びこのエンジンに接続される自動変速機が搭載され、前進走行レンジで所定の条件が成立することにより前記自動変速機のフォワードクラッチの係合圧を低下させて略ニュートラル状態とするニュートラル制御を行う車両の制御装置において、前記ニュートラル制御中は、前記エンジンの回転速度を前記前進走行レンジにおいて通常設定される第1アイドル回転速度よりも低い第2アイドル回転速度に制御する一方、前記所定の条件が不成立となると前記ニュートラル制御を終了し、前記フォワードクラッチの締結が完了するまでの間の所定時間、前記エンジンの回転速度を前記第1アイドル回転速度と前記第2アイドル回転速度との間の第3アイドル回転速度に制御することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記所定時間は、前記ニュートラル制御の終了から前記フォワードクラッチの締結完了までとし、前記所定時間の経過後は、前記エンジンの回転速度を前記第1アイドル回転速度に制御するのが好ましい。
【0008】
また、本発明(第2発明)は、エンジン及びこのエンジンに接続される自動変速機が搭載され、前進走行レンジで所定の条件が成立することにより前記自動変速機のフォワードクラッチの係合圧を低下させて略ニュートラル状態とするニュートラル制御を行う車両の制御装置において、前記ニュートラル制御中の前記エンジンのアイドル回転速度を前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度よりも低くなるように制御する一方、前記所定の条件が不成立となると前記ニュートラル制御を終了し、前記エンジンの回転速度を前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度へと上昇させるように制御し、前記ニュートラル制御中のアイドル回転速度が低いほど前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度への上昇速度を高く(速く)することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記フォワードクラッチの締結時に前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度となるように前記上昇速度を設定するのが好ましい。
【0010】
なお、前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度(第1アイドル回転速度)とは、前進走行レンジで前記ニュートラル制御が実行されなかったときに設定される(すなわち、クリープが発生する)目標アイドル回転速度である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ニュートラル制御中のエンジン回転速度にかかわらず、該ニュートラル制御の終了に伴うフォワードクラッチの締結時にエンジン回転速度をほぼ一定とすることができる。これにより、フォワードクラッチ締結時のショックの発生及びショックのばらつきを防止でき、運転性が向上する。
【0012】
特に、第1発明のように、ニュートラル制御中、ニュートラル制御が終了してフォワードクラッチの締結が完了するまでの間の所定時間、及び、該所定時間の経過後で目標アイドル回転速度を切り替えるようにすれば、エンジン回転速度のオーバーシュートが防止されて、フォワードクラッチ締結時におけるショックの発生を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の概略構成を示している。図1に示すように、本実施形態に係る車両には、エンジン1と、このエンジン1に接続される自動変速機2とが搭載されている。
【0015】
自動変速機2は、トルクコンバータ21と、前後進切換機構22と、ベルト式無段変速機(CVT)23とを含んで構成される。エンジン1の出力は、トルクコンバータ21及び前後進切換機構22を介してCVT23に入力される。CVT23の出力は、プロペラシャフト3、ファイナルギヤ4及びデファレンシャルギヤ5を介して車輪駆動軸6及び駆動輪7に伝達される。
【0016】
トルクコンバータ21は、エンジン1のクランクシャフト11に連結されるポンプインペラ211と、このポンプインペラ211に対向配置され、タービン軸212を介して前後進切換機構22に連結されるタービンランナ213と、を備える。なお、図では示していないが、ロックアップクラッチを備える構成としてもよい。
【0017】
前後進切換機構22は、タービン軸212に連結される入力軸221と、出力軸222と、該入力軸221と出力軸222とを接断する内側クラッチ(本発明のフォワードクラッチに相当する)223と、入力軸221と出力軸222の間に介装される遊星ギヤ機構224と、該遊星ギヤ機構224の中間ギヤ224aの支軸とクラッチケース(固定体)225とを接断する外側クラッチ226と、を備える。
【0018】
内側クラッチ223及び外側クラッチ226は、それぞれ油圧シリンダのピストンによって駆動される。油圧シリンダの油圧(クラッチ油圧)を制御することで内側クラッチ223及び外側クラッチ226の係合状態(係合圧)を変化させる。内側クラッチ223が完全係合状態とされ(すなわち、締結され)、外側クラッチ226が開放状態とされると前後進切換機構22は前進用係合状態となる。一方、内側クラッチ223が開放状態とされ、外側クラッチ226が係合状態とされると(締結されると)前後進切換機構22は後進用係合状態となる。また、内側クラッチ223、外側クラッチ226の両方が開放状態とされるとニュートラル状態となる。
【0019】
CVT23は、前後進切換機構22の出力軸222に連結される入力軸231と、該入力軸231側に設けられて有効径が可変のプライマリプーリ232と、出力軸233と、該出力軸223側に設けられて有効径が可変のセカンダリプーリ234と、プライマリプーリ232、セカンダリプーリ234の有効径をそれぞれ変更させる油圧シリンダ235,236と、プライマリプーリ232及びセカンダリプーリ234に巻回される伝達ベルト237と、を含んで構成される。油圧シリンダ235,236の油圧を制御することでプーリ比を変化させ、このプーリ比の変化に応じて変速比が無段階に変化する。
【0020】
エンジン1の動作は、エンジンコントロールユニット(ECU)10によって制御され、自動変速機2(特に、前後進切換機構22及びCVT23)の動作は、トランスミッションコントロールユニット(TCU)20によって制御される。なお、ECU10とTCU20とは相互に通信可能に接続されている。
【0021】
ECU10は、エンジン1の運転条件を検出する各種センサ(アクセル開度センサ101、回転速度センサ102等)の検出信号を入力し、これら検出信号に基づいてエンジン制御(燃料噴射制御、点火時期制御及び吸入空気量制御)を実行する。
【0022】
一方、TCU20は、アクセル開度センサ101、ブレーキスイッチ103、車速センサ104、レンジスイッチ105などから信号を入力し、これらの信号に基づいて前後進切換機構22及びCVT23(の変速比)を制御する。
【0023】
ここで、TCU20による前後進切換機構22の基本的な制御を簡単に説明する。
【0024】
まず、図示しないATシフトレバー等による選択レンジが前進走行レンジ(Dレンジ)である場合には、内側クラッチ223を係合(締結)状態、外側クラッチ226を開放状態とする一方、選択レンジが後進走行レンジ(Rレンジ)である場合には、内側クラッチ223を開放状態、外側クラッチ226を係合(締結)状態とする。
【0025】
また、前進走行レンジの場合において、所定の条件が成立したときは、内側クラッチ223の係合圧を低下させて前後進切換機構22の動力伝達をほぼ遮断してニュートラル状態とする、「ニュートラル制御」を実行する。なお、上記所定の条件、すなわち、ニュートラル制御の実行条件としては、(1)アクセルペダルが開放されている(アクセルOFFである)こと、(2)フットブレーキが踏み込まれている(ブレーキスイッチONである)こと、及び、(3)車速が実質的にゼロであること、などがある。
【0026】
次に、本実施形態に係る車両のニュートラル制御及びその解除時の制御について図2、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
図2は、ニュートラル制御のフローチャートを示しており、前進走行レンジ(Dレンジ)が選択されているときに、所定時間ごとに実行される。
【0028】
図2において、S11では、アクセルペダルが開放されているか否かを判定する。アクセルペダルが開放されていればS12に進み、アクセルペダルが踏み込まれていれば本フローを終了する。
【0029】
S12では、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを判定する。ブレーキペダルが踏み込まれていればS13に進み、ブレーキペダルが開放されていれば本フローを終了する。
【0030】
S13では、車速が(ほぼ)ゼロであるか否かを判定する。車速がほぼゼロであればS14に進み、車速がゼロでなければ本フローを終了する。
【0031】
S14では、ニュートラル制御を実行する。すなわち、前後進切換機構22における内側クラッチ223の係合圧を低下させて略ニュートラル状態とする。かかるニュートラル制御においては、ニュートラル制御フラグが設定され(Fneu=1)、ニュートラル状態における目標アイドル回転速度(本発明の第2アイドル回転速度に相当し、以下「ニュートラル目標アイドル回転速度」という)を設定し、エンジン1の回転速度がこの設定された「ニュートラル目標アイドル回転速度」となるようにエンジン制御を実行する。
【0032】
ここで、「ニュートラル目標アイドル回転速度」は、前進走行レンジ(Dレンジ)において通常設定される(すなわち、ニュートラル制御が実行されていないときに設定される)目標アイドル回転速度(本発明の第1アイドル回転速度に相当し、以下「Dレンジ目標アイドル回転速度」という)よりも低い値に設定される。例えば、「ニュートラル目標アイドル回転速度」が500〜550rpmであり、「Dレンジ目標アイドル回転速度」が700〜750rpmである。
【0033】
図3は、ニュートラル制御解除時のフローチャートを示しており、ニュートラル制御中(すなわち、Fneu=1のとき)の所定時間ごとに実行される。
【0034】
図3において、S21では、ブレーキペダルが開放されたか否か(ブレーキスイッチON→OFF)を判定する。ブレーキペダルが開放されていれば(すなわち、ブレーキ操作がなくなると)S22に進む。
【0035】
S22では、ニュートラル制御を終了(解除)する。このとき、同時にニュートラル制御フラグも解除され(Fneu=0)、略ニュートラル状態から前進走行レンジ(Dレンジ)への移行が開始され、内側クラッチ223の係合圧を上昇させるようにクラッチ油圧が供給される。一方、S21においてフットブレーキが踏み込まれていれば(すなわち、ブレーキスイッチONのままであれば)、本フローを終了し、そのままニュートラル制御が継続される。なお、基本的には、ブレーキペダルが開放されたか否かを判定すれば、上記ニュートラル制御の実行条件が不成立となったことを判定できることになるが、さらに、他の条件(上記(1)、(3))を判定するようにしてもよいことはもちろんである。
【0036】
S23では、ニュートラル制御が終了され、略ニュートラル状態から前進走行レンジへの移行が開始されたので、該移行時(N→D移行時)の目標アイドル回転速度(本発明の第3アイドル回転速度に相当し、以下「N→D移行時目標エンジン回転速度」という)を設定し、エンジン1の回転速度がこの設定された「N→D移行時目標アイドル回転速度」となるようにエンジン制御を実行する。
【0037】
ここで、「N→D移行時目標アイドル回転速度」は、「ニュートラル目標アイドル回転速度」と「Dレンジ目標アイドル回転速度」との間の値(例えば、650rpm)に設定される。
【0038】
S24では、ニュートラル制御を終了してから、すなわち、ニュートラル状態から前進走行レンジへの移行開始から所定時間が経過したか否かを判断する。この所定時間は、内側クラッチ223の締結完了までの時間として、又は、内側クラッチ223の締結がほぼ完了する時間(締結完了直前の時間)として設定される。所定時間が経過していればS25に進む。なお、上記所定時間はあらかじめ設定された一定時間であってもよいが、クラッチ油圧やニュートラル制御中の実エンジン回転速度を検出し、これらに基づいて設定するようにしてもよい。この場合、基本的には、クラッチ油圧またはニュートラル制御中の実エンジン回転速度が高いほど所定時間が短く設定される。また、上記所定時間が経過したか否かの判断に代えて、内側クラッチ223の締結が完了したか否かをセンサ等により判断してもよい。
【0039】
S25では、内側クラッチ223の締結が完了又はほぼ完了したので、エンジン1の目標アイドル回転速度を「Dレンジ目標アイドル回転速度」とし、この「Dレンジ目標アイドル回転速度」となるようにエンジン制御を実行する。
【0040】
そして、ブレーキペダル開放後にアクセルペダルが踏み込まれれば、上記したように、「ニュートラル目標アイドル回転速度」→「N→D移行時目標アイドル回転速度」→「Dレンジ目標アイドル回転速度」とエンジン1の回転速度が制御され、その後は、アクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジン制御(燃料噴射制御、吸入空気量制御等)が実施されることになる。
【0041】
図4は、上記ニュートラル制御解除時の状態を示すタイムチャートである。
【0042】
ニュートラル制御の実行中にブレーキペダルが開放されると(時刻t1)、ニュートラル制御の実行条件が不成立となってニュートラル制御を終了する。すなわち、ニュートラル制御フラグFneuが解除され(Fneu=1→0)、ニュートラル状態から前進走行レンジへの移行が開始される。これにより、内側クラッチ223の係合圧を上昇させるようにクラッチ油圧が供給される。また、このとき、エンジン1の目標アイドル回転速度は、「ニュートラル目標アイドル回転速度(ここでは、525rpm)」から「N→D移行時目標アイドル回転速度(ここでは、650rpm)」へと切り替えられる。
【0043】
ニュートラル制御の終了から所定時間(ここでは、300ms)が経過すると(時刻t2)、内側クラッチ223の締結が完了(または、ほぼ完了)したと判断し、エンジン1の目標回転速度は、「N→D移行時目標アイドル回転速度(650rpm)」から「Dレンジ目標アイドル回転速度(ここでは、700rpm)へと切り替えられて、前進走行レンジにおける通常のアイドル運転に移行する。なお、基本的には{「N→D移行時目標アイドル回転速度」−「ニュートラル目標アイドル回転速度」}>{「Dレンジ目標アイドル回転速度」−「N→D移行時目標アイドル回転速度」}という関係を有している。
【0044】
以上の制御により、本実施形態では、ニュートラル制御中はエンジン1の回転速度を「ニュートラル目標アイドル回転速度」に制御し、ニュートラル制御の終了の際には、エンジン1の回転速度を、まず「N→D移行時目標アイドル回転速度」に制御し、ニュートラル制御の終了から所定時間が経過した後は「Dレンジ目標アイドル回転速度」に制御する。これにより、エンジン回転速度のオーバーシュートが抑制されると共に、例えば、ニュートラル制御中の実際のエンジン回転速度が変動したり、クラッチ油圧の上昇速度が変動したりしても、内側クラッチ223の締結時におけるエンジン回転速度をほぼ一定(700rpm近傍)とすることができる。したがって、クラッチ締結時のショックの発生及びショックのばらつきが防止され、運転性が向上する。また、ニュートラル制御からの発進と前進走行レンジにおける通常のアイドル運転からの発進とで同等のクリープ性能を発揮させることができるので、ドライバーに違和感等を与えるようなこともない。
【0045】
次に、本発明の別の実施形態を説明する。
【0046】
上記実施形態では、ニュートラル制御中、ニュートラル制御の終了から内側クラッチ223の締結が完了するまでの間の所定時間、及び、該所定時間の経過後でエンジン1の目標アイドル回転速度を切り替えているのに対し、本実施形態では、ニュートラル制御が終了すると、エンジン1の回転速度を「Dレンジ目標アイドル回転速度」へと上昇させるようにしつつ、その上昇速度をニュートラル制御中のアイドル回転速度に応じて可変としている点で相違する。なお、以下では、上記実施形態との相違点のみを説明し、共通点については省略する。
【0047】
図5は、当該別の実施形態に係るニュートラル制御解除時の制御を示すフローチャートである。
【0048】
図5において、S31、32は、図3のS21、22と同じである。
【0049】
S33では、エンジン1の目標アイドル回転速度を「Dレンジ目標アイドル回転速度」とする。
【0050】
S34では、「ニュートラル目標アイドル回転速度」から「Dレンジ目標アイドル回転速度」への移行速度、すなわち、エンジン回転速度の上昇速度を設定する。かかる設定は、ニュートラル制御中のアイドル回転速度に基づき図に示すようなテーブルを検索することにより行う。基本的には、ニュートラル制御中のアイドル回転速度(又はニュートラル目標アイドル回転速度)が低いほど上昇速度(移行速度)が高く(速く)設定される。
【0051】
これにより、設定された上昇速度に基づき、エンジン1の回転速度が「ニュートラル目標アイドル回転速度」から「Dレンジ目標アイドル回転速度」へと上昇するようにエンジン制御を実行する。ここで、上記上昇速度は、内側クラッチ223の締結時(すなわち、ニュートラル制御の終了から300ms後)に「Dレンジ目標アイドル回転速度」となるように設定される。
【0052】
この実施形態によると、ニュートラル制御中のエンジン1のアイドル回転速度が低いほど速い上昇速度でエンジン1の回転速度を「Dレンジ目標アイドル回転速度」へと上昇させるので、上記実施形態と同様、内側クラッチ223の締結時におけるエンジン回転速度をほぼ一定とすることができる。これにより、クラッチ締結時のショック及びショックのばらつきを低減することができる。また、ニュートラル制御からの発進と前進走行レンジにおける通常のアイドル運転からの発進とで同等のクリープ性能を発揮させることができ、ドライバーに違和感等を与えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【図2】上記実施形態におけるニュートラル制御を示すフローチャートである。
【図3】上記実施形態におけるニュートラル制御解除時の制御を示すフローチャートである。
【図4】上記実施形態に係るニュートラル制御の解除時の状態を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態におけるニュートラル制御解除時の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1…エンジン、2…自動変速機、10…エンジンコントロールユニット(ECU)、20…トランスミッションコントロールユニット(TCU)、21…トルクコンバータ、22…前後進切換機構、23…無段変速機(CVT)、101…アクセル開度センサ、102…回転速度センサ、103…ブレーキスイッチ、104…車速センサ、105…レンジスイッチ、223…内側クラッチ(フォワードクラッチ)、226…外側クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及びこのエンジンに接続される自動変速機が搭載され、前進走行レンジで所定の条件が成立することにより前記自動変速機のフォワードクラッチの係合圧を低下させて略ニュートラル状態とするニュートラル制御を行う車両の制御装置において、
前記ニュートラル制御中は、前記エンジンの回転速度を前記前進走行レンジにおいて通常設定される第1アイドル回転速度よりも低い第2アイドル回転速度に制御する一方、
前記所定の条件が不成立となると前記ニュートラル制御を終了し、前記フォワードクラッチの締結が完了するまでの間の所定時間、前記エンジンの回転速度を前記第1アイドル回転速度と前記第2アイドル回転速度との間の第3アイドル回転速度に制御することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記所定時間の経過後は、前記エンジンの回転速度を前記第1アイドル回転速度に制御することを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記フォワードクラッチの締結完了後に、前記エンジンの回転速度を前記第1アイドル回転速度に制御することを特徴とする請求項2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
エンジン及びこのエンジンに接続される自動変速機が搭載され、前進走行レンジで所定の条件が成立することにより前記自動変速機のフォワードクラッチの係合圧を低下させて略ニュートラル状態とするニュートラル制御を行う車両の制御装置において、
前記ニュートラル制御中の前記エンジンのアイドル回転速度を前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度よりも低くなるように制御する一方、
前記所定の条件が不成立となると前記ニュートラル制御を終了し、前記エンジンの回転速度を、前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度へと上昇させるように制御し、
前記ニュートラル制御中のアイドル回転速度が低いほど、前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度への上昇速度を高くすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
前記上昇速度は、前記フォワードクラッチの締結時に、前記前進走行レンジにおいて通常設定されるアイドル回転速度なるように設定されることを特徴とする請求項4記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−255916(P2008−255916A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100123(P2007−100123)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】