車両の制御装置
【課題】第2電動機からの動力を有段式の自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力する車両の制御装置において、ダウンシフト変速中のショック発生及び自動変速機の摩擦材熱負荷の増大を抑制する。
【解決手段】ダウンシフト変速開始前にエンジン回転数を低下させ、エンジン回転数が保護制御が作動しない回転数にまで低下した後にダウンシフト変速を実施する。また、ダウンシフト変速中に、点火時期遅角制御や燃料噴射量の低減制御等のエンジン側の制御にてエンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実施することで、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施できるようにする。このような制御によりトルクダウン変速中の第2電動機の吹けを抑制することができ、変速ショックの抑制及び摩擦係合要素の摩擦材保護が可能になる。
【解決手段】ダウンシフト変速開始前にエンジン回転数を低下させ、エンジン回転数が保護制御が作動しない回転数にまで低下した後にダウンシフト変速を実施する。また、ダウンシフト変速中に、点火時期遅角制御や燃料噴射量の低減制御等のエンジン側の制御にてエンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実施することで、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施できるようにする。このような制御によりトルクダウン変速中の第2電動機の吹けを抑制することができ、変速ショックの抑制及び摩擦係合要素の摩擦材保護が可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機とを備え、第2電動機からの動力を有段式の自動変速機を介して駆動輪に出力する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、車両に搭載されたエンジン(内燃機関)からの排気ガスの排出量低減と燃料消費率(燃費)の向上が望まれており、これを満足する車両として、ハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車両が実用化されている。
【0003】
ハイブリッド車両は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジンと、エンジンの出力による発電またはバッテリの電力により駆動してエンジン出力のアシスト等を行う電動機(例えばモータジェネレータまたはモータ)とを備え、エンジン及び電動機のいずれか一方または双方を走行駆動源としている。
【0004】
ハイブリッド車両においては、車速及びアクセル開度に基づいて、エンジン及び電動機の運転領域(具体的には駆動または停止)が制御される。例えば、発進時や低速走行時のようにエンジン効率が低くなる領域では、エンジンを停止させて電動機のみの動力で駆動輪を駆動する。また、通常走行時には、エンジンを駆動して、そのエンジンの動力で駆動輪を駆動するという制御を行う。さらに、全開加速等の高負荷時には、エンジンの動力に加えて、バッテリから電動機に電力を供給して電動機による動力を補助動力として追加するという制御を行う。
【0005】
こうしたハイブリッド車両の駆動装置の1つとして、例えば、サンギヤ、リングギヤ及びキャリア(ピニオンギヤ)を回転要素とする機構であって、エンジンの出力を第1電動機及び伝達軸(リングギヤ軸)へ分配(もしくはエンジンの出力と第1電動機の出力とを合成して伝達軸に出力)する動力分配機構と、第2電動機と、この第2電動機と駆動輪(出力軸)との間に設けられた有段式の自動変速機と、第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置(バッテリ)とを備え、第2電動機からの動力を自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力する車両用駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような車両用駆動装置では、動力分配機構が差動機構として機能し、その差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪に機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される変速機として機能する。これによってエンジンを最適な作動状態に維持しつつ車両を走行させることができ、燃費の向上をはかることができる。また、この種のハイブリッド車両用の駆動装置において電力収支は、通常、ジェネレータ発電量・バッテリ充放電量・モータ消費量を全て足すとゼロとなるように制御されている。
【0007】
一方、ハイブリッド車両に搭載される変速機としては、摩擦係合要素であるクラッチやブレーキと遊星歯車装置とを用いてギヤ段(変速段)を設定する遊星歯車式変速機が適用されている。例えば、摩擦係合要素として2個のブレーキを備え、一方のブレーキを係合し他方のブレーキを解放する変速段(例えば低速段)と、他方のブレーキを係合し一方のブレーキを解放する変速段(例えば高速段)との切り替えを行うようにしている。この場合、変速時に係合側の摩擦係合要素の係合と、解放側の摩擦係合要素の解放とを同時に行う、いわゆるクラッチツウクラッチ変速が行われることになる。
【0008】
また、ハイブリッド車両などの車両においては、ドライバにより操作されるシフト操作装置が設けられており、そのシフト操作装置のシフトレバーを操作することにより、自動変速機のシフトポジションを、例えばP(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジションなどに切り替えることが可能になっている。さらに、近年では、シーケンシャルモード付きのシフト操作装置も実用化されている。シーケンシャルモードには、複数段(例えば6段)のシーケンシャルシフトレンジが設定されており、シフトレバーをS(シーケンシャル)ポジションに配置してアップシフト(+)またはダウンシフト(−)操作を行うと、シーケンシャルシフトレンジがアップまたはダウンされる。そして、このようなシーケンシャルモードが選択された場合、Dレンジで走行する場合と比較してエンジン回転数を高く維持するように制御される。
【0009】
なお、ハイブリッド車両の変速時の制御に関する技術として、下記の特許文献1に、第2電動機からの動力を自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力するハイブリッド車両において、自動変速機のダウンシフト変速中に、第2電動機のトルクダウンを実施することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−316848号公報
【特許文献2】特開2007−237923号公報
【特許文献3】特開2005−051887号公報
【特許文献4】特開2004−316502号公報
【特許文献5】特開2007−245769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記したハイブリッド車両において、ダウンシフト変速中にアクセルペダルが踏み込まれた場合、変速ショックの低減及び自動変速機の摩擦係合要素(ブレーキ)の摩擦材熱負荷の低減等のために、変速中に第2電動機のトルクダウンを実施する必要があるが、エンジンが高回転になると保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が働いてトルクダウンを実施することができない。すなわち、エンジン回転数が低い場合は、エンジンパワーをエンジン慣性で消費させることができるので問題ないが、上記したシーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、エンジン過回転防止(部品保護)のために、エンジントルクの反力を受け持つ第1電動機(ジェネレータ)にて回転数制御が実行されるので発電量が増加する。このようにして発電量が増加すると、第2電動機(モータ)での電力消費が要求されるため、所望のトルクダウンを実施できない。
【0012】
そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2電動機の吹きを制限できなくなるため、第2電動機の回転数と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間に差回転がある状態で摩擦係合要素が係合することになり、係合ショックが生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0013】
なお、バッテリの電力受入が十分であれば、このような問題を解消することは可能であるが、上記したエンジン高回転時の第1電動機の発電量の充電等を含む、いかなる条件での充電が可能な容量を確保するにはバッテリスペックが過剰となるため、実現することは困難である。
【0014】
また、ハイブリッド車両において、変速中の駆動力変化をモータとエンジン(ジェネレータ)との協調制御により打ち消す技術が各種開示されているが、こうした技術を適用しても、部品保護制御等により変速中に協調制御を実施できなくなる場合があって、変速シ
ョックの発生や摩擦材熱負荷の増大が懸念される。
【0015】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機とを備え、第2電動機からの動力を有段式の自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力する車両の制御装置において、ダウンシフト変速中のショック発生及び自動変速機の摩擦材熱負荷の増大を抑制することが可能な制御の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機とを備え、その第2電動機からの動力を有段式の自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力する車両の制御装置において、自動変速機のダウンシフト変速中やダウンシフト変速開始前に、エンジン回転数を低下させることで、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施できるようにする。
【0017】
−解決手段−
具体的に、本発明は、エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪(車軸)との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、前記自動変速機のダウンシフト変速を開始する前に、前記エンジンの回転数を低下させる回転数制御手段を備えたことを特徴としている。この発明においては、ダウンシフト変速開始前のエンジン回転数の低減により、エンジン回転数が低減目標値以下となったことを条件にダウンシフト変速を開始する。
【0018】
この発明によれば、ダウンシフト変速開始前にエンジン回転数を低下させるので、シーケンシャルシフト使用時等によりエンジン回転数が高い場合であっても、ダウンシフト変速中のエンジン回転数を、第1電動機による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しない回転数にまで低下させることが可能になる。従って、この発明においては、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施することが可能となり、第2電動機の回転上昇(モータの吹き)を抑制することができる。これによって摩擦係合要素の係合時における第2電動機と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間の差回転を小さくすることができ、変速ショックの抑制及び摩擦係合要素の摩擦材保護が可能になる。
【0019】
ここで、エンジン回転数に対して設定する低減目標値は、エンジンの許容回転数つまりエンジン自体の限界回転数、及び、第1電動機(MG1)の上限回転数や駆動力伝達系の回転体(ピニオンギヤ等)の上限回転数などに基づいて決定される許容回転数(図16参照)をエンジン回転数が超えること防止する保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しない回転数を考慮して設定する。
【0020】
また、エンジン回転数に対して設定する低減目標値は、蓄電装置(バッテリ)の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。この点について説明すると、蓄電装置が電力の受入可能な状態であるときには、電力受入不可の場合と比べて保護制御が作動するエンジン回転数に対する余裕度が高くなるので、その分だけ低減目標値を高い側に設定することが可能であり、この点を考慮して低減目標値を可変に設定することで、上記したエンジン回転数低下制御の適用領域を必要最小限に抑えることができる。
【0021】
本発明の他の解決手段として、エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪(車軸)との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、前記自動変速機のダウンシフト変速中における前記エンジン回転数上昇速度を当該エンジン側の制御により抑制するエンジン制御手段を備えた構成を挙げることができる。
【0022】
この発明によれば、ダウンシフト変速中にエンジン側の制御にてエンジン回転数の上昇速度を抑制しているので、ダウンシフト変速中に、第1電動機による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しないようにすることができる。従って、この発明においても、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施することが可能となり、第2電動機の回転上昇(モータの吹き)を抑制することができる。これによって摩擦係合要素の係合時における第2電動機と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間の差回転を小さくすることができ、変速ショックの抑制及び摩擦係合要素の摩擦材保護が可能になる。
【0023】
この発明の具体的な構成について説明する。
【0024】
まず、この発明において、エンジン回転数が判定閾値以上であることを条件に、エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行する。この場合、エンジン回転数に対して設定
する判定閾値は、エンジン自体の限界回転数、及び、第1電動機(MG1)の上限回転数や駆動力伝達系の回転体(ピニオンギヤ等)の上限回転数などに基づいて決定されるエンジンの許容回転数(図16参照)を考慮し、そのエンジンの許容回転数に対して余裕度を見込んだ値(判定閾値=エンジン許容回転数−余裕度)とすればよい。
【0025】
また、エンジン回転数に対して設定する判定閾値は、蓄電装置(バッテリ)の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。この点について説明すると、蓄電装置が電力の受入可能な状態であるときには、電力受入不可の場合と比べて保護制御が作動するエンジン回転数に対する余裕度が高くなるので、その分だけ判定閾値を高い側に設定することが可能であり、この点を考慮して判定閾値を可変に設定することで、上記したエンジン回転数上昇抑制制御を適用する領域を必要最小限に抑えることができる。
【0026】
この発明において、ダウンシフト変速中のエンジン要求パワーを考慮してエンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行するようにしてもよい。具体的には、エンジン要求パワーが大きくて、ダウンシフト変速中にエンジン回転数が上記許容回転数の上限に到達(エンジン上限回転当たり)する状況になるときに、エンジン側の制御でエンジン回転数の上昇速度を抑制するようにする。
【0027】
このように、エンジン回転数が判定閾値以上であるという条件及び/またはエンジン要求パワーが判定閾値以上であるという条件が成立したときに限って、エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行することにより、その回転数上昇速度を抑制する制御を必要なときに限定して行うことができ、ドライバの違和感(回転上昇遅れ等)を最小限に抑えることができる。
【0028】
この発明において、エンジン回転数の上昇速度を抑制する方法としては、エンジンの点火時期遅角制御、エンジンの燃料噴射量低減制御、エンジン制御のなまし処理(例えば電子スロットル制御におけるトルク制限のなまし処理)の廃止制御などを挙げることができる。これらの各制御はそれぞれ単独で実施してもよいし、いずれか2つの制御または全ての制御を組み合わせて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用するハイブリッド車両の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1のハイブリッド車両に搭載される自動変速機の概略構成図である。
【図3】図1に示す自動変速機の作動表である。
【図4】自動変速機の油圧制御回路の一部を示す回路構成図である。
【図5】シフト操作装置の要部斜視図(a)及びシフト操作装置のシフトゲート(b)を併記して示す図である。
【図6】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】要求トルク算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図8】変速制御に用いる変速マップの一例を示す図である。
【図9】シーケンシャルシフト変速マップの一例を示す図である。
【図10】ECUが実行するダウンシフト変速時のエンジン制御の一例を示すフローチャートである。
【図11】第1モータジェネレータMG1による発電量Pgとバッテリの電力受入制限Winとの関係を示す図である。
【図12】エンジン出力制限の開始・終了時におけるエンジン出力変化の一例、及び、第2モータジェネレータMG2の回転数・トルクの変化を示すタイミングチャートである。
【図13】エンジン出力制限の開始・終了時におけるエンジン出力変化の他の例、及び、第2モータジェネレータMG2の回転数・トルクの変化を示すタイミングチャートである。
【図14】ECUが実行するダウンシフト変速開始前のエンジン制御の一例を示すフローチャートである。
【図15】ECUが実行するダウンシフト変速時のエンジン制御の他の例を示すフローチャートである。
【図16】エンジンの許容回転数を示す図である。
【図17】本発明を適用するハイブリッド車両の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は本発明を適用するハイブリッド車両の一例を示す概略構成図である。
【0032】
この例のハイブリッド車両HVは、エンジン1、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、動力分配機構2、自動変速機3、インバータ4、バッテリ(HVバッテリ)5、デファレンシャルギヤ6、駆動輪7、油圧制御回路300(図4参照)、シフト操作装置8(図5参照)、及び、ECU(Electronic Control Unit)100などを備えている。
【0033】
これらエンジン1、モータジェネレータMG1,MG2、自動変速機3、動力分配機構2、自動変速機3(油圧制御回路300も含む)、シフト操作装置8、及び、ECU100の各部について以下に説明する。
【0034】
−エンジン−
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置であって、スロットル開度(吸気量)、燃料噴射量、点火時期などの運転状態を制御できるように構成されている。エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)はエンジン回転数センサ201によって検出され
る。エンジン1はECU100によって駆動制御される。
【0035】
なお、この例のエンジン1には、エンジン回転数と運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットル開度を制御する電子スロットルシステムが搭載されている。このような電子スロットルシステムでは、スロットル開度センサ202(図6参照)を用いてスロットルバルブの実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブのアクチュエータをフィードバック制御している。
【0036】
−モータジェネレータ−
モータジェネレータMG1,MG2は交流同期電動機であって、電動機として機能するとともに発電機として機能する。モータジェネレータMG1,MG2はインバータ4を介してバッテリ5に接続されている。インバータ4は、ECU100によって制御され、そのインバータ4の制御により、モータジェネレータMG1,MG2の回生または力行(アシスト)が設定される。その際の回生電力はバッテリ5にインバータ4を介して充電される。また、モータジェネレータMG1,MG2の駆動用電力はバッテリ5からインバータ4を介して供給される。
【0037】
−動力分配機構−
動力分配機構2は、外歯歯車のサンギヤS21と、このサンギヤS21と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR21と、サンギヤS21に噛み合うとともに、リングギヤR21に噛み合う複数のピニオンギヤP21と、この複数のピニオンギヤP21を自転かつ公転自在に保持するキャリアCA21とを備え、それらサンギヤS21、リングギヤR21及びキャリアCA21を回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構である。
【0038】
動力分配機構2のキャリアCA21にはエンジン1のクランクシャフト11が連結されている。また、動力分配機構2のサンギヤS21には第1モータジェネレータMG1の回転軸が連結されている。そして、動力分配機構2のリングギヤR21にはリングギヤ軸(プロペラシャフト)21が連結されている。リングギヤ軸21はデファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7に連結されている。また、リングギヤ軸21には第2モータジェネレータMG2の回転軸が自動変速機3を介して連結されている。
【0039】
このような構造の動力分配機構2において、第1モータジェネレータMG1が発電機として機能するときには、キャリアCA21から入力されるエンジン1からの動力をサンギヤS21側とリングギヤR21側にそのギヤ比に応じて分配する。一方、第1モータジェネレータMG1が電動機として機能するときには、キャリアCA21から入力されるエンジン1からの動力とサンギヤS21から入力される第1モータジェネレータMG1からの動力とを統合してリングギヤR21に出力する。
【0040】
−自動変速機−
自動変速機3は、図2に示すように、ダブルピニオン型の第1遊星歯車機構31、シングルピニオン型の第2遊星歯車機構32、及び、2つのブレーキB1,B2などを備えた遊星歯車式の変速機であって、入力軸30が第2モータジェネレータMG2の回転軸に連結されている。また、自動変速機3の出力軸33はリングギヤ軸21(図1)に連結されている。
【0041】
第1遊星歯車機構31は、外歯歯車のサンギヤS31と、このサンギヤS31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR31と、サンギヤS31に噛み合う複数の第1ピニオンギヤP31aと、この第1ピニオンギヤP31aに噛み合うとともに、リングギヤ
R31に噛み合う複数の第2ピニオンギヤP31bと、これら複数の第1ピニオンギヤP31a及び複数の第2ピニオンギヤP31bを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリアCA31とを備えている。第1遊星歯車機構31のキャリアCA31は第2遊星歯車機構32のキャリアCA32に一体的に連結されている。そして、第1遊星歯車機構31のサンギヤS31はブレーキB1を介して非回転部材であるハウジング3Aに選択的に連結されており、ブレーキB1の係合によってサンギヤS31の回転が阻止される。
【0042】
第2遊星歯車機構32は、外歯歯車のサンギヤS32と、このサンギヤS32と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR32と、サンギヤS32に噛み合うとともに、リングギヤR32に噛み合う複数のピニオンギヤP32と、複数のピニオンギヤP32を自転かつ公転自在に保持するキャリアCA32とを備えている。この第2遊星歯車機構32のサンギヤS32は入力軸30に連結されており、キャリアCA32は出力軸33に連結されている。さらに、第2遊星歯車機構32のリングギヤR32はブレーキB2を介してハウジング3Aに選択的に連結されており、ブレーキB2の係合によりリングギヤR32の回転が阻止される。
【0043】
そして、以上の自動変速機3の入力軸30の回転数(入力軸回転数)は入力軸回転数センサ203によって検出される。また、自動変速機3の出力軸33の回転数(出力軸回転数)は出力軸回転数センサ204によって検出される。これら入力軸回転数センサ203及び出力軸回転数センサ204の出力信号から得られる回転数の比(出力軸回転数/入力軸回転数)に基づいて、自動変速機3の現状ギヤ段を判定することができる。
【0044】
自動変速機3は運転者がシフト操作装置8のシフトレバー81(図5参照)を操作することにより、例えばPレンジ(パーキングレンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Dレンジ(前進走行レンジ)等に切り替えることができる。
【0045】
以上の自動変速機3では、摩擦係合要素であるブレーキB1、B2を所定の状態に係合または解放することによってギヤ段(変速段)が設定される。自動変速機3のブレーキB1、B2の係合・解放状態を図3の作動表に示す。図3の作動表において「○」は「係合」を表し、「空欄」は「解放」を表している。
【0046】
この例の自動変速機3において、ブレーキB1、B2の双方を解放することにより、入力軸30(第2モータジェネレータMG2の回転軸)と出力軸33(リングギヤ軸21)とを切り離すことができる(ニュートラル状態)。
【0047】
また、変速ギヤ段の「Lo」は、ブレーキB2を係合し、ブレーキB1を解放することによって設定される。ブレーキB2が係合すると、第2遊星歯車機構32のリングギヤR32の回転が固定され、その回転が固定されたリングギヤR32と、第2モータジェネレータMG2によって回転するサンギヤS32とによって、キャリアCA32つまり出力軸33が低速回転する。
【0048】
変速ギヤ段の「Hi」は、ブレーキB1を係合し、ブレーキB2を解放することによっ
て設定される。ブレーキB1が係合すると、第1遊星歯車機構31のサンギヤS31の回転が固定され、その回転が固定されたサンギヤS31と、第2モータジェネレータMG2によって回転するサンギヤS32(リングギヤ31)の回転とによって、キャリアCA32(キャリアCA31)つまり出力軸33が高速回転する。
【0049】
以上の自動変速機3において、「Lo」から「Hi」へのアップ変速は、ブレーキB2を解放すると同時にブレーキB1を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって達成される。また、「Hi」から「Lo」へのダウン変速は、ブレーキB1を解放すると同時
にブレーキB2を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって達成される。これらブレーキB1,B2の係合時または解放時の油圧は油圧制御回路300(図4参照)によって制御される。
【0050】
−油圧制御回路−
油圧制御回路300には、後述するリニアソレノイドバルブ及びコントロールバルブなどが設けられており、ソレノイドバルブの励磁・非励磁を制御して油圧回路を切り替えることによって自動変速機3のブレーキB1,B2の係合・解放を制御することができる。油圧制御回路300のリニアソレノイドバルブの励磁・非励磁は、ECU100からのソレノイド制御信号(指示油圧信号)によって制御される。
【0051】
図4は、上記油圧制御回路300の概略構成を示している。この図4に示すように、油圧制御回路300は、エンジン1の回転により駆動され、かつ、ブレーキB1,B2を作動させるのに十分な圧送性能をもってオイル(オートマチックトランスミッションフルード:ATF)をオイル用流路301に圧送する機械式ポンプMPと、機械式ポンプMPからオイル用流路301に圧送されたオイルのライン油圧PLを調整する3ウェイソレノイドバルブ302及びプレッシャコントロールバルブ303と、ライン油圧PLを用いてブレーキB1,B2の係合力を調整するリニアソレノイドバルブ304,305やコントロールバルブ306,307、アキュムレータ308,309とから構成されている。
【0052】
この油圧制御回路300では、ライン油圧PLは、3ウェイソレノイドバルブ302を駆動してプレッシャコントロールバルブ303の開閉を制御することにより調整することができる。
【0053】
また、ブレーキB1,B2の係合力は、リニアソレノイドバルブ304,305に印加する電流を制御することによりライン油圧PLをブレーキB1,B2に伝達させるコントロールバルブ306,307の開閉を制御することにより調節することができる。
【0054】
なお、この油圧制御回路300では、機械式ポンプMPから圧送されたオイルのうちブレーキB1,B2の作動に用いられなかった余剰のオイルと、ブレーキB1,B2の作動に用いられた後のプレッシャコントロールバルブ303からの戻りのオイルとを潤滑油としてオイル用流路310を介して動力分配機構2などに供給する。
【0055】
−シフト操作装置−
一方、ハイブリッド車両HVの運転席の近傍には図5に示すようなシフト操作装置8が配置されている。シフト操作装置8にはシフトレバー81が変位可能に設けられている。
【0056】
この例のシフト操作装置8には、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、及び、D(ドライブ)ポジションが設定されており、ドライバが所望のポジションへシフトレバー81を変位させることが可能となっている。これらPポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジション(下記のSポジションのシフトアップ(+)位置及びシフトダウン位置(−)位置も含む)の各位置は、シフトポジションセンサ206(図6参照)によって検出される。
【0057】
Pポジション及びNポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、Rポジション及びDポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。
【0058】
また、シフト操作装置8には、図5(b)に示すように、S(シーケンシャル)ポジション82が設けられており、シフトレバー81がSポジション82に操作されたときに、
手動にて変速操作を行うシーケンシャルモード(マニュアル変速モード)が設定される。
【0059】
この例では、例えば6段のシーケンシャルシフトレンジS1〜S6が設定されており、シフトレバー81がアップシフト(+)またはダウンシフト(−)に操作されると、シーケンシャルシフトレンジがアップまたはダウンされる。例えば、アップシフト(+)への1回操作ごとにシーケンシャルシフトレンジが1段ずつアップ(例えばS1→S2→・・→S6)される。一方、ダウンシフト(−)への1回操作ごとにシーケンシャルシフトレンジが1段ずつダウン(例えばS6→S5→・・→S1)される。なお、シーケンシャルモードが設定されたときのシフトレンジ制御については後述する。
【0060】
−ECU−
ECU100は、図6に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。
【0061】
ROM102には、ハイブリッド車両HVの基本的な運転に関する制御の他、ハイブリッド車両HVの走行状態に応じて自動変速機3のギヤ段を設定する変速制御を実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。この変速制御の具体的な内容については後述する。
【0062】
CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0063】
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104はバス106を介して互いに接続されるとともに、インターフェース105と接続されている。
【0064】
ECU100のインターフェース105には、エンジン回転数センサ201、エンジン1のスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ202、入力軸回転数センサ203、出力軸回転数センサ204、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ205、シフトレバー81の位置を検出するシフトポジションセンサ206、バッテリ5の充放電電流を検出する電流センサ207、及び、バッテリ温度センサ208などが接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
【0065】
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットル開度(吸気量)制御、燃料噴射量制御及び点火時期制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0066】
ECU100は、自動変速機3の油圧制御回路300にソレノイド制御信号(指示油圧信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、油圧制御回路300のリニアソレノイドバルブなどが制御され、所定のギヤ段(LoまたはHi)を構成するように、ブレーキB1、B2が所定の状態に係合または解放される。また、ECU100は、バッテリ5を管理するために、電流センサ207にて検出された充放電電流の積算値に基づいて充電状態(SOC:State of Charge)を演算する。さらに、ECU100は、インバータ4を制御し、そのインバータ4の制御によって第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の回生または力行(アシスト)が制御される。
【0067】
そして、ECU100は下記の「変速制御」、「シーケンシャルモード設定時のシフトレンジ制御」、「走行制御」、及び、「ダウンシフト変速時・変速開始前のエンジン制御
」を実行する。
【0068】
−変速制御−
まず、ECU100は、アクセル開度センサ205に出力信号に基づいてアクセル開度Acを算出するとともに、出力軸回転数センサ204に出力信号に基づいて車速Vを算出し、それらアクセル開度Ac及び車速Vに基づいて、図7に示すマップを参照して要求トルクTrを求める。
【0069】
次に、車速Vと要求トルクTrに基づいて図8に示す変速マップを参照して目標ギヤ段を算出するとともに、入力軸回転数センサ203及び出力軸回転数センサ204の出力信号から得られる回転数の比(出力軸回転数/入力軸回転数)に基づいて、自動変速機3の現状ギヤ段を判定し、それら目標ギヤ段と現状ギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0070】
その判定結果により、変速の必要がない場合(目標ギヤ段と現状ギヤ段とが同じで、ギヤ段が適切に設定されている場合)には、現状ギヤ段を維持するソレノイド制御信号(指示油圧信号)を自動変速機3の油圧制御回路300に出力する。
【0071】
一方、目標ギヤ段と現状ギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、自動変速機3のギヤ段が「Hi」の状態で走行している状況から、ハイブリッド車両HVの走行状態が変化(例えば車速が変化)して、例えば図8に示す点Aから点Bに変化した場合、変速マップから算出される目標ギヤ段が「Lo」となり、その「Lo」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(指示油圧信号)を自動変速機3の油圧制御回路300に出力して、摩擦係合要素であるブレーキB1を解放すると同時に、ブレーキB2を係合することにより、Hiのギヤ段からLoのギヤ段への変速(Hi→Loダウン変速)を行う。
【0072】
図7に示す要求トルク算出用のマップは、車速V及びアクセル開度Acをパラメータとして、要求トルクTrを実験・計算等により経験的に求めた値をマップ化したもので、ECU100のROM102に記憶されている。
【0073】
また、図8に示す変速マップは、車速V及び要求トルクTrをパラメータとし、それら車速V及び要求トルクTrに応じて、適正なギヤ段を求めるための2つの領域(Lo領域及びHi領域)が設定されたマップであって、ECU100のROM102内に記憶されている。図8の変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップ及びシフトダウンの各切り替え方向を図中に矢印を用いて示している。
【0074】
なお、シーケンシャルモードが選択されている場合においても、ハブリッド車両HVの走行状態の変化により、図8に示す変速マップのシフトアップ線またはダウンシフト線を跨いだときには、自動変速機3のダウン変速またはアップ変速を行う。
【0075】
−シーケンシャルモード設定時のシフトレンジ制御−
ECU100は、出力軸回転数センサ204に出力信号に基づいて車速Vを算出し、その車速Vに基づいて下限エンジン回転数を定める。具体的には、例えば図9に示すように、車速(出力軸回転数)Vをパラメータとし、各シーケンシャルシフトレンジS1〜S6毎にエンジン回転数が設定されたマップを用い、現在の車速V及びシフトレバー操作にて選択されたシーケンシャルシフトレンジS1〜S6の位置情報に基づいて、図9のマップを参照して下限エンジン回転数を定め、その回転数以上となるように、動力分配機構2に連結した第1モータジェネレータMG1の運転状態を制御するという方法によって実行される。
【0076】
なお、図9に示すマップはECU100のROM102に記憶されている。また、図9に示すマップにおいて、エンジン回転数は、車速Vが同じ条件であれば、シーケンシャルシフトレンジS1が最も高く、シーケンシャルシフトレンジS6側に向かうに従って小さくなるように設定されており、例えば、シーケンシャルシフトレンジが「S3」から「S2」にダウンシフト操作されると、エンジン回転数は上昇する。また、シャルシフトレンジが「S3」から「S4」にアップシフト操作されると、エンジン回転数は低下するようになっている。
【0077】
−走行制御−
ECU100は、上記と同様な処理により、アクセル開度Ac及び車速Vに基づいて図7に示すマップを参照してリングギヤ軸(プロペラシャフト)21に出力すべき要求トルクTrを算出し、この要求トルクTrに対応する要求動力がリングギヤ軸21に出力されるように、エンジン1及びモータジェネレータMG1,MG2(インバータ4)を駆動制御して所定の走行モードでハイブリッド車両HVを走行する。
【0078】
例えば、発進時や低速走行時のようにエンジン効率が低くなる領域では、エンジン1の運転を停止し、要求動力に見合う動力を第2モータジェネレータMG2から自動変速機3を介してリングギヤ軸21に出力する。通常走行時には、要求動力に見合う動力がエンジン1から出力されるようにエンジン1を駆動するとともに、第1モータジェネレータMG1によって最適燃費となるようにエンジン1の回転数を制御する。
【0079】
また、第2モータジェネレータMG2を駆動してトルクをアシストする場合、車速Vが遅い状態では自動変速機3のギヤ段を「Lo」に設定してリングギヤ軸(プロペラシャフト)21に付加するトルクを大きくし、車速Vが増大した状態では自動変速機3のギヤ段を「Hi」に設定して第2モータジェネレータMG2の回転数を相対的に低下させて損失を低減することで、効率の良いトルクアシストを実行する。さらに、第2モータジェネレータMG2の運転を停止し、第1モータジェネレータMG1でエンジントルクの反力を受け持ちながら、エンジン1から動力分配機構2を介してリングギヤ軸21に直接伝達されるトルク(直達トルク)だけで走行するという走行制御も実行される。
【0080】
なお、ECU100は、通常、自動変速機3の入力トルクが等パワー(入力軸回転数×入力トルク=一定)となるように、第2モータジェネレータMG2に等パワー指令を供給して第2モータジェネレータMG2を等パワー制御している。
【0081】
−ダウンシフト変速時のエンジン制御(1)−
まず、ハイブリッド車両HVにおいて、ダウンシフト変速中にアクセルペダルが踏み込まれた場合(パワーONダウンシフト変速時)、変速ショックの低減及び自動変速機3の摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材熱負荷の低減等のために、変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施する必要があるが、上述したように、エンジン1が高回転になると保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が働いてトルクダウンを実施することができない。すなわち、エンジン回転数が低い場合は、エンジンパワーをエンジン慣性で消費させることができるので問題ないが、上記したシーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、エンジン1の過回転防止(部品保護)のために、エンジントルクの反力を受け持つ第1モータジェネレータMG1で回転数制御が実行されるので発電量が増加する。このようにして発電量が増加すると、第2モータジェネレータMG2での電力消費が要求され、所望のトルクダウンを実施できない。
【0082】
そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショック
が生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0083】
そのような点を考慮して、この例では、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中に、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2との間の電力収支が成立するようにエンジン1の出力を制限することで、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施できるようにする点に特徴がある。
【0084】
その具体的な制御の例について図10のフローチャートを参照して説明する。図10の制御ルーチンは、ECU100において所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
【0085】
ステップST101において、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST102に進む。ステップST101の判定結果が否定判定である場合(ダウンシフト変速中でない場合)はリターンする。
【0086】
ステップST102では、ユーザ要求パワーを算出する。具体的には、上記と同様な処理により、アクセル開度Ac及び車速Vに基づいて図7に示すマップを参照して要求トルクTrを算出し、その要求トルクTrと出力軸回転数(出力軸回転数センサ204の出力信号に基づいて算出)とからユーザ要求パワーを算出する(要求パワー=要求トルク×出力軸回転数)。このようにして算出したユーザ要求パワーをエンジン要求パワーPeとする(ステップST103)。
【0087】
ステップST104においては、バッテリ温度センサ208にて検出されるバッテリ温度及びSOCに基づいて現在のバッテリ5の電力受入制限Winを求め、電力収支成立条件[|Win|≧|Pg+Ph|]を満たすように、エンジン1の出力(エンジンパワーPe)の上限をガードする。ここで、Pgは、エンジン回転数を制御する第1モータジェネレータMG1の発電量であり、Phは補機消費分である。補機消費分Phは、フィードバックマージン、エンジン消費分(イナーシャ、トルクダウン)、及び、ロス分などを考慮して設定する。
【0088】
上記電力収支成立条件のPg(MG1の発電量)は、バッテリ5への入力電力となるので、図11に示すように、バッテリ5側から見て負(マイナス)の値である。そして、Pgが電力収支成立条件[|Win|≧|Pg+Ph|]を満たしている場合、図11に示すように、Win〜Wout(電力出力制限)の間において第2モータジェネレータMG2の使用が可能であり、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施することができる。
【0089】
また、補機消費分Phのパラメータのうち、フィードバックマージンは、エンジン回転数のばらつき等を考慮した値であって、補機消費分Phを適合する条件によって負(マイナス)または正(プラス)の値を取り得る。また、補機消費分Phのパラメータのうち、エンジン消費分及びロス分は正(プラス)の値である。エンジン消費分のうちのトルクダウン分は、エンジン1の制御(出力制限)によりエンジン出力が低くなると、第1モータジェネレータMG1の発電量が減るので、その減少分を反映させるためのパラメータであって、正(プラス)の値である。なお、補機消費分Phは、フィードバックマージンの正負により、負(マイナス)または正(プラス)の値を取り得る(図11参照)。また、補機消費分Phは、あらかじめ実験・計算等により経験的に求めた値(固定値)を設定しておく。
【0090】
そして、ステップST105において、上記ステップST104にて上限がガードされ
たエンジン要求パワーPeを目標出力としてエンジン1の出力制御(エンジン出力制限制御)を行う。
【0091】
以上のように、この例の制御によれば、第1モータジェネレータMG1の発電量Pgと補機消費分Phとの合計(|Pg+Ph|)が、バッテリ受入制限Win内(|Win|≧|Pg+Ph|)となる条件を満たすように、エンジン1の出力の上限をガードしているので、ダウンシフト変速中に、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを行っても、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2との間の電力収支を成立させることができる。
【0092】
従って、シーケンシャルシフト使用時等でエンジンが高回転であっても、上記エンジン出力制限制御によって第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを行うことが可能となり、第2モータジェネレータMG2の回転上昇(モータの吹き)を抑制することができる。これによって、摩擦係合要素の係合時における第2モータジェネレータMG2と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間の差回転を小さくすることができ、変速ショックの抑制及び自動変速機3の摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材保護が可能になる。
【0093】
ここで、この例の制御において、エンジン出力制限を実施する際に、図12に示すように、出力制限の開始・終了時に、当該エンジン出力(エンジンパワーPe)を徐々に変化させるようにすれば、エンジン出力の変化時におけるショックの発生を抑制することができる。
【0094】
また、エンジン出力制限は、ハイブリッド車両HVの運転状態(車速等)が、図8に示すシフトダウン線(変速線)に近づいた時点(変速開始前)で開始し、その時点からエンジン出力(エンジンパワーPe)を徐々に変化させるようにしてもよい(図13参照)。また、同様に、エンジン出力制限の解除は変速の進行度を見ながら、変速終了前(変速中)の段階で実行するようにしてもよい(図13参照)。
【0095】
−ダウンシフト変速開始前のエンジン制御−
上述したように、ハイブリッド車両HVにおいて、シフトダウン変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施する必要があるが、シーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、第1モータジェネレータMG1による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動してトルクダウンを実施することができない。また、高車速でのダウンシフト時など、変速完了までに多くの時間を要する場合も第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施できない。
【0096】
そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショックが生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0097】
そのような点を考慮して、この例では、シーケンシャルシフト使用時等によりエンジン回転数が高い場合、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)開始前にエンジン回転数を低下させ、エンジン回転数が保護制御が作動しない回転数にまで低下した後にダウンシフト変速を開始する点に特徴がある。
【0098】
その具体的な制御の例について図14のフローチャートを参照して説明する。図14の制御ルーチンは、ECU100において所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
【0099】
ステップST201において、現在のギヤ段が「Hi」であり、かつダウンシフト変速中でないか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST202に進む。ステップST201の判定結果が否定判定である場合(現在のギヤ段が「Lo」であるか、ダウンシフト変速中である場合)はリターンする。
【0100】
ステップST202では、出力軸回転数センサ204の出力信号から算出される現在の車速Vが所定車速以下であるか否かを判定する。具体的には、現在の車速Vが、図8の変速マップのシフトダウン線の手前(高速側)の所定車速(例えば、所定車速=シフトダウン線の車速+5km/h)以下であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST203に進む。ステップST202の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0101】
ステップST203においてはエンジン1の回転数を低下させる。エンジン回転数を低下させる方法としては、第1モータジェネレータMG1の目標回転数を低下させる方法、または、エンジン1の目標回転数を低下させる方法を挙げることができる。例えば、パワーオン(アクセルオン)や、パワーオフ(アクセルオフ)のときにはエンジン1の目標回転数を低下させてエンジン回転数を低下させる。また、パワーオフ(アクセルオフ)でエンジン1のフューエルカット時には第1モータジェネレータMG1の目標回転数を低下させてエンジン回転数を低下させる。
【0102】
ステップST204では、エンジン回転数センサ201の出力信号から読み込まれるエンジン回転数が低減目標値以下である否かを判定するとともに、ダウンシフト変速条件が成立したか否かを判定し、エンジン回転数が低減目標値以下(エンジン回転数≦低減目標値)であり、かつ、ダウンシフト変速条件が成立している場合(ステップST204の判定結果が肯定判定である場合)はステップST205に進んで、ダウンシフト変速を開始する。一方、ステップST204の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0103】
なお、ステップST204の判定処理において、ハイブリッド車両HVの走行状態の変化(車速Vの低下等)により、図8の変速マップのダウンシフト線(Hi→Lo)を跨いだときにダウンシフト変速条件が成立したと判定する。
【0104】
ここで、ステップST204においてエンジン回転数に対して設定する低減目標値について説明する。まず、ハイブリッド車両HVにおいては、例えば図16に示すように、エンジン1の許容回転数が、エンジン1自体の保護、及び、ピニオンギヤP21や第1モータジェネレータMG1を保護するために定められており、この許容回転数の上限値を超えないように第1モータジェネレータMG1にてエンジン回転数を制御(保護制御)しているので、その保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しない回転数を考慮して低減目標値を設定する。なお、低減目標値は、バッテリ5が電力受入不可の状態のときには例えば1200rpmとする。また、低減目標値は、上述したようにバッテリ5の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。
【0105】
以上のように、この例の制御によれば、ダウンシフト変速開始前にエンジン回転数を低下させ、エンジン回転数が、第1モータジェネレータMG1による保護制御が作動しない回転数にまで低下した後(エンジン回転数が低減目標値以下となった後)に、ダウンシフト変速を実施するので、ダウンシフト変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンが可能となる。これによって変速ショックを抑制することができ、摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材を保護することができる。
【0106】
なお、この例では、ダウンシフト変速中に保護制御が作動しないので、シーケンシャルシフトを使用したスポーツ走行時等に、ダウンシフト線(図8参照)を高車速化して「L
o」走行領域を大きくすることで、高車速でのダウンシフト変速が可能になり、第2モータジェネレータMG2の過熱を防止できる。
【0107】
−ダウンシフト変速時のエンジン制御(2)−
上述したように、ハイブリッド車両HVにおいて、シフトダウン変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施する必要があるが、シーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、第1モータジェネレータMG1による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動してトルクダウンを実施することができない。そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショックが生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0108】
なお、エンジン回転数の上昇を抑制することができれば問題はないが、その回転数上昇抑制を電子スロットルシステムによるトルク制限で行う場合、応答性が悪いため(通常、なまし処理等を実施しているため)、エンジン回転数制御が間に合わない。また、エンジン1のフューエルカットにてエンジン回転数の上昇を抑制することも考えられるが、この場合、第1モータジェネレータMG1にてエンジン回転数を保持する必要があり、過放電や急激なトルク変化によるショックの発生が懸念される。
【0109】
そのような点を考慮して、この例では、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中に、点火時期遅角制御や燃料噴射量低減制御などエンジン側の制御にてエンジン回転数の上昇速度を抑制することで、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施できるようにする点に特徴がある。
【0110】
その具体的な制御の例について図15のフローチャートを参照して説明する。図15の制御ルーチンは、ECU100において所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
【0111】
ステップST301において、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST302に進む。ステップST301の判定結果が否定判定である場合(ダウンシフト変速中でない場合)はリターンする。
【0112】
ステップST302では、エンジン回転数センサ201の出力信号から読み込まれるエンジン回転数が判定閾値以上であるか否かを判定する。ステップST302の判定結果が肯定判定(エンジン回転数≧判定閾値)である場合はステップST303に進む。ステップST302の判定結果が否定判定である場合(エンジン回転数<判定閾値)はリターンする。
【0113】
ここで、エンジン回転数に対して設定する判定閾値は、エンジン1自体の上限回転数、駆動力伝達系の回転体(例えば動力分配機構2のピニオンギヤP21)の上限回転数、及び、第1モータジェネレータMG1の上限回転数などを考慮して決定する。具体的には、ハイブリッド車両HVにおいては、例えば図16に示すように、エンジン1の許容回転数が、エンジン1自体の保護、及び、ピニオンギヤP21や第1モータジェネレータMG1を保護するために定められており、この許容回転数の上限値を超えないように第1モータジェネレータMG1にてエンジン回転数を制御(保護制御)しているで、その許容回転数の上限値に対して余裕度を見込んだ値(許容回転数上限値−余裕度)を判定閾値とする。なお、この判定閾値は、上述したようにバッテリ5の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。
【0114】
ステップST303においては、上記と同様な処理(図10のステップST103の処理)にてエンジン要求パワーPeを求め、そのエンジン要求パワーPeがエンジン回転数が上昇する大きさであるか否かを判定する。具体的には、エンジン要求パワーが大きくて、ダウンシフト変速中にエンジン回転数が上昇し、図16に示す許容回転数の上限に到達(エンジン回転上限当たり)するか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST304に進む。ステップST303の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0115】
そして、ステップST304において、エンジン1の点火時期遅角制御を実施して、エンジン回転数の上昇速度を抑制する。このようにしてエンジン回転数の上昇速度を抑えることにより、ダウンシフト変速中に、第1モータジェネレータMG1による保護制御が作動しなくなり、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンが可能となる。これによって変速ショックを抑制することができ、摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材を保護することができる。
【0116】
なお、図15に示す制御では、エンジン1の点火時期遅角制御によって、エンジン回転数の上昇速度を抑制しているが、これに限られることなく、エンジン1の燃料噴射量低減制御、または、電子スロットル制御におけるトルク制限のなまし処理の廃止制御によってエンジン回転数の上昇速度を抑制するようにしてもよい。また、これらのエンジン1の点火時期遅角制御、エンジン1の燃料噴射量低減制御、及び、電子スロットル制御におけるトルク制限のなまし処理の廃止制御のうち、いずれか2つの制御または全ての制御を組み合わせて、エンジン回転数の上昇速度を抑制するようにしてもよい。
【0117】
−他の実施形態−
以上の例では、前進2段変速の自動変速機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、例えば前進4段変速等の他の任意の変速段の遊星歯車式自動変速機が搭載された車両の制御にも適用可能である。
【0118】
以上の例では、ガソリンエンジンを搭載した車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両の制御にも適用可能である。さらに、本発明は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両に限られることなく、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両や、4輪駆動車の制御にも適用できる。
【0119】
FF型のハイブリッド車両の一例を図17に示す。
【0120】
図17に示すハイブリッド車両は、エンジン1、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、動力分配機構2、自動変速機3、ギヤ機構500、デファレンシャルギヤ6、及び、駆動輪7などを備えている。
【0121】
この例のハイブリッド車両では、第2モータジェネレータMG2の回転軸が自動変速機3の入力軸に連結されている。また、自動変速機3の出力軸が動力分配機構2のリングギヤ軸21に連結されており、第2モータジェネレータMG2からの動力が自動変速機3、ギヤ機構500及びデファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7に出力するように構成されている。
【0122】
この例のハイブリッド車両において、動力分配機構2は図1に示したものと同じ構造である。また、自動変速機3は、図2に示したものと同じ構造であり、ブレーキB2を解放すると同時にブレーキB1を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって「Lo」から「Hi」へのアップ変速が達成され、ブレーキB1を解放すると同時にブレーキB2を
係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって「Hi」から「Lo」へのダウン変速が達成される。
【0123】
そして、この図17に示すハイブリッド車両においても、ダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショックが生じる場合があるが、このような構成のハイブリッド車両においても、図10、図14または図15の各制御を実行することにより、変速ショックの抑制及び自動変速機3の摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材保護が可能になる。
【符号の説明】
【0124】
1 エンジン
2 動力分配機構
21 リングギヤ軸
S21 サンギヤ
R21 リングギヤ
P21 ピニオンギヤ
CA21 キャリア
3 自動変速機
300 油圧制御回路
B1,B2 ブレーキ(摩擦係合要素)
4 インバータ
5 バッテリ(蓄電装置)
7 駆動輪
8 シフト操作装置
S シーケンシャルポジション
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ
100 ECU
201 エンジン回転数センサ
203 入力軸回転数センサ
204 出力軸回転数センサ
205 アクセル開度センサ
206 シフトポジションセンサ
207 電流センサ
208 バッテリ温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機とを備え、第2電動機からの動力を有段式の自動変速機を介して駆動輪に出力する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、車両に搭載されたエンジン(内燃機関)からの排気ガスの排出量低減と燃料消費率(燃費)の向上が望まれており、これを満足する車両として、ハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車両が実用化されている。
【0003】
ハイブリッド車両は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジンと、エンジンの出力による発電またはバッテリの電力により駆動してエンジン出力のアシスト等を行う電動機(例えばモータジェネレータまたはモータ)とを備え、エンジン及び電動機のいずれか一方または双方を走行駆動源としている。
【0004】
ハイブリッド車両においては、車速及びアクセル開度に基づいて、エンジン及び電動機の運転領域(具体的には駆動または停止)が制御される。例えば、発進時や低速走行時のようにエンジン効率が低くなる領域では、エンジンを停止させて電動機のみの動力で駆動輪を駆動する。また、通常走行時には、エンジンを駆動して、そのエンジンの動力で駆動輪を駆動するという制御を行う。さらに、全開加速等の高負荷時には、エンジンの動力に加えて、バッテリから電動機に電力を供給して電動機による動力を補助動力として追加するという制御を行う。
【0005】
こうしたハイブリッド車両の駆動装置の1つとして、例えば、サンギヤ、リングギヤ及びキャリア(ピニオンギヤ)を回転要素とする機構であって、エンジンの出力を第1電動機及び伝達軸(リングギヤ軸)へ分配(もしくはエンジンの出力と第1電動機の出力とを合成して伝達軸に出力)する動力分配機構と、第2電動機と、この第2電動機と駆動輪(出力軸)との間に設けられた有段式の自動変速機と、第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置(バッテリ)とを備え、第2電動機からの動力を自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力する車両用駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような車両用駆動装置では、動力分配機構が差動機構として機能し、その差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪に機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される変速機として機能する。これによってエンジンを最適な作動状態に維持しつつ車両を走行させることができ、燃費の向上をはかることができる。また、この種のハイブリッド車両用の駆動装置において電力収支は、通常、ジェネレータ発電量・バッテリ充放電量・モータ消費量を全て足すとゼロとなるように制御されている。
【0007】
一方、ハイブリッド車両に搭載される変速機としては、摩擦係合要素であるクラッチやブレーキと遊星歯車装置とを用いてギヤ段(変速段)を設定する遊星歯車式変速機が適用されている。例えば、摩擦係合要素として2個のブレーキを備え、一方のブレーキを係合し他方のブレーキを解放する変速段(例えば低速段)と、他方のブレーキを係合し一方のブレーキを解放する変速段(例えば高速段)との切り替えを行うようにしている。この場合、変速時に係合側の摩擦係合要素の係合と、解放側の摩擦係合要素の解放とを同時に行う、いわゆるクラッチツウクラッチ変速が行われることになる。
【0008】
また、ハイブリッド車両などの車両においては、ドライバにより操作されるシフト操作装置が設けられており、そのシフト操作装置のシフトレバーを操作することにより、自動変速機のシフトポジションを、例えばP(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジションなどに切り替えることが可能になっている。さらに、近年では、シーケンシャルモード付きのシフト操作装置も実用化されている。シーケンシャルモードには、複数段(例えば6段)のシーケンシャルシフトレンジが設定されており、シフトレバーをS(シーケンシャル)ポジションに配置してアップシフト(+)またはダウンシフト(−)操作を行うと、シーケンシャルシフトレンジがアップまたはダウンされる。そして、このようなシーケンシャルモードが選択された場合、Dレンジで走行する場合と比較してエンジン回転数を高く維持するように制御される。
【0009】
なお、ハイブリッド車両の変速時の制御に関する技術として、下記の特許文献1に、第2電動機からの動力を自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力するハイブリッド車両において、自動変速機のダウンシフト変速中に、第2電動機のトルクダウンを実施することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−316848号公報
【特許文献2】特開2007−237923号公報
【特許文献3】特開2005−051887号公報
【特許文献4】特開2004−316502号公報
【特許文献5】特開2007−245769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記したハイブリッド車両において、ダウンシフト変速中にアクセルペダルが踏み込まれた場合、変速ショックの低減及び自動変速機の摩擦係合要素(ブレーキ)の摩擦材熱負荷の低減等のために、変速中に第2電動機のトルクダウンを実施する必要があるが、エンジンが高回転になると保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が働いてトルクダウンを実施することができない。すなわち、エンジン回転数が低い場合は、エンジンパワーをエンジン慣性で消費させることができるので問題ないが、上記したシーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、エンジン過回転防止(部品保護)のために、エンジントルクの反力を受け持つ第1電動機(ジェネレータ)にて回転数制御が実行されるので発電量が増加する。このようにして発電量が増加すると、第2電動機(モータ)での電力消費が要求されるため、所望のトルクダウンを実施できない。
【0012】
そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2電動機の吹きを制限できなくなるため、第2電動機の回転数と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間に差回転がある状態で摩擦係合要素が係合することになり、係合ショックが生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0013】
なお、バッテリの電力受入が十分であれば、このような問題を解消することは可能であるが、上記したエンジン高回転時の第1電動機の発電量の充電等を含む、いかなる条件での充電が可能な容量を確保するにはバッテリスペックが過剰となるため、実現することは困難である。
【0014】
また、ハイブリッド車両において、変速中の駆動力変化をモータとエンジン(ジェネレータ)との協調制御により打ち消す技術が各種開示されているが、こうした技術を適用しても、部品保護制御等により変速中に協調制御を実施できなくなる場合があって、変速シ
ョックの発生や摩擦材熱負荷の増大が懸念される。
【0015】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機とを備え、第2電動機からの動力を有段式の自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力する車両の制御装置において、ダウンシフト変速中のショック発生及び自動変速機の摩擦材熱負荷の増大を抑制することが可能な制御の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機とを備え、その第2電動機からの動力を有段式の自動変速機を介して駆動輪(車軸)に出力する車両の制御装置において、自動変速機のダウンシフト変速中やダウンシフト変速開始前に、エンジン回転数を低下させることで、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施できるようにする。
【0017】
−解決手段−
具体的に、本発明は、エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪(車軸)との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、前記自動変速機のダウンシフト変速を開始する前に、前記エンジンの回転数を低下させる回転数制御手段を備えたことを特徴としている。この発明においては、ダウンシフト変速開始前のエンジン回転数の低減により、エンジン回転数が低減目標値以下となったことを条件にダウンシフト変速を開始する。
【0018】
この発明によれば、ダウンシフト変速開始前にエンジン回転数を低下させるので、シーケンシャルシフト使用時等によりエンジン回転数が高い場合であっても、ダウンシフト変速中のエンジン回転数を、第1電動機による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しない回転数にまで低下させることが可能になる。従って、この発明においては、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施することが可能となり、第2電動機の回転上昇(モータの吹き)を抑制することができる。これによって摩擦係合要素の係合時における第2電動機と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間の差回転を小さくすることができ、変速ショックの抑制及び摩擦係合要素の摩擦材保護が可能になる。
【0019】
ここで、エンジン回転数に対して設定する低減目標値は、エンジンの許容回転数つまりエンジン自体の限界回転数、及び、第1電動機(MG1)の上限回転数や駆動力伝達系の回転体(ピニオンギヤ等)の上限回転数などに基づいて決定される許容回転数(図16参照)をエンジン回転数が超えること防止する保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しない回転数を考慮して設定する。
【0020】
また、エンジン回転数に対して設定する低減目標値は、蓄電装置(バッテリ)の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。この点について説明すると、蓄電装置が電力の受入可能な状態であるときには、電力受入不可の場合と比べて保護制御が作動するエンジン回転数に対する余裕度が高くなるので、その分だけ低減目標値を高い側に設定することが可能であり、この点を考慮して低減目標値を可変に設定することで、上記したエンジン回転数低下制御の適用領域を必要最小限に抑えることができる。
【0021】
本発明の他の解決手段として、エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪(車軸)との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、前記自動変速機のダウンシフト変速中における前記エンジン回転数上昇速度を当該エンジン側の制御により抑制するエンジン制御手段を備えた構成を挙げることができる。
【0022】
この発明によれば、ダウンシフト変速中にエンジン側の制御にてエンジン回転数の上昇速度を抑制しているので、ダウンシフト変速中に、第1電動機による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しないようにすることができる。従って、この発明においても、ダウンシフト変速中に第2電動機のトルクダウンを実施することが可能となり、第2電動機の回転上昇(モータの吹き)を抑制することができる。これによって摩擦係合要素の係合時における第2電動機と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間の差回転を小さくすることができ、変速ショックの抑制及び摩擦係合要素の摩擦材保護が可能になる。
【0023】
この発明の具体的な構成について説明する。
【0024】
まず、この発明において、エンジン回転数が判定閾値以上であることを条件に、エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行する。この場合、エンジン回転数に対して設定
する判定閾値は、エンジン自体の限界回転数、及び、第1電動機(MG1)の上限回転数や駆動力伝達系の回転体(ピニオンギヤ等)の上限回転数などに基づいて決定されるエンジンの許容回転数(図16参照)を考慮し、そのエンジンの許容回転数に対して余裕度を見込んだ値(判定閾値=エンジン許容回転数−余裕度)とすればよい。
【0025】
また、エンジン回転数に対して設定する判定閾値は、蓄電装置(バッテリ)の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。この点について説明すると、蓄電装置が電力の受入可能な状態であるときには、電力受入不可の場合と比べて保護制御が作動するエンジン回転数に対する余裕度が高くなるので、その分だけ判定閾値を高い側に設定することが可能であり、この点を考慮して判定閾値を可変に設定することで、上記したエンジン回転数上昇抑制制御を適用する領域を必要最小限に抑えることができる。
【0026】
この発明において、ダウンシフト変速中のエンジン要求パワーを考慮してエンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行するようにしてもよい。具体的には、エンジン要求パワーが大きくて、ダウンシフト変速中にエンジン回転数が上記許容回転数の上限に到達(エンジン上限回転当たり)する状況になるときに、エンジン側の制御でエンジン回転数の上昇速度を抑制するようにする。
【0027】
このように、エンジン回転数が判定閾値以上であるという条件及び/またはエンジン要求パワーが判定閾値以上であるという条件が成立したときに限って、エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行することにより、その回転数上昇速度を抑制する制御を必要なときに限定して行うことができ、ドライバの違和感(回転上昇遅れ等)を最小限に抑えることができる。
【0028】
この発明において、エンジン回転数の上昇速度を抑制する方法としては、エンジンの点火時期遅角制御、エンジンの燃料噴射量低減制御、エンジン制御のなまし処理(例えば電子スロットル制御におけるトルク制限のなまし処理)の廃止制御などを挙げることができる。これらの各制御はそれぞれ単独で実施してもよいし、いずれか2つの制御または全ての制御を組み合わせて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用するハイブリッド車両の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1のハイブリッド車両に搭載される自動変速機の概略構成図である。
【図3】図1に示す自動変速機の作動表である。
【図4】自動変速機の油圧制御回路の一部を示す回路構成図である。
【図5】シフト操作装置の要部斜視図(a)及びシフト操作装置のシフトゲート(b)を併記して示す図である。
【図6】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】要求トルク算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図8】変速制御に用いる変速マップの一例を示す図である。
【図9】シーケンシャルシフト変速マップの一例を示す図である。
【図10】ECUが実行するダウンシフト変速時のエンジン制御の一例を示すフローチャートである。
【図11】第1モータジェネレータMG1による発電量Pgとバッテリの電力受入制限Winとの関係を示す図である。
【図12】エンジン出力制限の開始・終了時におけるエンジン出力変化の一例、及び、第2モータジェネレータMG2の回転数・トルクの変化を示すタイミングチャートである。
【図13】エンジン出力制限の開始・終了時におけるエンジン出力変化の他の例、及び、第2モータジェネレータMG2の回転数・トルクの変化を示すタイミングチャートである。
【図14】ECUが実行するダウンシフト変速開始前のエンジン制御の一例を示すフローチャートである。
【図15】ECUが実行するダウンシフト変速時のエンジン制御の他の例を示すフローチャートである。
【図16】エンジンの許容回転数を示す図である。
【図17】本発明を適用するハイブリッド車両の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は本発明を適用するハイブリッド車両の一例を示す概略構成図である。
【0032】
この例のハイブリッド車両HVは、エンジン1、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、動力分配機構2、自動変速機3、インバータ4、バッテリ(HVバッテリ)5、デファレンシャルギヤ6、駆動輪7、油圧制御回路300(図4参照)、シフト操作装置8(図5参照)、及び、ECU(Electronic Control Unit)100などを備えている。
【0033】
これらエンジン1、モータジェネレータMG1,MG2、自動変速機3、動力分配機構2、自動変速機3(油圧制御回路300も含む)、シフト操作装置8、及び、ECU100の各部について以下に説明する。
【0034】
−エンジン−
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置であって、スロットル開度(吸気量)、燃料噴射量、点火時期などの運転状態を制御できるように構成されている。エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)はエンジン回転数センサ201によって検出され
る。エンジン1はECU100によって駆動制御される。
【0035】
なお、この例のエンジン1には、エンジン回転数と運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットル開度を制御する電子スロットルシステムが搭載されている。このような電子スロットルシステムでは、スロットル開度センサ202(図6参照)を用いてスロットルバルブの実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブのアクチュエータをフィードバック制御している。
【0036】
−モータジェネレータ−
モータジェネレータMG1,MG2は交流同期電動機であって、電動機として機能するとともに発電機として機能する。モータジェネレータMG1,MG2はインバータ4を介してバッテリ5に接続されている。インバータ4は、ECU100によって制御され、そのインバータ4の制御により、モータジェネレータMG1,MG2の回生または力行(アシスト)が設定される。その際の回生電力はバッテリ5にインバータ4を介して充電される。また、モータジェネレータMG1,MG2の駆動用電力はバッテリ5からインバータ4を介して供給される。
【0037】
−動力分配機構−
動力分配機構2は、外歯歯車のサンギヤS21と、このサンギヤS21と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR21と、サンギヤS21に噛み合うとともに、リングギヤR21に噛み合う複数のピニオンギヤP21と、この複数のピニオンギヤP21を自転かつ公転自在に保持するキャリアCA21とを備え、それらサンギヤS21、リングギヤR21及びキャリアCA21を回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構である。
【0038】
動力分配機構2のキャリアCA21にはエンジン1のクランクシャフト11が連結されている。また、動力分配機構2のサンギヤS21には第1モータジェネレータMG1の回転軸が連結されている。そして、動力分配機構2のリングギヤR21にはリングギヤ軸(プロペラシャフト)21が連結されている。リングギヤ軸21はデファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7に連結されている。また、リングギヤ軸21には第2モータジェネレータMG2の回転軸が自動変速機3を介して連結されている。
【0039】
このような構造の動力分配機構2において、第1モータジェネレータMG1が発電機として機能するときには、キャリアCA21から入力されるエンジン1からの動力をサンギヤS21側とリングギヤR21側にそのギヤ比に応じて分配する。一方、第1モータジェネレータMG1が電動機として機能するときには、キャリアCA21から入力されるエンジン1からの動力とサンギヤS21から入力される第1モータジェネレータMG1からの動力とを統合してリングギヤR21に出力する。
【0040】
−自動変速機−
自動変速機3は、図2に示すように、ダブルピニオン型の第1遊星歯車機構31、シングルピニオン型の第2遊星歯車機構32、及び、2つのブレーキB1,B2などを備えた遊星歯車式の変速機であって、入力軸30が第2モータジェネレータMG2の回転軸に連結されている。また、自動変速機3の出力軸33はリングギヤ軸21(図1)に連結されている。
【0041】
第1遊星歯車機構31は、外歯歯車のサンギヤS31と、このサンギヤS31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR31と、サンギヤS31に噛み合う複数の第1ピニオンギヤP31aと、この第1ピニオンギヤP31aに噛み合うとともに、リングギヤ
R31に噛み合う複数の第2ピニオンギヤP31bと、これら複数の第1ピニオンギヤP31a及び複数の第2ピニオンギヤP31bを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリアCA31とを備えている。第1遊星歯車機構31のキャリアCA31は第2遊星歯車機構32のキャリアCA32に一体的に連結されている。そして、第1遊星歯車機構31のサンギヤS31はブレーキB1を介して非回転部材であるハウジング3Aに選択的に連結されており、ブレーキB1の係合によってサンギヤS31の回転が阻止される。
【0042】
第2遊星歯車機構32は、外歯歯車のサンギヤS32と、このサンギヤS32と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR32と、サンギヤS32に噛み合うとともに、リングギヤR32に噛み合う複数のピニオンギヤP32と、複数のピニオンギヤP32を自転かつ公転自在に保持するキャリアCA32とを備えている。この第2遊星歯車機構32のサンギヤS32は入力軸30に連結されており、キャリアCA32は出力軸33に連結されている。さらに、第2遊星歯車機構32のリングギヤR32はブレーキB2を介してハウジング3Aに選択的に連結されており、ブレーキB2の係合によりリングギヤR32の回転が阻止される。
【0043】
そして、以上の自動変速機3の入力軸30の回転数(入力軸回転数)は入力軸回転数センサ203によって検出される。また、自動変速機3の出力軸33の回転数(出力軸回転数)は出力軸回転数センサ204によって検出される。これら入力軸回転数センサ203及び出力軸回転数センサ204の出力信号から得られる回転数の比(出力軸回転数/入力軸回転数)に基づいて、自動変速機3の現状ギヤ段を判定することができる。
【0044】
自動変速機3は運転者がシフト操作装置8のシフトレバー81(図5参照)を操作することにより、例えばPレンジ(パーキングレンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Dレンジ(前進走行レンジ)等に切り替えることができる。
【0045】
以上の自動変速機3では、摩擦係合要素であるブレーキB1、B2を所定の状態に係合または解放することによってギヤ段(変速段)が設定される。自動変速機3のブレーキB1、B2の係合・解放状態を図3の作動表に示す。図3の作動表において「○」は「係合」を表し、「空欄」は「解放」を表している。
【0046】
この例の自動変速機3において、ブレーキB1、B2の双方を解放することにより、入力軸30(第2モータジェネレータMG2の回転軸)と出力軸33(リングギヤ軸21)とを切り離すことができる(ニュートラル状態)。
【0047】
また、変速ギヤ段の「Lo」は、ブレーキB2を係合し、ブレーキB1を解放することによって設定される。ブレーキB2が係合すると、第2遊星歯車機構32のリングギヤR32の回転が固定され、その回転が固定されたリングギヤR32と、第2モータジェネレータMG2によって回転するサンギヤS32とによって、キャリアCA32つまり出力軸33が低速回転する。
【0048】
変速ギヤ段の「Hi」は、ブレーキB1を係合し、ブレーキB2を解放することによっ
て設定される。ブレーキB1が係合すると、第1遊星歯車機構31のサンギヤS31の回転が固定され、その回転が固定されたサンギヤS31と、第2モータジェネレータMG2によって回転するサンギヤS32(リングギヤ31)の回転とによって、キャリアCA32(キャリアCA31)つまり出力軸33が高速回転する。
【0049】
以上の自動変速機3において、「Lo」から「Hi」へのアップ変速は、ブレーキB2を解放すると同時にブレーキB1を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって達成される。また、「Hi」から「Lo」へのダウン変速は、ブレーキB1を解放すると同時
にブレーキB2を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって達成される。これらブレーキB1,B2の係合時または解放時の油圧は油圧制御回路300(図4参照)によって制御される。
【0050】
−油圧制御回路−
油圧制御回路300には、後述するリニアソレノイドバルブ及びコントロールバルブなどが設けられており、ソレノイドバルブの励磁・非励磁を制御して油圧回路を切り替えることによって自動変速機3のブレーキB1,B2の係合・解放を制御することができる。油圧制御回路300のリニアソレノイドバルブの励磁・非励磁は、ECU100からのソレノイド制御信号(指示油圧信号)によって制御される。
【0051】
図4は、上記油圧制御回路300の概略構成を示している。この図4に示すように、油圧制御回路300は、エンジン1の回転により駆動され、かつ、ブレーキB1,B2を作動させるのに十分な圧送性能をもってオイル(オートマチックトランスミッションフルード:ATF)をオイル用流路301に圧送する機械式ポンプMPと、機械式ポンプMPからオイル用流路301に圧送されたオイルのライン油圧PLを調整する3ウェイソレノイドバルブ302及びプレッシャコントロールバルブ303と、ライン油圧PLを用いてブレーキB1,B2の係合力を調整するリニアソレノイドバルブ304,305やコントロールバルブ306,307、アキュムレータ308,309とから構成されている。
【0052】
この油圧制御回路300では、ライン油圧PLは、3ウェイソレノイドバルブ302を駆動してプレッシャコントロールバルブ303の開閉を制御することにより調整することができる。
【0053】
また、ブレーキB1,B2の係合力は、リニアソレノイドバルブ304,305に印加する電流を制御することによりライン油圧PLをブレーキB1,B2に伝達させるコントロールバルブ306,307の開閉を制御することにより調節することができる。
【0054】
なお、この油圧制御回路300では、機械式ポンプMPから圧送されたオイルのうちブレーキB1,B2の作動に用いられなかった余剰のオイルと、ブレーキB1,B2の作動に用いられた後のプレッシャコントロールバルブ303からの戻りのオイルとを潤滑油としてオイル用流路310を介して動力分配機構2などに供給する。
【0055】
−シフト操作装置−
一方、ハイブリッド車両HVの運転席の近傍には図5に示すようなシフト操作装置8が配置されている。シフト操作装置8にはシフトレバー81が変位可能に設けられている。
【0056】
この例のシフト操作装置8には、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、及び、D(ドライブ)ポジションが設定されており、ドライバが所望のポジションへシフトレバー81を変位させることが可能となっている。これらPポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジション(下記のSポジションのシフトアップ(+)位置及びシフトダウン位置(−)位置も含む)の各位置は、シフトポジションセンサ206(図6参照)によって検出される。
【0057】
Pポジション及びNポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、Rポジション及びDポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。
【0058】
また、シフト操作装置8には、図5(b)に示すように、S(シーケンシャル)ポジション82が設けられており、シフトレバー81がSポジション82に操作されたときに、
手動にて変速操作を行うシーケンシャルモード(マニュアル変速モード)が設定される。
【0059】
この例では、例えば6段のシーケンシャルシフトレンジS1〜S6が設定されており、シフトレバー81がアップシフト(+)またはダウンシフト(−)に操作されると、シーケンシャルシフトレンジがアップまたはダウンされる。例えば、アップシフト(+)への1回操作ごとにシーケンシャルシフトレンジが1段ずつアップ(例えばS1→S2→・・→S6)される。一方、ダウンシフト(−)への1回操作ごとにシーケンシャルシフトレンジが1段ずつダウン(例えばS6→S5→・・→S1)される。なお、シーケンシャルモードが設定されたときのシフトレンジ制御については後述する。
【0060】
−ECU−
ECU100は、図6に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。
【0061】
ROM102には、ハイブリッド車両HVの基本的な運転に関する制御の他、ハイブリッド車両HVの走行状態に応じて自動変速機3のギヤ段を設定する変速制御を実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。この変速制御の具体的な内容については後述する。
【0062】
CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0063】
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104はバス106を介して互いに接続されるとともに、インターフェース105と接続されている。
【0064】
ECU100のインターフェース105には、エンジン回転数センサ201、エンジン1のスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ202、入力軸回転数センサ203、出力軸回転数センサ204、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ205、シフトレバー81の位置を検出するシフトポジションセンサ206、バッテリ5の充放電電流を検出する電流センサ207、及び、バッテリ温度センサ208などが接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
【0065】
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットル開度(吸気量)制御、燃料噴射量制御及び点火時期制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0066】
ECU100は、自動変速機3の油圧制御回路300にソレノイド制御信号(指示油圧信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、油圧制御回路300のリニアソレノイドバルブなどが制御され、所定のギヤ段(LoまたはHi)を構成するように、ブレーキB1、B2が所定の状態に係合または解放される。また、ECU100は、バッテリ5を管理するために、電流センサ207にて検出された充放電電流の積算値に基づいて充電状態(SOC:State of Charge)を演算する。さらに、ECU100は、インバータ4を制御し、そのインバータ4の制御によって第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の回生または力行(アシスト)が制御される。
【0067】
そして、ECU100は下記の「変速制御」、「シーケンシャルモード設定時のシフトレンジ制御」、「走行制御」、及び、「ダウンシフト変速時・変速開始前のエンジン制御
」を実行する。
【0068】
−変速制御−
まず、ECU100は、アクセル開度センサ205に出力信号に基づいてアクセル開度Acを算出するとともに、出力軸回転数センサ204に出力信号に基づいて車速Vを算出し、それらアクセル開度Ac及び車速Vに基づいて、図7に示すマップを参照して要求トルクTrを求める。
【0069】
次に、車速Vと要求トルクTrに基づいて図8に示す変速マップを参照して目標ギヤ段を算出するとともに、入力軸回転数センサ203及び出力軸回転数センサ204の出力信号から得られる回転数の比(出力軸回転数/入力軸回転数)に基づいて、自動変速機3の現状ギヤ段を判定し、それら目標ギヤ段と現状ギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0070】
その判定結果により、変速の必要がない場合(目標ギヤ段と現状ギヤ段とが同じで、ギヤ段が適切に設定されている場合)には、現状ギヤ段を維持するソレノイド制御信号(指示油圧信号)を自動変速機3の油圧制御回路300に出力する。
【0071】
一方、目標ギヤ段と現状ギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、自動変速機3のギヤ段が「Hi」の状態で走行している状況から、ハイブリッド車両HVの走行状態が変化(例えば車速が変化)して、例えば図8に示す点Aから点Bに変化した場合、変速マップから算出される目標ギヤ段が「Lo」となり、その「Lo」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(指示油圧信号)を自動変速機3の油圧制御回路300に出力して、摩擦係合要素であるブレーキB1を解放すると同時に、ブレーキB2を係合することにより、Hiのギヤ段からLoのギヤ段への変速(Hi→Loダウン変速)を行う。
【0072】
図7に示す要求トルク算出用のマップは、車速V及びアクセル開度Acをパラメータとして、要求トルクTrを実験・計算等により経験的に求めた値をマップ化したもので、ECU100のROM102に記憶されている。
【0073】
また、図8に示す変速マップは、車速V及び要求トルクTrをパラメータとし、それら車速V及び要求トルクTrに応じて、適正なギヤ段を求めるための2つの領域(Lo領域及びHi領域)が設定されたマップであって、ECU100のROM102内に記憶されている。図8の変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップ及びシフトダウンの各切り替え方向を図中に矢印を用いて示している。
【0074】
なお、シーケンシャルモードが選択されている場合においても、ハブリッド車両HVの走行状態の変化により、図8に示す変速マップのシフトアップ線またはダウンシフト線を跨いだときには、自動変速機3のダウン変速またはアップ変速を行う。
【0075】
−シーケンシャルモード設定時のシフトレンジ制御−
ECU100は、出力軸回転数センサ204に出力信号に基づいて車速Vを算出し、その車速Vに基づいて下限エンジン回転数を定める。具体的には、例えば図9に示すように、車速(出力軸回転数)Vをパラメータとし、各シーケンシャルシフトレンジS1〜S6毎にエンジン回転数が設定されたマップを用い、現在の車速V及びシフトレバー操作にて選択されたシーケンシャルシフトレンジS1〜S6の位置情報に基づいて、図9のマップを参照して下限エンジン回転数を定め、その回転数以上となるように、動力分配機構2に連結した第1モータジェネレータMG1の運転状態を制御するという方法によって実行される。
【0076】
なお、図9に示すマップはECU100のROM102に記憶されている。また、図9に示すマップにおいて、エンジン回転数は、車速Vが同じ条件であれば、シーケンシャルシフトレンジS1が最も高く、シーケンシャルシフトレンジS6側に向かうに従って小さくなるように設定されており、例えば、シーケンシャルシフトレンジが「S3」から「S2」にダウンシフト操作されると、エンジン回転数は上昇する。また、シャルシフトレンジが「S3」から「S4」にアップシフト操作されると、エンジン回転数は低下するようになっている。
【0077】
−走行制御−
ECU100は、上記と同様な処理により、アクセル開度Ac及び車速Vに基づいて図7に示すマップを参照してリングギヤ軸(プロペラシャフト)21に出力すべき要求トルクTrを算出し、この要求トルクTrに対応する要求動力がリングギヤ軸21に出力されるように、エンジン1及びモータジェネレータMG1,MG2(インバータ4)を駆動制御して所定の走行モードでハイブリッド車両HVを走行する。
【0078】
例えば、発進時や低速走行時のようにエンジン効率が低くなる領域では、エンジン1の運転を停止し、要求動力に見合う動力を第2モータジェネレータMG2から自動変速機3を介してリングギヤ軸21に出力する。通常走行時には、要求動力に見合う動力がエンジン1から出力されるようにエンジン1を駆動するとともに、第1モータジェネレータMG1によって最適燃費となるようにエンジン1の回転数を制御する。
【0079】
また、第2モータジェネレータMG2を駆動してトルクをアシストする場合、車速Vが遅い状態では自動変速機3のギヤ段を「Lo」に設定してリングギヤ軸(プロペラシャフト)21に付加するトルクを大きくし、車速Vが増大した状態では自動変速機3のギヤ段を「Hi」に設定して第2モータジェネレータMG2の回転数を相対的に低下させて損失を低減することで、効率の良いトルクアシストを実行する。さらに、第2モータジェネレータMG2の運転を停止し、第1モータジェネレータMG1でエンジントルクの反力を受け持ちながら、エンジン1から動力分配機構2を介してリングギヤ軸21に直接伝達されるトルク(直達トルク)だけで走行するという走行制御も実行される。
【0080】
なお、ECU100は、通常、自動変速機3の入力トルクが等パワー(入力軸回転数×入力トルク=一定)となるように、第2モータジェネレータMG2に等パワー指令を供給して第2モータジェネレータMG2を等パワー制御している。
【0081】
−ダウンシフト変速時のエンジン制御(1)−
まず、ハイブリッド車両HVにおいて、ダウンシフト変速中にアクセルペダルが踏み込まれた場合(パワーONダウンシフト変速時)、変速ショックの低減及び自動変速機3の摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材熱負荷の低減等のために、変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施する必要があるが、上述したように、エンジン1が高回転になると保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が働いてトルクダウンを実施することができない。すなわち、エンジン回転数が低い場合は、エンジンパワーをエンジン慣性で消費させることができるので問題ないが、上記したシーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、エンジン1の過回転防止(部品保護)のために、エンジントルクの反力を受け持つ第1モータジェネレータMG1で回転数制御が実行されるので発電量が増加する。このようにして発電量が増加すると、第2モータジェネレータMG2での電力消費が要求され、所望のトルクダウンを実施できない。
【0082】
そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショック
が生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0083】
そのような点を考慮して、この例では、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中に、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2との間の電力収支が成立するようにエンジン1の出力を制限することで、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施できるようにする点に特徴がある。
【0084】
その具体的な制御の例について図10のフローチャートを参照して説明する。図10の制御ルーチンは、ECU100において所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
【0085】
ステップST101において、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST102に進む。ステップST101の判定結果が否定判定である場合(ダウンシフト変速中でない場合)はリターンする。
【0086】
ステップST102では、ユーザ要求パワーを算出する。具体的には、上記と同様な処理により、アクセル開度Ac及び車速Vに基づいて図7に示すマップを参照して要求トルクTrを算出し、その要求トルクTrと出力軸回転数(出力軸回転数センサ204の出力信号に基づいて算出)とからユーザ要求パワーを算出する(要求パワー=要求トルク×出力軸回転数)。このようにして算出したユーザ要求パワーをエンジン要求パワーPeとする(ステップST103)。
【0087】
ステップST104においては、バッテリ温度センサ208にて検出されるバッテリ温度及びSOCに基づいて現在のバッテリ5の電力受入制限Winを求め、電力収支成立条件[|Win|≧|Pg+Ph|]を満たすように、エンジン1の出力(エンジンパワーPe)の上限をガードする。ここで、Pgは、エンジン回転数を制御する第1モータジェネレータMG1の発電量であり、Phは補機消費分である。補機消費分Phは、フィードバックマージン、エンジン消費分(イナーシャ、トルクダウン)、及び、ロス分などを考慮して設定する。
【0088】
上記電力収支成立条件のPg(MG1の発電量)は、バッテリ5への入力電力となるので、図11に示すように、バッテリ5側から見て負(マイナス)の値である。そして、Pgが電力収支成立条件[|Win|≧|Pg+Ph|]を満たしている場合、図11に示すように、Win〜Wout(電力出力制限)の間において第2モータジェネレータMG2の使用が可能であり、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施することができる。
【0089】
また、補機消費分Phのパラメータのうち、フィードバックマージンは、エンジン回転数のばらつき等を考慮した値であって、補機消費分Phを適合する条件によって負(マイナス)または正(プラス)の値を取り得る。また、補機消費分Phのパラメータのうち、エンジン消費分及びロス分は正(プラス)の値である。エンジン消費分のうちのトルクダウン分は、エンジン1の制御(出力制限)によりエンジン出力が低くなると、第1モータジェネレータMG1の発電量が減るので、その減少分を反映させるためのパラメータであって、正(プラス)の値である。なお、補機消費分Phは、フィードバックマージンの正負により、負(マイナス)または正(プラス)の値を取り得る(図11参照)。また、補機消費分Phは、あらかじめ実験・計算等により経験的に求めた値(固定値)を設定しておく。
【0090】
そして、ステップST105において、上記ステップST104にて上限がガードされ
たエンジン要求パワーPeを目標出力としてエンジン1の出力制御(エンジン出力制限制御)を行う。
【0091】
以上のように、この例の制御によれば、第1モータジェネレータMG1の発電量Pgと補機消費分Phとの合計(|Pg+Ph|)が、バッテリ受入制限Win内(|Win|≧|Pg+Ph|)となる条件を満たすように、エンジン1の出力の上限をガードしているので、ダウンシフト変速中に、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを行っても、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2との間の電力収支を成立させることができる。
【0092】
従って、シーケンシャルシフト使用時等でエンジンが高回転であっても、上記エンジン出力制限制御によって第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを行うことが可能となり、第2モータジェネレータMG2の回転上昇(モータの吹き)を抑制することができる。これによって、摩擦係合要素の係合時における第2モータジェネレータMG2と係合目標回転数(目標変速段の同期回転数)との間の差回転を小さくすることができ、変速ショックの抑制及び自動変速機3の摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材保護が可能になる。
【0093】
ここで、この例の制御において、エンジン出力制限を実施する際に、図12に示すように、出力制限の開始・終了時に、当該エンジン出力(エンジンパワーPe)を徐々に変化させるようにすれば、エンジン出力の変化時におけるショックの発生を抑制することができる。
【0094】
また、エンジン出力制限は、ハイブリッド車両HVの運転状態(車速等)が、図8に示すシフトダウン線(変速線)に近づいた時点(変速開始前)で開始し、その時点からエンジン出力(エンジンパワーPe)を徐々に変化させるようにしてもよい(図13参照)。また、同様に、エンジン出力制限の解除は変速の進行度を見ながら、変速終了前(変速中)の段階で実行するようにしてもよい(図13参照)。
【0095】
−ダウンシフト変速開始前のエンジン制御−
上述したように、ハイブリッド車両HVにおいて、シフトダウン変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施する必要があるが、シーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、第1モータジェネレータMG1による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動してトルクダウンを実施することができない。また、高車速でのダウンシフト時など、変速完了までに多くの時間を要する場合も第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施できない。
【0096】
そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショックが生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0097】
そのような点を考慮して、この例では、シーケンシャルシフト使用時等によりエンジン回転数が高い場合、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)開始前にエンジン回転数を低下させ、エンジン回転数が保護制御が作動しない回転数にまで低下した後にダウンシフト変速を開始する点に特徴がある。
【0098】
その具体的な制御の例について図14のフローチャートを参照して説明する。図14の制御ルーチンは、ECU100において所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
【0099】
ステップST201において、現在のギヤ段が「Hi」であり、かつダウンシフト変速中でないか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST202に進む。ステップST201の判定結果が否定判定である場合(現在のギヤ段が「Lo」であるか、ダウンシフト変速中である場合)はリターンする。
【0100】
ステップST202では、出力軸回転数センサ204の出力信号から算出される現在の車速Vが所定車速以下であるか否かを判定する。具体的には、現在の車速Vが、図8の変速マップのシフトダウン線の手前(高速側)の所定車速(例えば、所定車速=シフトダウン線の車速+5km/h)以下であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST203に進む。ステップST202の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0101】
ステップST203においてはエンジン1の回転数を低下させる。エンジン回転数を低下させる方法としては、第1モータジェネレータMG1の目標回転数を低下させる方法、または、エンジン1の目標回転数を低下させる方法を挙げることができる。例えば、パワーオン(アクセルオン)や、パワーオフ(アクセルオフ)のときにはエンジン1の目標回転数を低下させてエンジン回転数を低下させる。また、パワーオフ(アクセルオフ)でエンジン1のフューエルカット時には第1モータジェネレータMG1の目標回転数を低下させてエンジン回転数を低下させる。
【0102】
ステップST204では、エンジン回転数センサ201の出力信号から読み込まれるエンジン回転数が低減目標値以下である否かを判定するとともに、ダウンシフト変速条件が成立したか否かを判定し、エンジン回転数が低減目標値以下(エンジン回転数≦低減目標値)であり、かつ、ダウンシフト変速条件が成立している場合(ステップST204の判定結果が肯定判定である場合)はステップST205に進んで、ダウンシフト変速を開始する。一方、ステップST204の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0103】
なお、ステップST204の判定処理において、ハイブリッド車両HVの走行状態の変化(車速Vの低下等)により、図8の変速マップのダウンシフト線(Hi→Lo)を跨いだときにダウンシフト変速条件が成立したと判定する。
【0104】
ここで、ステップST204においてエンジン回転数に対して設定する低減目標値について説明する。まず、ハイブリッド車両HVにおいては、例えば図16に示すように、エンジン1の許容回転数が、エンジン1自体の保護、及び、ピニオンギヤP21や第1モータジェネレータMG1を保護するために定められており、この許容回転数の上限値を超えないように第1モータジェネレータMG1にてエンジン回転数を制御(保護制御)しているので、その保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動しない回転数を考慮して低減目標値を設定する。なお、低減目標値は、バッテリ5が電力受入不可の状態のときには例えば1200rpmとする。また、低減目標値は、上述したようにバッテリ5の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。
【0105】
以上のように、この例の制御によれば、ダウンシフト変速開始前にエンジン回転数を低下させ、エンジン回転数が、第1モータジェネレータMG1による保護制御が作動しない回転数にまで低下した後(エンジン回転数が低減目標値以下となった後)に、ダウンシフト変速を実施するので、ダウンシフト変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンが可能となる。これによって変速ショックを抑制することができ、摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材を保護することができる。
【0106】
なお、この例では、ダウンシフト変速中に保護制御が作動しないので、シーケンシャルシフトを使用したスポーツ走行時等に、ダウンシフト線(図8参照)を高車速化して「L
o」走行領域を大きくすることで、高車速でのダウンシフト変速が可能になり、第2モータジェネレータMG2の過熱を防止できる。
【0107】
−ダウンシフト変速時のエンジン制御(2)−
上述したように、ハイブリッド車両HVにおいて、シフトダウン変速中に第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施する必要があるが、シーケンシャルシフト使用時など、エンジン回転数が高い場合には、第1モータジェネレータMG1による保護制御(エンジンオーバラン防止制御)が作動してトルクダウンを実施することができない。そして、このような理由でダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショックが生じる場合がある。また、摩擦係合要素の摩擦材の熱負荷増大が懸念される。
【0108】
なお、エンジン回転数の上昇を抑制することができれば問題はないが、その回転数上昇抑制を電子スロットルシステムによるトルク制限で行う場合、応答性が悪いため(通常、なまし処理等を実施しているため)、エンジン回転数制御が間に合わない。また、エンジン1のフューエルカットにてエンジン回転数の上昇を抑制することも考えられるが、この場合、第1モータジェネレータMG1にてエンジン回転数を保持する必要があり、過放電や急激なトルク変化によるショックの発生が懸念される。
【0109】
そのような点を考慮して、この例では、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中に、点火時期遅角制御や燃料噴射量低減制御などエンジン側の制御にてエンジン回転数の上昇速度を抑制することで、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンを実施できるようにする点に特徴がある。
【0110】
その具体的な制御の例について図15のフローチャートを参照して説明する。図15の制御ルーチンは、ECU100において所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
【0111】
ステップST301において、ダウンシフト変速(Hi→Lo変速)中であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST302に進む。ステップST301の判定結果が否定判定である場合(ダウンシフト変速中でない場合)はリターンする。
【0112】
ステップST302では、エンジン回転数センサ201の出力信号から読み込まれるエンジン回転数が判定閾値以上であるか否かを判定する。ステップST302の判定結果が肯定判定(エンジン回転数≧判定閾値)である場合はステップST303に進む。ステップST302の判定結果が否定判定である場合(エンジン回転数<判定閾値)はリターンする。
【0113】
ここで、エンジン回転数に対して設定する判定閾値は、エンジン1自体の上限回転数、駆動力伝達系の回転体(例えば動力分配機構2のピニオンギヤP21)の上限回転数、及び、第1モータジェネレータMG1の上限回転数などを考慮して決定する。具体的には、ハイブリッド車両HVにおいては、例えば図16に示すように、エンジン1の許容回転数が、エンジン1自体の保護、及び、ピニオンギヤP21や第1モータジェネレータMG1を保護するために定められており、この許容回転数の上限値を超えないように第1モータジェネレータMG1にてエンジン回転数を制御(保護制御)しているで、その許容回転数の上限値に対して余裕度を見込んだ値(許容回転数上限値−余裕度)を判定閾値とする。なお、この判定閾値は、上述したようにバッテリ5の電力受入状態を考慮して可変に設定するようにしてもよい。
【0114】
ステップST303においては、上記と同様な処理(図10のステップST103の処理)にてエンジン要求パワーPeを求め、そのエンジン要求パワーPeがエンジン回転数が上昇する大きさであるか否かを判定する。具体的には、エンジン要求パワーが大きくて、ダウンシフト変速中にエンジン回転数が上昇し、図16に示す許容回転数の上限に到達(エンジン回転上限当たり)するか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST304に進む。ステップST303の判定結果が否定判定である場合はリターンする。
【0115】
そして、ステップST304において、エンジン1の点火時期遅角制御を実施して、エンジン回転数の上昇速度を抑制する。このようにしてエンジン回転数の上昇速度を抑えることにより、ダウンシフト変速中に、第1モータジェネレータMG1による保護制御が作動しなくなり、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンが可能となる。これによって変速ショックを抑制することができ、摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材を保護することができる。
【0116】
なお、図15に示す制御では、エンジン1の点火時期遅角制御によって、エンジン回転数の上昇速度を抑制しているが、これに限られることなく、エンジン1の燃料噴射量低減制御、または、電子スロットル制御におけるトルク制限のなまし処理の廃止制御によってエンジン回転数の上昇速度を抑制するようにしてもよい。また、これらのエンジン1の点火時期遅角制御、エンジン1の燃料噴射量低減制御、及び、電子スロットル制御におけるトルク制限のなまし処理の廃止制御のうち、いずれか2つの制御または全ての制御を組み合わせて、エンジン回転数の上昇速度を抑制するようにしてもよい。
【0117】
−他の実施形態−
以上の例では、前進2段変速の自動変速機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、例えば前進4段変速等の他の任意の変速段の遊星歯車式自動変速機が搭載された車両の制御にも適用可能である。
【0118】
以上の例では、ガソリンエンジンを搭載した車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両の制御にも適用可能である。さらに、本発明は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両に限られることなく、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両や、4輪駆動車の制御にも適用できる。
【0119】
FF型のハイブリッド車両の一例を図17に示す。
【0120】
図17に示すハイブリッド車両は、エンジン1、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、動力分配機構2、自動変速機3、ギヤ機構500、デファレンシャルギヤ6、及び、駆動輪7などを備えている。
【0121】
この例のハイブリッド車両では、第2モータジェネレータMG2の回転軸が自動変速機3の入力軸に連結されている。また、自動変速機3の出力軸が動力分配機構2のリングギヤ軸21に連結されており、第2モータジェネレータMG2からの動力が自動変速機3、ギヤ機構500及びデファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7に出力するように構成されている。
【0122】
この例のハイブリッド車両において、動力分配機構2は図1に示したものと同じ構造である。また、自動変速機3は、図2に示したものと同じ構造であり、ブレーキB2を解放すると同時にブレーキB1を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって「Lo」から「Hi」へのアップ変速が達成され、ブレーキB1を解放すると同時にブレーキB2を
係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって「Hi」から「Lo」へのダウン変速が達成される。
【0123】
そして、この図17に示すハイブリッド車両においても、ダウンシフト変速中にトルクダウンを実施できないと、変速対象である第2モータジェネレータMG2の吹きを制限できなくなるため、係合ショックが生じる場合があるが、このような構成のハイブリッド車両においても、図10、図14または図15の各制御を実行することにより、変速ショックの抑制及び自動変速機3の摩擦係合要素(ブレーキB2)の摩擦材保護が可能になる。
【符号の説明】
【0124】
1 エンジン
2 動力分配機構
21 リングギヤ軸
S21 サンギヤ
R21 リングギヤ
P21 ピニオンギヤ
CA21 キャリア
3 自動変速機
300 油圧制御回路
B1,B2 ブレーキ(摩擦係合要素)
4 インバータ
5 バッテリ(蓄電装置)
7 駆動輪
8 シフト操作装置
S シーケンシャルポジション
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ
100 ECU
201 エンジン回転数センサ
203 入力軸回転数センサ
204 出力軸回転数センサ
205 アクセル開度センサ
206 シフトポジションセンサ
207 電流センサ
208 バッテリ温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、
前記自動変速機のダウンシフト変速を開始する前に前記エンジン回転数を低下させる回転数制御手段を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
車速に基づいて前記エンジン回転数の低下制御の開始を判断することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の制御装置において、
前記エンジン回転数が低減目標値以下になったことを条件に前記自動変速機の変速を行うことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両の制御装置において、
前記蓄電装置の電力受入状態を考慮して前記低減目標値を可変に設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、
前記自動変速機のダウンシフト変速中における前記エンジン回転数上昇速度を当該エンジン側の制御により抑制するエンジン制御手段を備えていることを特徴とする車両の制御
装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両の制御装置において、
エンジン回転数が判定閾値以上であることを条件に、前記エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の車両の制御装置において、
エンジン要求出力を考慮して前記エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記エンジンの点火時期遅角制御、前記エンジンの燃料噴射量低減制御、または、前記エンジン制御のなまし処理の廃止制御のうち、いずれか1つの制御または複数の制御を組み合わせて前記エンジン回転数の上昇速度を抑制することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、
前記自動変速機のダウンシフト変速を開始する前に前記エンジン回転数を低下させる回転数制御手段を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
車速に基づいて前記エンジン回転数の低下制御の開始を判断することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の制御装置において、
前記エンジン回転数が低減目標値以下になったことを条件に前記自動変速機の変速を行うことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両の制御装置において、
前記蓄電装置の電力受入状態を考慮して前記低減目標値を可変に設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間に設けられ、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を駆動輪に出力する差動部と、前記差動部の回転要素に連結された第1電動機と、第2電動機と、前記第2電動機と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、前記第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び前記第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置とを備えた車両の制御装置において、
前記自動変速機のダウンシフト変速中における前記エンジン回転数上昇速度を当該エンジン側の制御により抑制するエンジン制御手段を備えていることを特徴とする車両の制御
装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両の制御装置において、
エンジン回転数が判定閾値以上であることを条件に、前記エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の車両の制御装置において、
エンジン要求出力を考慮して前記エンジン回転数の上昇速度を抑制する制御を実行することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記エンジンの点火時期遅角制御、前記エンジンの燃料噴射量低減制御、または、前記エンジン制御のなまし処理の廃止制御のうち、いずれか1つの制御または複数の制御を組み合わせて前記エンジン回転数の上昇速度を抑制することを特徴とする車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−120639(P2010−120639A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6846(P2010−6846)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願2008−53374(P2008−53374)の分割
【原出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願2008−53374(P2008−53374)の分割
【原出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]