説明

車両の前部構造

【課題】フロントピラー及びサイドドア間の隙間に塵埃等が侵入するのを抑制し、サイドドアの開放時のサイドモールの上端の見栄えを向上する。
【解決手段】ウインドシールドガラス13の側縁とサイドドアの前縁との間にフロントピラー17が設けられ、ウインドシールドガラスの上辺部に樹脂製のアッパモール29が嵌着される。ウインドシールドガラスの側辺部13bに樹脂製のサイドモール28が嵌着され、ウインドシールドガラスの側辺部の内面がフロントピラーに接着される。サイドドアの前縁に設けられたドア用ウエザストリップがサイドモールのサイド連結部28cに当接し、フロントピラーの上端にルーフ部材32が接合される。サイド連結部の上端にルーフ部材の側面32aに沿う延長片28gが設けられ、延長片がサイド連結部の上端とルーフ部材の側面とを滑らかに接続するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック、乗用車、バス等の車両において、ウインドシールドガラス側縁とサイドドア前縁との間にフロントピラーが設けられたフロントコーナ部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドシールドガラスの側縁とサイドガラスの前縁との間に、ウインドシールドガラスの側縁及びサイドガラスの前縁に沿って延びるフロントコーナ部材が設けられ、車両の運転席に着席した運転者が見たときのフロントコーナ部材の幅が40〜58mmである車両の前部構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この車両の前部構造では、フロントコーナ部材がフロントピラーとドアフレームとガラスフレームとガラスランとにより構成され、フロントピラーがピラーインナパネルの両側縁とピラーアウタパネルの両側縁をそれぞれ接合することにより筒状に形成される。ピラーインナパネルは、トラックの運転席に着席した運転者の視線方向に沿って設けられたピラーインナ本体と、ピラーインナ本体の前縁にこのピラーインナ本体と一体的に形成された第1フロントフランジと、ピラーインナ本体の後縁にこのピラーインナ本体と一体的に形成された第1リヤフランジとを有する。またピラーアウタパネルは、ドアフレームの前面に略対向して設けられたピラーアウタ本体と、ピラーアウタ本体の前縁にこのピラーアウタ本体と一体的に形成された第2フロントフランジと、ピラーアウタ本体の後縁にこのピラーアウタ本体と一体的に形成された第2リヤフランジとを有する。上記第1フロントフランジのピラー外面と第2フロントフランジのピラー内面とを接合することによりフロント重ね合せ部が形成される。またフロント重ね合せ部とウインドシールドガラスの内面との隙間には接着剤が充填され、この接着剤によりウインドシールドガラスの側縁がフロントピラーに取付けられる。更にウインドシールドガラスの周縁の見栄えを向上するためにこのガラスの周縁にモールが嵌着される。
このように構成された車両の前部構造では、車両の運転席に着席した運転者が見たときのフロントコーナ部材の幅が40〜58mmであるので、例えば交差点で右折するために車両の運転者が右斜め前方の車外の対象物に両眼の焦点を合わせたとき、両眼の視差により近くの比較的幅の狭いフロントコーナ部材がぼけて見え、フロントコーナ部材の向こう側の対象物がフロントコーナ部材により遮られることなく、運転者は車両の前方から右側方にかけて連続した視界を見ることができる。この結果、車両の運転者はフロントコーナ部材の向こう側を視認するために上体を左右に動かす必要がなく、首のみを動かしてフロントコーナ部材の方向を正視するだけで車外の対象物を確実に視認できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−96270号公報(請求項1、段落[0007]、段落[0008]、段落[0011]〜段落[0013])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の特許文献1に示された車両の前部構造では、ウインドシールドガラスの上辺部にアッパモールが嵌着され、ウインドシールドガラスの側辺部にサイドモールが嵌着され、リヤ重ね合せ部にフロントピラー及びドアフレーム間の隙間を塞ぐウエザストリップが装着される。このウエザストリップは、フロントピラー及びドアフレーム間の隙間の奥側、即ちフロントピラー及びドアフレーム間の車室内に近い側に設けられているため、塵埃や雨水等がサイドモール及びドアフレーム間の隙間を通って、上記フロントピラー及びドアフレーム間の隙間に容易に侵入してしまい、フロントピラーやドアフレームの露出面が塵埃等で汚れ易くなる場合があった。
本発明の第1の目的は、ドア用ウエザストリップをサイドモールに当接させることにより、フロントピラー及びサイドドア間の隙間に塵埃等が侵入するのを抑制することができ、またサイド連結部の上端とルーフ部材の側面とを延長片にて滑らかに接続することにより、サイドドアの開放時のサイドモールの上端の見栄えを向上することができる、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ドア用ウエザストリップのシールラインをサイドモールからボデー面であるルーフ部材の側面へ連続させることにより、シールラインを確保し、そのシール性を向上することができる、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の第3の目的は、易撓部で延長片を撓み易くすることにより、延長片をルーフ部材の側面に追従し易くすることができる、車両の前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明は、図1、図2及び図4に示すように、ウインドシールドガラス13の側縁とサイドドア14の前縁との間にフロントピラー17が設けられ、ウインドシールドガラス13の上辺部13cに樹脂製のアッパモール29が嵌着され、ウインドシールドガラス13の側辺部13bに樹脂製のサイドモール28が嵌着され、ウインドシールドガラス13の側辺部13bの内面がフロントピラー17に接着された車両の前部構造の改良である。
その特徴ある構成は、サイドモール28が、ウインドシールドガラス13の側辺部13b外面を被覆するサイドアウタ部28aと、ウインドシールドガラス13の側辺部13b内面を被覆するサイドインナ部28bと、ウインドシールドガラス13の側辺部13b端面を被覆するサイド連結部28cとを有し、サイドドア14の前縁にドア用ウエザストリップ31が設けられ、ドア用ウエザストリップ31がサイド連結部28cに当接し、フロントピラー17の上端にルーフ部材32が接合され、サイド連結部28cの上端にルーフ部材32の側面32aに沿う延長片28gが設けられ、延長片28gがサイド連結部28cの上端とルーフ部材32の側面32aとを滑らかに接続するように形成されたところにある。
この請求項1に記載された車両の前部構造では、サイド連結部28cの上端とルーフ部材32の側面32aとを延長片28gにより滑らかに接続したので、ドア用ウエザストリップ31のシールラインがサイドモール28からボデー面であるルーフ部材32の側面へ連続する。これにより、サイドドア14の開放時のサイドモール28の上端の見栄えを向上することができるとともに、ドア用ウエザストリップ31のシールラインを確保し、そのシール性を向上することができる。
【0005】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1及び図2に示すように、延長片28gに撓み易さを付与する易撓部28hが設けられたことを特徴とする。
この請求項2に記載された車両の前部構造では、延長片28gに易撓部28hを設けたので、延長片28gが撓み易くなり、延長片28gをルーフ部材32の側面に追従し易くすることができる。またドア用ウエザストリップ31がサイドモール28に当接するので、サイドモール28及びサイドドア14間の隙間に入った塵埃等は、上記ドア用ウエザストリップ31で遮られて、フロントピラー17及びサイドドア14間の隙間まで侵入しない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、サイドドアの前縁に設けられたドア用ウエザストリップがサイド連結部に当接し、フロントピラーの上端にルーフ部材を接合し、サイド連結部の上端にルーフ部材の側面に沿う延長片を設け、更に延長片をサイド連結部の上端とルーフ部材の側面とを滑らかに接続するように形成したので、ドア用ウエザストリップのシールラインがサイドモールからボデー面であるルーフ部材の側面へ連続する。この結果、サイドドアの開放時のサイドモールの上端の見栄えを向上することができるとともに、ドア用ウエザストリップのシールラインを確保し、ドア用ウエザストリップのシール性を向上することができる。またサイドモール及びドアフレーム間の隙間に入った塵埃等はフロントピラー及びドアフレーム間の隙間まで侵入することなく、上記ドア用ウエザストリップで遮られる。この結果、フロントピラーやドアフレームの露出面が塵埃等で汚れ難くなる。
更に延長片に易撓部を設ければ、延長片が撓み易くなるので、延長片をルーフ部材の側面に追従し易くすることができる。この結果、ドア用ウエザストリップのシール性を更に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図8に示すように、トラック10のキャブ11の右側には運転者の着席する運転席が設けられ、キャブ11の前面のフロント開口部11aは透明のウインドシールドガラス13により閉止される。またキャブ11の運転席側の側面には運転者が乗降するためのサイド開口部11bが設けられ、このサイド開口部11bはサイドドア14により開放可能に閉止される(図4、図7及び図8)。上記ウインドシールドガラス13の側縁とサイドドア14の前縁との間にはフロントピラー17がガラス13の側縁及びドア14の前縁に沿って延びて設けられる。このフロントピラー17は、ピラーインナパネル21の両側縁とピラーアウタパネル22の両側縁をそれぞれ接合することにより、例えば、ほぼ鉛直方向に延びる筒状に形成される。これによりフロントピラー17の横断面は閉断面に形成される。なお、この実施の形態では、運転席側のサイドドア及びフロントピラーについて説明するけれども、本発明は助手席側のサイドドア及びフロントピラーに適用してもよい。
【0008】
ピラーインナパネル21は、トラック10の運転席に着席した運転者の視線方向に沿って設けられたピラーインナ本体21aと、ピラーインナ本体21aの前縁にこのピラーインナ本体21aと一体的に形成されたフロントインナフランジ21bと、ピラーインナ本体21aの後縁にこのピラーインナ本体21aと一体的に形成されたリヤインナフランジ21cとを有する(図4及び図7)。フロントインナフランジ21bは、ウインドシールドガラス13の内面から所定の隙間をあけたキャブ11内方であって、上記ウインドシールドガラス13の内面に略平行にかつウインドシールドガラス13の側縁に向って延びて設けられる、即ちサイドドア14のドアフレーム14cに近付く方向に延びて設けられる。またリヤインナフランジ21cは、ドアフレーム14cの内面から所定の間隔をあけたキャブ11内方であって、ドアフレーム14cの内面に略平行にかつ後方に向って延びて設けられる。
【0009】
ピラーアウタパネル22は、ドアフレーム14cの前面に略対向して設けられたピラーアウタ本体22aと、ピラーアウタ本体22aの前縁にこのピラーアウタ本体22aと一体的に形成されたフロントアウタフランジ22bと、ピラーアウタ本体22aの後縁にこのピラーアウタ本体22aと一体的に形成されたリヤアウタフランジ22cとを有する。フロントアウタフランジ22bは、ウインドシールドガラス13の内面から所定の隙間をあけたキャブ11内方であって、上記ウインドシールドガラス13の内面に略平行にかつウインドシールドガラス13の側縁とは反対方向に延びて設けられる、即ちドアフレーム14cから離れる方向に延びて設けられる。またリヤアウタフランジ22cは、ドアフレーム14cの内面から所定の間隔をあけたキャブ11内方であって、ドアフレーム14cの内面に略平行にかつ後方に向って延びて設けられる。
【0010】
フロントインナフランジ21bのピラー外面とフロントアウタフランジ22bのピラー内面とを接合することによりフロント重ね合せ部23が形成され、リヤインナフランジ21cのピラー内面とリヤアウタフランジ22cのピラー内面とを接合することによりリヤ重ね合せ部24が形成される(図4及び図7)。上記フロント重ね合せ部23はウインドシールドガラス13の側縁内面に沿って設けられる。これによりフロントピラー17はウインドシールドガラス13により覆われるように構成される。またウインドシールドガラス13の周縁内面にはセラミック塗装により所定の幅の目隠し用膜13a(図4、図5及び図7)が形成され、フロント重ね合せ部23のピラー外面にウインドシールドガラス13の側辺部13bの内面がガラス用接着剤26により接着される。これによりウインドシールドガラス13の接着面をフロントインナフランジ21b及びフロントアウタフランジ22bの2重構造としているため、上記ガラス13の接着面の剛性を高めることができるとともに、トラックを前方から見たときにガラス用接着剤26やフロントピラー17が目隠し用膜13aにより遮られて視認できないようになっている。
【0011】
一方、図1、図2及び図5に示すように、フロントピラー17の上端はルーフ部材32に接続され、ルーフ部材32の前縁にはウインドシールドガラス13の上縁に沿うアッパ重ね合わせ部36が設けられる。具体的には、ルーフ部材32は、ルーフアウタパネル33とルーフインナパネル34とを有する。ルーフアウタパネル33の前縁にはルーフアウタフランジ33aが設けられ、ルーフインナパネル34の前縁にはルーフインナフランジ34aが設けられ、これらのフランジ33a,34aは互いに接合されて上記アッパ重ね合せ部36が構成される。このアッパ重ね合せ部36の外面にはウインドシールドガラス13の上辺部13cの内面がガラス用接着剤26により接着される(図5)。これによりトラックを前方から見たときにガラス用接着剤26やアッパ重ね合せ部36が目隠し用膜13aにより遮られて視認できないようになっている。またウインドシールドガラス13の上辺部13cに嵌着されたアッパモール29は、ウインドシールドガラス13の上辺部13c外面を被覆するアッパアウタ部29aと、ウインドシールドガラス13の上辺部13c内面を被覆するアッパインナ部29bと、アッパアウタ部29a及びアッパインナ部29bを連結するとともにウインドシールドガラス13の上辺部13c端面を被覆するアッパ連結部29cと、アッパアウタ部29a及びアッパ連結部29cの連結部に沿って設けられ上端縁がルーフアウタパネル33外面に当接するアッパ被覆部29dとを有する。このアッパ被覆部29dによりルーフアウタパネル33の段差部33bとウインドシールドガラス13の上縁との隙間が塞がれるように構成される。更にフロントピラー17の下端はカウル部材(図示せず)に接続され、カウル部材の上縁にはウインドシールドガラス13の下縁に沿うロアフランジ(図示せず)が設けられる。
【0012】
一方、ウインドシールドガラス13の上辺部13cには合成樹脂製のアッパモール29が嵌着され、ウインドシールドガラス13の側辺部13bには合成樹脂製のサイドモール28が嵌着される(図1、図2及び図5〜図7)。アッパモール29の端部(図2の左端部)はサイドモール28の上端部に接続され一体化される。アッパモール29及びサイドモール28のうち横断面形状が長手方向に沿って同一である部分は軟質合成樹脂又はゴムの押し出し成形によりそれぞれ形成されることが好ましい。またアッパモール29及びサイドモール28のうち断面形状が変化する部分、即ちアッパモール29とサイドモール28の接続部分は軟質合成樹脂又はゴムの射出成形により形成されることが好ましい。図1〜図3及び図6に示すように、サイドモール28は、ウインドシールドガラス13の側辺部13b外面を被覆するサイドアウタ部28aと、ウインドシールドガラス13の側辺部13b内面を被覆するサイドインナ部28bと、サイドアウタ部28a及びサイドインナ部28bを連結するとともにウインドシールドガラス13の側辺部13b端面を被覆するサイド連結部28cとを有する。
【0013】
一方、サイドドア14は、ドア本体14aと、このドア本体14aの上面に設けられドア窓14bを形成するために略逆U字状に形成されたドアフレーム14cと、ドア窓14bを開放可能に閉止する透明のサイドガラス14dとを有する(図4、図7及び図8)。サイドガラス14dの前縁はガラスラン14fにより包囲され、そのガラスラン14fはサイドガラス14dを保持し案内するためにガラスフレーム14eに装着される(図4及び図7)。またドアフレーム14cは、ドアインナパネル14gとドアアウタパネル14hとを接合することにより形成される。そして、ガラスフレーム14eがドアフレーム14cに挿着され、このドアフレーム14cとウインドシールドガラス13の右側縁との間には、フロントピラー17がウインドシールドガラス13の右側縁及びサイドガラス14dの前縁に沿って設けられる。またサイドドア14の前縁、即ちドアインナパネル14gには、フロントピラー17及びサイドモール28に当接するドア用ウエザストリップ31が設けられる。このドア用ウエザストリップ31は、ドアインナパネル14gの前面に取付けられたウエザストリップ本体31aと、このウエザストリップ本体31aと一体的に設けられた略波板状の主シール部31b及び筒状の補助シール部31cとを有する。ドア用ウエザストリップ31の主シール部31bはサイド連結部28cに当接し、補助シール部31cはフロントピラーに当接するように構成される。
【0014】
サイド連結部28cの上端にはルーフ部材32の側面32aに沿う延長片28gが設けられる(図1及び図2)。この延長片28gはサイド連結部28cの上端とルーフ部材32の側面32aとを滑らかに接続するように形成される。この延長片28gはサイド連結部28cと同一材料によりサイド連結部28cと一体的に形成されることが好ましい。また延長片28gに撓み易さを付与する易撓部28hが設けられる。易撓部28hは、この実施の形態では、アッパモール29の側縁と延長片28gの前縁との間に設けられた切欠部である。更にサイドモール28の上端にはサイドインナ部28bを切欠いて水抜き孔28dが形成される(図1〜図4)。この水抜き孔28dの側縁を構成するサイド連結部28cの後縁から延長片28gの後縁にかけて庇部28eが突設される。この庇部28eはサイド連結部28c及び延長片28gと同一材料によりサイド連結部28c及び延長片28gと一体的に形成されることが好ましい。また庇部28eはサイドドア14に向って突設される。これにより庇部28eは水抜き孔28dの車両外側方からの視認を阻止するように構成される。
【0015】
サイドインナ部28bには、フロントピラー17に当接する中空状部28fがサイドインナ部28bの長手方向に沿って設けられる(図1〜図4、図6及び図7)。この中空状部28fはサイドインナ部28bと同一材料によりサイドインナ部28bと一体的に成形されることが好ましい。また中空状部28fは成形時に横断面が略J字状(図6)になるように形成され、フロントピラー17への当接時に横断面が略扁平リング状(図1及び図7)に弾性変形するように構成され、その肉厚は比較的薄肉、例えば0.5〜2mmに形成されることが好ましい。上記中空状部28fがフロントピラー17に当接することにより、サイドモール28及びフロントピラー17間の隙間が塞がれるようになっている。
【0016】
図7に示すように、サイド連結部28cの横断面におけるサイド連結部28cの外形線の車幅方向に延びる水平線に対する角度θ1は、ウインドシールドガラス13の側辺部13b外面に平行な直線の水平線に対する角度θ0より小さくなるように設定される。角度θ1が角度θ0より小さくない場合には、サイドドア14の開閉時にドアフレーム14cがサイド連結部28cと干渉するおそれがあり、またトラック10の走行時における風切り音が増大するおそれがあるからである。なお、図4及び図7の符号37は、ピラーインナ本体21aのピラー外面に沿って設けられたピラーガーニッシュであり、図5の符号38は、アッパ重ね合せ部のキャブ内に露出する面を覆うルーフガーニッシュである、図5の符号39は、ルーフインナパネルのキャブ内に露出する面を覆うルーフトリムである。
【0017】
このように構成されたトラック10の前部構造の動作を説明する。
ドア用ウエザストリップ31の主シール部31bのシール面であるサイドモール28のサイド連結部28cの上端とルーフ部材32の側面32aとが延長片28gにより滑らかに接続されているので(図1)、サイドドア14の開放時のサイドモール28の上端の見栄えを向上することができるとともに、ドア用ウエザストリップ31のシールラインが連続するため、このドア用ウエザストリップ31のシール性を向上することができる。また図5に示される、アッパモール29のアッパ連結部29cとルーフアウタパネル33の段差部33bとの間の隙間Aをサイドモールの延長片28gで覆うことにより、見栄えとシール性を向上することができる。更にアッパモール29の側縁と延長片28gの前縁との間に切欠部28hを設けたので、延長片28gが撓み易くなる。この結果、延長片28gをルーフ部材32の側面32aに追従し易くすることができるので、ドア用ウエザストリップ31のシール性を更に向上することができる。
【0018】
一方、ドア用ウエザストリップ31の主シール部31bがサイドモール28のサイド連結部28cに当接するので、サイドモール28及びドアフレーム14c間の隙間に入った塵埃等は上記ドア用ウエザストリップ31の主シール部31bで遮られてフロントピラー17及びドアフレーム14c間の隙間まで侵入しない。この結果、フロントピラー17やドアフレーム14cの露出面が塵埃等で汚れ難くなる。またドア用ウエザストリップ31が合成樹脂製のサイドモール28のサイド連結部28cに当接するので、少なくともサイド連結部28cの表面を滑らかにすれば、その密着性が良好となり、シール性を向上することができる。またフロントピラー17及びドアフレーム14c間の隙間をドア用ウエザストリップ31の主シール部31bのみならず補助シール部31cで2重にシールするので、キャブ11内への塵埃等の侵入を確実に防止できる。更にサイド連結部28cの横断面におけるサイド連結部28cの外形線を所定の角度に設定する、即ちサイド連結部28cの外面を所定の角度θ1(図7)に設定したので、サイド連結部28c及びドアフレーム14c間の隙間が小さくなる。この結果、トラックの走行時の風切り音を低減できるとともに、サイドドア14の開閉時にドアフレーム14cがサイド連結部28cと干渉するのを防止できる。
【0019】
なお、洗車時等に用いられる高圧水がウインドシールドガラス13の側縁とサイドドア14の前縁との隙間に向けられると、この高圧水がドア用ウエザストリップ31を弾性変形させて、フロントピラー17とドアフレーム14cと間に侵入する場合がある。そしてこの侵入した高圧水はドア用ウエザストリップ31の補助シール部31cにより遮られるので、キャブ11内に侵入することはない。上記高圧水が水抜き孔28dに向けられても、この高圧水は庇部28e及び延長片28gにより遮られて水抜き孔28dに侵入せず、庇部28eに沿って主シール部31bと補助シール部31cとの間にその向きを変えられる。この結果、上記高圧水が水抜き孔28dを通ってアッパモール29及びルーフ部材32間の隙間に逆流することはない。更にサイドドア14を開放しても水抜き孔28dは庇部28eに遮られて見えないので、サイドドア14の開放時のサイドモール28の見栄えを損うことを防止できる。
また、この実施の形態では、延長片に撓み易さを付与する易撓部として切欠部を挙げたが、易撓部はアッパモールの側縁と延長片の前縁との間に設けられた薄肉部であってもよい。この易撓部は、延長片をルーフ部材の側面に追従し易くすることができれば、延長片の全長にわたって設けるのではなく、延長片の一部に設けてもよく、またアッパモールの側縁と延長片の前縁との間ではなく、延長片の中央に設けてもよい。更に易撓部を薄肉部とすると、切欠部とした場合と比較して、サイドモールの見栄えを向上できるとともに、ドア用ウエザストリップによるシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施形態の車両の前部構造であって、周縁にモールを嵌着したウインドシールドガラスをフロントピラーに組付けた状態を示す要部斜視図である。
【図2】フロントピラー、モール及びウインドシールドガラスを含む要部分解斜視図である。
【図3】そのモールを裏面から見た状態を示す要部斜視図である。
【図4】図8のA−A線断面図である。
【図5】アッパモール及びウインドシールドガラスを含むキャブ前面上部の縦断面図である。
【図6】ウインドシールドガラスの側辺部にサイドモールを嵌着する直前の状態を示す要部断面図である。
【図7】図8のB−B線断面図である。
【図8】サイドドア、モール及びウインドシールドガラスを含むトラックの要部斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
10 トラック(車両)
13 ウインドシールドガラス
13b 側辺部
13c 上辺部
14 サイドドア
17 フロントピラー
28 サイドモール
28a サイドアウタ部
28b サイドインナ部
28c サイド連結部
28g 延長片
28h 切欠部
29 アッパモール
31 ドア用ウエザストリップ
32 ルーフ部材
32a ルーフ部材の側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドガラス(13)の側縁とサイドドア(14)の前縁との間にフロントピラー(17)が設けられ、前記ウインドシールドガラス(13)の上辺部(13c)に樹脂製のアッパモール(29)が嵌着され、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)に樹脂製のサイドモール(28)が嵌着され、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)の内面が前記フロントピラー(17)に接着された車両の前部構造において、
前記サイドモール(28)が、ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)外面を被覆するサイドアウタ部(28a)と、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)内面を被覆するサイドインナ部(28b)と、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)端面を被覆するサイド連結部(28c)とを有し、
前記サイドドア(14)の前縁にドア用ウエザストリップ(31)が設けられ、
前記ドア用ウエザストリップ(31)が前記サイド連結部(28c)に当接し、
前記フロントピラー(17)の上端にルーフ部材(32)が接合され、
前記サイド連結部(28c)の上端に前記ルーフ部材(32)の側面(32a)に沿う延長片(28g)が設けられ、
前記延長片(28g)が前記サイド連結部(28c)の上端と前記ルーフ部材(32)の側面(32a)とを滑らかに接続するように形成された
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
延長片(28g)に撓み易さを付与する易撓部(28h)が設けられた請求項1記載の車両の前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−94165(P2008−94165A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275525(P2006−275525)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】