説明

車両の前部車体構造

【課題】車体前部のノーズ部を構成するパネルが樹脂で形成されていると共に、前記ノーズ部の内部にエアバッグが配設された車両において、車体前部のノーズ部を構成するパネルが樹脂で形成されていることを利用して、ノーズ部内部へのエアバッグの配設自由度を向上させると共に、ノーズ部の内部に配設されたエアバッグを、車両の美観を損なうことなく、かつ構造を複雑にさせることなく、ノーズ部の外部に展開可能とする前部車体構造を提供する。
【解決手段】パネル4に、エアバッグ21の展開圧力で破断し、該エアバッグ21をノーズ部4の外部に展開可能とする破断予定部4h1を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部のノーズ部を構成するパネルが樹脂で形成された車両の前部車体構造に関し、車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1〜3に開示されているように、車体の軽量化を目的として、車体前部のノーズ部を構成するパネル(各文献においてはフロントフェンダパネル)を樹脂により形成する場合がある。
【0003】
ここで、車体前部のノーズ部等への衝突から歩行者を保護するために、ノーズ部の内部にエアバッグを配設する場合がある。この場合、エアバッグがノーズ部の外部に展開可能なように構成する必要があり、従来においては、例えば、ノーズ部を構成するパネル(フロントフェンダパネル、ボンネット、バンパフェース等)間の隙間やこれらのパネルと他の部材(フロントピラー、フロントガラス等)との隙間からエアバッグを展開させることが行われている(第1の構造)。また、ノーズ部を構成するパネル(例えばボンネット)を、エアバッグの展開圧力やアクチュエータにより持ち上げ可能に構成することが行われている(第2の構造)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−261458号公報
【特許文献2】特開2006−096169号公報
【特許文献3】特開2008−012941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記第1の構造のように、ノーズ部を構成するパネル間の隙間やこれらのパネルと他の部材との隙間からエアバッグを展開させる場合、エアバッグが展開可能なようにその隙間を一定以上大きくする必要があり、車両の美観が損われるという問題がある。一方、美観を優先すると、エアバッグを配設できなかったり、エアバッグの配設可能位置に制約が生じる。また、前記第2の構造においては、パネルを持ち上げ可能に支持する支持構造や、アクチュエータが別途必要となり、構造が複雑になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、車体前部のノーズ部を構成するパネルが樹脂で形成されていることを利用して、ノーズ部内部へのエアバッグの配設自由度を向上させると共に、ノーズ部の内部に配設されたエアバッグを、車両の美観を損なうことなく、かつ構造を複雑にさせることなく、ノーズ部の外部に展開可能とする前部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体前部のノーズ部を構成するパネルが樹脂で形成されていると共に、前記ノーズ部の内部にエアバッグが配設された車両の前部車体構造であって、前記パネルに、前記エアバッグの展開圧力で破断し、該エアバッグをノーズ部の外部に展開可能とする破断予定部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の前部車体構造において、前記破断予定部は、当該部位のパネルの板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の車両の前部車体構造において、前記樹脂で形成され、かつ破断予定部が形成されたパネルは、フロントフェンダパネルであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の後部上面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記後部上面構成部分の下方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、ノーズ部の側部後方から上方に延びるフロントピラーを覆うように、前記後部上面構成部分に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の上面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記上面構成部分の下方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、前記上面構成部分の側方に配設されたボンネットを覆うように、前記上面構成部分に形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の前面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記前面構成部分の後方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記前面構成部分に、前記エアバッグがノーズ部の前方に展開するように形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の後部上面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記後部上面構成部分の下方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、ノーズ部の側部後方から上方に延びるフロントピラーを覆うように、前記後部上面構成部分に形成されている第1の構成と、前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の上面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記上面構成部分の下方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、前記エアバッグがノーズ部の外部に展開したときに、前記上面構成部分の側方に配設されたボンネットを覆うように、前記上面構成部分に形成されている第2の構成と、前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の前面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記前面構成部分の後方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記前面側部構成部分に、前記エアバッグがノーズ部の前方に展開するように形成されている第3の構成とのうち、いずれか2つの構成、または全ての構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について説明する。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車体前部のノーズ部の内部に配設されたエアバッグは、その展開圧力で、ノーズ部を構成する樹脂で形成されたパネルの破断予定部を破断させて、ノーズ部の外部に展開することとなる。
【0017】
つまり、樹脂製のパネルに破断予定部を設けるだけで、エアバッグをノーズ部の外部に展開させることができる。したがって、従来のように、パネル同士の隙間を大きくしたり、パネルと他部材との間隔を大きくしたりする必要がなく、車両の美観を損なうことがない。また、ノーズ部を構成するパネルを持ち上げ可能に構成する必要もなく、構造が簡素化される。
【0018】
また、樹脂製のパネルにおいては破断予定部の形成位置を比較的自由に設定することができるので、ノーズ部内部へのエアバッグの配設自由度が向上し、歩行者保護の対象とする様々な部分や方向に向けてエアバッグを展開させることが容易となる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記破断予定部は、当該部位のパネルの板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成されているから、当該破断予定部を容易に形成することができると共に、構造が簡単なものとなる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記樹脂で形成され、かつ破断予定部が形成されたパネルは、フロントフェンダパネルであるから、該フロントフェンダパネルの周囲に存在する例えばボンネットや、フロントピラー等の歩行者保護の対象とする部分に向けてエアバッグを展開させることが可能となる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記エアバッグが、フロントフェンダの後部上面構成部分に形成された破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、該エアバッグにより、ノーズ部の側部後方から上方に延びるフロントピラーが覆われて、フロントピラーと歩行者との間の緩衝が行われることとなる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記エアバッグが、フロントフェンダの上面構成部分に形成された破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、該エアバッグにより、前記上面構成部分の側方に配設されたボンネットが覆われて、ボンネットと歩行者との間の緩衝が行われることとなる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記エアバッグが、フロントフェンダの前面構成部分に形成された破断予定部を破断してノーズ部の前方に展開し、該エアバッグにより、ノーズ部の前面と歩行者との間の緩衝が行われることとなる。
【0024】
また、請求項7に記載の発明によれば、請求項4から請求項6のいずれか2項または3項に記載の効果を同時に得ることができる。すなわち、歩行者保護がより確実なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る車両の前部車体構造について説明する。
【0026】
図1(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る車両1の前部車体構造の平面図及び側面図(車両の左半分のみを示しているが、右半分は対称に構成されている)であり、これらの図からわかるように、車体の前部には、ノーズ部2が設けられている。
【0027】
ノーズ部2の外面は、ボンネットフード3、左右のフロントフェンダパネル4及びバンパフェース5により構成されている。
【0028】
ノーズ部2の内部には、エンジンEGが配設されるエンジンルーム6が設けられ、このエンジンルーム6とその後方の車室7とが、ノーズ部2の後部に設けられたダッシュパネル11により前後に仕切られている。
【0029】
また、ノーズ部2の内部においては、左右一対のフロントサイドフレーム12が、ダッシュパネル11からエンジンEG側方を通って前方に延びている。また、ダッシュパネル11の左右には、上下に延び、フロントドア13の前端部を枢支するヒンジピラー14がそれぞれ設けられている。左右のヒンジピラー14の上部からそれぞれエプロンレンフォースメント15が前方に延びている。フロントサイドフレーム12とエプロンレンフォースメント15との間には、前輪Wを収容するホイールハウスの内面を構成するエプロンパネル16が設けられている。また、ノーズ部2の側部後方から上方に(左右のヒンジピラー14の上端部から後方上方に)フロントピラー17が延びている。
【0030】
次に、フロントフェンダパネル4,4について詳しく説明すると、本実施の形態に係る車両1においては、前記フロントフェンダパネル4,4は樹脂により形成されている。
【0031】
また、図1(a),(b)からわかるように、フロントフェンダパネル4は、ノーズ部2の外面を構成する部分として、ノーズ部の側面を構成する側面構成部4aと、ノーズ部の上面を構成する上面構成部4bと、ノーズ部の前面を構成する前面構成部4cとを有し、前輪Wを上方から覆っている。
【0032】
また、フロントフェンダパネル4は、図2に示すように、エプロンレインフォースメント15やエプロンパネル16にボルト等により固定される縦面部4dと、該縦面部4dの上端から車幅方向外方上方に斜めに延びる斜面部4eとを有している。ここで、前記上面構成部4bは、ボンネット3の車幅方向外端3aよりも車幅方向外側に位置してかつ平面視で上方から視認可能な部分のうち、概ね上方を向いている部分であり、前記斜面部4eにおけるボンネット3の車幅方向外端3aよりも車幅方向外側に位置する部分4e′も含む。
【0033】
また、図1、図2からわかるように、本実施の形態に係る車両1のノーズ部2の内部には、歩行者保護用のエアバッグ装置20が設けられている。
【0034】
このエアバッグ装置20は、ノーズ部2の側部後方から上方に延びるフロントピラー17を覆うためのもので、フロントフェンダパネル4の上面構成部4bの後部の下方に配設されており、図2に示すように、折り畳まれた状態のエアバッグ21と、エアバッグコントロールユニット(図示せず)からの起爆信号を受信したときにガスを発生して、エアバッグ21の内部にガスを供給するインフレータ22とを有し、前記エプロンレインフォースメント15にブラケット25を介してボルト、ナットにより固定されている。なお、エアバッグコントロールユニットは、車両の走行中、車両に別途設けられた歩行者検出用のカメラやレーダからの信号に基づいて、歩行者と衝突する虞があるか否かを判定し、衝突する虞がある場合に起爆信号を発生して、エアバッグ21を展開させるように構成されており、これにより、エアバッグ21により歩行者と車両1との間の緩衝が行われるようになっている。
【0035】
また、本実施の形態においては、このエアバッグ21をノーズ部2の外部に展開可能とするため、図1(a)に示すように、フロントフェンダパネル4の上面構成部4bの後部に、エアバッグ21の展開圧力で破断する破断予定部4h1が設けられている。
【0036】
この破断予定部4h1は、図2に示すように、上面構成部4bにおける当該部位の板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成されていると共に、エアバッグ21の展開時には、該エアバッグ21の展開圧力により、この薄肉部分の樹脂が破断して取り除かれて、エアバッグ展開用の開口が形成されるようになっている。なお、破断予定部4h1の板厚は、乗員等がフロントフェンダパネル4のメンテナンス等で接触した際に容易には変形しないが、エアバッグ21の展開圧力によっては容易に破断する厚さに設定されている。
【0037】
また、破断予定部4h1は、フロントフェンダパネル4の外面の美観を損なわないように、フロントフェンダパネル4の内面側を凹状に形成することにより、薄肉とされている。
【0038】
また、破断予定部4h1は、前記エアバッグ21がノーズ部2の外部に展開したときに、前方から見て略上下方向に延びるフロントピラー17を覆うことが可能なように、上面構成部4bにおけるエアバッグ21のほぼ真上に位置する頂点部分4p(斜面部4eの上端(外端))に形成されている。
【0039】
また、破断予定部4h1は、展開するエアバッグ21が通過可能なように、上面構成部4bの頂点部分4pに沿って、所定の幅(車幅方向幅)で前後に所定の長さ(車体前後長)延びている。なお、この破断予定部4h1の所定の幅及び所定の長さは、展開させるエアバッグの折り畳み方法や、展開開始時の形状等を考慮して設定されている。
【0040】
次に、第1の実施の形態に係る車両の前部車体構造による作用、効果について説明する。
【0041】
すなわち、車両1の走行中、エアバッグコントロールユニットにより、歩行者と衝突する虞があると判定されると、ノーズ部2の内部に配設されたエアバッグ21,21が、図3に示すように、フロントピラー17、17を覆うようにノーズ部2の外部に展開し、該エアバッグ21,21により、歩行者と車両1のフロントピラー17、17との間の緩衝が行われることとなる。
【0042】
その場合に、本実施の形態においては、車体前部のノーズ部2を構成するフロントフェンダパネルパネル4は、樹脂で形成されており、ノーズ部2の内部に配設されたエアバッグ21は、その展開圧力で、フロントフェンダパネル4の上面構成部4bに形成された破断予定部4h1を破断させて、ノーズ部2の外部に展開することとなる。
【0043】
すなわち、樹脂製のパネル4に破断予定部4h1を設けるだけで、エアバッグ21をノーズ部2の外部に展開させることができる。したがって、従来のように、ノーズ部の外面を構成するパネル同士の隙間を大きくしたり、パネルと他部材(例えばフロントガラス)との間隔を大きくしたりする必要がなく、車両の美観を損なうことがない。また、ノーズ部を構成するパネルを持ち上げ可能に構成する必要もなく、構造が簡素化される。
【0044】
また、破断予定部4h1は、当該部位のパネル4の板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成されているから、当該破断予定部4h1を容易に形成することができると共に、構造が簡単なものとなる。
【0045】
ここで、樹脂製のパネルにおいては、破断予定部の形成位置を比較的自由に設定することができるので、ノーズ部内部へのエアバッグの配設自由度が向上し、歩行者保護の対象とする様々な部分や方向に向けてエアバッグを展開させることが容易となる。
【0046】
そこで、エアバッグ装置による保護対象部位や方向を変更したものについて、第2、第3の実施の形態として説明する。なお、これに伴って変更されるのは、エアバッグ装置やフェンダパネルの破断部の配置等であり、この点を中心に説明する。車体の基本構造及びフェンダパネルの基本構造は共通であり、説明を省略するが、引用する必要があるときは同一の符号を用いる。
【0047】
まず、第2の実施の形態について説明すると、第2の実施の形態に係るエアバッグ装置30は、ノーズ部2の上面を構成するボンネット3を上方から覆うためのもので、図4(a),(b)に示すように、フロントフェンダパネル4の上面構成部4bの下方に配設されており、図5に示すように、折り畳まれた状態のエアバッグ31と、第1の実施形態同様のインフレータ32とを有し、エプロンレインフォースメント15にブラケット35を介してボルト、ナットにより固定されている。その場合に、図4(a),(b)からわかるように、本実施の形態のエアバッグ31は、ヒンジピラー14の近傍からノーズ部2の前端部近傍まで延びる前後に長い形状をしており、支持部材33を介してインフレータ32に固定されている。
【0048】
また、図5に示すように、破断予定部4h2は、フロントフェンダパネル4の上面構成部4bに設けられており、第1の実施の形態同様、上面構成部4bにおける当該部位の板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成されていると共に、エアバッグ31の展開時には、該エアバッグ31の展開圧力により、この薄肉部分の樹脂が破断して取り除かれて、エアバッグ展開用の開口が形成されるようになっている。なお、破断予定部4h2の板厚の設定は第1の実施の形態同様に行えばよい。
【0049】
また、破断予定部4h2は、エアバッグ31がノーズ部2の外部に展開したときに、上面構成部4bの側方に位置するボンネット3を覆うことが可能なように、エアバッグ31の斜め内方上方に位置する、斜面部4eにおける上面構成部4bを構成する部分4e′に形成されている。
【0050】
また、破断予定部4h2は、図4(a),(b)からわかるように、前述のように前後に長いエアバッグ31が通過可能なように、ヒンジピラー14の近傍からノーズ部2の前端部近傍まで延び、前後に長くされている。
【0051】
次に、第2の実施の形態に係る車両1′の前部車体構造による作用、効果について説明する。
【0052】
すなわち、車両1′の走行中、エアバッグコントロールユニットにより、歩行者と衝突する虞があると判定されると、ノーズ部2の内部に配設されたエアバッグ31,31が、図6に示すように、ボンネット3を上方から覆うようにノーズ部2の外部に展開し、該エアバッグ31,31により、歩行者と車両1′のボンネット3との間の緩衝が行われることとなる。
【0053】
その場合に、本実施の形態においては、車体前部のノーズ部2を構成するフロントフェンダパネル4は、樹脂で形成されており、ノーズ部2の内部に配設されたエアバッグ31は、その展開圧力で、フロントフェンダパネル4の上面構成部4bに形成された破断予定部4h2を破断させて、ノーズ部2の外部に展開することとなる。
【0054】
すなわち、樹脂製のパネル4に破断予定部4h2を設けるだけで、エアバッグ31をノーズ部2の外部に展開させることができる。したがって、第1の実施の形態で説明したように、車両の美観を損なうことがなく、また構造が簡素化される。また、破断予定部4h2は、当該部位のパネル4の板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより容易に形成することができる。
【0055】
次に、第3の実施の形態について説明すると、この第3の実施の形態においては、ノーズ部2の内部に、ノーズ部2の前面、側面と歩行者との緩衝を行うエアバッグ装置40,50が配設されている。
【0056】
これらのエアバッグ装置40,50のうち、ノーズ部2の側面と歩行者との緩衝を行うエアバッグ装置40は、図7(a),(b)に示すように、フロントフェンダパネル4の側面構成部4aの後部、詳しくは前輪Wよりも後方でヒンジピラー14よりも前方部分の下部内方に配設されており、図8にもあわせて示すように、折り畳まれた状態のエアバッグ41と、第1の実施形態同様のインフレータ42とを有し、フロントサイドフレーム12の後部にブラケット45を介してボルトで固定されている。
【0057】
エアバッグ装置40用の破断予定部4h3は、エアバッグ41がノーズ部2の側方に展開するように、フロントフェンダパネル4の側面構成部4aの下部におけるエアバッグ41の側方部分に設けられており、第1の実施の形態同様、側面構成部4aにおける当該部位の板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成され、エアバッグ41の展開圧力により、この薄肉部分の樹脂が破断して取り除かれて、エアバッグ展開用の開口が形成されるようになっている。なお、破断予定部4h3の板厚の設定は第1の実施の形態同様に行えばよい。
【0058】
一方、ノーズ部2の前面と歩行者との緩衝を行うエアバッグ装置50は、図7(a),(b)に示すように、フロントフェンダパネル4の前面構成部4cの下部に形成された箱状部4k内に配設されており、図9に示すように、折り畳まれた状態のエアバッグ51と、第1の実施形態同様のインフレータ52とを有し、前記箱状部4kの後壁部4mにボルト、ナットで固定されている。
【0059】
エアバッグ装置50用の破断予定部4h4は、エアバッグ51がノーズ部2の前方に展開するように、前記フロントフェンダパネル4の前面構成部4cの下部におけるエアバッグ51の前方部分に設けられており、第1の実施の形態同様、前面構成部4cにおける当該部位の板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成され、エアバッグ51の展開圧力により、この薄肉部分の樹脂が破断して取り除かれて、エアバッグ展開用の開口が形成されるようになっている。なお、破断予定部4h4の板厚の設定は第1の実施の形態同様に行えばよい。
【0060】
次に、第3の実施の形態に係る車両1″の前部車体構造による作用、効果について説明する。
【0061】
すなわち、車両1″の走行中、エアバッグコントロールユニットにより、歩行者と衝突する虞があると判定されると、ノーズ部2の内部に配設されたエアバッグ41,51が、図10に示すように、ノーズ部2の側方及び前方に展開し、当該エアバッグ41,51により、歩行者と車両1のノーズ部2の前面及び側面との間の緩衝が行われることとなる。
【0062】
その場合に、本実施の形態においては、車体前部のノーズ部2を構成するフロントフェンダパネル4は、樹脂で形成されており、ノーズ部2の内部に配設されたエアバッグ41,51は、その展開圧力でフロントフェンダパネル4の側面構成部4a及び前面構成部4cに形成された破断予定部4h3,4h4を破断させて、ノーズ部2の外部に展開することとなる。
【0063】
すなわち、樹脂製のパネル4に破断予定部4h3,4h4を設けるだけで、エアバッグ41,51をノーズ部2の外部に展開させることができる。したがって、第1の実施の形態で説明したように、車両の美観を損なうことがなく、また構造が簡素化される。また、破断予定部4h3,4h4は、当該部位のパネル4の板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより容易に形成することができる。
【0064】
なお、前記各実施の形態は、フロントピラーや、ボンネットや、ノーズ部の側面及び前面と歩行者との緩衝を個別に行うものであるが、前記第1の実施の形態に記載のエアバッグ21及び破断予定部4h1と、前記第2の実施の形態に記載のエアバッグ31及び破断予定部4h2と、前記第3の実施の形態に記載のエアバッグ41,51及び破断予定部4h3,4h4とのうち、いずれか2つの実施の形態のエアバッグ及び破断予定部、または全ての実施の形態に記載のエアバッグ及び破断予定部を有する構成としてもよい。こうすることにより、いずれか2つの実施の形態で説明した作用、効果、または全ての実施の形態で説明した作用、効果を同時に得ることができる。すなわち、歩行者保護がより確実なものとなる。なお、このように複数の実施の形態のものを組み合わせる場合において、第3の実施の形態に記載のエアバッグ41,51及び破断予定部4h3,4h4については、いずれか一方のみを設けるようにしてもよく、その場合、設置された方のエアバッグ及び破断予定部についての作用、効果を得ることができる。
【0065】
また、本実施の形態においては、ノーズ部を構成するパネルのうち、フロントフェンダパネルが樹脂で形成されていると共に、該パネルに破断予定部が設けられているが、フェンダパネル以外のパネルを樹脂で形成した場合には、そのパネルに破断予定部を設けてもよい。例えば、ノーズ部の上面を構成するボンネットや、ノーズ部の前面を構成するバンパ等を樹脂で形成した場合には、これらのパネルの近傍にエアバッグを配設すると共に、これらのパネルに破断予定部を設けることが考えられる。
【0066】
また、本実施の形態においては、破断予定部は、当該部位のパネルの板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、破断予定部の輪郭に沿うように細溝を形成し、輪郭内の部分がエアバッグの展開圧力で外れるように構成することもできる。
【0067】
また、破断予定部により形成される開口の形状は、展開させるエアバッグの折り畳み方法や、展開開始時の形状等を考慮した上で、展開するエアバッグが通過しやすい形状であればよく、例えば、円形や、矩形、その他の形状に設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、ノーズ部の内部にエアバッグが配設された車両において、車体前部のノーズ部を構成するパネルが樹脂で形成されていることを利用して、ノーズ部内部へのエアバッグの配設自由度を向上させると共に、ノーズ部の内部に配設されたエアバッグを、車両の美観を損なうことなく、かつ構造を複雑にさせることなく、ノーズ部の外部に展開可能とする前部車体構造を提供することができ、自動車産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両の前部車体構造の平面図(a図)及び側面図(b図)である(車両の左半分のみを示しているが、右半分は対称に構成されている)。
【図2】図1(a)のA−A断面図である(エアバッグ装置は便宜上断面としていない)。
【図3】エアバッグが展開した状態を示す車体前部の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る車両の前部車体構造の平面図(a図)及び側面図(b図)である(車両の左半分のみを示しているが、右半分は対称に構成されている)。
【図5】図4(a)のB−B断面図である(エアバッグ装置は便宜上断面としていない)。
【図6】エアバッグが展開した状態を示す車体前部の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る車両の前部車体構造の平面図(a図)及び側面図(b図)である(車両の左半分のみを示しているが、右半分は対称に構成されている)。
【図8】図7(a)のC−C断面図である(エアバッグ装置は便宜上断面としていない)。
【図9】図7(a)のD−D断面図である(エアバッグ装置は便宜上断面としていない)。。
【図10】エアバッグが展開した状態を示す車体前部の斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 車両(車両)
2 ノーズ部(ノーズ部)
3 ボンネット(ボンネット)
4 フロントフェンダパネル(車体前部のノーズ部を構成するパネル、フロントフェンダパネル)
4b 上面構成部(ノーズ部の上面を構成する部分、上面構成部分)
4c 前面構成部(ノーズ部の前面を構成する部分、前面構成部分)
4h1,4h2,4h3,4h4 破断予定部(破断予定部)
17 フロントピラー(フロントピラー)
21,31,41,51 エアバッグ(エアバッグ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のノーズ部を構成するパネルが樹脂で形成されていると共に、前記ノーズ部の内部にエアバッグが配設された車両の前部車体構造であって、
前記パネルに、前記エアバッグの展開圧力で破断し、該エアバッグをノーズ部の外部に展開可能とする破断予定部が設けられていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両の前部車体構造において、
前記破断予定部は、当該部位のパネルの板厚を他の部位の板厚よりも薄くすることにより形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の車両の前部車体構造において、
前記樹脂で形成され、かつ破断予定部が形成されたパネルは、フロントフェンダパネルであることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、
前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の後部上面を構成する部分を有すると共に、
前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記後部上面構成部分の下方に配設されており、
前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、ノーズ部の側部後方から上方に延びるフロントピラーを覆うように、前記後部上面構成部分に形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、
前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の上面を構成する部分を有すると共に、
前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記上面構成部分の下方に配設されており、
前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、前記上面構成部分の側方に配設されたボンネットを覆うように、前記上面構成部分に形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、
前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の前面を構成する部分を有すると共に、
前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記前面構成部分の後方に配設されており、
前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記前面構成部分に、前記エアバッグがノーズ部の前方に展開するように形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項7】
前記請求項3に記載の車両の前部車体構造において、
前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の後部上面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記後部上面構成部分の下方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、ノーズ部の側部後方から上方に延びるフロントピラーを覆うように、前記後部上面構成部分に形成されている第1の構成と、
前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の上面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記上面構成部分の下方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記エアバッグが該破断予定部を破断してノーズ部の外部に展開したときに、前記エアバッグがノーズ部の外部に展開したときに、前記上面構成部分の側方に配設されたボンネットを覆うように、前記上面構成部分に形成されている第2の構成と、
前記フロントフェンダパネルは、前記ノーズ部の前面を構成する部分を有すると共に、前記エアバッグは、該フロントフェンダパネルの前記前面構成部分の後方に配設されており、前記フロントフェンダパネルの破断予定部は、前記前面側部構成部分に、前記エアバッグがノーズ部の前方に展開するように形成されている第3の構成とのうち、いずれか2つの構成、または全ての構成を有することを特徴とする車両の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−18043(P2010−18043A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177524(P2008−177524)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】