説明

車両の周辺監視装置

【課題】車両に搭載されたカメラにより撮像した画像に基づいて車両の周辺の対象物を検出し、該対象物についての警報を運転者に発行した場合に、該警報が発せられることによって車両のふらつきが発生することがある。
【解決手段】車両に搭載された撮像装置によって撮像した画像に基づいて車両周辺の対象物を検出し、該撮像画像に基づく表示画像を、該車両の乗員が視認可能なように表示装置上に表示する。対象物が車両から所定範囲内にあるときには、該表示画像上に該対象物に関する警報を行う。該車両には、運転者によるステアリングホイールの操舵を補助するパワーステアリング装置が備えられており、少なくとも上記の警報を発している間にわたり、ステアリングホイールの操舵を補助するアシスト量を低減するように、パワーステアリング装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転者に情報を提供する際に、車両のふらつきを防止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の操舵について様々な制御が提案されている。下記の特許文献1には、運転者の意図に応じた操舵が可能であって、かつ運転者の意図にはない車両のヨーレート変化のみを打ち消すように操舵アシストを行う制御が開示されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、車両の前方の物体を検知する手段を備え、該検知された情報に基づいて該物体までの距離を算出し、該距離が所定値以下であり、かつ車速に対するハンドル角が所定値よりも大きい場合に、通常特性の補助操舵トルクよりも大きい回避特性の補助操舵トルクでハンドル操舵をアシストするパワーステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314715号公報
【特許文献2】特開2005−170260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に搭載されたカメラにより撮像した画像に基づいて車両の周辺の対象物を検出した際に、表示装置上に該対象物を含む撮像画像を表示すると共に、該対象物についての警報を運転者に発行することが行われている。しかしながら、該表示装置の車両内の取り付け位置によっては、運転者は、該表示装置上の画面を視認するのに視線移動を行う必要が生じる。このような視線移動を行う際、車両のハンドル(ステアリングホイール)が運転者によって左右に動かされるおそれがあり、よって車両がふらつくおそれがある。また、警報が発せられた該対象物を実空間上で認知しようとして運転者が視線を移動させる際にも、このようなふらつきを生じさせるおそれがある。
【0006】
ふらつきが発生すると、運転者には、ふらつきをなくそうという意識が働く。運転者は、運転中に、不用意な緊張と運転タスクを強いられることとなり、運転の負担が大きくなる。また、視線を移動させている時間が長くなるにつれ、ふらつき量も大きくなるおそれがある。
【0007】
したがって、上記のような警報が発せられることによって車両のふらつきが発性すると予測される場合には、該ふらつきを事前に防止するような手法が所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一つの側面によると、車両の周辺監視装置は、車両に搭載された撮像装置によって撮像した画像に基づいて車両の周辺の対象物を検出する手段と、該撮像画像に基づく表示画像を、該車両の乗員が視認可能なように表示装置上に表示する表示手段と、前記対象物が車両から所定範囲内にあるとき、前記表示手段を用いて、前記表示画像上に該対象物に関する警報を行う警報手段と、を有する。また、該車両には、運転者によるステアリングホイールの操舵を補助するパワーステアリング装置が備えられている。該車両の周辺監視装置は、さらに、少なくとも前記警報手段が前記警報を発している間にわたり、前記ステアリングホイールの操舵を補助するアシスト量を低減するように、前記パワーステアリング装置を制御する制御手段を備える。
【0009】
この発明によれば、表示手段を介して対象物に関する警報が行われる場合、運転者が、該警報の対象物を視認しようとして、前方から表示装置上へと視線を移動させるものと予測することができ、よって、該視線移動によって車両がふらつくおそれがあると予測することができる。この発明によれば、このような視線移動ひいては車両のふらつきが予測された場合には、ステアリングホイール(ハンドル)のアシスト量を低減する。これにより、ハンドル操作を重くすることができるので、車両がふらつくのを事前に防止することができる。
【0010】
この発明の一実施形態によると、前記表示装置は、運転者が、水平方向に所定距離以上の視線移動が必要な位置に配置されている。
【0011】
この発明によれば、上記のように車両のふらつきを防止することができるので、たとえば、通常、運転者の左または右側に配置されているナビゲーション装置の表示装置を利用して、対象物に関する警報を発することができる。
【0012】
この発明の一実施形態によると、前記制御手段は、さらに、前記検出した対象物の位置に応じて、前記アシスト量を低減する量を変更する。こうして、対象物の位置に適切なように、ハンドル操作の重さを調整することができる。
【0013】
本発明のその他の特徴及び利点については、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施例に従う、車両の周辺監視装置の構成を示すブロック図。
【図2】この発明の一実施例に従う、表示装置およびカメラの取り付け位置を示す図。
【図3】この発明の一実施例に従う、電動パワーステアリング装置を示す図。
【図4】この発明の一実施例に従う、画像処理ユニットにおけるプロセスを示すフローチャート。
【図5】この発明の一実施例に従う、対象物判定・警報プロセスを示すフローチャート。
【図6】この発明の一実施例に従う、警報を発行するための車両からの所定範囲の一例を示す図。
【図7】この発明の一実施例に従う、警報表示の一例を示す図。
【図8】この発明の他の実施例に従う、画像処理ユニットにおけるプロセスを示すフローチャート。
【図9】この発明の他の実施例に従う、画像処理ユニットにおけるプロセスを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施形態に従う、ナビゲーション装置の表示装置を利用した、車両の周辺監視装置の構成を示すブロック図であり、図2は、表示装置とカメラの車両への取り付けを示す図である。
【0016】
車両には、ナビゲーション装置が搭載されており、該ナビゲーション装置は、ナビゲーションユニット5と、表示装置4とを備えている。表示装置4は、図2の(a)に示すように、車両のハンドル(ステアリングホイール)21の中心を通り、かつ車両の前後方向に伸長する線L1(図には、わかりやすいよう図の垂直方向に伸長するよう示されている)に対して所定距離だけ離れた位置に、運転者が視認可能なように取り付けられている。この実施例では、表示装置4は、車両のダッシュボード23にはめこまれている。
【0017】
ナビゲーションユニット5は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えたコンピュータで実現される。ナビゲーションユニット5は、たとえば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS信号を、該ナビゲーションユニット5に備えられた通信装置(図示せず)を介して受信し、該GPS信号に基づいて、車両の現在位置を検出する。ナビゲーションユニット5は、車両の周辺の地図情報(これは、ナビゲーション装置の記憶装置に記憶されることもできるし、該通信装置を介して所定のサーバから受信することもできる)に、該現在位置を示す画像を重畳させて、表示装置4の表示画面25に表示する。また、表示装置4の表示画面25はタッチパネルを構成しており、該タッチパネルを介して、またはキーやボタン等の他の入力装置27を介して、乗員はナビゲーションユニット5に目的地を入力することができる。ナビゲーションユニット5は、該目的地までの車両の最適経路を算出し、該最適経路を示す画像を地図情報に重畳させて、表示装置4の表示画面25に表示することができる。
【0018】
また、ナビゲーションユニット5には、スピーカ3が接続されており、必要に応じて、たとえば一時停止や交差点等の経路案内を行う際に、表示装置4上への表示だけでなく、スピーカ3を介して音または音声によって乗員に知らせることができる。なお、最近のナビゲーション装置には、交通情報の提供や車両近傍の施設案内等、他にも様々な機能が搭載されており、この実施形態では、任意の適切なナビゲーション装置を利用することができる。
【0019】
また、車両の周辺監視装置は、車両に搭載され、遠赤外線を検出可能な2つの赤外線カメラ1Rおよび1Lと、カメラ1Rおよび1Lによって撮像された画像データに基づいて車両周辺の対象物を検出するための画像処理ユニット2を備えている。画像処理ユニット2は、表示装置4およびスピーカ3に接続されている。表示装置4は、カメラ1Rまたは1Lの撮像を介して得られた画像を表示すると共に、該画像から検出された車両周辺の対象物の存在について警報表示を行うのに利用される。また、スピーカ3は、該対象物の検出結果に基づいて音または音声で警報を発行するのに利用される。
【0020】
この実施例では、図2の(b)に示すように、カメラ1Rおよび1Lは、車両10の前方を撮像するよう、車両10の前部に、車幅の中心を通る中心軸に対して対称な位置に配置されている。2つのカメラ1Rおよび1Lは、両者の光軸が互いに平行となり、両者の路面からの高さが等しくなるように車両に固定されている。赤外線カメラ1Rおよび1Lは、対象物の温度が高いほど、その出力信号のレベルが高くなる(すなわち、撮像画像における輝度が大きくなる)特性を有している。
【0021】
画像処理ユニット2は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、デジタル化した画像信号を記憶する画像メモリ、各種演算処理を行う中央演算処理装置(CPU)、CPUが演算に際してデータを記憶するのに使用するRAM(ランダムアクセスメモリ)、CPUが実行するプログラムおよび用いるデータ(テーブル、マップを含む)を記憶するROM(リードオンリーメモリ)、スピーカ3に対する駆動信号および表示装置4に対する表示信号などを出力する出力回路を備えている。カメラ1Rおよび1Lの出力信号は、デジタル信号に変換されてCPUに入力されるよう構成されている。
【0022】
このように、この実施例では、ナビゲーション装置の表示装置4を、カメラ1Rおよび1Lによる撮像を介して得られた画像の表示、および該画像から検出された所定の対象物の存在を運転者に通知(警報)するための表示に利用する。フロントウィンドウ上の、運転者の前方位置に画面が表示されるように設けられたヘッドアップディスプレイ(HUD)と異なり、表示装置4は、ハンドル21から、車幅方向に所定距離だけ離れた位置に設けられているので、HUDに比べて、運転者が運転中に表示装置4の画面を視認するには水平方向に視線を移動させる必要がある。この視線移動により、ステアリングホイール21が運転者によって左右に動かされるおそれがあり、結果として車両がふらつくおそれがある。ふらつきが生じると、運転者には、ふらつきをなくそうという意識が働き、これは、運転者への負担となりうる。
【0023】
また、表示装置4への視線移動の時間が長くなるにつれ、ふらつき量も大きくなるおそれがあり、これは、走行路外へ車両を逸脱させたり、急に現れた歩行者や自転車と衝突する可能性を高くさせるおそれがある。
【0024】
本願発明は、このような、表示装置に対する視線移動によって車両のふらつきが発生すると予測される場合には、該車両のふらつきを事前に防止するような制御を行う。このため、図1に示すように、車両に設けられた電動パワーステアリング(EPS)ユニット6に、画像処理ユニット2が接続される。
【0025】
EPSユニット6は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えたコンピュータであるECU(電子制御ユニット)に実現されることができる。EPSユニット6は、車両のステアリングホイール21の操舵を補助(アシスト)するための装置であり、ステアリングモータ7およびステアリングダンパ8を制御する。
【0026】
ここで、EPSユニット6を備えた電動パワーステアリング装置の一例を、図3を参照して簡単に説明する。
【0027】
電動パワーステアリング装置は、この実施例では、手動操舵力発生機構31を備えており、ステアリングホイール(操作子)21に一体結合されたステアリングシャフト34が、ユニバーサルジョイントを有する連結軸35を介してラック&ピニオン機構のピニオン36に連結されて構成されている。ピニオン36は、車幅方向に往復動し得るラック軸37のラック歯37aに噛合し、ラック軸37の両端には、タイロッド38,38を介して転舵輪としての左右の前輪39,39が連係されている。この構成により、ステアリングホイール21の操舵時に通常のラック&ピニオン式の転舵操作が可能であり、前輪39,39を転舵させて車両の向きを変えることができる。ラック軸37とタイロッド38,38は転舵機構を構成する。
【0028】
また、ラック軸37と同軸上に、手動操舵力発生機構31による操舵力を軽減するための補助操舵力(操舵アシスト量またはアシスト量と呼ばれる)を供給するステアリングモータ7が設けられている。すなわち、この装置ではステアリングモータ7が操舵をアシストする。ステアリングモータ7の出力はボールねじ機構42を介して推力に変換され、ラック軸37に作用せしめられる。
【0029】
ステアリングシャフト34には、ステアリングシャフト34の操舵角を検出するための操舵角センサ45が設けられ、上記のラック&ピニオン機構(36,37a)を収容するステアリングギアボックス(図示せず)内には、ピニオン36に作用する操舵トルクを検出するための操舵トルクセンサ46が設けられている。また、車体の適所には、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ48と、車速を検出する車速センサ49とが取り付けられている。
【0030】
操舵角センサ45は、検出した操舵角に対応する電気信号を、操舵トルクセンサ46は、検出した操舵トルクに対応する電気信号を、ヨーレートセンサ48は、検出したヨーレートに対応する電気信号を、車速センサ49は、検出した車速に対応した電気信号を、それぞれEPSユニット6に出力する。
【0031】
EPSユニット6は、操舵トルクセンサ46および車速センサ49の出力信号に基づき、操舵トルクと車速に応じたベース電流を算出する。通常、操舵トルクが大きくなるにしたがってベース電流が大きくなり、車速が大きくなるにしたがってベース電流が小さくなるように設定する。
【0032】
また、EPSユニット6は、ヨーレートセンサ48の出力信号に基づき、ヨーレート反力補正電流を算出する。ヨーレート反力補正電流は、例えば車両の旋回走行時などにおいてヨーレートが発生したときに、このヨーレートを打ち消す方向のトルクを発生させる反力成分である。通常、ヨーレートが大きくなるにしたがってヨーレート反力補正電流が大きくなるように設定する。
【0033】
EPSユニット6は、ベース電流からヨーレート反力補正電流を減算してステアリングモータ7の目標電流を決定する。EPSユニット6は、該決定した目標電流を、駆動回路51を介してステアリングモータ7に供給することによりステアリングモータ7の出力トルクを制御し、ステアリング操作における補助操舵力(アシスト量)を制御する。
【0034】
また、ラック軸37には、路面から前輪39を介してステアリング系に入力されるトルク外乱を抑制するためのステアリングダンパ(ダンパ)8が連結されている。すなわち、ステアリングダンパ8は、ステアリングホイール21と前輪39とを連結する伝達経路に配置されている。このステアリングダンパ8は、EPSユニット6からの制御信号に基づいて減衰力を調節することができる電子制御減衰力可変ダンパで構成されている。電子制御減衰力可変ダンパは、任意の適切な手段で構成されることができ、たとえば、その詳細は特開2007−283954号公報に記載されている。減衰力は、上記の補助操舵力(アシスト量)を打ち消す方向に働くため、減衰力が大きいほど、ステアリングホイール21の操作性は重くなる。したがって、運転者は、同じ量だけ車両を旋回させる場合でも、減衰力が大きくなるにつれて、ハンドル操作を重く感じることとなる。
【0035】
図1に戻り、画像処理ユニット2は、カメラ1R,1Lにより取得された撮像画像に基づいて検出された対象物について表示装置4上に警報表示を出力するとき、車両のふらつきが予測される状態であると判定する。また、該警報表示が解除されているとき、車両のふらつきが予測される状態ではないと判定する。
【0036】
画像処理ユニット2は、車両のふらつきが予測される状態と判定したことに応じて、アシスト量を低減するように、ステアリングダンパ8の制御値に第2の値を設定し、これをEPSユニット6に送出する。該ふらつきが予測される状態ではないと判定したならば、該アシスト量の低減が解除されるように、該制御値に第1の値(通常の値)を設定し、これをEPSユニット6に送出する。
【0037】
EPSユニット6は、第2の値の制御値を受け取ったならば、アシスト量が所定量だけ低減されるように、ステアリングダンパ8を制御する。これにより、所定量だけ低減されたアシスト量となるように減衰力が制御される。また、EPSユニット6は、第1の値の制御値を受け取ったならば、該アシスト量の低減が解除されるように、ステアリングダンパ8を制御する。これにより、該低減が解除されたアシスト量(すなわち、上記のように決定されたステアリングモータ7の目標電流に基づくアシスト量)となるように減衰力が制御される。
【0038】
撮像画像に基づいて検出された対象物について警報表示を出力すると、運転者は、通常、表示装置上に視線を移動させて該対象物を視認しようとする。すなわち、該警報表示の出力によって、運転者の視線が移動し、これによって車両にふらつきが生じる可能性があると予測することができる。したがって、このようなふらつきを事前に防止するため、画像処理ユニット2は、上記のように、EPSユニット6に対し、アシスト量を低減するための制御を行うよう指示する。こうして、警報表示が出力されている間にわたり、低減されたアシスト量でハンドル操作がアシストされることとなるので、ハンドル操作は重くなり、車両のふらつきを防止することができる。
【0039】
一実施形態では、アシスト量を低減する量を、検出された対象物の位置に応じて変更してもよい。たとえば、第1の形態として、対象物が、車両から見て左右のどちら側に存在するかに応じて、アシスト量を低減する量を変更する。対象物が車両から見て右側に存在している場合には、運転者が警報対象物を認知しようとして車両が右側にふらつくおそれがある。したがって、ステアリングホイール21が右方向に操舵される際のアシスト量が、左方向に操舵される際のアシスト量よりも低減されるようにし、右方向へのハンドル操作を重くする。同様に、対象物が車両から見て左側に存在している場合には、ステアリングホイール21が左方向に操舵される際のアシスト量が、右方向に操舵される際のアシスト量よりも低減されるようにし、左方向へのハンドル操作を重くする。こうして、車両が対象物の存在する側にふらつくのを防止することができる。
【0040】
第2の形態として、対象物の移動方向に応じて、アシスト量を低減する量を変更する。車両の走行路を横切るように移動する対象物が存在すると、運転者は、焦り等から操舵操作をふらつかせるおそれがある。したがって、対象物の移動方向を算出し、該対象物が、車両の走行路に向けて移動していると判断した場合には、該対象物が、車両の走行路に向けて移動していると判断しない場合に比べて、アシスト量を低減する量を大きくする。代替的に、対象物の移動方向だけでなく、対象物の車両に対する相対速度を算出してもよい。そして、該対象物の移動方向が車両の走行路に向かっており、かつ相対速度が所定値以上の場合、そうではない場合に比べて、アシスト量を低減する量を大きくするようにしてもよい。
【0041】
第3の形態として、対象物の自車両からの距離に応じて、アシスト量を低減する量を変更する。対象物が、比較的車両から近距離に存在すると、上記と同様に、運転者は、焦り等から操舵操作をふらつかせるおそれがある。したがって、対象物までの距離を算出し、該距離が所定値以下であるときには、該距離が所定値より大きい場合に比べて、アシスト量を低減する量を大きくする。なお、対象物が至近距離に迫っているときには、ハンドル操作を軽くするために、該アシスト量の低減を解除するようにしてもよい。したがって、たとえば、対象物の自車両からの距離が、第1の所定値以上であり、かつ第2の所定値(これは、第1の所定値より大きい)以下である場合、該対象物までの距離が該第2の所定値より大きい場合に比べて、アシスト量を低減する量を大きくしてもよい。
【0042】
必ずしも必要とされるものではないが、この実施形態では、図1に示すように、視線検知ユニット9がさらに設けられており、これは、画像処理ユニット2に接続される。視線検知ユニット9は、運転者の視線の方向を検知するよう構成されている。
【0043】
視線検知ユニット9は、任意の適切な手法で実現されることができる。たとえば、特開2010−023670には、2個の赤外線LEDを発光させ、運転者の顔に向けて赤外線を照射させた後、赤外線カメラで撮像し、該撮像された画像に基づいて、角膜表面における反射像(プルキニエ像)の中心位置と瞳孔の中心位置との相対距離から運転者の視線の方向を検知する手法が記載されている。また、特開2009−211498号公報には、車室内センサから出力される画像データに対して、例えば運転者の頭部などを検知対象物とした所定の認識処理を行い、認識した検知対象物に基づき、運転者の視線ベクトル(視線方向)あるいは運転者の顔向きを算出することが記載されている。
【0044】
こうして、視線検知ユニット9によって検出された、運転者の視線の方向を示すデータは、画像処理ユニット2に渡される。
【0045】
上記では、警報表示の出力が行われるときに、車両のふらつきが予測される状態と判定したが、該状態を、さらに、視線検知ユニット9によって検知された運転者の視線の方向およびナビゲーションユニット5によって出力される経路案内に関する情報に基づいて判定してもよい。
【0046】
たとえば、以下のいずれかの条件が満たされたとき、車両のふらつきが予測される状態であると判定することができる。
【0047】
1)視線検知ユニット9によって検出された運転者の視線の向きが、表示装置4に向けられていると判定されたとき。
2)ナビゲーションユニット5によって、車両の進行経路に関する案内(たとえば、進行経路上に交差点や一時停止等が存在することを事前に運転者に知らせるための案内)が表示装置4上に出力されているとき。
【0048】
上記1)は、表示装置4に対して視線移動が行われた状態を示す。上記2)は、何らかの案内情報が表示装置4上に表示されている状態であるので、運転者が該案内情報を視認するため、表示装置4に対して視線移動を行う可能性が高いと予測される。
【0049】
また、上記の条件1)および2)のいずれも満たされず、かつ前述した警報表示の出力も解除されているとき、車両のふらつきが予測される状態ではないと判定することができる。
【0050】
この場合も、画像処理ユニット2は、前述したのと同様に、車両のふらつきが予測される状態と判定されたならば、アシスト量を低減するため、ステアリングダンパ8の制御値に第2の値を設定して、これをEPSユニット6に送出する。車両のふらつきが予測される状態と判定されなければ、該アシスト量の低減を解除するため、該制御値に第1の値を設定して、これをEPSユニット6に送出する。
【0051】
こうして、運転者の視線が、表示装置に向けられているとき、および向けられる可能性が高いときには、車両のふらつきが予測される状態と判定され、該車両のふらつきを防止するための制御が行われる。
【0052】
なお、上記の実施形態では、機械的なステアリングダンパを設けることでステアリング系に減衰力を作用させているが、代替的に、ステアリングモータ7の制御量に対して、減衰力に対応する補正(ダンパ補正)を電気的に行うようにしてもよい。この場合、減衰力を大きくするときには、前述したベース電流から、ダンパ補正電流を減算することで、モータ7を駆動する電流を小さくする。ダンパ補正電流の大きさを調整することにより、該減衰力の大きさを調整することができる。このような電流制御は、特開2007−283954に記載されている。
【0053】
図4は、この発明の一実施形態に従う、画像処理ユニット2によって実行されるプロセスを示すフローチャートである。該プロセスは、所定の時間間隔で実行される。
【0054】
ステップS11において、カメラ1Rおよび1Lの出力信号(すなわち、撮像画像のデータ)を入力として受け取り、これに基づいて、ステップS13において対象物判定・警報処理のプロセスを実行する。
【0055】
該プロセスは図5に示されており、ステップS51、52において、撮像画像のデータがA/D変換されて、グレースケール画像が取得され、これが、画像メモリに格納される。格納される画像データは、輝度情報を含んだグレースケール画像である。
【0056】
ステップS53において、カメラ1Rで撮像された右画像を基準画像とし(代替的に、左画像を基準画像としてもよい)、その画像信号の2値化を行う。具体的には、輝度閾値ITHより明るい領域を「1」(白)とし、暗い領域を「0」(黒)とする処理を行う。この2値化処理により、たとえば生体のような所定の温度より高い温度の対象物が、白領域として抽出される。輝度閾値ITHは、任意の適切な手法で決定されることができる。
【0057】
ステップS54において、2値化した画像データをランレングスデータに変換する。具体的には、2値化により白となった領域について、各画素行の該白領域(ラインと呼ぶ)の開始点(各ラインの左端の画素)の座標と、開始点から終了点(各ラインの右端の画素)までの長さ(画素数で表される)とで、ランレングスデータを表す。ここで、画像における垂直方向にy軸をとり、水平方向にx軸をとる。たとえば、y座標がy1である画素行における白領域が、(x1,y1)から(x3,y1)までのラインであるとすると、このラインは3画素からなるので、(x1,y1,3)というランレングスデータで表される。
【0058】
ステップS55およびS56において、対象物のラベリングを行い、対象物を抽出する処理を行う。すなわち、ランレングスデータ化したラインのうち、y方向に重なる部分のあるラインを合わせて1つの対象物とみなし、これにラベルを付与する。こうして、1または複数の対象物が抽出される。
【0059】
ステップS57において、こうして抽出された対象物のそれぞれについて、注意すべき対象物か否かを判定する。この実施形態では、該注意すべき対象物は、歩行者であり、該歩行者に加えて動物を含めてもよい。ここで、対象物が歩行者か動物かを判定する処理は、任意の適切な手法で実現されることができる。たとえば、周知のパターンマッチングを利用し、上記のように抽出された対象物と、歩行者を表す所定のパターンとの類似度を算出し、該類似度が高ければ、歩行者であると判定することができる。動物についても、同様に判定することができる。このような判定処理の例示として、歩行者かどうかを判定する処理は、たとえば特開2007−241740号公報、特開2007−334751号公報等に記載されている。動物かどうかを判定する処理は、たとえば特開2007−310705号公報、特開2007−310706号公報等に記載されている。
【0060】
ステップS58において、注意すべき対象物と判定された対象物について、警報出力を行うか否かを判定する。具体的には、該注意すべき対象物が、車両から所定範囲内に存在するか否かを判断し、該所定範囲内に存在すれば、警報出力を行うと判定する。該所定範囲は、任意の手法で設定されることができる。
【0061】
ここで、図6を参照して、該所定範囲の一例を簡単に説明すると、領域AR0は、カメラ1Rおよび1Lによって撮像可能な領域である撮像範囲を示す。撮像範囲AR0に対応する撮像画像に対して、図5のステップS51からS57の処理は実行される。領域AR1は、車両10の車幅αの両側に余裕β(たとえば、50〜100cm程度とすることができる)を加えた範囲に対応する領域、換言すれば車両10の車両長方向の中心軸の両側に(α/2+β)の幅を有する領域であり、対象物がそのまま存在し続ければ衝突の可能性が高い接近判定領域である。領域AR2およびAR3は、接近判定領域よりX座標の絶対値が大きい(接近判定領域の横方向外側の)領域であり、この領域にある対象物は接近判定領域へと侵入するおそれがある侵入判定領域である。接近判定領域および侵入判定領域は、距離値Z1で制限される。
【0062】
一例では、上記の所定範囲は、撮像範囲AR0とすることができる。この場合、ステップS57で判定された対象物について、警報出力を行えばよい。他の例では、所定範囲は、領域AR1〜AR3を含む領域であり、判定された対象物が、車両10から該距離Z1の範囲内に存在する場合に、該対象物について警報出力を行うと判定することができる。距離Z1は、固定値としてもよいし、対象物の車両10に対する相対速度Vsに所定時間Tを乗算した値でもよい。また、さらに他の例では、所定範囲を、接近判定領域AR1に限定してもよい。
【0063】
図4に戻り、ステップS15において、上記の警報出力の判定結果が、警報出力を行うとの判定であれば(S15がYes)、ステップS17に進み、警報を出力する。警報出力は、この実施形態では、表示装置4上に表示された画像(この実施例では、ステップS52で取得されたグレースケール画像)中の対象物に、強調枠を表示すると共に、音声による出力がなされる。
【0064】
図7には、強調枠による警報出力の一例を模式的に示す。ここでは、該対象物は歩行者である。撮像画像から検出された歩行者を囲むように強調枠101を重畳表示することにより、警報出力を行っている。当然ながら、他の表示形態を用いて、警報出力を行ってもよい。
【0065】
図4に戻り、警報出力が行われたので、運転者が表示装置4上に視線移動することが予測され、よって、車両のふらつきの可能性が予測される。したがって、ステップS23において、アシスト量を低減するため、ステアリングダンパ8の制御値に第2の値を設定する。
【0066】
他方、警報出力を行うとの判定がなされなければ(S15がNo)、ステップS21において、アシスト量の低減を行わないように、ステアリングダンパ8の制御値に第1の値を設定する。ステップS25において、第1または第2の値が設定された制御値を、EPSユニット6に送出する。これにより、該制御値に従ったステアリングダンパ8の制御が行われる。
【0067】
前述したように、第2の値は、アシスト量の低減を指示するための値であり、第1の値は、このような低減を行わずに通常のアシスト量を指示するための値である。したがって、警報出力が行われていない間は、前述したように、電動パワーステアリング装置によって算出された目標電流に基づくアシスト量で通常通りハンドル操作がアシストされるが、警報出力が行われている間は、該アシスト量が所定量だけ低減されるので、ハンドル操作が重くなる。これにより、警報出力に応じて起こりうる車両のふらつきを事前に防止することができる。
【0068】
図8は、この発明の他の実施形態に従う、画像処理ユニット2によって実行されるプロセスのフローチャートを示す。該プロセスは、所定の時間間隔で実行される。このプロセスは、前述した、対象物の位置に応じてステアリングホイール21のアシスト量を変更する形態に基づいており、ここでは、対象物位置として、対象物が車両から見て左右のどちら側に存在するか、を用いている(第1の形態)。
【0069】
図4と異なるのは、ステップS18が追加されている点である。図5を参照して述べたように、撮像画像中から対象物は検出されているので、該対象物が、車両に対し、左右のどちらに存在するかは判明している。たとえば、図6を参照すると、対象物が領域AR1に存在すれば、該対象物は車両の進行方向に存在しており、対象物が領域AR2に存在すれば、該対象物は車両の右側に存在しており、対象物が領域AR3に存在すれば、該対象物は車両の左側に存在していると判定することができる。
【0070】
ステップS18では、車両の操舵方向と、対象物の車両から見た方向とが、一致するかどうかを判断する。すなわち、対象物が領域AR2に存在している場合、右方向に旋回する操舵が行われていれば、一致すると判断される。また、対象物がAR3に存在している場合、車両が左方向に旋回する操舵が行われていれば、一致すると判断される。車両がどちらに旋回する操舵が行われているかは、操舵角センサ45(図3)の出力から判断することができる。
【0071】
こうして、操舵方向と、対象物の車両から見た方向とが一致すれば(S18がYes)、ステップS23に進み、前述したように、ステアリングダンパ8の制御値に第2の値を設定して、ステアリングホイール21のアシスト量を低減し、ハンドル操作を重くする。こうすることにより、運転者が、警報出力が行われた対象物を実空間上で認知しようとして視線を移動したことに伴う車両のふらつきを回避することができる。
【0072】
他方、操舵方向と、対象物の車両から見た方向とが一致しなければ(S18がNo)、ステップS21に進み、ステアリングダンパ8の制御値に第1の値を設定する。アシスト量の低減は行われず、通常のアシスト量がステアリングホイール21に作用されるようにする。
【0073】
代替的に、ステップS18の判断がNoの場合、ステアリングダンパ8の制御値に第3の値を設定するステップを設け、該第3の値がEPSユニット6に送出されるようにしてもよい。第3の値は、アシスト量を低減する量が、第1の値よりも大きいが、第2の値よりも小さいように設定される。こうすることにより、対象物が車両の周辺に存在するためにアシスト量の低減は行うものの、操舵方向と対象物の存在する方向が一致した場合は、一致しない場合に比べて、アシスト量の低減量を大きくすることができる。
【0074】
なお、ステップS18において、対象物が領域AR1上に存在し、かつ車両が直進走行しているときにも、方向は一致する。当該図では、この場合にステップS23が実行されるようになっているが、代替的に、ステップS21を実行するようにしてもよい。
【0075】
前述したように、対象物の移動方向および(または)相対速度を考慮する第2の形態の場合には、抽出された対象物の追跡処理を実行することによって、対象物の移動方向および相対速度を表す相対移動ベクトルを算出することができる。この詳細な手法は、特開2001−6096号公報に記載されている。該相対移動ベクトルに基づいて、アシスト量を変更してもよい。たとえば、ステップS18において、相対移動ベクトルにより、対象物が、接近判定領域AR1に向けて移動しているかどうかを判断し、この判断がYesならばステップS23に進み、この判断がNoならばステップS21に進む(もしくは、前述したように、第3の値に設定するステップに進む)ことができる。
【0076】
もしくは、ステップS18において、対象物が、所定値以上の相対速度で接近判定領域AR1に向けて移動しているかどうかを判断し、この判断がYesならばステップS23に進み、この判断がNoならばステップS21に進む(もしくは、前述したように、第3の値に設定するステップに進む)ことができる。
【0077】
また、対象物の距離を考慮する第3の形態の場合、たとえばステップS18において、対象物の距離が所定値以下かどうかを判断し、この判断がYesならばステップS23に進み、この判断がNoならばステップS21に進む(もしくは、前述したように、第3の値に設定するステップに進む)ことができる。
【0078】
図9は、この発明のさらに他の実施形態に従う、画像処理ユニット2によって実行されるプロセスのフローチャートである。該プロセスは、所定の時間間隔で実行される。このプロセスは、視線検知およびナビゲーションによる経路案内をも考慮した形態となっている。
【0079】
ステップS11〜S15、S17は図4のものと同じであり、ステップS15で警報出力を行うとの判定であれば、ステップS16で第1のフラグFlag1に値1をセットし、警報出力を行わないとの判定ならば、ステップS18で第1のフラグFlag1にゼロをセットする。
【0080】
ステップS21において、視線検知ユニット9によって検知された運転者の視線の方向を示すデータを取得する。ステップS23において、該視線方向が、表示装置4に向かっているか否かを判断し、向かっていれば(S23がYes)、ステップS25で第2のフラグFlag2に値1をセットし、向かっていなければ(S23がNo)、ステップS27で第2のフラグFlag2にゼロをセットする。
【0081】
ステップS31において、ナビゲーションユニット5によって、車両の進行経路に関する案内が表示装置4上に出力されているか否かを判定する。経路案内として、任意のものを含めることができ、たとえば、前述したように一時停止案内や交差点の案内等を含めることができる。経路案内に関する情報が表示装置4上に出力されているならば(S31がYes)、ステップS33で第3のフラグFlag3に値1をセットし、出力されていなければ(S31がNo)、ステップS35で第3のフラグFlag3にゼロをセットする。
【0082】
ステップS41において、第1〜第3のフラグFlag1〜3の少なくとも1つに値1がセットされているか否かを判断する。少なくとも1つのフラグに値1がセットされていれば(S41がYes)、ステップS23において、前述したように、ステアリングダンパ8の制御値に第2の値を設定し、アシスト量を低減してハンドル操作を重くする。すべてのフラグがゼロであれば(S41がNo)、ステアリングダンパ8の制御値に第1の値を設定する。
【0083】
こうして、運転者の視線の方向、ナビゲーションの経路案内、撮像を介した警報出力に基づいて、車両のふらつきが予測される状態が判定されたならば、アシスト量を低減してハンドル操作を重くするので、車両のふらつきを事前に防止することができる。
【0084】
なお、アシスト量を低減する量を変更する形態は、上記のものに限定されるものではなく、以下のような形態も可能である。
【0085】
一実施形態では、検出された対象物として、歩行者が検出されたか否かに応じて、アシスト量を低減する量を変更してもよい。たとえば、歩行者が検出されない場合のアシスト量に比べて、歩行者が検出された場合のアシスト量が低減されるようにする。これにより、歩行者が検出された場合の方が、ハンドル操作が重くなり、車両のふらつきを防止することができる。この場合、たとえば図8のステップS18で、対象物が歩行者か否かを判断し、歩行者でなければ、ステップS21に進み、歩行者であれば、ステップS23に進むことができる。
【0086】
さらなる一実施形態では、検出された対象物の種別に応じて、アシスト量を低減する量を変更してもよい。たとえば、検出された対象物が歩行者である場合のアシスト量に比べて、検出された対象物が自転車または動物である場合のアシスト量が低減されるようにする。自転車および動物は、歩行者に比べて移動速度が速く、また、移動方向も急変するおそれがある。したがって、自転車および動物のいずれかが検出された場合には、ハンドル操作を重くして、車両のふらつきを防止することができる。この場合、たとえば図5のステップS57の対象物判定処理において、対象物が歩行者か動物かを判定する処理に加え、対象物が自転車かどうかを判定する処理が行われる。この判定処理は、任意の適切な手段で行うことができる。たとえば、自転車を運転する運転者の両足の周期的な動きに着目し、対象物を時間追跡して、両足に相当するとみなすことができる2つの縦長の画像領域が垂直方向に交互に動くことが検出されたならば、自転車と判定することができる。そして、たとえば図8のステップS18において、対象物が歩行者であれば、ステップS21に進み、対象物が自転車または動物であれば、ステップS23に進むことができる。
【0087】
さらなる一実施形態では、ナビゲーション装置から、車両が走行している地域に関する情報を取得し、該情報に応じてアシスト量を低減する量を変更してもよい。たとえば、ナビゲーション装置から、車両が現在走行している地域が、或る程度の数の人口が存在する「街」かどうかを示す情報を取得する。「街」は、任意の情報源に基づいて、任意の適切な条件を満たす地域として定義されることができる。たとえば、日本の場合、市区町村の単位で、人口密度が所定値以上であれば「街」に分類し、人口密度が該所定値より小さければ、「街」以外に分類することができる。また、人口密度に加え、その地域への就業や通学のための流入人口を考慮してもよい。こうして、各市区町村について、「街」か否かが決定されて、この情報が、たとえば地図情報に予め記憶されることができる。
【0088】
そして、ナビゲーション装置から取得した情報が「街」を示している場合のアシスト量を、「街」を示していない場合のアシスト量よりも低減されるようにする。こうして、比較的人が多い地域では、ハンドル操作を重くして、車両のふらつきを防止することができる。この場合、たとえば図9のステップS31において、前述した経路案内が出力中か否かの処理に加え、車両の現在位置が「街」かどうかの情報をナビゲーション装置から取得する。経路案内が出力中、または「街」であれば、ステップS33に進み、経路案内が出力されておらず、かつ「街」でなければ、ステップS35に進むことができる。
【0089】
上記の実施形態では、ナビゲーション装置に備えられた表示装置を用いている。上記に述べたように、本願発明では、このような運転者による視線移動の必要な表示装置を用いても、車両のふらつきを防止することができる。しかしながら、表示装置として、前述したようなHUDを用いてもよい。
【0090】
さらに、上記の実施形態では、遠赤外線カメラを用いているが、本願発明は、他のカメラ(たとえば、可視カメラ)にも適用可能である。
【0091】
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
1R,1L 赤外線カメラ(撮像手段)
2 画像処理ユニット
3 スピーカ
4 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された撮像装置によって撮像した画像に基づいて該車両の周辺の対象物を検出する手段と、該撮像画像に基づく表示画像を、該車両の乗員が視認可能なように表示装置上に表示する表示手段と、前記対象物が車両から所定範囲内にあるとき、前記表示手段を用いて、前記表示画像上に該対象物に関する警報を行う警報手段と、を有する車両の周辺監視装置であって、
該車両には、運転者によるステアリングホイールの操舵を補助するパワーステアリング装置が備えられており、
さらに、少なくとも前記警報手段が前記警報を発している間にわたり、前記ステアリングホイールの操舵を補助するアシスト量を低減するように、前記パワーステアリング装置を制御する制御手段を備える、車両の周辺監視装置。
【請求項2】
前記表示装置は、運転者が、水平方向に所定距離以上の視線移動が必要な位置に配置されている、
請求項1に記載の車両の周辺監視装置。
【請求項3】
前記制御手段は、さらに、前記検出した対象物の位置に応じて、前記アシスト量を低減する量を変更する、
請求項1または2に記載の車両の周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−194966(P2011−194966A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62267(P2010−62267)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】