車両の外装材、同外装材を具備する車両の吸音構造、並びに同吸音構造の吸音周波数特性調整方法
【課題】不織布を基材とし同不織布では吸音することが困難な低周波数帯域の騒音が車室内に伝達されることを好適に抑制することのできる車両の外装材を提供する。
【解決手段】タイヤハウス14の外面には不織布からなるフェンダーライナ20が取り付けられている。このフェンダーライナ20にはタイヤハウス14の外面側に凸設されて同外面に固定される取付部21が複数形成されている。これら取付部21はボルト30及びナット31により防振材40を介してタイヤハウス14に固定されている。このようにフェンダーライナ20がタイヤハウス14の外面に取り付けられることにより、同フェンダーライナ20とタイヤハウス14の外面との間には所定層厚Sを有した空気層50が形成されている。
【解決手段】タイヤハウス14の外面には不織布からなるフェンダーライナ20が取り付けられている。このフェンダーライナ20にはタイヤハウス14の外面側に凸設されて同外面に固定される取付部21が複数形成されている。これら取付部21はボルト30及びナット31により防振材40を介してタイヤハウス14に固定されている。このようにフェンダーライナ20がタイヤハウス14の外面に取り付けられることにより、同フェンダーライナ20とタイヤハウス14の外面との間には所定層厚Sを有した空気層50が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフェンダーライナやアンダープロテクタ等、車両の外面を覆うようにして同外面に取り付けられる車両の外装材、同外装材を備えた車両の吸音構造、並びに同吸音構造の吸音周波数特性を調整する吸音周波数特性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のタイヤハウスにはその外面に覆うようにしてフェンダーライナ(ホイールハウスライナともいう)が取り付けられている。こうしたフェンダーライナは、通常、合成樹脂等の耐錆性を有した材料によって形成されており、これによりタイヤハウスの外面を保護することで車両走行時のチッピングによりタイヤハウスが損傷しその損傷部分に錆が発生することを抑制することができる。また、フェンダーライナは、このようにタイヤハウスの外面を保護する機能の他、チッピングにより生じる衝突音(チッピングノイズ)や路面とタイヤとの擦過音(パターンノイズ)等、車両走行時に発生する騒音を吸収してこれが車室内に伝達されることを抑制する吸音材としての機能も兼ね備えている。
【0003】
ところで、こうしたフェンダーライナの形成材料としては従来より硬質の合成樹脂シートが広く用いられているが、近年では例えば特許文献1に記載されるように、不織布によってこのフェンダーライナを形成するようにした例もみられる。一般に、不織布は合成樹脂シートと比較して硬度が低く可撓性に富む特性を有しているため、チッピングノイズの吸収はもとよりその発生自体を抑制することができ、またその他の騒音についてもこれを吸音して車室内における静粛性の向上に寄与することができる。
【特許文献1】特開2002−348767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不織布は、車両の走行に伴って生じる種々の周波数帯域の騒音のうち、比較的高い周波数帯域(例えば700Hz〜5kHz)の騒音に対しては、上述したように極めて高い吸音効果が得られる。即ち、こうした不織布にあっては、これに入射する騒音によりその各繊維を振動させてそれらの間に摩擦熱を生じさせることにより、騒音の振動エネルギを最終的に熱エネルギに変換することによりその吸音作用が得られる。従って、こうした原理上、波長の短い高周波数帯域の騒音であれば、不織布の各繊維をより激しく振動させてその多くを熱エネルギに変換することができる、吸音率も自ずと高いものとなる。
【0005】
しかしその一方、低周波数帯域の騒音(例えば700Hz未満)は、その波長が長いため、これが不織布に入射しても上述したような繊維の振動は生じ難く、従って高い吸音効果を期待することはできない。このように不織布により形成される従来のフェンダーライナにあっては、低周波数帯域の騒音が車室内に伝達することを抑制する点において改善の余地を残すものとなっていた。尚ここでは、タイヤハウスの外面を覆うフェンダーライナを例に説明したが、例えば車両の下面を覆うアンダープロテクタ等、車両の他の部位に取り付けられる外装材にあってもこうした課題は概ね共通したものとなっている。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、不織布では吸音することが困難な低周波数帯域の騒音が車室内に伝達されることを好適に抑制することのできる車両の外装材を提供することにある。また併せて、不織布を基材とする外装材を備えた車両吸音構造においてその吸音周波数特性を、不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を吸音することができるように、その吸音周波数特性を簡易な方法にて調整することのできる車両の吸音構造、並びにその吸音周波数特性調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段及びその作用について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、不織布を基材として成形され車両の外面を覆うように同外面に取り付けられる車両の外装材であって、車両の外面との間に所定層厚を有した空気層を形成すべく車両の外面側に凸設されて同外面に固定される凸部が形成されてなるものをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、車両の外面と外装材との間に形成される空気層を通じて不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外から外装材を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができるようになる。また、この空気層により効果的に吸音される騒音の周波数帯域は同空気層の層厚に応じて変化する特性を有している。具体的には、空気層の層厚が大きい場合ほど、より低い周波数帯域の騒音についてその吸音率が向上する。この点、上記構成によれば、凸部の高さを適宜変更して空気層の層厚を調整する、といった簡易な方法を通じて、外装材の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができる。尚、上記凸部には、車両の外面に対してボルト等を介して取り付けられるものの他、同外面に対して単に当接するものも含まれる。またその形状についても、外装材の表面に沿って延びる凸条のものも含まれる。
【0009】
また、こうした凸部は、請求項2に記載されるように、これを複数形成することが望ましい。
請求項3に記載の発明は、請求項2項に記載の車両の外装材において、前記凸部はその高さが異なるものを含むものであるとしている。
【0010】
同構成によれば、空気層の層厚を外装材の位置に応じて異なるものとすることができ、空気層において吸音可能な騒音の周波数帯域を拡大させることができる。その結果、空気層によって騒音をより効果的に吸音することができ、その吸音効果を一層高めることができるようになる。また、このように異なる層厚を有する空気層を形成することにより、空気層が層厚を一定とした構成と比較して、空気層全体における減衰率が大きくなるため、同空気層における共鳴現象についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の外装材において、前記凸部は弾性部材を介して車両の外面に固定されるものであるとしている。
同構成によれば、外装材は車両の外面に対して弾性支持されることになるため、同外装材の取付部分である凸部を介して車室内に振動が伝達されることを抑制することができる。従って、こうした振動の伝達に起因する騒音の発生についてもこれを好適に抑制することができるようになる。尚、上記弾性部材としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム共重合物、イソブチレン・イソプレン共重合物、エチレン・プロピレン・ジエン共重合物、或いはラバーコルク等の減衰率の高い材料を選択することが望ましい。
【0012】
尚、不織布により吸音が困難な低周波数帯域の騒音を好適に吸音して減少させるうえでは、請求項5に記載される発明によるように、空気層の層厚が10〜50mmとなるように凸部の高さを設定することが望ましい。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両の外装材において、前記不織布は交絡状態にある複数の繊維が融着材にて融着された断面網目状構造を有してなるとしている。
【0014】
同構成では、不織布が複数の繊維が交絡状態にて融着された断面網目状構造を有しているため、同不織布の内部には各繊維によって囲まれた微少な空間(セル)が複数存在している。従って、この不織布に入射する騒音、特に比較的高い周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができる。従って、上述した空気層による低周波数帯域の騒音吸音作用と併せて、高周波数帯域を含めた更に広帯域の騒音を吸音することができ、外装材から車両のボディを介して車室内に伝達される騒音を効果的に抑制することができるようになる。尚、上記繊維及び融着材の形成材料としては、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の炭化水素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、或いはこれらの混合物を採用することができる。またここで、融着材の形成材料としては、上記繊維の形成材料として選択されるものよりも低い融点を有した合成樹脂を選択する。具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の比較的融点の低い合成樹脂を採用することが好ましい。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両の外装材において、前記融着材は繊維状を有してなるとしている。
同構成では、複数の繊維が同じく繊維状を有する融着材にて融着されるため、それら繊維により形成されるセルの数が増大するとともに、その大きさについても極めて小さなものから比較的大きなものまで種々のものが存在するようになる。従って、不織布により吸音される騒音の周波数帯域を更に拡大することができ、車室内に騒音が伝達されることを一層効果的に抑制することができるようになる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の車両の外装材において、前記不織布は外部に露出する表層と該表層よりも車体の外面側に位置する内層とを含む積層構造をなし、前記表層は前記内層よりも繊維密度が高く設定されてなるものとしている。
【0017】
同構成によれば、外部に露出する表層の繊維密度を内層よりも高くしてその剛性及び硬度を高めるようにしているため、この表層の耐チッピング性を高めることができ、外装材についてその耐久性の向上を図ることができるようになる。尚、ここでの積層構造とは、各層について明確な界面が存在するものはもとより、不織布において車両の外面側に位置する部分から外部に露出する部分にかけてその繊維密度が徐々に高くなるように傾斜特性を有して構成されたもの、即ち明確な層界面が存在していないものも含まれる。
【0018】
ところで、このように繊維密度の異なる表層及び内層を有する不織布を採用した場合、車両や外部の熱により温度上昇したときに、表層及び内層の熱膨張量差に起因して外装材が変形してしまうことが懸念される。そして、こうした変形に伴って空気層の層厚が大きく変化することがあると、その空気層によって効果的に吸音可能な騒音の周波数帯域と実際に発生している騒音の周波数帯域とが異なるものとなるため好ましくない。
【0019】
この点、この請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の車両の外装材において、前記不織布は前記表層と線膨張係数の等しい材料により形成される表層を前記表層とは別に有しこれら一対の表層の間に前記内層を介在させた三層構造を有してなる、といった構成を採用することにより、上述したような外装材の熱変形を抑制することができ、これに起因して外装材の吸音効果が低下してしまうことを極力回避することができるようになる。尚、各表層は線膨張係数のみならず、それらの厚さも等しくすることが上述したような熱変形を抑制する上では好ましい。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両の外装材において、前記凸部は前記車両の外面に取り付けられる取付部であるとしている。
同構成によれば、車両走行時の振動により凸部と車両の外面との間での衝突が繰り返されて異音が生じたり、或いは車両走行時の振動や熱変形等により凸部と車両の外面との間に隙間が形成されて空気層の層厚が変化したりすることを抑制することができる。従って、外装材を介して車室内に騒音が伝達されることをより確実に抑制することができるようになる。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両の外装材において、タイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられるとしている。
こうした車両の外装材のうち、特にタイヤハウスの外面に取り付けられる外装材、即ちフェンダーライナ(ホイールハウスライナ)は、タイヤに近接して配設されているため、チッピングノイズはもとより、低周波数成分を多く含むパターンノイズが入射されやすい傾向にある。こうした傾向にあるフェンダーライナにあっても、上記請求項1〜10にそれぞれ記載される構成を適用することにより、低周波数帯域の騒音を効果的に吸音して車室内に伝達される騒音の低減を図ることができる。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の外装材を具備し、同外装材が車両の外面に取り付けられてなる車両の吸音構造をその要旨としている。
同構成によれば、車両の外面と外装材との間に形成される空気層を通じて不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外から外装材を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができるようになる。また、この空気層により効果的に吸音される騒音の周波数帯域は同空気層の層厚に応じて変化する特性を有している。具体的には、空気層の層厚が大きい場合ほど、より低い周波数帯域の騒音についてその吸音率が向上する。この点、上記構成によれば、凸部の高さを適宜変更して空気層の層厚を調整する、といった簡易な方法を通じて、外装材の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができる。
【0023】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の車両の吸音構造において、前記外装材はタイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられるとしている。
車両の外装材のうち、特にタイヤハウスの外面に取り付けられる外装材、即ちフェンダーライナ(ホイールハウスライナ)は、タイヤに近接して配設されるため、チッピングノイズはもとより、低周波数成分を多く含むパターンノイズが入射されやすい傾向にある。こうした傾向にある車両の吸音構造にあっても、上記請求項12に記載の構成を適用することにより、車体側には何ら変更を加えることなく簡易な方法を通じて車両騒音の周波数特性に適した吸音周波数特性を有する車両の吸音構造を構築することができる。
【0024】
請求項14に記載の発明は、請求項12又は請求項13に記載の車両の吸音構造についてその吸音周波数特性を調整する吸音周波数特性調整方法であって、前記外装材に入射される車両騒音の周波数特性に基づいて前記凸部の高さが異なる複数種の外装材のうちから特定のものを選択するようにしたことをその要旨としている。
【0025】
同調整方法によれば、車両の外面と外装材との間に形成される空気層により不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音について、凸部の高さが異なる複数種の外装材のうちから特定のものを選択するといった簡易な方法を通じて、車体側には何ら変更を加えることなく車両吸音構造の吸音周波数特性を騒音の周波数特性に適したものに調整することができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外から外装材を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができる。また、凸部の高さを適宜変更する、といった簡易な方法を通じて、外装材の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明にかかる車両の外装材をフェンダーライナとして具体化した一実施形態について説明する。
図1は車両の前部側面図である。同図1に示されるように、車両11の前部において、その下方にはタイヤ13を収容するタイヤハウス14が形成されている。このタイヤハウス14はタイヤ13の外周面及び内面の一部を覆う形状を有するように鋼板を成形したものであり、その外面には防錆剤が塗布されている。このタイヤハウス14の外面には、これを覆うようにしてフェンダーライナ20が取り付けられている。このフェンダーライナ20は、チッピングによってタイヤハウス14が損傷しその損傷部分に錆が発生することを抑制する機能を有している。また、フェンダーライナ20は、このようにタイヤハウス14の外面を保護する機能の他、チッピングノイズやパターンノイズを吸音してそれらが車室内に伝達されることを抑制する吸音材としての機能も兼ね備えている。
【0028】
図2はフェンダーライナ20を車両11の内側から見た状態を示す同フェンダーライナ20の斜視図である。同図2に示されるように、フェンダーライナ20はタイヤハウス14の外面に沿った形状となるように不織布を成形したものである。このフェンダーライナ20には、車両11のサスペンション(図示略)との干渉を避けるための切り欠き28が形成されている他、タイヤハウス14に取り付けられた状態においてタイヤ13の外周面と対向する部分にはその周方向に略等間隔を隔てて4つの取付部21が形成されている。
【0029】
図3(a)はフェンダーライナ20がタイヤハウス14の外面に取り付けられた状態を示す断面図であり、図2のA−A線に沿った断面に対応している。また、図3(b)は図3(a)のB部分を示す拡大断面図である。同図3に示されるように、各取付部21はいずれもフェンダーライナ20を部分的にタイヤハウス14側に凸設させることにより形成されている。これら取付部21はその断面が略台形状をなしており、タイヤハウス14に最も近接した位置には平坦部21aが形成されている。更に、この平坦部21aとタイヤハウス14との間には防振材40が介在されている。この防振材40は取付部21を介して車室内に振動が伝達されることを抑制するためのものであり、種々あるゴム材料の中で減衰率の比較的高いブタジエンゴムにより形成されている。また、図3(b)に示されるように、取付部21、防振材40、タイヤハウス14にはそれぞれ挿通孔21b,40a,14aが形成されている。そして、取付部21は、各挿通孔21b,40a,14aに挿通されたボルト30及びこれに螺合されたナット31による締結を通じて防振材40とともにタイヤハウス14の外面に取り付けられている。
【0030】
このようにしてフェンダーライナ20がタイヤハウス14の外面に取り付けられることにより、同フェンダーライナ20において取付部21の形成部位を除く部分とタイヤハウス14の外面との間には、所定の層厚Sを有する空気層50が形成されることとなる。この空気層50は、不織布だけでは吸音することが困難な比較的低い周波数帯域(例えば700Hz以下)の騒音を吸収する機能を有している。またここで、空気層50を通じて効果的に吸音可能な周波数帯域はその層厚Sを適宜変更する設定することができる。
【0031】
図4は、空気層50の層厚Sを「10mm」、「20mm」、「50mm」とした場合並びに空気層50が形成されていない場合おける騒音の吸音率を周波数毎に示すグラフである。同図4に示されるように、一般に、吸音率の最も高くなる周波数帯域は、空気層50の層厚Sが大きくなるほど低くなる傾向がある。本実施の形態では、ピッチングノイズやパターンノイズ等、タイヤハウス14近傍で発生する騒音の周波数特性に基づいて、この層厚Sを「20mm」に設定している。そして、取付部21は、空気層50の層厚Sが上記所定値となるように、防振材40の厚さを考慮してその高さh(図3参照)が設定されている。また、このように空気層50の吸音周波数特性は、取付部21の高さhを適宜変更することにより容易に調整することができる。
【0032】
図5は、フェンダーライナ20の断面構造を示す模式図である。同図5に示されるように、フェンダーライナ20は合成樹脂からなる複数の繊維を交絡させた状態で融着させた不織布によって形成されている。また、フェンダーライナ20は、外部に露出してタイヤ13に対面する表層22と、この表層22よりも空気層50側に位置する内層23とを含む断面二層構造を有している。そして、表層22は内層23よりも繊維密度が高く設定されており、従って表層22は内層23よりもその硬度及び剛性が高いものとなっている。また、このように繊維密度を高くすることにより、表層22は内層23よりもその表面の表面粗さが小さくなり、また平滑度についても向上するようになる。
【0033】
以下、これら表層22及び内層23の構造について更に詳細に説明する。
まず、表層22の構造について説明する。表層22は、主繊維221及び融着用繊維222により構成され、その厚さが例えば2〜4mmの範囲に設定されている。この表層22は、主繊維221と融着用繊維222とが相互に交絡した状態で融着用繊維222を周囲の繊維と融着させることによりその断面が網目状を呈している。これにより、表層22の内部には、主繊維221及び融着用繊維222により囲まれた極めて微小な空間、即ちセル223が複数形成されることとなる。
【0034】
主繊維221は、ポリプロピレン及びポリエステルにより形成されている。一方、融着用繊維222は、主繊維221、即ち上記合成樹脂の混合物よりも低い融点の合成樹脂、具体的にはポリプロピレンにより形成されている。因みに、この主繊維221及び融着用繊維222の少なくとも一方は、その外表面に例えばカーボン等の着色剤を付着させることにより所定の色(例えば黒色)に着色されている。
【0035】
また、主繊維221及び融着用繊維222の径について、これが10μm未満の場合には表層22の強度が低下するおそれがあり、特に融着用繊維222の径が10μm未満の場合には表層22の成形時に融着用繊維222が溶断されるなどして繊維としての形状を止めることができずにセル223の形成に寄与できなくなることが懸念される。一方、主繊維221及び融着用繊維222の径が50μmを超える場合には、表層22の内部における主繊維221、融着用繊維222の占有体積が大きくなり、微小なセル223を複数形成することが困難になる。従って、主繊維221及び融着用繊維222の径はいずれも10〜50μmの範囲に設定するのが好ましい。また、主繊維221及び融着用繊維222の長さについては、フェンダーライナ20の製造工程における加工安定性を高めるために、いずれも10〜100mmの範囲に設定することが好ましい。
【0036】
また、表層22における融着用繊維222の含有量について、これが20重量%未満の場合には、フェンダーライナ20の形状安定性を維持することが困難になり、同含有量が60重量%を超える場合には、表層22の強度維持に重要な役割をする主繊維221の含有量が相対的に低下し、フェンダーライナ20の強度及び耐久性を高く維持することが困難になる。従って、この融着用繊維222の含有量は20〜60重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0037】
次に、内層23の構造について説明する。内層23は主繊維231及び融着用繊維232とから構成され、その厚さが表層22よりも厚くなるように、例えば4〜12mmの範囲に設定されている。この内層23は、主繊維231と融着用繊維232とが相互に交絡した状態で融着用繊維232をその周囲の繊維と融着させることによりその断面が網目状を呈している。これにより、表層22と同様、内層23の内部には、主繊維231及び融着用繊維232により複数のセル233が形成されることとなる。
【0038】
また、主繊維231は、ポリアミド樹脂により形成されている。一方、融着材として機能する融着用繊維232は、主繊維231、即ちポリアミド樹脂よりも低い融点の合成樹脂、具体的には表層22の主繊維221と同様、ポリプロピレンにより形成されている。また、主繊維231及び融着用繊維232の径、長さ、及び含有量については、表層22と同様の理由により、それぞれ順に10〜50μm、10〜100mm、20〜60重量%の範囲に設定することが好ましい。但し、この内層23は表層22よりもその繊維密度を低く設定する必要がある点は上述したとおりである。
【0039】
次に、フェンダーライナ20の製造方法について説明する。
まず、主繊維221と融着用繊維232とを含み表層22となる繊維集合体を形成するとともに、主繊維231と融着用繊維232とを含み内層23となる繊維集合体を形成する。ここで、これら各繊維集合体は、例えば次のような手順で形成される。まず、主繊維221に融着用繊維232を散布してこれを主繊維221中に略均等に分散させる。そして、これら主繊維221と融着用繊維232とをニードルパンチ処理を通じて相互に交絡させる。これにより表層22となる繊維集合体が形成される。また、内層23となる繊維集合体についても同様の手順により形成される。
【0040】
次に、このように形成された各繊維集合体を重ね合わせ、ニードルパンチ処理を通じてそれら繊維集合体における接合部近傍の繊維を交絡させることにより、各繊維集合体がその接合面を境にして容易に分離しないようにする。続いて、この各繊維集合体を予備加熱処理する。この予備加熱処理は、融着用繊維222,232を形成する材料の融点以上であり、表層22の主繊維221及び内層23の主繊維231を形成する材料の融点未満の温度範囲で行われる。そして、この予備加熱処理が施された繊維集合体の温度が低下する前に、これを成形機の型内で加圧しながら冷却する。これら予備加熱処理、加圧冷却処理を通じて、表層22及び内層23の融着用繊維222,232が周囲の繊維と融着した状態となり、フェンダーライナ20は4つの取付部21を有してその全体がタイヤハウス14の外面に沿った所定の形状に成形されることとなる。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)フェンダーライナ20はタイヤ13に近接して配設されるため、チッピングノイズはもとより、低周波数成分を多く含むパターンノイズが入射されやすい傾向にある。この点、上記実施形態によれば、タイヤハウス14の外面とフェンダーライナ20との間に形成される空気層50を通じて不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外からフェンダーライナ20を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができるようになる。また、取付部21の高さhを適宜変更して空気層50の層厚Sを調整する、といった簡易な方法を通じて、フェンダーライナ20の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができる。
(2)また、フェンダーライナ20を構成する不織布は、複数の繊維が交絡状態にて融着され、大きさの異なる複数のセル223,232を有した断面網目状を呈するものであるため、この不織布に入射する騒音、特に比較的高い周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができる。従って、空気層50による低周波数帯域の騒音吸音作用と併せて、高周波数帯域を含めた更に広帯域の騒音を吸音することができ、フェンダーライナ20からタイヤハウス14等、車両のボディを介して車室内に伝達される騒音を効果的に抑制することができるようになる。
(3)更に、表層22及び内層23において主繊維221,231を融着する融着材として繊維状のものを採用するようにしているため、セル223,233の数が増大するとともに、その大きさについても極めて小さなものから比較的大きなものまで種々のものが存在するようになる。従って、不織布により吸音される騒音の周波数帯域を更に拡大することができ、車室内に騒音が伝達されることを一層効果的に抑制することができるようになる。
(4)加えて、外部に露出する表層22の繊維密度を内層23よりも高くしてその剛性及び硬度を高めるようにしているため、表層22の耐チッピング性を高めることができ、フェンダーライナ20についてその耐久性の向上を図ることができるようになる。またこのように、表層22の繊維密度を高めることにより、フェンダーライナ20の表面における表面粗さを小さくするとともにその平滑度を向上させることができ、例えば泥や雪等の付着についてもこれを好適に抑制することができる。
(5)上記実施形態では、各取付部21をタイヤハウス14の外面に固定するようにしている。このため、例えばフェンダーライナ20に複数の凸部を形成してこれらをタイヤハウス14の外面に単に当接させる一方、フェンダーライナ20をその凸部以外の部分でタイヤハウス14の外面に取り付けるようにした構成とは以下の点で異なる。即ち、本実施形態によれば、車両走行時の振動により凸部とタイヤハウス14の外面との間での衝突が繰り返されて異音が生じたり、或いは車両走行時の振動や熱変形等により凸部とタイヤハウス14の外面との間に隙間が形成されて空気層50の層厚Sが変化したりすることを抑制することができる。従って、フェンダーライナ20を介して車室内に騒音が伝達されることをより確実に抑制することができるようになる。
(6)また、フェンダーライナ20の取付部21はタイヤハウス14の外面に防振材40を介して弾性支持されているため、この取付部21を介して車室内に振動が伝達されることを抑制することができる。従って、こうした振動の伝達に起因する騒音の発生についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
【0042】
尚、上記実施形態は以下のようにこれを適宜変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、空気層50の層厚Sを「20mm」として一定に設定するようにしたが、これはフェンダーライナ20が取り付けられる車両における騒音の周波数特性に応じて10〜50mmの範囲で適宜変更することができる。また、異なる層厚Sの空気層50が形成されるように、フェンダーライナ20に高さの異なる取付部21を形成することもできる。具体的には、図6に示されるように、取付部21の高さhを異なる値h1,h2(h1>h2)に設定することにより、空気層50の層厚Sをその位置によって異なる値S1,S2に設定することができる。更にこの場合、図7に示されるように、取付部21の高さhを、フェンダーライナ20の面に沿う方向において順に大きく或いは小さくなる異なる値h1,h2,h3(h1>h2>h3)に設定することにより、空気層50の層厚Sを同方向において連続的に変化させることもできる。
【0043】
そして、こうした構成を採用することにより、空気層50の層厚Sをフェンダーライナ20の位置に応じて異なるものとすることができ、空気層50において効果的に吸音可能な騒音の周波数帯域を拡大させることができる。その結果、空気層50によって騒音をより効果的に吸音することができ、その吸音効果を一層高めることができるようになる。また、このように異なる層厚Sを有する空気層50を形成することにより、空気層50が層厚Sを一定とした構成と比較して、空気層50全体における減衰率が大きくなるため、同空気層50における共鳴現象についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
・上記実施形態では、フェンダーライナ20を構成する不織布についてその表層22及び内層23の繊維密度を異ならせるようにしたが、こうした構成を採用した場合、車両や外部の熱によりフェンダーライナ20が温度上昇したときに表層22及び内層23の熱膨張量差に起因してフェンダーライナ20が変形してしまうことが懸念される。そして、こうした変形に伴って空気層50の層厚Sが大きく変化することがあると、その空気層50によって効果的に吸音可能な騒音の周波数帯域と実際に発生している騒音の周波数帯域とが異なるものとなるため好ましくない。
【0044】
そこで、図8に示されるように、表層22と同様の構造を有した同じ厚さの表層24をタイヤハウス14の外面側に別に設け、それら一対の表層22,24の間に内層23を中間層として介在させた三層構造を有するように構成した不織布を採用することもできる。こうした構成を採用することにより、上述したようなフェンダーライナ20の熱変形を抑制することができ、これに起因してフェンダーライナ20の吸音効果が低下してしまうことを極力回避することができるようになる。尚、タイヤハウス14の外面側に位置する表層24は、タイヤ13側に位置して外部に露出するもう一方の表層22と略等しい線膨張係数を有するものであれば、その表層22と異なる組成を有するものであってもよい。
・上記実施形態では、ボルト30及びナット31の締結を通じてフェンダーライナ20を防振材40共々、タイヤハウス14の外面に取り付けるようにしたが、このボルト30及びナット31の締結に代えて、例えば図9に示されるように、クリップ33を用いてこれらフェンダーライナ20、防振材40をタイヤハウス14の外面に取り付けることもできる。このクリップ33は先端に係止爪が形成された一対の係止片33aを有しており、これら係止片33aを互いに近接するように弾性変形させつつ、フェンダーライナ20、防振材40、タイヤハウス14の各挿通孔21b,40a,14a(図3(b)参照)に挿通させる。そして、係止片33aの先端の係止爪をタイヤハウス14に係止させることにより、フェンダーライナ20及び防振材40をタイヤハウス14に取り付けるようにする。尚、クリップ33は合成樹脂等、弾性変形が容易な材料によって形成することが上記取付作業の効率を高める上では好ましい。
・上記実施形態では、フェンダーライナ20を部分的に凸設することにより取付部21を他の部分と一体に形成するようにしたが、こうした構成にあっては、フェンダーライナ20において外部に露出するタイヤ13側の面に凹部21c(図3参照)が形成されることとなるため、この凹部に泥や雪等が堆積することが懸念される。そこで、図10に示されるような構成を採用するようにしてもよい。即ちこの場合、図10(a)並びに同図(b)に示されるように、取付部21をフェンダーライナ20の本体とは別の部材として構成する。この取付部21は矩形の板材からなり、これを折曲形成してその中央部分が凸設させた形状を有している。そして、その凸設された部分には防振材40に当接する平坦部21aが形成され、この平坦部21aにはボルト30が挿通される挿通孔21bが形成されている。尚、この取付部21はフェンダーライナ20の本体と同様に不織布によって形成する他、例えば合成樹脂シートや金属材料によって形成することもできる。そして、この取付部21の両端部をフェンダーライナ20のタイヤハウス14の外面と対向する面に対して融着、ボルト締結、或いはクリップ止め等々適宜の方法によって固定する。こうした構成によれば、フェンダーライナ20において外部に露出するタイヤ13側の面に凹部を形成する必要がなくなるため、同面に泥や雪等が付着することを抑制することができるようになる。
・防振材40の形成材料としてブタジエンゴムを採用するようにしたが、その他、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム共重合物、イソブチレン・イソプレン共重合物、エチレン・プロピレン・ジエン共重合物、或いはラバーコルク等の減衰率の高いものを採用することもできる。
【0045】
・更に、この防振材40を省略し、取付部21の平坦部21aをフェンダーライナ20のタイヤハウス14の外面に当接させた状態で固定するようにした構成を採用することもできる。こうした構成にあっても上述した(1)〜(5)に準じた作用効果を奏することはできる。
・ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンの混合物からなる繊維により内層23を形成するようにしたが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン単体の繊維によりこれを形成することもできる。また例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等の炭化水素系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンを含めてそれらの混合物からなる繊維により内層23を形成することもできる。
・また、表層22についても、これをポリプロピレン及びポリエステルの混合物により形成するようにしたが、内層23の形成材料として先に列記した各種合成樹脂或いはその混合物によりこれを形成することもできる。
・融着用繊維222,232をポリプロピレンにより形成するようにしたが、表層22や内層23の主繊維221,231の形成材料よりも低い融点のものであれば、例えばポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の炭化水素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、或いはこれらの混合物によりこれを形成することもできる。
・また、表層22の融着用繊維222と内層23の融着用繊維232とを異なる材料により形成することも可能であるが、上述した予備加熱処理の加熱温度における設定自由度を考慮するとそれら融着用繊維222,融着用繊維232は同一の材料によって形成するのが望ましい。
・表層22及び内層23の各繊維を融着するために繊維状の融着材、即ち融着用繊維222,232を用いるようにしたが、融着材として機能するものであればその形状はこれに限られず、例えば粒子状のもの、いわゆるペレットを採用することもできる。
・表層22及び内層23を異なる合成樹脂混合物により形成するようにしたが、同じ合成樹脂混合物によりそれらを形成することもできる。但しこの場合であっても、表層22の繊維密度は内層23の繊維密度よりも高くなるように設定する。
・その他、フェンダーライナ20の基材となる不織布は、その表層22及び内層23との境界が必ずしも明確になっているものである必要はなく、例えばタイヤハウス14の外面側に位置する面から外部に露出する面にかけてその繊維密度が徐々に高くなるようにこれが設定されたものを採用することもできる。
・更に、繊維密度の異なる表層22及び内層23を含む積層構造を有した不織布を採用するようにしたが、例えば繊維密度を均一にした単層の不織布を採用することもできる。
・不織布のみにより形成されるフェンダーライナ20を例示したが、例えば樹脂コーティングや金属コーティングが施された不織布を採用する等、不織布をその基材とするものであれば、同フェンダーライナ20の構成については適宜変更することができる。
・タイヤハウス14の外面側に凸設される取付部21が4つ形成されたフェンダーライナ20を例示したが、この取付部21は1つ乃至5以上形成されるものであってもよい。尚、取付部21を1つとした場合であっても、その取付部21と、タイヤハウス14の外面側に凸設しない別の取付部とによってフェンダーライナ20をタイヤハウス14の外面に取り付ける構成であっても、その取付部21の高さに応じた層厚の空気層50を形成することはできる。
・また、取付部21は図2に示されるような形状を有するもの他、例えばフェンダーライナ20等、外装材の表面に沿って延びる凸条であってもよい。
・更にこうした凸条を形成する場合にはこれを外装材の表面に枠状に形成し、空気層がこの凸条と車両の外面との間で密閉された空間となるようにしてもよい。こうした構成によれば空気層による吸音効果を一層向上させることができるようになる。
・上記実施形態では、車両の外面側に凸設されて同外面に固定される凸部として、これが車両に取り付けられるものを例示したが、同凸部はタイヤハウス14の外面等、車両の外面に対して単に当接するものであってもよい。こうした構成によっても、上述した(1)〜(4),(6)に準じた作用効果を奏することはできる。
・また、上記実施形態ではタイヤハウス14の外面を覆うようにして取り付けられるフェンダーライナについて例示したが、例えば車両の底部を覆うようにして取り付けられるアンダープロテクタ等、車両の他の部位に取り付けられる外装材にあっても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより同実施形態に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】車両の前部側面図。
【図2】フェンダーライナを車両の内側から見た状態を示す斜視図。
【図3】(a)フェンダーライナがタイヤハウスの外面に取り付けられた状態を示す断面図、(b)B部分を示す拡大断面図。
【図4】フェンダーライナにおける騒音の吸音率を周波数毎に示すグラフ。
【図5】フェンダーライナの断面構造を示す模式図。
【図6】取付部の変形例を示す断面図。
【図7】取付部の変形例を示す断面図。
【図8】フェンダーライナの変形例を示す断面図。
【図9】フェンダーライナの取付態様についてその変形例を示す断面図。
【図10】(a)取付部の変形例を示す断面図、(b)同取付部の斜視図。
【符号の説明】
【0047】
11…車両、12…フェンダー、13…タイヤ、14…タイヤハウス、14a…挿通孔、20…フェンダーライナ、21…取付部、21a…平坦部、21b…挿通孔、22…表層、23…内層、24…表層、30…ボルト、31…ナット、33…クリップ、33a…係止片、40…防振材、40a…挿通孔、50…空気層、221…主繊維、222…融着用繊維、223…セル、231…主繊維、232…融着用繊維、233…セル。
【技術分野】
【0001】
この発明はフェンダーライナやアンダープロテクタ等、車両の外面を覆うようにして同外面に取り付けられる車両の外装材、同外装材を備えた車両の吸音構造、並びに同吸音構造の吸音周波数特性を調整する吸音周波数特性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のタイヤハウスにはその外面に覆うようにしてフェンダーライナ(ホイールハウスライナともいう)が取り付けられている。こうしたフェンダーライナは、通常、合成樹脂等の耐錆性を有した材料によって形成されており、これによりタイヤハウスの外面を保護することで車両走行時のチッピングによりタイヤハウスが損傷しその損傷部分に錆が発生することを抑制することができる。また、フェンダーライナは、このようにタイヤハウスの外面を保護する機能の他、チッピングにより生じる衝突音(チッピングノイズ)や路面とタイヤとの擦過音(パターンノイズ)等、車両走行時に発生する騒音を吸収してこれが車室内に伝達されることを抑制する吸音材としての機能も兼ね備えている。
【0003】
ところで、こうしたフェンダーライナの形成材料としては従来より硬質の合成樹脂シートが広く用いられているが、近年では例えば特許文献1に記載されるように、不織布によってこのフェンダーライナを形成するようにした例もみられる。一般に、不織布は合成樹脂シートと比較して硬度が低く可撓性に富む特性を有しているため、チッピングノイズの吸収はもとよりその発生自体を抑制することができ、またその他の騒音についてもこれを吸音して車室内における静粛性の向上に寄与することができる。
【特許文献1】特開2002−348767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不織布は、車両の走行に伴って生じる種々の周波数帯域の騒音のうち、比較的高い周波数帯域(例えば700Hz〜5kHz)の騒音に対しては、上述したように極めて高い吸音効果が得られる。即ち、こうした不織布にあっては、これに入射する騒音によりその各繊維を振動させてそれらの間に摩擦熱を生じさせることにより、騒音の振動エネルギを最終的に熱エネルギに変換することによりその吸音作用が得られる。従って、こうした原理上、波長の短い高周波数帯域の騒音であれば、不織布の各繊維をより激しく振動させてその多くを熱エネルギに変換することができる、吸音率も自ずと高いものとなる。
【0005】
しかしその一方、低周波数帯域の騒音(例えば700Hz未満)は、その波長が長いため、これが不織布に入射しても上述したような繊維の振動は生じ難く、従って高い吸音効果を期待することはできない。このように不織布により形成される従来のフェンダーライナにあっては、低周波数帯域の騒音が車室内に伝達することを抑制する点において改善の余地を残すものとなっていた。尚ここでは、タイヤハウスの外面を覆うフェンダーライナを例に説明したが、例えば車両の下面を覆うアンダープロテクタ等、車両の他の部位に取り付けられる外装材にあってもこうした課題は概ね共通したものとなっている。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、不織布では吸音することが困難な低周波数帯域の騒音が車室内に伝達されることを好適に抑制することのできる車両の外装材を提供することにある。また併せて、不織布を基材とする外装材を備えた車両吸音構造においてその吸音周波数特性を、不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を吸音することができるように、その吸音周波数特性を簡易な方法にて調整することのできる車両の吸音構造、並びにその吸音周波数特性調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段及びその作用について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、不織布を基材として成形され車両の外面を覆うように同外面に取り付けられる車両の外装材であって、車両の外面との間に所定層厚を有した空気層を形成すべく車両の外面側に凸設されて同外面に固定される凸部が形成されてなるものをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、車両の外面と外装材との間に形成される空気層を通じて不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外から外装材を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができるようになる。また、この空気層により効果的に吸音される騒音の周波数帯域は同空気層の層厚に応じて変化する特性を有している。具体的には、空気層の層厚が大きい場合ほど、より低い周波数帯域の騒音についてその吸音率が向上する。この点、上記構成によれば、凸部の高さを適宜変更して空気層の層厚を調整する、といった簡易な方法を通じて、外装材の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができる。尚、上記凸部には、車両の外面に対してボルト等を介して取り付けられるものの他、同外面に対して単に当接するものも含まれる。またその形状についても、外装材の表面に沿って延びる凸条のものも含まれる。
【0009】
また、こうした凸部は、請求項2に記載されるように、これを複数形成することが望ましい。
請求項3に記載の発明は、請求項2項に記載の車両の外装材において、前記凸部はその高さが異なるものを含むものであるとしている。
【0010】
同構成によれば、空気層の層厚を外装材の位置に応じて異なるものとすることができ、空気層において吸音可能な騒音の周波数帯域を拡大させることができる。その結果、空気層によって騒音をより効果的に吸音することができ、その吸音効果を一層高めることができるようになる。また、このように異なる層厚を有する空気層を形成することにより、空気層が層厚を一定とした構成と比較して、空気層全体における減衰率が大きくなるため、同空気層における共鳴現象についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の外装材において、前記凸部は弾性部材を介して車両の外面に固定されるものであるとしている。
同構成によれば、外装材は車両の外面に対して弾性支持されることになるため、同外装材の取付部分である凸部を介して車室内に振動が伝達されることを抑制することができる。従って、こうした振動の伝達に起因する騒音の発生についてもこれを好適に抑制することができるようになる。尚、上記弾性部材としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム共重合物、イソブチレン・イソプレン共重合物、エチレン・プロピレン・ジエン共重合物、或いはラバーコルク等の減衰率の高い材料を選択することが望ましい。
【0012】
尚、不織布により吸音が困難な低周波数帯域の騒音を好適に吸音して減少させるうえでは、請求項5に記載される発明によるように、空気層の層厚が10〜50mmとなるように凸部の高さを設定することが望ましい。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両の外装材において、前記不織布は交絡状態にある複数の繊維が融着材にて融着された断面網目状構造を有してなるとしている。
【0014】
同構成では、不織布が複数の繊維が交絡状態にて融着された断面網目状構造を有しているため、同不織布の内部には各繊維によって囲まれた微少な空間(セル)が複数存在している。従って、この不織布に入射する騒音、特に比較的高い周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができる。従って、上述した空気層による低周波数帯域の騒音吸音作用と併せて、高周波数帯域を含めた更に広帯域の騒音を吸音することができ、外装材から車両のボディを介して車室内に伝達される騒音を効果的に抑制することができるようになる。尚、上記繊維及び融着材の形成材料としては、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の炭化水素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、或いはこれらの混合物を採用することができる。またここで、融着材の形成材料としては、上記繊維の形成材料として選択されるものよりも低い融点を有した合成樹脂を選択する。具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の比較的融点の低い合成樹脂を採用することが好ましい。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両の外装材において、前記融着材は繊維状を有してなるとしている。
同構成では、複数の繊維が同じく繊維状を有する融着材にて融着されるため、それら繊維により形成されるセルの数が増大するとともに、その大きさについても極めて小さなものから比較的大きなものまで種々のものが存在するようになる。従って、不織布により吸音される騒音の周波数帯域を更に拡大することができ、車室内に騒音が伝達されることを一層効果的に抑制することができるようになる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の車両の外装材において、前記不織布は外部に露出する表層と該表層よりも車体の外面側に位置する内層とを含む積層構造をなし、前記表層は前記内層よりも繊維密度が高く設定されてなるものとしている。
【0017】
同構成によれば、外部に露出する表層の繊維密度を内層よりも高くしてその剛性及び硬度を高めるようにしているため、この表層の耐チッピング性を高めることができ、外装材についてその耐久性の向上を図ることができるようになる。尚、ここでの積層構造とは、各層について明確な界面が存在するものはもとより、不織布において車両の外面側に位置する部分から外部に露出する部分にかけてその繊維密度が徐々に高くなるように傾斜特性を有して構成されたもの、即ち明確な層界面が存在していないものも含まれる。
【0018】
ところで、このように繊維密度の異なる表層及び内層を有する不織布を採用した場合、車両や外部の熱により温度上昇したときに、表層及び内層の熱膨張量差に起因して外装材が変形してしまうことが懸念される。そして、こうした変形に伴って空気層の層厚が大きく変化することがあると、その空気層によって効果的に吸音可能な騒音の周波数帯域と実際に発生している騒音の周波数帯域とが異なるものとなるため好ましくない。
【0019】
この点、この請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の車両の外装材において、前記不織布は前記表層と線膨張係数の等しい材料により形成される表層を前記表層とは別に有しこれら一対の表層の間に前記内層を介在させた三層構造を有してなる、といった構成を採用することにより、上述したような外装材の熱変形を抑制することができ、これに起因して外装材の吸音効果が低下してしまうことを極力回避することができるようになる。尚、各表層は線膨張係数のみならず、それらの厚さも等しくすることが上述したような熱変形を抑制する上では好ましい。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両の外装材において、前記凸部は前記車両の外面に取り付けられる取付部であるとしている。
同構成によれば、車両走行時の振動により凸部と車両の外面との間での衝突が繰り返されて異音が生じたり、或いは車両走行時の振動や熱変形等により凸部と車両の外面との間に隙間が形成されて空気層の層厚が変化したりすることを抑制することができる。従って、外装材を介して車室内に騒音が伝達されることをより確実に抑制することができるようになる。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両の外装材において、タイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられるとしている。
こうした車両の外装材のうち、特にタイヤハウスの外面に取り付けられる外装材、即ちフェンダーライナ(ホイールハウスライナ)は、タイヤに近接して配設されているため、チッピングノイズはもとより、低周波数成分を多く含むパターンノイズが入射されやすい傾向にある。こうした傾向にあるフェンダーライナにあっても、上記請求項1〜10にそれぞれ記載される構成を適用することにより、低周波数帯域の騒音を効果的に吸音して車室内に伝達される騒音の低減を図ることができる。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の外装材を具備し、同外装材が車両の外面に取り付けられてなる車両の吸音構造をその要旨としている。
同構成によれば、車両の外面と外装材との間に形成される空気層を通じて不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外から外装材を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができるようになる。また、この空気層により効果的に吸音される騒音の周波数帯域は同空気層の層厚に応じて変化する特性を有している。具体的には、空気層の層厚が大きい場合ほど、より低い周波数帯域の騒音についてその吸音率が向上する。この点、上記構成によれば、凸部の高さを適宜変更して空気層の層厚を調整する、といった簡易な方法を通じて、外装材の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができる。
【0023】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の車両の吸音構造において、前記外装材はタイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられるとしている。
車両の外装材のうち、特にタイヤハウスの外面に取り付けられる外装材、即ちフェンダーライナ(ホイールハウスライナ)は、タイヤに近接して配設されるため、チッピングノイズはもとより、低周波数成分を多く含むパターンノイズが入射されやすい傾向にある。こうした傾向にある車両の吸音構造にあっても、上記請求項12に記載の構成を適用することにより、車体側には何ら変更を加えることなく簡易な方法を通じて車両騒音の周波数特性に適した吸音周波数特性を有する車両の吸音構造を構築することができる。
【0024】
請求項14に記載の発明は、請求項12又は請求項13に記載の車両の吸音構造についてその吸音周波数特性を調整する吸音周波数特性調整方法であって、前記外装材に入射される車両騒音の周波数特性に基づいて前記凸部の高さが異なる複数種の外装材のうちから特定のものを選択するようにしたことをその要旨としている。
【0025】
同調整方法によれば、車両の外面と外装材との間に形成される空気層により不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音について、凸部の高さが異なる複数種の外装材のうちから特定のものを選択するといった簡易な方法を通じて、車体側には何ら変更を加えることなく車両吸音構造の吸音周波数特性を騒音の周波数特性に適したものに調整することができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外から外装材を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができる。また、凸部の高さを適宜変更する、といった簡易な方法を通じて、外装材の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明にかかる車両の外装材をフェンダーライナとして具体化した一実施形態について説明する。
図1は車両の前部側面図である。同図1に示されるように、車両11の前部において、その下方にはタイヤ13を収容するタイヤハウス14が形成されている。このタイヤハウス14はタイヤ13の外周面及び内面の一部を覆う形状を有するように鋼板を成形したものであり、その外面には防錆剤が塗布されている。このタイヤハウス14の外面には、これを覆うようにしてフェンダーライナ20が取り付けられている。このフェンダーライナ20は、チッピングによってタイヤハウス14が損傷しその損傷部分に錆が発生することを抑制する機能を有している。また、フェンダーライナ20は、このようにタイヤハウス14の外面を保護する機能の他、チッピングノイズやパターンノイズを吸音してそれらが車室内に伝達されることを抑制する吸音材としての機能も兼ね備えている。
【0028】
図2はフェンダーライナ20を車両11の内側から見た状態を示す同フェンダーライナ20の斜視図である。同図2に示されるように、フェンダーライナ20はタイヤハウス14の外面に沿った形状となるように不織布を成形したものである。このフェンダーライナ20には、車両11のサスペンション(図示略)との干渉を避けるための切り欠き28が形成されている他、タイヤハウス14に取り付けられた状態においてタイヤ13の外周面と対向する部分にはその周方向に略等間隔を隔てて4つの取付部21が形成されている。
【0029】
図3(a)はフェンダーライナ20がタイヤハウス14の外面に取り付けられた状態を示す断面図であり、図2のA−A線に沿った断面に対応している。また、図3(b)は図3(a)のB部分を示す拡大断面図である。同図3に示されるように、各取付部21はいずれもフェンダーライナ20を部分的にタイヤハウス14側に凸設させることにより形成されている。これら取付部21はその断面が略台形状をなしており、タイヤハウス14に最も近接した位置には平坦部21aが形成されている。更に、この平坦部21aとタイヤハウス14との間には防振材40が介在されている。この防振材40は取付部21を介して車室内に振動が伝達されることを抑制するためのものであり、種々あるゴム材料の中で減衰率の比較的高いブタジエンゴムにより形成されている。また、図3(b)に示されるように、取付部21、防振材40、タイヤハウス14にはそれぞれ挿通孔21b,40a,14aが形成されている。そして、取付部21は、各挿通孔21b,40a,14aに挿通されたボルト30及びこれに螺合されたナット31による締結を通じて防振材40とともにタイヤハウス14の外面に取り付けられている。
【0030】
このようにしてフェンダーライナ20がタイヤハウス14の外面に取り付けられることにより、同フェンダーライナ20において取付部21の形成部位を除く部分とタイヤハウス14の外面との間には、所定の層厚Sを有する空気層50が形成されることとなる。この空気層50は、不織布だけでは吸音することが困難な比較的低い周波数帯域(例えば700Hz以下)の騒音を吸収する機能を有している。またここで、空気層50を通じて効果的に吸音可能な周波数帯域はその層厚Sを適宜変更する設定することができる。
【0031】
図4は、空気層50の層厚Sを「10mm」、「20mm」、「50mm」とした場合並びに空気層50が形成されていない場合おける騒音の吸音率を周波数毎に示すグラフである。同図4に示されるように、一般に、吸音率の最も高くなる周波数帯域は、空気層50の層厚Sが大きくなるほど低くなる傾向がある。本実施の形態では、ピッチングノイズやパターンノイズ等、タイヤハウス14近傍で発生する騒音の周波数特性に基づいて、この層厚Sを「20mm」に設定している。そして、取付部21は、空気層50の層厚Sが上記所定値となるように、防振材40の厚さを考慮してその高さh(図3参照)が設定されている。また、このように空気層50の吸音周波数特性は、取付部21の高さhを適宜変更することにより容易に調整することができる。
【0032】
図5は、フェンダーライナ20の断面構造を示す模式図である。同図5に示されるように、フェンダーライナ20は合成樹脂からなる複数の繊維を交絡させた状態で融着させた不織布によって形成されている。また、フェンダーライナ20は、外部に露出してタイヤ13に対面する表層22と、この表層22よりも空気層50側に位置する内層23とを含む断面二層構造を有している。そして、表層22は内層23よりも繊維密度が高く設定されており、従って表層22は内層23よりもその硬度及び剛性が高いものとなっている。また、このように繊維密度を高くすることにより、表層22は内層23よりもその表面の表面粗さが小さくなり、また平滑度についても向上するようになる。
【0033】
以下、これら表層22及び内層23の構造について更に詳細に説明する。
まず、表層22の構造について説明する。表層22は、主繊維221及び融着用繊維222により構成され、その厚さが例えば2〜4mmの範囲に設定されている。この表層22は、主繊維221と融着用繊維222とが相互に交絡した状態で融着用繊維222を周囲の繊維と融着させることによりその断面が網目状を呈している。これにより、表層22の内部には、主繊維221及び融着用繊維222により囲まれた極めて微小な空間、即ちセル223が複数形成されることとなる。
【0034】
主繊維221は、ポリプロピレン及びポリエステルにより形成されている。一方、融着用繊維222は、主繊維221、即ち上記合成樹脂の混合物よりも低い融点の合成樹脂、具体的にはポリプロピレンにより形成されている。因みに、この主繊維221及び融着用繊維222の少なくとも一方は、その外表面に例えばカーボン等の着色剤を付着させることにより所定の色(例えば黒色)に着色されている。
【0035】
また、主繊維221及び融着用繊維222の径について、これが10μm未満の場合には表層22の強度が低下するおそれがあり、特に融着用繊維222の径が10μm未満の場合には表層22の成形時に融着用繊維222が溶断されるなどして繊維としての形状を止めることができずにセル223の形成に寄与できなくなることが懸念される。一方、主繊維221及び融着用繊維222の径が50μmを超える場合には、表層22の内部における主繊維221、融着用繊維222の占有体積が大きくなり、微小なセル223を複数形成することが困難になる。従って、主繊維221及び融着用繊維222の径はいずれも10〜50μmの範囲に設定するのが好ましい。また、主繊維221及び融着用繊維222の長さについては、フェンダーライナ20の製造工程における加工安定性を高めるために、いずれも10〜100mmの範囲に設定することが好ましい。
【0036】
また、表層22における融着用繊維222の含有量について、これが20重量%未満の場合には、フェンダーライナ20の形状安定性を維持することが困難になり、同含有量が60重量%を超える場合には、表層22の強度維持に重要な役割をする主繊維221の含有量が相対的に低下し、フェンダーライナ20の強度及び耐久性を高く維持することが困難になる。従って、この融着用繊維222の含有量は20〜60重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0037】
次に、内層23の構造について説明する。内層23は主繊維231及び融着用繊維232とから構成され、その厚さが表層22よりも厚くなるように、例えば4〜12mmの範囲に設定されている。この内層23は、主繊維231と融着用繊維232とが相互に交絡した状態で融着用繊維232をその周囲の繊維と融着させることによりその断面が網目状を呈している。これにより、表層22と同様、内層23の内部には、主繊維231及び融着用繊維232により複数のセル233が形成されることとなる。
【0038】
また、主繊維231は、ポリアミド樹脂により形成されている。一方、融着材として機能する融着用繊維232は、主繊維231、即ちポリアミド樹脂よりも低い融点の合成樹脂、具体的には表層22の主繊維221と同様、ポリプロピレンにより形成されている。また、主繊維231及び融着用繊維232の径、長さ、及び含有量については、表層22と同様の理由により、それぞれ順に10〜50μm、10〜100mm、20〜60重量%の範囲に設定することが好ましい。但し、この内層23は表層22よりもその繊維密度を低く設定する必要がある点は上述したとおりである。
【0039】
次に、フェンダーライナ20の製造方法について説明する。
まず、主繊維221と融着用繊維232とを含み表層22となる繊維集合体を形成するとともに、主繊維231と融着用繊維232とを含み内層23となる繊維集合体を形成する。ここで、これら各繊維集合体は、例えば次のような手順で形成される。まず、主繊維221に融着用繊維232を散布してこれを主繊維221中に略均等に分散させる。そして、これら主繊維221と融着用繊維232とをニードルパンチ処理を通じて相互に交絡させる。これにより表層22となる繊維集合体が形成される。また、内層23となる繊維集合体についても同様の手順により形成される。
【0040】
次に、このように形成された各繊維集合体を重ね合わせ、ニードルパンチ処理を通じてそれら繊維集合体における接合部近傍の繊維を交絡させることにより、各繊維集合体がその接合面を境にして容易に分離しないようにする。続いて、この各繊維集合体を予備加熱処理する。この予備加熱処理は、融着用繊維222,232を形成する材料の融点以上であり、表層22の主繊維221及び内層23の主繊維231を形成する材料の融点未満の温度範囲で行われる。そして、この予備加熱処理が施された繊維集合体の温度が低下する前に、これを成形機の型内で加圧しながら冷却する。これら予備加熱処理、加圧冷却処理を通じて、表層22及び内層23の融着用繊維222,232が周囲の繊維と融着した状態となり、フェンダーライナ20は4つの取付部21を有してその全体がタイヤハウス14の外面に沿った所定の形状に成形されることとなる。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)フェンダーライナ20はタイヤ13に近接して配設されるため、チッピングノイズはもとより、低周波数成分を多く含むパターンノイズが入射されやすい傾向にある。この点、上記実施形態によれば、タイヤハウス14の外面とフェンダーライナ20との間に形成される空気層50を通じて不織布では通常吸音することが困難な低周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができ、車外からフェンダーライナ20を通過して車室内に伝達される騒音の低減に寄与することができるようになる。また、取付部21の高さhを適宜変更して空気層50の層厚Sを調整する、といった簡易な方法を通じて、フェンダーライナ20の吸音周波数特性を個々の車両において生じる騒音の周波数特性に適したものとなるように設定することができる。
(2)また、フェンダーライナ20を構成する不織布は、複数の繊維が交絡状態にて融着され、大きさの異なる複数のセル223,232を有した断面網目状を呈するものであるため、この不織布に入射する騒音、特に比較的高い周波数帯域の騒音を効果的に吸音することができる。従って、空気層50による低周波数帯域の騒音吸音作用と併せて、高周波数帯域を含めた更に広帯域の騒音を吸音することができ、フェンダーライナ20からタイヤハウス14等、車両のボディを介して車室内に伝達される騒音を効果的に抑制することができるようになる。
(3)更に、表層22及び内層23において主繊維221,231を融着する融着材として繊維状のものを採用するようにしているため、セル223,233の数が増大するとともに、その大きさについても極めて小さなものから比較的大きなものまで種々のものが存在するようになる。従って、不織布により吸音される騒音の周波数帯域を更に拡大することができ、車室内に騒音が伝達されることを一層効果的に抑制することができるようになる。
(4)加えて、外部に露出する表層22の繊維密度を内層23よりも高くしてその剛性及び硬度を高めるようにしているため、表層22の耐チッピング性を高めることができ、フェンダーライナ20についてその耐久性の向上を図ることができるようになる。またこのように、表層22の繊維密度を高めることにより、フェンダーライナ20の表面における表面粗さを小さくするとともにその平滑度を向上させることができ、例えば泥や雪等の付着についてもこれを好適に抑制することができる。
(5)上記実施形態では、各取付部21をタイヤハウス14の外面に固定するようにしている。このため、例えばフェンダーライナ20に複数の凸部を形成してこれらをタイヤハウス14の外面に単に当接させる一方、フェンダーライナ20をその凸部以外の部分でタイヤハウス14の外面に取り付けるようにした構成とは以下の点で異なる。即ち、本実施形態によれば、車両走行時の振動により凸部とタイヤハウス14の外面との間での衝突が繰り返されて異音が生じたり、或いは車両走行時の振動や熱変形等により凸部とタイヤハウス14の外面との間に隙間が形成されて空気層50の層厚Sが変化したりすることを抑制することができる。従って、フェンダーライナ20を介して車室内に騒音が伝達されることをより確実に抑制することができるようになる。
(6)また、フェンダーライナ20の取付部21はタイヤハウス14の外面に防振材40を介して弾性支持されているため、この取付部21を介して車室内に振動が伝達されることを抑制することができる。従って、こうした振動の伝達に起因する騒音の発生についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
【0042】
尚、上記実施形態は以下のようにこれを適宜変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、空気層50の層厚Sを「20mm」として一定に設定するようにしたが、これはフェンダーライナ20が取り付けられる車両における騒音の周波数特性に応じて10〜50mmの範囲で適宜変更することができる。また、異なる層厚Sの空気層50が形成されるように、フェンダーライナ20に高さの異なる取付部21を形成することもできる。具体的には、図6に示されるように、取付部21の高さhを異なる値h1,h2(h1>h2)に設定することにより、空気層50の層厚Sをその位置によって異なる値S1,S2に設定することができる。更にこの場合、図7に示されるように、取付部21の高さhを、フェンダーライナ20の面に沿う方向において順に大きく或いは小さくなる異なる値h1,h2,h3(h1>h2>h3)に設定することにより、空気層50の層厚Sを同方向において連続的に変化させることもできる。
【0043】
そして、こうした構成を採用することにより、空気層50の層厚Sをフェンダーライナ20の位置に応じて異なるものとすることができ、空気層50において効果的に吸音可能な騒音の周波数帯域を拡大させることができる。その結果、空気層50によって騒音をより効果的に吸音することができ、その吸音効果を一層高めることができるようになる。また、このように異なる層厚Sを有する空気層50を形成することにより、空気層50が層厚Sを一定とした構成と比較して、空気層50全体における減衰率が大きくなるため、同空気層50における共鳴現象についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
・上記実施形態では、フェンダーライナ20を構成する不織布についてその表層22及び内層23の繊維密度を異ならせるようにしたが、こうした構成を採用した場合、車両や外部の熱によりフェンダーライナ20が温度上昇したときに表層22及び内層23の熱膨張量差に起因してフェンダーライナ20が変形してしまうことが懸念される。そして、こうした変形に伴って空気層50の層厚Sが大きく変化することがあると、その空気層50によって効果的に吸音可能な騒音の周波数帯域と実際に発生している騒音の周波数帯域とが異なるものとなるため好ましくない。
【0044】
そこで、図8に示されるように、表層22と同様の構造を有した同じ厚さの表層24をタイヤハウス14の外面側に別に設け、それら一対の表層22,24の間に内層23を中間層として介在させた三層構造を有するように構成した不織布を採用することもできる。こうした構成を採用することにより、上述したようなフェンダーライナ20の熱変形を抑制することができ、これに起因してフェンダーライナ20の吸音効果が低下してしまうことを極力回避することができるようになる。尚、タイヤハウス14の外面側に位置する表層24は、タイヤ13側に位置して外部に露出するもう一方の表層22と略等しい線膨張係数を有するものであれば、その表層22と異なる組成を有するものであってもよい。
・上記実施形態では、ボルト30及びナット31の締結を通じてフェンダーライナ20を防振材40共々、タイヤハウス14の外面に取り付けるようにしたが、このボルト30及びナット31の締結に代えて、例えば図9に示されるように、クリップ33を用いてこれらフェンダーライナ20、防振材40をタイヤハウス14の外面に取り付けることもできる。このクリップ33は先端に係止爪が形成された一対の係止片33aを有しており、これら係止片33aを互いに近接するように弾性変形させつつ、フェンダーライナ20、防振材40、タイヤハウス14の各挿通孔21b,40a,14a(図3(b)参照)に挿通させる。そして、係止片33aの先端の係止爪をタイヤハウス14に係止させることにより、フェンダーライナ20及び防振材40をタイヤハウス14に取り付けるようにする。尚、クリップ33は合成樹脂等、弾性変形が容易な材料によって形成することが上記取付作業の効率を高める上では好ましい。
・上記実施形態では、フェンダーライナ20を部分的に凸設することにより取付部21を他の部分と一体に形成するようにしたが、こうした構成にあっては、フェンダーライナ20において外部に露出するタイヤ13側の面に凹部21c(図3参照)が形成されることとなるため、この凹部に泥や雪等が堆積することが懸念される。そこで、図10に示されるような構成を採用するようにしてもよい。即ちこの場合、図10(a)並びに同図(b)に示されるように、取付部21をフェンダーライナ20の本体とは別の部材として構成する。この取付部21は矩形の板材からなり、これを折曲形成してその中央部分が凸設させた形状を有している。そして、その凸設された部分には防振材40に当接する平坦部21aが形成され、この平坦部21aにはボルト30が挿通される挿通孔21bが形成されている。尚、この取付部21はフェンダーライナ20の本体と同様に不織布によって形成する他、例えば合成樹脂シートや金属材料によって形成することもできる。そして、この取付部21の両端部をフェンダーライナ20のタイヤハウス14の外面と対向する面に対して融着、ボルト締結、或いはクリップ止め等々適宜の方法によって固定する。こうした構成によれば、フェンダーライナ20において外部に露出するタイヤ13側の面に凹部を形成する必要がなくなるため、同面に泥や雪等が付着することを抑制することができるようになる。
・防振材40の形成材料としてブタジエンゴムを採用するようにしたが、その他、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム共重合物、イソブチレン・イソプレン共重合物、エチレン・プロピレン・ジエン共重合物、或いはラバーコルク等の減衰率の高いものを採用することもできる。
【0045】
・更に、この防振材40を省略し、取付部21の平坦部21aをフェンダーライナ20のタイヤハウス14の外面に当接させた状態で固定するようにした構成を採用することもできる。こうした構成にあっても上述した(1)〜(5)に準じた作用効果を奏することはできる。
・ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンの混合物からなる繊維により内層23を形成するようにしたが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン単体の繊維によりこれを形成することもできる。また例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等の炭化水素系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンを含めてそれらの混合物からなる繊維により内層23を形成することもできる。
・また、表層22についても、これをポリプロピレン及びポリエステルの混合物により形成するようにしたが、内層23の形成材料として先に列記した各種合成樹脂或いはその混合物によりこれを形成することもできる。
・融着用繊維222,232をポリプロピレンにより形成するようにしたが、表層22や内層23の主繊維221,231の形成材料よりも低い融点のものであれば、例えばポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の炭化水素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、或いはこれらの混合物によりこれを形成することもできる。
・また、表層22の融着用繊維222と内層23の融着用繊維232とを異なる材料により形成することも可能であるが、上述した予備加熱処理の加熱温度における設定自由度を考慮するとそれら融着用繊維222,融着用繊維232は同一の材料によって形成するのが望ましい。
・表層22及び内層23の各繊維を融着するために繊維状の融着材、即ち融着用繊維222,232を用いるようにしたが、融着材として機能するものであればその形状はこれに限られず、例えば粒子状のもの、いわゆるペレットを採用することもできる。
・表層22及び内層23を異なる合成樹脂混合物により形成するようにしたが、同じ合成樹脂混合物によりそれらを形成することもできる。但しこの場合であっても、表層22の繊維密度は内層23の繊維密度よりも高くなるように設定する。
・その他、フェンダーライナ20の基材となる不織布は、その表層22及び内層23との境界が必ずしも明確になっているものである必要はなく、例えばタイヤハウス14の外面側に位置する面から外部に露出する面にかけてその繊維密度が徐々に高くなるようにこれが設定されたものを採用することもできる。
・更に、繊維密度の異なる表層22及び内層23を含む積層構造を有した不織布を採用するようにしたが、例えば繊維密度を均一にした単層の不織布を採用することもできる。
・不織布のみにより形成されるフェンダーライナ20を例示したが、例えば樹脂コーティングや金属コーティングが施された不織布を採用する等、不織布をその基材とするものであれば、同フェンダーライナ20の構成については適宜変更することができる。
・タイヤハウス14の外面側に凸設される取付部21が4つ形成されたフェンダーライナ20を例示したが、この取付部21は1つ乃至5以上形成されるものであってもよい。尚、取付部21を1つとした場合であっても、その取付部21と、タイヤハウス14の外面側に凸設しない別の取付部とによってフェンダーライナ20をタイヤハウス14の外面に取り付ける構成であっても、その取付部21の高さに応じた層厚の空気層50を形成することはできる。
・また、取付部21は図2に示されるような形状を有するもの他、例えばフェンダーライナ20等、外装材の表面に沿って延びる凸条であってもよい。
・更にこうした凸条を形成する場合にはこれを外装材の表面に枠状に形成し、空気層がこの凸条と車両の外面との間で密閉された空間となるようにしてもよい。こうした構成によれば空気層による吸音効果を一層向上させることができるようになる。
・上記実施形態では、車両の外面側に凸設されて同外面に固定される凸部として、これが車両に取り付けられるものを例示したが、同凸部はタイヤハウス14の外面等、車両の外面に対して単に当接するものであってもよい。こうした構成によっても、上述した(1)〜(4),(6)に準じた作用効果を奏することはできる。
・また、上記実施形態ではタイヤハウス14の外面を覆うようにして取り付けられるフェンダーライナについて例示したが、例えば車両の底部を覆うようにして取り付けられるアンダープロテクタ等、車両の他の部位に取り付けられる外装材にあっても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより同実施形態に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】車両の前部側面図。
【図2】フェンダーライナを車両の内側から見た状態を示す斜視図。
【図3】(a)フェンダーライナがタイヤハウスの外面に取り付けられた状態を示す断面図、(b)B部分を示す拡大断面図。
【図4】フェンダーライナにおける騒音の吸音率を周波数毎に示すグラフ。
【図5】フェンダーライナの断面構造を示す模式図。
【図6】取付部の変形例を示す断面図。
【図7】取付部の変形例を示す断面図。
【図8】フェンダーライナの変形例を示す断面図。
【図9】フェンダーライナの取付態様についてその変形例を示す断面図。
【図10】(a)取付部の変形例を示す断面図、(b)同取付部の斜視図。
【符号の説明】
【0047】
11…車両、12…フェンダー、13…タイヤ、14…タイヤハウス、14a…挿通孔、20…フェンダーライナ、21…取付部、21a…平坦部、21b…挿通孔、22…表層、23…内層、24…表層、30…ボルト、31…ナット、33…クリップ、33a…係止片、40…防振材、40a…挿通孔、50…空気層、221…主繊維、222…融着用繊維、223…セル、231…主繊維、232…融着用繊維、233…セル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を基材として成形され車両の外面を覆うように同外面に取り付けられる車両の外装材であって、
車両の外面との間に所定層厚を有した空気層を形成すべく車両の外面側に凸設されて同外面に固定される凸部が形成されてなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の外装材において、
前記凸部が複数形成されてなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の外装材において、
前記凸部はその高さが異なるものを含む
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記凸部は弾性部材を介して車両の外面に固定される
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記空気層が10〜50mmの範囲の層厚を有するように前記凸部の高さが設定される
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記不織布は交絡状態にある複数の繊維が融着材にて融着された断面網目状構造を有してなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の外装材において、
前記融着材は繊維状を有してなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の車両の外装材において、
前記不織布は外部に露出する表層と該表層よりも車体の外面側に位置する内層とを含む積層構造をなし、前記表層は前記内層よりも繊維密度が高く設定されてなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項9】
請求項8に記載の車両の外装材において、
前記不織布は前記表層と線膨張係数の等しい材料により形成される表層を前記表層とは別に有しこれら一対の表層の間に前記内層を介在させた三層構造を有してなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記凸部は前記車両の外面に対して取り付けられる取付部である
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
タイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の外装材を具備し、同外装材が車両の外面に取り付けられてなる
車両の吸音構造。
【請求項13】
請求項12に記載の車両の吸音構造において、
前記外装材はタイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられる
ことを特徴とする車両の吸音構造。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の車両の吸音構造についてその吸音周波数特性を調整する吸音周波数特性調整方法であって、
前記外装材に入射される車両騒音の周波数特性に基づいて前記凸部の高さが異なる複数種の外装材のうちから特定のものを選択する
ことを特徴とする吸音周波数特性調整方法。
【請求項1】
不織布を基材として成形され車両の外面を覆うように同外面に取り付けられる車両の外装材であって、
車両の外面との間に所定層厚を有した空気層を形成すべく車両の外面側に凸設されて同外面に固定される凸部が形成されてなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の外装材において、
前記凸部が複数形成されてなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の外装材において、
前記凸部はその高さが異なるものを含む
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記凸部は弾性部材を介して車両の外面に固定される
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記空気層が10〜50mmの範囲の層厚を有するように前記凸部の高さが設定される
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記不織布は交絡状態にある複数の繊維が融着材にて融着された断面網目状構造を有してなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の外装材において、
前記融着材は繊維状を有してなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の車両の外装材において、
前記不織布は外部に露出する表層と該表層よりも車体の外面側に位置する内層とを含む積層構造をなし、前記表層は前記内層よりも繊維密度が高く設定されてなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項9】
請求項8に記載の車両の外装材において、
前記不織布は前記表層と線膨張係数の等しい材料により形成される表層を前記表層とは別に有しこれら一対の表層の間に前記内層を介在させた三層構造を有してなる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
前記凸部は前記車両の外面に対して取り付けられる取付部である
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両の外装材において、
タイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられる
ことを特徴とする車両の外装材。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の外装材を具備し、同外装材が車両の外面に取り付けられてなる
車両の吸音構造。
【請求項13】
請求項12に記載の車両の吸音構造において、
前記外装材はタイヤハウスの外面に沿う形状に成形されて同外面に取り付けられる
ことを特徴とする車両の吸音構造。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の車両の吸音構造についてその吸音周波数特性を調整する吸音周波数特性調整方法であって、
前記外装材に入射される車両騒音の周波数特性に基づいて前記凸部の高さが異なる複数種の外装材のうちから特定のものを選択する
ことを特徴とする吸音周波数特性調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−306381(P2006−306381A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96729(P2006−96729)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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