説明

車両の発動の予測

【課題】ターボラグを小さくする制御システムを提供する。ターボチャージ付きの排気量が小さいエンジンで、排気量が大きいエンジンの感覚を与える。
【解決手段】運転者が発動を開始するためにその足をブレーキペダルからアクセルペダルに足を移動する時間間隔中に、排気タービンを回転させる方法である。タービンに対して提供される排気エンタルピーを増大させるために取ることのできる動作は、スロットルを開く、スパークを遅角させる、および排気逃がし弁を閉じるなどを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の発動性能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
排気量が小さめのエンジンを持つ車両は、同じ車両で排気量が大きめのエンジンを持つものよりも高い燃料効率を示すことが知られている。ところが、車両の加速能力は、排気量が少なめであることによって損なわれ、これが力を発生させるためにエンジンに取り込まれる空気を減少させる。また、エンジンの過給によって、排気量が小さめのエンジンの性能は、多くの動作状態で、排気量が大きめのエンジンの性能と類似する場合があることも知られている。さらに一般的には、過給は、ターボチャージャーによって供給されるが、ここにおいて、そうでなければ排出される排気エンタルピーが、排気タービン内の働きとして回収される。排気タービンは、吸気口にある圧縮機と共通のシャフトを持つ。排気タービンで取り出される働きは、吸気ガスを圧縮してエンジンの出力密度を改善するために使用される。ターボラグは、ターボチャージ装備エンジンの欠点として知られている。つまり、車両の発動時などの低いエンジン回転速度では、わずかな量しかエンジンを通過して流れておらず、そのため排気タービンは低速で回転する。エンジン/ターボシステムは、車両運転者がアクセルペダルを踏むことによって要求されたときに回転するが、好ましくない遅延が伴う。ターボラグに対処できれば、ある一定の低速動作状態での性能の欠点を伴わないダウンサイジングおよびターボ過給により、車両の燃料効率は著しく改善しうる。発動性能におけるすべての改良は、自然吸気エンジンに適用することもできる。
【発明の概要】
【0003】
発動性能に対処するために、車輪に連結されたブレーキ、ブレーキに連結された油圧管路(ブレーキへの作動力は油圧管路内の圧力に関連)、および油圧管路に連結された圧力センサーを備えたブレーキシステムを有する車両が開示されている。車両には、内燃エンジン、エンジンに連結されたターボチャージャー、エンジンの吸気口に配置されたスロットルバルブ、車両速度センサー、およびエンジンに電気的に結合された電子制御装置(ECU)、スロットルバルブ、車両速度センサー、および圧力センサーも含まれる。車両の初期の発動は、車両速度センサーが車両が停止したことを示し、かつ圧力センサーからの信号によるシグネチャー(signature)がブレーキペダル解除が目前であることを示すときに、判断される。それに呼応して、ECUは、スロットルバルブがより開放位置に向かうように命令を出す。一実施態様において、ブレーキペダル解除は、圧力センサーが油圧管路内の圧力が、閾値圧力よりも低下したことを示すときに表示される。別の方法として、ブレーキペダル解除は、油圧管路内の圧力の低下率に基づき表示される。
【0004】
車両には、ターボチャージャーの排気タービンの上流と下流に結合されたバイパスダクトと、バイパスダクトに配置された排気逃がし弁も含めることができる。車両の初期の発動が判断されると、ECUは、排気逃がし弁が実質的に完全に閉じた位置になるよう、さらなる命令を出す。
【0005】
ガソリンエンジンへの適用において、スパークプラグは、エンジンシリンダー内に配置され、ECUに電子的に連結される。車両の初期の発動が判断されると、ECUはスパークプラグにスパークのタイミングを遅角させるさらなる命令を出す。
【0006】
一部の代替的方法において、ECUは、所定間隔が経過すると、スロットルバルブをより開放の位置にするという命令を中断する。つまり、例えば、車両の運転者が、運転者が駐車場やその他の低速操作時に減速しているときなどに、ある一定の時間内に発動を命令しなかったとき、発動の予測は中断される。
【0007】
一部の実施態様において、意図的でない発動感覚を避けるために、車両の初期の発動が判断されると、ECUは車輪に結合された少なくとも一つのブレーキに油圧をかけるようさらなる命令を出す。
【0008】
また、初期の発動が検出され、その初期の発動が、車両が停止し、かつ車両に結合されたブレーキペダルが解除されていることの表示が検出されたときになされるといった、車両を制御する方法が開示されている。これに呼応して、エンジントルクの増加が命令される。
【0009】
ブレーキペダルが解除されていることの表示は、センサーからの信号に基づくもので、そのセンサーは、ブレーキペダルに連結されたブレーキオンオフスイッチ、ブレーキペダルに連結されたブレーキペダル位置センサー、および車両のブレーキシステムの油圧管路に連結された圧力センサーのうちのどれか一つである。
【0010】
一実施態様において、スパークのタイミングは、スロットルバルブをより開放位置にする命令と実質的に同時に遅角される。
【0011】
初期の発動が、車両の停止と、車両に結合されたブレーキペダルの解除が目前であるという表示に基づき決定される方法が開示されている。それに呼応して、ターボチャージャーの排気タービンに供給される排気エンタルピーの増大が命令される。エンタルピーの増大は、エンジンの吸気口に連結されているスロットルバルブを開く、エンジンのシリンダに連結されたスパークプラグに対して命令されるスパークのタイミングを遅角させる、エンジンに連結された可変カムシャフトタイミング(VCT)システムのタイミングを調節する、および排気タービンに連結されたバイパスダクトに装備される排気逃がし弁を完全に閉じることによって供給される。
【0012】
一部の実施態様において、車輪に連結されたブレーキは、排気エンタルピーを増大させる命令と実質的に同時に作動する。ブレーキは、車両を停止させておくために作動させることもできる。あるいは、ブレーキは、車両が徐行できるようにするために作動する。ブレーキペダルを再び踏んだ場合、排気エンタルピーを増大させる動作が中断される。アクセルペダルを踏んだ場合には、通常のエンジン運転ストラテジーが採用される。
【0013】
一実施態様において、この動作は、前方への発動のみに適用される。エンジンは、複数の前進ギアおよびバックギアを持つ変速機に連結されるが、ここで排気エンタルピーを増大させる命令は、さらに変速機が前進ギアになっていることに基づく。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両の概略図である。
【図2】本開示の実施態様に従い、車両を発動させるためのアルゴリズムのフローチャートである。
【図3】ブレーキ解除時の時間の関数としての油圧管路内の圧力のグラフである。
【図4】ブレーキ解除時の時間の関数としてのブレーキペダル位置のグラフである。
【図5】本開示の実施態様に従った適応ルーチンである。
【図6】本開示の複数の実施態様に従った予測される車両の発動の適用例をプロットしたものである。
【図7】本開示の複数の実施態様に従った予測される車両の発動の適用例をプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当業者であれば、どれか一つの任意の図を参照しながら例示および記述した実施態様の様々な機能を、一つ以上のその他の図で例示した機能と組み合わせて、明示的には例示または記述していない代替的実施態様を作り出すことができることが理解される。図示した機能の組み合わせにより、典型的な用途についての代表的な実施態様が提供される。ただし、特定の用途または実施について、本開示の教示と一貫した機能の様々な組み合わせや改造が望ましいことがある。当業者であれば、例えば、構成要素が図の実施態様に示されているものとはわずかに異なって配置されているものなど、本開示と一貫した類似した用途または実施を認識できる。当業者であれば、本開示の教示は、その他の用途または実施に適用しうることが理解される。
【0016】
図1において、複数タイプの車両の構成を記述するために使用される車両10が図示されている。図1に図示した全ての構成要素が、それぞれの変形物に含まれるわけではない。例えば、後述する通り、変速機は自動変速機または従来の手動変速機とすることができるが、前者には通常はクラッチペダルは含まれず、後者にはクラッチペダルが含まれる。またさらにその他の構成においては、変速機は、自動変速機能を持つ手動変速機である。
【0017】
車両10には、ターボチャージャー14を備えた内燃エンジン12が含まれる。ターボチャージャー14は、エンジン10の排気管22内に配置された排気タービン20、エンジン10の吸気ダクト18内に配置された圧縮機16、およびタービン20と圧縮機16を連結するシャフト24を持つ。吸気ダクト18内には、電子制御装置(ECU)30の命令下で作動し、エンジン10への空気の流れを制御するスロットルバルブ24がある。タービン20へのバイパスダクト26は、その内部に配置された弁28を持ち、これはECU 30の制御下で作動する。バイパスダクト26および弁28は一般に排気逃がし弁と呼ばれる。
【0018】
本開示において、図1には単一のECU 30が図示されている。ただし、この構成は、便宜上図示されている。ECU 30を参照して説明した機能は、複数のECUでも実施しうることが理解される。
【0019】
車両10には、車両の運転者が前方加速についての希望を表示するために使用する、アクセルペダル32およびブレーキペダル34などの運転者制御が含まれる。アクセルペダル32は、アクセルペダル32の位置をECU
30に伝達するセンサー36に連結されている。従来のブレーキシステムにおいて、ブレーキペダル34は、油圧管路に接続されているブレーキブースター35に連結され、キャリパーを作動させて、車輪38のディスクを締め付ける。運転者は、ブレーキペダル34を作動させ、こうした作動は、それによって車輪38に連結されたブレーキ40を作動するブレーキブースター35が作動することにより補助される。従来のブレーキシステムにおいて、ブレーキ40は、ロール安定性制御または電子安定性制御用などに、運転者の活動とは独立して作動させることもできる。ECU 30は、不安定な操作に呼応して、または車両の転覆を防止するために、一つ以上のブレーキ40の作動を命令して、車両安定性を向上させることもできる。ECU 30は、運転者がブレーキペダルを踏むのとは独立して、ブレーキが車輪のどれか一つに作用するよう命令ができる。一部の車両には、ブレーキペダル34が、運転者のブレーキペダル34への入力を検知するブレーキセンサー46を持つ、電気的ブレーキが搭載されている。ブレーキセンサー46の出力が、ECU 30に供給され、ECU 30は、センサー46からの信号に基づき、圧力がブレーキ40のキャリパーにかかるよう命令を出す。ブレーキブースター35内の圧力センサー48は、ブレーキ40に作用する圧力を表示する。圧力センサー48は、ECU 30に連結されている。こうした電子指令式ブレーキ構成において、ECU 30は、ブレーキペダルを踏むことによってブレーキ操作を命令する運転者とは独立して、ブレーキが一つ以上の車輪にかかるように命令することもできる。
【0020】
エンジン10は、変速機52に連結されている。一実施態様において、変速機52は、トルクコンバータを備えた自動変速機である。トルクコンバータによって、変速機52がギアが入っており、かつアクセルペダル32またはブレーキペダルのどちらも踏まれていないときに、車両は徐行するようになる。別の実施態様において、変速機52は、エンジン12と変速機52の間に連結されたクラッチ(図1には個別に表示されていない)を備えた従来の手動変速機である。クラッチは、クラッチペダル54により、車両10の運転者により制御されている。一部の実施態様において、クラッチペダルセンサー56は、クラッチペダル54に連結させることもできる。クラッチペダルセンサー56からの信号は、ECU 30に連結されている。また別の代替的実施態様において、変速機52は、本質的に1つのユニットに2つの手動変速機があるデュアルクラッチトランスミッション(DCT)である。奇数のギアが1つのクラッチに連結され、また偶数のギアが第二のクラッチに連結されている。変速機は、ECU 30によって完全自動にすることができ、またギアの選択は車両運転者によって制御される。クラッチは、ECU 30の制御下のままである。また別の代替物において、変速機52は、クラッチがロボット制御下にあることを除き、従来の手動変速機と非常によく似た、自動変速マニュアル(ASM)である。歯車は、ECU 30により制御することも、または車両運転者が制御することもできる。変速機52は、車輪38に連結されたシャフト53を含めてドライブトレインを介して車輪38に連結されている。図1の実施態様は、2輪駆動構成を示す。ただし、本実施態様は、限定はされないものの、4輪駆動車両など、任意の適切な構成に適用される。
【0021】
エンジン10は、直接噴射のガソリンまたはディーゼルエンジンの場合においてなど、エンジンシリンダーに連結された燃料噴射装置60を持つ。ポート噴射ガソリンエンジンでは、燃料噴射装置は、吸気マニフォールド18内に位置する。燃料噴射のパルスの幅およびタイミングは、ECU 30によって制御される。燃料噴射装置60は、加圧された燃料を燃料タンクから少なくとも一つのポンプを介して供給するが、図1には燃料系統は図示されていない。ガソリンエンジンにおいて、エンジンシリンダーには、スパークプラグ62も提供されており、そのタイミングはECU 30により制御される。エンジン12には、ピストンの位置に関連して吸気弁のタイミングを調節する可変カムタイミング(VCT)デバイス64が提供されている。カムのタイミングは、ECU 30を介して制御される。その他の実施態様において、排気VCTも提供されている。
【0022】
本開示の一つの実施態様を図示したフローチャートを図2に示す。アルゴリズムは、70で車両速度がゼロである入口条件、すなわち、車両が停止し、車両運転者がブレーキペダル34を踏んでおり、および変速機52がバックギアに入っていない状態で開始される。すなわち、発動性能の強化は、車両の後進には使用されない。制御は、決定ブロック72に移り、ここでブレーキペダル解除が目前であるかどうかが判断される。こうした判断については、下記に詳しく考察する。ブレーキペダル解除が目前でない場合、制御は、ブレーキペダルが解除されるか、または解除が目前となるまで、決定ブロック72に留まり、この場合、制御は74に移り、ここでカウンターi(または代替的に、タイマー)がリセットされる。ここで制御はブロック76に移り、そこでより大きな排気エンタルピーが供給され、排気タービンが回転するようになる動作が取られる。こうした動作には、スロットルバルブ24を開く、スパークのタイミングを遅角させる、まだ閉じていない場合に排気逃がし弁28を完全に閉じる、エンジンに連結された可変カムタイミング(VCT)システムを調節するなどのうち一つ以上の動作が含まれうる。スパークのタイミングが遅角されるとき、エンジンにより生成されるトルクの量が減少し、排気温度が上昇する。トルクの低下を伴うことになるエンジンのrpmの低下を相殺するために、スロットルバルブ24がさらに開く。一実施態様において、エンジンのrpmは、通常のアイドル状態rpmに維持される。一つの代替的方法において、エンジンのrpmはわずかに増大することが許容されるが、車両の運転者がそれほど気付かない程度である。エンジンのrpmの増大が許容されるような実施態様において、自動変速機を備えた車両は、そうではない場合に比べて速い速度で徐行する。予期しない前進移動を回避するために、ECU 30の制御下でブロック74でブレーキがかかる。一実施態様において、ブレーキが、少なくとも一つの車輪にかかり、車両の速度が静止のままになる。別の実施態様において、ブレーキがかかり、トルクコンバータを備えた車両と同様に、従来型のストラテジーに従い、車両が徐行するようになる。ASMまたはDCT変速機を備えた実施態様において、少なくとも車両10が傾斜にあるといった状況で、運転者がブレーキペダルを解除したとき、ECU 30の制御下でブレーキがかかり、それによって、後進または前進が防止される。一般に、従来の手動変速機を備えた実施態様において、車両運転者は、ブレーキペダルを作動させることで、ブレーキを制御する。従来の手動変速機を備えた一部の状況では、ブレーキはECU 30によってはかからない。ブロック78において、iは漸増する。制御は、決定ブロック80に移り、これにより運転者がブレーキペダルを踏んだか、アクセルペダルを踏んだか、またはどちらも踏んでいないかが判断される。運転者がアクセルペダルを踏んだ場合には、ブレーキが解除され、ブロック82で通常の運転が続く。運転者がブレーキペダルを踏んだ場合には、制御がブロック84に移り、ECU
30によるブレーキ制動が解除され、車両運転者によるブレーキペダルの踏み込みによるブレーキ制動に置き換わる。さらに、ブロック74での動作が終了され、通常のストラテジーに取って代わる。どちらも踏まれていない場合、制御は、ブロック86に移り、そこで、カウンターiが閾値と比較される。ブロック76で取った動作は、一時的なものであるという意図があり、例えば、運転者がブレーキペダルから足をはずし、アクセルペダルに移動させて車両を発動させる、すなわち、運転者の発動の意図が予測されるまでの0.5〜1秒間である。ところが、例えば、信号でのまたは駐車場内での操作で、前方に自動車が立ち往生していたり、突然現れたりした場合など、様々な理由から、運転者が発動を選択しないこともできる。こうして、カウンター、あるいは代替的にタイマーは、76での動作が実行を許容されている所定時間を制限するために使用される。所定時間は、0.25〜3秒の範囲とすることができるが、こうした例は非限定的なものである。こうして、決定ブロック86において、カウンターが閾値を超えたことが分かった場合、制御はブロック88に移り、そこで通常のアイドル状態のストラテジーが採用される命令が出されるが、これはすなわち、本開示の範囲外のストラテジーである。決定ブロック86において、カウンターが閾値を超えていないことが分かった場合、ブロック76における動作は、継続が許容される。
【0023】
決定ブロック72において、ブレーキペダルが解除されているかどうかについて判断がなされる。一実施態様において、ブレーキペダルは、オンオフスイッチに連結され、および車両の外側のブレーキランプに連結されている。ブレーキがオフであると判断されたとき、ターボチャージャーを回転させる手段が呼び出される。ブレーキ油圧管路内に圧力センサーのある車両実施態様において、ブレーキの実際の解除は、運転者がブレーキを解除したときの圧力曲線のシグネチャーを評価することにより、予測されうる。こうした時間を関数とした圧力曲線の一例を、図3に曲線100として示す。一実施態様において、ブレーキの目前の解除は、閾値圧力を下回る圧力降下に基づき、この場合、102では、目前のブレーキ解除が判断され、ターボチャージャーを回転させる手段が呼び出される時点を表示する。別の実施態様において、手段は、低下率dP/dtが閾値dP/dtを下回ることに基づく。(図2でのdP/dt閾値は、負の数であることに注意。こうして、低下率が、閾値の率を下回ったとき、つまり負の数値が大きくなったときに低下率は超えることになる。)目前のブレーキ解除は、図2での低下率判定の例について104である。十分に確固とした圧力の導関数を得るには、目前のブレーキ解除の誤った検出を避けるために、適切な平均、フィルタリング、またはその他の技術を採用することもできる。
【0024】
さらに別の実施態様において、ブレーキペダルにブレーキペダル位置センサーが提供されている。曲線110の例を図4に示すが、ここで、グラフの左側でブレーキが踏まれている。ある時点以降、運転者は、足をブレーキペダルから放し、位置センサーからの信号が、ペダルが上がったことを表示している。閾値の位置で、目前のブレーキ解除が検出され、図4で時点112で発生するものとして表示されている。
【0025】
本開示の一部の実施態様によれば、運転者がブレーキを解除中であるという表示を提供する時点と、足がアクセルペダル上にある時点との間に採用される、ターボチャージャーを回転させるために一つ以上の手段が取られる。こうした時間の間隔は、車両の運転者の運転スタイルに大きく依存する。ある運転者は、非常に動作がゆったりとし、ブレーキを解除し、足をゆっくりとアクセルペダルに移動させて加速を始める。他の運転者は素早い動作を迅速に行う。ターボチャージャーラグを克服するために採用される手段に伴う素早さは、運転者の運転スタイルに基づくものとしうる。例えば、運転者の動作が素早い場合、ターボチャージャーを回転させる時間は、ゆったりとした運転者の場合よりもさらに限定的である。一実施態様において、ターボチャージャーを回転させるために取られる手段が、より素早く適用される。一部の実施態様において、手段を適用する時間、すなわち、その手段を終了する前の時間は、運転者がアクセルペダルを踏むことによって発動を呼び出すまでの期待される時間に基づく。例えば、運転者が、ブレーキペダルの解除を示してから、実際にアクセルペダルを踏むまでに2秒かかったとすると、単にスロットルをわずかだけ開き、おそらくスパークを遅角させ、望ましいターボチャージャー速度の増加が得られるようにすることが考えられる。また、ターボチャージャーを回転させる手段を終了することなく、手段の続行が許容される時間の閾値を増加させることもできる。つまり、動作の遅い運転者について、ターボチャージャーをより高速にする動作を、運転者がアクセルペダルを踏むのを待機する間に長めに適用することもできる。その結果として、一実施態様において、ブレーキペダルからアクセルペダルへと移動する時間に関する運転者の運転スタイルが判断され、ターボチャージャーの回転に関連した閾値および手段が、それに従い変化する。
【0026】
ターボチャージャーのない車両においても、発動を準備することが有用である。例えば、無過給のスパーク点火エンジンにおいて迅速な発動を提供するにあたっての遅延の一つが、マニフォールドの充填である。つまり、アイドリング時に、マニフォールド内の圧力は、マイナス1/3気圧の範囲としうる。車輪でのトルクを迅速に得るために圧力を大気圧に近づけるのに、約0.25秒かかることがある。発動の応答は、運転者の発動の意図を予測することにより、少なくともその分だけ改善できる。つまり、運転者がアクセルペダルを踏む前に吸気口内のスロットルバルブがわずかに開けば、車両の発動が早まる。無過給エンジンで、発動性能を改善するにあたっては、スパークの遅角はそれほど重要ではない。ただし、発動に伴うNOxエンジン排出量の増加を予測して、三元触媒などといった排気後処理装置の温度を上げるために使用することができる。もちろん、運転者がアクセルペダルを踏んだときの実際の発動によって、スパークのタイミングは進んで、希望のトルクが提供される。
【0027】
図5に示す適応ルーチンの例において、多くのブロックは、図2のそれと類似したものである。図2の識別数字が、ここで効率の目的で使用されている。ブロック80において、ブレーキペダルを作動するか、アクセルペダルを作動するか、またはどちらも作動しないかのクエリが出される。ブレーキペダルが作動する場合、図5のルーチンは、ブロック120で終了する。アクセルペダルを踏む場合、制御はブロック122に移り、そこでカウンターの値が保存される。カウンターの値は、その車両運転者が足をブレーキペダルからアクセルペダルに移動するのにかかる時間を表示する。どちらのペダルも踏まない場合、制御はブロック86に移り、そこでカウンターが閾値を超えたかどうかが判断される。超えていない場合、78の動作が継続する。決定ブロック86でカウンターが閾値を超えた場合、制御はブロック124に移り、カウンターの値が保存される。ブロック124にアクセスすると、車両運転者は、発動の準備に割り当てられた時間に、ペダルを踏まなかったことになる。これは、運転者が動作のよりゆったりとした運転者であり、発動を呼び出すまでにより長い時間がかかっているためであることがある。制御は124からブロック128に移り、そこで閾値の値は、適応(増加)され、ブロック76で取られた動作の素早さは減少しうる。制御は、ブロック122からブロック126に移り、そこで閾値の値は、適応(減少)され、ブロック76で取られた動作の素早さは増加しうる。
【0028】
図5において、アルゴリズムは、ブロック122と126の間、およびブロック124と128の間に点線のリンクを示している。一実施態様によれば、ブロック126および128での適応は、カウンター値が保存されるたびには実行されない。その代わり、ルーチンを適応する前に、カウンターの複数の値が決定される。例えば、より動作の素早い運転者は、駐車場内にいて、発動を実行しないこともある。こうして、閾値を超えるカウンターが、運転者の一般的なスタイルの変化を示さず、異なる運転シナリオを示す。こうして、ブロック126および128での適応は、複数回の発動からデータを収集した後で実行される。さらに、適応はゆっくりと呼び出されることもある。例えば、最後の10回の発動でカウンターiが閾値よりもかなり下で発生している場合、ブロック122で閾値は減少しうる。しかし、むしろ、減少は制限され、何回かの適応の後で、閾値の値が現在の運転者にとって適切な値に近づく。もちろん、車両は、異なる運転スタイルを持つ複数の運転者により運転される場合がある。こうした場合、適応は、現在の運転者に合わせてゆっくりと調節される。または、運転者が急速に変わる場合、カウンターの値が大きく異なり、新しい指示が明確に示されないため、わずかな適応が起こるかまたは全く適応が起こらない。
【0029】
異なる車両運転者は、異なる運転スタイルを持つ可能性が高い。発動間隔、すなわち、ブレーキペダル解除からアクセルペダルを踏むまでの時間は、運転者によって大きく変化しうる。そのため、一部の実施態様において、発動間隔が各運転者について決定され、すなわち、発動間隔が各運転者に関連付けられる。運転者は、使用するキーフォブ150(図2に表示)によって検出されうる。一実施態様において、センサー154によって判断される運転者のシート152の調節が車両の運転者を区別するために使用される。または、別の実施態様において、センサー154は、車両の運転者を区別するために使用できる重量センサーである。別の方法として、ミラー156に連結された位置センサー158が、特定の運転者を検出するために使用される。さらに別の実施態様において、アクセルペダルを踏む速さや、ブレーキ操作の素早さなどの運転スタイルが、車両運転者を検出するために使用される。
【0030】
発動間隔が比較的短い場合、発動を準備するための動作は、より素早く取られる。一実施態様において、エンジン回転速度は、発動間隔中に増加する。エンジン回転速度を増加させる一つの動作は、発動間隔が短いときにスロットルバルブを大きな角度に開くことである。代替的実施態様において、スロットルバルブを開く速さは、発動間隔が短いときにさらに高くなり得る。
【0031】
エンジンに連結されたターボチャージャーを備えた実施態様において、スパークのタイミングまたは噴射のタイミングを遅角させて、ターボチャージャーへの排気エンタルピーを増大させることが有用であることもある。発動間隔が減少したときに、これらの動作が取られる速度、またはその動作の程度が大きくなる。
【0032】
タイマーカウンターという用語が、図2の参照で使用されている。一実施態様において、アルゴリズムは、クロック計時に基づき、例えば、100ミリ秒ごとに実施される。こうした場合、カウンターは、時間と比例し、直接的に使用できる。別の方法として、アルゴリズムがアルゴリズムの各部を実行するためにかかる時間によってゆがめられないようにするために、カウンターは、実際の時間と関連したものとすべきである。また別の代替的実施態様において、クロックをベースにしたタイマーがカウンターの代わりに使用される。
【0033】
図6および7を参照するが、発動間隔がそれぞれ早いものおよび遅いもの2例を示している。初期の発動の前に、スロットル角度は、第一のスロットル角度、すなわち、通常のエンジンアイドリング状態での角度である。一実施態様において初期の発動が検出されると、スロットルバルブは、点線で示すように第二のスロットル角度に開くように命令を受ける。第二のスロットル角度は、発動間隔の終了まで、または車両運転者がアクセルペダルを踏むことで干渉するまで維持される。別の方法として、スロットルバルブは、それぞれ図6および7でdθ/dt(速)およびdθ/dt(遅)として示した時間をかけてだんだんと開かれる。運転者がより素早い運転スタイルであることが分かっているとき、図6に従い、スロットルはより迅速に開き、発動のための十分な準備を行う。逆に、図7ではスロットルはよりゆっくりと開かれる。一部の用途において、車両の運転者の気を散らすことがあまりないように、スロットルをさらにゆっくりと開くことが望ましいことがある。その他の用途において、素早い発動感覚を保証するために、スロットルをじかに希望の位置まで開くことが望ましいこともある。また、別の用途において、組み合せを採用しうる。
【0034】
最良の態様について詳しく記述してきたが、当業者であれば、下記の請求項の範囲内で、様々な代替的設計や実施態様が認識されることになる。一つ以上の実施態様が、その他の実施態様よりも、および/または従来の技術よりも利点があるか、または望ましいものとして記述されている場合、一つ以上の望ましい特性について、当業者であれば、希望のシステム属性を達成するために、様々な機能で妥協が可能であり、それは特定の用途または実施に依存するものでありうることを認識することになる。これらの属性には、限定はされないものの、コスト、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、寸法、保守性、重量、製造性、組み立てやすさなどがある。一つ以上の特性に関連したその他の実施態様に関連して、それほど望ましくはないものとして記述された実施態様でも、請求の範囲に記載された開示の範囲外ではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
車輪に連結されたブレーキと、前記ブレーキに対する作動力が油圧管路内の圧力に関連する前記ブレーキに連結された油圧管路と、前記油圧管路に連結された圧力センサーを含むブレーキシステムと、
内燃エンジンと、
前記エンジンに連結されたターボチャージャーと、
前記エンジンの吸気口に配置されたスロットルバルブと、
車両速度センサーと、ならびに
前記エンジン、前記スロットルバルブ、前記車両速度センサー、および前記圧力センサーに電子的に連結された電子制御装置(ECU)を備え、車両速度センサーが、前記車両が停止したことと、前記圧力センサーからの信号のシグネチャーが前記ブレーキペダルの解除が目前であることを示し、また前記車両の初期の発動の判断に呼応して、前記ECUが前記スロットルバルブを開放位置に近づけるよう命令するときに車両の初期の発動が判断される車両。
【請求項2】
前記圧力センサーが前記油圧管路内の圧力が閾値圧力より低下したことを示したときに、ブレーキペダル解除が示される、請求項1の車両。
【請求項3】
ブレーキペダル解除が、前記油圧管路内の圧力の低下率に基づき表示される、請求項1の車両。
【請求項4】
請求項1の車両であって、
前記ターボチャージャーの排気タービンの上流と下流に結合されたバイパスダクトと;
前記バイパスダクトに配置され、前記ECUに電子的に結合された排気逃がし弁をさらに備えた車両で、前記車両の初期の発動の判断時に、前記ECUはさらに前記排気逃がし弁に実質的に完全に閉鎖位置にするよう命令を出す車両。
【請求項5】
請求項1の車両であって、
エンジンシリンダー内に配置され、前記ECUに電子的に連結されているスパークプラグをさらに備えた車両で、前記ECUが、さらに前記車両の初期の発動の判断に呼応して、前記スパークプラグにスパークのタイミングの遅角を命令する車両。
【請求項6】
所定間隔の経過に伴い、前記ECUが前記スロットルバルブをより開放位置にする命令を中断する、請求項1の車両。
【請求項7】
前記車両の初期の発動が判断されると、前記ECUが車輪に連結された少なくとも一つのブレーキに油圧をかけるようさらに命令する、請求項1の車両。
【請求項8】
内燃エンジンを持つ車両を制御する方法であって、
前記車両が停止したことと、前記車両に結合されたブレーキペダルが解除されているという表示を受け取ったことの両方に基づき初期の発動を検出し、ならびに
初期の発動の検出に呼応してエンジントルクの増大を命令する方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、前記ブレーキペダルが解除されていることの前記表示がセンサーからの信号に基づき、前記センサーが、
前記ブレーキペダルに連結されたブレーキオンオフスイッチ、
前記ブレーキペダルに連結されたブレーキペダル位置センサー、および
前記車両の前記ブレーキシステムの油圧管路に連結された圧力センサーのうちどれか一つである方法。
【請求項10】
エンジン排気口内に配置された排気タービンと、エンジン吸気口内に配置された圧縮機を持つターボチャージャーが、前記エンジンに連結されており、スロットルバルブをより開放位置に近づける命令によって、より大きな排気エンタルピーが前記排気タービンに供給されるようになる、請求項10の方法であって、その方法が、エンジンシリンダー内に配置されたスパークプラグへのスパークのタイミングを、前記スロットルバルブをより開放した位置にする命令と実質的に同時になるように遅角させることを含む方法。
【請求項11】
内燃エンジンを持つ車両を制御する方法であって、
前記車両が停止したことと、前記車両に結合されたブレーキペダルの解除が目前であるという表示に基づき初期の発動を検出すること;ならびに
初期の発動の検出に呼応して、前記ターボチャージャーの排気タービンに供給される排気エンタルピーの増大を命令することを含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、エンタルピーの前記増大が、
前記エンジンの吸気口に連結されているスロットルバルブを開くこと、
前記エンジンのシリンダに連結されたスパークプラグに対して命令されるスパークのタイミングを遅角させること、
前記エンジンに連結された可変カムシャフトタイミング(VCT)システムのタイミングを調節すること、ならびに
前記排気タービンに連結されたバイパスダクトに装備されている排気逃がし弁を完全に閉じることのうち少なくとも一つによって供給される方法。
【請求項13】
さらに、前記車輪に連結されたブレーキを、排気エンタルピーの増大の命令と実質的に同時に作動させることを含む、請求項11の方法。
【請求項14】
前記ブレーキが作動して、前記車両が停止したままの状態に保つ、請求項13の方法。
【請求項15】
前記ブレーキが作動して、前記車両が徐行できるようになる、請求項13の方法。
【請求項16】
請求項11の方法であって、さらに、
前記ブレーキペダルの監視、および
前記ブレーキペダルが踏まれたことの判断に呼応して、排気エンタルピーの前記増大の命令を中断することを含む方法。
【請求項17】
請求項11の方法であって、さらに、
前記車両に連結されたアクセルペダルの監視、および
前記アクセルペダルが踏まれたことの判断に呼応して:
排気エンタルピーの前記増大の命令の中断と、
標準運転ストラテジーによる前記エンジンへの命令をすることを含む方法。
【請求項18】
請求項11の方法であって、さらに、
排気エンタルピーの増大の命令の開始と同時にカウンターをゼロに設定すること、
排気エンタルピーの前記増大の命令の後で前記カウンターを一定間隔で増加させること、
前記カウンターの値を閾値と比較すること、および
前記カウンターが閾値を超えた時点で排気エンタルピーの増大の前記命令を中断することを含む方法。
【請求項19】
ブレーキが車輪に連結され、前記ブレーキは油圧システムに連結され、油圧によって作動し、また前記ブレーキペダルの解除が目前であるという表示が、前記油圧システムに連結された圧力センサーからの信号に基づく、請求項11の方法。
【請求項20】
前記ブレーキペダルが、ブレーキペダルセンサーに連結され、また前記ブレーキペダルの解除が目前であるという表示が前記ブレーキペダルセンサーからの信号に基づく、請求項11の方法。
【請求項21】
前記エンジンが、複数の前進ギアおよびバックギアを持つ変速機に連結され、また排気エンタルピーの増大の前記命令がさらに、前記変速機が前進ギアに入っていることに基づく、請求項11の方法。
【請求項22】
前記変速機が、従来の手動変速機、デュアルクラッチトランスミッション、および自動変速マニュアルのうち一つであり、クラッチが前記エンジンと前記変速機との間に含まれ、その前記クラッチが解放されている、請求項21の方法。
【請求項23】
ターボチャージャーが前記エンジンに連結され、エンタルピーの前記増大が前記排気タービンに連結されているバイパスダクト内に装備されている排気逃がし弁を完全に閉じることで提供される、請求項11の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97744(P2012−97744A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238045(P2011−238045)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(503136222)フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー (236)
【Fターム(参考)】