説明

車両の障害物検知装置

【課題】レーダユニット1を備えた障害物検知装置において、そのレーダユニット1が誤検知した障害物に対してブレーキ作動手段21等の作動機器(ブレーキ作動手段21、シートベルトプリテンショナ22)が作動するのを出来る限り防止する。
【解決手段】レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定して、誤検知によるものであると判定したときに、そのレーダユニット1が誤検知した場所である誤検知場所を検出して誤検知場所記憶手段(記憶装置19)に記憶しておき、自車両がその記憶した誤検知場所を走行していると判定したときに、作動機器の制御を停止する等して、レーダユニット1が検知した障害物に対してブレーキ等の作動機器を作動させないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両前方の障害物を検知するレーダユニットを備えた車両の障害物検知装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーダ波を自車両前方に送信して、そのレーダ波が自車両前方の障害物に当たって反射してきた反射波を受信することで、障害物を検知するレーダユニットを備えた障害物検知装置はよく知られており、このようなレーダユニットにより検出された障害物に対して接触可能性があると判定したときには、自車両の各車輪に制動力を付与したり、警報器を作動させて乗員に警報を発したりするようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、レーダユニットにより検出された障害物が、先行車両であると判定したときには、その先行車両に対して追従走行を行うようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−215147号公報
【特許文献2】特開2003−200754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなレーダユニットを搭載した車両が、例えば、レーダ波を出力しているような施設(軍事基地等)の近傍や、地中に埋められた高圧電線の点検用等して設けられたマンホールの近傍を走行しているときに、実際には車両前方に存在しない障害物を車両前方に存在するものとして誤って検知する場合がある。この場合、障害物が存在しないにも拘わらず、その誤検知した障害物に対してブレーキ等が作動してしまい、このため、乗員に不審感や煩わしさ感を与えてしまう。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようなレーダユニットを備えた障害物検知装置に対して、その構成を改良することによって、レーダユニットが誤検知した障害物に対してブレーキ等の作動機器が作動するのを出来る限り防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明では、レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定して、誤検知によるものであると判定したときに、その誤検知した場所である誤検知場所を検出して記憶しておき、自車両がその記憶した誤検知場所を走行していると判定したときに、レーダユニットが検知した障害物に対してブレーキ等の作動機器を作動させないようにした。
【0006】
具体的には、請求項1の発明では、自車両前方の障害物を検知するレーダユニットと、該レーダユニットからの障害物検知情報を受けて自車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置を対象とする。
【0007】
そして、上記レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定する誤検知判定手段と、上記誤検知判定手段によって上記障害物が誤検知によるものであると判定されたときに、上記レーダユニットが誤検知した場所である誤検知場所を検出する誤検知場所検出手段と、上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を記憶する誤検知場所記憶手段と、自車両が、上記誤検知場所記憶手段に記憶された誤検知場所を走行しているか否かを判定する誤検知場所走行判定手段とを備え、上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときには、上記レーダユニットが検知した障害物に対して上記作動機器を作動させないように構成されているものとする。
【0008】
上記の構成により、誤検知判定手段によって、レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであると判定されたときには、誤検知場所検出手段によって、そのレーダユニットが誤検知した場所である誤検知場所が検出され、その検出された誤検知場所が誤検知場所記憶手段に記憶される。そして、誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記記憶された誤検知場所を走行していると判定されたときには、作動機器制御手段は、レーダユニットが検知した障害物に対してブレーキ等の作動機器を作動させないようする。すなわち、誤検知場所は、通常、レーダ波を出力しているような施設の近傍や、地中に埋められた高圧電線の点検用等して設けられたマンホールの近傍であり、そのような誤検知が生じる場所では、そこを走行する毎に誤検知が生じる。このため、その誤検知場所を記憶しておき、そこを走行しているときにレーダユニットが検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにする。この結果、自車両が、誤検知場所記憶手段に記憶された誤検知場所を走行する際には、レーダユニットが誤検知した障害物に対してブレーキ等の作動機器が作動するようなことはなくなる。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記誤検知判定手段は、車両前方を撮像する撮像手段を有していて、該撮像手段により撮像された画像データと、上記レーダユニットからの障害物情報とを比較することで、該レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定するように構成されているものとする。
【0010】
このことで、撮像手段により撮像された画像データに、レーダユニットが検知した障害物に対応する物体が存在しないときには、その障害物が誤検知によるものであると判定することができ、レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであるか否かの判定を容易に行うことができる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、上記誤検知判定手段は、上記レーダユニットが検知した障害物に対する自車両の衝突を検出する衝突検出手段を有していて、自車両が該障害物の存在位置を通り過ぎたときにおいて、上記衝突検出手段により該障害物に対する自車両の衝突が検出されなかったときに、上記レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであると判定するように構成されているものとする。
【0012】
すなわち、レーダユニットが誤検知した障害物は、突然現れて消えることが多く、その障害物に対してブレーキ作動手段を作動させているときに消えてしまい、この結果、ブレーキ作動手段の作動を中止することになり、自車両は、その障害物に衝突することなく、その障害物の存在位置(レーダユニットにより存在しているとされる位置)を通り過ぎることになる。したがって、その障害物の存在位置を通り過ぎても衝突が検出されなかったときには、レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであることが容易に分かる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときに、上記レーダユニットが検知した障害物を、上記作動機器の制御対象障害物から除外することで、該障害物に対して該作動機器を作動させないように構成されているものとする。
【0014】
請求項5の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときに、上記作動機器の制御を停止することで、上記レーダユニットが検知した障害物に対して上記作動機器を作動させないように構成されているものとする。
【0015】
これら請求項4及び5の発明により、レーダユニットが誤検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにすることが容易にできる。
【0016】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの発明において、上記誤検知場所記憶手段は、上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所と、同じ誤検知場所の検出回数とを記憶するように構成され、上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときにおいて、当該誤検知場所の検出回数が所定回数以上であるときに、上記レーダユニットが検知した障害物に対して上記作動機器を作動させないように構成されているものとする。
【0017】
このことで、ほぼ確実に誤検知が生じる誤検知場所において、レーダユニットが検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにすることができる。
【0018】
請求項7の発明では、請求項1〜6のいずれか1つの発明において、自車両と、上記障害物検知装置を備えた他車両との間で通信を行うための通信手段を備え、上記通信手段は、自車両及び他車両の上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を相互に送受信するように構成され、上記誤検知場所記憶手段は、自車両及び他車両の上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を記憶するように構成されているものとする。
【0019】
このことにより、複数の車両で誤検知場所の情報を共有することができ、自車両が初めて走行する場所であっても、他車両の誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所において、レーダユニットが検知した障害物に対して作動機器が作動しなくなり、レーダユニットが誤検知した障害物に対してブレーキ等の作動機器が作動する機会を出来る限り低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の車両の障害物検知装置によると、レーダユニットが誤検知した場所である誤検知場所を記憶しておき、自車両がその記憶した誤検知場所を走行していると判定したときに、レーダユニットが検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにしたことにより、レーダユニットが誤検知した障害物に対してブレーキ等の作動機器が作動するのを出来る限り防止することができ、乗員に不審感や煩わしさ感を与えるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る障害物検知装置を搭載した車両W(自車両に相当し、本実施形態では自動車である)を示し、この車両Wの前端部に、車両Wの前方に存在する障害物を検知するレーダユニット1が設けられている。このレーダユニット1は、図2に示すように、ミリ波(レーダ波)を車両Wの前方に向けて略水平方向に所定角度範囲をスキャンしながら送信する送信部2と、そのミリ波が車両Wの前方の障害物に当たって反射してきた反射波を受信する受信部3と、この受信部3で受信したデータに基づいて、後述の如く障害物の検知処理を行う処理部4とを有してユニット化されたものである。
【0023】
上記車両Wには、上記レーダユニット1の処理部4からの障害物検知情報を受けて車両Wの作動機器を制御する作動機器制御手段としてのコントロールユニット11が設けられている。上記作動機器としては、本実施形態では、後述するブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22である。
【0024】
また、上記車両には、図2に示すように、車両Wの車速を検出する車速センサ12と、車両Wに生じるヨーレートを検出するヨーレートセンサ13と、車両Wの障害物への衝突を検出する衝突検出手段としてのGセンサ14とが設けられており、これら各センサ12〜14からの検出情報が上記コントロールユニット11に入力されるようになっている。
【0025】
さらに、上記車両Wには、車両Wの現在位置を検出するGPSセンサ15と、道路地図情報を記憶するDVD−ROM16とが設けられており、これらGPSセンサ15及びDVD−ROM16は、ナビゲーション装置17の構成要素の一部であり、ナビゲーション装置17に設けた制御部が、GPSセンサ15により検出された車両Wの現在位置情報と、DVD−ROM16に記憶された道路地図情報とに基づいて、ナビゲーションを行うようになっている。そして、コントロールユニット11は、上記GPSセンサ15からの情報を入力して、この入力情報に基づいて、後述の誤検知場所を検出するようになっている。
【0026】
また、上記車両Wには、図1及び図2に示すように、車両前方を撮像する撮像手段としてのCCDカメラ18が設けられており、このCCDカメラ18により撮像された画像データが、コントロールユニット11に入力されるようになっている。
【0027】
さらにまた、上記車両Wには、図2に示すように、後述の誤検知場所を記憶する誤検知場所記憶手段としての記憶装置19が設けられており、この記憶装置19は、コントロールユニット11に対して情報を授受可能に接続されている。
【0028】
さらに、上記車両Wには、乗員に対して各種の情報を音声によって報知するためのスピーカ20が設けられており、コントロールユニット11によって、そのスピーカ20の作動が制御される。
【0029】
上記ブレーキ作動手段21は、車両Wのブレーキを作動させて各車輪31に制動力を付与するものである。また、シートベルトプリテンショナ22は、車両Wのシート41に着座している乗員が着用しているシートベルト51を巻き取って該シートベルト51に所定張力を付与することで、該乗員を拘束するものである。
【0030】
ここで、車両Wに搭載されているシートベルト装置について説明する。このシートベルト装置は、図1に示すように、上記シートベルト51を巻き取るリトラクタ部53と、このリトラクタ部53から引き出されたシートベルト51の先端部が取り付けられたラップアンカー部54と、シートベルト51の長さ方向中間部に配設されたタング52が着脱可能に係合するバックル部55とを有する3点式に構成されている。上記バックル部55は、シート41の車幅方向内側で車体に固定されている一方、リトラクタ部53及びラップアンカー部54は、シート41を挟んでバックル部55とは反対側である車幅方向外側で車体に固定されている。上記リトラクタ部53から引き出されたシートベルト51は、シート41の車幅方向外側の上方位置に設けられたスリップガイド57により、その引き出し方向が上向きから下向きに変換されて、その先端部が上記ラップアンカー部54に取り付けられている。上記タング52は、上記スリップガイド57とラップアンカー部54との間でシートベルト51に対して摺動可能に設けられており、このタング52が上記バックル部55に係合されることで、シートベルト51の着用状態となる。
【0031】
上記シートベルト装置のリトラクタ部53内に、上記シートベルトプリテンショナ22が設けられている。本実施形態では、シートベルトプリテンショナ22は、図2に示すように、電動モータ等により上記シートベルト51を巻き取る第1プリテンショナ機構22aと、インフレータで発生するガスにより上記シートベルト51を巻き取る第2プリテンショナ機構22bとからなっており、上記コントロールユニット11が上記レーダユニット1の処理部4からの障害物検知情報に基づいて、車両Wの障害物への衝突を予知したとき(例えば、車両Wが障害物に衝突するまでの予測時間が、予め決めた基準時間よりも短いとき)には、第1プリテンショナ機構22aを作動させることで、シートベルト51に所定張力を付与する一方、コントロールユニット11がGセンサ14により車両Wの障害物への衝突を検出したときには、第2プリテンショナ機構22bを作動させることで、上記第1プリテンショナ機構22aを作動させたときよりも大きな張力をシートベルト51に付与するようになっている。
【0032】
上記コントロールユニット11は、上記車速センサ12及びヨーレート検出センサ13の検出値に基づいて車両Wの旋回半径を求める。具体的には、車両Wの旋回半径Rは、ヨーレートをφとし、車両Wの速度をVとして、
R=V/φ
より求める。
【0033】
尚、車両Wの横加速度を検出する横加速度検出センサ、又は車両Wのステアリングホイールの操舵角を検出する舵角センサを設けて、この横加速度検出センサ又は舵角センサの検出値を、上記ヨーレート検出センサ13の検出値の代わりに用いて車両Wの旋回半径を求めるようにしてもよい。
【0034】
上記レーダユニット1の処理部4は、図2に示すように、受信部3で受信したデータに対してフィルタ処理やFFT処理等のデータ処理を行って、障害物の検知を行うデータ処理部4aと、このデータ処理部4aより、上記処理されたデータを入力し、かつ、上記コントロールユニット11より車両Wの車速及び旋回半径を入力して、これら入力情報に基づいて、上記検知された障害物の、予め設定した設定時間(ミリ波のスキャン時間に対応する時間)経過後の位置を推定する位置推定部4bと、この位置推定部4bにより推定された位置を基準にしてその周囲に所定の大きさの領域を設定するとともに、上記設定時間経過後に検知された障害物が、上記設定された領域内に存在するときには、上記位置を推定した障害物と同一であると判定する一方、領域外に存在するときには、新規な障害物であると判定する同一判定部4cとを有している。同一判定部4cは、こうして検知した障害物の情報(障害物の車両Wとの距離、車両Wに対する方位、相対速度ベクトル(向き及び大きさ)等)を、障害物検知情報として上記コントロールユニット11に送信する。
【0035】
ここで、上記コントロールユニット11による上記作動機器(ブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22)の制御処理動作について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0036】
先ず、最初のステップS1で、車速センサ12及びヨーレートセンサ13の各検出値である車速及びヨーレートを入力し、次のステップS2で、車速及びヨーレートに基づいて車両Wの旋回半径を求め、次のステップS3で、その車速及び旋回半径をレーダユニット1の処理部4における位置推定部4bへ出力する。
【0037】
次のステップS4では、レーダユニット1の処理部4における同一判定部4cより障害物検知情報を入力し、次のステップS5で、その障害物検知情報に基づいて車両Wの障害物への衝突が予知されるか否かを判定する。
【0038】
上記ステップS5の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、ステップS5の判定がYESであるときには、ステップS6に進んで、ブレーキ作動手段21を作動させることで、各車輪31のブレーキを作動させるとともに、シートベルトプリテンショナ22の第1プリテンショナ機構22aを作動させることで、シートベルト51に所定張力を付与する。
【0039】
そして、次のステップS7で、Gセンサ15からの情報に基づいて車両Wの障害物への衝突があったか否かを判定し、このステップS7の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、ステップS7の判定がYESであるときには、ステップS8に進んで、シートベルトプリテンショナ22の第2プリテンショナ機構22bを作動させることで、シートベルト51に更に大きな張力を付与し、しかる後にリターンする。
【0040】
尚、コントロールユニット11は、車両Wと障害物との相対速度及び車両Wの車速に基づいて、レーダユニットが検知した障害物が移動物体であるか又は静止物体であるかを判定しかつ移動物体である場合に先行車両であるか否かを判定して、障害物が先行車両である場合に、予め設定された目標車間距離を維持するように上記ブレーキ作動手段21やスロットル弁開閉アクチュエータ等を制御することで、車両Wを先行車両に対して追従走行させる追従走行制御を行うことも可能である。
【0041】
上記レーダユニット1は、車両Wが、例えば、レーダ波を出力しているような施設(軍事基地等)の近傍や、地中に埋められた高圧電線の点検用等して設けられたマンホールの近傍を走行しているときに、実際には車両W前方に存在しない障害物を、車両W前方に存在するものとして誤って検知する場合があり、そのような誤検知が生じる場所では、そこを走行する毎に誤検知が生じる。
【0042】
そこで、コントロールユニット11は、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定し、誤検知によるものであると判定したときに、そのレーダユニット1が誤検知した場所である誤検知場所を検出し、その誤検知場所を上記記憶装置19に記憶させる。そして、コントロールユニット11は、車両Wが、上記記憶装置19に記憶された誤検知場所を走行しているか否かを判定し、誤検知場所を走行していると判定したときには、レーダユニット1が検知した障害物に対して上記ブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22を作動させないようにする。
【0043】
具体的には、コントロールユニット11は、上記CCDカメラ18により撮像された画像データと、レーダユニット1からの障害物情報とを比較することで、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定する。すなわち、CCDカメラ18により撮像された画像データに、レーダユニット1が検知した障害物に対応する物体が存在しないときには、その障害物が誤検知によるものであると判定し、レーダユニット1が検知した障害物に対応する物体が存在するときには、その障害物が誤検知によるものではないと判定する。
【0044】
また、コントロールユニット11は、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであると判定したときには、レーダユニット1が誤検知した場所である誤検知場所を、GPSセンサ15からの情報に基づいて検出する。すなわち、障害物を誤検知したときの車両Wの現在位置を、GPSセンサ15により検出する。本実施形態では、誤検知場所は、障害物を誤検知したときの車両Wの現在位置を中心とした所定半径(誤検知した正確な位置が確実に含まれるような大きさ)のエリアとする。こうして検出した誤検知場所を上記記憶装置19に記憶させる。尚、乗員の操作に応じて、誤検知場所の記憶処理を行わないようにしてもよく、既に記憶した誤検知場所を消去できるようにしてもよい。
【0045】
そして、コントロールユニット11は、GPSセンサ15からの情報に基づいて、車両Wが、上記記憶装置19に記憶された誤検知場所を走行しているか否かを判定し、誤検知場所を走行していると判定したときには、上記作動機器の制御を停止することで、レーダユニット1が検知した障害物に対してブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22を作動させないようにする。
【0046】
したがって、コントロールユニット11は、作動機器制御手段に加えて、CCDカメラ18と共に、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定する誤検知判定手段を構成する。また、コントロールユニット11及びGPSセンサ15が、誤検知場所を検出する誤検知場所検出手段と、車両Wが、誤検知場所を走行しているか否かを判定する誤検知場所走行判定手段とを構成する。さらに、記憶装置19が、誤検知場所を記憶する誤検知場所記憶手段を構成することになる。
【0047】
上記コントロールユニット11による誤検知に関する処理動作について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
最初のステップS11では、上記作動機器の制御処理(ステップS1〜S8)を実行する。
【0049】
次のステップS12では、GPSセンサ15からの情報に基づいて、車両Wが、記憶装置19に記憶された誤検知場所を走行しているか否かを判定し、このステップS12の判定がNOであるときには、ステップS13に進む一方、ステップS12の判定がYESであるときには、ステップS16に進む。
【0050】
上記ステップS13では、CCDカメラ18により撮像された画像データと、レーダユニット1からの障害物情報とを比較することで、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定し、このステップS13の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、ステップS13の判定がYESであるときには、ステップS14に進む。
【0051】
上記ステップS14では、誤検知場所を検出し、次のステップS15で、その誤検知場所を記憶装置19に記憶させ、しかる後にリターンする。
【0052】
一方、上記ステップS12の判定がYESであるときに進むステップS16では、上記作動機器の制御処理を停止する旨を乗員に対してスピーカ20により報知して、乗員に注意を促し、次のステップS17で、上記作動機器の制御処理を停止する。
【0053】
次のステップS18では、車両Wが誤検知場所を通過したか否かを判定し、このステップS18の判定がNOであるときには、上記ステップS17に戻る一方、ステップS18の判定がYESであるときには、ステップS19に進んで、上記作動機器の制御処理を再開し、しかる後にリターンする。
【0054】
したがって、本実施形態では、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであると判定された場合、そのレーダユニット1が誤検知した場所である誤検知場所が検出されて記憶装置19に記憶される。そして、車両Wが、記憶装置19に記憶した誤検知場所を走行しているときには、上記作動機器の制御処理が停止されて、レーダユニット1が検知した障害物に対して上記作動機器が作動しなくなる。この結果、レーダユニット1が誤検知した障害物、つまり実際には車両W前方に存在しない障害物に対して、各車輪31のブレーキが作動したり、シートベルト51に所定張力が付与されたりするようなことはなくなり、よって、乗員に不審感や煩わしさ感を与えるのを防止することができる。
【0055】
尚、上記実施形態では、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであるか否かの判定を、CCDカメラ18により撮像された画像データと、レーダユニット1からの障害物情報とを比較することで行うようにしたが、車両Wが、レーダユニット1が検知した障害物の存在位置を通り過ぎたときにおいて、Gセンサ14により該障害物に対する車両Wの衝突が検出されなかったときに、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであると判定するようにしてもよい。すなわち、レーダユニット1が誤検知した障害物は、突然現れて消えることが多く、その障害物に対してブレーキ作動手段21を作動させているときに消えてしまい、この結果、ブレーキ作動手段21の作動を中止することになり、車両Wは、その障害物に衝突することなく、その障害物の存在位置(レーダユニット1により存在しているとされる位置)を通り過ぎることになる。したがって、その障害物の存在位置を通り過ぎても衝突が検出されなかったときには、レーダユニット1が検知した障害物が誤検知によるものであることが容易に分かる。この場合、コントロールユニット11及びGセンサ14が、誤検知判定手段を構成することになる。
【0056】
また、上記実施形態では、コントロールユニット11が、車両Wが誤検知場所を走行していると判定したときに、作動機器の制御を停止することで、レーダユニット1が検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにしたが、車両Wが誤検知場所を走行していると判定したときに、レーダユニット1が検知した障害物を、作動機器の制御対象障害物から除外することで、該障害物に対して作動機器を作動させないようにしてもよい。この場合、レーダユニット1が検知した全ての障害物を作動機器の制御対象障害物から除外してもよく、同一判定部4cで新規な障害物であると判定された障害物(つまり誤検知した可能性が高い障害物)のみを作動機器の制御対象障害物から除外してもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、コントロールユニット11が、1回でも誤検知が生じた誤検知場所を車両Wが走行していると判定したときに、レーダユニット1が検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにしたが、記憶装置19には、検出された誤検知場所と、同じ誤検知場所の検出回数とを記憶するようにしておき、車両Wが誤検知場所を走行していると判定したときにおいて、当該誤検知場所の検出回数が所定回数(例えば2乃至3回)以上であるときに、レーダユニット1が検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにしてもよい。こうすれば、ほぼ確実に誤検知が生じる誤検知場所において、レーダユニット1が検知した障害物に対して作動機器を作動させないようにすることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、車両W自体が走行しているときに誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を、車両Wの記憶装置19に記憶させるようにしたが、これに加えて、上記障害物検知装置を備えた他車両の誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を車両Wの記憶装置19に記憶させるようにしてもよい。すなわち、車両Wと、上記障害物検知装置を備えた他車両との間で通信を行うための通信手段としての通信装置(車両Wと他車両との間で直接通信するものであってもよく、インターネット等のネットワークを介して通信するものであってもよい)を、車両W及び他車両にそれぞれ設けておき、この通信装置が、車両W及び他車両の誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を相互に送受信するように構成する。そして、記憶装置19には、車両W及び他車両の誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を記憶するようにする。これにより、複数の車両で誤検知場所の情報を共有することができ、車両Wが初めて走行する場所であっても、他車両の誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所において、レーダユニット1が検知した障害物に対して作動機器が作動しなくなり、レーダユニット1が誤検知した障害物に対して作動機器が作動する機会を出来る限り低減することができる。
【0059】
さらに、上記実施形態では、レーダユニット1は、ミリ波を送信するものとしたが、これに限らず、ミリ波以外のレーダ波を送信するものであってもよい。
【0060】
また、コントロールユニット11(作動機器制御手段)によって制御される作動機器は、ブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22に限らず、例えばスピーカ20等のような警報装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、自車両前方の障害物を検知するレーダユニットを備えた車両の障害物検知装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る障害物検知装置を搭載した車両前側の概略構成図である。
【図2】上記障害物検知装置の構成を示すブロック図である。
【図3】コントロールユニットによる作動機器の制御処理動作を示すフローチャートである。
【図4】コントロールユニットによる誤検知に関する処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
W 車両(自車両)
1 レーダユニット
11 コントロールユニット(作動機器制御手段)(誤検知判定手段)
(誤検知場所検出手段)(誤検知場所走行判定手段)
14 Gセンサ(衝突検出手段)
15 GPSセンサ(誤検知場所検出手段)(誤検知場所走行判定手段)
18 CCDカメラ(撮像手段)(誤検知判定手段)
19 記憶装置(誤検知場所記憶手段)
21 ブレーキ作動手段(作動機器)
22 シートベルトプリテンショナ(作動機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の障害物を検知するレーダユニットと、該レーダユニットからの障害物検知情報を受けて自車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置であって、
上記レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定する誤検知判定手段と、
上記誤検知判定手段によって上記障害物が誤検知によるものであると判定されたときに、上記レーダユニットが誤検知した場所である誤検知場所を検出する誤検知場所検出手段と、
上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を記憶する誤検知場所記憶手段と、
自車両が、上記誤検知場所記憶手段に記憶された誤検知場所を走行しているか否かを判定する誤検知場所走行判定手段とを備え、
上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときには、上記レーダユニットが検知した障害物に対して上記作動機器を作動させないように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の障害物検知装置において、
上記誤検知判定手段は、車両前方を撮像する撮像手段を有していて、該撮像手段により撮像された画像データと、上記レーダユニットからの障害物情報とを比較することで、該レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであるか否かを判定するように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両の障害物検知装置において、
上記誤検知判定手段は、上記レーダユニットが検知した障害物に対する自車両の衝突を検出する衝突検出手段を有していて、自車両が該障害物の存在位置を通り過ぎたときにおいて、上記衝突検出手段により該障害物に対する自車両の衝突が検出されなかったときに、上記レーダユニットが検知した障害物が誤検知によるものであると判定するように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときに、上記レーダユニットが検知した障害物を、上記作動機器の制御対象障害物から除外することで、該障害物に対して該作動機器を作動させないように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときに、上記作動機器の制御を停止することで、上記レーダユニットが検知した障害物に対して上記作動機器を作動させないように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両の障害物検知装置において、
上記誤検知場所記憶手段は、上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所と、同じ誤検知場所の検出回数とを記憶するように構成され、
上記作動機器制御手段は、上記誤検知場所走行判定手段によって自車両が上記誤検知場所を走行していると判定されたときにおいて、当該誤検知場所の検出回数が所定回数以上であるときに、上記レーダユニットが検知した障害物に対して上記作動機器を作動させないように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両の障害物検知装置において、
自車両と、上記障害物検知装置を備えた他車両との間で通信を行うための通信手段を備え、
上記通信手段は、自車両及び他車両の上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を相互に送受信するように構成され、
上記誤検知場所記憶手段は、自車両及び他車両の上記誤検知場所検出手段により検出された誤検知場所を記憶するように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−31847(P2009−31847A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192239(P2007−192239)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】