説明

車両用パーキング機構

【課題】 車両走行中にパーキングレンジへの切り換え操作が行われた場合であってもパーキング機構の負担を低減できる車両用パーキング機構を提供すること。
【解決手段】 運転者の操作によりパーキング指示が出されたときの車速が所定車速以上の場合には、ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)による制動力によって所定車速以下まで減速した後、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)を作動させるパーキングロック制御手段(パーキングコントローラ8)と、を備えたこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用パーキング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用パーキング機構として、特許文献1に記載の技術が知られている。この公報によれば、車速が高い場合にはパーキングレンジ(以下Pレンジと称す)への切り換えを禁止し、車速が低い場合には切り換えを許可し、車速が中間の場合には警告信号を出した後に切り換えを許可している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−280637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっては、車速が中間の場合には比較的高い車速でパーキング機構が作動することになるため、急停車による大きな衝撃がパーキング機構に掛かって負担が大きいという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、車両走行中にPレンジへの切り換え操作が行われた場合であってもパーキング機構に掛かる負担を低減できる車両用パーキング機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、運転者の操作によりパーキング指示が出されたときの車速が所定車速以上の場合には、ブレーキ手段による制動力によって所定車速以下まで減速した後、パーキング手段を作動させるようにしている。
【発明の効果】
【0007】
これにより、車両走行中にパーキングレンジへの切り換え操作が行われた場合であってもパーキング機構の負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車両を説明する全体図である。
【図2】実施例1のパーキングアクチュエータ及びパーキング機構を説明する斜視図である。
【図3】実施例1のパーキング制御処理時を説明するフローチャート図である。
【図4】実施例1のパーキング制御処理時を説明するタイムチャート図である。
【図5】実施例2の車両を説明する全体図である。
【図6】実施例3の車両を説明する全体図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
以下、実施例1を説明する。先ず、全体構成を説明する。図1に示すように、実施例1の車両1は、車輪2と、原動機3(以下、エンジン3と称す)と、自動変速機4と、ブレーキコントローラ5と、ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7と、パーキングコントローラ8と、パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10等が備えられている。車輪2は、左右の前輪2a,2bと左右の後輪2c,2dで構成されている。また、左右の前輪2a,2bは、図示しない操舵機構を介したステアリングホイールSWによって操舵可能に構成されている。エンジン3には、多段変速機型(或いは無段変速機型)の自動変速機4が設けられている。自動変速機4の出力軸でもある駆動軸4aは、左右の前輪2a,2bに連結され、これによって車両1は左右の前輪2a,2bを駆動させて移動可能に構成されている。また、駆動軸4aには車両1の絶対速度を検出する車速センサS1が設けられ、その信号はECU11(Engine Control Unit)に出力される。なお、ECU11には車速センサS1の信号以外にもブレーキペダルBPに設けられたブレーキペダルセンサS2の信号やその他、エンジン3の作動制御に必要な各種センサの信号が入力される。
【0010】
各車輪2には、運転者によってブレーキペダルBPが操作されたときに左右の前輪2a,2bの回転に制動力を付与してブレーキの制動を行うためのブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7がそれぞれ備えられている。実施例1では、ブレーキの制御システムとして公知の電子制御ブレーキシステムが採用されている。即ち、作動液圧に応じて車輪2に制動力を付与するホイールシリンダ等で構成されるブレーキ機構7と、ホイールシリンダの作動液圧を調整するブレーキアクチュエータ6と、ブレーキアクチュエータ6の作動、即ちブレーキの制動を制御するブレーキコントローラ5等が備えられている。また、ブレーキコントローラ5には、ECU11を介して得られた少なくとも車速センサS2やブレーキペダルセンサS2の情報が入力される。そして、運転者によってブレーキペダルBPが操作されると、ブレーキコントローラ5は、ブレーキペダルBPのストローク量及び減速度を演算すると共に、車速に基づいて実際に発生している減速度を検出し、目標減速度と一致するようにブレーキアクチュエータ6の作動、即ち、ブレーキの制動を制御する。また、ブレーキコントローラ5は、各車輪2のブレーキの制動を独立してリニア制御する。さらに、ブレーキコントローラ5は、車輪2のアンチスキッド制御やトラクション制御も行う。その他、ブレーキコントローラ5は、パーキングコントローラ8と電気的に接続され、後述するパーキング制御処理時にはパーキングコントローラ8の指令信号に従いブレーキの制動を制御する。
【0011】
自動変速機4には、自動変速機4の駆動軸4aの回転を拘束してパーキングを行うためのパーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10が備えられている。実施例1では、パーキングの制御システムとして公知の電子制御レンジ切り換えシステムが採用されている。即ち、電子制御レンジ切り換えシステムにおいて、運転席近傍に設けられたレンジセレクタ12には、自動変速機4のシフトレンジに対応するPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、Lレンジ等のいずれかのレンジに入力操作可能なセレクトレバー12aが設けられている。そして、運転者はセレクトレバー12aを意図するレンジセレクタ12のレンジ位置に入力操作することにより、シフトレンジの切り換え指示(例えばPレンジに操作した場合にはパーキングの指示)を出すことが可能な構成になっている。また、レンジセレクタ12には、運転者によって操作されたセレクトレバー12aのレンジ位置を検出するポジションセンサS3が備えられ、その検出信号はパーキングコントローラ8に出力される。パーキングコントローラ8は、自動変速機4の後述するシフトレンジ切換弁43及びそのコントロール系に組み込まれたパーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10を作動させることにより、自動変速機4の駆動軸4aの回転を拘束し、パーキングを行う構成になっている。
【0012】
自動変速機4のシフトレンジ切換弁及びそのコントロール系の構成は、公知の特許文献1に記載の発明のものと同様であるため、概略のみを簡単に説明する。なお、以下に説明する自動変速機のシフトレンジ切換弁及びそのコントロール系の構成はこの発明の構成を限定するものではなく、適宜設計変更できる。図2に示すように、自動変速機4のシフトレンジ切換弁及びそのコントロール系は、モータ41(パーキングアクチュエータ9に相当)と、ディテント機構42と、レンジ切換弁43と、パーキング機構10等で構成されている。モータ41は、パーキングコントローラ8からの指令信号により駆動制御される。ディテント機構42は、モータ41の回転軸41aに噛合されたウォームホイール42aと、このウォームホイール42aとコントロール軸42bを介して固定されたディテントプレート42cと、ディテントプレート42cのカム山42dに弾性力を有して係合するバネ板42eで構成されている。レンジ切換弁43には、自動変速機4の基本油圧となるライン油圧が供給されており、ディテントプレート42cに係合して軸方向に操作されることにより、図示しない排出ポートを切り換えて自動変速機4のシフトレンジを切り換え可能に構成されている。パーキング機構10には、ディテントプレート42cに回動可能に固定されたパーキングロッド10aと、このパーキングロッド10aの先端部及びカム10bを軸方向に摺動可能に保持するサポート10cが備えられている。さらに、パーキング機構10には、サポート10cの上方に配置されたパーキングポール10dと、自動変速機4の駆動軸4aに固定されたパーキングギヤ10eが備えられている。
【0013】
そして、パーキングコントローラ8がレンジセレクタ12のレンジに対応した指令信号をモータ41に出力すると、モータ41が駆動してその回転軸41aがレンジ毎に予め決められた所定回転数だけ回転する。この回転軸41aの回転に伴いウォームホイール42a、コントロール軸42b、及びディテントプレート42cがコントロール軸42bを回転中心として軸回り方向に共に減速されて回転する。すると、ディテントプレート42cの回転に伴いレンジ切換弁43が軸方向に変位して図示しない排出ポートを切り換えることにより、自動変速機4のシフトレンジが対応するレンジセレクタ12のレンジに切り換わる構成になっている。また、パーキングコントローラ8がレンジセレクタ12のPレンジに応じた指令信号をモータ41に出力した場合には、同様にディテントプレート42cが予め決められた所定角度まで回転することにより、パーキングロッド10aのカム10bがサポート10cを乗り上げてパーキングポール10dを図2中上方に変位する。すると、パーキングポール10dの凸部10fがパーキングギヤ10eと噛合して、自動変速機4の駆動軸4aの回転を拘束することにより、車両1の移動を規制する構成になっている。なお、パーキングポール10dの凸部10fがパーキングギヤ10eの歯先面に当接する場合には、カム10bがコイルスプリング10gのバネ荷重に抗してパーキングロッド10aに摺動しながら図中手前側に変位し、パーキングロッド10aのストロークに対する逃げが確保される。これにより、パーキングポール10dの凸部10fがパーキングギヤ10eの歯先面に無理に押し付けられることがなくなり、パーキング機構10の故障防止が図られている。また、パーキングポール10dは図示しないトーションスプリングで図中下方に付勢されており、パーキングの解除時には、パーキングロッド10aが図中手前側に変位すると同時に、パーキングポール10dがトーションスプリングの付勢力で元位置に復帰する。これに伴い凸部10fとパーキングギヤ10eの噛合が解除される構成になっている。その他、パーキングコントローラ8には、ブレーキコントローラ5と同様にECU11と電気的に接続されており、各種センサの出力信号が入力される。
【0014】
次に、作用を説明する。
[パーキング制御処理について]
ここで、車速が中間以上の場合には比較的高い車速状況下でパーキング機構が作動することになるため、急停車による衝撃がパーキング機構に掛かって負担が大きいという問題点があった。この結果、パーキング機構の強度を上げる設計変更が必要となり大型化・重量増を招いてしまう。そこで、実施例1では、車両走行中においてパーキングコントローラ8が図3のフローチャート図を用いて説明するパーキング制御処理を行うようになっている。
【0015】
図3に示すように、先ず、処理を開始してステップS1では、パーキングコントローラ8は、レンジセレクタ12のレンジがPレンジかどうかを判定し、Yesの場合にはステップS2に移行し、Noの場合にはステップS1に戻る。ステップS2では、パーキングコントローラ8は、車速が所定車速以下かどうかを判定し、Yesの場合にはステップS4に移行し、Noの場合にはステップS3に移行する。なお、所定車速の値は適宜設定できる。ステップS3では、パーキングコントローラ8は、ブレーキコントローラ5に指令信号を出力して、ブレーキ機構7を作動させてブレーキの制動を開始することにより車両1を所定減速度で減速した後、ステップS2に戻る。このときのブレーキの制動力は、通常のエンジンブレーキ相当の減速度よりも大きな減速度となる制動力が設定されている。
【0016】
ステップS4では、パーキングコントローラ8は、ブレーキコントローラ5に指令信号を出力して、ブレーキの制動力を増大させることにより、さらに車両1を大きな減速度で減速させた後、ステップS5に移行する。ステップS5では、パーキングコントローラ8は、パーキング機構10を作動させてパーキングを開始した後、ステップS6に移行する。ステップS6では、パーキングコントローラ8は、車速が略0km/hかどうかを判定し、Yesの場合にはステップS7に移行し、Noの場合にはステップS6に戻る。ステップS7では、パーキングコントローラ8は、ブレーキコントローラ5に指令信号を出力して、ブレーキ機構7によるブレーキの制動を解除した後、この処理を終了する。
【0017】
[パーキング制御処理時の車両挙動について]
図4のタイムチャート図に示すように、実施例1のパーキング制御処理によれば、車両1が所定車速以上で走行中に運転者によってパーキング指示が出された時点t1でブレーキの制動が開始され、車両1が減速し始める(図3のステップS1→ステップS2→ステップS3)。続いて、車速が所定車速に低下した時点t2で、ブレーキの制動力が増大することにより車両1がさらに減速し、その直後にパーキングが開始される(図3のステップS4→ステップS5)。続いて、車速が略0km/hになった時点t3でブレーキの制動が解除される(図3のステップS6→ステップS7)。これに伴い車両1は慣性力による惰性で僅かに移動して車速が僅かに上昇した後(時点t4)、停止することとなる(時点t5)。
【0018】
[パーキング機構の負担低減作用と小型・軽量化について]
このように、実施例1では、パーキングに合わせてブレーキの制動を実施する構成としているため、車速を低くした状態(車両1の運動エネルギーを減少させた状態)でパーキング機構10を作動させることが可能となる。この結果、高い車速でパーキング指示が出された場合であっても、パーキング機構10に掛かる負担を低減でき、損傷を防止できる。加えて、運転者や同乗者に作用する車両急停止時の衝撃緩和効果が得られる。さらに、パーキング機構10の負担が減ることで必要強度を下げる設計が可能となり、小型化・軽量化を図れる。
【0019】
[ブレーキの制動開始時の制動について]
また、ブレーキの制動開始時からの減速度をエンジンブレーキにおける減速度よりも大きな減速度としている。この結果、例えば運転者が誤操作によりPレンジに操作してしまった場合に、通常の減速度とは異なるフィーリングを与えることで、運転者に注意喚起できる。なお、エンジンブレーキにおける減速度よりも大きな減速度は、運転者に不快感を与えない程度に適宜設定される。
【0020】
[所定車速以下になったときのブレーキの制動について]
また、車速が所定車速以下に低下した場合には、ブレーキの制動力はそのままで、パーキング機構10を作動させるのではなく、ブレーキの制動力を増大すると同時にパーキング機構10を作動させている。この結果、ブレーキの制動力を車両1の運動エネルギーの吸収に利用でき、パーキング機構10の負担を更に減らすことができる。さらに、実施例1では車速が所定車速以下になったとき、先ず、ブレーキの制動力を増大し、その直後にパーキング機構10の作動を共に行うようにしている。この結果、ブレーキの制動力による効果を特に得られる。
【0021】
[パーキング機構の信頼性について]
また、パーキングが開始されて車速が略0km/hになったときにブレーキの制動を解除するようにしている。この結果、ブレーキの制動が解除された車両1は慣性力による惰性で僅かに移動してパーキングギヤ10eが僅かに回転するため、パーキングギヤ10eとパーキングポール10dの凸部10fの位相を比較的低い回転で合わせて良好に噛合させることができ、パーキング機構10の作動信頼性を向上できる。
【0022】
以上説明したように、この実施例にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(1)運転者により操作されるレンジセレクタ12と独立して電気信号により作動するパーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)と、運転者により操作されるブレーキペダルBPと独立して電気信号により作動するブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)と、車速を検出可能な車速検出手段(車速センサS1)と、運転者の操作によりパーキング指示が出されたときの車速が所定車速以上の場合には、ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)による制動力によって所定車速以下まで減速した後、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)を作動させるパーキングロック制御手段(パーキングコントローラ8)と、を備えたこととした。これにより、車両走行中にPレンジへの切り換え操作が行われた場合であってもパーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の負担を低減できると同時に、小型・軽量化を実現できる。
【0023】
(2)所定車速以下に達するまでのブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)による制動力は、通常のエンジンブレーキ相当の減速度よりも大きな減速度となる制動力であることとした。これにより、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の負担の低減と運転者への注意喚起を実現できる。
【0024】
(3)パーキングロック制御手段(パーキングコントローラ8)は、所定車速以下となったときは、ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)による制動力を増大させることとした。これにより、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の負担の低減と小型・軽量化を実現できる。加えて、ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)による制動力を増大した後、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)を作動させた場合には、その効果をさらに期待できる。
【0025】
(4)パーキングロック制御手段(パーキングコントローラ8)は、ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)の作動を、車速が略0km/hになった時点で停止させることとした。これにより、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の作動信頼性を向上できる。
【実施例2】
【0026】
以下、実施例2を説明する。実施例2において、実施例1と同様の構成については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。実施例2の発明では、図5に示すように、左右の前輪2a,2bに公知の特開2006−298191号公報に記載のものと同様の駐車ブレーキ機構20(駐車ブレーキ用アクチュエータ21共)がそれぞれ設けられている。なお、実施例2では駐車ブレーキ用アクチュエータ21が左右の前輪2a,2bにそれぞれ設けられており、独立制動可能に構成されている。そして、実施例1で説明したブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7によるブレーキの制動を駐車ブレーキ機構20(駐車ブレーキ用アクチュエータ21共)が行う構成になっている。
【0027】
従って、主ブレーキである実施例1のブレーキ機構7をバイワイヤ化する場合と比較して、ケーブルで操作される構造が多数を占める駐車ブレーキ機構20をバイワイヤ化する方が簡潔な構造とし易く好適となる。また、パーキング制御処理時において駐車ブレーキ機構20が失陥した場合であっても、主ブレーキに影響がないので、車両1全体の信頼性を確保できる。なお、駐車ブレーキ機構20(駐車ブレーキ用アクチュエータ21共)は左右の前輪2a,2bまたは左右の後輪2c,2dのいずれか一方に配設されるのが一般的であるため、停車時の安定性確保の観点から、ある程度パーキング機構10が作動する許可車速に制限を設ける必要がある。
【0028】
以上説明したように、この実施例にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(5)ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)は、駐車用ブレーキ装置(駐車ブレーキ機構20及び駐車ブレーキ用アクチュエータ21)であることとした。これにより、車両走行中に使用される主ブレーキの操作性に悪影響を与えず、且つ、操作系(ブレーキペダルBP等)と切り離して操作できるバイワイヤ方式に変更しても走行中に制動機能が失陥する虞がない。また、車両1全体としての信頼性を確保しながらパーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の小型・軽量化を図ることができる。
【実施例3】
【0029】
以下、実施例3を説明する。実施例3において、実施例1〜2と同様の構成については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。実施例3の発明では、実施例1で説明した車両1を電気自動車に適用した例である。具体的には、図6に示すように、実施例1で説明したエンジン3及び自動変速機4の代わりに、車両1の左右の後輪2c,2dの駆動軸4aには、それぞれ減速機30aを介して駆動モータ30が設けられている。また、これら各駆動モータ30にはバッテリ31に充電された電力がインバータ32を介してそれぞれ供給される。即ち、各駆動モータ30によって左右の後輪2c,2dは独立して回転駆動可能に構成されている。また、各駆動モータ30には車輪2との間でトルク授受を行うモータジェネレータ33が設けられており、トルク回生制動に伴い駆動モータ30で発電する電力がバッテリ31に充電される構成になっている。なお、回生された電力はバッテリ31に限らずその他の補器等に供給する構成にしても良い。バッテリ31は、公知の電気自動車と同様に、繰り返し充放電が可能なニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、またはリチウムイオン電池等の二次電池が採用されている。また、通常、バッテリ31は複数のバッテリモジュールで構成され、各モジュールは接続配線で互いに電気的に直列または並列に接続されている。
【0030】
また、左右の後輪2c,2dの駆動軸4aには、該駆動軸4aの回転を拘束するためのパーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10がそれぞれ設けられている。なお、パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10の構成は、実施例1で説明したパーキング機構10のパーキングロッド10aとパーキングアクチュエータ9(モータ41)が機械的に連結されて作動すること以外は実施例1と同様であるため、その説明は省略する。パーキングアクチュエータ9は油圧式またはエア式等のアクチュエータで代用することもできる。その他、左右の駆動軸4aには回転検出器等で構成される車輪速センサS4がそれぞれ設けられている。
【0031】
[車両挙動の抑制について]
このように構成された車両1では、駆動輪としての左右の後輪2c,2dにそれぞれパーキング機構10を備える必要があるため、パーキング制御処理時においてブレーキ機構7として左右の後輪2c,2dの制動力を独立して調整可能な構成となる。従って、例えば、ブレーキの制動中に左右の後輪2c,2dのうちの一方のみが低μ路等に乗り上げて車速と一致しない回転数となった場合、左右のブレーキ機構7により左右独立して制動力を調整でき、常時最適な車輪速を保つことができる。この結果、左右同時にパーキング機構10を作動させた場合に、車両挙動が乱れる等の不具合を防止できる。或いは、パーキング指示が出され、左右の車輪速が同一車輪速に制御されている条件を満たしたときに、左右のパーキング機構10を同時に作動させる構成にすることで、パーキング機構10の作動に伴う急制動時においても車両挙動の乱れを小さく留めることができる。
【0032】
[パーキング機構の強度保証信頼性について]
また、強調作動するブレーキ機構7及びパーキング機構10を同一の車輪2に作用するよう構成されるため、制御される車輪速を車両速度として制御できる。この結果、パーキング機構10の作動許可車速である所定車速をより正確に把握することができ、パーキング機構10の強度保証信頼性を更に向上できる。
【0033】
[ブレーキ機構等の耐久性について]
また、実施例1の図3のステップS3で説明した通常のエンジンブレーキ相当の減速度よりも大きな制動力を得る手段として、モータジェネレータ33による駆動モータ30の回生制動を利用することができる。この場合、車両運動エネルギーを有効なエネルギーとして回収しつつ、酷使されることがあるブレーキ機構7を含む機械部品の損傷を低減でき、耐久性を向上できる。
【0034】
以上説明したように、この実施例にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(6)ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)は、左右の車輪2の制動力を独立して調整可能な構成であることとした。これにより、常時最適な車輪速を保つことができ、左右同時にパーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)を作動させた場合に、車両挙動が乱れる等の不具合を防止できる。
【0035】
(7)ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)及びパーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)は、同一車輪2に作用するように設けられることとした。これにより、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の作動の許可車速である第2所定車速をより正確に把握でき、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の強度保証信頼性を向上できる。
【0036】
(8)車輪2との間でトルク授受を行うモータジェネレータ33を有し、ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)は、モータジェネレータ33の回生トルクによる制動力を含むこととした。これにより、車両運動エネルギーを有効なエネルギーとして回収しつつ、酷使されることがあるブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)を含む機械部品の損傷を低減できる。
【0037】
(9)左右の車輪2それぞれにブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)及びパーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)を有し、左右の車輪2それぞれの車輪速を検出する車輪速検出手段(車輪速センサS4)を設け、パーキングロック制御手段(パーキングコントローラ8)は、左右の車輪速が略同一車輪速に制御されている条件を満たしたときに、左右のパーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)を同時に作動させることとした。これにより、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の作動に伴う急制動時においても車両挙動の乱れを小さく留めることが可能となる。
【実施例4】
【0038】
以下、実施例4を説明する。実施例4において、実施例1〜3と同様の構成については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。実施例4の発明では、実施例1で説明したパーキング制御処理時における所定速度が略0km/hに設定されている例である。従って、パーキング機構10が作動する前に、車両運動エネルギーの大部分を、車両運動エネルギーを吸収するのに好適なブレーキ機構7で吸収できる。この結果、パーキング機構10が負担する車両運動エネルギーを限りなく低減でき、パーキング機構10の役割を略静止している車両1の状態保持に限定できるので、パーキング機構10を大幅に小型・軽量化できる。
【0039】
以上説明したように、この実施例にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(10)所定車速は、略0km/hであることとした。これにより、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)の強度を車両1を停止させ続ける静的強度保証に限定でき、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)を大幅に小型・軽量化できる。
【0040】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、車輪、パーキング手段(パーキングアクチュエータ9及びパーキング機構10)、ブレーキ手段(ブレーキアクチュエータ6及びブレーキ機構7)等の設置数、設置位置、及び具体的な機械的構造及び機械的動作はこの実施例に限定されるものではなく、適宜設定できる。勿論、ブレーキコントローラ5とパーキングコントローラ8を同一のコントローラで構成することもできる。また、実施例3の駆動モータを車輪の内側に配置された所謂インホイールモータに適用しても良い。同様に、この発明をエンジンと駆動モータが協働するハイブリッド型電気自動車に適用しても良い。
【符号の説明】
【0041】
6 ブレーキアクチュエータ
7 ブレーキ機構
8 パーキングコントローラ
9 パーキングアクチュエータ
10 パーキング機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により操作されるレンジセレクタと独立して電気信号により作動するパーキング手段と、
運転者により操作されるブレーキペダルと独立して電気信号により作動するブレーキ手段と、
車速を検出可能な車速検出手段と、
前記運転者の操作によりパーキング指示が出されたときの車速が所定車速以上の場合には、前記ブレーキ手段による制動力によって前記所定車速以下まで減速した後、前記パーキング手段を作動させるパーキングロック制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用パーキング機構において、
前記所定車速以下に達するまでの前記ブレーキ手段による制動力は、通常のエンジンブレーキ相当の減速度よりも大きな減速度となる制動力であることを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用パーキング機構において、
前記パーキングロック制御手段は、前記所定車速以下となったときは前記ブレーキ手段による制動力を増大させることを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1つに記載の車両用パーキング機構において、
前記パーキングロック制御手段は、前記ブレーキ手段の作動を、車速が略0km/hになった時点で停止させることを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1つに記載の車両用パーキング機構において、
前記ブレーキ手段は、駐車用ブレーキ装置であることを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1つに記載の車両用パーキング機構において、
前記ブレーキ手段は、左右の車輪の制動力を独立して調整可能な構成であることを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1つに記載の車両用パーキング機構において、
前記ブレーキ手段及びパーキング手段は、同一車輪に作用するように設けられることを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1つに記載の車両用パーキング機構において、
車輪との間でトルク授受を行うモータジェネレータを有し、
前記ブレーキ手段は、前記モータジェネレータの回生トルクによる制動力を含むことを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1つに記載の車両用パーキング機構において、
左右の車輪それぞれに前記ブレーキ手段及びパーキング手段を有し、
前記左右の車輪それぞれの車輪速を検出する車輪速検出手段を設け、
前記パーキングロック制御手段は、前記左右の車輪速が略同一車輪速に制御されている条件を満たしたときに、前記左右のパーキング手段を同時に作動させることを特徴とする車両用パーキング機構。
【請求項10】
請求項1ないし9いずれか1つに記載の車両用パーキング機構において、
前記所定車速は、略0km/hであることを特徴とする車両用パーキング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−214976(P2010−214976A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60376(P2009−60376)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】