説明

車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置

【課題】効果的な潤滑を実現する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置を提供する。
【解決手段】潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、ドレン油路から排出される潤滑油をオイルクーラ124を介することなく入力側可変プーリ42及び/又は出力側可変プーリ46に供給するものであることから、潤滑油温度が比較的低い場合において特に損失が生じ易いプーリ軸受部134、136の潤滑に、比較的温度の高いドレン油路から排出される潤滑油をオイルクーラ124を介することなく供給することで、車両の始動時等の低油温時において効率的な潤滑を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置に関し、特に、効率的な潤滑を実現するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンに連結され、そのエンジンの出力を無段階に変速できる車両用無段変速機が知られている。例えば、油圧によりベルトを挟圧して動力を伝達すると共に、そのベルトの掛かり径を変更して変速比を変化させるベルト式無段変速機等である。また、斯かる無段変速機において効率的な潤滑を行うための油圧制御回路が提案されている。例えば、特許文献1に記載された無段変速機用前後進切換機構の凍結対策装置がそれである。斯かる技術によれば、作動油を冷却するオイルクーラへの流入液の一部を切換クラッチに放射してその切換クラッチを温める分岐路を設けることで、低温時において前後進切換機構の潤滑を確実に行うことができるとされている。
【0003】
【特許文献1】実開平4−46259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述したような従来の技術は、前記ベルト式無段変速機に関して特に効率的な潤滑を実現し得るものではなかった。本出願人等は、前記ベルト式無段変速機の効率的な潤滑を実現すべく鋭意研究を継続する過程において、(a)潤滑油温度が比較的高い場合すなわち潤滑油粘性が比較的低い場合には、プーリの損失が低減すること、及び(b)潤滑油温度が比較的高い場合すなわち潤滑油粘性が比較的低い場合には、ベルトの損失は潤滑油温度が比較的低い場合と略変わらないことを新たに見出し、斯かる知見に基づいて車両用ベルト式無段変速機の効率的な潤滑を実現する潤滑油路制御装置を発明するに至った。
【0005】
本発明は、斯かる事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、効果的な潤滑を実現する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、有効径が可変である入力側可変プーリ及び出力側可変プーリと、それら入力側可変プーリ及び出力側可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを、有する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置であって、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、ドレン油路から排出される潤滑油をオイルクーラを介することなく前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給することを特徴とするものである。
【0007】
また、前記目的を達成するために、本第2発明の要旨とするところは、有効径が可変である入力側可変プーリ及び出力側可変プーリと、それら入力側可変プーリ及び出力側可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトと、エンジンから出力されるトルクの伝達を流体を介して制御するトルクコンバータとを、有する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置であって、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、前記トルクコンバータにおいて使用された潤滑油を前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、前記第1発明によれば、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、ドレン油路から排出される潤滑油をオイルクーラを介することなく前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給するものであることから、潤滑油温度が比較的低い場合において特に損失が生じ易いプーリの潤滑に、比較的温度の高いドレン油路から排出される潤滑油を供給することで、車両の始動時等の低油温時において効率的な潤滑を実現することができる。すなわち、効果的な潤滑を実現する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置を提供することができる。
【0009】
また、前記第2発明によれば、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、前記トルクコンバータにおいて使用された潤滑油を前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給するものであることから、潤滑油温度が比較的低い場合において特に損失が生じ易いプーリの潤滑に、比較的温度の高い前記トルクコンバータにおいて使用された潤滑油を供給することで、車両の始動時等の低油温時において効率的な潤滑を実現することができる。すなわち、効果的な潤滑を実現する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置を提供することができる。
【0010】
また、前記第2発明において、好適には、前記トルクコンバータは、直結クラッチを備えたものであり、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、その直結クラッチの係合状態を制御するために使用された潤滑油を前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給するものである。このようにすれば、直結クラッチの係合状態を制御するために使用されることで比較的温度の上昇した潤滑油をプーリに供給することで、車両の始動時等の低油温時において効率的な潤滑を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明が好適に適用される車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用される横置き型自動変速機であって、走行用の動力源であるエンジン12から出力される動力を左右の駆動輪24L、24Rへ伝達する動力伝達装置である。すなわち、斯かるエンジン12の出力は、そのエンジン12のクランク軸、流体伝動装置としてのトルクコンバータ14、前後進切換装置16、ベルト式無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20、及び差動歯車装置22を介して左右の駆動輪24L、24Rへ分配されるように構成されている。
【0013】
上記エンジン12は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ14は、上記エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、及びトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸34を介して上記前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それらポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間には直結クラッチ(ロックアップクラッチ)26が設けられている。この直結クラッチ26は、後述する油圧制御装置100(図4を参照)によって係合又は解放されるようになっており、その直結クラッチ26が完全係合させられることによって上記ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tは一体回転させられるように構成されている。また、上記ポンプ翼車14pには、上記ベルト式無段変速機18を変速制御したり、そのベルト挟圧力を発生させたり、上記直結クラッチ26を係合解放制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧(元圧)を、上記エンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
【0014】
前記前後進切換装置16は、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1と、ダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを、主体として構成されている。この前後進切換装置16に関して、前記トルクコンバータ14のタービン軸34がそのサンギヤ16sに一体的に連結されると共に、前記ベルト式無段変速機18の入力軸36がキャリア16cに一体的に連結されている。また、上記キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結されると共に、上記リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材であるハウジングに選択的に固定されるようになっている。なお、上記前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、好適には、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0015】
上述のように構成された前後進切換装置16において、上記前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放されると、前記前後進切換装置16は一体回転状態とされることにより前記タービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が前記ベルト式無段変速機18側へ伝達される。また、上記後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放されると、前記前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前記入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が前記ベルト式無段変速機18側へ伝達される。また、上記前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放されると、前記前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)とされる。
【0016】
前記ベルト式無段変速機18は、前記トルクコンバータ14及び前後進切換装置16を介して前記エンジン12に連結され、そのエンジン12の出力を無段階に変速できる車両用無段変速機であって、その入力軸36に設けられた有効径が可変の入力側可変プーリ(プライマリシーブ)42と、出力軸44に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ(セカンダリシーブ)46と、それら可変プーリ42、46の間に巻き掛けられた伝動ベルト48とを、備えて構成されている。
【0017】
上記可変プーリ42及び46は、前記入力軸36及び出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42a及び46aと、それら入力軸36及び出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42b及び46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての入力側油圧シリンダ42c及び出力側油圧シリンダ46cとを、それぞれ備えて構成されている。斯かる可変プーリ42及び46においては、上記入力側油圧シリンダ42cへの作動油の供給排出流量が後述する油圧制御装置100によって制御されることにより、上記可変プーリ42、46のV溝幅が変化して上記伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。また、上記出力側油圧シリンダ46cの油圧であるセカンダリ圧(以下、ベルト挟圧という)Poutが後述する油圧制御装置100によって調圧制御されることにより、上記伝動ベルト48に滑りが生じないようにベルト挟圧力が制御される。
【0018】
図2は、前記車両用駆動装置10等を制御するために車両に設けられた電子制御装置50に係る入出力信号を説明するブロック線図である。この電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記エンジン12の出力制御、ベルト式無段変速機18の変速制御及びベルト挟圧力制御、乃至は前記直結クラッチ26のトルク容量制御等を実行するように構成されており、必要に応じて前記エンジン12の制御用と前記ベルト式無段変速機18乃至直結クラッチ26の制御用等に分けて構成される。
【0019】
図2に示すように、上記電子制御装置50には、車両の各部に設けられてその車両の状態を示す各種センサからの信号が入力されるようになっている。すなわち、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸回転角度(位置)ACR(°)及び前記エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NEに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出された前記タービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NTを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された前記ベルト式無段変速機18の入力回転速度である前記入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NINを表す信号、車速センサ(出力軸回転速度センサ)58により検出された前記ベルト式無段変速機18の出力回転速度である前記出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTすなわち出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vを表す車速信号、スロットルセンサ60により検出された前記エンジン12の吸気配管32(図1を参照)に備えられた電子スロットル弁30のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、冷却水温センサ62により検出された前記エンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された前記ベルト式無段変速機18等の油圧回路の油温TCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出されたアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度ACCを表すアクセル開度信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号、プーリ軸受温度センサ75により検出された前記入力側可変プーリ46及び/又は出力側可変プーリ46の軸受部(ベアリング)の温度TPBを表す信号等が供給されるようになっている。
【0020】
また、前記電子制御装置50からは、車両の各部における作動を制御するための信号が出力されるようになっている。すなわち、前記エンジン12の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号SEとして、例えば上記電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置80による前記エンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号等が出力される。また、前記ベルト式無段変速機18の変速比γを変化させるための変速制御指令信号ST例えば前記入力側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御するソレノイド弁DS1及びソレノイド弁DS2を駆動するための指令信号、前記伝動ベルト48の挟圧力を調整させるための挟圧力制御指令信号SB例えばベルト挟圧Poutを調圧するリニアソレノイド弁SLSを駆動するための指令信号、前記直結クラッチ26の係合乃至解放を制御するためのロックアップ制御指令信号例えば前記直結クラッチ26の係合状態と解放状態とを切り換えるためのロックアップコントロールバルブ114の作動を制御するソレノイド弁DSUを駆動するための指令信号、ライン油圧PLを制御するリニアソレノイド弁SLTを駆動するための指令信号、及び後述する潤滑油路切換バルブ115の弁子位置を切り換えるためにソレノイド弁SLを駆動するための指令信号等が後述する油圧制御装置100へ出力されるようになっている。
【0021】
前記シフトレバー74は、例えば運転席の近傍に配設され、順次位置させられている5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、及び「L」のうちの何れかへ手動操作されるようになっている。この「P」ポジション(レンジ)は、前記車両用駆動装置10の動力伝達経路を解放しすなわちその車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に前記出力軸44の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)である。また、「R」ポジションは、前記出力軸44の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)である。また、「N」ポジションは、前記車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)である。また、「D」ポジションは、前記ベルト式無段変速機18の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)である。また、「L」ポジションは、強いエンジンブレーキが作用させられるエンジンブレーキポジション(位置)である。このように、「P」ポジション及び「N」ポジションは車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジション及び「L」ポジションは車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。
【0022】
図3は、前記トルクコンバータ14に備えられた直結クラッチ26の係合状態を制御するために用いられる関係の一例を示す図である。前記電子制御装置50は、前記トルクコンバータ14に備えられた直結クラッチ26の係合状態の制御に関して、専ら加速走行時には、例えば図3に示すようなスロットル弁開度θTH及び車速Vを変数とする二次元座標において解放領域乃至係合領域を有する予め記憶された関係(マップ、ロックアップ領域線図)から、実際のスロットル弁開度θTH及び車速Vに基づいて係合領域乃至解放領域の何れの領域に属するかを判断し、その判断した領域の作動状態となるように前記直結クラッチ26の作動状態を切り換えるロックアップ制御指令信号を後述する油圧制御装置100へ出力する。その油圧制御装置100では、上記ロックアップ制御指令信号に従って前記直結クラッチ26の作動状態が切り換えられるように、後述するソレノイド弁DSUを作動させる。
【0023】
図4は、前記車両用駆動装置10に備えられた油圧制御装置100のうちライン油圧制御及び前記直結クラッチ26の係合状態の制御等に関する部分を示す要部油圧回路図である。この図4に示す油圧制御回路100は、前記エンジン12により回転駆動される前記オイルポンプ28により発生させられる元圧をリニアソレノイド弁SLTの出力油圧である制御油圧PSLTに基づいて例えばエンジン負荷等に応じたライン油圧PLに調圧するリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(ライン油圧調圧弁)110と、そのプライマリレギュレータバルブ110によるライン油圧PLの調圧のためにそのプライマリレギュレータバルブ110から排出される作動油を例えば制御油圧PSLTに基づいて第2ライン油圧PL2に調圧するリリーフ型のセカンダリレギュレータバルブ(第2ライン油圧調圧弁)112と、ソレノイド弁DSUの出力油圧である制御油圧PDSUに基づいて前記直結クラッチ26の係合状態と解放状態とを切り換えるロックアップコントロールバルブ114と、ソレノイド弁SLの出力油圧である制御油圧PSLに基づいて前記ベルト式無段変速機16の可変プーリ42、46それぞれの軸受部(ベアリング)に供給される潤滑油の供給油路を切り換える潤滑油路切換バルブ115とを、備えている。
【0024】
また、図4には示さないが、前記油圧制御装置100は、前記伝動ベルト48が滑りを生じないようにそのベルト挟圧Poutを調圧する挟圧力コントロールバルブ、上記リニアソレノイド弁SLT等の元圧としての一定圧のモジュレータ圧PMを調圧するモジュレータバルブ、変速比γが連続的に変化させられるように前記入力側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御するアップ用変速比コントロールバルブ及びダウン用変速比コントロールバルブ、それらアップ用変速比コントロールバルブ及びダウン用変速比コントロールバルブによる作動油の給排作動が行われないときに前記入力側油圧シリンダ42cに所定の油圧としての推力比制御油圧Pτを作用させて変速圧Pinとベルト挟圧Poutとの比率を予め定められた関係とする推力比コントロールバルブ、及び前記前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が係合或いは解放されるように前記シフトレバー74の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ等を備えている。
【0025】
前記プライマリレギュレータバルブ110は、前記オイルポンプ28から吐出された作動油を入力ポート110iを開閉して出力ポート110tから第2ライン油路116へ一部を余剰油として排出する図示しないスプール弁子と、そのスプール弁子を閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、スプール弁子に閉弁方向の推力を付与するために制御油圧PSLTを受け入れる油室110cと、スプール弁子に開弁方向の推力を付与するために前記オイルポンプ28から吐出された作動油を受け入れる油室110dとを、備えている。このように構成されたプライマリレギュレータバルブ110において、上記スプリング110bの付勢力をFS、上記油室110cにおける制御油圧PSLTの受圧面積をa、上記油室110dにおけるライン油圧PLの受圧面積をbとすると、次式(1)で平衡状態となる。従って、ライン油圧PLは、次式(2)で表され、その圧力は前記リニアソレノイド弁SLTから出力される制御油圧PSLTに基づいて調圧される。
【0026】
L×b=PSLT×a+FS ・・・(1)
L=PSLT×(a/b)+FS/b ・・・(2)
【0027】
前記セカンダリレギュレータバルブ112は、前記プライマリレギュレータバルブ110の出力ポート110tから前記第2ライン油路116へ排出された作動油を入力ポート112iを開閉して出力ポート112sから第2油路118へ一部を余剰油として排出すると共に出力ポート112tから前記オイルポンプ28の上流側である吸入油路120へ他の一部を余剰油として排出するスプール弁子112aと、そのスプール弁子112aを閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング112bと、上記スプール弁子112aに閉弁方向の推力を付与するために図示しないモジュレータバルブから出力されるモジュレータ圧PMを受け入れる油室112cと、上記スプール弁子112aに開弁方向の推力を付与するために前記第2ライン油路116へ排出された作動油を受け入れる油室112dとを、備えている。斯かるセカンダリレギュレータバルブ112においては、例えば上記第2油路118への余剰油の排出の方が上記吸入油路120への余剰油の排出に比較して排出タイミングが早くされるように構成されている。このように構成されたセカンダリレギュレータバルブ112において、上記スプリング112bの付勢力をFS、上記油室112cにおけるモジュレータ圧PMの受圧面積をa、上記油室112dにおける第2ライン油圧PL2の受圧面積をbとすると、次式(3)で平衡状態となる。従って、第2ライン油圧PL2は、次式(4)で表され、その圧力は図示しないモジュレータバルブから出力されるモジュレータ圧PMに基づいて調圧される。
【0028】
L2×b=PM×a+FS ・・・(3)
L2=PM×(a/b)+FS/b ・・・(4)
【0029】
前記ロックアップコントロールバルブ114は、軸方向へ移動可能に設けられることにより第2ライン圧PL2を元圧とする作動油を入力ポート114iから入出力ポート114jを経てロックアップ係合油圧Ponとして前記トルクコンバータ14の係合側油室14aへ供給可能であり且つそのトルクコンバータ14の解放側油室14bが入出力ポート114kを介して排出ポートEXと連通させられるON位置と第2ライン圧PL2をロックアップ解放油圧Poffとして入力ポート114mから入出力ポート114kを経て上記解放側油室14bへ供給可能且つ上記係合側油室14aが入出力ポート114jから出力ポート114nを介して第1油路122と連通させられるOFF位置とに位置させられるスプール弁子114aと、そのスプール弁子114aをOFF位置側に向かって付勢するスプリング114bと、上記スプール弁子114aにOFF位置側に向かう推力を付与するためにロックアップ係合油圧Ponを受け入れるフィードバック油室114cと、上記スプール弁子114aにON位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDSUを受け入れる油室114dとを備えている。
【0030】
上述のように構成されたロックアップコントロールバルブ114において、前記ソレノイド弁DSUがOFF(非励磁)とされて制御油圧PDSUの出力が停止させられると、中心線より左側半分に示すように上記スプール弁子114aがスプリング114bの付勢力に従ってOFF位置に保持され、第2ライン圧PL2がロックアップ解放油圧Poffとして上記入力ポート114mから入出力ポート114kを経て上記解放側油室14bへ供給されると共に、上記係合側油室14a内の作動油が入出力ポート114jから出力ポート114nを介して第1油路122へ排出される。すなわち、作動油の循環経路が上記解放側油室14bから係合側油室14aへの循環とされて前記直結クラッチ26が解放状態(ロックアップオフ)とされる。
【0031】
また、前記ソレノイド弁DSUがON(励磁)とされて制御油圧PDSUが前記油室114dへ供給されると、中心線より右側半分に示すように前記スプール弁子114aがその制御油圧PDSUに応じた推力により前記スプリング114bの付勢力に抗してON位置側へ移動させられ、第2ライン圧PL2を元圧とする作動油が前記入力ポート114iから入出力ポート114jを経てロックアップ係合油圧Ponとして前記係合側油室14aへ供給されると共に、前記解放側油室14b内の作動油が入出力ポート114kを介して排出ポートEXから排出される。すなわち、作動油の循環経路が前記係合側油室14aから解放側油室14bへの循環とされて前記直結クラッチ26が係合状態とされる。この直結クラッチ26の係合状態は、完全係合状態(ロックアップオン)のみならず係合過渡状態も含んでいる。例えば、前記電子制御装置50によって前記ソレノイド弁DSUの励磁電流が連続的に変化させられると、その制御油圧PDSUと前記スプリング114bの付勢力との関係に従って、その制御油圧PDSUに応じてロックアップ係合油圧Ponとロックアップ解放油圧Poffとの差圧が連続的に変化させられて、所定の係合過渡状態に制御される。このように、所定の制御油圧PDSUが出力されると前記直結クラッチ26が係合状態とされ、その制御油圧PDSUの出力が停止させられると前記直結クラッチ26が解放状態とされる。
【0032】
また、前記油圧制御装置100においては、前記トルクコンバータ14による攪拌等によって加熱された作動油を冷却する為のオイルクーラ124が前記第1油路122の下流側にチェックバルブ126を介して接続されている。また、前記直結クラッチ26のロックアップオフ時に前記トルクコンバータ14の循環流量が過剰になることが抑制され且つそのトルクコンバータ14の発熱が適切に抑えられる程度の循環流量が確保されるように、上記第1油路122に流れる作動油を調整する為の第1オリフィス128がその第1油路122のオイルクーラ124よりも上流側に備えられている。また、前記第2油路118に流出する作動油(余剰油)が過剰になることが抑制されるように、その第2油路118に流れる作動油を調整する為の第2オリフィス130がその第2油路118に備えられている。また、上記オイルクーラ124を保護するための安全弁としてのクーラバイパスバルブ132が上記第1油路122の下流側に上記オイルクーラ124と並列に備えられている。
【0033】
図5は、入力回転速度Nin=1000(rpm)、入力トルクTin=100(Nm)である場合において前記ベルト式無段変速機16の可変プーリ42、46それぞれの軸受部(ベアリング)に供給される潤滑油の温度とベルト効率との関係(実験値)の一例を示すグラフであり、それぞれ規格の異なる伝動ベルトAに関する関係(平均値)を○で、伝動ベルトBに関する関係(平均値)を□で示している。この図5に示すように、前記可変プーリ42、46それぞれの軸受部における潤滑(その軸受部のベアリングに係る潤滑)は顕著な温度依存性を示し、その潤滑温度の低下に伴ってベルト効率が比較的急に低下する一方、潤滑温度が比較的高い場合すなわち潤滑油粘性が比較的低い場合にはベルト効率が高まり、前記可変プーリ42、46の損失が低減する。一方、前記伝動ベルト48に対する潤滑に関しては温度依存性が低く、潤滑温度が比較的高い場合すなわち潤滑油粘性が比較的低い場合であってもベルト効率(ベルトの損失)は潤滑温度が比較的低い場合と略変わらない。
【0034】
図4に戻って、前記潤滑油路切換バルブ115は、前記ソレノイド弁SLの出力油圧である制御油圧PSLに基づいて前記ベルト式無段変速機16の可変プーリ42、46それぞれのプーリ軸受部(ベアリング)134、136に供給される潤滑油の供給油路を切り換える。すなわち、前記ロックアップコントロールバルブ114の出力ポート114nから出力された潤滑油が前記オイルクーラ124を介して流入する第1油路142から上記プーリ軸受部134、136へ供給される第1の潤滑油路と、前記ロックアップコントロールバルブ114の出力ポート114nから出力された潤滑油が前記オイルクーラ124を介することなく流入する第2油路144から上記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路とを選択的に切り換える。このために、前記潤滑油路切換バルブ115は、上記第1の潤滑油路すなわち上記第1油路142からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される状態が成立させられるように弁子を付勢するスプリング115aを備えている。このスプリング115aの付勢力により、前記ソレノイド弁SLの出力油圧である制御油圧PSLがOFFである場合には、前記潤滑油路切換バルブ115は、上記第1の潤滑油路すなわち上記第1油路142からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される油路を成立させる弁子位置とされる一方、前記ソレノイド弁SLの出力油圧である制御油圧PSLがONである場合には、前記潤滑油路切換バルブ115は、上記第2の潤滑油路すなわち上記第2油路144からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される油路を成立させる弁子位置とされる。なお、前記伝動ベルト48の潤滑に係るベルト潤滑部位(フロントベルト、リアベルト)138、140に関しては、前記ソレノイド弁SLからの制御油圧PSLに関わらず上記第1油路142からの潤滑油が供給される。
【0035】
上述のように構成された潤滑油路切換バルブ115に関して、前記電子制御装置50は、前記プーリ軸受温度センサ75により検出される前記入力側可変プーリ46及び/又は出力側可変プーリ46の温度TPBに基づいてその弁子位置を切り換え、上記第1油路142からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される第1の潤滑油路と上記第2油路144からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路とを切り換える。例えば、前記プーリ軸受温度センサ75により検出される前記入力側可変プーリ46及び/又は出力側可変プーリ46の温度TPBが所定温度(例えば60℃)より高い場合には、上記第1油路142からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される第1の潤滑油路を成立させる一方、その温度TPBが斯かる所定温度以下である場合には、上記第2油路144からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路を成立させるように前記潤滑油路切換バルブ115の弁子位置を切り換える。具体的には、前記プーリ軸受温度センサ75により検出される前記入力側可変プーリ46及び/又は出力側可変プーリ46の温度TPBが上記所定温度より高い場合には、前記ソレノイド弁SLからの制御油圧PSLをOFFとする一方、その温度TPBが上記所定温度以下である場合には、前記ソレノイド弁SLからの制御油圧PSLをONとするようにそのソレノイド弁SLの作動を制御する。
【0036】
前記潤滑油路切換バルブ115の切換制御は、前記CVT油温センサ64により検出される潤滑油温TCVTに基づいて実行されるものであってもよい。すなわち、斯かる潤滑油温TCVTが所定温度(例えば60℃)より高い場合には、上記第1油路142からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される第1の潤滑油路を成立させる一方、その温度TCVTが斯かる所定温度以下である場合には、上記第2油路144からの潤滑油が上記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路を成立させるように前記潤滑油路切換バルブ115の弁子位置を切り換えるものであってもよい。このように、本実施例においては、前記油圧制御装置100が潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、ドレン油路すなわち前記ロックアップコントロールバルブ114の出力ポート114nから排出される潤滑油を前記オイルクーラ124を介することなく前記入力側可変プーリ42及び/又は出力側可変プーリ46(プーリ軸受部134、136)に供給する潤滑油路制御装置として機能する。
【0037】
図6は、前記電子制御装置50による潤滑油路切換制御の要部について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0038】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記プーリ軸受部(プーリベアリング)134、136の潤滑温度が予め定められた所定値である60℃以下であるか否かが判断される。このS1の判断が否定されるうちは、そのS1の判断が繰り返されることにより待機させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、前記オイルクーラ124を介しない第2油路144からの潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路が成立させられるように前記潤滑油路切換バルブ115の弁子位置が切り換えられた後、本ルーチンが終了させられる。
【0039】
このように、本実施例によれば、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、ドレン油路から排出される潤滑油をオイルクーラ124を介することなく前記入力側可変プーリ42及び/又は出力側可変プーリ46に供給するものであることから、潤滑油温度が比較的低い場合において特に損失が生じ易いプーリ軸受部134、136の潤滑に、比較的温度の高いドレン油路から排出される潤滑油をオイルクーラ124を介することなく供給することで、車両の始動時等の低油温時において効率的な潤滑を実現することができる。すなわち、効果的な潤滑を実現する車両用ベルト式無段変速機18の潤滑油路制御装置を提供することができる。
【0040】
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
【0041】
図7は、前記車両用駆動装置10に好適に備えられる本発明の他の好適な実施例である油圧制御装置150のうちライン油圧制御及び前記直結クラッチ26の係合状態の制御等に関する部分を示す要部油圧回路図である。この図7に示す油圧制御装置150に備えられた潤滑油路切換バルブ115は、前記ソレノイド弁SLの出力油圧である制御油圧PSLに基づいて前記ベルト式無段変速機16の可変プーリ42、46それぞれのプーリ軸受部(ベアリング)134、136に供給される潤滑油の供給油路を切り換える。すなわち、前記ロックアップコントロールバルブ114の出力ポート114nから出力された潤滑油が前記オイルクーラ124を介して流入する第1油路142から前記プーリ軸受部134、136へ供給される第1の潤滑油路と、前記トルクコンバータ14の係合側油室14aにおいて用いられた潤滑油が前記オイルクーラ124を介することなく流入する第2油路152から前記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路とを選択的に切り換える。この油圧制御装置150においては、前記スプリング115aの付勢力により、前記ソレノイド弁SLの出力油圧である制御油圧PSLがOFFである場合には、前記潤滑油路切換バルブ115は、上記第1の潤滑油路すなわち前記第1油路142からの潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される油路を成立させる弁子位置とされる一方、前記ソレノイド弁SLの出力油圧である制御油圧PSLがONである場合には、前記潤滑油路切換バルブ115は、上記第2の潤滑油路すなわち上記第2油路152からの潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される油路を成立させる弁子位置とされる。なお、前記伝動ベルト48の潤滑に係るベルト潤滑部位(フロントベルト、リアベルト)138、140に関しては、前記ソレノイド弁SLからの制御油圧PSLに関わらず上記第1油路142からの潤滑油が供給される。
【0042】
上述のように構成された潤滑油路切換バルブ115に関して、前記電子制御装置50は、前記プーリ軸受温度センサ75により検出される前記入力側可変プーリ46及び/又は出力側可変プーリ46の温度TPBに基づいてその弁子位置を切り換え、前記第1油路142からの潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される第1の潤滑油路と前記第2油路152からの潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路とを切り換える。例えば、前記プーリ軸受温度センサ75により検出される前記入力側可変プーリ46及び/又は出力側可変プーリ46の温度TPBが所定温度(例えば60℃)より高い場合には、前記第1油路142からの潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される第1の潤滑油路を成立させる一方、その温度TPBが斯かる所定温度以下である場合には、上記第2油路152からの潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路を成立させるように前記潤滑油路切換バルブ115の弁子位置を切り換える。具体的には、前記プーリ軸受温度センサ75により検出される前記入力側可変プーリ46及び/又は出力側可変プーリ46の温度TPBが上記所定温度より高い場合には、前記ソレノイド弁SLからの制御油圧PSLをOFFとする一方、その温度TPBが上記所定温度以下である場合には、前記ソレノイド弁SLからの制御油圧PSLをONとするようにそのソレノイド弁SLの作動を制御する。また、前述の実施例と同様に、この潤滑油路切換バルブ115の切換制御は、前記CVT油温センサ64により検出される潤滑油温TCVTに基づいて実行されるものであってもよい。
【0043】
図8は、本実施例の油圧制御装置150に係る前記電子制御装置50による潤滑油路切換制御の要部について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0044】
先ず、前述したS1において、前記プーリ軸受部(プーリベアリング)134、136の潤滑温度が予め定められた所定値である60℃以下であるか否かが判断される。このS1の判断が否定されるうちは、そのS1の判断が繰り返されることにより待機させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S3において、前記トルクコンバータ14で使用された潤滑油が前記プーリ軸受部134、136へ供給される第2の潤滑油路が成立させられるように前記潤滑油路切換バルブ115の弁子位置が切り換えられた後、本ルーチンが終了させられる。
【0045】
このように、本実施例によれば、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、前記トルクコンバータ14において使用された潤滑油を前記入力側可変プーリ42及び/又は出力側可変プーリ46に供給するものであることから、潤滑油温度が比較的低い場合において特に損失が生じ易いプーリ軸受部134、136の潤滑に、比較的温度の高い前記トルクコンバータ14において使用された潤滑油を供給することで、車両の始動時等の低油温時において効率的な潤滑を実現することができる。すなわち、効果的な潤滑を実現する車両用ベルト式無段変速機18の潤滑油路制御装置を提供することができる。
【0046】
また、前記トルクコンバータ14は、直結クラッチ26を備えたものであり、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、その直結クラッチ26の係合状態を制御するために使用された潤滑油を前記入力側可変プーリ42及び/又は出力側可変プーリ46に供給するものであるため、直結クラッチ26の係合状態を制御するために使用されることで比較的温度の上昇した潤滑油をプーリ軸受部134、136に供給することで、車両の始動時等の低油温時において効率的な潤滑を実現することができる。
【0047】
また、前記トルクコンバータ14内に潤滑油を閉じこめ、所定時間その潤滑油を昇温させた後、その潤滑油を前記入力側可変プーリ42及び/又は出力側可変プーリ46の潤滑に用いる態様も考えられる。このようにすれば、十分に温度の高まった潤滑油をプーリ軸受部134、136に供給することができるという利点がある。
【0048】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明が好適に適用される車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置等を制御するために車両に設けられた電子制御装置に係る入出力信号を説明するブロック線図である。
【図3】図1の車両用駆動装置におけるトルクコンバータに備えられた直結クラッチの係合状態を制御するために用いられる関係の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例である車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置におけるライン油圧制御及び直結クラッチの係合状態の制御等に関する部分を示す要部油圧回路図である。
【図5】所定の条件においてベルト式無段変速機の入出力側可変プーリそれぞれの軸受部に供給される潤滑油の温度とベルト効率との関係の一例を示すグラフである。
【図6】図2の電子制御装置による図4に示す潤滑油路制御装置に係る潤滑油路切換制御の要部について説明するフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施例である車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置におけるライン油圧制御及び直結クラッチの係合状態の制御等に関する部分を示す要部油圧回路図である。
【図8】図2の電子制御装置による図7に示す潤滑油路制御装置に係る潤滑油路切換制御の要部について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
12:エンジン
14:トルクコンバータ
18:ベルト式無段変速機
26:直結クラッチ
42:入力側可変プーリ
46:出力側可変プーリ
48:伝動ベルト
100、150:油圧制御装置(潤滑油路制御装置)
124:オイルクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効径が可変である入力側可変プーリ及び出力側可変プーリと、それら入力側可変プーリ及び出力側可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを、有する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置であって、
潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、ドレン油路から排出される潤滑油をオイルクーラを介することなく前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給するものであることを特徴とする車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置。
【請求項2】
有効径が可変である入力側可変プーリ及び出力側可変プーリと、それら入力側可変プーリ及び出力側可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトと、エンジンから出力されるトルクの伝達を流体を介して制御するトルクコンバータとを、有する車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置であって、
潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、前記トルクコンバータにおいて使用された潤滑油を前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給するものであることを特徴とする車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置。
【請求項3】
前記トルクコンバータは、直結クラッチを備えたものであり、潤滑温度が予め定められた所定温度以下である場合には、該直結クラッチの係合状態を制御するために使用された潤滑油を前記入力側可変プーリ及び/又は出力側可変プーリに供給するものである請求項2に記載の車両用ベルト式無段変速機の潤滑油路制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−144885(P2010−144885A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324785(P2008−324785)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】